魔法少女リリカルなのはA’s ~幼き賢者と魔法~   作:金髪のグゥレイトゥ!

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※注意!

本編でなのはの自宅は翠屋と書かれていますが、本当は自宅から翠屋は離れており、なのはの自宅と翠屋は別々にあります。
この話を書いた当時はその事を知らず、修正しようにも今回の話の半分が消滅してしまうので修正せずにそのまま投稿しました。こちらの勝手ですがご理解いただけると幸いです。


第3話「私があなたのお母さんなの」

 

 

 

―――此処は…どこ?

 

気が付くと私は見覚えのある白い部屋に居た。

 

「ひっく…うぅ…」

 

…え?

 

ベッドと窓が一つだけの真っ白い病室ので女の子が泣いている。

 

この病室は。5年前、私が入院…いや、閉じ込められていた病室だ。

 

これは…夢?

 

「おとうさぁ~ん…おかあぁ~ん…」

 

そうだ。私はいつも泣いていた。泣いていればいつかあの二人が会いに来てくれるかもしれない。そう思ったから…。

 

「いたいよぉ~…あたまがいたいよぉ~…」

 

……っ!

 

何もしない。ただ泣いているばかりの情けない自分が歯痒くて仕方が無かった。

手が届くなら殴りかかりたい。けれどそれは出来ない。何故ならこれは摂理の書が情報の整理のために私に見せている私の記憶であり、過ぎ去った過去だからだ。過去は変えられない。変える事など出来はしないのだ。

 

どんなに叫んでもあの人達は来ない!貴女は見捨てられたのよ!何でわからないの!?

 

「…どうして…会いにきてくれないの?」

 

嘗ての私がそう呟いた時、世界が歪む。

如何やらこの悪夢はこれで終わりのようだ。視界にノイズが走り、ブツリと音を立ててブラックアウトした…。

 

 

 

 

 

 

――――12月1日 AM5:30

       自室

 

 

ジリリリリリリッ!!!!

 

「――――っ!?」

 

目覚ましのけたたましい音で目が覚める。

 

カチッ…。

 

目覚ましを止めると袖で額の汗を拭う。大量の汗を掻いたせいでシャツがぐっしょり濡れている。

 

…すごい汗。あんな夢見たせい?

 

「…何で今さらあんな夢を」

 

もう、五年よ?あれから…。

 

昨晩の事が原因?魔法に関わったから…いや、知識の貯蔵庫にアクセスしたせいだろう。久々に使用したからその後遺症といった所だろうか?何にしてもあまり良い気分じゃない。あんなものを見せ付けて来るなど本当にこの魔導書は悪趣味が過ぎる。

 

「朝から最悪…。今日はあんまり良い事無いかも」

 

その呟きに、ふとある少女が頭に浮かぶ…。

 

―――詠ちゃん!一緒にお昼食べよ♪

 

「……はぁ、本当に良い事無いかも」

 

私はガクリと肩落とす。本当にこの街に来てから良い事なんて一つも無い。

学校では休憩時間中に隣の席の子に追い回されて、夜はハンマーを振り回す少女に命を狙われて…。

 

…私、何かした?むしろ何もしてないわよね?

 

そう、私は何もしていない。私は他人と関わろうとしない。なら私にこんな不幸が降りかかるなんてあってはならないのだ。

 

「……はぁ~~~」

 

今日朝から二度目の溜め息。溜め息を吐くと幸せが逃げて行くと言うけど本当かもしれないわね。

 

「溜息吐いてる場合じゃないか…。そろそろあの人達も起きてくる頃だし」

 

時計を見てみると5:50と表示されていた。あの人たちが起きるのは6時。あと10分で顔を洗い、歯を磨き、着替えて学校に向かわなければならない。出るのが遅れれば二人が起きてしまい顔を合わせることになる。それだけは避けないといけない。

私は急いで身支度し、いつもの様に誰にも見送られずに家を出るのであった。

 

 

 

 

まずコンビニに立ち寄る。朝食と昼食を買うためだ。

昨日の失敗が無いよう、多めにカロリ〇メイトを購入。今日はウイ〇インゼリーも買っておく。朝の貴重なエネルギー源だ。

 

