艦隊これくしょん 艦これ ~水面の愛と水底の命~   作:hatahata

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これは艦これの二次創作小説となっています


初陣 弐

朝が来ると海斗に横須賀に行くよう命令が来た。

そこで面会するらしい。

海斗と紀伊は簡単な朝食を取った後すぐに防衛省の職員の車に乗って横須賀まで行った。

深海棲艦出現以前は沢山の護衛艦や米艦で溢れていた横須賀の港は何もなく、さびしい。

横須賀の軍施設は丸々彼のものになっていたが、これらも深海棲艦の攻撃でボロボロだ。

司令部の中に入って長い廊下の途中に『執務室』の立て札がある部屋があった。

傷だらけのドアを開けて中に入ると、中には紀伊と五人のセーラー服を着た少女がいた。

 

『もしかして、この子達が例の『艦娘』なのか?』

 

「え、えっと、君たちは?」海斗が尋ねた。

 

「皆さん、海斗さんに自己紹介しないと。」と紀伊が言った。

最初に一番元気そうな子が前に出た。

 

「そうですね!わかりました! 私は特型駆逐艦一番艦 吹雪です!よろしくお願いします!」

 

次にちょっとそっぽを向いている子が前に出てきた。

 

「私は特型駆逐艦五番艦 叢雲よ・・・あなたが私の司令官?まあ、よろしくね。」

 

次にの子が前に出た。

「私、特Ⅱ型駆逐艦九番艦 漣と申します。ご主人さま。これからよろしくお願いします。」

 

次は青い目と髪の子が出てきた。

 

「私、白露型駆逐艦六番艦の五月雨と申します!司令官。これからよろしくお願いします!」

 

最後にかなりおどおどした様子で出てきた子が自己紹介した。

 

「はわわわわ!私で最後ですか!? あっ、あのっ!特Ⅲ型駆逐艦四番艦 電です。ど、どうか!よろしくお願いします!」

 

海軍オタクの海斗には耳慣れた名前ばかり。

全ての子の自己紹介が終わった時、海斗は思った。

 

『何か俺の想像してたものと違う...。もっと紀伊みたいに大人っぽいのかと思ったのに...。まぁ、いいか。』

 

「提督?どうしたのですか?どこか調子でも悪いのですか?」

 

「ん?ああ!いや!なんともないぞ!紀伊!それと皆私がここの司令官の雲野海斗だ!よろしく頼む!」

 

「はい!頑張ります!」

 

「よろしくね。」

 

「わかりました。ご主人様。一緒に頑張りましょう。」

 

「頑張りましょう!司令官!」

 

「頑張るのです!」

 

『本当にこんな小さな子達で深海棲艦なんて倒せるのか?ちょっと心配になってきたよ・・・』

 

次の日から訓練が始まった。海斗は訓練を見に行こうと思って訓練している湾の方へ歩いて行った。

数分もすると彼女らが訓練をしているのが見えた。

そこには監督として紀伊の姿もあった。

そして彼女たちの訓練を見て海斗は...。

 

『もう終わりだ...。人類終了待ったなしだ...。』

 

「うわっと、と、と!、ま、まっすぐたたた、立てな...キャッ!(バシャン!)」

 

「な、何で!何でまっすぐすすまn...きゃあ!(ザバン!」」

 

「ままままま、股が裂けるぅぅぅぅぅぅぅ!!だ、誰が助げでぇ!!」

 

「はわわわわ!!ま、真っすぐにたてないのd...(ボッシャン!)」

 

「もう!みんなだらし無いわね!この私がお手本を見せてあげるうううううう!?(バッシャーン!)」

 

「なあ、紀伊。こりゃいったいどういうことだ?戦闘の基礎はついているって言ってたよな...。」

 

海斗は落胆しながら尋ねた。

 

「動かしている体にまだ慣れてないのか、それともただ単に練度不足なのかのどちらかだと思います。」

 

「じゃあ、紀伊。一回海に入ってくれ・・・そうしたらどっちかがわかる。」

 

「私は無理です。」

 

「だよねぇ...。」

 

『ああ、めんどくさい...。』

 

頭を抱えながら海斗は思った。

 

その次の日の朝、海斗は全員に招集をかけた。

 

