魔法少女リリカルなのはA’s ~幼き賢者と魔法~   作:金髪のグゥレイトゥ!

2 / 6
物書きになれていない頃だったからか文章がおかしい;
修正するのにかなり時間がかかりました…。


第二話「迷子の次は戦闘なの」

 

――――11月30日 PM4:30

  海鳴市・・・の何所か

 

 

 

道に迷った私はこの場に留まっていても仕方がないので移動することにした。駅にたどり着くことさえできれば何とかなるだろう。一応万が一迷った場合の事も考えて地図は渡されていることだし。

 

海がこっちの方角にあるのなら駅はこっちに方角かしら?

 

地図広げて自分の位置を整理してみる。学校の近くにいるはずだからそこを基準にしようとしたけどふとある事に気が付く。

 

…くっ!?学校から離れすぎた!?ここからじゃ学校も見えないじゃない!?

 

自分の間抜けさにほとほと嫌気が差す。道を尋ねようにも人は通らないし交番も見当たらない。まさにお手上げ状態だ。

 

「・・・・移動する。まずはそこからね」

 

陽が少しずつ落ち始め辺りがだんだん暗くなってくる。急がなければ夜になってしまう。帰りが遅くなればあの両親のことだ、警察に通報しかねない。

私はほぼ勘で駅があると思われる方向に歩き始める。歩いていれば人に会うでしょ。

 

……1時間経過。

 

「…これは何て運命のいたずら?」

 

かれこれ1時間は歩いているのに人っ子一人見つからない。

もうすっかり辺りは真っ暗だ。これは真剣に大変な状況なのかもしれない。いや、かもしれないじゃなく大変な状況なのだけど…。

 

「…完全に日が暮れたわ」

 

…さて、どうしようかしら?携帯なんて持ってないわよ私?

 

あんなもの必要無いし、第一掛ける相手もいない。

 

「…はぁ~」

 

私は大きな溜息を吐いて辺りを見回す。辺りは真っ暗。しかも見知らぬ土地。さて、どうしたものか…。

 

ザッ…ザザザザッ――――ッ!!!

 

「っ!?」

 

ノイズの様な不快な音と共に、辺り一帯の雰囲気が変わる。まるで、この辺りだけ世界から外されたような…そんな感じがした。

 

(何…この感じ?)

 

身体に纏わりつくこの不快感。まるで誰かにこうそくされている様な不愉快極まりないこの束縛感。今まで生きていて感じたことの無いこの感覚。

 

…いいえ、私は知っている。

 

感じたことの無い感覚?いや、それは嘘だ。ある。この感覚に似たようなモノに遭遇したことが一度だけある。私は然りと覚えている。

忘れもしない。忘れられる訳が無い。その記憶は私の脳髄に魂に刻み込まれている。それは全てが奪われた忌々しいあの運命の日…。あの『本』を開いてしまった過ちの日…。

ロストロギア『摂理の書』。遥か昔から持ち主の知識を喰らい続け、持ち主を変えては今もなお知識を蓄え続ける呪われた魔導書。それに触れた時と少々感覚は異なるがそれに似た感覚だった。つまりこれは魔法と呼ばれるものなのだろう。

一体自分の身に何が起ころうとしているのかは分からないが、今言えることはこの状況は尋常じゃないということだけ。私は目を瞑り意識を集中し、足元に黒い魔法陣が出現する。

 

私の能力『知識の貯蔵庫』。

 

人間の脳の記憶容量には限界がある。その容量の限界を無視して記憶しようとすれば、脳はオーバーヒートしてしまい人は廃人と化し二度と戻ることはない。『摂理の書』が刻み込んでくる莫大な量の知識。三年前、私は自分が壊れることを防ぐために目覚めた能力。それがこの『知識の貯蔵庫』だ。

知識の貯蔵庫と言うのは、仮想記憶領域を構築し不要な知識をそこに封印するというものだ。封印された知識は私の意志で自由に出し入れできる。イメージは私の中に巨大な図書館があり、そのすべての書物をデータベースで管理していると考えて貰えれば良い。

 

「―――アクセス。該当データ…一件」

 

私は検索をすると脳裏にある知識が引き出される。

 

「これが…結界?」

 

『結界』。魔法の一つで、人を寄せ付けなくしたり、人の出入りを制限する魔法…か。

 

