緋弾のアリア ~飛天の継承者~   作:ファルクラム

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第8話「一人は皆の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザッと言う草を踏む音と共に、人の気配が複数、周囲を囲むように現われるのを感じた。

 

 それに合わせるように、エムアインスは顔を上げた。

 

「・・・・・・・・・・・・来たか」

 

 低い呟きは、闇の中へと溶け込んで行くように囁かれる。

 

 その声に答えるように、中の1人が歩み出た。

 

「ご苦労だったな、アインス。こっちの準備もようやく整った」

 

 光学迷彩を解除したジーサードは、相変わらず派手な出で立ちのまま、エムアインスの傍らへと立った。

 

 その2人を囲むように、周囲に立つ影。

 

 いずれも、ジーサードに忠誠を誓う仲間達。彼の為なら躊躇わず命を投げ出す事も厭わない猛者達である。

 

「ツヴァイの事は、報告で聞いた」

「・・・・・・すまない」

 

 隠しきれない苦みと共に、エムアインスは言葉を吐きだす。

 

 その話を避けて通る事はできない事は、初めから判っていた。エムツヴァイの暴走と敗北。エムアインスは、それら全てを自分の責任である。

 

「気にするな。ツヴァイが無理をすればああなる事は、とっくに判っていた事さ。それで参戦を許したのは俺の責任だ」

 

 そう言って、ジーサードはエムアインスの肩を軽く拳で叩く。

 

「しかし、俺はあいつを、守ってやる事ができなかった・・・・・・」

 

 深い悔恨がエムアインスを襲う。

 

 この世でただ1人の、大切な妹。

 

 自分が、何を置いても守ってやらねばならなかったというのに。

 

 それなのに・・・・・・・・・・・・

 

「まだ、終わってねぇ」

 

 マイナスの思考に陥りかけたエムアインスを強引に引っ張り上げるように、ジーサードは低い声で呟く。

 

「サード?」

「まだ、何も終わってねえだろ」

 

 言い放つジーサードは、真っ直ぐにエムアインスを見詰めてニヤリと笑みを見せる。

 

 その笑みに、エムアインスは自身の胸の内に熱い物が込み上げるのを感じた。

 

 ただそこにいるだけで人を魅了し、万民を従える事の出来る存在と言う者がいる。古代の人々は、そうした人物の事を「覇王」と呼び称え、敬った物だ。

 

 ジーサードには、その覇王の資質がある。と、エムアインスは考えていた。

 

 それはあの、地獄のようだったロスアラモスの研究所から解放してくれた時から思っていた事。

 

 やろうと思えばジーサードは、自分とジーフォースだけを連れて逃げる事ができたし、その方がずっと簡単だったはずだ。

 

 わざわざエムアインスとエムツヴァイを、一緒に助ける必要性は無かった筈だ。

 

 だが、ジーサードはそれをした。あえて、した。

 

 そこにこそ、目の前の男の偉大性がある。

 

 ただ強いだけではない。

 

 ただ頭が良いだけでもない。

 

 ただカリスマがあるだけでもない。

 

 それら全てを同時に兼ね備えているからこそ、目の前の男は英雄たる事ができるのだ。

 

 だからこそ、エムアインスはジーサードについて行こうと思うし、彼の為に躊躇い無く剣を振るおうと考える事ができる。

 

「さあ、行こうぜ。今度こそ決着だ」

 

 勇ましく言い放つジーサードに、エムアインスも力強く頷き、手にした刀を握り直す。

 

 そう、今度こそ、

 

 今度こそ、緋村友哉の首を上げ、自分達の宿願を果たす。

 

 闘志に燃える瞳で、エムアインスはそう誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試験が近くなると慌てるのは、学生の性であろう。

 

 それが、成績表など汗拭きタオル程度の価値にも感じていない武偵校の学生であっても変わりはない。

 

 特にその兆候が大きいのは、成績が下位の学生達であろう。

 

 あまり成績が悪いと、偏差値に響いてくる場合もあるのは武偵校も一般校も同じである。その事を考慮すれば、あまりサボる事もできなかった。

 

 そんな訳で、その日、ファミリーレストラン「ロキシー」にて、茉莉は瑠香に勉強を教えていた。

 

 同室になって以来、瑠香はしばしば、茉莉から勉強を教えてもらう事が多かった。

 

 イクスの4人の中で最も成績が良いのは茉莉である。何でも学年全体でも10番以内に入る成績をキープしているらしい。彼女が武偵活動以外の事も真面目に取り組んでいる証拠であった。

 

 普段は、「瑠香=姉、茉莉=妹」と言う年齢逆転姉妹的な関係の2人だが、この時ばかりは、立場が逆(あるいは正常?)の物となる。

 

