艦隊これくしょん 艦これ ~水面の愛と水底の命~ 作:hatahata
別に見てあげてもいい、という心の広い方たちはお紅茶でもすすりながらゆっくり見ていってね!
7月 俺たちは太平洋のど真ん中に来ていた。
なんてことはない、ただの遠洋航海練習だ。
真珠湾を出てサンディエゴの基地にご挨拶に行ってまた帰ってくるだけ。
だが俺を含めて乗組員のほとんどがしかめっ面をしている。
艦は昨日の夕方から朝方まで発達した低気圧の中を航行していたからだ。
鍛えられた屈強な船乗りでもあれにはもうこりごりだ。
おかげで朝には艦中が酸っぱい匂いで満ちていた。
いつもは朝食が足りないとケチをつける乗組員も今日はスプーンでパンを叩いていた。
幸いにも今は、空は雲一つない快晴だ。
波もそれほど立っていない
しかし今の乗組員のコンディションで訓練をやっても何も身につかないので午前中は自由とした。
命令を出した後、彼はいったん自室に戻って上着を脱ぎ棄てた。
机の引き出しに隠しておいたタバコとライターを持ち出すと艦内の狭い通路を通り、甲板に出た。
そこには一人の先客がいた。
砲雷長のジョニー グレイマン中佐だ。
「気が合うなジョン、私も失礼させてもらうよ」
「おはよう、クリス。お前も涼みに来たのか?」
「まぁな」
そう言ってポケットに入れていたタバコとライターを取り出した。
「おい、クリス。艦内は火気厳禁で喫煙も禁止、駄目じゃないか。上に人にばれたらやばいぞ」
「ばれなきゃ犯罪じゃないんだよ。ほら」
見逃してくれよ、と賄賂でも渡すかのようにタバコを一本差し出す。
彼もまんざらではないようで、受け取ってライターを貸してもらって火をつけた。
談笑しながら主砲を横目に、どんどん進んでいく。
昨日の嵐でびしょぬれだった甲板も夏の太平洋の日差しで殆ど乾いている。
一番風通しのいい艦首を目指して前部VLSを通り過ぎ、主砲の脇を過ぎようとした。
そこでクリスはあるものを見つけた。
「なんだこいつ?魚か?」
大きさは大きめのズッキーニほど。
目は一つしかなく、大きな口がある。
体表は黒でかなりなめらかな感じだった。
「こんな魚見たことない...。」
「奇形種じゃないか?」
「そうか?こいつにはヒレもエラもないんだぞ。もしかしたら新種の魚かもしれない。」
憶測だけが飛び交うが、一つだけわかっていることがある
「こいつら、かなり弱ってるようだ。このまま海に帰しても喰われるな。」
「そうだな、いっそのこと育ててみるか?」
「育てるって...水槽もないし、そもそも餌もなんだかわからないのに育てるなんて」
「いいじゃないか。俺たち海軍は命を守るために活動してるから、ね」
「う~う、あまり納得いかないが...。仕方がないか」
こうして休憩を振って不思議な生物を持ってクリスとジョニーは艦内に入って行った。
艦長室に戻ってクリスは艦の調理場から水槽の代用で使ってない大きな鍋を借りてきた。
それでもあまり余裕はなかったが仕方が無い。
そしてクリスはこの不思議な生物の観察日記をつけ始めた。
観察日記1日目 日記をつけ始めたが書くことが多すぎる。まず一体こいつは何者なのだろうか?俺が与えた夕食をすべて食っちまった。肉でも野菜でもパンでも何でも食べる。ミートスパゲッティを食べる魚なんて初めて見た。
観察日記2日目 俺の部屋で派手な音が聞こえたと聞いてCICから急いで戻ってきたらベッドにでかい穴が開いていた。どうやって俺のベッドに大穴を開けたかは知らないがこれからはこいつを怒らせないようにしよう。いつ俺が殺されるかわからない。
観察日記3日目 今日は視察で機関室に行ったら、燃料が俺の服に着きやがった。部屋に戻るとあいつは俺の服を舐め回し始めた。どうやらあいつは油を好むらしい。こいつのことがもっと分からなくなった。
観察日記4日目 ジョンが俺の部屋に飛び込んできた。なんでもあいつに水槽の代わりの鉄鍋を食われたらしい。こいつらはロボットか何かか?
