魔法少女リリカルなのはA’s ~幼き賢者と魔法~   作:金髪のグゥレイトゥ!

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第6話「傍観者なの」

 

 

――――Side Lindy Harlaown

    12月4日AM10:00

    アースラ

 

 

「本日、本局から増援として参りましたハウル・ラウンド二等空尉です」

「同じく!ゼル・カウス三等空尉であります!」

「…ノール・クライシー三等空尉です」

 

3人の青年が背筋を伸ばし私に向って敬礼をし私も敬礼を返す。

 

…彼らが報告にあった本局からの増援ね。眼鏡を掛けた糸目の人がラウンド二等空尉。赤髪でテンションの高い人がカウス三等空尉。無愛想な人がクライシー三等空尉か。

 

「忙しいのにわざわざ遠い所からごめんなさいね?」

「いえ、それが私達の仕事であり使命ですから」

 

ラウンド二等空尉が笑顔で答える。

 

使命、ね…。

 

立派な志の様にも思えるが、如何してか私は彼の言葉を素直に受け止めることが出来なかった。

 

「そうっすよ!事件があれば何処へだって飛んでいくっす!」

「…ノール。上司に対して無礼だ。口を慎め猿」

「あんだとこら!?」

「…僕は正論を述べたまでだ」

 

カウス三等空尉とクライシー三等空尉はお互いに睨み合い、いつ喧嘩が起きてもおかしくない状況になる。私は止めようとするとラウンド二等空尉が二人の間に割って入った。

 

「止さないか二人とも。ゼル、確かに今のは君の方が悪い。ハラオウン艦長に失礼だろう。ノール、君も言いすぎだ」

「ちっ…」

「…」

 

ラウンド二等空尉に仲裁され二人はそれ以上何も言わず目線をそらす。

 

「良いのよ別に、先程の様な話し方で構わないわ」

「ですが…」

「良いのよ、これから同じ現場で働く仲間なんだから、ね?」

「…はい。艦長がそうおっしゃるのなら」

 

今は様子を見ましょうか。クロノには彼等から目を離さないように言っておかないと…。グレアム提督の所からも武装局員一個中隊が来るし、彼らが何かしらの目的があったとしても簡単には行動できないと思うけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6話「傍観者なの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side Yomi Kudou

    12月4日AM12:00

     学校・屋上

 

 

12月になって本格的に冷たくなってきた風が屋上を吹き抜ける。勝負に負けた私はテスタロッサさんに屋上に呼び出された。屋上にいるのはテスタロッサさんと私だけ、なのははアリサ達が此処に来ないように別の場所で昼食をとっている・・・。

 

「「………」」

 

テスタロッサさんは何から話そうか悩んでる様子で黙り込んでいた。人と接するのが苦手なのかそれとも嫌いなのか・・・・おそらく前者なのだろうけど・・・。後者なら私に話しかけたりしないだろうし。

 

「…それで?聞きたいことって?」

 

私から話をきりだす。このままだと埒が明かないし昼休憩が終わってしまう。

 

「え?」

「聞きたいことがあるんでしょう?」

「う、うん…」

 

聞きた事は予想できるし話す義理もないが、負けてしまったのだからしょうがない。約束は守らなければ。それに正直に話すと約束をしたわけではない。適当にはぐらかしてしまえばいいだろう。

テスタロッサさんはキリッと表情を変える。この間の戦闘の時と同じ表情だった。

 

…これが貴女の本当の顔かしら?