「この世界は魔法とは一切無縁だと思っていたのだけれど・・・」

 

…いえ、それを私が言うべきじゃないわね。私も、魔法に関わっているのだから。

 

さて、こういう時こそ冷静にならなければいけない。此処は、もう先ほどの平穏な日常とは別の場所なのだから。冷静さを失くせば死に繋がる。

 

結界を展開した人の目的は分からないけど、私にとってあまり良い事ではなさそうね…。

 

「知識はあっても、戦闘経験は皆無なのだけど・・・」

 

そもそも私が狙われる理由なんて…まさか、時空管理局?それなら納得できる。それとも『摂理の書』を狙う別の誰か…でも、どうやって私が『摂理の書』の所有者だってわかったの?

 

摂理の書は私のリンカーコアと融合している。知るためには精密な検査が必要になってくる。それに、そんな検査をした覚えは私には無い。入院していた病院だって普通の病院だ。魔法関連の検査なんて出来る訳がない。

 

となると。『摂理の書』が目的じゃない。じゃあ、何?―――っ!?

 

私は思考を巡らせていると、頭上から高速で接近する強力な魔力を感知する。咄嗟に私は魔力を感じた方向に手を翳し障壁を張る。

 

ズドォォォォンッ!!

 

間一髪。障壁を張ると同時に大きな爆音が衝撃が私を襲った。

 

「…っ!」

 

シールドに何かが衝突し激しくぶつかり合う。その強い衝撃は私にも伝わって吹き飛ばされるそうになるが、足を踏ん張り何とか耐え抜く。

 

「…ふぅ」

 

深い安堵のため息を零す。急なことで驚いたけどなんとかなった。用心して防壁魔法の知識を引き出しといて正解だった。もし知識を引き出していなければ今頃ボロボロになってそこら辺に転がっていたかもしれない…。

 

それにしても…。

 

これが実戦。想像していたのとは全然違う。知識はある。でも、見るのと実際にやるのとではまったく別ものだ。

 

叩かれる程度なら無視するけど…命を狙われた以上、黙ってられないわ。

 

私はさっき攻撃が飛んできた方を睨みつける。その視線の先には紅いドレスのバリアジャケットを身に纏った少女が空中に浮いて私を睨んでいた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――side???

11月30日 PM4:30

海鳴市上空

 

 

 

 

街灯が星のように輝いている夜の街。アタシはその空の上で冷たい冬の風に吹かれ、バリアジャケットのスカートを靡かせる。アタシはただ黙って目を瞑り神経を集中させて魔力反応を探る。

 

「ヴィータ、見つかったか?」

 

ザフィーラがアタシに訊ねる。

 

「…いや、見つからねぇ」

 

ここ最近出てくる強大な魔力反応。あれが見つけることが出来れば二、三十ページは稼げるのに…。アタシ達を探ってる管理局の奴らは殆どが下っ端の雑魚ばかりであれじゃあんま足しにならねぇ。

 

「…でも」

「どうした?」

 

目的のとは別の魔力反応だ。この魔力初めて感じたタイプだ。しかも、これは…。

 

「でけぇ魔力を感じる。こんなの昨日まで無かったのに」

「…管理局か?」

 

アタシは分からないと首を左右に振る。遂に管理局がアタシ達の討伐に本腰を入れて主力を投入してきたのかもしれない。しかし、それがどうしたって言うんだ。

 

「かもしれねぇ。どっちにしろ、やることは変わらねぇさ。」

 

そう、変わらない。はやてを助けるために、アタシは…。

 

「アタシだけで行くからザフィーラは例の奴の探索をお願い」

 

二手に別れて採取した方が効率がいい。どっちも魔力を手に入れられればかなりのページ数が稼げる。

 

「ひとりで大丈夫なのか?」

「問題ねぇよ」

「わかった。闇の書はお前が持っていろ。油断するなよ、ヴィータ」

「わかってる。じゃあ、また後で合流しよう。」

「了解した」

 

アタシはザフィーラが去った事を確認するとグラーフアイゼンを正面に構える。

 

「封鎖領域…展開」

 

結界を展開し終えると。アタシは魔力反応が方へと飛ぶ。

 

…絶対に逃さねぇ!