「さて、どこで食べようかしら?」

 

さすがに学校はまだ開いていないかもしれない。侵入して見つかれば家に連絡される可能性も低くない。そうなれば家庭の事情などを探られて色々と面倒なことになりかねない。

 

なら別の場所。確かこの近くに公園があったわね。あそこなら見晴らしも良いし丁度いいかも…。

 

この時間ならまだ人はいないだろうし、とりあえず行ってみよう。

 

 

 

 

――――12月1日 AM6:30

    海鳴市 桜台

 

 

私は坂道を登って行く。

 

…ふぅ、急な坂じゃないから楽だと思ったのに。昨日のが響いてるのかしら?

 

運動不足という訳じゃ無い。昨日のあれが特殊なせいだ。慣れないことをすると疲れるものだ。

 

「まぁ、あんなのが日常茶飯事なのはどうかと思うけど…」

 

そもそも治安の良いこの国で人に襲われるなんてことはそうそう無い。襲われるのに慣れてる人間なんて、そっち系の仕事をしている人くらいだ。私は勿論のこと私の家族はそっち系の人間ではないし、この先そっち系に関わる予定も無い。

だからあんなのは二度と御免…と言っても。アレとはまた必ず出会う。これは絶対だ。あの襲撃が昨晩だけとはまずありえない。私の魔力が目的なら近いうちにまた必ず私を襲ってくることだろう。

 

…何か対策打っておかないと。

 

昨晩は相手が油断していたから逃げることは出来たが、次も同じ手が通じるとは思えない。『摂理の書』の知識によれば見た目が幼い少女ともアレは長い時間の中『闇の書』を守護してきた歴戦の騎士。まともに戦えば私に勝機は無い。

 

隠蔽魔法で魔力反応を消せるかしら?試してみても損はないわね……よし。

 

「―――アクセ…っ!?」

 

貯蔵庫に接続しようとすると、近くで大きな魔力を感知する。

私は咄嗟に木の陰に身を隠すと警戒しながら辺りを見まわす。

 

…まさか昨日の?朝からドンパチなんて御免よ。

 

と思っていると聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「それじゃ、今朝の練習の仕上げ。シュートコントロール、やってみるね?」

『All right』

 

…え?

 

まさか…。そんな疑念が過ぎり私は木の陰から覗き込むと、そこに居たのは空き缶を片手に赤い宝石に話しかける高町さんだった。

 

「リリカルマジカル」

 

高町さんが呪文のような物を唱えると、高町さんの足元にピンク色の魔法陣が出現する。

 

まさか…高町さんも魔導師なの?

 

だったら私に近づいて来たのは私を狙って…。いえ、あの魔法陣はベルカ式じゃない。ということは管理局?その可能性は低くない。

管理外世界でも管理局が民間人に協力を求めることはあるらしい。彼女の魔方陣はミッド式の様だったし何かの事件に巻き込まれて、それがきっかけで魔法の世界に関わるようになったのかもしれない。この世界で普通に生活していて魔法に関わる事はまず無い。彼女の持つデバイスもこの世界では作る事の出来ない技術。ならやはり彼女は管理局の人間…?

 

どちらにしても、ここで見つかるのは得策じゃない。早く離れ…。

 

バキッ…!

 

足元に落ちてあった小枝を踏んで折ってしまい音を立ててしまった…。

 

「誰!?」

 

やはりと言うべきか高町さんが音に気づきこちらの方を向く。

 

…私の馬鹿。

 

何だこの漫画でよくありそうなシーンは…。

 

さて、どうしたものか。ここでだんまりを決め込んでももう手遅れ。

逃げても相手は魔導師。走っても逃げられない。魔法を使えば管理局が出てくる可能性がある。そうなれば厄介だ。

 

…止む負えないわね。

 

ガサッ…。

 

私は諦めておとなしく木の蔭から出る。

 

「よ、詠ちゃん!?」

 

高町さんはまさか私が出て来るとは思ってはいなかったのだろう。驚きの表情を隠せないでいた。

 

本当…朝からついてないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――side Nanoha Takamati

 

 

「誰!?」

 

私は物音のした方をへと振り返る。そこにあるのは木しかない。でも、確かに人の気配がする…。

 

ど、どうしよう!?魔法を使っている所見られちゃった!?