 

「…一昨日の夜。工藤さんは何処にいましたか?」

 

やっぱりね。まぁ、それしかないだろうけど…。

 

「何でそんなこと聞くの?プライベートな事までは話す気ないわよ?」

「質問を変えます。貴方は…魔導士ですか?」

 

これはまたストレートに来たわね…。

 

「はっ…何?それ?アニメや漫画の見すぎなんじゃない?」

 

私は鼻で笑うとテスタロッサさんはポケットから何かを取り出し私に渡してくる。

 

「何これ?…っ!?」

 

渡されたのはヴィータとシグナムと戦う私が写された写真だった。

 

…撮られていたのか。

 

今冷静に考えれば不思議な事ではない。管理局の魔導士が居たのだから管理局の目があるのは当然だ。けれど、あの時は守護騎士のことで手一杯だったので管理局のことは頭にはなかった。これは大きな失敗だ…。

 

「…」

「これは貴女ですね?」

 

ごまかしたところで別の証拠を突き出されそうね。ここは正直に答えておくか。

 

「…そうよ。だから何?」

「あの甲冑を纏った魔導士とは関係者ですか?」

「無関係よ。私は襲われたから自己防衛のために反撃しただけ」

 

きっぱりと答える。別に嘘を吐く理由もないし、管理局を敵に回したくない。

 

「そうですか…」

 

私の返答にテスタロッサさんはほっと安堵の表情を浮かべる。

 

「これで終わりかしら?」

 

なら早く終わらせてくれないかしら。面倒なことを聞かれる前に御暇したいんだけど・・・・。

 

「いえ、貴女が彼女たちの仲間ではないことは分かっていました。ここからが本題です」

「…何?」

 

聞きたいことはだいだい予想できるけど…。

 

「貴女が使っていた魔法…あれは何処で知りましたか?」

「…」

 

やっぱりそうきたわね。あれは今は存在しない筈の魔法だし…。

 

「あの魔法は、本局のどのデータベースにも存在しない魔法でした。それなのに何故、貴女はそんな魔法を使えたんですか?」

 

私がそれを正直に話すと思ってるの?なのはじゃあるまいし。

 

 

 

 

「…クシュンッ!」

「うわ!?きたないわね~!」

「なのはちゃん、風邪?」

「ごめ~ん…。風邪ではないと思うんだけど…あれ~?」

 

 

 

 

「知らないわよそんなこと。こんな魔法が使いたい。そう考えてやってみたら出来た。それが何か?」

「そんなことは不可能です。魔法には複雑な術式が必要です。そんな簡単に出来るものじゃありません」

「出来たんだからしょうがないじゃない。それが現実よ」

「…」

 

納得できないと言う顔だ。けれど律儀に納得できるまで付き合ってあげる義理はこちらには無い。早々に切り上げさせてもらうとしよう。

 

「質問は終わり?じゃあ、失礼するわね」

 

早くしないと昼休憩が終わって昼食が食べられなくなる。

 

「待って!」

 

私は立ち去ろうとテスタロッサさんに背を向けると呼び止められ立ち止まる。

 

「…何?」

「貴女は…何者なんですか?」

「…工藤詠よ。知ってるでしょう?」

 

そう答えると今度こそ私は屋上を立ち去った…。

 

 

 

 

 

 

 

――――Side Yomi Kudou

    12月4日PM4:00

     教室

 

 

すべての授業が終わってHRも終了すると私は急いで荷物を片付け廊下に飛び出しげた箱に向かって駆け抜ける!

 

ここ最近、走ってばかりな気がするわね…。

 

それもこれもあの天然少女のせいだ。

 

「詠ちゃん待って~~!一緒にかえろ~~~~~!!」

 

却下。

 

なのはが私の後を走って追いかけてくる…が運動神経が鈍いなのはが私に追いつける訳が無い。貴方達にじゃれあう時間は私には無い。それに、今日はこの間行った図書館に行く予定だし。

あの量の本。久々に楽しめそうな場所を見つけたと私は少しだけ感情が高まっているのを感じつつ廊下を駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

――――Side Yomi Kudou

    12月4日PM4:30

     風芽丘図書館

 

 

私は図書館に走って向かっていた。歩いているとその分図書館に居られる時間もなくなるし。守護騎士の件もある。早めに家に帰らないとまた襲撃される危険がある。

 

「はぁ…はぁ…着いた」

 