「んっと、これは・・・・・・」

「ああ、それはですね、さっきの定理を応用して、この公式に当てはめると判りやすいですよ」

 

 瑠香が迷う問題に、茉莉は的確にアドバイスを出して行く。

 

 時刻は昼さがり。

 

 報酬代わりの昼食を瑠香のおごりで食べた後、2人はこうして試験勉強に勤しんでいた。

 

 周囲を見回せば、考える事は誰も同じなのか、同様に試験勉強の課題を広げた武偵校生徒があちこちに見られた。

 

「ここは、どうするの?」

「あ、これはですね」

 

 質問に対して丁寧に教えてくれる茉莉。

 

 そんな茉莉の横顔を、瑠香はジッと見つめている。

 

 先日の体育祭(ラリッサ)以来、瑠香の中にある疑念はほぼ確信に近い物になりつつあった。

 

 茉莉は、友哉の事が好き。

 

 そして、友哉も茉莉の事が好き。

 

 初めにその事を思ったのは、学園祭の時、2人が一緒にいるところを目撃した時だった。

 

 思えば、それ以前からも兆候はあった。

 

 茉莉は時々友哉を見る際に、微熱の籠ったような視線を向けている事があったし、友哉もまた、茉莉を意識しているのでは、と思える行動をする時があったのだ。

 

 だが、どちらかと言えば引っ込み思案の茉莉と、頭に超が付きそうなほど鈍感な友哉であるから、今まで気づかなかったのだ。

 

 だが、先日の体育祭。

 

 最後に行われた実弾サバイバルゲームで、友哉は茉莉に危害を加えようとした男子生徒を、危うく殺しそうになっていた。

 

 ああなった友哉の事を、瑠香は何度か憶えがある。

 

 一度目は瑠香が中学生の時。瑠香を誘拐した犯人を、友哉は半殺しの目にあわせた。

 

 二度目は今年の6月。殺人鬼《黒笠》と戦った時。この時も、瑠香が殺されたと思った友哉は、その圧倒的な力で持って黒笠を叩き伏せた。

 

 緋村友哉と言う少年は、自らの中に、自分でも制御する事の出来ない魔物を飼っている。

 

 その魔物が目を覚ました時、緋村友哉は緋村友哉では無くなり、ただ己の目的を果たす為に、立ちはだかる者全てを薙ぎ払う修羅と化す。

 

 自らが望めば、武偵のような法の執行者にも、殺人鬼のような犯罪者にもなる事ができる危うい存在。

 

 それこそが、緋村友哉と言う少年だった。

 

 そして、

 

 瑠香の視線は、尚も茉莉の横顔を捉えている。

 

 この間の友哉は、間違いなく、茉莉を助ける為に、自身の凶暴性を発現していた。

 

 その事が、友哉の中で瀬田茉莉と言う少女が特別な存在になりつつあるのでは、と思い始めていた。

 

『もし、それが本当なら、あたしは・・・・・・・・・・・・』

 

 心の中での呟きは、声に出さずに消えていく。

 

 友哉は瑠香にとって幼馴染であり、今なお想う、初恋の相手でもある。

 

 だが、自分のこの気持ちは、友哉も、そして茉莉をも裏切っているのではないか、と思ってしまう。

 

 瑠香の中にある葛藤は、彼女自身を雁字搦めに縛っていた。

 

 この気持ちに、決着をつなければならない。

 

「瑠香さん?」

 

 突然、顔を上げて茉莉が怪訝な目を向けていた。

 

「ちゃんと聞いてました?」

「あ、え、えっと・・・・・・」

 

 わたふたと周囲を見回してから、しゅんっと顔をとして言う。

 

「ごめん、聞いて無かった・・・・・・」

 

 そんな瑠香の様子に、茉莉は溜息をつきながら苦笑する。

 

「もう、しょうがないですね。少し、休憩を入れましょうか」

 

 そう言うと、立てかけてあるメニューを取る茉莉。

 

 一応、ドリンクバーは頼んであるが、メニュー表を取ったところを見ると、何か他の物を注文しようと思っているらしい。

 

 そんな茉莉を見ながら、

 

「ねえ、茉莉ちゃん」

 

 真剣な眼差しで、瑠香は話しかけた。

 

「はい?」

 

 顔を上げる茉莉。

 

 対して瑠香は、彼女の顔を真っ直ぐ見詰めて言う。

 

「聞きたい事が、あるんだけど」

「何でしょう?」

 

 改まった瑠香の様子に、怪訝な面持になる茉莉。

 

 雰囲気から、何か重要な事を聞こうとしていると悟り、茉莉も真剣な表情で聞き入る。

 

 ややあって、瑠香は意を決したように口を開いた。

 