 

とりあえず、この事は誰にも話さないようにしてもらまわないと…。

すると、木の蔭から女の子が出てきた。

 

…え、えええええ!?

 

「よ、詠ちゃん!?」

 

木の蔭から出てきたのは詠ちゃんだった。どうしよ~!?友達に見られちゃったよ~!?でも、何でこんな所にいるの!?どうして~~~!?

 

「…ねぇ?」

 

私が慌てふためいていると詠ちゃんが話しかけてくる。

 

「ほ、ほえ!?」

 

私はビクリと体が硬直する。

 

「とりあえずベンチに座らない?朝食が食べたいんだけど」

 

ガクッ…。

 

こけた。

 

う、うぅ~…。私はすごく慌ててるのに第一声がそれですか?

 

 

 

 

私は近くのベンチに座ると、それきり黙りこんでしまった。何から話せばいいからわからないから。

隣をちらっと見ると詠ちゃんはなにやらモグモグ食べている。

 

「…何食べてるの?」

「もぐもぐ……カロリ○メイト」

「そ、それが朝ごはん!?」

「もぐもぐ…ええ」

 

驚く私に詠ちゃんは静かに頷いた。本当に朝ごはんらしい。

 

「ちゃんと食べないと駄目だよ!?」

「食事なんて栄養を摂取するための行動にすぎないわ。栄養を取れれば問題ない」

 

「「………」」

 

あ、あう~、また沈黙だよぉ~…。

 

「あ、あのね!「別に話さなくてもいいわ」…え?」

 

私は覚悟を決めて、事実を話そうとすると、詠ちゃんが私の言葉を遮る。

 

「色々事情があるんでしょ?なら話さなくていい。興味無いし。誰にもばらすつもりもないわ」

「あ、ありがとう…」

 

興味ないって言うのは少し寂しいけど…。

 

「それに…私がばらしたところで、誰も信じやしないだろうし」

「…どうして?」

 

理由なんて分かってる。でも、聞かずにはいられなかった。

 

「私が嫌われてるからよ」

 

分り切っていたことなのに、返ってきた言葉がとても胸に突き刺さる。

詠ちゃんの瞳を見つめる。その瞳には一切の感情を含んではいなかった…。

 

 

 

 

 

――――side Yomi Kudou

 

 

「私が嫌われてるからよ」

 

高町さんの問いに答える。私が嫌われているから分り切ったこと。私が嫌われるようにしているのだから当たり前の結果。

 

「そ、そんなことないよ!」

 

高町さんがバッとベンチから立ち上がり真剣な表情で否定してくる。

 

…変な子ね。

 

今までの子はすぐに離れていったのに。この子はしつこくついてくる……でも。

 

「…ごちそうさま」

 

私は朝食を食べ終わると、ゴミをまとめゴミ箱に捨て立ち上がる。

 

「そろそろ行くわ」

「も、もう少し話ししようよ!?」

 

立ち去ろうとする私に高町さんは慌てて私を呼び止めようとしてくる。

 

「…どうして?」

「ど、どうしてって…お話をすればお互いの事も知ることが出来るし!」

「知ってどうするの?」

「友達になる!」

 

すごい笑顔ね。光って見えるわ…。

 

眩しすぎるその笑顔に私は少し引いた。しかし、私は2文字で即答する。

 

「イヤ」

 

ガーーンッ!

 

高町さんはがくりと崩れ落ち跪いた。

 

…なに?今、何か鐘のような音が聞こえてきたのだけど…。

 

「う、うううぅ…」

 

何か呻いてるけど…どうしよう?

 

…ぽく

 

……ぽく

 

………ぽく

 

………ちーん!