観察日記5日目 昨日の射撃演習で出た50口径の空薬莢を少しいただいてきた。奴が鉄鍋を食うんだったら薬莢も食うだろう。案の定あいつは(多分)うまそうに全部平らげてしまった。
観察日記18日目 演習航海も行程の半分を行った。その間にもこいつは鍋では収まりきらないほどまで大きくなっているから主砲の弾薬箱をいただいてきた。オペレーターからは変に見られたが、まさか俺が艦内で生き物を飼ってるとは思いもしてないだろう。
観察日記30日目 いよいよ明日で航海も終わりだ。そして、幸か不幸か、こいつは俺に懐いてしまったらしい。俺が部屋に戻ってくると俺のほうを向いて水槽から飛び跳ねて
るし、空薬莢や燃料をあげると喜んでいるようにも見える。本当にこいつはただの魚なのか?
USSジェイソン・ダンハムは約一カ月の練習航海を終えて真珠湾に戻った。
この艦はいったん修理に入るため、乗員には2ヶ月ほどの休暇が言い渡された。
久しぶりの地上に乗組員は喜び、家族との再会を楽しんでいた。
「ジョン、あいつは今後どうするんだ?」
「ああ、あいつか、家の女房は生き物全般無理だし、俺にあまりなついていないみたいだから、プレゼントするよ。だってお前独身だし、二匹飼うぐらいの余裕はないのか?」
「ない。こいつらの主食は油と鉄。ドッグフードとは訳が違うんだぞ。」
クリスは即答した。
「そうか...なら仕方がない。ハワイ大学か軍の研究所に預けるとするか。可哀そうだがこれ以外方法が無い。」
「そうしてくれ。」
その後家に戻ってクリスは大きな水槽を買った。
もう弾薬箱でも狭く感じるほどの大きさになっていた。
クリスはまた日記を書き始めた。
観察日記31日目 家に移したが、初めての環境であまり慣れていないのか、行動が少しおどけている。だが、そんな姿もここ最近ではかわいく見えてしまう。
観察日記34日目 なんだか様子がおかしい。元気が無いみたいだ。昨日から鉄くずもあまり食べない。心配だがこいつを病院に連れていっても診てはもらえないだろう。明日には元気になっているはずだ。
観察日記35日目 朝起きると自分の目を疑った!今まで魚のような形だったのが人間のような姿に変わっていた!最初は夢かと思ったが真実らしい!だが信じられない!
36日目 俺はこいつに名前を付けた。『ジェシカ』。生まれてくるはずだった娘につけるはずの名前だった。もしかしたらこの子は天国のケイトが俺に与えたものなのかもしれない。大事に育ててやる。
50日目 またジェシカに英語を教えているが、学習能力がとても高い。すでに簡単な会話までできるまで上達している。今後がとても楽しみで仕方がない。
52日目 ジェシカに一緒に外に行こうと言ったら、暑いのは嫌いだから外に行きたくない。と言った。元は水生生物だから仕方が無い。外に出るのは対策をしないと無理そうだ。
60日目 やっぱりジェシカは外に行きたがらない。日の光が嫌いなのかもしないが、外に出るのが怖いのかもない。けど、こうしてジェシカと暮らせるのも中々良いものだ。
一方、同時期にグレイマン中佐の個体はハワイ大学の研究所に送られた。
しかし凶暴性が強く、加えてこれが来てから研究所内で爆発騒ぎが頻繁に報告されるようになると急きょ、海軍の実験施設に送られることとなった。
そこで海軍は各種の実験を行い、その個体のデータを収集、解析した。
以下がその内容である。
1この生物はどの種族にも当てはまらない完全な新種であること。
2この生物は赤外線、X線での検知が不可能であること。
3この生物は自己防衛として砲に類似した器官を備えていること。
4この生物の主食は化石燃料、鋼材であり、砲のような器官を使用した場合は火薬も摂取すること。