「茉莉ちゃんはさ、友哉君の事、どう思ってるの?」

「え・・・・・・・・・・・・」

 

 質問の意図が一瞬掴めず、言葉を詰まらせる茉莉。

 

 対して瑠香も、それ以上尋ねず、じっと茉莉の反応を待っている。

 

 茉莉も少しためらうようにしながら、微笑を浮かべて口を開く。

 

「どう、って、大切な仲間です。彼はイクスのリーダーとして・・・・・・」

「そんな事、聞きたいんじゃないよ」

 

 茉莉の言葉を、瑠香の言葉が遮る。

 

 そして、

 

 真っ直ぐ射抜く視線のまま、言葉が投げかけられた。

 

「茉莉ちゃんは、友哉君の事が好きなの?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 これ以上ないくらい、韜晦と言う要素を省いた言葉。

 

 対して茉莉は、答える事ができずに沈黙したまま瑠香を見ている事しかできない。

 

 昼下がりのファミレス。

 

 周囲には喧騒が満ちている。

 

 だが、2人の周囲だけが、まるで空間を斬り取られたように重い静寂に満ちていた。

 

「どうなの、茉莉ちゃん?」

「そ、それは・・・・・・・・・・・・」

 

 静かに追い詰めて来る瑠香に対して、茉莉は言い淀んで答えに迷う。

 

 確かに、茉莉は友哉に想いを寄せている。その事を偽る気はない。

 

 だが、ここで瑠香に、この質問をされるとは思ってもみなかった。

 

 瑠香が、更に言い募ろうとした時だった。

 

 テーブルの上に置いてあった、茉莉の携帯電話が着信を告げた。

 

 手に取って液晶を見てみると、渦中の人物からの電話着信であった。

 

「も、もしもし?」

《あ、茉莉、今、1人?》

 

 電話の向こうで、友哉が何やら慌てた調子で尋ねて来る。

 

 対して茉莉は、チラッと瑠香の方を見ながら答える。

 

「い、いえ、瑠香さんと、一緒ですけど・・・・・・」

《そう、ちょうど良かった》

 

 言ってから、友哉は声音に緊張を乗せて言った。

 

《まずい事になった。さっき玉藻から連絡があって、ジーサードが東京に戻って来たらしい》

「えッ!?」

 

 衝撃的な事実だった。ここに来て、敵の親玉が姿を現わすとは。完全に予想外である。

 

 それに、状況はお世辞にも良くない。

 

 今現在、誰がどこにいるかは判らないが、この時の為に味方が固まって行動しているとは思えない。

 

 つまり、ジーサードはまたしても、こちらがバラバラになっているところを見計らって、東京に攻め込んで来たという事になる。

 

《場所は品川火力発電所の東南東。既に星伽さんとジャンヌが先行して現場に向かっている》

「判りました。私達もすぐに行きます。現場で落ちあいましょう」

《いや、ダメだ。そっちには陣と高梨さんを向かわせたから、彼女達と一緒に向かって。僕はバイクで行くけど、途中で合流して一緒に現場に向かおうッ》

 

 この時、友哉が危惧したのは、結果として戦力の逐次投入になってしまう事だった。

 

 ただでさえ味方がバラバラの状態である。そこに来て、移動もバラバラに行ったのでは、各個撃破の好餌となってしまう。

 

 相手はバスカービル女子を1人で全滅に追い込んだジーフォース、かなめよりも更に強いのだ。ここは、悠長に見えても、全員合流してから現場に向かった方が、リスクは少ないと判断したのだ。

 

 茉莉は電話を切り、瑠香に向き直る。

 

「茉莉ちゃん・・・・・・・・・・・・」

「瑠香さん、さっきのお話は、また後にしましょう」

 

 宙ぶらりんになってしまった事への苛立ちはあるが、今はそれどころでは無い。

 

 既に、戦いは始まっているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 年末恒例、予算使い切りを目指した道路工事ラッシュがそこかしこで行われている中を駆け抜けるのは骨が折れた。

 

 友哉が運転するバイクと、赤色灯を点けた彩夏のフェラーリが戦場に到着した時、既に戦闘は始まっていた。

 

 この角度から戦場の様子は見えないが、先程から絶えず轟音が鳴り響いていた。

 

「急ごうッ」

 

 弾かれたように駆けだす5人。

 

 だが、すぐに一同は足を止める事になった。

 

 煙突に寄りかかるようにして、白雪、ジャンヌ、理子が気を失って座り込んでいたのだから。

 

 やはり、と友哉は臍を咬む。

 

 奇襲を食らい師団陣営は各個撃破されている。恐れていた事が現実になっていた。

 

 相手は未知の力を持つ人工天才(ジニオン)。本来なら、全戦力を結集して当たるべきだったのに。

 

