現れる五人の女の子。
黄色とオレンジ色の子パンチが決まり、その瞬間に解放された私をピンク色の子がお姫様抱っこする形で助けた。
「がはっ!ごほっごほっ‥‥‥!」
「夜星さん、しっかりして!?大丈夫?!」
苦しそうにむせる私を覗き込む顔、それは──
「星空‥‥‥‥さん‥‥‥?」
髪の色が明るいピンクになっていて、髪の量・髪型がボリュームアップしているが間違いない。星空さんだ。
「ふぇ?あっ!?え、えっとね!?夜星さん、ごめん!私が星空さんだって事は内緒なの!」
「‥‥‥はっ?」
何言ってんだ、この子。自分から言ったら内緒にする意味無かろうに。
って言うか‥‥‥星空さんが着てる服って‥‥‥まさか‥‥‥‥。
「はぁ~‥‥‥。だから、自分からバラしてどないすんねん‥‥‥」
オレンジ色の子が言う。
「‥‥‥日野さん?」
星空さん同様、髪の色が明るくなっている。髪型は髪の量が増えているからだろうか、団子状態になっていた。
「うわっ‥‥‥‥。ウチまでソッコーでバレてるし‥‥‥‥」
「って事は‥‥‥」
黄色の子は、
「‥‥‥黄瀬さん?」
緑色の子は、
「緑川さん‥‥‥?」
最後に青色の子。やはり、
「青木さん‥‥‥?」
皆、名前を言い当てられると思っていなかったのか、それぞれが苦笑い。
「ハッピーは自分から言うてもうたからしゃーないとして、ウチらの事はどうして分かったんや?」
「いや‥‥‥‥本人を知ってれば、顔を見れば解るでしょ、普通‥‥‥」
顔を隠してもないし、声もまんま。日野さんにいたっては、口調もそのまんまだし。バレないとか思っていたのか?
「‥‥誰かと思えば」
日野さんと黄瀬さんが殴り飛ばした─えっと、呼称は単純に『男』で良いか。声もそうだったし─男は何事も無かったように、平然と立っていた。
「『プリキュア』か、確か『スマイルプリキュア』とか名乗っている‥‥‥。バッドエンド王国の連中がてこずっているそうだな」
『プリキュア』、男は星空さん達を確かにそう呼んだ。
(‥‥‥‥‥)
そうか‥‥‥。星空さん達はプリキュア好きだけどそれだけじゃなくて、本人達が『プリキュアそのもの』だったんだ‥‥‥。
(‥‥‥あれ?)
ちょ、ちょっと待って!?
何で、『裏切られた』みたいに感じてんの、私!?星空さん達とはそこまでの関係でもないでしょーが!?
「退け、プリキュア共。貴様らに用は無い。貴様らの後ろに居る女、そいつが持っているラベンダージュエルが欲しいだけだ」
私を守るように立つプリキュアの五人。
星空さんと日野さんは一瞬だけ私を見てから頷き合い、男の方を見る。
「ウチらには話が見えてこーへんけど、言うたるわ。お断りや、そんなの」
「あなたが誰かは知らないけど‥‥‥‥私の友達にヒドい事をする人を、私は許さない‥‥‥!」
この子はまだ、私の事を友達って‥‥‥。
しかも、冗談抜きの本気で言ってるし‥‥‥。
お互い睨み合い、緊迫した空気がこの場を包む。
どちらとも、動く気配を見せない。
最初に動いたのは──
「──たぁぁぁぁっっっ!!」
星空さんだった。
星空さんに続いて、日野さん・黄瀬さんが星空さんと同じく正面から。
緑川さんと青木さんは一度ジャンプし、上空から同時にキックを放った。
「‥‥‥‥フンッ」
しかし、男は五人の同時攻撃に対し、片手を翳すだけ。たったそれだけで、星空さん達の攻撃は見えない壁に防がれてしまった。
「五人でこの程度か‥‥‥‥くだらん」
翳した手を横へ振る。それだけで星空さん達の体は、私の後方まで吹き飛ばされた。
「星空さんっ!?」
駆け寄る私に、星空さんは立ち上がりながら笑顔を向ける。
「えへへっ‥‥‥大丈夫大丈夫」
くそっ‥‥‥‥!?