 

段々、魔力反応がでかくなってきている。この魔力の持ち主はこの近くにいるのは間違いない。

アタシは飛びながら辺りを見回す。

 

どこだ?どこにいる!?

 

「…っ!?」

 

視界に少女を捉えた。魔力の発生源はあいつに違いない。

 

管理局の服じゃない。…民間人か!

 

何が起こっているのか分からずに戸惑った様子できょろきょろと辺りを見る少女。明らかに素人。魔法とは関わりの無い一般人と見て間違いない。

 

わりぃな。お前に恨みは無いけど潰させて貰う!

 

幾ら一般人といえどあれだけの魔力だ。何かが起こらないとも限らない。可能性は0でももしかしたら襲われた拍子でレアスキルに目覚めてしまうかもしれない。最初から全力で、一撃で終わらせる。非殺傷設定での攻撃だ。死にはしないだろう。最悪、シャマルに治療させればいい。

アタシは鉄球を生成するとグラーフアイゼンを大きく振りかぶり…。

 

「見つけ……ったああああああ!!!!!!」

 

『Sperber Fliegen』

 

少女に向かって全力で鉄球を打ち飛ばした。

打ち出された鉄球は一直線に標的の少女へと飛んでいく。直撃コース。魔法も知らない素人にこれを防ぐ術は無い。アタシは勝利を確信した。

―――しかし、驚くべきことが起こった。

 

ズドオオオオンッ!

 

直撃した。そう思ったその瞬間、なんと一般人だと思っていたあの少女は咄嗟に防御障壁を展開してアタシの攻撃を防ぎきったのだ。

 

「そんな!完全に防いだ!?手加減抜きで撃ったのに!?」

 

そう、手加減は一切していない。第一、あんなバカでかい魔力の持ち主に手加減するほど自惚れてはいない。

 

コイツ…何もんだ?

 

アタシは少女を睨みつける。少女は傷ひとつ無く少女もアタシを睨みつけていた…。

 

 

 

 

 

――――side Yomi Kudou

 

 

私は紅いドレスの少女を睨みつける。さっきの攻撃はこの子がやったようね…。

私はもう一度、彼女の服装を確かめる。

 

ゴ、ゴスロリのドレス?とても悪モノってイメージじゃないけど。というか戦闘服なのこれ?とてもそうには思えない。と言うかひらひらし過ぎて動きづらいだろうあの恰好は。

 

「…何が目的?」

 

一応目的を聞いてみる。これでも普通の人生を歩んできたつもりだ。摂理の書のことを除けばだけど…。

 

「………」

 

返答なし。期待はしてはいなかったけど…。

 

「うおおおおおおおおお!!!!」

「…っ!?」

 

ゴスロリ少女は鉄鎚のようなデバイスを振り回し私に襲いかかってくる。

 

ガキィィィンッ!

 

私はさっき同様に障壁を展開して攻撃を防ぐ。でも、先ほどより威力が高い。気を抜けば障壁もろとも吹き飛ばされる。

 

「…っ!」

「くっ!…硬てぇ!」

 

ゴスロリ少女は一旦距離を離し再び攻撃態勢に移る。

私は障壁を展開しながら考えを整理する。彼女の目的。一番の可能性は「摂理の書」なのだけど…。これさえあれば失われた次元の知識が手に入れることができる。と言っても、常人では廃人になるだけだ。あれがロストロギアを封印するのが目的の管理局の人間なら分かる。しかしそれは無いだろう。この強盗まがいのやり方はとても法の番人を気取る連中のやり方とは思えない。

 

「せいっ!」

 

ガンッ!

 

それとも、私の命…ってことは無いわね。私、人に恨まれることは…いっぱいしたかもしれないけれど、命を狙われることまではしてないわよ?ましてや魔法関連、魔導師との接触なんて今日が初めてだ。

 

「てぇりゃああああああああ!!!!」

 

ガァンッ!!