 倒れている3人の傍らに、もう1人、無傷で立っている少女がいる。

 

 その姿を見て友哉と、そして瑠香は一瞬ギョッとした。

 

 漆黒のゴシックロリータ調ドレスに、長い金髪をツインテールにした髪型。西洋風の整った顔立ちと、趣味の悪い扇子。

 

 見間違える筈も無い。先月、スカイツリーで戦った《紫電の魔女》ヒルダが、そこにいた。

 

「遅かったわね、お前達。高貴なる竜悴公姫(ドラキュリア)に、このような雑用をさせるとは、恥を知りなさい」

 

 言い方は相変わらず高圧的。

 

 だが、先月の戦いで敗れたヒルダは、規約に従い今は師団陣営に属している事になっている。

 

「えっと、つまり、ヒルダがみんなを助けてくれたの?」

「当然でしょう。私に掛かれば、このような些事、牙を研ぐよりも簡単な事よ」

 

 「本当は理子だけを助けたかったんだけど・・・・・・」と小さくヒルダが呟いた言葉は、幸いな事に友哉達の耳には聞こえていなかった。

 

 その間にも、死角となっている戦場では轟音が響いている。

 

 こうして3人が敗れた後も、誰かがまだ戦っているのだ。

 

「急ごう、みんな」

 

 言ってから、友哉はもう一度ヒルダに向き直る。

 

「ヒルダ、悪いんだけど、もうすぐキンジ達が来ると思う。それまで、3人の事を見ていてあげて」

「ふ、フンッ 仕方ないわね。この私に願い事など、本来なら下賤の身では許されない事なのよ」

 

 言っている事は高圧的だが、拒否するそぶりは見られない。加えて言えば、その頬は若干赤くなっていた。

 

「ありがとう、お願いね!!」

 

 言い置くと、再び駆けだす。

 

「おい友哉、お前、友達は選んだ方が良いぜ」

「いや、まあ、彼女はきっと良い娘だと思うよ・・・・・・多分?」

 

 最後が疑問文になりつつ、ようやく戦場に辿り着いた。

 

 そこで、思わず一同は目を見張る。

 

 戦っていたのは、アリアである。

 

 だが彼女は、普段から履いている防弾スカートの上から、何やら外付けのブースターのような物を腰に装着し、そこから炎を噴射しつつ、戦闘ヘリのようにホバリングしながら、両手のガバメントで攻撃していた。

 

 そして、アリアが戦っている相手は、

 

「か、かなめちゃん・・・・・・」

 

 友人の瑠香が、呆然と呟く視線の先で、

 

 かなめ事ジーフォースが、恐らく先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)の一種と思われる刀剣を振りまわし、アリアの攻撃を凌いでいるのが見える。

 

 空中から攻撃するアリアに対し、近接武装がメインのかなめは防戦一方に近い。

 

 しかし、恐らく武偵弾と思われるアリアの猛攻撃を刀だけで防いでいる辺り、かなめも一筋縄ではいかない事が窺える。

 

 手にした二振りの剣。

 

 映画スターウォーズで、ジェダイの騎士が使っていたライトセーバーに似た光剣を用い、怒涛のように迫る弾丸を弾きながら、反撃の機を覗っている。

 

 最早疑い無い。

 

 かなめはジーサードの側についたのだ。

 

 キンジのロメオが功を奏した、訳でもないのだろうが、ここ数日、友哉の目から見ても、かなめはイクスやバスカービルのメンバー達と打ち解けていた。

 

 友達として、そして仲間として、

 

 誰もがかなめの存在を受け入れ、そしてかなめもまた、皆と良い関係を築こうと頑張っていた。

 

 それら全てを台無しにする光景が、今、目の前で繰り広げられていた。

 

「・・・・・・迷っている暇は、無い」

 

 友哉もまた、苦しげな口調で絞り出す。

 

 かなめの事は確かに残念に思う。

 

 が、しかし、ここは既に戦場で、戦端も開かれている。この場で拘泥している事に、一切の意味は無かった。

 

 視線の向ける先。

 

 そこには、漆黒のアンダースーツと、プロテクターを身に着け、手には近未来的なデザインの鞘に収めた日本刀を持つ、エムアインスの姿がある。

 

 そして、更にその視線の先には、

 

 ジーサードが佇んでいる。

 

 顔にはいかめしいペインティングを施し、目はサングラスのようなヘッド・マウント・ディスプレイを掛けている。羽織っているコートはプロテクターと一体になっているデザインらしく、派手派手しい金の装飾が施されている。

 

 如何なる手品なのかは知らないが、ジーサードは海の上に立っているように見える。

 

「どうやら、お前に客のようだぜ、アインス」

「の、ようだ」

 

 余裕の態度を崩さない2人。

 