私は男に向けて振り向き様に掌を突き出す。
「‥‥‥‥『ラベンダージュエルっ!!』」
パァーン!
突き出した掌の前に紫色の光の粒子が集まり、光の粒子はゴルフボールサイズの宝石を形作った。
「『私達を安全な場所に!!』」
その瞬間、私と星空さん達の体は光に包まれ、その場から姿を消した。
「逃げたか‥‥‥‥ふむ。‥‥まぁ、いいだろう」
○○○
「‥‥‥ここは?」
気付けば、私は不思議な場所に居た。
見上げてみると、上からは太陽のように暖かい光が私達を照らしている。
周りを見ると‥‥‥‥何だ?凄い数の本が。まるで一つの図書館みたいだ。
ここ、空間としてはとても広く、切り株の形をした家まである。
ラベンダージュエルには『安全な場所』と願ったけど、一体、ここは何なんだろうか‥‥‥。
「ここはね、『不思議図書館』っていうんだよ」
星空さんが変身を解きながらそう教えてくれた。
「まっ、ウチらの秘密基地やな」
日野さん達も変身を解き、元の姿に戻っている。
そうか‥‥、プリキュアが使う秘密基地なら、それ以上に安全な場所はないか‥‥。
「夜星さん。私達が助けに入ったはずなのに、逆に助けてもらっちゃったね‥‥。でも、助けてくれてありがとう」
星空さんから満面の笑みでお礼を言われてしまう。
(‥‥‥‥あっ)
私は気付く。
そ、そうだ!私、何でプリキュアなんか助けてるんだ!?
「‥‥‥‥夜星さん、教えて頂けませんか?あなたには一体、何があるのです?先程の力も‥‥‥‥」
青木さんの問いかけで、五人+一匹の視線が集まる。
「‥‥‥‥‥」
私は悩んだ。この子達に話すべきなのかを‥‥‥。
分かってる‥‥。この子達に話した所で何も変わらないし、何かを変えてくれるとも思っていない‥‥‥。
(‥‥は‥‥はははっ‥‥‥‥)
笑える‥‥。もしかして私は、星空さん達に僅かでも期待してしまっていたのか‥‥?馬鹿じゃん、私‥‥。‥‥‥うん、話すだけ無駄だな。
「‥‥‥あなた達には関係な「夜星さん夜星さん」‥‥‥‥何よ?」
急に、私に真面目な顔を向ける星空さん。何をする気だ‥‥?
「‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥」
謎の静寂が続くこと数秒。
星空さんはいきなり‥‥‥‥、
「‥‥‥はっぷっぷ~!」
両側から自分の顔を潰して変顔を作った。‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい?
普段の私なら、他人の変顔程度が笑いのツボに入ることはまずあり得ない。‥‥‥が、しかし。
自分でも分からない。何故か星空さんの変顔はツボに入ってしまい‥‥、
「‥‥‥‥ぶふーーーっ!!あ、あははははっ!!な、何よその顔!?!」
笑ってしまった。
突然の事にキョトンとする日野さんら四人+一匹。
「‥‥えへへ~っ。夜星さん、笑ってくれたね♪」
「‥‥は、はぁっ?そ、それがどうしたってのよ‥‥?」
「だって夜星さん、急に暗い顔になっちゃうから‥‥。‥‥私ね、誰かが辛そうにしてたり暗い顔してるのって嫌なんだ‥‥。私まで悲しくなっちゃうから‥‥」
「‥‥‥‥‥偽善ね」
そうだ‥‥、私には星空さんの言葉が偽善にしか聞こえない‥‥。だって星空さん達は『プリキュア』なんだ、私の気持ちなんて理解できるはずも‥‥‥。
「それがね、友達なら尚更悲しくなっちゃうんだ‥‥」
(‥‥‥‥‥‥っ!?)