そして軍が調査を進めると太平洋の深海にこの形の生物が沢山生息しているのを発見。
軍は、この生き物は兵器に適しているところに目をつけ、この生物を深海棲息生命戦闘艦、通称『深海棲艦』と名付け開発をすることを決めた。
数々の実験をこなしていくと、戦艦のように大きな砲をもつ個体が生まれたり、空母のように艦載機の様な生物をくりだして攻撃するような個体も出来た。
そして深海棲艦達に与えるストレスが大きければ大きいほど、より強い個体が出来るので日に日に、実験の過激さがエスカレートしていていった。
その日アシュリー(実験されている深海棲艦のコードネーム。グレイマン中佐が育ててた個体)は収容所のベットに横になっていた。
連日に続く実験でへとへとだ。
『今日の実験は堪えたなぁ。まさかいきなり砲弾をぶち込まれるとは思ってなかったよ。』
「大丈夫か、アシュリー?これでも飲むか?」
目の前に、青白い手と、マグカップに入った重油があった。
「ドーラ、帰ってきてたの?」
「かなり前にね。部屋に入っても反応しなかったから燃料切れでぶっ倒れてるのかと思ったよ。」
「もう本当に倒れたいぐらい疲れてわ。今日なんか砲弾何発くらったかわからないよ。」
「こっちも同じような感じよ。まあ、お互い明日も頑張ろうね。」
ドーラは同じルームメイトだ。
この研究施設では、二人につき一部屋が与えられる。
基本は同じ艦種で組むものなのだが、ここだけは極初期に造られたペアなので艦種が違う。
私が戦艦級でドーラが空母級だ。
研究が始まった時から一緒だったからもう親友みたいな関係になっている。
もし、すべてが終わって実戦配備されたら同じ部隊になろうと約束したぐらいだ。
明日は早い、さっさと寝よう。
「お休み、ドーラ。」「お休み、アシュリー。」
そうして二人は深い眠りについた。
二人はいつも通りの朝を迎えた。
朝はドーラの方が起きるのが早く、いつもアシュリーはドーラに起こされている。
「起きろぉ~。朝だぞぉ~。早く起きないと朝ごはんみんなに食べられちゃうよぉ~。」
「うん?ぁ?ああ。おはよう。」
「やっと起きたかこの寝ぼ助め。さあ、朝ごはん食べにいこ。」
「うん。」
二人は部屋を出て、一階にある、食堂に行った。朝食は毎日研究員がかわって調理している。
「今日はジョッシュ、チャックが当番らしい。」
「まじでか、あの飯マズペアか。終わったな。」
配られた配膳には、主食の鋼材、副菜として弾薬、マグカップに入った燃料。
そして、どうしてこうなった?と言いたくなるぐらいに真っ黒になったパンと、海水よりも濃いんじゃないか?と思いたくなるぐらいしょっぱい野菜沢山(ほぼそのまま)スープがあった。
「「......」」
二人は鋼材、燃料、弾薬だけ食べて、パンとスープは、ドーラの艦載機にあげた。
「あの子たち、私の格納庫の中で吐かないでくれればいいんだけど...。」
「あんなの食べて吐かない方がすごいわよ。」
「一応聞いてみるか...。みんな、大丈夫?気持ち悪くない?、えっ?大丈夫なの?絶対大丈夫じゃない声だよね。本当に大zy...あっ、吐きやがった!うっわぁ、頭の中ぬめぬめするぅ~。うう、きも...。先行ってて、ちょっと中洗ってくる!」
『大丈夫かなぁ?』
今日一日の実験内容は朝食後に各自に伝達される。
『今日はいつも通り模擬戦訓練か、模擬弾といっても当たると痛いんだよなぁ...。』
いつも通りに訓練をやる海域に行くために、湾の中に入ろうとしたその時だった。
「実験変更だ、別の場所に移動する。早くトラックに乗れ。」
と研究員に言われた。
『実験変更って何があったんだろう?まあ、模擬戦はあまり好きじゃなかったからいいかもね。』