「私は昨日の訓練を見させてもらったが..。お世辞にも良いとは言えないな。というか、全く駄目だ!真っすぐすら立てないってどういうことだ!私たちは君たちにかけてるんだ!この問題は何としても解決してもらわないと困る!ということで今日君たちが朝食を食べてる間に、君たちの部屋にあるものを用意するから、それを身につけて3日間過ごせ!以上!」

 

「「「「「は、はい!」」」」」

 

皆の威勢のよい返事の後に招集を解いて、彼女たちを食堂に向かわせた。

 

「昨日の訓練はダメダメだったね...。」と吹雪はつぶやく。

 

「もう!本当に嫌になっちゃうわ!」

 

「まあまあ、落ちつきなって、叢雲。まだ私たち生まれ変わってまだ三日しか経ってないんだよ~いきなり出来るわけないじゃん。」

 

「でも早く上手に航行できるようにならないと厳しいよ。その間に深海棲艦達が攻めてくるかもしれないし..。」

 

「もっとたくさん訓練しないとだめなのです...。」

 

そう言いながら五人は朝食が出てくるのを待った。

ご飯を作るのは今のところ紀伊の担当。

海斗と一緒に住んでいたときに彼から料理を教えてもらったから一応作れる。

 

「皆さ~ん。できましたよ~。」

 

そう言って紀伊は五人分の朝食を運んできた。

メニューはご飯と味噌汁、そして焼き鮭といういたって普通の朝食だったが、深海棲艦にシーレーンを破壊され、航空輸送も制空権を取られ、食糧の輸入すら困難になった日本にとってかなり豪勢な朝食だった。

きっと優遇でもされているのだろう。

「「「「「いただきます!」」」」」

 

五人は豪華な朝食をすぐに一言も話さずに食べて、部屋に戻った。

 

『そういえば司令官さんがなにかくれるって言ってたな。なんだろう?』

 

吹雪が一足早く部屋に戻るとベットの上に大きな箱が置いてあった。

 

『何だろう?もしかしたら私たちの着任記念に何かプレゼントでもくれたのかな!楽しみだなぁ!』

 

そう思って箱を開けると、中にはローラースケートとヘルメットと肘あてがあった。

 

『へ?ローラースケート?そういやこれを身につけろって言ってたよなぁ・・・』

 

仕方なく吹雪はヘルメットを被り、肘あてを着け、ローラースケートを履いた。

『うわぁ...ぐらぐらするぅ...』

 

「どうだ、サイズとか大丈夫か?」

 

部屋に海斗が入ってきた。

 

「ひゃ!司令官!だ、大丈夫ですぁぁぁぁぁぁ!?」

 

吹雪は敬礼したと同時に後ろにひっくり返った。

「だ、大丈夫か?吹雪?」

 

「いてててて...。大丈夫です。」

 

海斗に手をとってもらって起き上がる。

 

「ありがとうございます。」

 

「怪我とかしてないか?...ごめんな、昨日キツく言っちゃって。ついカッとなっちゃって。」

 

「そんなことないですよ!私たちがダメなだけです。私たちが頑張らないといけないのに。」

 

「そうか、そうだな。頑張ってくれよ!」

 

 

一日目 今日からローラースケート生活が始まりました。司令官さんはバランス感覚をつけるためにはやるしかない。と言っていました。頑張らないと!

 

二日目 段々ローラースケートのも慣れてきて転ぶ回数が少なくなりました。皆もちゃんと動けるようになった様です。けど紀伊さんが夕食を転んでこぼしてしまって私たちの夕食が無くなってしまいました。紀伊さんはまだ苦戦しているようです。

 

三日目 今日でローラースケート生活も終わりです。最初は地獄だ何だとか言っていましたが、慣れると歩くより速いので便利な気がして、司令官さんにこれからもローラースケートで良いですか、と言ったら床が傷つくからダメ、と言われてしまいました。でもこれで上手く航行できるようになってれば良いなと思います!