 

「…放置しましょう」

「ひどいよ!?」

「褒め言葉ね」

 

ガバリと起き上がり涙目で私を批難してくる彼女。

しかしもうその言葉何回も聞いたお陰で耐性ついてるのよ。というより自覚してるし。

 

そんなことより、早くここから離れたいんだけど…。

 

時計を見ると既に7時前。学校に着くころにはもう学校は開いてる時間だ。しかし、そんな時だ。

 

クルルゥ…。

 

私のお腹の虫が鳴く…。

 

…やっぱり足りなかったか。明日はもう少し増やし―――。

 

キュピーンッ!

 

「?」

 

高町さんの目が光った?

…いけない、ここにいてはいけない気がする。

 

「それじゃあ、私は(ガシッ)っ!?」

 

私は急いでこの場を立ち去ろうとすると手を掴まれ私の向かおうとした反対方向へと引張られる。

 

「…な、何?」

 

私は嫌な予感がしながらも振り返ってみると、そこにはとても素晴らしい笑顔の高町さんが私の手をしっかりと握っていた…。

 

…目が笑ってない!?これは肉食獣が獲物を捉えた目だ!?

 

「………(汗」

 

嫌な汗が背中を伝っていく…。ちょっと待って、これって昨日より危険な感じがするんだけど?

 

「詠ちゃん」

「っ!(ビクッ!」

 

体が無意識に強張る。

 

「…だ、だから何?」

「私の家に来て♪」

「…………は?」

 

緊張が一気に解け、間抜けな声を上げる。何を言い出すのこの子…?

 

「お腹すいてるんだよね!?」

 

…あぁ、なるほど。食い物で釣るつもり?

そうはいかない。借りを作るつもりもないし…それに、慣れ合うつもりもない。

 

「結構よ。お昼まではもつわ…それじゃ」

 

…?

 

手を解いて立ち去ろうとしたが手が解けない。

 

「…」

 

ブンッ!ブンッ!

 

今度は手を乱暴に上下に振ってみた…。

 

「……」

 

離れない。

 

「…離してほしいのだけど?」

「にぱ~♪」

 

どうやら高町さんは離す気はないらしい。返答として笑顔が返ってくる…。

というか何?にぱ~って?

 

「…親御さんにも迷惑掛けるわ。」

「大丈夫♪もう連絡したから♪」

 

高町さんは携帯を見せてくる。

 

…いつの間に?ずっと私と話してたじゃない?

 

「メールって便利だよね♪」

 

そうですか…。

 

普段の私なら気付くはずなのに…。この子といるとどうも調子狂う。

結局、私は高町さんから逃げることが出来ず、引き摺られながら(ここ重要)高町家に強制的に連れて行かれた…。

 

あぁ、ドナドナが聞こえるわ…。

 

 

 

 

 

 

 

――――12月1日 AM7:00

       翠屋

 

 

私は喫茶店らしき店に連れて来られる…。

 

…翠屋?

 

看板にはそう書かれてあった。

 

「…ここは?」

「私の家♪」

「…喫茶店なの?」

「うん♪ようこそ!喫茶翠屋へ♪」

 

私は入口に掛けてあるCLOSEというプレートが目に入る。どう見ても開店していない。

 

「…まだ開店していないみたいだけど?」

「うん、まだ開店時間じゃないし」

「………」

 

…はぁ、嫌な予感がするわ。

 

「こっちはお客さん用。私達は裏口からね!」

 

私はもはやされるがままに引っ張られる。

私は高町さんに引張って誘導され、裏口の扉を開けると高町さんの家族と思われる人達が入口で待ち構えていた。

 

「「「「ようこそ!喫茶翠屋へ!」」」」

 

あぁ、そんな笑顔で迎えられても困るんだけど…。

 

…何でこんな事に。私はひどい頭痛がした。

 

 

 

 

「なのはからメールが着たときは焦ったわ。急に「友達がくるから朝ごはん多めで!」って言ってくるんだもの」

 

それは又…なんという有無言わさずのメール内容。そして、それを用意する貴方もすごい・・・・。

 

…というか聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。

 

「…友達?」

 

私、友達になった覚えないんだけど?いつの間にそんな関係になったの?ちらりと高町さんの方を見ると、こちらを見てにこにこと微笑んでいる。

 

「でも、初めて見る子だよね?名前は?」

 

高町さんの姉らしき人が訪ねてくる。

…強制とはいえ、御馳走して貰ってるんだから答えないと礼儀に反するわ

 

「…工藤 詠です」

「詠ちゃんか。もしかしてなのはが昨日転校してきたって言ってた子?」

 

私の事話したの?まぁ、転校生が来たんだから家族に話すのは当然かもしれないけど…って詠ちゃん?高町さんといい、この家族は一体何?

