緋弾のアリア ~飛天の継承者~   作:ファルクラム

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第6話「地下倉庫の決闘」

 

 

 

 

 

 

 屋上に張り付けられ、友哉はうなだれた様子で顔を落としている。

 

 既にジャンヌと茉莉は去ってしまった。

 

 遠くではアドシアードの歓声が続いている。どうやら、こちらでの戦いを余所に、大会は滞りなく進んでいるらしい。

 

 しかし、ここでこうして拘束されている友哉には何をする事も出来ない。

 

 両腕を氷漬けにされている為、身動きをする事も、仲間に連絡する事も出来なかった。

 

 白雪はどうなったのか。

 

 瑠香は無事なのか。

 

 それを確認する術すら無い。

 

 そして、茉莉。

 

 彼女がデュランダルの協力者だとは思わなかった。

 

 ここ数日、一緒に行動し、食事や遊びにも行った仲だ。

 

 仲間だと思っていた。友情を築けていると思っていた。

 

 それは全て、友哉の思い上がり立ったのだろうか?

 

 今となっては、それすら判らない。こうして捕らわれの身となっては、確かめる術も無かった。

 

 その時、

 

 ガァァァァァァン

 

 凄まじい轟音と共に、友哉の右腕の僅か下に着弾がある。

 

 かなりの高威力の銃によるものらしく、友哉を捉えた氷だけでなく、背後のコンクリートも破壊している。

 

 銃撃は更に2発、3発と続く。

 

 4発目を数えた時、氷は構造を維持できなくなって破砕、捕らわれていた友哉はよろけるようにして解放された。

 

 手を何度か開閉してみる。

 

 氷漬けにされていたので動きが鈍っているかとも思ったが、問題無い。どうやらあの魔法は体組織を凍らせる物ではなく、表面を堅牢な氷の殻で覆い動きを縛りつけるものであったらしい。

 

 友哉はポケットから携帯電話を取り出すと、目当ての番号を探してコールした。

 

《はい》

「助かったよ、レキ」

 

 相手はレキである。

 

 遠距離から、これだけ精度の高い狙撃ができる人間を、友哉は彼女以外に知らなかった。恐らくアドシアードの会場にもなっている狙撃科棟にいるのだろう。

 

「レキ、君は確か、アドシアードの代表選手の筈だけど、そっちの方は?」

《棄権しました。会場は大騒ぎでしたが、こちらの方が優先度は高いと判断しましたので》

 

 レキは競技者である前に武偵である事を選んだのだ。ありがたい話であるが、後でブーイングが来そうである。

 

 まあ、後の事は後で考えるとして、今すべきことをしなくてはならない。

 

《状況を説明します。今から約10分前に、クライアントの白雪さんが失踪。キンジさんはそれを追って第9排水溝の方向に向かわれました。恐らくは地下倉庫に入ったと思われます》

「地下倉庫、か」

 

 地下7階まで存在し、最深部には多数の爆発物を格納した、武偵校三大危険地帯の一つ。そこに恐らくジャンヌや茉莉もいるのだろう。

 

《その後を追って、アリアさんも地下倉庫に向かわれました》

「おろ、アリアが?」

《はい。アリアさんが言うには、自分が護衛から外れた振りをすれば、必ずデュランダルが動く筈。そこを捕縛するとの事でした》

「・・・・・・成程ね」

 

 流石はアリアと言うべきだった。

 

 友哉はデュランダル、ジャンヌ捕縛の為に包囲網を敷いたが、アリアはより確実性の高い作戦で彼女を追い詰めようとしている。すなわち、囮作戦だ。護衛対象である白雪を餌にしてデュランダルをおびき出す作戦らしい。

 

 敵を欺くにはまず味方から。一歩間違えば白雪を危険に晒しかねないが、確実性はより高いと言える。

 

「判った、引き続き監視をお願い」

《判りました》

 

 そう言うと、電話を切る。

 

 友哉はもう一度、両手の指を開閉して動作を確かめる。

 

 問題はない。これならば、刀をふるっても大丈夫だろう。

 

 脳裏には一瞬、茉莉の事が浮かんだ。

 

 彼女が何を想い、そしてなぜ、自分達と敵対する道を選んでしまったのか。

 

 それを、今から確かめに行く。自分の剣と、飛天御剣流の技に掛けて。

 

「さあ、ここから反撃開始だ」

 

 

 

 

 

 陣は両の拳を構え、譲治の懐へと飛び込むようにして殴りかかる。

 

 陣も武偵校に入る前から喧嘩屋として鳴らした男。事戦闘に関しては、転校したてにもかかわらず強襲科で上位に入る実力の持ち主である。

 

「ウォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 獣のような雄叫びと共に殴りかかる陣。

 

 対して

 

「ぬんッ!!」

 

