魔法少女リリカルなのはA’s ~幼き賢者と魔法~   作:金髪のグゥレイトゥ!

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第4話「新しい戦いの予感?なの」

…また夢?

 

私はまた夢を見ていた。見まわすとそこはどこか見覚えのある教室。昔の私は他の子供たちの輪から外れ自分の席で本を読んでいる。

 

二日続けて似たような夢を見るなんてね…。

 

これは間違いなく私の過去。これは小学校に入ったばかりの頃だろうか…。

 

バンッ!

 

突然黒板消しが飛んできて、本を読んでいた私の顔に当たり粉が服や黒い髪を白く染める…。

 

…こんなこともあったわね。

 

投げたのは私にいつもちょっかいを出して来ていた男子グループ。私の姿を見るなり楽しそうに笑っている。

 

…何が楽しいんだか。

 

男子は私が気にくわないと言うくだらない理由でこんなことをしていた。

別に私から何をしたと言う訳ではない。寧ろ何もしていない。私は何も関与していない。誰とも関わらずにただ一人教室の隅でぽつんと読書をする。そんな日々を送っていた。他人の気分を害する事なんてしていない筈なのに…。

 

「…」

 

私は粉を払い落すとまた本の続きを読み始めた。相手にしても無駄だと分かっているから。

女子が心配そうに私に駆け寄ってきて男子に何やら文句を言っている。

 

私、この女の子になんて言ったんだっけ?……あぁ、そうだった。

 

 

『「私に関わらないで」』

 

 

そこで私の意識は現実に引き戻される。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――12月2日 AM7:50

    通学路

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

私は学校に続く道を全速力で走りぬける、片手にはウイ〇インゼリーを握っている。…CMをリアルに再現してるわ。

 

まずい、遅刻する。

 

タイムリミットは後10分。それまでに校門を潜り教室に着かなければならない。正直言って間に合わない。

別に寝坊をした訳じゃない。いつも通りの時間に起きて支度をしてリリィに朝御飯をあげた。…そこまでは良かった。

 

まさか、あんな事になるなんて…。

 

それは30分前に遡る―――。

 

 

 

 

――――30分前。

 

『やだ~~~~~!!!』

『だ、だからね、学校にリリィを連れて行けないの』

『やだ~~~~~!!!!!』

 

キーーーンッ…!

 

あ、頭に直接奇声が…。

 

頭がクラクラするのを耐えつつ私はリリィを説得する。たじたじである。

 

…困ったわ。

 

かれこれ二時間同じやり取りを繰り返している。両親にリリィの事がバレるといけないので念話でだけど。

学校にリリィを連れて行くわけにはいかない。金魚とかはいいけど、猫なんて問題外だ。許されるわけがない。

 

『出来るだけ早く帰ってくるから』

『うぅ~…』

『帰ってきたらいっぱい遊ぼ。ね?』

『…ほんと?』

『えぇ、約束』

 

私は小指を立ててリリィの目の前に差し出す。

 

『?』

『ゆびきり。約束のおまじない。ほら、リリィも』

『・…こう?』

 

リリィも私と同じように小指を立てると、私は自分の指とリリィの指を絡める。

 

『指切りげんま~嘘ついたら針千本の~ます。指切った』

 

おまじないを言い終えると絡めた指を解く。

 

『…針飲むの?』

 

不安そうに口を押えるリリィに私はくすくすと笑って首を振る。

 

『うふふ、約束破らなければ大丈夫よ。じゃあ、行ってきます』

『…いってらっしゃい』

 

 

 

 

…と言うことがあったんだけど。まさか、駄々捏ねられるとは思ってなかった。

 

そうよね、リリィはまだ子供だもんね。お母さんが傍にいないとさみしいよね…。

 

そう思うと、罪悪感で胸が締め付けられるような痛みを感じる、帰ったら思い存分遊んであげよう。とりあえず今は…。

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…。

 

遠くから無情に響く鐘の音が聞こえて来る。

 

…遅刻の言い訳でも考えよう。

 

 

 

 

――――12月2日 AM8:20

      教室

 

 

ガラッ…。

 

私はHR中の教室に前のドアを開け平然とドアを潜る。

 

「工藤さん、遅刻ですよ?」

「…すいません」

 

私は素直に謝る。非は完全に自分にあったから。

 

「どうして遅刻したんですか?」

「…」

 

娘に駄々をこねられました。なんて言える訳が無い。そんなこと言えばこの教室、それどころか学校全体にまで騒ぎがおよび。明日の朝のニュースに私の名前が載る様な事態になりかねない。

 

「話してくれないとわかりません!」

「大したとこじゃありません」

「それじゃあ、分らないでしょう?」

 

自分に非があるとはいえ、これほどまでにしつこいのは面倒だ。謝ったのだから良いではないか。

 

「寝坊ということでお願いします」

「…はぁ、自分の席に着きなさい」

「はい」

 

先生は溜め息を吐くと諦めたて席に着くよう指示し、私はそれに従い自分の席に着く。自分の席に向かう途中、周りからの視線が妙に冷たい気がしたが私は気にせずに席に着いた。

 

「おはよう!」

「…」

 

まぁ、この子だけ他の子とは違う視線を送ってくるけれど…。

私はそれを無視して顔を前に向けるが、妙に熱い視線というかプレッシャーを隣から感じる。私はちらっと視線を隣に向けると…。

 

「にこにこ♪」

 

満面の笑みを浮かべ私を見ていた。

 

「…おは」

 

私は仕方なく挨拶をしようとしたが途中でやめる。昨日の朝の事といい、この子と関わり過ぎている。これ以上関わると壁を、境界線を踏み越えてきかれない。距離を離そう。

 

「…」

「詠ちゃん?」

「…」

「お~い?」

「…」

 

無視。

 

「もしも~し?」

「…」

 

…しつこいわね。

 

「起きてますか~?」

「…っ」

 

…いい加減に。

 

「お~「うるさいわね!ジャンクにするわよ!?」ジャンク!?」

 

はっ!?今、何かおかしな電波が私の頭の中に入ってきたような!?ていうかまずい…。

 

「二人ともうるさいです!」

「「すみません…」」

 

案の定、先生の雷が落ちた。高町さんはさすがに懲りたのかそれ以降話しかけてこなかった。

 

 

 

 

 

 

――――昼休憩

 

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン…。

 

昼休憩の時間になった。私はいつも通り裏庭に向かう。

 

ヒュー…。

 

「…寒いわね」

 

裏庭に北風が吹きぬけ、ぶるりと身体を震わせる。そういえばもう12月になってたんだっけ…。最近忙しくてカレンダーなんて見ていなかった。これからだんだん寒くなっていくし、どこか別の場所を考えないといけないだろう。

体育館の体育倉庫。いや、何が悲しくてあんな埃っぽい所で…。人が来なくて静かな場所…此処に転校してきてまだ2日しか経ってないからこの学校の構造をあまり把握できていない。