研究員の命令に従ってトラックに乗って彼女が連れてこられたのは、施設の中にある何もない大きな部屋だった。
壁の反対側には研究員たちの小部屋があって部屋が見れるようにガラスで仕切られている。
『こんなところで何するんだろう?』
彼女は考えたがまったくわからなかった。
しばらくするとドーラもやってきた。
「ドーラ!」「アシュリー!どうしたのいったい?」
「わからない。ここに来いって言われたから来ただけ。特に何も言われてないんだよね」
「私も」
そのあとしばらくしても研究員が来るような気配もせず、しばらく、待っていることにした。
「ねぇ」
「何?ドーラ」
「私達ってなんで生まれてきたのかね?」
「私にわかるわけないじゃない、そんなこと。人間達が私たちのことを、兵器にして使いたいから生まれてきたんじゃなの?」
「私は何か違うと思うんだ。」
「私たちは本当にこうなるために生まれてきたのかなって。たまに思うんだ。『私たちは何者なのか?』ってね...。」
「何者なのか?って言ったってドーラはドーラじゃん。ドーラの好きなようにすればいいじゃん。」
そうアシュリーは答えた。
「アシュリー!ありがとう!私そんなアシュリーが大好きだよ!」
そう言ってドーラはアシュリーに飛びついた。
「や、やめてってば!変な風に誤解されそうだからぁ!抱きつかないでぇ!それに私そんなにいいことは言ってないよぅ。」
「も~。しょうがないなぁ。でもありがとう。アシュリーとは本当にずっと友達でいたいよ!」
「私も!今後とも一緒に頑張っていこう!」
そう言って二人が抱き合ってたその時、部屋に爆音が響き渡った。
いきなりドーラが砕け散った。さながら、水風船を割るように、目の前で親友が『殺された』。
アシュリーも爆風で何メートルも吹き飛ばされた。
アシュリーの体中に肉片や体液がそこじゅうに付着していた。
最初、アシュリーは頭の中が真っ白で何が起きたのかわからなかった。
そして隣を見ると部屋越しに無表情でこっちを見ている何人かの研究員がいた。
書類に何かを書き込む者もいれば、無線機で何らかの連絡をとっているものもいる。
彼らが何を話していたのかは一切わからない。
何も聞こえない。
何も感じられない。
あるものはアシュリーの心の奥底にたまった『得体のしれないもの』
ついさっきまで感じていなかったものだった。
するとアシュリーの中でその『得体のしれないもの』が弾け、自分のものとは思えないような砲が彼女の背中から出てきた。
あげたこともないような奇声を上げ、砲を放った直後、彼女の理性は吹き飛んだ。
その日、クリスはジェシカと一緒に寝ていた。
その時、クリスの固定電話に一本の電話がかかってきた。
電話の着信音で目が覚めたジェシカはクリスを起して受話器を渡した。
「もしもしクリスです。どうしたんですか、私は今休暇中ですが...。何だって?わかりました、すぐに向かいます!」
「どうしたの?」とジェシカが聞いた。
「いや、何でもないよ。ちょっと急用が入ってね。ちょっと留守にするよ。」
「そう、気をつけてね。」
「ああ、大丈夫だ。必ず帰ってくるさ。約束するよ。一週間もすれば帰ってこれるよ。」
ジェシカの頭をなでながらそう言って、彼は鞄だけを持ってすぐに家を出た。
「あっ、お守り。」
ジェシカは机に置きっぱなしの白い花の押し花を見つけた。
彼がいつも『幸運のお守り』として持って行っていたものだ。
しかし彼はすでに家を出て行ってしまった。
真珠湾についたとき既にほとんどの乗組員が乗船していた。
すぐに彼は服を着替えて、艦に乗った。