 譲治は長大な十文字槍を横に薙ぎ払い、柄で陣を殴りつける。

 

「クッ!?」

 

 遠心力の乗った一撃は、陣の長身を強打する。

 

 撃たれ強さは友哉との戦いで証明している陣だが、それでも防御に回らざるを得ない程の一撃である。

 

 一瞬、陣の体が横に流れる程の一撃が繰り出された。

 

 だが、

 

「貰ったぜ!!」

 

 既に陣は槍の間合いの内側に入り込んでいる。この距離ならば、拳の方が速い。

 

 そう判断し、再度攻撃の構えを見せる陣。

 

 しかし次の瞬間、譲治は口の端を釣り上げてニヤリと笑った。

 

 一瞬、陣が背中に感じる悪寒。

 

 背後から風切り音が聞こえたのは、その時だった。

 

「ウオッ!?」

 

 殆ど本能に従って、地面にしゃがみ込む陣。

 

 その頭上を、十文字槍の鎌が背後から駆け抜けた。

 

 譲治は陣が更に向かって来るのを見越し、そのあり余る膂力を用いて槍を引き戻し、鎌で背後から斬ろうとしたのだ。

 

 だが、まだ譲治の攻撃は終わらない。槍は引き戻され、再び突き込む体勢にある。

 

 対して陣はまだ、地面に伏せたままだ。

 

 そこへ、槍の穂先が突き込まれた。

 

「グッ!?」

 

 刃の先端を胸に受け、陣はうめき声を発した。

 

 防弾制服のおかげで貫通はしていないが、鋭い一閃に思わずよろけてしまう。

 

 そこへ、好機とばかりに譲治が連撃を仕掛けて来る。

 

 突き、払い、引き、と槍の特性を活かして攻撃を仕掛ける譲治。

 

 対して陣は、接近する事も出来ずに防御に回らざるを得ない。

 

 武器の進化とは、その射程距離にほぼ比例している。素手より剣、剣より槍、槍より弓、弓より銃、銃より大砲、大砲より飛行機、といった具合に。

 

 これは、力の弱い人間が、より強い人間を安全かつ確実に倒す為に、射程が長く、かつ攻撃力が高くなるように進化した必然と言える。極端な話をしてしまえば、素手で武を極めた達人がいたとしても、子供が放った1発の銃弾には敵わないのである。

 

 だが、これを逆説的に考えれば、達人であればある程、武器は短い方が有利と言う事になる。

 

 例えば、先述した素手対銃。距離を置いていれば銃の方が有利であるが、一旦殴り合いの距離まで接近してしまえば、素手の場合、そのまま相手にめがけて拳を真っ直ぐ繰り出せばいいのに対し、銃は、構え、照準、修正、発砲、と言うプロセスを踏まねばならず、どうしても攻撃開始までにタイムラグが生じてしまうのだ。アル=カタでは、その隙を補うために、ゼロ距離での素早い身のこなしと高度な体術が要求される。アリアなどは総合格闘技バーリ・トゥードを活かしているのだ。

 

 つまり、仮に同レベルの実力であるなら、槍使いの譲治より徒手格闘の陣の方が有利に戦いを進められる筈なのだ。

 

 しかし、実際には譲治が常に押し、陣は防戦一方だ。

 

「ったく、常識外れだな、この鬼達磨!!」

 

 悪態をつく陣に構わず、譲治は無言のまま槍を繰り出す。

 

 それに対して陣は、ただ攻撃を避け続けるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第9排水溝近くの変圧室から、梯子を伝って地下へと降りる。

 

 危険物を満載した地下倉庫は、学園島最深部、地下7階に存在している。

 

 既に戦闘が開始されているのか、先程凄まじい衝撃音が足元から伝わって来た。

 

 その後も、不気味な振動が僅かに伝わって来る。

 

 友哉は慎重に足を進めながらも、可能な限り急ぐ。

 

 ジャンヌは氷魔法を使う超能力者、魔女だ。その事をキンジもアリアも知らない。早く知らせる必要があった。

 

 それに白雪の安否も気になる。どのような形にせよ、彼女が現在、ジャンヌの手に落ちている可能性は高い。急がねばならなかった。

 

 だが、立ちふさがる者はジャンヌ以外にも存在していた。

 

 急ぐ友哉の行く手を遮るように、小柄な少女が物影から姿を現す。

 

 その姿を見て、友哉は足を止めた。

 

「・・・・・・瀬田さん」

「これ以上は行かせません」

 

 淡々と、しかし厳然として立ちはだかるが如く、茉莉は友哉を前にして揺らがぬ瞳のまま宣言する。

 

 その想いは既に断ち切られているかのように、ある種の覚悟を持ってそこに立っているのが判った。

 

 だが、それは友哉もまた同じ事である。

 

 この地下倉庫に駆け付けた時から、否、女子寮の屋上で対峙した時から、既に友哉もまた、こうなる事を覚悟していた。

 