 

…まぁ、それはまた今度考えるとして。

 

私はビニール袋からカロリ〇メイトを取り出し、一口食べるとチーズの香りが口の中に広がる。

 

「今日はチーズか…もぐもぐ」

 

やっぱり素晴らしいわね、カロリ〇メイト。こんなにおいしくて栄養が摂取できるんだから。

 

カロリ○メイト万歳。健康食品万歳。

 

くぅ…。

 

お腹の虫がもっとよこせと鳴いている…。

 

…まぁ、空腹が満たされないのが欠点だけど。

 

 

 

 

昼食を食べ終えると私は、まだ時間があるので学校内を散歩することにした。まだ校内を理解していないのでこの機会に覚えることにしよう。とりあえず図書室がどこにあるか調べておかないと…。

 

…それにしても、すごく広いわね。さすが私立なだけはある。

 

私は散歩をして改めてこの学校の大きさを確認する。私が今まで転校してきた学校で一番大きい。設備もしっかりしているし清掃もきちんとされている。小学校にここまでする必要あるのだろうか?

 

…まぁ、私立だから無駄にお金を蓄えてるんだろうけど。

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。私が知りたいのは図書室のある場所だ。小学校の図書室の本なんてろくな物はないだろうけど、暇潰しにはなる。

 

「図書室…図書室…あった」

 

他の教室と違って、やたらとでかい木製でしっかりとしたドア。そのドアの上に図書室と書いてあるネームプレートが掛けてあった。

 

へぇ、やっぱりと言うべきか、普通の学校と違って大きいわね。これは期待していいかも?

 

中に入ろうと扉をを押してみるとギギィと音を立てて扉が開き、本の独特の匂いが流れ込んでくる。内装は西洋の建物をイメージして造られている。

 

うん、こういう雰囲気は嫌いじゃない。

 

むしろ好きだ。落ち着く。小学校の図書室としてはどうかと思うが…。中に入りパッと見渡してみるけど人もいないし本も他の学校に比べてたくさんある。なかなかに良い。本の整理もきちんとされてある。司書の先生が整理してるのかしら?

 

「……へぇ」

 

子供向けで本が多いと思っていたけどそうでもないみたい。私は適当に本を一冊手に取りパラパラとページをめくる。

 

うん、おもしろい。明日から毎日来よう。まだ時間あるし本でも読んでようかしら?

 

私は休憩時間が終わるまで此処で本を読もうと思い、先ほどの本を持って入口の近くにある机に座ると本を開く。

 

ギギィ…。

 

ドアの木が軋む音が響く、誰か来たのかしら?まぁ、昼休憩だし別に不思議じゃないけれど。

 

「あれ?工藤さん?」

 

背後から聞き覚えのある声が聞こえる。私は振り向くと紫色の髪の女の子がいた。

 

…確か、すずかってあの金髪の子が呼んでたわね。

 

本を返しにきたんだろう、すずかさんの手には本が握られている。

 

「…」

 

しかし私は直ぐに興味を失くしすずかさんに向けていた視線を本に戻す。

 

「ほ、本読むの好きなの?」

「…」

 

私は問いに答えず本を読むことに集中する。

 

「え、え~と…」

 

「「………」」

 

し~ん…。

 

図書室が沈黙に包まれる。

 

…ふぅ。

 

私は読むのをやめ、すずかさんに視線を移す。

 

「…読書は好き。これで満足?」

「え?あ、うん」

「そう…」

 

再び視線を本に戻し読書のを再開する。

 

「わ、私もね!」

 

…今度は何?

 

「ほ、本読むの好きなんだ!」

 

その言葉に反応し、私はちらりとすずかさんを見る。両手を胸の前でぐっと握って真剣な表情で私をじっと見ている。

 

「…そう」

 

私はそう答えるとまた本を読みはじめる。

 

 

 

 

 

 

――――side Suzuka Tukimura

 

 

「ほ、本読むの好きなの?」

 

私は勇気を振り絞って声を掛けてみる。まずは話してみないと何も始まらないよね?

 

「…」

 

工藤さんは私には目もくれず本を読むことに集中している…。

 

うううぅ…。私の事なんて眼中にないって感じだよぉ…。

 

「え、え~と…」

 

「「………」」

 

し~ん…。

 

図書室が沈黙に包まれる。

 

う、ううう~…気まずい。

 

私がどうしようか悩んでいると、工藤さんは本を読むのをやめ、私の方に視線を移す。

 

「…読書は好き。これで満足?」

「え?あ、うん」

 

いきなりの言葉に間抜けな声がでちゃった…。

 

「そう…」

 

工藤さんはまた視線を本に戻し、本を読みはじめる。

 

「わ、私もね!…ほ、本読むの好きなんだ!」

「…そう」

 

工藤さんはちらりとこっちを見るけどすぐに本の方に視線を戻す。

 

し~ん…。

 

会話が止まりまた図書室に沈黙が訪れる…。

 

うぅ、話が続かない…。

 

ふと、私は重大な事を思い出した。まだ自己紹介をしてない。

 

「あの…工藤さん?」

「…?」

 

工藤さんは「まだ用あるの?」と言いたげな表情でこちらを見てくる。

 

うぅ、そんな顔しないで…。

 

でも負けないと私は勇気を振り絞って話しかける。

 

「自己紹介してないよね?私、月村すずか。よろしくね?」

「……ふぅ」

 

工藤さんは「こいつもか…」と言う表情でやれやれとため息を吐くと、本を閉じこちらを見上げ、じっと見つめてくる…。その瞳はとても冷たかった…。

 

「最初に言ったはずよ…。私に関わらないで」

「…どうして?」

「………」

 

工藤さんは私の問いに答えない。黙って目を瞑る。何かを思い出すように…。

 

「人は…簡単に裏切る」

「…え?」

 

裏切るって…?

 

「どんなにその人が優しくても…いえ、やさしいからこそ簡単に裏切る」

「やさしいから?」

 

やさしいから裏切るの?むしろ反対じゃ?

 

「やさしい人は心が脆いから…だから逃げる。裏切る」

 

工藤さん…。貴女の過去に何があったの?

 

「どうせ裏切られるんなら、最初から関わらない方がいい…」

 

工藤さんの過去に何があったのかはわからない。けど、それはいけないことだと思った。

 

「…ダメだよ」

「…」

「工藤さんに何があったのか、私は知らないよ?でも、それはいけないことだよ…」

「…どうして?仲良くなっても裏切られるのよ?」

 

違う。そもそもその考え方自体が間違っている。

 

「最初から裏切られるなんて考えちゃダメだよ!ちゃんとお話して、お互いを理解しあって、本当のお友達になれば、そのお友達は絶対に裏切らない。助け合っていけるはずだよ?」

「…」

 

工藤さんは私の話を目を瞑り黙って聞いている。

 

「だから、お話しよ?なのはちゃんだって工藤さんとお友達になりたいから話しかけてるんだよ?」

「…私は…っ!?」

 

ガタンッ!