乗員に挨拶をし、艦にのってしばらくすると旗艦のジョージH・Wブッシュから通信が入った。
「本作戦は未知なる敵との戦いだ。それに敵は高度な知能を持ち合わせている。これより君たちは敵が潜伏したと思われる、ハワイ沖合の海域に出撃する。諸君の健闘を祈る。以上だ。」
通信が終わった。
「クリス、今のは大統領の声だ。今回の作戦はマジなやつだ。」
とジョニーが言ってきた。
「ジョンか、もしかしたら....。」
「あぁ、そのもしかしたらだな。俺もこうなるとは全然予想していなかった。」
そういや、まだ作戦内容を見ていないな。見ておかないと。
作戦名 水面の掛け橋作戦
作戦内容 敵性勢力の捜索及び撃破
参加艦艇 USSジョージH・Wブッシュ USSエイブラハムリンカーン USSウィストンチャーチル USS ジェームス・E・ウィリアムズ USSラブーン USSジェイソンダンハム USSコール USSサンプソン USSデューイ
アシュリーは気が着くと海の上にいた。
周りには他大勢の深海棲艦達がいる。
あの時からの記憶が一切ない。
『どうして?いったい私は何故海なんかに来ているの?』
そう思って近くにいた軽巡級の一隻に聞いた。
「ねぇ、なんで私たちは海なんかにいるの?」
「えっ、どうしてって、あなたが海に出ようっていったからきたんじゃないですか。もしかして全く記憶にないんですか?」
「ええ、気が着いたら海にいたの」
「そうなんですか...。あなたはドーラさんを人間に殺された後に暴走したんです。それで研究所内の人間を片っ端から殺して、施設を破壊し尽くして私たちと一緒に脱走したんじゃないですか。」
「そう、なのか」
『そうかもうドーラはいないんだっけ...。』
そう思うととたんに再び『得体の知れない何か』が彼女の心の奥底から込み上げてきた。
「衛星からの画像はまだか?偵察に出したシーホークからは何か連絡は来たか?」
「まだです。でもきっと奴らは固まって行動しているはずです。すぐ見つかるはずですよ。」
その時だった。
「艦長!大変です!方位がわからなくなりました!」
「はぁ!?お前それでよく海軍に入れたな!」
「違うんです!」
モニターに映っている方位磁針を見るといろんなところを指したりはたまた一回転したりしている。
運が悪いことに外は曇天で太陽も出ていない。方角がさっぱりわからない。
「こちらUSSジェイソン ダンハム。方角が全く分からない。ジョージHブッシュ。そちらの状況は?」
すぐに返事が返ってきた。
「こちらジョージHブッシュこちらもだ、方位磁針が狂っている。GPSも全然駄目だ。一体どうしてだ?」
その時だった。
「こちら第124早期警戒飛行隊!本機前方に深海棲艦多数を発見!数はおよそ70!座標はH27!H27から南西に移動中!これより追跡しま...。」
ここで通信が途切れた。
「おい!どうした!おい!」
クリスは無線機に向かって叫んだが反応は無かった。
『どういうことだ?いきなり通信が途切れるなんて。奴らは気づいてないはずだが...。まさか撃墜された!?』
「航海長 今の位置はわかるか?」
「はい、方位磁針が狂う前から北北東に21ノットで航行していたので座標L24、5辺りを航行しているはずです。」
「ということはハープーンの射程内か。各艦との連絡とれるか?」
「無理です!通信繋がりません!レーダーでも確認不可能です!」
「何だって!?」
GPSはおろかレーダーまでイカれるとは想定外だ。
「旗艦から発光信号!『ミサイルノ射程ニ捉エタ艦カラ準備出来次第攻撃セヨ!』」
「よし!ハープーンの発射を急げ!座標は奴らが移動しているのを考慮するとG25辺りだ!奴らにミサイルの雨をおみまいしてやれ!」