 

…さっきからうるさいわね。今考え事しているんだから黙りなさいよ。

 

仕方なく戦闘に集中しようとゴスロリ少女に視線を向けると、ふとある物が視界に入る。ゴスロリ少女が持っている本だ。

 

普通の本じゃない。何か別の…。

 

あの本を私は見たことはない。実際に見たことはないけど…私は『知っている』。

 

「――――アクセス。該当データ…3件」

 

私は知識の貯蔵庫から知識を取り出す。出てきたキーワードは3件「ロストロギア」「闇の書」そして…。

 

「…の魔導書」

「あん!?」

 

気づいたら口に出していた。

そう、あの本の名前はロストロギア『夜天の魔導書』。本来は魔法を記録取るのが目的だったが、何者かが手を加え、リンカーコアを喰らうようになってしまった憐れな魔導書…。

 

…そう、そう言うこと。

 

私は全てを理解した。なら、彼女の目的は私のリンカーコアの収集…。

 

「この!いい加減吹き飛「なるほど…と言うことは。貴女、守護騎士…ヴォルケンリッターね?」っ!?」

 

ゴスロリ少女の顔が驚愕の表情を浮かべ後ろに飛び私から離れる。どうやら図星みたいね。

 

「てめぇ…何で知ってやがる!?」

「何でって言われても知ってるからとしか言いようがないわね。…それより一つ聞いていいかしら?」

「…何だよ」

 

何かを恐れる様に警戒したままゴスロリ少女はやっと私の言葉に応えた。

 

「駅ってどっちに行けば着くの?」

「…は?」

 

思いもよらぬ質問だったのか、ゴスロリ少女は間抜けな声を洩らして、やはりぽかーんと間抜けな表情を浮かべていた。

 

「だから駅。どっち?」

「あ、あっちだけど…」

「そう、ありがとう。じゃあ、失礼するわ」

 

私は礼を述べて駅の方へと歩いて行く。

 

ふぅ、やっと帰れるわね。はやく荷解きしないと…。

 

「ど、どこ行きやがる!?」

「駅。で、それから家に帰るのよ」

 

触らぬ神に祟り無しってね。こんなことで時間なんて潰してられないわ。そいう言うのは私抜きでして欲しいわねまったく…。

 

「逃がすと思ってんのか!?」

「貴方の主の餌になる気はないのよ」

 

人の欲によって歪められた存在。同情もする。憐れみもする。けれど、それとこれとは別の話。私に危害を加えると言うのなら、もはや周りの人間と同じで敵でしかない。

 

「くっ・・・・アイゼン!」

 

『Sperber Fliegen』

 

ゴスロリ少女は鉄球を生成する。

 

「最初のあれか…なら」

 

最初と同様に正面に障壁を展開しそれに備える。

 

「いけえええええええ!!!!」

 

鉄球が打ち飛ばされ高速で私に接近し障壁へと激突する。

しかし防げることは確認済み。

 

ズドォォォォンッ!!

 

鉄球は私に直撃することなく障壁により防がれる。

 

「…プログラム風情が。人間に刃向うんじゃないわよ」

「なん…だと!?」

 

ゴスロリ少女は『プログラム』という言葉に反応し、目の色を変える。その瞳には先程までの『敵意』とは違い、『殺意』が篭っていた。

 

「本当のことでしょ?プログラムで作られた人格に魔力で作られた肉体。仮初の命…どんなに人間ぶろうとそれが事実」

「てめええええええええええええ!!!!!!」

 

…怒らせてしまったみたいね。カルシウム足りてるのかしら?

 

如何やらこの言葉はタブーだったらしい。

 

「…乳酸菌とってる?」

「ふざっ…けんなあああああああああ!!!!」

 

ガコンッ! ガコンッ!

 

デバイスが音と立ててリロードすると同時に薬莢飛び出してくる。

魔力を爆発的に上昇させる「カートリッジシステム」か。流石、ベルカの騎士ってところかしら?でも、流石にさっきのようにはいかないわね。あれを喰らえば私の障壁ごと粉々にされてしまう……なら!

 

「―――アクセス!」

 

私は貯蔵庫から出来るだけの魔法関連の知識を掻き集めこの中で使えそうな魔法を選ぶ。

あんなのと真正面からぶつかるなんてまず私には無理。実戦経験もなければ武術の心得すら身に付けていない。でも…。

 

かく乱程度ならいけるはず。

 

肉弾戦が駄目なら頭脳戦、罠に嵌めてじわじわと魔力と削りとってやる。

 

フフフ…攻撃をするだけが戦いじゃないってことを教えてあげるわ。

 

ゴスロリ少女が一瞬で私との距離を詰めデバイスを振り下ろす。

 

ズガァァァンッ!!!!