 

工藤さんは何か言おうとしたけど急に椅子から大きな音を立てて立ち上がった。

私はそんな工藤さんの突然な行動に目を丸くして工藤さんを見上げる。

 

「く、工藤さん…?」

「リリィ!?そんな、どうしてここに!?」

 

リリィ…?

 

聞いたことの無い…名前だろうか?それが何なのかは私には分からなかったけれど、工藤さんの焦る表情から何かあったのは察することは出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――side Yomi Kudou

 

 

「最初から裏切られるなんて考えちゃダメだよ!ちゃんとお話して、お互いを理解しあって、本当のお友達になれば、そのお友達は絶対に裏切らない。助け合っていけるはずだよ?」

「…」

 

私はすずかさん改め月村さんの話を目を瞑りながら黙って聞く。

 

…本当の友達?くだらない。私は友達の絆よりも更に強い絆で結ばれていたはずの家族に裏切られたのよ?

 

「だから、お話しよ?なのはちゃんだって工藤さんとお友達になりたいから話しかけてるんだよ?」

 

私は友達になんてなりたくない。そんな安っぽい絆なんて邪魔なだけよ…。

 

「…私は」

 

『母さん、助けて!』

   

「…っ!?」

 

ガタンッ!

 

私は直接頭に響いた声に驚き椅子から立ち上がる。今の声は…!?

 

「リリィ!?そんな、どうしてここに!?」

 

家でおとなしくしてるように言ったのに!?

 

「リリィ!」

「工藤さん!?」

 

私は図書室から飛び出すと全速力でリリィの居る場所に向かう。廊下は走らないんじゃないのかって?そんなの知ったことじゃない。大切な娘が危険な目に会ってるかもしれないんだ。

使い魔であるリリィ、その主の私は精神が繋がっていてお互いの居る場所の大体は感覚で分かる。

 

…裏庭の辺り?

 

「工藤さん!」

 

背後から私を呼ぶ声が響く、振り向くと月村さんが凄いスピードで私を追いかけてきた。

 

は、速い!?普段は大人しそうなイメージなのに!?

 

月村さんはすぐに私に追いつき隣に並ぶ。

 

「…何?」

「えっと、工藤さんがあんなに焦ってる所初めて見るから…」

「…」

 

…だから?

 

「なにかあったのかな?って…」

「は、はぁ…?」

 

…そんなくだらない理由で追いかけてきたの?

 

「リリィって誰?」

「…猫」

「猫?」

「…えぇ」

「工藤さんの家って猫飼ってるの?」

「違うわ…」

 

飼ってるんじゃない。リリィは私の大切な家族だ。

 

「…家族」

「え?」

「リリィは私の大切な家族。飼ってるんじゃないわ」

「そうなんだ…ごめんね?」

 

そう謝るすずかさんだったが、その表情は何処か嬉しそうにだった。

 

「わかれば・・・いいのよ」

 

 

 

 

私と月村さんは裏庭に辿り着くと上級生らしき男の子二人と女の子二人が何やら口論になっていた。遠くからであまりよく見えないが、あの女の子はなのはさんとアリサさんだ。二人は男の子達から猫を庇うようにして立っている。

 

「やめて!この子猫が何をしたの!?」

「そうよ!こんな子猫をいじめて恥ずかしくないの!?」

 

…あの男子がリリィをっ!

 

「あれって・・・なのはちゃんにアリサちゃん?」

 

私は月村さんの言葉を無視しリリィの下へと全力で駆ける。さっきのスピードなんて比じゃない。

 

…リリィを虐める奴は誰であろうと…潰す!

 

「リリィに…」

 

更にスピードを上げる…。

 

「!…よ、詠ちゃん?」

 

なのはさんが掛けて来る私を見て驚いた表情を見せる。

 

「手を…」

 

もっと…もっとよ。もっと速くっ!!

 

「アイツ…何でこんな所に!?」

「誰だあいつ?」

「あん?」

 

アリサさんも気付いたところで男子二人も私に気づいたようだ。丁度良い。その体制のまま動くな。

…射程内。私は勢いを殺さずに飛び上がり、空中でドロップキックの態勢をとる。

 

「出すなああああああああああああああ!!!!!!」

 

バキィッ!

 

その蹴りは見事に男子の顔に直撃し足がめり込り、そして吹き飛ぶ。

 

「ぶるぁああああああああああああああああ!!??」

「ちょっ!?おま!?こっち来んぐほぁあ!!??」

 

もう片方の男子も吹き飛ばされた男子に巻き込まれ一緒に吹き飛ぶと、そのまま目をくるくると回して気絶する。私は気絶している片方の男子の胸倉を掴み、顔面を思いっきり殴りつける。

 

バキィッ!

 

「ぐへぇっ!?」

 

男子は殴られた衝撃で目を覚まし悲鳴を上げるが、私は容赦無く顔面を殴り続ける。

 

ドカァッ!

 

「ちょっ…」

 

黙れ…。

 

バキッ!

 

「やめっ…」

 

五月蝿い…。

 

グシャッ!

 

「ゆるしてっ…」

 

許さない…。

 

ドコォッ!

 

「…ご、ごめっ」

「もうやめて!その人謝ってるよっ!?」

 

なのはが私の腕を掴み殴るを止めるが私はその手を振り払う。

 

「関係無い…」

「関係無くないっ!」

 

高町さんは真剣な表情で私の瞳を見つめてくる…。

 

「…」

 

チッ…わかったわよ。でも…。

 

キーンッ!

 

私は最後に全力で股間を蹴り上げる。

 

「ふぁsdk;あdskljくぇ;□#%☆!?」

「うわぁ…あれは痛いわね」

 

「「?どうして?」」

 

「…知らなくていいわよ」

 

なのはさんとすずかさんが揃って首を傾げると、アリサさんが顔を赤くして顔を逸らせる。

 

ピクッ…ピクッ…。

 

泡を口から吐きながらぴくぴくと痙攣し、悲鳴が上げなくなった男子から手を離すともう片方の男子を睨み付ける。

 

「ひぃっ!?」

 

…あぁ、起きてたのね。起こす手間が省けたわ。

 

「詠ちゃんっ!」

 

高町さんが私を止めようと私に呼びかけるが、私はその声に耳を傾けない。

 

まだ、こいつに制裁を下していない。

 

私はゆらりと男子に近づいていく…。

 

「ひぃいいいいいいいっ!?」

 

男子は尻餅をついてガタガタと体を震わせて、怯えた目で私を見上げる。

 

「な、何だよ!?…たかが猫一匹でこんな事されなきゃならないんだよ!?」

「…猫だから虐めて良いと?」

「ど、どうせそいつは生きていけねぇよ!親猫が死んだんだから!」

 

ピクッ…。

 

私はその言葉に反応し、体の動きを止める…。

 

…親猫が死んだ?何故そんなことを知っているの?