 それでも、最後の望みを託して、口を開く。

 

「退く気は無いんだね?」

「何度も同じ事を言わせないでください」

 

 そう言うと、スッと影に隠していた自分の得物を取る。

 

 それは、

 

「日本刀?」

 

 漆塗りの鞘に収まった細身の曲刀は、間違いなく日本刀である。

 

 てっきり銃を使ったアル=カタを仕掛けて来ると思っていた為、友哉は意外な面持ちになる。

 

「元々、私はこちらの方が得意ですので」

 

 そう言うと、自身の愛刀を抜き放ち、切っ先を友哉へと向けた。

 

 銘は菊一文字則宗。福岡一文字と呼ばれる備前の刀工則宗の作で、則宗は鎌倉時代に後鳥羽上皇の御番鍛冶を務めた程の刀匠である。それ故に天皇家の御家紋である菊の文字を許され菊一文字を名乗ったとされている。

 

 最早、是非に及ばず。

 

 彼女を倒さない限り、友哉は先へと進む事ができない。

 

 腰に差した逆刃刀の柄に手を掛ける友哉。

 

 その脳裏には、これまでの色々な体験が思い出される。

 

 だが、次の瞬間には、その全てが流れ去り、意識は戦闘一色に染め上げられた。

 

「イ・ウー構成員、《天剣》の茉莉、参りますッ」

 

 次の瞬間、茉莉は地を蹴って刀を振りかざす。

 

 迎え撃つように、友哉もまた刀を抜き打つ。

 

 ぶつかり合う刃と刃。

 

 薄暗い地下にあって、互いの刃が火花を散らし、一瞬室内を照らし出す。

 

 弾かれるように斬り返す一撃。

 

 友哉の鋭い斬撃は、しかし、こちらも素早く切り返した茉莉の刀によって防がれる。

 

「ハッ!!」

 

 短い叫びと共に、茉莉は友哉よりも早く斬り込んで来た。

 

 その鋭い一閃を前に、友哉はとっさに大きく後退して距離を取る。

 

 かなり速い動きだ。速度は友哉に優るとも劣らない。

 

 だが、

 

 友哉は逆刃刀を右八双に構えると、今度は自ら斬り込む。

 

 その動きもまた、茉莉に決して劣ってはいない。

 

 袈裟掛けに振るわれる一撃。

 

 対するように茉莉も刀を繰り出すが、今度は加速がついている分友哉の方が速い。

 

「クッ!?」

 

 防ぐ事には成功したものの、振り抜かれた友哉の剣の鋭さの前に、茉莉は思わず呻き声を上げて後退せざるを得なかった。

 

 膂力と言う意味では友哉の方が茉莉よりも勝っている。まともに打ち合えば友哉の方が有利であった。

 

 更に友哉は後退する茉莉を追って斬り込みを掛ける。

 

「ハァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 フルスイングに近い抜き打ちによって、胴薙ぎを仕掛ける。

 

 対して茉莉も、やや体勢を崩しながらも辛うじて刀で受け切った。

 

 だが、

 

「うぅ・・・・・・」

 

 度重なる連続攻撃を前にして、茉莉の足がよろけるようになる。

 

 それを見逃す友哉ではない。

 

 ここが勝負を決める時と感じ、距離を置こうとする茉莉を追って前へと出る。

 

「飛天御剣流!!」

 

 右手一本にて刀を構え、左手は刃に添える。

 

 それを見た、茉莉の目が光る。

 

「龍翔閃!!」

 

 友哉は神速の勢いで、刀を斬り上げた。

 

 しかし、

 

「なっ!?」

 

 手応えが無い。

 

 確実に決まったと思った一瞬、茉莉は友哉の剣をも上回る反応速度で攻撃をすり抜けて見せたのだ。

 

 僅かに離れた場所で着地し、刀の切っ先を下げた状態で立つ茉莉。

 

 対して友哉は、逆刃刀を正眼に構えて警戒する。

 

 その内心では、僅かな焦りが見え始めていた。

 

 自分はもしかしたら、とんでも無い読み違いをしていた可能性があるのではないだろうか。

 

 そんな考えがよぎった時、茉莉の方から口を開いた。

 

「緋村君は」

 

 戦闘中であるにもかかわらず、相変わらず淡々とした調子でしゃべる茉莉。

 

「縮地、と言うのをご存知ですか?」

「縮地?」

 

 確か仙術の一種だった筈。所謂、瞬間移動の事で、理論としては「物理的な距離を縮め、一瞬で遠方へと至る術」だった筈。もっとも、友哉の知識は漫画の受け売りだが。

 

「私はジャンヌさんと違って超能力者ではありませんが、それと似たような事ができるんですよ」

 

 次の瞬間、

 

「こんな風に」

 