 

「うん!そうだよ!」

 

高町さんが私の代わりに答える。もう、勝手にして。

 

「料理は口に合うかしら?住んでる地方で味の濃い薄いがあると思うから」

「いえ、問題ないです…美味しいです」

 

実際、本当に美味しい。流石喫茶店を営業してることだけはある。

 

「そう、よかった♪」

 

高町さんの母親?らしき女性はうれしそうに微笑む。笑顔が高町さんにどことなく似ている。やっぱり親子ね。

…にしても若いわね。本当に三児の母?どう見えても20代前半なんだけど?

 

「引っ越したばかりで分からないことが多いでしょ?困ったことがあったら言ってね?」

「そうだぞ?遠慮無く家に来てくれてかまわないからね?」

「…いえ、慣れてますので」

「慣れてる?」

「もう何度も引っ越してるので…」

「…ご両親の仕事の都合でかい?」

「…いえ」

 

その返答に高町さんのお父さんの表情が真剣なものになる。きっと察してしまったのだろう。だからそれっきり私は黙り一言も話さなくなる。私が他人と関わらないからなんて言えない。言ったら言ったでこの人達は何かしてくる。私の隣に座っているこの子がいい例だ。

 

「…悩みがあるなら相談に乗るよ?」

「いえ、大丈夫です」

 

相談する事なんて無い。今まで通り誰とも関わらずにいればいいだけなんだから。

あるとすればあなたの娘さんです。鬱陶しいのでもう関わらないで下さい……何て言えないわね。

 

「……あっ!そうそうなのは。またエアメールが届いてるわよ」

「ほんと!?」

「ええ、はい」

 

おばさんは手紙を取り出すと高町さんに渡す。

 

「その文通も、もう半年になるんだよな」

「うん!」

 

高町さんは手紙を大事そうに胸に抱える。

 

「フェイトちゃん、今度こっちに遊びに来るのよね?母さんうんと歓迎しちゃう♪」

「ユーノも本当の飼い主見つかっちゃって…はぁ」

「この中で一番可愛がってたもんなお前」

「あ、あははは…。ユーノ君もまた預かることになるかも…」

「ほんと!?やった!」

 

高町ファミリーズが何やら賑わっている。フェイトとか言う人物の話題でさっきまで妙にシリアスな雰囲気が明るい雰囲気にガラッと変わる。

 

…私は蚊帳の外ね。

 

別にいいっていうかむしろうれしいことなんだけど…。

私が黙々と食事をしていると、高町さんが会話に混ざっていない私に気付き話しかけてくる。

 

「あのね!さっき言ってたフェイトちゃんっていうのわね、私の友達なの!」

「…そう」

 

だから?としか言えない。それしか答えようが無い。

 

「今度こっちに遊びにくるんだ♪」

「…さっき聞いたわよ」

「とっても良い子だから詠ちゃんも仲良く出来ると思うんだ♪」

「…無理」

 

無理というか丁重にご遠慮願う。私に関わらないでって言ってるでしょ?

 

「大丈夫!フェイトちゃんは優しいから!」

「いや、そういうことじゃなくて…」

 

とことん私の意見を無視するわね。この子…。もうどうしたら良いのか扱いが分からなくて頭が痛くなってきた。

 

さて、そろそろお暇しようかしら…。

 

時計を見てみると7時半を過ぎたところ、いい加減学校に向かいたい。

 

「すいません。そろそろ学校に向かいたいので…」

「あっ!もうそんな時間?」

「はい、いきなり押しかけてこんな御馳走してもらってありがとうございました。美味しかったです」

 

私はゆっくりと丁寧にお辞儀をする。

 

…おかげで借りが出来たけどね。

 