 

「…どういう…事?」

「へ、へへっ!この間、学校の帰りに見かけた野良猫の親子をボコボコにしたんだよ。」

 

男子は何やら自慢するかのように話し始める…。

 

「最初は痛めつけるだけでやめる予定だったけどな!子猫を殴ろうとしたら親猫が引っ掻いてきやがってよ。思わずカッとなっちまって」

 

…そうか、こいつが。

 

「子猫の方は逃げたけどな。間違いねぇよその子猫だ。親猫は両足折ってやったしボロボロだったから生きてねぇだろ」

「ひ、ひどい…」

「あんた達!」

「何て…ひどいことを…」

 

なのは達の表情が怒りと悲しみに染まっていく…。

 

「野良猫なんてゴミを荒らす害虫だろ?別に殺したって…っ!?」

 

バキィィッ!!

 

「げはぁっ!?」

 

私は男子が言葉を言い終わる前に全力で顔面を殴り飛ばし、倒れた男子に跨り、殺意を込めて顔面に拳を叩き込む。

 

バキィっ!

 

「ぐぁっ!?」

「野良猫だから…殺していいの?」

 

男子は悲鳴を上げるがそんなことは気にも止めず再び顔面を殴りつける。

 

グシャァッ!

 

「ふぐぅっ!?」

「元々人間が自分勝手な理由で捨てたのが原因でしょ?」

 

そう、人間が猫を捨てなければ野良猫なんて…。

 

ガスッ!

 

「ひぎっ!?」

「それが…害虫?」

 

ドスッ!

 

「かはっ!?」

「害虫は…貴方でしょ?」

 

どうやら今ので口が切れたようだ。口から血が垂れている。でも、私は殴る手を止めない。

 

ドコォッ!

 

「何も罪も無い命を奪い…」

 

手がこのゴミの血で真っ赤に染まる。でも私は殴るのをやめない。

 

バキッ!

 

「子猫から親猫を奪い…」

 

ゴミから悲鳴が聞こえなくなった。気を失ったらしい。でも私は殴るのをやめない。

 

「…その罪」

 

私は拳を高く振り上げる…。

 

「死をもって償…「だめぇ!」っ!?」

 

拳を振り下ろそうと瞬間再び高町さんに腕を掴まれ、それを阻まれる。さっきと違うのは腕を掴んでるのに金髪の子が加わっていると言うところだ…。

 

「…どうして止めるの?」

「それ以上やるとその人…死んじゃう」

「…別にいいじゃない」

「別にって…」

「良くないよっ!」

「このゴミはリリィの親を殺したのよっ!?」

「殺していい人なんて居ないよっ!」

「そんなことないわ。殺して良い人なんてこの世界に沢山居る。だから死刑がある」

「それはっ…」

「確かに殺されて良い人も居ると思う。でも殺して良い人は居ないよ?」

 

さっきから黙って今までの光景を見ていた月村さんが口を開き私たちの傍に寄ってくる。

 

「すずかちゃん…」

「…」

 

私は強く握った拳を緩め、なのはの手を振りほどき、二人を見下して冷たく言い放つ。

 

「…二度と私とリリィの前に現れるな。この下衆が…」

 

「「「・・・・・」」」

 

3人はただ黙ってその光景を眺めていたが私はそんな事など気に留めず、手に着いた血をハンカチで拭い、リリィに駆け寄り抱きしめる。

 

「リリィ!」

「にゃ~~~!『うわあああん!母さん!』」

「馬鹿!家で待ってなさいって言ったでしょう?」

「にゃあ~…『ごめんなさい…』」

「まぁいいわ、今度からはしないようにね?またやったら怒るわよ?」

「にゃあ~…『は~い…』」

「怪我はない?」

「にゃっ!『うん!』」

「そう…よかった」

 

私はリリィに怪我がない事を確認するリリィの頭を優しく撫でる。リリィは気持ち良さそうに目を細めもっととせがむ様に頭を私の手に擦りつける。私はその姿を見て無意識にほほ笑んでいた。

 

「あ、あの~…」

 

…はっ!?

 

高町さんの声で現実に引き戻される。高町さん達が居たことを忘れていた・・・。まずい所を見られてしまったわね。

 

「その子猫、工藤さんの?」

「…えぇ」

 

高町さんを見てさっきリリィを庇ってくれていたことを思い出す。高町さん達がいなければリリィは大変なことになっていたかもしれない。

 

「リリィを守ってくれたの?」

「え?」

「さっき、二人がリリィを庇っているのが見えたから…」

「あ、うん…そうだけど」

「なのはが急に走り出すから追いかけてみたらその子猫がそこでのびてる奴等にいじめらそうになってるんだから驚いたわ」

「そう…」

 

念話か…。なのはさんも魔導師なんだから聞こえて不思議じゃないわね。リリィが無意識に私だけじゃなく周りの人にも助けを呼んだのか…。

 

「なのはちゃんも?」

「え?」

「工藤さんも急に走り出すんだもん、驚いちゃった」

 

…余計な事を。

 

「…詠ちゃんも?」

「へぇ~奇妙なこともあるものね」

 

高町さんが私をじっと見つめてくる。…まずいわね、話を逸らさないと。

 

「ありがとう」

 

「「「え?」」」

 

「高町さんと…誰?」

「アリサよ!アリサ・バニングス!!」

「そう…高町さんとバニングスさんがいなかったら、リリィが危険な目に会っていたかもしれない…」

 

最近の子供は残忍なことも平気でやってしまう・・・。私は最悪の結果を思い浮かべてしまい身を震わせる。

 

「だから…ありがとう」

 

私は深々と頭を下げる。

 

「「「…」」」

 

三人は想像すらしていなかった私の行動にただ唖然としている。まぁ、いままでの私の態度からしてみれば当然だけれど…。

 

「べ、別に、アンタのためにやったんじゃないんだから!礼なんて言われる筋合いなんてないわよ!」

「もう、アリサちゃんったら…」

「アリサちゃんの言い方はアレだけど、別に気にしなくていいよ?当然のことをしただけなんだから」

「…そう」

 

当然のこと、か…。もしかしたら自分が怪我をするかもしれないのに?

 

…お人好しすぎる。

 

「まぁ、どうしてもって言うならしょうがないから感謝されてあげるわ!」

「もう、アリサちゃん!」

「…この借りは、ちゃんと返すわ」

「えっと…だから気にしなくていいんだよ?」

「いいえ、リリィは私にとって掛け替えの無い大切な存在。それを助けてくれたんだから。それくらいしないと気が済まない」

「そんなにリリィちゃんが大切なの?」

 

コクリと頷く。

 

「私の…家族だから」

「わかったの!じゃあ!私の事をなのはって呼んで!“さん”はダメだよ?」

 

…まだ言ってるの?