 茉莉の姿は、友哉のすぐ目の前に現われた。

 

『速いッ!?』

 

 驚く友哉。

 

 次の瞬間、茉莉は友哉の体を袈裟掛けに斬り下ろした。

 

 

 

 

 

 もつれる足は、否応なく重りに感じる。

 

 瑠香は壁にもたれるようにしながら、それでも前に進もうとする。

 

「グッ・・・・・・」

 

 腹が異物を飲み込んだように痛い。茉莉に殴られた痛みがまだ継続しているのだ。

 

 恐らく精神的な物もあるのだろう。友達だと思っていた茉莉に裏切られた事への精神的ショックが、痛みとなって現れているのかもしれない。

 

 普段なら羽のように軽い体が、今は鉛を流し込まれたように重かった。

 

 それでも、

 

「・・・・・・行かないと」

 

 絞り出すように、言葉を発する。

 

 友哉にこの事を伝えないといけない。

 

 そして茉莉。彼女がこれ以上犯行を重ねる前に、何としても止めないと。

 

 その執念だけが、瑠香を前へと進ませる。

 

 早く、

 

 早く行かなくては。

 

 気持ちだけが空回り、足は地面に縫い付けられたように動こうとしない。

 

 ついにはもつれ、地面に前のめりに倒れる。

 

 意識が、再び落ち始める。

 

 それを留める力は、瑠香には残っていなかった。

 

「・・・ま、つり・・・ちゃ・・・・・・ゆ・・・や・・・くん・・・・・・」

 

 うわ言のように言葉を絞り出しながら、瑠香の意識は再び暗転する。

 

 彼女が最後に見た物は、自分を見降ろすように立つ、武偵校の制服を着た女の子の姿だった。

 

 

 

 

 

「クッ!?」

 

 防弾制服の上からでも、斬られたと錯覚するほどの鋭い一撃に、友哉は顔を顰めた。

 

 見れば肩の縫製が僅かに解れている。茉莉の一撃は、それほどの鋭さを持っていたのだ。

 

 とっさに飛び退いて距離を取ろうとする友哉。

 

 だが、

 

「逃がさない」

 

 抑揚のない声と共に、逃げた先には既に茉莉が剣を構えている。

 

 茉莉が振るわれる一撃を、辛うじて撃ち払う友哉。

 

 だが、次の瞬間には、

 

「こっちです」

 

 背後で茉莉の声が聞こえた。

 

 そう思った瞬間、背中に鋭い斬撃を浴びせられる。

 

「クッ!?」

 

 床に転がるようにして距離を置きながら、膝を突き刀を構える。

 

 速すぎるッ

 

 飛天御剣流の極意は先手必勝。その下地となるのは、他者を凌駕する速さにこそある。

 

 陣にも、理子にも、彰彦にも友哉が互角以上に戦えたのは、ひとえに彼等よりも素早い身のこなしができたからに他ならない。

 

 だが、茉莉にはそれが通じない。向こうの方が圧倒的なまでに速いのだ。

 

 女子寮屋上での戦いで、茉莉が友哉の動きに銃の照準を合わせる事ができたのも、恐らくこの能力ゆえだ。

 

「どうしました、この程度ですか?」

 

 撹乱するように友哉の周囲を駆けながら、茉莉は囁く。

 

 友哉は必死に追いかけるが、あまりの速さに残像を捉えるのがやっとの状態だ。

 

 斬り込む茉莉。

 

「クッ!?」

 

 その一撃を、友哉は辛うじて防ぐ。

 

 火花を散らす刃と刃。

 

 しかし、友哉がカウンターの一撃を放った時には、既に茉莉はその場に無く、逆刃刀は虚しく空を切るのみ。

 

「遅いです」

 

 冷たい言葉がささやかれる。

 

 次の瞬間、友哉は胴に茉莉の刃を受けていた。

 

「グッ!?」

 

 息を吐き出し、体をくの時に折ながら、それでも友哉は倒れずに足を踏ん張る。

 

 対して茉莉は、数メートル離れた所で足を止め、友哉を見る。

 

 傷こそ負っていないが、既にボロボロの友哉に対し、ほぼ無傷に近い茉莉。両者を見比べれば、どちらが優勢かは一目瞭然であった。

 

 そんな友哉に、

 

「・・・・・・もう、退いてください」

 

 茉莉は静かな声で告げる。

 

 その声はそれまでの淡々とした物ではなく、どこか温かみのある、いつも友哉や瑠香と一緒にいる時の茉莉の物だった。

 

「あなたでは、私に勝てない。それは今の戦いで証明された筈。この戦いには、もう意味なんかない」

 

 そう言ってから、茉莉はもう一言付け加える。

 

「あなたを、斬りたくないです。お願いです。退いてください」

 

 そう告げる茉莉の瞳が、僅かにうるんでいるのが見えた。

 