 

たまたま開いてあった五月雨の日記だ。

 

『ああ、だから昨日の俺の夕飯はど〇兵衛だったのか...。』

 

三日間のスケート生活も終わり、再び海上での訓練が始まった。

今度は皆がちゃんと航行出来ている。スケート生活の成果が確実に出ていた。

 

『これで大丈夫そうだな・・・後は射撃訓練。ここもちゃんと出来れば・・・』

 

次の日、射撃訓練は同じ海域で行われた。直径5メートルぐらいの板を様々な条件で撃って破壊する訓練だ。

皆は次々と、まるであたかもこの訓練を何度もやったかのように的を破壊していく。

 

「もしかして『戦闘の基礎』って射撃訓練しかしてなかったのか?。」

 

「そうらしいですね。」

 

海斗と紀伊は岸で話しながら彼女たちの訓練の結果を用紙に書き込んでいた。

 

「そういや見てて思ったけど、あの子たちって砲の装填とかってどうやってるんだ?やっているような素振が全く見えないのだが...。」

 

「さぁ?私にもさっぱり?」

 

と紀伊が言い出そうとした時、吹雪の主砲の中から小人のような人が出てきた。

 

「もう!危ないから出てこないでください。外が見たいからって砲の中から出てきちゃダメでしょ!」

 

そう言われるとその小人はつまらなさそうな顔をしてまた砲の中に戻っていった。

 

「何だ?あいつは?」

 

「よくわかりません。私も始めてです。」

 

「まぁいいか。それにしても凄い命中率だな。一番低い電でさえ75%越えだぞ。これだったら直ぐにも実戦には出せそうだな。」

 

「実戦、ですか。」

 

「ああ、この近辺の哨戒程度だがな。このあたりの深海棲艦の動向を知りたい。他の東南アジア諸国やカリブ海の島々などの島国はあいつらに占領されたからな。ハワイもそうだ。いつ日本に上陸するのかもわからない。そのための情報を集めたい。」

 

「出撃はいつからにするのですか?」

 

「明日だ。」

 

「ちょっ!明日って!海斗さん!行き成りすぎませんか!?まだ一週間ほどしか訓練してませんし!この状態で大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だろう。この調子なら出撃したって問題はないと思う。それに戦艦級や空母級みたいなのが出てきたら、即退避させるようにすれば問題ない...!多分」

 

「多分って...。まぁ一応夕食の後に伝えておきますね。」

 

「よろしく頼む。」

 

 

皆が夕食を食べ終わった後紀伊が彼女たちに明日の作戦のことを伝えた。

 

「明日は初の出撃です。皆さんには周辺海域の哨戒任務に就いてもらいます。目的は当海域の深海棲艦の動向の調査です。海斗さんからは強敵と会敵したら退避してもよいと言われたのでそこは心配しなくてもいいです。駆逐級や軽巡級等だったら攻撃し、撃破、その後に体細胞のサンプルも回収出来るとなお良いと言われました。今日はしっかり休んで、明日の出撃に備えてください。何か質問はありますか?」

 

誰も手を上げない。そして皆の顔はとても輝いていた。

 

 

 

朝が明け、五人はいつも通りに朝食を食べ、各自の艤装の準備をした。

しかし、いつもは何もない食堂の奥の黒板に『作戦要綱』と書かれた紙が貼ってあった。

 

作戦要綱

作戦名 周辺海域偵察

任務内容 基地周辺海域の偵察および敵深海棲艦の撃破

参加艦艇 旗艦吹雪 叢雲 漣 五月雨 電

 

「やっとこの日が来た!生まれ変わって初の出撃だね!」

 

「まあ、初の出撃にしてはかなりショボい作戦ね。」

 

「まあ、まあ。いいじゃないですかぁ。あんまり敵さんのこともわかってないし、初めはこれくらいでいいっしょ。」

 

「大丈夫ですよ!そんなに考えなくても、やることをやればいいんですから!」

 

「皆で頑張るのです!」

 

そう言い合いながら、五人は出撃するために装備の点検をして、港に向かった。

港に行くと海斗の姿があった。

 

「司令官さん!行って来ます!私たちで深海棲艦を倒せるって事を証明してきますね!」

 

「頼んだぞ、皆!お前たちのこの一戦が我々人類の存亡を決める事になる!そして今作戦はあくまでも偵察任務だ!無理な戦闘は出来るだけ避けるように!良いな!よし!行ってこい!出撃だ!」

 

基地を出てから3時間が経とうとしていた。空は雲ひとつない、穏やかな天気だった。

 

「ハァ...。本当にこんな本土近くにまで深海棲艦なんて居るのかねぇ。」

 

叢雲がため息交じりで言った。

 

「もう大丈夫な所はないって聞いたけど。吹雪ちゃん、羅針盤の様子はどう?」

 

「一応まだ大丈夫だけど深海棲艦が近くに居る時は変になるって司令官さんから...!」

 

「どうしたのですか?吹雪ちゃん?」

 

「羅針盤がおかしくなった!」

 