 

「そんなに嫌そうにしてもダメなの!」

 

…しょうがないわね。

 

私はやれやれと溜息を吐くと意を決して名前を呼ぶ。

 

「………なのは」

「うん♪」

 

なのははすごく嬉しそうに返事をする。何がそんなに嬉しいのか私には理解できない。

 

「これでお友達だね♪」

「それは嫌(きっぱり」

「が~んっ…」

 

それとこれとは別だ。さっきまではしゃいでいたなのはは一気に萎み地面にのの字を書いている。

 

「じゃあ、私も。すずかって呼んで?」

「…貴女もなの?」

「うん♪」

 

彼女は笑顔で頷く。私は諦めて溜息を吐くと…。

 

「はぁ…すずか」

「はい♪詠ちゃん♪」

 

下の名前で呼んでるし…ってちょっと待ちなさい。

 

私はある事に気が付く。すずかは私を追いかけてきただけで何もしてないじゃない。

 

「…貴女って何かしたかしら?」

「何のことかな?」

 

惚けるとは卑怯な…この子、案外腹黒いわね…。

 

「ふ、ふん!じゃあ、しょうがないから私もアリサって呼ばせてあげるわ!」

「いや…別に呼びたくないし」

「な、なんですってぇえええええ!?」

「ア、アリサちゃん。落ち着いて…」

「そ、そうだよ。こういうのはちゃんと頼まないと…」

 

暴走するアリサをいつの間にか復活したなのはとすずかがなだめる。

 

「くっ!私の事はアリサと呼びなさい!私も詠って呼ぶわ!いいわね!?」

「…わかったわ。アリサ」

「ふ、ふん!わかればいいのよ!」

 

アリサはやけにでかい態度で振る舞うが、頬を赤く染めて少しうれしそうにしていた。

 

…ほんと、何が嬉しいんだか。

 

「あ、あのさ…」

 

なのはがおずおずと話しかけてくる。

 

「どうしたの?なのは?」

「あの二人放っておいていいの?」

 

あぁ、あのゴミか…。

 

「大丈夫だよ、なのはちゃん。ウチに電話しておいたから♪」

「すずかちゃんの?」

「うん♪親に言われるとPTAとかいろいろと面倒だから♪」

 

素敵な笑顔ですずかは微笑む。

 

は、腹黒いわね。この子…。

 

「そ、そうなんだ…」

「相変わらず黒いわね、すずか…」

 

すずか曰く。使えるものは使う(使える権力は使う)。だそうだ…。結局この世はお金と権力よね…。

 

 

 

 

「さっそくなんだけど詠ちゃん♪」

 

なのはがピョンと跳ねて自分を私の顔に近づけてくる。どアップのその顔は妙にニコニコしている…。

 

…何を企んでるの?

 

「…何?」

「今日、一緒に帰ろ♪」

「嫌(きっぱり」

 

ピシッ…!

 

この場の空気にひびが入り、皆の動きが止まる。その表情は笑顔のまま凍りついている。

 

「名前では呼んであげるけど、友達になる気は無いわ」

 

「「「…」」」

 

「リリィがいるから今日はもう帰るわね…」

 

私はそう言うとリリィを腕に抱えてこの場から立ち去る。しばらくしてから背後からアリサの叫び声が聞こえてきた。

 

 

「や、やっぱりむかつくーーーーー!!!!!」

 

 

後から聞いた話だが。あの男子二人組は、どこかの学校に転校したらしい。恐ろしいわね、月村家…。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――12月2日 PM2:00

      通学路

 

 

『わ~い♪』

 

リリィは私の頭の上に乗っかり楽しそうにしている。さっきまで危ない目にあっていたのに呑気なものね。ふふふ♪

 

「楽しそうね?リリィ」

『うん♪母さんと一緒だから♪』

「そう…でも、もう勝手に家の外に出ちゃ駄目よ?」

『は~い♪』

 

本当に分かってるのかしら…。

 

「さて、これからどうしようかしら?」

 

時計を見るとまだ2時になったばかり、帰っても親が居るし…。リリィとの約束もあるし、公園で遊ぼうかしら?そうと決まれば…。

私は周りに人が居ないことを確認すると頭に乗っかっているリリィに話しかける。

 

「リリィ、人の姿になってくれる?」

『うん!わかった~!』

 

リリィはピョンッと頭から飛び降り着地する。

 

「服も忘れないでね?」

『は~い!』

 

リリィは光に包まれると人の姿に変わっていき、白いワンピースを着た少女へと変身する。

 

「出来たよ~♪」

「はい、よく出来ました♪じゃあ、公園に行って遊ぼうか?」

「わ~い♪」

 

リリィは両手を挙げ跳びはねて喜んだ。

公園に着くと、公園にある遊具、ブランコや滑り台などを使って帰る時間まで遊びつくした。

 

 

 

 

時間を忘れ公園で遊んでいると、空が赤く染まりかけていることに気が付く。時計を見れば3時を過ぎている。あのゴスロリの事もあるし、早めに帰っておきたい。

 

「もう時間だし、帰っろか?」

「え~~~?」

「暗くなると怖い人が現われるから危ないの。ね?」

「うぅ~~…は~い」

 

怖い人と聞くとリリィは大人しく私の言うことに従う。猫の時の記憶が僅かながら覚えているのかもしれない。

 

「良い子ね。それじゃ、帰りましょ?」

 

私はリリィの手を繋ぐと家に向かって歩き出す。その風景は親子と言うより姉妹と言う感じだけど、私とリリィはとても幸せそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

――――12月2日 PM3:30

    風芽丘図書館

 

 

家に帰る途中、大きな建物の前を通った。門には「風芽丘図書館」と書いてある。

 

…図書館か。

 

まだ少し時間がある。中を覗いてみようかな?

 

「…リリィ、ちょっと寄り道していい?」

「うん!いいよ~!」

「ふふっ、ありがと」

 

 

 

 

…大きい。学校とは比べ物にならないわね。

 

中に入ってみるとかなり広かった。暖房も入って快適だし、利用者もそれなりに居る。それに何より本の数だ…。

 

「3階まである…」

「ひろ~い」

 

この町はどれだけ裕福なのよ?都会でもないのに…。

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。今日は見に来ただけだし帰るとしようかしらって…あれ?

 

私は隣を見てみるとさっきまでそこにいたはずのリリィが居ない。

 

「リリィ!?」

 

私が目を離しているうちに逸れた!?

 

建物の外には出てないと思うけど…どこに!?