 彼女の言葉は警告と言うより、懇願に近い。

 

 友情。

 

 この短い期間の内に、それを感じていたのは友哉や瑠香だけではない。茉莉もまた、彼らとの関係に温かみを感じていたのだ。

 

 だからこそ、自らの剣で友達が傷付く所は見たくなかった。

 

 対して、友哉は肩を落としながら顔を上げる。

 

「武偵憲章二条」

「え?」

「『依頼人との契約は絶対護れ』。僕は武偵として、この任務をやり遂げる義務がある。悪いけど、たとえ手足を千切られても退く気は無いよ」

 

 毅然と言い放ち、刀の切っ先を茉莉に向ける。

 

 確かに飛天御剣流の、友哉の速度では茉莉に敵わない。

 

 だが、それがどうしたと言うのだ。

 

 そんな物は足を止める理由にはならない。

 

「・・・・・・判りました」

 

 茉莉は再び淡々とした口調に戻り、友哉を見る。あくまで退かないと言うなら、彼女も戦うしかなかった。

 

 戦うべき理由なら彼女にもある。茉莉もまた、ここで退く訳にはいかなかった。

 

 菊一文字を正眼に構える茉莉。

 

 どれだけ啖呵を切ったところで、友哉の剣は彼女に届かない。縮地による神速の攻撃を用い、一撃離脱で仕留める。それが茉莉の弾き出した戦術だった。

 

「行きます」

 

 低い声で告げられる一瞬。

 

 茉莉の体は一瞬にして視界からかき消える。

 

 神速によって移動しつつ、友哉の感覚を撹乱する。そうして相手が疲弊した所で一撃加えるのだ。

 

 対して友哉は、棒立ちのまま動こうとしない。茉莉の動きを追い切れていないのだ。

 

 茉莉は床面だけでなく、壁や天井なども使い、三次元的な動きで友哉の周囲を駆け廻って行く。

 

 この動きを捉える事は誰にもできない。茉莉が今まで敵対した者を確実に倒して来た必勝戦法である。

 

 一瞬、友哉の死角に茉莉は回り込んだ。

 

『今ッ』

 

 刀を振りかざし、一気に斬り込む。

 

 ここが勝負の決め所だ。

 

 次の瞬間、

 

 友哉が茉莉の方に向き直った。

 

「ッ!?」

 

 駆けながら、思わず息を呑む。

 

 まさか、友哉には茉莉の姿が見えている?

 

『そんなバカなッ』

 

 本気を出した茉莉を追い切れる人間など、いる筈がない。

 

 そう思った時、

 

「飛天御剣流ッ」

 

 友哉の周囲に無数の斬線が、縦横に走るのが見えた。

 

「龍巣閃!!」

 

 視界に走る剣閃は、まるで空間その物を細切れに裁断するが如き数を持って、茉莉に殺到する。

 

 次の瞬間、

 

 茉莉の全身に凄まじい衝撃が走った。

 

 

 

 

 

 陣の着る防弾制服は、既にボロボロになっている。

 

 熟達した譲治の槍の前に、攻め手が全く掴めずに戦いは推移していた。

 

 だが、

 

「どうした、もう終わりかよ?」

 

 口元に浮かべられる笑み。その戦意は聊かの衰えも無く、獲物との距離を計る獣の如き雰囲気を持って立っている。

 

 一方の譲治の方は無言のまま、槍の切っ先を陣に向けている。

 

 相良陣。彰彦から情報を受け取り、その戦闘力はある程度把握していたつもりだが、まさかこれほどとは思わなかった。

 

 その撃たれ強さには舌を巻かざるを得ない。普通の人間なら10回は気絶していてもおかしくないような攻撃をまともに受けながら、尚も平然としている。戦闘技術は荒削りながら、場馴れしており予想外にねばって来る。

 

 譲治のように武術を鍛錬する者にとっては、逆に戦いにくい相手であると言える。

 

『仕方がない』

 

 手を抜いた攻撃では、却って戦闘が長引いてしまう。全力の一撃で、一気に勝負をかける。

 

 腰を落として、槍をやや下段に構える。

 

 次の瞬間、凄まじい踏み込みと共に、全力の直突きが放たれた。

 

「ウォォォォォォォォォォォォ!!」

 

 まさに鬼の咆哮と言うべき譲治の気合。

 

 その覇気だけで、並みの人間ならば吹き飛ばされてしまいそうだ。

 

 気合、速度、威力、全てが充分。

 

 対して陣は、防御の薄い頭部を護ろうと身構えるのが見えた。

 

 それを見て、譲治は内心でほくそ笑んだ。

 

 陣がそのように動くのは予測済みだ。だからこそ、狙いは別にしてある。

 

 刃の向かう先。それは、陣の右脇腹。頭部に防御が集中している為、そこはほぼがら空きになっている。

 