私は息を切らせて図書館に着くと休まずに門を潜る。

ガラス張りの自動ドアが開けば室内の空気が漏れて本独特の香りが私の鼻をつく。自動ドアが開いた先。そこには多くの本棚が並べられていた。それを見た私は蕩ける様な恍惚な表情を浮かべる。

 

「ふふふ…本がいっぱい」

 

本。本は良い。本は多くの事を私に教えてくれる。本は多くの楽しみを私に与えてくれる。人と関わらなくても多くの知識を、多くの喜びを本は私に与えてくれるのだ。

私は棚に並べられている多くの本に心を躍らしながらどの本を読もうかと歩きまわる。すると見覚えのある少女が視界に入った。

 

あれは、確か…八神さん。だったかしら?

 

八神さんは私に気づくと一緒にいる金髪の女性に話しかけ私に近づいてくる。

すると、私はふと付き添いの女性が自分に向けて来る視線に違和感を覚える。彼女は隠しているつもりかもしれないが、その瞳の奥には明らかな敵意が潜んでいるのが私には分かった。人間不信なせいかそう言う自身に向けられる敵意などには私には敏感なのだ。

 

あの金髪の人…家族?ではないわね。誰かしら?妙に私に対して何か敵意というか…。

 

人に嫌われたりするのは日常茶飯事だが、初対面の人間に嫌われると言うのは今までになかった。彼女は一体…?

 

「詠ちゃん!こんにちわ~」

 

八神さんは笑顔で挨拶をしてくる。それに合わせて後ろで車椅子を押している金髪の人も外面だけの笑顔を浮かべてペコリと頭を下げてきた。

 

…誰が名前で呼ぶことを許したのかしら?

 

「…何か用?」

 

私は本を読まないといけないのだけど…。

 

「用って程な物はないけど…迷惑やった?」

「そうね」

「…ごめんな」

 

八神さんはしゅんと肩を落とす。そんな彼女を見た私は居た堪れなくなり、やれやれという感じでフォローをする。彼女にリリィが懐いているのは事実なので傷付けるわけにはいかなかった。

 

「ごめんなさい。今日も時間が無くてね…本読みたいのよ」

 

八神さんはパァっと顔を輝かせて私を見つめる。

 

…何?

 

「本好きなん?」

「…ええ、じゃないと此処には来ないわ」

「うちもや!」

「…そうなの」

 

…だから何?

 

「一緒に本読まへん?」

「嫌よ」

「え~?おねがい~」

「嫌」

「お願いや~」

「嫌」

「お願いします~」

 

 

 

 

 

 

問答を10分程繰り返し。結局、私の方が折れた。

 

「はぁ…本によるわね」

 

本来ならきっぱり断る所なのだが、リリィの事もあるし…それに時間も限られている。残った時間を考えると大人向けの本は読めないだろう。残された時間で読めるのは挿絵が多く入った子供向けの本か…。

 

「お姫様と騎士の物語や」

 

八神さんは私にお姫様と騎士が表紙に描かれている本を見せる。

 

「騎士、ね…ふふふ」

 

『騎士』その言葉は最近の私にはあまりにも縁がありすぎて思わず笑ってしまった。

 

「どないしたん?」

 

八神さんは不思議そうに見上げてくる。

 

「なんでもないわ。そうね、それでいいわよ」

「やった~!」

 

なんでそんなにうれしいのやら…。

 

八神さんは両手を挙げて喜び、私はやれやれと溜息を吐くと近くにあったソファーに座り八神さんと一緒に本を読み始めた。

本の内容は病気のお姫様を治すためにその治療する魔法の薬を求めて世界を旅し戦う騎士の物語だった。私はこの物語を読んであの紅い騎士思い浮かべる。

 

何が目的で戦ってるのかは知らないけれど、真実を知らずに戦ってるわけね彼女は…哀れな子。

 

進むその道にはハッピーエンドじゃなくバッドエンドしかないというのに…。

 

「どないしたん?」

「…え?何?」

「えっと、何か考え事してたみたいやから」

 

突然声を掛けられ思わず聞き返してしまう。どうやら顔に出ていたらしい。

 

「その本の騎士が私の知り合いに似ていてね」

「へぇ、そうなんか~」

「ええ」

「…っ」

 

私の言葉に純粋に受け止めて楽しそうに微笑む八神さん。

そんな私達の会話を金髪の女性は複雑そうな表情で見ていた…。

 

…?何?