周りを見渡してみるとリリィはすぐに見つかった。何やら車椅子の女の子の隣で背伸びして本を取ろうとしているみたいだ。

 

「ん~~~~~っ!!」

「リリィちゃん。無理せんでええよ?」

「ん~~~っ!ん~~~~っ!!」

 

リリィは必死に本を取ろうとするがもう少しと言うところで手が届かない。私はリリィの傍に歩み寄るとリリィが取ろうとしていた本を手に取る。

 

「あ…」

 

「世界の童話…か。これでいいの?」

 

本のタイトルを見るとそれなりに有名な本だった。私も昔よく読んでいた記憶がある。

 

「あっ、はい。ありがとうございます」

 

私は、本を女の子に渡すと女の子は笑顔で礼を言ってきた。笑顔がとても似合う女の子ね。

 

「…気にしなくていいわ。リリィが助けようとしなかったら私は無視してたから」

「それでも、ありがとうございます。…あのお名前は何て?」

「…工藤詠」

「詠ちゃんかぁ」

 

…この子もいきなり下の名前で呼ぶの?

 

え?何?この町は初対面の人を下の名前で呼ぶ習性でもあるの?何それ怖い…。

 

「私、八神はやていいます。はやてって呼んでな?」

 

…聞いてないし。呼び方まで指定しないでよ。

 

「歳はいくつ?」

「…9」

「同い年かぁ」

 

八神さんは何やら嬉しそうに微笑む。

 

「…もういい?」

「あ…ごめんな?急いどった?」

「ええ…」

「そうなんか…ホントごめんな?」

「気にしなくていいわ…リリィ、帰るわよ?」

「うん!じゃあね~はやてお姉さん!」

「じゃあなぁ~リリィちゃん」

 

リリィは私の手を握るとはやての方を見て手を振る。はやてもそれを見て笑顔で手を振り返す。私はその光景を複雑な気持ちで眺めていた。

 

…私の考えをリリィに押し付けるのは良くない…でも。

 

リリィが悲しい思いをさせてく無いという気持ちもある。そう考えていると昼休憩の時、すずかの言葉を思い出した。

 

―――最初から裏切られるなんて考えちゃダメだよ!ちゃんとお話して、お互いを理解しあって、本当のお友達になれば、そのお友達は絶対に裏切らない。助け合っていけるはずだよ?

 

…最初から裏切られるなんて考えちゃダメ…か。

 

そんなのは現実を知らないから言える言葉だ。実際に経験すれば嫌でも分かる。人間は醜い生き物だと…。

私はそんなことを思いながらリリィと一緒に家に帰った…。

 

 

 

 

 

 

 

――――side Hayate Yagami

 

 

詠ちゃんとリリィちゃんと別れた私は再び困った事に直面していた。

 

「…届かへん」

 

読み終わった本を元の位置に戻そうと本棚に手を伸ばすが届かない。

 

…どないしよう?

 

誰かに頼むと迷惑掛けてまうし…。

 

私は何度も本棚に手を伸ばす。でも、何度やっても本は本棚に収まらない。困っていると誰かの手がスッと伸びてきて私の手から本を取る。

 

「あ…」

「この本を此処に戻せばいいんですか?」

 

驚いた声を洩らして見上げると、そこには私と同じくらいの女の子が笑ってそう尋ねてきた。

 

「はい、ありがとうございます」

 

同じことで二度も助けてもらうなんて不思議なこともあるもんやな…。

 

 

 

 

「そっか、同い年なんだ」

「うん、時々此処で見かけてたんよ?」

「実は…私も」

「そんなんかぁ…」

「私、月村すずか」

「すずかちゃん…八神はやて言います」

「はやてちゃんかぁ…」

「それにしても、今日は2回も助けてもらうなんて」

「…2回もって?」

「うん、ついさっき私と同い年の子にな。本取ってもらったんよ。そういえばすずかちゃんと同じ制服やったな」

「へぇ、そうなんだ」

「うん、詠ちゃんっていうてな」

「え!?詠ちゃん!?」

 

詠ちゃんの名前を聞いてすずかちゃんがすごく驚く。

 

「何や?知ってるん?」

「同じくクラスの子だよ・・・」

「へぇ~…凄い偶然やね」

「そうだね。…詠ちゃんが助けてくれたの?」

「そや、なんや冷たそうな子やったけど。本当に冷たい人やったら助けえくれへんよね?」

「…そうだね。きっとそうだよ」

 

…また、会えるとええなぁ。

 

私はまた会えることを願いつつすずかちゃんと楽しくお話をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――12月2日 PM7:20

     自宅・自室

 

 

 

帰宅して私とリリィは一緒に風呂に入った。リリィが風呂を嫌がり、逃げ回って捕まえるのには手を焼かされた…。

 

夕食を食べ終えると私はすぐに自分の部屋に戻り、リリィにキャットフードを与える。

 

『ウマウマ♪』

 

キャットフードは3分もしないうちにリリィのお腹の中へと消え去った…。キャットフード早食い大会があったら是非出場させたいわね。

 

…さて、私は色々と準備しますか。

 

一昨日の夜襲ってきたゴスロリの少女。昨日は襲ってきたけど今日も現れないとは言い切れない。リリィも守らないといけないし、このマンションに隠蔽魔法でも施しておこう。

私の足元に魔法陣が出現すると、その魔法陣はだんだん大きくなりマンションを覆っていく…。

 

…これで此処から出ない限り私の魔力反応を感知されることは無いと思うけど…。

 

ふと、なのはの笑顔が頭に浮かぶ…。

あのゴスロリは血眼になって私を探している事だろう。私がこの町に住んで居る事は彼女も知っている。なら捜索範囲を絞りこの町を捜索すれば必ずなのはは彼女と遭遇することになる。そうなればその魔力目当てになのははあのゴスロリに襲われるかもしれない。いや、きっと襲われるだろう。

 

…私には関係ないわね。

 

『ふにゃあ…母さん眠い」

 

お腹が膨れて眠くなったのかしら。リリィは大きく欠伸をすると、眠たそうな顔で私を見上げてくる。私はリリィをやさしく抱きかかえる。

 

「ふふふ、ご飯食べて眠くなった?」

 

『うん・・・』

 

「それじゃあ、リリィはもうお休みなさいしましょうね」

 

『は~い・・・』

 

私はリリィをベッドの上にそっと置くとリリィはベッドの中にもぞもぞと入っていった。

 

「おやすみ、リリィ」

 

『おやすみなさ~い・・・』

 

私はリリィが寝たのを確認すると部屋のライトを消し、勉強机の椅子に座り電気スタンドを点け本棚から適当な本を手に取り読み始めた。

 

 

 

 

 

 

――――side vita

    12月2日 PM7:40

      海鳴市上空

 

 

 

街灯が星のように輝いている夜の街この間とまったく変わらない風景。私はただひたすら奴を魔力を探っている。一昨晩に出会ったアイツ。夕方までは魔力反応があったのに夜になって急に反応が無くなった。魔法で細工でもしたのか?