 突き込まれた槍の穂先は、防弾制服すら貫通し立ち尽くす陣に突き刺さった。

 

「グハッ」

 

 腹から伝わる激痛と共に、口から血を吐き出す陣。

 

『決まったな』

 

 手応えはあった。

 

 これまでの度重なる攻撃で解れが生じていた防弾制服は裂け、切っ先は陣の腹部に刺さっている。充分なダメージは入った筈だ。陣はしばらく動く事も出来ないだろう。

 

 そう思い、槍を引き抜こうとした。

 

 その時、

 

 ガシッ

 

 その穂先が力強く握られる。

 

「捕まえたぜ」

 

 口元から血を流しながら、陣は不敵に言い放つ。

 

「なっ!?」

 

 譲治は初めて、驚愕を表情に浮かべた。まさか、まだ動けるとは思っていなかったのだ。

 

 そんな譲治を尻目に、陣は空いている右手を高々と振り上げた。

 

「この瞬間を、待ってたぜ!!」

 

 振り下ろされる肘打ち。

 

 その一撃は、槍の柄に叩きつけられた。

 

 武器破壊。

 

 譲治の攻撃に手を焼いた陣は、まずその槍をどうにかしようと考えたのだ。

 

 生木を折るような音と共に、十文字槍は穂先部分がへし折られる。

 

 思わず踏鞴を踏む譲治。まさか、こんな手で来るとは思ってもみなかった。

 

 自分の体にわざと刃を突き刺し、逆に相手の動きを封じる。陣の撃たれ強さがあったからこそ可能な技である。勿論、脇腹には刃による貫通創。言うまでも無く重傷である。

 

 だが、これで譲治は武器を失った。

 

「こいつで、とどめだ!!」

 

 拳を振り上げる陣。

 

 だが、陣が殴りかかる一瞬前に、譲治は懐からスプレー缶のような物を取りだすと地面に放り投げた。

 

 一瞬の閃光と轟音。

 

 投げられた閃光手榴弾は、陣の視界を白色に染め上げた。

 

「チッ」

 

 舌打ちしながら、視界の回復を待つ陣。

 

 やがて、周囲の情景が見えて来ると、そこに譲治の姿は無かった。

 

「・・・・・・逃げやがったか、あの鬼達磨」

 

 呟きながら肩を落とす。

 

「あ~、にしても、さすがにちっと痛ェかな」

 

 穂先が刺さったままの脇腹に手をやりながら、僅かに顔を顰める。

 

 譲治の動きを止めて懐に入り込むには、良い手だと思ったのだが、流石に無茶をし過ぎたようだ。

 

「確か、この手の怪我は救護科、とか言う所に行けばいいんだよな」

 

 呟くと、そのまま歩きだす。

 

 その足取りには、重傷を負っているにもかかわらず一切の不安定さは感じなかった。

 

 

 

 

 

 体が動かない。

 

 全身が軋むように痛い。

 

 一体、何があったのか。

 

 床に這いつくばりながら、茉莉は己に起きた事を振り返っていた。

 

 あの時、背後から友哉に襲い掛かり、神速の一撃で持って勝負を決しようとした。

 

 しかし、閃光のような斬線が無数に描かれたと思った瞬間、倒れていたのは茉莉の方だった。

 

 倒れ伏した茉莉。

 

 彼女を見降ろすように、友哉は刀を構えたまま立っている。

 

 チェスのゲームの中で、最強の駒は何かと言われれば、誰もがクイーンを上げるだろう。将棋で言う所の飛車と角の動きを併せ持ち、前後左右斜めに無限に移動する事ができる、言わば盤上最速の駒である。

 

 しかし、そのクイーンの力を過信し、単独で突出させれば、他の駒に包囲されて討ち取られる結果にもなる。故に「クイーンは迂闊に動かさないのが定石」と言う言葉もあるくらいだ。

 

 友哉は機動力に優る茉莉を相手にするにあたって、彼女の動きを先に読み、網を張って待ちうける戦術を取った。

 

 龍巣閃は飛天御剣流の速さを利用した乱撃技であり、その効果は通常の斬撃のように線ではなく、面を制圧するようになっている。茉莉の動きの読む事ができれば、後はその方向に技を放つ事で相手を絡め取る事ができるのだ。

 

 言うなれば、高速で突っ込んで来た茉莉は、龍が張り巡らせた巣の中に自ら飛び込んだようなものであった。

 

『とは言え、けっこう紙一重だったんだよね』

 

 考えながら苦笑する。

 

 茉莉は感情の動きが希薄である為、その思考を先読みする事は難しい。「死角から攻めて来る」と読んだのは殆ど賭けに近かったのだが、どうにか成功する事ができた。仮に正面から斬りかかって来るのであれば、余計な撹乱はせず真っ直ぐに接近し最速の一撃を仕掛ける筈。それをしなかったという事は、死角攻撃を狙っていた、と友哉は判断した訳である。