 

「そういえば紹介してなかったな。この人はシャマル。うちの親戚や」

「どうも」

 

シャマルさんは微笑んで挨拶をしてくる。

 

「…どうも」

 

親戚…。

 

「うちの家庭はちょっと特殊でな」

「…そう」

 

特殊…。あえて聞かないけど。

 

自分とて特殊と言えば特殊な家庭だ。深く追及しようとは思わなかった。というより興味すら湧かなかったと言うのが正しいだろう。

 

「…もう時間ね」

 

時計は6時前を指していた。もう帰らないと完全に日が沈んでしまう。それにリリィの機嫌を損ねてしまう。

 

「もうこんな時間かぁ~…」

「それじゃあ…」

 

私はソファーから腰を上げると荷物を手に取る。

 

「詠ちゃん」

「…何?」

「またな♪」

「…」

 

私は何も答えずにその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side Yomi Kudou

    12月4日PM7:30

     自宅:自室

 

 

「今日はなんだか疲れたわ…」

 

私は風呂から上がるとそのまま自室に戻りベッドにダイブして枕に顔を埋める。リリィも釣られて私にダイブしてくる。

 

『どうかしたの~?母さん?』

「ん~?今日は色々とあり過ぎちゃって疲れただけ。心配しなくていいよ?」

 

私は体を起こしてリリィを持ち上げて抱きしめる。

 

管理局が出てきた以上、もう守護騎士とは関わるわけにはいかない。奴等と戦闘にならないよう早めに家に帰らないと…。近いうちにまた管理局が接触してくるだろう。なんとか策を練っておかないと…。

 

今日は少し疲れたしゆっくりしよう。此処には結界も張ってあるし守護騎士も気づかないでしょうし。

 

「よし!リリィ…遊びましょうか!」

『わ~い♪なにするの~?』

 

ふふふふ、この時のために帰りに取ってきておいたのよ!

 

私はリリィを下ろすと鞄からがさごそと漁りだす。

 

「じゃじゃ~ん!ね~こ~じゃ~ら~し~♪」

 

私は猫じゃらしを取り出した!

 

『ニャっ!?』

 

リリィは尻尾をピーンッと伸ばす。

 

「ほ~ら♪フリフリ~♪」

 

猫じゃらしをリリィの前で揺らすとリリィは今にも跳び付きそうに体をうずうずさせる。

 

『ニャ…にゃぁ~♪』

 

リリィが飛びついて来た!が私は猫じゃらしをヒラリと避ける。

 

『にゃっ!?』

「ふっふっふっ、まだまだねリリィ。そんなんじゃ私には勝てないわ」

 

何がどう勝つのかは聞いてはいけない。

私は再び猫じゃらしをリリィの前で揺らす。

 

「ほ~れ、ほ~れ♪」

『にゃぁ~~~~♪』

 

 

 

 

 

 

『くぅ~くぅ~…』

 

遊び疲れたのかリリィはマクラの隣で丸くなり寝息を立てている。

 

「ふふっ、満足したみたいね」

 

さて、私は眠くなるまで本でも読んでようかしら…。

 

「…っ!?」

 

私は本棚から本を取り出そうと手を伸ばすが、ある気配に気づき手を止める…。

強い魔力同士の激突による衝撃と言えばいいのか、波の様な物が私の五感とは別の感覚がそれを察知したのだ。

 

「…今日も暴れてるようね」

 