 

「…くそっ!見つからねぇ!」

 

アイツのあの嘲笑う顔を思い出すだけで苛立ち冷静さを失う。冷静さを失えば焦って隙を作りその結果あの時と同じような失態を生む。頭じゃわかっちゃいる、わかっちゃいるのに・・・。

 

「…ちぃっ!」

「ヴィータ。落ち着け」

 

今まで沈黙を守っていたザフィーラはアタシの様子を見兼ねたのか口を開く。

 

「我等の目的を忘れたのか?我等の目的はリンカーコアの収集。お前が探している者を倒す事では無い」

「わかってるよ!」

 

アタシ達の目的はリンカーコアの収集。はやてを助けて平穏な日々を取り戻すこと・・・。

 

「ならば、良いのだがな…」

 

ザフィーラは私の向いている方向の反対側に向かって歩き出す。

 

「何処に行く?」

「手分けして探そう。ヴィータ、目的を忘れるなよ。(ヴィータがここまで冷静さを失うとは…。ヴィータと手合わせした相手はこれを予測して?だとしたら恐ろしいく頭の切れる者だな)」

「…」

 

ザフィーラはそう言い残すと飛び去っていった。私は何も答えず黙ってそれを見送ると、その場に佇む・・・。

 

…落ち着け。今はリンカーコアの収集。

 

アタシはアイゼンを構え直す。

 

「封鎖領域…展開」

 

結界を展開すると、結界はだんだん大きくなり、結界が街を覆っていく…。結界が街の大半を覆った頃、大きな魔力反応を感知した。

 

「魔力反応…大物見っけ!」

 

これは…例の奴か!

 

「行くよ、アイゼン。今度は確実に頂く」

『Jawohl(了解)』

 

 

 

 

 

――――side Nanoha Takamati

 

 

「ふんふ~ん♪」

『Are you happy? master.(ご機嫌ですね?マスター)』

「うん♪今日、詠ちゃんに名前で呼んでもらったんだ♪」

『It is best(それはなによりです)』

 

一緒に帰れなかったけど、今度は必ず一緒に帰るんだから♪

 

「それにしても、あの時の詠ちゃん綺麗だったなぁ…」

 

私は、昼の事を思い出す。子猫を抱きしめる詠ちゃんの優しい笑顔。あの時、私あの笑顔に見惚れちゃったよ。あの笑顔を何かに例えるなら、教会にある聖母マリア様だよね。

 

上級生を殴ってる時の詠ちゃんは怖かったけど…。

 

「はにゃ~…。もう一回あの笑顔が見たいよぉ~…」

 

私はチーズが蕩けたように机にべたりと寝そべって、みっともないだらけた顔になる。

 

『Caution,Emergency(警告、緊急事態です)』

「え?」

 

レイジングハートの警告と同時に辺りの雰囲気が一変する。私はこの感覚をよく知っている。これは…。

 

「結界!?」

『It approaches in high speed(対象、高速で接近中)』

「近づいてきてる?こっちに!?」

 

此処に居たら家に被害が…とにかくここから離れないと。

 

でも一体誰なの…?

 

私は結界で覆われた空を見上げた…。

 

 

 

 

私は出来るだけ住宅街から離れ、辺りを見渡せるようビルの屋上へと上がった。

 

『It comes(来ます)』

「っ!」

 

私は空を見上げるとじっと空を睨みつける。

 

『Homing bolt(誘導弾です)』

「っ!?」

 

空の向こうからボールのような物が高速で私に向かって飛んでくる。

 

ズドオオオオオオンッ!

 

「くぅうううっ!」

 

私は咄嗟に障壁を展開し攻撃を受け止める。かなりの威力だ。少しでも気を抜くと障壁が破られる!

正面の攻撃に集中していると背後から殺気を感じとる。

 

「えっ!?」

 

最初のは囮っ!?

 

「テートリヒ・シュラーク!」

 

私はもう片方の手で障壁を展開し受け止めるが、二方向からの同時攻撃に耐えられず少しずつ後ろへと押されていく…。

 

…ダメっ!押し負けるっ!?

 

ズドオオォンッ!

 

「きゃあああああああっ!」

 

障壁諸共私は吹き飛ばされ屋上から転落する。

 

「レイジングハート!お願い!」

『Stand by ready. set up』

 

レイジングハートの言葉と同時に私は桃色の光に包まれ、レイジングハートの形が杖へと変わっていき私の服もバリアジャケットへと変わった。

 

「…」

 

紅いドレスの子はソフトボールくらいの大きさの鉄球を生成する。

 

『Spiral fliegen』

「ふんっ!」

 

紅いドレスの女の子はその鉄球を私がいる桃色の光に向かって打ち飛ばし、その鉄球はもの凄いスピードで私に向かって突っ込んでくる。

 

ズバアアアアアンッ!

 

鉄球に貫かれ光は爆発し、煙に包まれ、女の子は追い討ちをかけるようにハンマーをその煙に向かって振り下ろす。けど私はその煙に紛れ回避する。私は一旦距離を離し、女の子に話しかける。

 

「いきなり襲いかかられる覚えはないんだけど?何所の子?何でこんな事するの!?」

 

女の子は答えずに新たに鉄球を生成する。

 

「教えてくれなきゃ、わからないってば!」

「っ!?」

 

私はさっき飛ばしておいたアクセルシューターを女の子の後方から攻撃させるとその攻撃は防がれる。

 

「このやろうおおおおおおおおおっ!」

『Flash move』

 

女の子は一気に距離を詰めハンマーを振り下ろすが、私は回避する。確かに速いけどフェイトちゃんとまではいかない。なんとかかわせるレベルだ。私は後退しながらレイジングハートをシューティングモードに変形させる。

 

「話を…」

 

魔力が杖の先端に収束していき…。

 

『Divine…』

「聞いてってばぁあああああっ!!」

『Buster』

 

収束されていた魔力が一気に放出され、女の子に向かって一直線に向かっていく。

 

「っ!?」

 

女の子は咄嗟に体を捻り攻撃を回避する。女の子にダメージは無くバリアジャケットが一部破れただけだった。それだけなのに女の子は目の色を変えて私を睨みつけてくる。

 

「あぅ…」

 

もしかして…怒らせちゃった?

 

「グラーフアイゼン。カートリッジロード!」

『Krachen form』

 

デバイスから鉄砲の弾みたいな物が飛び出したと思ったら今度はハンマーの形が変わっていき先端は鋭く、もう片方の先端はハンマーにブーストような形に変形していた。しかもそれだけじゃない、あの子の魔力もさっきとは桁違いに上がってる。

 

…何、あれ?

 

「ラケーテンっ!」

 

ブーストから火が噴き出し、女の子はそれを自分自身を回転させてその勢いを殺さずに私に向かって振り下ろしてきた。私は障壁を張り防ごうとするけど、障壁は紙のように簡単に破られ、ハンマーの尖端がレイジングハートを傷付ける。

 

「えっ!?」

「ハンマアアアアアアアアアアアアっ!」

 

女の子は容赦無くハンマーを振り下ろし私を吹き飛ばした。

 

「あああああああああああっ!!!」

 

吹き飛ばされた私はビルの窓に激突し、窓ガラスを突き破る。

 

「けほっけほっ…」

「でえええええええええええい!」

「っ!?」

 

私がよろめきながら立ち上がると、女の子は容赦無く追撃してきた。私はぼろぼろになったレイジングハートを構える。

 

『protection』

 

ズガガガガガガガガガッ!