 

 と、それまで床に倒れ伏していた茉莉が、菊一文字を杖代わりにして立ち上がろうとしている。しかし、足に殆ど力が入らないらしく、その姿はまるで生まれたての小鹿のようだ。

 

「もうやめなよ。一応急所は外したけど、君はもう戦うどころか立つ事もままならない筈だよ」

 

 既に勝負はあった事を、友哉は告げる。

 

 そんな事は茉莉にも判っていた。

 

 だが、

 

 それでも、

 

 

 

 

 

『頼んだぞ、茉莉』

『はい、必ず』

『お前だけが頼りだ』

『必要な額のお金を持って、必ず戻ってきます。それまでは、どうか辛抱してください』

 

 

 

 

 

「・・・・・・わた、しは・・・こんなところ、で・・・・・・」

 

 ショートポニーが解け、ばさばさになった髪を振り乱しながら、渾身の力を振り絞り、立ち上がる茉莉。

 

「負けられないんだァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 普段の彼女からは決して聞けないような雄叫びと共に、再び剣を振り翳して斬り込んで来る茉莉。

 

 しかし、その動きには先程までの超絶的な機動力は無く、ただ己の体をそのままぶつけるかのような雑な動きがあるのみだった。

 

 そして、

 

 ガキンッ

 

 友哉が殆ど無造作に横薙ぎに振るった一撃によって、菊一文字は茉莉の手から離れ、床に転がった。

 

「あっ」

 

 そのまま、茉莉自身も力を失ったように床に座り込んだ。

 

 彼女の抵抗は、全て封じられたのだ。

 

 友哉はそんな彼女に近づくと、務めて冷たい口調を作り言った。

 

「瀬田茉莉、殺人未遂、並びに未成年者略取の容疑で・・・・・・逮捕する」

 

 取り出した手錠を、茉莉の両手に掛ける。

 

 ガチャリ、と言う金属音が、何やら物悲しく聞こえた。

 

 項垂れる茉莉。

 

 友哉は次いで携帯電話を取り出すと、救護科3年の高荷紗枝を呼び出した。1期上の先輩だが、友哉が1年生の頃、任務で何度か怪我をした時に診て貰った事があり、腕が確かである事は保証済みだった。電話すると、生憎彼女はアドシアードの保健委員を務めており手が離せないらしいが、衛生科の友人を派遣してくれるとの事だった。

 

 その時、

 

 近付いて来る足音に振り返ると、瑠香と、彼女を支えるようにしてレキが歩いて来るのが見えた。どうやらレキが瑠香をここまで連れて来てくれたらしい

 

 立ち尽くす友哉と、手錠を掛けられ項垂れている茉莉。

 

 そんな二人を、瑠香は悲しげに見つめる。その光景だけで、勝敗がどうなったかは一目瞭然だった。

 

「友哉君・・・・・・茉莉ちゃん・・・・・・」

 

 幼馴染と友達が剣を交えると言う事態は、少女の心を深く傷つけていた。

 

 だが、生憎感傷に浸っている暇は無い。戦いはまだ続いているのだ。

 

「レキ」

 

 友哉は更に地下へと向かう梯子に向かいながら言う。

 

「ここはお願い。もうすぐ衛生科の人が来ると思うから」

「判りました、友哉さんは?」

「僕は、キンジとアリアの援護に行く」

 

 彼等の足下では、まだ戦いは継続されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは最終局面を迎えつつあった。

 

 一度は白雪を確保する事に成功したジャンヌだったが、その後参戦したキンジ、そしてアリアによって、彼女の計画が狂い始めていた。

 

 そして更に、2人の活躍によって危地を脱した白雪が戦線に加わった事で、完全に形勢は逆転しつつあった。

 

 星伽に科せられた禁を自ら破り、全力を解放した白雪は、自らの刀、銘刀イロカネアヤメに炎を纏わせ斬り込む。

 

 炎の力を使う白雪の能力は、氷魔法を使うジャンヌに対して極めて相性が良い。

 

 対してジャンヌもまた、イ・ウーに置いて銀氷の魔女と異名を取ったステルスである。その程度の不利など物ともせず、白雪と互角の戦いを繰り広げていた。

 

 だがついに、白雪がジャンヌを壁際まで追い詰めた。

 

「剣を捨てて、ジャンヌ。もう、あなたの負けだよ」

 

 しかし、そう告げる白雪の息は荒い。

 

 ステルスは莫大な能力を発揮する半面、消費する力も大きい。封印を破り全力を解放した白雪の体力も既に限界が近かった。

 

 対してジャンヌは、追い詰められながらも不敵に笑みを見せる。

 