この魔力反応は守護騎士となのはとテスタロッサさん。あと大勢居るようだけど…これは管理局の人間かしら?なのは達に比べると大したことないわね。

 

まぁ、なのはのような魔力の持ち主が大勢いる方がある意味問題なのだが…。むしろ質量兵器の方が安全な気がしてくる。

私はなのは達が戦っているであろう夜の空を部屋の窓から見上げた。

借りも返した。管理局も動いてる。今回は傍観者を決め込むべきだろう。

 

『アクセス』

 

私は偵察魔法を展開する。すると私の目の前に大きな画面が現れ、そこには守護騎士と戦うなのは達が映し出された。

 

「…カートリッジシステム?無茶なことをするわね」

 

ミッド式のデバイスにカートリッジシステムを積むなんて危険にも程がある。

カートリッジシステムは元々はベルカ式のデバイスのためにが開発したもの。相性の悪いミッド式のデバイスに使うのはあまりにも危険な行為だ。

 

「…これが管理局のやり方?なのは達は捨て駒だというのかしら?」

 

自分には被害が無いから別にどうでもいいということ?

 

「…私には関係ないことね」

 

そう、私には関係ない。しかし、どうやら今回の戦いは守護騎士の方が不利ということになる。なのはとテスタロッサさんのカートリッジシステムを積んだデバイス。それと局員が張った強固な結界…。

 

「これで終了かしら?」

 

だとしたら助かるのだけれど…さて、どうなるのかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side Nanoha Takamati

    12月4日PM8:00

     海鳴市上空

 

 

「私が勝ったら、話を聞かせてもらうよ!?」

「やれるもんなら…」

 

女の子は鉄球を生成しグラーフアイゼンを大きく振りかぶる。

 

『Spiral fliegen』

「やってみろよおおおおおお!!!!」

 

打ち出される鉄球。初戦の時とは違い今度は奇襲ではないため、その攻撃を回避することは容易に出来た。

 

「っ!」

『Accel Fin』

 

鉄球をかわす。しかし女の子は反撃の余裕を与えまいと私に向ってハンマーを振り回して駒の様に回転しながら突っ込んで来る。

 

『Krachen form』

 

デバイスから火が噴き出し回転の勢いが増す。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

『protection powerd』

 

前は破られちゃったけど…でも!

 

私は正面に障壁を展開する。

 

ズガガガガガガガガガガッ!!!!!

 

「か、硬てぇっ!?」

「…すごい」

 

私も驚いている。こんなにパワーが上がってるなんて…。

 

障壁は依然としてその形状を保っている。壊されるどころか罅が入る気配すら見られない。

 

前は簡単に破壊されたのに…。これがレイジングハートの…私の新しい力?

 

『barrier burst』

 

え?爆発っ!?

 

私は驚くけど、レイジングハートは気にせずにそれを実行に移した。

 

ズドオオオオオオンッ…。

 

うわわわ!?

 

レイジングハートの音声と共にバリアが爆発し、私と女の子は吹き飛ばされ距離が広がるとレイジングハートが話しかけてきた。

 

『Let's shoot it,accel shooter.(アクセルシューターを打ってください)』

「…うん!アクセルシューター!」

『accel shooter』

 

杖の先端に魔力が溜まっていく…。

 

「シュート!!」

 

ズバァン!

 

集まった魔力が無数に分裂し、前方にいる女の子に向かって発射される…はずだった。

 

「っ!?」

 

発射された魔球はそれぞれ標的とは明後日の方向に飛んでいく。コントロールが出来ていないのだ。

 

…やっぱり、こんなにたくさんの球を操作するのは私には無理なの?

 

すると、弱気になっている私にレイジングハートが私に指示を求めてくる。

 

『Controi please.(コントロールをお願いします)』

「っ!?」

 

…そうだね。弱気になったら駄目だよね!このために特訓してきたんだから!