羅針盤を覗くと、針が不規則に動いている。

 

とその時、吹雪の主砲の中から一人の妖精が出てきた。

 

「あ!妖精さん!危ないです!外に出ちゃ!落っこちたらどうするんですか!」

 

という、吹雪の警告も聞かずに、妖精は吹雪の腕を伝って羅針盤の方に歩いて行った。

 

「いったい妖精さんは何がしたいんでしょう?」

 

五月雨の疑問をよそに、吹雪の妖精は羅針盤に辿り着いた。

そして妖精はおもむろに羅針盤の針を力ずくで止めた。方角は東を指している。

そして妖精がドヤ顔でこっちを見た。まるで『こっちだ』とでも言っているかのようだ。

 

「妖精さん。本当にこっちでいいの?」

 

と吹雪が尋ねると、妖精はうなずいた。

どうやら妖精は深海棲艦の位置がわかるらしい。

 

「どっち?」と叢雲が尋ねた。

 

「東だね。皆さん、東です!」

 

進路を東にとってしばらく進むと何やら海上を航行する生物を見つけた。

 

「艦型わかる?」と漣が吹雪に聞いた。

 

「ここからだと少し見えずらいけど、多分駆逐艦だと思う。随伴艦は...ないね。一隻だけだ。多分本隊の偵察艦かはぐれ艦。相手はこっちに気づいてないし、数こっちのほうが多い。一気に囲んで倒しちゃおう。私を中心にして単縦陣で近づく。前から順に私、漣ちゃん、電ちゃん、叢雲ちゃん、五月雨ちゃんでいい?その後は散開して包囲。一気に叩き潰す感じでいこう。いい?」

 

「わかったわ!」「了解です!」「はい!」「了解なのです!」

 

そうして陣形を整えて五人は敵深海棲艦に突撃していった。

敵との距離が4㎞を切ったところで敵がこちらに気付いたらしい、回頭し始めた。

しかし、そのときすでに包囲網は完成していて、そこら中から砲弾の雨が飛んできた。

 

「敵さんは何もしてこないね。楽勝過ぎるわ」

 

「やっぱりこの艦は本隊の偵察艦だったのでしょう。こちらに気付いたらすぐに回頭を始めましたもんね。」

 

「うーん・・・。手ごたえがないなぁ・・・。もっと強い敵さんはいないのぉ?」

 

敵駆逐艦はまともな反撃ができずに四方八方からの集中砲火を浴びて、あっけなく沈んでしまった。

サンプルを回収しようにも、沈むのが早すぎて出来なかった。

 

「なーんかあっけなかったわねぇ。もうちょっと進んでみる?燃料も弾薬もまだいっぱいあるんだし。」

 

「そうだね、もうちょっと東に進んでみようか。皆、大丈夫?」

 

「私は平気よ。」「全然OK。」「まだ行けますね。」「電も大丈夫なのです。」

 

「じゃあ、進撃しますか!」

 

しばらくしてまた羅針盤が狂ったので、妖精に頼んで方角を指示してもらった。

今度は南東のようだ。

 

「これがさっきの偵察艦の本隊だったらいいんだけど・・・。」

 

吹雪が心配そうに言った。

 

「これで戦艦とか出てきたらおしまいだねぇ。その時は撤退するしかないね。」

 

「でも、偵察艦を派遣するくらいなんだから偵察機を搭載できるような大型艦はいないと思うけど。」

 

「五月雨ちゃん!いい推理なのです!」

 

「そうかもね。でも油断はしちゃいけないよ。ただ単に偵察機を出してないだけなのかもしれないから。」

 

そして航行し続けると段々空が薄暗くなってきた。

 

「このままだと夜になっちゃうなぁ・・・。どうしよう?暗くなる前には見つけないと。」

 

「でも夜戦は私たち駆逐艦にとっては十八番じゃない!やってやりましょう!」

 

「でもあっちも大型艦がいなくても、水雷戦隊だったら状況は同じですよ。」

 

「まあ、そうなったらそうなったでがんばろうか。」

 

と漣が言った次の瞬間、周りにいくつかの水柱が立った。

 

「見つかった!?大丈夫!?」

 

「こっちは大丈夫!」「漣OKだよ!」「私も大丈夫です!電ちゃんも無事みたい!」

 

あたりは段々暗くなってきた。しかし彼女たちはまだ敵影を確認できない。

 