 

「くっ!?やっぱり、さっきとは威力が段違い!?」

 

私は全力で障壁を展開する。しかし中央から少しずつ罅が入っていきそれがどんどん広がっていく。このままでは保たない。

 

…でも、それは予想範囲内。既に相手は私の術中にはまっている。

 

ズガァンッ!ズガァンッ!ズガァンッ!

 

ゴスロリ少女は執拗に何度も何度も障壁を殴打してくる。そして罅も殴られるたびに、ピシリピシリと音を立ててどんどん広がっていき限界点に達する。

 

バキィィンッ!!

 

「しまっ!?」

「吹き飛べえええええええ!!!!!」

 

障壁が粉々に砕かれる。私の顔は驚愕に染まり、ゴスロリ少女は勝利の確信し笑みを浮かべデバイスを振り上げる。

勝負あり。彼女の振り下ろしたデバイスは私を吹き飛ばす……はずだった。

 

パリィィィンッ…!

 

デバイスが私に触れると、私は砕け散り、硝子が割れたような音が辺りに響き渡る…。

 

「なっ…に!?」

 

本来あるはずの手応えが無かったため、ゴスロリ少女は勢いに逆らえずこけてしまう。

 

ズサァッ…!!

 

「……いってぇ」

 

『フフフフ…驚いた?』

 

「てめぇ!?どこいった!?」

 

『周りに居るじゃない…フフフッ』

 

「何…――――っ!?」

 

ゴスロリが辺りを見回すと30体以上の私が嘲笑うかのような表情を浮かべ、あちらこちらにゴスロリ少女を見下す形で立っていた。

 

『どこ見てるの?私はこっちよ?』

『そっちじゃないわ。私はここよ』

『違うわよ。本物は私よ。』

『フフフ…残念でした。そっちじゃないわよ』

『また間違い。そっちじゃないわよ?』

 

本物と全く変わらない姿をした私達が一斉にゴスロリ少女に挑発するように話しかける。少女はあまりの出来事に混乱してるようだ。

 

「な、・・・んだよ。これ!?」

 

『幻影魔法よ…そうね、【カレードスコープ】とでも名付けましょうか』

 

そう、幻影。貯蔵庫から引き出した魔法の知識の一つ。

 

「幻…影?でも、こんな数いっぺんに作れるわけ…」

 

『そう?でも私は出来てる。今の光景が何よりの証拠。』

 

と言っても、私自身成功するかどうか分からない博打のようなものだった。これは単なる子供騙し。しかも、魔力の消費も激しい。早く逃げる準備をしなければ…。

 

魔力の方はまだいける。今のうちに結界の解除を…。

 

「くっ!!…うおおおおおお!!!!」

 

ゴスロリ少女は最も近くにいた私をデバイスで殴りつけるが、さっきと同様、虚しく音をたてて砕け散るだけ。

 

『残念♪は・ず・れ♪』

 

「くっ!だったら全部ぶっ壊すまでだ!!!アイゼン!」

 

『Sperber Fliegen』

 

ゴスロリ少女は鉄球を生成すると当たり構わず我武者羅に打ちまくる。

ある物は鉄球に打ち抜かれ、またある物は着弾した爆風で吹き飛ばされ、少しずつだが着々と減らしていく…。

 

…愚かね。潰せば勝てると思っているの?

 

思考が単純すぎる。感情に流されて本来なら分かることですら分からなくなってしまっている。冷静さを失わなければ彼女が負けることは無いというのに…。

どれだけの時間が経ったのだろう?時間と言う概念が曖昧なこの結界の中ではやけに時間の流れが長く感じるあれだけあったフェイクは3分の2位破壊され、残ったフェイクは残り僅かとなっていた。

 

「はぁ…はぁ…どうだ!!」

 

『へぇ、すごいわね。でも残念』

 

パチンッ!