 そしてもう1人、

 

 クレーンの上に腰掛けている人物を見て、友哉は思わず呻いた。

 

「金一さん・・・・・・いや、カナさん・・・・・・」

 

 灰色のロングコートに、編み上げブーツ姿のカナ、キンジの兄である遠山金一が、戦いを見守るようにして眺めている。

 

 カナはこの戦いに参加する気はないのか、イクスメンバーが来ても一瞥をくれるだけで、何もして来る気配が無い。

 

 一方のエムアインスは、既に刀を持ち上げていつでも抜けるように身構えている。

 

 戦いは尚も、拮抗した状態のまま続いている。

 

 かなめは各種、先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)の刀剣を巧みに操り、Sランク武偵を相手に互角の戦いを演じている。

 

 今回は、アリアも周到に準備して来たであろう事は見れば判るが、アリアのあのジェット噴射装置は、小柄な彼女の体に合わせてあまり大きな物では無い。当然、搭載燃料も多くはないだろう。もし燃料が切れたら、アリアも空中戦と言うアドバンテージを失って地上に降りざるを得ない。そうなると、形成は一気に不利になるだろう。

 

「仕方が無い」

 

 友哉は決断を下した。

 

 本当は、キンジが合流するまで待ちたかったのだが、最早それを待っている余裕も無い。

 

 この場にいる人間だけで、戦いに介入するしかない。

 

「茉莉、陣、瑠香、高梨さん」

 

 4人それぞれに視線を送ってから、友哉は自分の考えを話す。

 

「みんなはエムアインスを攻撃して」

「良いけど友哉、あんたはどうすんのよ?」

「僕は・・・・・・」

 

 尋ねる彩夏に対し、友哉は首を巡らして視線を向ける。

 

「ジーサードを、討つ」

 

 一方、対するジーサードとエムアインスも、イクスメンバーに戦機が上がるのを感じていた。

 

「来るぞ」

「ああ、任せろ」

 

 そう言って、エムアインスが前に出ようとした瞬間、

 

 弾丸すら凌駕する速度で、茉莉が斬り込んで来た。

 

「ッ!?」

 

 とっさに抜刀、同時に払いのけるように刀を振るうエムアインス。

 

 その一撃と、茉莉の攻撃が擦れ合って火花を散らす。

 

 先制の一撃。

 

 しかし、これが防がれるのは予想済み。

 

 要するに、他の3人が攻撃位置につく、一瞬の間を稼ぐ事が目的なのだ。

 

「行くぜ、おらァァァァァァッ!!」

 

 突進と同時に、拳を振り上げる陣。

 

 その拳を、

 

 エムアインスはとっさに飛び上がって回避する。

 

 そこへ今度は、フルオートの弾丸が襲い掛かる。

 

 エムアインスの動きを先読みした瑠香が、空中にばらまくようにイングラムM10をフルオートで放ったのだ。

 

 流石に空中にあっては、回避は難しい。

 

 瑠香が放った弾丸が数発、エムアインスを直撃する。

 

 しかし、エムアインスに怯んだ様子はない。弾丸は全て、プロテクターに当たって弾かれてしまったのだ。

 

 着地するエムアインス。

 

 その足元に、

 

 数本のナイフが突き刺さった。

 

 次の瞬間、そのナイフが一斉に爆発した。内部に爆薬が仕込まれていたのだ。

 

 身を翻し、爆発の圏外へと逃れるエムアインス。

 

「逃がさないわよ!!」

 

 その回避位置を見据え、彩夏はワルサーPPKを放つ。

 

 それらの弾丸を、刀で弾くエムアインス。

 

「クッ」

 

 舌を打つ彩夏。

 

 放った弾丸は、ただの一発も命中する事無く、虚しく明後日の方向へと弾かれる。

 

 やはり飛天御剣流特有の先読みができるエムアインスを相手に、並みの射撃は意味を成さないようだ。

 

 反撃に転じようと、刀を持ち上げるエムアインス。

 

 そこへ、

 

 茉莉が再び斬り込む。

 

 それを、刀で受けるエムアインス。

 

「やらせません」

 

 鋭く細めた瞳で、茉莉はエムアインスに冷たく言い放った。

 

 その様子を、ジーサードは舌打ちしながら眺めている。

 

「・・・・・・流石に、あのレベル4人が相手じゃ、アインスでも苦戦は免れんか」

 

 エムアインスの実力はジーサードが誰よりも知っているが、だからこそ、彼ですら苦戦を免れ得ない状況に苛立っていた。

 

 目を転じれば、かなめ、ジーフォースの方も、アリア相手にてこずっているのが見える。こちらは、何か迷いを抱えて戦っているようにも見える。

 

「フォース、やはりお前は・・・・・・」

 