「一体どんだけいるんだ!撃たれまくってるわよ!」

 

「うう、当たらないか心配なのです。」

 

「あ~も~!全然わからない!敵さんの砲撃の発射炎しか見えない!誰か探照灯とか照明弾とか持ってる子いない?」

 

「探照灯じゃないけどこれなら持ってるのです!」と電が懐から懐中電灯を取りだした。

 

「そんなのじゃ全然だめだよ!」

 

「司令官さんから探照灯用にって渡されたのです!」

 

「ああもう!それでいいから早く!」

 

スイッチを入れると強烈な光がうす暗い空を照らした。

電が撃たれている方向へ照射すると遠くで砲撃を行っている複数の深海棲艦の姿が見えた。

そして漣が双眼鏡を使いながら敵を確認した。

 

「ちょっと待っててね。う~ん・・・え~っと・・・うんうん。よし!わかった!敵は軽巡1、駆逐2!距離はおよそ6000!」

 

「漣ちゃんありがとう! ってことは数はこっちの方が多いけど相手に軽巡がいるから戦力差は同じくらいかな。」

 

「使える時間はせいぜい15分くらい・・・。短期決戦に持ち込まないと。」

 

「撃たれまくってるわよ!どうしたらいいの!?あなた一応旗艦なんでしょう!命令を頂戴!」

 

「わかってる!電ちゃんはあれを使ってるから攻撃できないし、一人にしちゃったら集中砲火されちゃうから...私と叢雲ちゃんと五月雨ちゃんで敵艦隊に探照灯の陰になってるところから突撃する。その間漣ちゃんは電ちゃんの護衛をお願い。その時に敵に向かって撃ちまくって。当たらなくてもいいから。とにかく敵の注意を引いて。電ちゃんはそのまま照射お願いね。これでいい?みんな?」

 

「「「「了解!!」」」」

 

こうして三人は一旦陣形を崩して、探照灯の当たってないところに移動した。空は完全に闇一色で魔改造軍用ライトが照らしている深海棲艦と漣と電しか見えない。

 

「よ~し!いっちょやりますか!お前たちの敵はこっちだ~!当てれるもんなら当ててみなぁ!」

 

と言いながら漣は主砲を撃ちはじめた。

 

「漣ちゃん。たぶん敵さんには聞こえてないのです。」

 

「ただの気合い入れだよ。大丈夫。ちゃんと護衛してあげるから。」

 

その時三人は電が照らしてくれている敵艦隊の方向に最大戦速で進んでいた。

砲撃は電と漣に集中していて一発の砲弾も飛んでこない。隣で流れる砲弾がまるで流れ星のようだった。

 

「どこまで近づくんですか?もう主砲の射程内ですよ。もうそろそろいいでしょう?」

 

「いや、まだだよ。もう少し近づかないと。確実に仕留めたい。それにあっちにはまだ気づいてない。出来るだけ近づいて有効打を与えたい。」

 

「こっちは大丈夫かもしれないけどあっちは厳しいと思うわよ。何せ敵艦四隻から集中砲火浴びてるんだから。」

 

「そうだよね。じゃあもう少し早くするか。妖精さん。機関を過負荷運用してください。ほんの3,4分だけで良いからお願いします。」

と吹雪が機関妖精に頼むと妖精は敬礼をしてから吹雪の足の機関の中に入って行った。

 

「他の二人も機関を過負荷状態にしてください!少しでも速くしよう!」

 

「わかったわ。」「わかりました!」

缶圧がさらに高まり、ボイラーからでる煙の量も増える。

 

「この調子だと直ぐに敵の近くに行けそうだね。」

 

「でも機関の過負荷状態での航行はせいぜい2~3分程度よ。それまでに着けるの?」

 

「多分私たちは今は35ノット以上は出ています。敵さんの速力はわかりませんが、水雷戦隊らしいので恐らく30ノット程は出ているはずです。ということは後1分もすれば一㎞以内に近づけます。接近戦で一気にかたをつけちゃいましょう!」

その時、漣から入電が入った。

 

「あ~、あ~、こちら漣。吹雪ちゃん?聞こえてる?」

 

「大丈夫。どうかしたの?」

 

「あのね悪い知らせが二つほどあるけどどっちから聞きたい?」

 

「いっぺんにお願い。」

 