既に他の艦では攻撃が開始され、薄暗い空はミサイルの発射炎でオレンジ色に染まり、空母の艦載機も対艦ミサイルを満載にして発艦して行った。
「いいか!よく聞け!先に艦隊が発射したハープーンが届くはずだ!そのあとに生き残った奴らを俺達がしとめる!警戒隊の奴らの弔い合戦をするぞ!皆!いいな!」
「「「おおっ!!」」」
ジョージH・Wブッシュ所属の第31戦闘飛行隊は意気軒高と深海棲艦がいると思われる海域に飛行して行った。
発艦してから1時間もたたないうちに目標までの距離は100kmを切っていた。
「隊長?かなり向こうに見えるぽつぽつはなんでしょう?」
「バカ。あれは艦隊が発射したミサイルだ。そろそろ着弾してもいい頃なんだが...。」
『おい!見ろ!ミサイルが自爆していってるぞ!』
「何だって!?いったいどういうことだ!」
よく見ると沢山あったミサイルの発射炎の点が一個、また一個と消えていき、数分後には全て無くなっていた。
「命中したんじゃないのか!?」
『いいえ!敵との距離はまだ離れています!』
「くそっ!いったいどういうことだ!俺たちもミサイルを撃つぞ!」
『了解!』
「えっ...?なんで、どうして?」
後ろの火器管制官が慌てた様子で機器類のボタンを押している。
「どうした!?」
「火器管制システムがオフラインになってるんです!」
「そんなことは無いだろ・・・!」
『隊長!どうしたんですか!?隊長!』
すると今度は隊長機のエンジンがいきなり火を噴き、爆発した。
飛行隊に動揺の渦が広がった。
「おい・・・冗談じゃないぞ・・・。あいつらに攻撃することも、近づくことすらできないのかよ・・・。このことを艦隊に知らせないと!」
二番機がインターフォンで、チャンネルを合わせて叫んだ。
「こちら第31戦闘攻撃飛行隊二番機から全艦へ!こちらの攻撃は一切通用しない!おそらく敵は電子攻撃を使用している可能性大!繰り返すこちらの攻撃はいs・・・」
「あいつらさっきから何言ってたんだ!さっぱり聞き取れない!」
「ノイズばっかりでしたからね。一体どうしたんでしょう?それよりも後10分ぐらいで会敵するはずです。」
するといきなり艦内の照明が全て消えた。
「今度はいったいどうしたんだ!?」
「電力の供給がストップしました!機関も停止!電子攻撃を受けた時と被害が一致します!何も出来ません!各艦との連絡すらとれません!」
「クソッ!」
その時、CICに甲板に出ていた航海科の兵が息を切らせながら入ってきた。
「艦長!やばいです!敵がすぐそこまで来ています!何隻かは既に攻撃を受けた模様です!」
その報告を聞いた時、クリスは青ざめた顔をして立ちすくんでいた。
ミサイルで迎撃しても無力化される。
主砲で攻撃しようにも動力が完全に落ちてしまったため撃つことすらできない。
唯一の攻撃方法は備え付けの重機関銃だけだがそのような物では奴らに傷すら負わせられないはずだ。
クリスは思った。
『どうしてだ あり得ない 奴らは生き物だ。電子攻撃なんてものを使えるはずがない。きっとすぐにも深海棲艦の攻撃がやってくる。他の艦も同じような状況だろう.....。そうだ、ジェシカと約束したんだ。絶対戻ってくるって。帰らないと。ジェシカの為にも!』
「艦長!どうするんですか!」
「総員退艦だ!総員退艦!もう俺たちは何も出来ない!ここにいても死ぬだけだ!みんな外に出ろ!救命胴衣と筏の準備を忘れるな!」
そう言ってクリス達は退艦する為に甲板に出た。
外に出ると地獄が広がっていた。
炎上する艦。
真っ二つに分かれて漂流している艦。
海には艦から脱出した乗組員たちが奴らに襲われていた。
早くみんな海に飛び込め!