 苛立ち紛れに、そう言った時だった。

 

 すぐ傍らで、ザッと床を踏むような音が聞こえた。

 

「へえ、見えないけど、何か床みたいなものがあるんだね」

 

 友哉は見えない足元を確かめながら、感心したように言う。

 

 かなめは白雪達と交戦中、カナは傍観を決め込んでおり、エムアインスは予定通り茉莉達が抑え込んでいる。

 

 その間に友哉は、大将首を狙って来たのだ。 

 

 対してジーサードは振り返らず、目線だけ友哉に送って来る。

 

「・・・・・・仲間を捨て石にして、俺の首を獲りに来たか、緋村?」

「捨て石じゃないよ」

 

 低い声で、友哉は否定の言葉を投げる。

 

「この場に集まった僕の仲間全員、捨て石のつもりで立っている者は誰1人として存在しない」

「・・・・・・・・・・・・」

「信頼して、背中を任せる。それが仲間ってものでしょ」

 

 言いながら、抜き放った刀の切っ先をジーサードへと向ける。

 

 真っ直ぐに向けられる友哉の視線を受け、

 

 ジーサードはペインティングされた口元を歪める形で、笑みを向けた。

 

「良いだろう。どの道、まだ少し時間があるからな」

 

 そう言うと、両手を拳に握り、掲げるように構えて見せる。

 

「来いよ。遊んでやるぜ」

 

 言った瞬間、

 

 友哉とジーサード、

 

 両者は同時に、見えない床を蹴って疾走した。

 

 

 

 

 

 甘かったかもしれない。

 

 茉莉はエムアインスの間合いへ高速で斬り込みを掛けながら、内心でそう考える。

 

 茉莉、陣、瑠香、彩夏の4人でエムアインスを足止めし、その間に友哉がジーサードを討ち取る。

 

 作戦としては悪くない。

 

 大将首を狙うのは最も効率の良い戦法であるし、うまくいけばその時点で戦闘終了も見込める。少なくとも、かなめを解放する事はできると考えられた。

 

 だが、対峙した瞬間、エムアインスの圧倒的な戦闘力の前に、イクスのメンバーは自分達の考えが甘かった事を思い知らされた。

 

 状況は4対1。

 

 イクスが圧倒的に有利である筈。

 

 で、あるのに、エムアインスの戦闘力を前に、辛うじて拮抗している状態であった。

 

「ハァッ!!」

 

 茉莉は踏み込みと同時に、刀を横薙ぎに振りかざし斬り込む。

 

 神速の接近からの攻撃。

 

 通常なら相手は、まともに受ける事もできずにいるはずだが、

 

 エムアインスは、その攻撃に反応して見せた。

 

 体を捩じるように回転させながら、鋭く遠心力の乗った一撃を繰り出す。

 

「飛天御剣流、龍巻閃!!」

 

 風を巻いて、旋回する剣。

 

 しかし、その刃が茉莉に届く寸前、大柄な影が割り込むような形で、エムアインスの刀を防いだ。

 

「やらせねェぜ!!」

 

 陣は両腕を交差させるようにして構え、エムアインスの攻撃を防ぎ切った。

 

 だが、その衝撃までは殺しきれず、陣の巨体は地面に両足を付けたまま、僅かに後退してしまう。

 

「正面は俺が防ぐッ お前等はその隙に攻撃しろ!!」

「了解ッ」

「判ったわ!!」

 

 瑠香と彩夏が、それぞれ銃を手に駆ける。

 

 それに続くように、茉莉もまた刀を手に斬り込んで行く。

 

 だが、陣の拳も、茉莉の刀も、瑠香と彩夏の弾丸も、

 

 エムアインスの姿を捉える事は無い。

 

 その前にエムアインスは、天空高く跳躍して刀を掲げる。

 

「飛天御剣流、龍槌閃!!」

 

 一撃。

 

 陣はとっさに両手を頭上で交差させて防ぐ。

 

 打たれ強さには定評のある陣。

 

 その陣が、

 

「うぐッ!?」

 

 思わず、呻き声を発して膝を撓める。

 

 防御の上からでも、押し潰されそうになる威力。

 

 それほどまでにエムアインスの攻撃は強烈だった

 

 しかし、

 

「まだまだァ!!」

 

 己を鼓舞するように叫び、陣は立ち上がる。

 

 自分はイクスの盾。自分が倒れる時はイクスが倒れる時である。

 

 それが判っているからこそ、陣は例え己の限界を越えたとしても倒れない。

 

 不器用な長兄役を担う少年は、大切な弟や妹達を守る為に、再び強大な敵へと殴り込んで行った。

 

 

 

 

 

 白銀の剣閃と、漆黒の拳撃が唸りを上げて交錯する。

 