「あ、そう。まず一つ目はそろそろ電灯の電池が切れそう。あと五分持つか持たないかぐらい。倒すんだったらさっさとやっちゃって。もうひとつはさっきの砲弾で主砲が被弾しちゃって使えなくなった。妖精さんとか私は無事だけど砲身が花咲いちゃって。まあ、もう見た感じもう敵さんと1㎞あるかないかのところぐらいにいるっぽいから大丈夫か。まあ、頑張ってね。」

 

漣との交信が終わった後、三人は敵艦隊に対する奇襲の準備を整えた。

 

「主砲弾装填完了。魚雷の安全装置解除確認。信管の調整も終わったかな・・・。よし!いつでも行ける!二人はどう?」

と吹雪が尋ねると二人はOKサインを出した。準備は全て整ったようだ。

 

「これから敵艦隊に突撃をかける。まず飛び出す前に牽制で魚雷を撃つ。あ、片舷の方だけね。全部撃っちゃうと必要な時に撃てなくなるからね。 まあ、それは置いといて、その後に前言った通り、叢雲ちゃんは随伴艦の駆逐艦を。私と五月雨ちゃんで軽巡をやる。いいね?」

 

「「了解!」」

 

そして、三人は一斉に魚雷を放ち、陰の所から突撃を開始した。

敵は電達に夢中で三人に全然気づいていない。

完全な奇襲だった。

直撃コースで放った魚雷がまだこちらに気づいていない、敵艦の脇腹を捉えていた。

そして、魚雷が敵駆逐艦1隻に直撃し、大きな水柱を立てた。

完全に油断しきっており、攻撃をくらった駆逐艦は轟沈、残りの2隻は随伴艦が攻撃を受けた時にようやく三人の姿を確認したが、既に遅かった。

 

「雑魚のくせに!さっさと沈みなさい!」

 

叢雲が叫びながら敵駆逐艦に砲撃戦をかける。

 

敵の駆逐艦の砲は前だけにしかなく、しかもかなり狭い射角しか取れないので、旋回戦に持ち込んだ方が有利だ。

 

「沈みなさい!!」

 

放った砲弾は敵深海棲艦の側面を貫通。着弾した直後に大爆発を起こして、跡形もなく消え去ってしまった。

叢雲は腕を組みながら一部始終を見ていた。

 

「まあ、当然の結果ね。あっちも派手にやってるわね。でも加勢しなくても良いかな。高みの見物としましょう。」

 

叢雲が敵を沈めた時、吹雪と五月雨はまだ戦闘を行っていた。

しかし、電への攻撃でかなりの量の弾薬を消費したのか、砲撃は散発的だった。

そして、さすがに格上といえどもニ対一で、しかも士気の差もだいぶ開いていた。

敵は撃ちまくられて、完璧に戦意を喪失したのか、撤退を開始した。しかし

 

「逃がすわけないでしょう!」と吹雪の放った砲弾が、敵の機関部を直撃したらしく、行き足が完全に止まった。

「駆逐艦らしく魚雷でとどめ刺しちゃおうか。」

 

「そうですね、なんだか魚雷処分してるみたいです。」

 

そうして二人は残った魚雷全部を撃った。

魚雷は全弾命中し、結局相手は何もすることなく戦闘は幕を閉じた。

そして戦いが終わったと同時に辺りが真っ暗になった。どうやら電池が切れたらしい。

 

「やりました!」

 

「まあ、良いじゃない、勝ったんだから。電ちゃんと漣ちゃん呼ばないと。 こちら吹雪、漣ちゃん。電ちゃん。こっちの位置わかる。」

 

『正確にはわからん。何発か撃って。それを目印に行くから。』

 

「わかった。」と、吹雪が2、3発程主砲弾を撃った。

数分すると二人の姿が見えた。

 

「叢雲ちゃんは?」

 

「ここにいるわよ、全くもう」と五月雨の後ろから現れた。

 

「今回は簡単な戦いだったよ。何せ敵さんが最初の一撃で半分に減って、その後はもう完璧にこっちの一方的な戦いだったよ。」

 

「こっちはいつ砲弾が当たって死ぬかドキドキしてたのだがな。良いねぇ、気楽で。」

 

「私も怖かったのです!もう探照灯なんて二度と使いたくないのです!」

 

「まあ、そんなこと言わずに。勝ちは勝ちなんだから。ほら!もう燃料も弾薬も残り少ないから早く鎮守府に帰るよ!」

 

「早く帰ってご飯食べたいです!」

 