 

障壁とハンマーがぶつかり合う。

 

「くぅっ!」

「硬てぇけど…あの女程じゃねぇっ!!!」

 

…あの女?

 

誰の事だろう?私は疑問に思ったけれど、それを訊ねる余裕は無かった。

 

「ぶち抜けええええええええっ!!!」

『Jawohl(了解)』

 

その言葉と同時にブーストの炎強く吹きあがり、障壁がガラスが割れたような音を立てて砕け散り、ハンマーはバリアジャケットに直撃し、バリアジャケットの上着も消え去った…。

私はそのまま吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 

女の子は肩で息をしながらも止めを刺そうと私にゆっくりと歩み寄りハンマーを振り上げる。

私は無意味だと分かっているのに、無意識にレイジングハートを女の子に向かって構えていた…。

 

こんなので…終わり?

 

嫌だ…。

 

ユーノ君…。

 

クロノ君…。

 

 

…フェイトちゃん!

 

 

振り下ろされるハンマーに、私は反射的にギュッと目を瞑る。

 

ガキィィィィンッ…。

 

でも、いつまで経ってもあのハンマーは振り下ろされてこない…。

 

「残念だけど…そこまでよ」

 

…え?

 

「てめぇ…は!」

 

聞き覚えのある声。怒りに震える女の子の声。私は目を開き顔を上げる…。

 

「…よ…みちゃん?」

「これで食事の借りはチャラよ。なのは」

 

そこにはいつも通りの無愛想な表情で障壁でハンマーを受け止め私を見降ろしていた詠ちゃんがいた…。

 

 

 

 

 

 

 

――――side Yomi Kudou

     10分前

     自室

 

 

「…始まったわね」

 

私は本を読んでいた手を止める。

 

「さて…どうなるかしらね」

 

この魔力反応はなのはとあの時のゴスロリね…。

 

なのはがあのゴスロリに勝てるとは思えない。確かになのはも高い魔力を持っている。でも、あのゴスロリにはカートリッジシステムがある。正面からぶつかり合ったらまず勝ち目は無い…。

 

「昨日の訓練からするになのはは射撃系。あいつとは相性は悪いわね」

 

距離を詰められたら一撃で落とされる可能性が高い。障壁を張ろうがカートリッジを使われればお終い。

 

…何を考えてるの私は。

 

「私には関係ないじゃない…」

 

そう、関係ない。なのはがどうなろうと私の知った事じゃない。

それに、なのはのバックには管理局がいる可能性が高い。関われば大変なことになる。

 

『えへへぇ…なのはお姉ちゃぁん』

 

リリィが器用に念話で寝言を言っている。

 

どうやら、昼の件で懐いてしまったようね…。

 

「…ふぅ」

 

なのはに何かあればリリィが悲しむ…か。

そういえば、食事の借りが返せて無かったわね…。

 

後で変な命令されるのも嫌だし…。

 

…しょうがないわね。

 

『―――アクセス』

 

この前と同じ手でやったら負けるわよ…私。

 

私はベランダに出て街に向かって飛び去った…。

 

 

 

 

――――12月2日PM8:00

 

 

ガキィィィィンッ…。

 

「残念だけど…そこまでよ」

 

私は障壁を張りハンマーを受け止める…。

 

ゴスロリはまるで親の仇を見るように私を睨みつけてくる。

 

そう睨まないでよ。怖いじゃない。

 

「てめぇ…は!」

「…よ…みちゃん?」

「これで食事の借りはチャラよ。なのは」

「え?」

「貴女はそこに居なさい。邪魔だから」

「う、うん…」

「さて、と…」

 

私はゴスロリの方へと向き直る。わざわざ待っていてくれたのは流石ベルカの騎士ってところかしら?

 

「始めましょうか…」

「上等だ…今度は確実に…潰すっ!」

 

ゴスロリは殺意を剥きだしにしてハンマーを振り下ろし襲いかかってくる。私はそれをひらりとかわすと、割れた窓から外に飛び出し空へと上がる。ゴスロリもそれを追って空へと上がってくる。

 

「ふふふ…まるでイノシシね」

「てめぇっ!!!」

「ふふふ…おいでよお嬢ちゃん…楽しい遊びをしよう…」

 

でも、残念ね。もう貴女は私の術中にハマってるのよ…。

 

さぁ、今宵も私の掌で踊りなさい。フフフフフ…♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――side ???

 

 

暗闇よりさらに暗い闇に覆われた部屋に3人の老人の声が響く…。

 

 

「…例の物が見つかったそうだな?」

「はい。しかもその所有者は幼い少女だそうです…」

「ほう…して、どうする?」

「あの存在は邪魔だ。管理局の闇を知りすぎている…」

 

どのような組織でも必ずしも闇がある。この時空管理局もそうだ。

 

「ですが、手なずければ使えますぞ?」

「ふん、ジェイル・スカルエッティーのような異児は一人で十分だ」

「ふむ…確かに…な」

 

あのような獣を二匹も飼っているといつ牙を剥いてくるかわかったものではない。それに、奴にどれだけの費用を用いたと思っておるのだ。

 

「その少女は処分するのか?」

「いや、所有者を殺しても奴は何処かに転移する。所有者の知識を喰らってな…」

「古の知識だけでは飽き足らず、まだ喰らうか…」

「では?」

「うむ、例の物はその所有者諸共永久封印とする」

「そうじゃな、たかが子娘一匹消えようが我等には関係ない」

「して、例の物は今どこに?」

「第97管理外世界だ」

「第97…確か今あそこには」

「うむ、アースラが向かっておる」

「ふん!ハラオウンの子娘か!」

「それだけではない、グレアムも絡んでいるようだ」

「何?どう言うことだ?」

「…11年前の事件か」

「うむ」

「では、闇の書が!?」

「うむ」

「なんとタイミングの悪い事か…」

「だが、グレアムが絡んでくるのも頷ける」

「ふん、何を企んででおるかは知らんが。余計な事を…」

「しかし、そうなれば表だって行動できんな」

「我々の息の掛かった者たちをアースラに増援として送るとしよう」

「…で?その少女の名前は?」

 

 

 

 

「工藤 詠」

 

 




―――― 一方その頃…。


キュピーンッ!

「はっ!?」
「どうしたのフェイト?」
「ユーノ。私、今重要なイベントを逃した気がする…」
「え?」
「なのはの好感度UPのイベントが…」
「…そんなことより急ごうよ。なのはが危険な目に会ってるかもしれないんだから」
「…そうだね」

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