 友哉とジーサードは、不可視の足元を頼りにしながら、互いに刀と拳で応酬を繰り返す。

 

 風を巻いて迫って来るジーサードの右フックを、友哉は体を低くして回避する。

 

 大気すら粉砕する程の拳は、下手な迫撃砲よりも高い威力が込められている。

 

「ハッ!!」

 

 返礼代わりに、友哉は刀を横薙ぎに繰り出す。

 

 無理な体勢からの一撃であったが、それでも充分に速度の乗った一撃。

 

 しかし、

 

「甘いぜッ!!」

 

 ジーサードは、その一撃をあっさりと拳で防いで見せた。

 

 速度はほぼ友哉と同程度。僅かに友哉の方が優速であるが、それで有利と呼べるほどの物では無い。

 

 そして、力は明らかにジーサードの方が上。

 

 総じて戦えば、ジーサードの方が実力的には上である。

 

 友哉はとっさに後退し、間合いを取って着地する。

 

 対してジーサードは追撃を掛けて来ない。

 

 両腕を下げ、自然体のまま、友哉が体勢を立て直すのを待っている。

 

「一つ、忠告しといてやる。そこから後には下がらない方が良いぜ。落ちるからな」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 友哉は構えを解かず、視線だけでチラッと足元を見る。

 

 つまり、ここから後が、見えない境界線と言う事らしい。

 

 これまで戦った範囲を考えれば、それなりの広さを持った空間らしい事が判る。

 

「着眼点は悪くねェ」

 

 攻撃してくる事もせず、ジーサードは友哉に対して語り始める。

 

「アインスを足止めして俺の首を狙って来た戦術も、それを支える実力も大したもんだ。流石はイレギュラーってところだな。俺が師団(ディーン)の連中の中で、キンジ以外に警戒しなきゃなんねえのが、多分お前なんだろうよ」

 

 かつて友哉が、シャーロックにも言われた事である。

 

 イレギュラー。

 

 彼の名探偵をして、排除不能とまで言わしめた不確定要素。

 

 故にこそ、他者を圧倒する事も、虚を突く事も可能となる。

 

「だが、俺を倒すには、少しばかり足りなかったな」

 

 ジーサードが、そう言った時だった。

 

「アリアッ かなめ!!」

 

 鋭い叫びが、戦場に木霊する。

 

 振り返れば、ようやく追いついて来たキンジが姿を現わしていた。

 

 キンジは素早く周囲の状況を確認し、膝を突いているアリアの元へ駆け寄った。

 

 アリアは既に、ジェット噴射の燃料が無くなり地上に降りていた。武偵弾も尽きたのか、手には何も持っていない。

 

「アリア、大丈夫か!?」

「ま、まだやれるわ・・・・・・」

 

 言いながら2人の視線は、刀を手に立ち尽くしているかなめに向けられた。

 

 対してかなめは無言。ただ、視線だけを悲しげに俯けている。

 

 そんなかなめから、キンジは振り仰ぐようにして視線を移した。

 

「カナ、何でそんな所にいるんだ!? 降りて来て、一緒に戦ってくれ!!」

 

 カナが共に戦ってくれれば、この戦いは勝てるだろう。

 

 何しろかつて、友哉、アリア、陣の3人が束になって掛っても敵わなかったのだから。

 

 だが、

 

「キンジ、私は極東戦役の戦いの一つを見に来ただけよ。それに、私は《無所属》。誰とも戦う義理はないわ」

 

 ここまで全く手出ししなかった時点である程度予測はできていたが、カナの返事は素っ気なかった。

 

 ただ、静謐とも言える美貌の瞳を、一同に向けている。

 

「でも、ジーサード。あなたはバスカービルと敵対した。戦役に参加し敗北した者は、死ぬか、敵の配下になる。それが今日、私がここに来た条件でもあるわ」

「構わねえさ。ハハッ とうとうこれで、『Gの血族』が揃ったな!!」

 

 嬉しそうに笑うジーサード。

 

 Gの血族とは一体、何なのか?

 

 だが、友哉の思考は、そこから先に続かなかった。

 

 轟音が鳴り響き、友哉は振り返る。

 

 その視線の先には、蹲るようにして地面に倒れる陣の姿があった。

 

 更に、

 

 掲げたエムアインスの腕は、瑠香の喉を掴んで高々と持ち上げていた。

 

「瑠香ッ 陣ッ!!」

 

 目を剥く友哉。

 

 見た限り、エムアインスは傷らしい傷を負っていない。茉莉、陣、瑠香、彩夏の4人を敵に回して、無傷を保っているのだ。

 

「どうやら、向こうもそろそろ終わりみてェだな」

 

 ジーサードが言った瞬間、

 

 視界の端で小柄な影が奔った。

 