 

私は瞳を閉じ、魔球の操作に意識を集中させる…。

 

「馬鹿が!そんな一辺に操作できるわねぇだろっ!」

 

女の子はそう言うと、鉄球を生成し私に目掛けて飛ばしてくる。

 

そんなことない。やってみなきゃ分からない…だって!!

 

鉄球は私の目の前まで迫って来たけどそれが私に触れることはなかった。

 

ズガンッ!ズガンッ!

 

さっきまで私の思うように動いて無かった魔球が鉄球を撃ち落とす。

 

「なっ!?」

「諦めたら…そこで終わりだもんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side Yomi Kudou

    12月4日PM8:10

     自宅:自室

 

 

『諦めたら…そこで終わりだもんっ!』

「…へぇ、やるじゃない」

 

あれだけの数の球をコントロールするなんて…。

 

「テスタロッサさんの方も優勢のようだし、これでチェックかしら?それにしても」

 

この強固な結界、かなり強力ね・・・・10人掛かりでやってるからと言って…あら?

 

私は10人の局員の周りに三角形を作るよう陣形を取っている3人組が居る事に気が付く。

 

あの3人組が原因か…。かなり高いランクの魔導師みたいだが…。

9歳の民間人の少女に協力を仰ぐくらいだ。管理局はかなり人手不足だと思っていたのだけど…。

 

「…闇の書が絡んでいるから?」

 

それなら納得できる。しかし何故だろう?他の局員とは何か雰囲気が違う…。

 

…何か、嫌な感じね。

 

「…」

 

この場所も絶対にばれないという訳じゃない、この事件が長引けば此処もばれてしまう可能性がある。

 

「はぁ…問題が山済みね」

 

戦闘に参加する訳にもいかないしだからと言ってこのまま傍観者を気取って長引けばこの場所がばれる…か。今夜で終わってくれると助かるんだけど…そう簡単にはいかないでしょうし。

 

いざという時には闇の書のページを使えばこの状況を打破出来る。使ったページはまた溜めればいい話だ。出し惜しみするほど彼女達はそこまで愚かじゃないだろう。

 

「…闇の書の主が誰か分かれば」

 

…主が分かれば昼間に接触出来るかもしれない。

 

私は画面に視線を戻す。もしかしたら闇の書の主が居るかも知れない。画面を何度も切り替えているとある人物の映った画面で切り替わるのがピタッと止まる。

 

「…この人は」

 

その画面に映っていたのは金髪の女性。図書館で八神さんと一緒にいた女性だった。確か…シャマルさんだったかしら?

 

…なるほど、あの時の視線はそういうことだったの。

 

ピースが一つ、また一つと繋がっていく。敵意を含んだあの視線。彼女が守護騎士なら納得できる話だった。

そして、これで闇の書の主である可能性が高いのは八神さんであることがわかった。

 

体が不自由なのは闇の書がリンカーコアを侵食してるから?

 

「はぁ~…出会わなければ放置していたのだけど」

 

死なれたら目覚めが悪い。それに、闇の書が暴走すればこの世界も巻き込まれる。私は逃げるけど、住む所が無くなると困るし…。

 

さて、接触するとしてもそれからどうしたものやら…。

 

ズドオオオオオオオオオオオンッ!!!!

 

「っ!?何っ!?」

 

私が思考を巡らしていると大きな音と衝撃と共に街を揺らした。画面を見てみると結界が破られていた。

 

闇の書を使ったのか…ていうか、目を離した隙に何か変な仮面を付けた男も増えてるし。

 

「書の主…という訳でも無さそうね。シャマルさんも初対面みたいだし…」

 

守護騎士たちは結界が破壊されたのを確認するとすぐさま転移してこの場を脱出した。

 

第三勢力の可能性…か。この事件も何かいろいろと裏がありそうね。

 

「楽に解決…は無理よね。これは」

 

私はそう呟く。部屋にはリリィの寝息だけが響いていた…。

 

 

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