 

肩で息をする彼女の奮闘に私はぱちぱち手を叩いて讃えたの後、私は意地悪な笑みを浮かべて指を鳴らす。するとそれだけで破壊されたはずのフェイクが次々と生成され元の数に戻る。

 

『誰があれで終わりって言ったかしら?』

 

「そん…な…」

 

目の前の絶望的な光景にゴスロリ少女はガクリと崩れ落ちる。

 

…そろそろ魔力も使い果たしたようだし。逃げるには絶好のチャンスね。

 

『そろそろ時間切れのようね…術式解析完了。結界解除』

 

結界の術式は彼女が暴れている間に解析済み。と言っても貯蔵庫から引き出しただけだから苦ではなかったけど・・・・。

 

「結界が!?」

 

『じゃあ、お暇させてもらうわ』

 

本物の私を含める30体の私達の足元に魔法陣が出現する。先ほど引き出した魔法の一つ…。

 

「なっ!?転移魔法!?」

 

『フェイクはこの為でもあったのよ。30体のダミーの中から本物の私を追跡出来るかしら?』

 

「ちぃ!逃がさねぇ!!」

 

ゴスロリ少女は急いで鉄球を生成する…が間に合わない。

 

『残念……さようなら』

 

バシュンッ…。

 

私とダミーは跡形もなく消え去り、そこに残ったのは紅い少女と静寂のみだった。

 

ズドオオオオンッ!!!

 

少女はデバイスを地面に打ちつける。

 

「ちくっしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

勝負に負けた悔しさと、騎士の誇りを傷つけられた怒りを含んだ雄叫びが夜空に響き渡る…。

 

 

 

 

 

先ほどのゴスロリ少女を撒いた私は駅の近くの人気ない所に転移する。

 

…誰も。見てないわね。

 

ふぅ、と一息ついて駅に向かい。時計を見てみるともう7時過ぎだ。急がないと…。

 

 

急いでマンションに帰ってみるとマンションの前にはパトカーが3台止まっていた。嫌な予感がして部屋に行ってみると案の定、泣きそうな両親となんとか落ち着かせようと必死な警官が玄関の前いた…。

これから起こることを考えると頭痛がする。なんて言い訳をしよう。

外を見ると先ほど戦闘があったとは思えないほど奇麗な街と星空が広がっていた。

 

…今日は本当に疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――side Vita

 

 

 

「ちくっしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

雄叫びが夜空に響き渡る…。

負けた。今までだって何度も負けた経験はある。でも、今回は違う。騎士として戦って負けたわけじゃない。弄ばれて負けた…。

騎士の誇りを傷つけられた!!

 

「…ゆるさねぇ」

 

次に会ったら…確実に潰す!!

 

いつまでもここに居る訳にもいかない。早く帰らないとはやてが心配する。

そして、アタシは大切な主も元へと急いで帰るのであった…。

 

 

帰る途中でザフィーラと合流し、家に着いて玄関のドアを開けるとリビングからおいしそうな匂いが漂う。

 

「ただいま~!」

「お帰り~♪外寒かったやろ?今日は鍋やで~♪」

 

はやてがキッチンから出てくると笑顔で迎えてくれた。

 

「やった~♪」

「ザフィーラもはよ入り~」

「御意」

 

帰ってく来て「ただいま」と言うと、「おかえり」と言う暖かい返事が返ってくる。これを聞くたびにアタシは「ああ、ここがアタシ達の帰る場所なんだ」と思いだす。

 

この場所を守るためにアタシ達は戦ってるんだ。

 

そうだ、何が何でも護るんだ!アタシはヴォルケンリッター…はやての騎士なんだ!

 

夕食を食べ終わるとアタシは、はやてと一緒に風呂に入る。

はやてに頭を洗って貰っていると急にはやてが訊ねるてきた。

 

「なぁ、ヴィータ?」

「ん~?」

「今日帰り遅かったけど何しとったん?」

「っ!?え、え~と…秘密!」

「え~?何で秘密なん?」

「な、なんでも!」

「まぁ、ヴィータが言いたくないならええよ?」

「…ごめん」

 

ごめん・・・はやて。

 

でも、はやてを不幸にすることは絶対…絶対にしないから。

 

 

 

 

 

 

 

 




―――ステータス更新しました。
名前:工藤 詠
特殊スキル「知識の貯蔵庫」詠が膨大な知識に押し潰されないために目覚めた能力。自分の必要としない知識を別の空間「仮想記憶領域」に封印し、自分が必要な時に出し入れが出来る能力。様は、自分の中に巨大な図書館があるとイメージしてください。
ランク:S?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。