「瑠香を放しなさい!!」

 

 彩夏はワルサーに残っていた最後の弾丸を放つと、そのまま接近戦に持ち込むべく、殴りかかる。

 

 徒手格闘においても高い技量を誇る彩夏なら、銃無しでもエムアインスと互角に戦える。

 

 そう思った瞬間、

 

 エムアインスは、掴んでいた瑠香の体を振り払うようにして、向かって来た彩夏に投げつけた。

 

「グフッ!?」

 

 2人の少女は、もつれ合うようにして吹き飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられて動けなくなる。

 

 次の瞬間、

 

「おっらァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 蹲っていた陣が、立ち上がると同時に拳を握り、殴りかかった。

 

 虚を突かれた一瞬、

 

 刹那の間に放つ2連撃が、エムアインスの胸に突き刺さった。

 

「グッ!?」

 

 この攻撃には、流石のエムアインスも思わずよろける。

 

 同時に、胸部のプロテクターが、音を上げて砕け散った。

 

「へへッ・・・・・・最後の、意地って奴だよ」

 

 言いながら、陣の体は前のめりに倒れる。

 

 最後の力を振り絞っての二重の極みは、確かにエムアインスの一矢報いたのだ。

 

「・・・・・・後は、頼むぜ」

 

 その言葉を最後に、陣の体は地面に沈む。

 

 陣が執念で斬り開いた勝利への道を、

 

 韋駄天の少女が、駆け抜ける。

 

 一瞬で、

 

 茉莉はエムアインスの前へと躍り出た。

 

 縮地を全開にしての、神速の接近。

 

 これにはエムアインスも、とっさの反応が遅れる。

 

 陣が、瑠香が、彩夏が、そして友哉が、茉莉の剣に思いを託す。

 

「やァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 振り下ろされる剣閃。

 

 奔る銀の刃は、

 

 しかし、僅かにエムアインスの胸元を切り裂くに留まった。

 

 茉莉の刀が届く一瞬前、エムアインスは体をのけぞらせるようにして、彼女の攻撃を回避したのだ。

 

「クッ!!」

 

 攻撃失敗に、茉莉は舌打ちしながら更に攻撃を仕掛けようとする。

 

 だが、

 

 バキィッ

 

 それよりも一瞬速く、エムアインスは茉莉の体を蹴り飛ばした。

 

「あぐっ!?」

 

 短い悲鳴と共に、地面を転がる茉莉。手にした菊一文字も弾き飛ばされ、そのまま仰向けの状態で倒れ込む。

 

「茉莉ッ!!」

 

 友哉が呼びかけても、茉莉が立ち上がる気配はない。

 

 茉莉だけでは無い。イクスのメンバー達が、皆、傷付き、地面に倒れ伏している。

 

 エムアインスは、ただ1人で、イクスを壊滅させてしまったのだ。

 

「これで終わりか、随分と呆気なかったな」

 

 侮蔑の混じったジーサードの声を、友哉は聞いていない。

 

 その視線は、倒れている仲間達に注がれている。

 

 瑠香が、

 

 彩夏が、

 

 陣が、

 

 そして茉莉が、

 

 友哉の大切な仲間達。

 

 その仲間達を・・・・・・

 

 あいつが・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳴り響いた鼓動は、三度。

 

 その三度の内に、

 

 友哉は、己の中で、何かが切り替わるのを感じた。

 

 対して、イクスを壊滅させたエムアインスは、刀を手に悠然と友哉の方に振り返る。

 

「後はお前だけだ、緋村」

 

 言った瞬間、

 

 その場に存在するあらゆる物を凌駕し、

 

 刹那の間すら超越し、

 

 友哉はエムアインスに斬りかかった。

 

 ガキンッ

 

「うッ!?」

 

 とっさに刀で受ける事には成功したものの、大きく後退を余儀なくされるエムアインス。

 

 対して友哉は、エムアインスに斬りかかった姿勢のまま、立ち尽くしている。

 

「緋村、お前は・・・・・・・・・・・・」

 

 あまりに静かな態度。

 

 そこに込められた意味は、ただ激発を待つまでの、一瞬の静寂であるにすぎない。

 

 ゆっくりと、顔を上げる友哉。

 

 ギンッ

 

 それだけで、場の空気が一斉に凍りつく。

 

 凄惨と言う言葉すら、生ぬるい程の殺気。

 

「エムアインス・・・・・・」

 

 低い言葉は、ただそれだけに、凍りついた空間を更に凍てつかせる。

 

「貴様は、『俺』が殺す」

 

 友哉は己の内にある凶暴性を、余すことなく解放して、その場に存在していた。

 

 

 

 

 

第8話「一人は皆の為に・・・・・・」     終わり

 


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