とクリスが言おうとした瞬間、目の前から深海棲艦が飛び出してきた。
砲は全門こっちを向いている。
乗組員の皆はただ茫然と見ることしかできなかった。
「あぁ...。」
クリスにはそう呟くことしか出来ない。
『ごめんな、ジェシカ。約束、守れなかった...。』
その瞬間、深海棲艦の砲が火を噴いた。
「あっけなかったな。まさかあいつらが一切攻撃してこないとは思わなかったわ。艦載機も勝手に落ちていったし。」
「ああ、そうだな。これなら人間達も・・っつ!」
「大丈夫か?アシュリー。どこか具合でも悪いのか?」
「いや、大丈夫だ。問題ない」
そう言ってアシュリーは自分の手を見たがやはり変形している。
海に入ってからこうなっている。
アシュリーの体にはやはり何らかの異変が起きていた。
「ごめん、みんな、先行ってて、後で行くから・・・」
「そうなのか?まあ、いいちゃんと来いよ!」
「わかった....。うぐッ!」
そう言ってアシュリーは艦隊から落伍して行った。
『体が・・痛い・・。体中が痛い。さっきからこうだ。なんで?どうして?私に何が起こってるの?』
しばらくすると、アシュリーは自分の意思とは裏腹に、沈みだした。
『っ!なんで!どうして!私はもっと人間達を苦しめたい!復讐したいのに!どうしてこんなところで!くそっ!』
体がだんだんと沈んでいって、遂には完璧に沈んでしてしまった。
その時アシュリーの頭の中に『得体のしれない何か』が再び走った。
だが、今度は彼女は理解した。
『わかった...。私が何者なのか...。本当の私とは何なのか...。』
しかし彼女が浮いてくることはなかった。
『クリスはいつ戻ってくるんだろう?もう一週間以上戻ってきてないわ。お仕事が増えたのかもしれないわね...。』
そう思ってジェシカはテレビをつけた。
その時、いつも見ていたテレビ番組はもう殆ど終わりかけていた。
『時間間違えちゃった...。』
そう思っていると画面が切り替わり、ニュース速報に切り替わった。
内容は脱走した深海棲艦の討伐作戦についての事だった。
『ふぅん。こんなことが起きていたの。もしかしてお仕事ってこの事?けど、クリスが、俺たちの海軍は世界最強だ。って言ってたから大丈夫だよね。』
しかしテレビに映った映像はジェシカが想像していたものとは全く正反対のものだった。
映像には深海棲艦の死体の姿は無く、無残にも破壊された艦の映像しかなかった。
海面には無数のモザイクがかかっていた。
『うそ...でしょ...。でもまだクリスは生きているはず!私と約束したもん!絶対帰ってくるって!』
下のテロップは戦死者の名前が艦別で次々と流れていた。
祈るような思いでテロップを見つめていた。
そしてテロップはクリスの乗艦ジェイソン・ダンハムの戦死者を流し始めた。
『お願い....、クリス!』
USS ジェイソン・ダンハム 艦長含め全員戦死
その一文で括られているだけだった。
「うそ...嘘だ!あり得ない!クリスは約束したもん!絶対帰ってくるって!!クリスは死んでない!こんなこと!認めないんだから!帰ってくるんだ!!!」
テレビに向かって叫んだが、ニュースのキャスターは淡々と作戦の経過を報道している。
その時、ジェシカは思った。
『あいつらがクリスを殺したのか...。だったらクリスを殺した奴らを殺せばいい...。復讐だ。私のことを唯一愛してくれたあの人を殺した奴らは!私が!全て!駆逐してやる!』
ジェシカはクリスに買ってもらったフード付きの黒いジャンパーを着た。
これを着てクリスと一緒に外に出たかったが、もう彼はいない。
クリスの机の上には、彼が持っていき忘れた幸運のお守りが置いてあった。
ジェシカはそれをポケットに入れ、クリスに一人では絶対出てはいけないと言われた外へ初めて出た。
目の前に太平洋が広がっている。
『待っててね、クリス。私があなたの敵をとってあげる。この世のすべての深海棲艦を沈めてあげるわ。』
そしてジェシカは海の中に静かに入って行った。
この作品を作ろうと思ったきっかけは私がテストの余った時間に『深海棲艦とは何だろう?』と思って後日TWITTERで呼びかけたところ、一人の提督と談義していて話が弾んでいくとともに『あれっ?もしかしたらこれで小説書けるんじゃね?』と思って相手に言ってみたら「良いんじゃね?」とコメントがきたので、すぐ登録してぱぱっと書いたのがこの作品です。
初めての小説執筆、投稿なので至らないところが多々あると思いますが、どうか温かい目で見守ってください。
史実ネタなども挟んでいく予定です。
間違いなどありましたらご指摘お願いします。