‥‥‥うるさい‥‥‥うるさいのよ‥‥!友達友達って‥‥!違う!私達は友達じゃない‥‥!
星空さんの言葉は私の怒りに触れ、『フザケないでっ!』と叫びたかった。
いや‥‥実際、私はそれを叫びそうになった。
「フ───」
『ともだちだからだよ』
(‥‥えっ‥‥‥‥?)
『だってわたしたち、もうともだちでしょ?ともだちのかなしんでるかおなんてみたくないもん』
『何か』が私の苛立ちを止めたのは確かだった。
(何‥‥‥今の‥‥‥?私、今‥‥‥『何』を思い出しかけたの‥‥‥?)
私は今、確実に何かを思い出しそうになった。
でもそれは一瞬の事でしかなく、『何』を思い出しそうになったのか思い出そうとしても思い出せず、『何かを思い出しそうになった』という感覚だけが残っていた。
「夜星‥‥さん‥‥?」
急に黙り込む私を不思議に思ったのか、顔を覗き込む星空さん。
私は私で、気の迷いでも生じてしまったのだろう。開いた口は語りだしてしまっていた‥‥。
「‥‥‥‥‥プリキュアよ」
「ほへっ?」
「私のママ、夜星 彗はかつて‥‥‥‥‥あなた達と同じく、プリキュアだったのよ‥‥‥」
「「「「「‥‥えっ!?!」」」」」
無駄だと分かっているのに、私は星空さん達に話してしまっていた。
ママがプリキュア、キュアラベンダーだった事。
私が何故狙われたのか、狙われた原因であるラベンダージュエルとは何なのかも全部‥‥。
「‥‥‥で。これが、そのラベンダージュエルよ」
パァーン
何もない空間に両手を添えると、光の粒子が集まりラベンダージュエルとなってゆっくりと回転を始めた。
「綺麗~‥‥‥」と、黄瀬さん。
「おぉ~‥‥‥‥‥‥おっ?」
「みゆき、どないしたん?」
「ふぇっ?う、ううん、何でもないよ(‥‥どうしてだろう‥‥。ラベンダージュエル‥‥‥、ずっと前にも見た事あるような気が‥‥‥)」
「‥‥‥さて、これで気は済んだかしら?」
星空さん達に話す事はもう何もない。私は去ろうとした。
「あっ‥‥ま、待ってください!」
それを青木さんが止める。
「‥‥‥‥‥何?」
「プリキュアがあなたのお母様を殺した‥‥‥その意味が解りました‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「れ、れいか‥‥?解ったって‥‥どういう事やの‥‥?」
「プリキュアが直接的に殺したのではなく、『プリキュアという存在』が夜星さんのお母様を殺したと、そういう事ですよね‥‥‥?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥正解よ」
「プリキュアに選ばれなかったら、夜星さんのお母様は今もご健在で夜星さんと普通に暮らせていた‥‥‥」
「あっ‥‥‥」
誰の声だったか。青木さんの言葉で、気づいたように小さく声を洩らす。
「プリキュアに選ばれてしまったから、戦いに身を投じなくてはならなくなった‥‥。そして‥‥‥命を落としてしまった‥‥‥」
「だから‥‥」
「‥‥プリキュアが‥‥」
「アンタのオカンを殺した‥‥‥」
「‥‥‥‥‥そこまで気づいたなら、私にまだ何か言う事でもある?」
「「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥」」」」」
無いようだ。もし、まだ何か言おうものならそれは私にとって、呆れを通り越して軽蔑に値する。
『何か出来る』というのであれば何か言っても構わないけど、『何も出来ない』のだからこれ以上、私の心に踏み込んでこないでほしいものだ‥‥。