変なことは請求されないと思うけど……いや、可能性大ね。何せあの子のことだ。

ちらりと高町さんを見る。高町さんは私の視線に気づきにっこりと微笑む。

 

「にゃはは♪」

 

…この無垢な笑顔が今はとても怖い。

 

「…では、失礼します」

 

私は荷物を手に取り、急いで玄関に向かうと出る前に振り返り一礼してから出た。

 

「待ってよう!?それじゃ、行ってきま~す!」

「あぁ、いってらっしゃい」

 

高町さんは遅れて玄関を出て行く。

 

 

 

 

 

――――side Takamati family

 

 

「クールな子だねぇ~…」

「…あれは壁を作ってるな」

「壁?」

「ああ。誰も自分の心の領域に侵入しないように壁を作ってる」

「まだ、あんな幼いのに…」

「…これは俺達大人が関わっていい問題じゃないかもしれない」

「なのはに任せる?」

「ああ、なのはなら…大丈夫だろ」

「…そうね」

 

 

 

 

 

 

――――side Yomi Kudou

 

 

「待ってよう!私も一緒に行くよ~!!」

 

ガシッ!

 

高町さんは私に追いつくと手を握ってくる。

…鬱陶しい。一人で登校したいのに、朝からなんでこの子と…!

 

ブンッ!ブンッ!

 

手を解こうと先ほど同様、乱暴に上下に振る…が、やっぱり離さない。

 

…くっ!何て怪力?昨日の体育の授業のドッヂボールでは即効アウトになってたじゃない。

これが世間で言う「火事場の馬鹿力」って奴かしら?そんなのこんな場面に使うんじゃないわよ。

 

「…離して」

「ニコニコ♪」

 

…離す気無いわね。ってこのパターンはさっきもやったわよ。

 

結局手を解くことは出来ず、学校まで手を繋いだまま登校することになった…。登校する途中、クラスの連中に変な物を見るような目で見られたのは言うまでもない…。

 

…朝から最悪だったわ。あっ、そう言えば…。

 

「…高町さん」

「何?」

「…一回だけ、私の出来る範囲で言うこと聞いてあげるわ」

「え?」

「朝食の礼よ……借りを作りたくないの」

「え~?いいよ、別に」

「それだと気が済まない」

「う~ん…そうだ!」

 

う~んと首を捻って悩んだ仕草を見せた後、高町さんはポンッと手を叩く。何か思いついたようだ。ついでに手も解けた。逃走のチャンスだけど…要求を聞いてからね。

 

「…何?」

「なのはって呼んで!」

「…え?」

 

彼女の言葉に私はぽかんとしてしまう。

 

「名前!いつも「高町さん」って呼んでるでしょ?だから「なのは」って呼んで♪」

 

…何を言い出すかと思えば。

 

「…私の出来る範囲外ね」

 

私はさっさと先に進んでいく。

 

「え~~~~!?言うこと聞いてくれるって言ったのに!?」

 

慣れ合うつもりはないって言ってるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――12月1日 PM4:00

    通学路

 

 

学校が何事もなく終わっ……てはないわね。授業中は高町さんがしつこく手紙を送ってきたり昼休憩は一緒にお弁当を食べようと追って来たりで大変だった。なんとか逃げ延びたけど結局、昼食を食べる時間が短くなりゆっくり食べることができなかった。

 

まぁ、食事と言ってもカロリ〇メイトだけなんだけど…。

 

なんとか全授業が終了しHRが終了した同時に教室を飛び出し、なんとか高町さんを撒くことができた。後は無事に家に帰るだけなのだが…。

 

…本当に疲れた。

 

「…なんでこんなに疲れないといけないの?」

 

朝の事もあってか昨日より積極的になってる気がする。これ以上悪化する前に何とかしないと…。

 

「はぁ…。どうしようかしら……あら?」

 

にゃあ~…。

 

私が彼女の対処に悩んでいると、どこからから猫の鳴き声が聞こえる。かなり弱々しい鳴き声だ。

 

…怪我でもしてるのかしら?