「甘いな星伽、お前は本当に、氷砂糖のように甘い女だ。私の体ではなく、剣ばかり狙うとは。聖剣デュランダルは、誰にも斬る事などできはしない」

 

 武偵法9条「武偵は如何なる状況においても、その武偵活動中において人を殺害してはならない」

 

 白雪は戦闘開始から今に至るまで、ジャンヌの持つデュランダルに攻撃を集中していた。しかし、ジャンヌの言うとおり、未だ聖剣には傷一つついていない。

 

 その刀身が青白く発光を始める。ジャンヌが魔力のチャージを始めたのだ。

 

「見せてやる『オルレアンの氷花』。銀氷となって散れ!!」

 

 ジャンヌが最大の技を放とうとした、その瞬間、

 

「今よキンジ、あたしの3秒後に続いて!!」

 

 後方で戦況を見守っていたアリアが、ここが勝負処と断じ、白雪を援護すべく動いた。

 

 両手には小太刀二刀を構え、低空を飛ぶ鳥のように両手を広げて疾走する。

 

 それに気付いたジャンヌは、標的を白雪からアリアへととっさに変更する。

 

「ただの武偵如きが、超偵に敵うものか!!」

 

 奔流の如き青白い光を放つ冷気が、アリアに向けて放たれる。

 

 だが、アリアは一瞬早く、右の刀で床に落ちていた物を拾い上げて翳した。

 

 それはジャンヌが、作戦の一環として白雪に化けた際に使い、脱ぎ捨てた巫女服だった。

 

 勢いよく払った巫女服によって、放たれた氷は天井に逸らされ、まるで花開いたように凍りつかせる。

 

「今よ、キンジ、もうジャンヌは力を使えないわ!!」

 

 アリアの合図を受けて、キンジが動く。その手に構えられたベレッタを3点バーストに切り変え発砲した。

 

 しかし、それを予想していたジャンヌは、素早くデュランダルを引き戻し、その身幅の厚い投身で弾丸を防いだ。

 

「ただの武偵の分際で!!」

 

 斬り込もうとするジャンヌ。

 

 彼女の足元を、アリアが二刀で薙ぎ払う。

 

 それを跳躍して回避するジャンヌ。

 

 ジャンヌはその勢いのまま、デュランダルをキンジめがけて振り下ろす。

 

 西洋剣の重い一撃が、キンジの脳天へと迫る。

 

 その一撃を、

 

 キンジはあろう事か、左手の人差し指と中指で受け止めて見せた。

 

「何っ!?」

 

 驚愕するジャンヌに、キンジはベレッタの銃口を向けた。

 

「これで一件落着だよ、ジャンヌ。もう良い子にした方がいい」

「・・・・・・武偵法9条」

 

 静かに告げるキンジに、ジャンヌは強気に返す。

 

「よもや忘れた訳ではあるまいな、武偵は人を殺せない」

「はは、どこまでも賢いお嬢さんだ」

「お、おじょ・・・・・・」

 

 キンジのらしくない、穏やかで優しげな言葉に一瞬呆気にとられたジャンヌだが、すぐに剣を持つ手に力を込める。

 

「だが、私は武偵ではない、ぞ」

 

 キンジを振りほどこうとするジャンヌ。

 

 その時、

 

「キンちゃんに、手を出すなァァァァァァ!!」

 

 残る力の全てを込められた、白雪の手にあるイロカネアヤメが、炎を纏って虚空を奔った。

 

「星伽候天流、緋緋星伽神!!」

 

 振るわれた剣は、下段から磨り上げるように一閃、小型の太陽光の如き炎を発して、聖剣デュランダルを根元から一刀両断した。

 

「ば、バカなッ!?」

 

 一瞬呆然とするジャンヌ。

 

 しかし、最後の抵抗とばかりに、懐からチェコ製自動拳銃Cz100を取り出して構えようとした。

 

 次の瞬間。

 

 キンッ

 

 一瞬の鍔鳴りと共に、駆け抜ける影。

 

 見れば、逆刃刀を頭上に振り切った状態の友哉が、いつの間にかジャンヌの傍らに立っていた。

 

 ジャンヌの手にあるCz100は、銃身部分がスッパリと輪切りにされている。一瞬で接近した友哉が、逆刃を使って斬り落としたのだ。

 

「やあ、ジャンヌ、意外に早く再会できたね」

「クッ」

 

 そう言ってニッコリ微笑む友哉に、ジャンヌは言葉を詰まらせて黙りこむ。

 

 そこへ、

 

「デュランダル、逮捕よ!!」

 

 飛びかかったアリアが、ジャンヌの手に手錠を掛ける。

 

 その様子を見ながら、キンジと友哉は笑みを見せると、互いの手をパァンッと打ち鳴らす。

 

 それがこの、魔剣事件の終局を告げる鐘の音となった。

 

 

 

 

 

第6話「地下倉庫の決闘」     終わり

 


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