「‥‥‥最後に一つだけ言っておくわ。プリキュアの力で人の心の全てを守れるとか思ってるなら、それは自惚れよ。本当に守れるんだったら、現在の私は居ないはずだから‥‥‥」
星空さん達に背を向けながらそう言い残し、私はその場を去った。
─────
あかね視点
─────
「「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」」」
ウチらに漂う空気は重く、誰も誰も口を開かへんからめっちゃ静かやった‥‥。
空気が重いんは、今回も夜星さんが原因なんやけど‥‥‥。
前回と今回とじゃあ、その重みに違いがあるんをウチは感じた‥‥。
「‥‥‥流石にあかねちゃん‥‥‥‥ツッコミとか入れなかったね‥‥‥」
重さに堪えきれんくなったんか、やよいが口を開く。
「‥‥当たり前や‥‥。夜星さんが言うとった言葉の意味がわかった今‥‥‥、何か言えるわけあらへんやん‥‥‥」
ウチは夜星さんの言葉をずっと、嘘か大袈裟に言うとるだけなんやと思うとった‥‥‥。
せやけど、それは違うっちゅー事を知った‥‥‥。
夜星さん本当に‥‥‥、プリキュアのせいで辛い目に遭っとったんやな‥‥‥。
‥‥‥‥あーーーっ!?もう、どないしよー!?ウチ、謝った方がええんかな!?夜星さんも悪いちゃあ悪いんやけど、ウチも夜星さんの事情とか知らんと怒鳴ってもうたし‥‥‥!?
その時やった。
「‥‥‥‥‥あれ?」
ウチはふと、ある事に気づく。夜星さんに関係してて、ウチらが見逃しとった事に。
「‥‥あかねちゃん?」
みゆきの声が聞こえたけど、ウチは夜星さんが去った方向を見ながら自分が気づいた事を口にした。
「なぁ‥‥‥‥誰か‥‥、夜星さんに『不思議図書館からの出方』って教えた‥‥‥?」
「「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥あっ」」」」
あっ‥‥‥言ってる側から、夜星さん戻ってきた‥‥。
状況が状況やっただけに、夜星さんは若干、顔を赤ぉして俯いてる。
で、一言。
「‥‥か‥‥‥‥帰り方が分かんない‥‥‥」
皆、一斉にコケた。
や、夜星さん、やるやないか‥‥。自分で作ったシリアス雰囲気を自分で壊すやなんて‥‥‥。
「私達を助けてくれた時みたいに、ラベンダージュエルにお願いして帰れば良かったんじゃ‥‥‥」
やよいがもっともな事を言うたけど、やよい、それはアカン!
それ多分、止めや‥‥!?
「‥‥‥‥‥‥‥orz 」
ほら、夜星さんが落ち込んでも~たぁ。
「はぁ~‥‥‥。やよい、夜星さんにトドメ刺してどないすんねん‥‥‥」
「あ、あわわわっ‥‥‥!?や、夜星さん、ごめんなさ~い‥‥!?」
慌てて夜星さんに駆け寄るやよい。
‥‥‥プッ。何や、この流れ。微笑ましょー見えるんはウチだけやろうか?
夜星さんも意外と、面白い所あるんやな‥‥。
「そう言えば‥‥」
みゆき、言うてたな。夜星さん、皆と必ず仲良くなれるって。
今の夜星さん見てたら本当にそうなりそうな気がして、まぁ、それがいつになるか分からんけど、それも悪ぅないかな‥‥?
どうでしたか?自分なりにシリアス雰囲気を壊す終わり方をしてみたんですが、もし微妙だったらごめんなさいです。
あと、UAが1000を突破!番外編載せる時にはどれだけになっていることやら!?
【挿絵表示】
誤字修正がてら、まゆき嬢のイメージ画を載せてみました。
ちゃんと見れるはず‥‥‥‥なんですけど。