 

だとしたら大変、早く手当てをしてあげないと…。私は辺りを見回し猫を探す。たぶん近くに居るはずだ。

 

にゃあ~…。

 

また鳴き声が聞こえた。聞こえた方を見てみるとそこにはゴミ捨て場があった。ゴミ捨て場に近づくと私は言葉を失う。

 

「にゃあ~…にゃあ~…」

 

そこには、子猫が動かなくなった親猫を弱りきった体で一生懸命起こそうと何度も何度も顔で押している姿があった…。親猫の姿を見てみると死んでからずいぶん経っている…。

野良犬などがやった傷じゃない。これは人の手でやった傷だ。骨が折れて手足が変な方向に曲がっている…。切り傷が無いと言うことは死ぬまで殴られたり蹴られたりしたのだろう。本来白く美しかったであろう白い毛並みは見る影も無く、複数の『小さな足跡』で汚れていた…。

 

「…酷い」

 

おそらく、自分の子を守ろうとしたのだろう。自分の命を犠牲にして…。

 

「っ!」

 

ギリッと奥歯がなる。ぎゅっと握りしめられた拳は血の気が引いて真っ白だ。

 

だから人間は嫌いなんだ!自分の快楽のために平然と命を犠牲にする!この親子が一体何をしたと言うの!?

 

そう叫びたい。けど今はそれどころじゃない。怒りに任せて叫びたい衝動を堪えつつ、私は子猫に駆け寄り抱きかかえる。

…酷く弱ってる。病院に連れて行ったところで、もう…助からない。

 

「何とかならないの…?なんとか救う方法は…」

 

私は思考を廻らせる、この猫を救う方法を。科学で駄目なら魔法がきっと何かあるはずだ。

私は急いで人気のない場所へ移動する。ここでアレを使うと大騒ぎになる。

 

 

 

 

「―――…アクセス」

 

貯蔵庫に接続して、知識を検索する。科学が駄目でも私には魔法がある。

 

…絶対に救ってみせる。親猫が身を挺して守ったこの子猫を助けてみせる!

 

「―――該当データ、一件。…あった!」

 

該当した知識を引き出す。

 

「…使い魔?」

 

使い魔。魔導師が作成し、使役する魔法生命体。動物が死亡する直前または直後に、人造魂魄を憑依させる事で造り出す。肉体の命を繋ぐことはできるが、生前とは人格も異なる別個の存在を生み出しているに過ぎず、死者蘇生とまでは言えない。

 

「…こんなの助けるって言わないじゃない」

 

違う。私が知りたいのはこの子を救う方法…こんなのじゃない。

 

「でも…この方法しか」

 

このまま放置したところでこの猫は死んでしまう。なら、使い魔にして…。でも、それだとこの子の自身が消えてしまう。どうしたら…。

私は子猫を見る。もう鳴く力も残っていない。あと1時間もすればこの子もあの親猫と同様死んでしまう…。

いっそ、あの親猫と同じ場所に。…っ!駄目!それだとあの親猫の死を無駄にしてしまう!

 

…覚悟を決めよう。

 

「救うんだ。私が!この子を…!」

 

私の足元に黒い魔法陣が出現する…。

 

ごめんね…。こんなことしかできなくて。でも、どんな形でも貴方に生きてほしいの…。

 

私は使い魔の儀式を開始する。

 

魔法陣から光があふれ出し子猫をゆっくりと包んでいく…。

 

うまくいって…お願い!

 

魔法を使ったのは昨日。こんな高等魔法が成功する確率はかなり低い。失敗すれば子猫がどうなるか分からない…。

 

…お願い!

 

「っ!?」

 

子猫を包んでいた光が少しずつ人の形に変化していく…。

 

うまく…いった!

 

光は完全に人型になり光は消え、そこに裸の幼い女の子がちょこんと座っていた。

 

人の身体に…猫の耳?使い魔ってそういう物なの?

 

「うぅ…だぁれ?」

 

少女は怯えた表情を浮かべ目に一杯の涙を浮かべている…。

 

猫の頃の事を覚えているの?だから私に怯えて…。

 

私は少女の目の前に座ると、少女をそっとやさしく抱きしめる。

さて、何と言ってあげれば良いだろうか?なんと言えばこの子は安心してくれるだろうか?私は思考を巡らせる。

 

「私は…あなたのお母さんよ」

 

そして、悩んだ末に出てきた言葉は皮肉にも自分が一番信じていない『存在』だった…。

 

「おかあ…さん?」

 

そう…あの親猫の代わりに私が貴女を守ってあげる…。

 

「ええ、契約しましょう。『ずっと傍に居る』それが私と貴女の契約…」

 

それは、私が願ったものだ。叶えられ無かった願いだ。

 

「ずっと…一緒?」

「ええ、ずっと…。どんなときだって貴女の傍に…」

「…うん!」

 

少女は嬉しそうにぎゅっと抱きしめ返してくる。二度と離さないと言う様に。私もさっきより強く抱きしめる。それに応えるように…。

 

必ず守ってみせる。私はこの子の母なんだから…。

 

「名前…決めないとね」

「なまえ?」

 

こてんと少女は首を傾ける。

 

「そうよ。貴女の名前」

 

何がいいかしら?猫…安直にタマなんていったら泣きだしそうだ。白い猫…白…。私のこの子の髪を見る。白く綺麗な髪の毛…。

白…。白い花。白百合。花言葉は「純潔」。…うん。この子にぴったりね。

 

「…リリィ」

「りりぃ?」

「えぇ、貴女の名前はリリィ…。どう?気に入ってくれた?」

「……わぁ~♪うん♪」

「そう…うふふふ」

 

リリィは満面の笑みを浮かべ、私のそれに釣られて笑顔になる。

何故だろう。この子が笑うと私もうれしい。

 

「リリィ。ずっと…ずっと一緒だからね?」

「うん!」

 

嫌なことや、悲しい事もあったけど…。今日は私に…いえ、私達にとって一番大切な日になったわね。リリィ…。

 

「帰ろうか?」

「うん!」

 

よし、帰ろう……っと、その前に。

 

「リリィ。猫の姿に戻れる?このままだと大変なことになりそうだから」

 

その全裸の姿で人前に立つと警察沙汰だから…。

 

「ふえ?う~ん…やってみる!」

 

リリィは光に包まれると子猫の姿に戻った。

 

「うん、良くできました♪」

「えへへへ~♪」

 

私は猫姿になったリリィを抱きかかえるとリリィの頭をやさしく撫でる。これなら連れて帰っても問題ない。うちのマンションペット可だし。親は…まぁ、何とかなるでしょ。

 

 

 

 

 

 

――――12月1日 PM7:00

     自宅

 

 

私は家に帰ると珍しく私からリビングで寛いでいる両親に話しかける。

 

「…工藤さん」

 

私の呼び方に一輝さんは悲しい表情を浮かべるがすぐに表情を笑顔に戻し、飲んでいたティーカップを置いてこちらを向き直る。

 

「何かな?詠?」

「猫を飼いたいんです」

「…猫?」

 

突然な私の要求に一輝さんは戸惑った表情を浮かべる。

 

「はい…捨て猫なんですけど。まだ子猫で…親猫は死んでしまって」

「…そうか、いいよ。母さんもいいよね?」

「はい、もちろん」

 

彼女は微笑んで頷いてくれる。

その返事に私の中で何か熱いものが込み上げてくるのを感じた。これが歓喜と言うものなのだろう。長い間忘れていた感情だ。その喜びに居ても立っても居られなくなった私は直ぐにでも部屋に戻りたい衝動に駆られた。この事をあの子に知らせたかった。

 

「…ありがとうございます!」

 

礼を述べて私は用件が済むと、すぐに自分の部屋に戻って私の愛しい娘に会いに行く。

 

 

 

 

 

――――side Kudou kazuki

 

 

「…ありがとうございます!」

 

詠は急いで自分の部屋に戻っていった。

 

「今…笑ってたよな?」

「はい…あの詠が…」

 

此処に引っ越してきて何かあの子を変えることがあったのか?だとしたら、本当に良かった…。

願わくば、昔の詠に戻りますように…。

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラクター設定

名前:リリィ
好きな物:母さん(詠)。キャットフード。魚
嫌いな物:虐める人。男の人(猫の時の記憶

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