「私も。」

と五人が談笑しながら帰ろうとした時、電が海上に浮かぶ不思議な物体を見つけた。

 

「あれは何なのですか?」

 

「確かそこって、私たちが軽巡沈めたところだよね。行ってみよう。」

 

電が手に取ってみると、それは淡い水色の綺麗な水晶の様なものだった。

 

「なんだか温かいのです。持っていて心が落ち着くような気がするのです。」

 

「何これ?もしかして沈めた軽巡から出てきた物って事?深海棲艦からこんなものが出てくるなんて、正直信じられないわ。」

 

「一応持って帰りましょうか。何か重要な物かもしれませんし。」

 

そうして五人は横須賀へと進路を変え、帰途についた。

 

こうして五人はお昼頃に横須賀へと戻った。

波止場では海斗と紀伊、それに多くの報道陣が待っていた。

そして、陸に上がるとフラッシュの雨とマイクが向けられたが、海斗が

 

「作戦から帰ってきたばかりで疲れてると思うので、インタビューとかは後日にお願いします。」

 

と言って報道陣を下がらせた。

そして、基地の中に入って、海斗は五人に激励の言葉をかけた。

 

「良くやった!作戦は成功だ!そして君達が深海棲艦に対抗できることもわかった!これは素晴らしい戦果だ! さあ!今日は宴だ!用意はもうしてあるから、ゆっくり風呂にでも入ってその後に夕食だ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

風呂は、元々、海自の隊員達が使っていた大浴場が一つあった。

 

「電ちゃん。背中洗ってあげようか?」

 

「ありがとうなのです。漣ちゃん。」

 

「一人で背中洗えないとか、子供じゃないの?」

 

「シャンプーハット付けてる人には言われたくないのです。」

 

「なっ!これはその・・・。め、目にシャンプーが入って目が悪くならないように付けているのよ!別に目に入るのが怖いとかそういうものじゃないからね!」

 

『ああ、怖いんだ。』

 

隣では漣が独り言を言いながら、髪を洗っていた。

 

「それにしても疲れたわぁ~。簡単だったとはいえ実戦したのは本当に久しぶり。何年ぶりの出撃だ?この私、漣が沈んだのが1944年だから....うえっ。めっちゃババアじゃん。もしかして、これが世に言うロリババアって奴か。ていうことはこの中で最年長の吹雪ちゃんは一体?」

 

「漣ちゃ~ん?何か言ったぁ~?」

 

「イエ、ナニモイッテナイヨ、フブキチャン。アハハハハ。、オケトカイウブッソウナモノカマエナイデ、オチツイテ、オチt」

 

「目標、駆逐艦漣!桶魚雷発射!!!死にさらせ!」

 

「うおぉぉぉ!?マジでやりやがった!って痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!鼻ぁぁぁぁ!顔面はアウト!」

 

「セーフじゃないの?」

 

「叢雲ちゃんまでぇ!もう!ドッヂボールじゃないんだからぁ!」

 

「三人とも楽しそうだねぇ。」

 

「そうですねぇ。」

 

五人が風呂から出たらもう既に外は夕暮れ空になっていた。

五人は早く夕飯が食べたいがために直ぐに食堂へと行った。

 

「何かなぁ!何かなぁ!『司令官さんが今夜は御馳走だ!』って言ってたし!」

 

「どうせこんなご時世だし、どうせろくなものじゃないでしょ。」

 

「漣は夕飯よりもこの止まらない鼻の痛みをどうにかしたい。」

 

「電はお寿司がいいのです!」

 

「え~?私は焼き肉とかがいいなぁ。」

 

そう言いながら五人は食堂に行くと、そこには海斗と、二人の新しい子がいた。

 

「えーっと?司令官さん?その二人は?」

 

「今から紹介しようと思ってね。自己紹介お願いね。」

そういうとまず一人目の子が自己紹介をした。

 

「吹雪型駆逐艦二番艦 白雪です。これからよろしくお願いします。」

 

「えっ!?白雪ちゃん!?私だよ!吹雪だよ!」

 

「吹雪ちゃん!?良かったぁ!ここで会えて!これから前みたいに一緒に頑張ろうね!他の11駆のみんなはいるの?」

 

「私たちだけだけどその内会えるよ!あの二人を早く見つけて、11駆再結成したいね!」

 

「うん!」

 

「あ、あのぉ。感動の再会の分かち合いは後にして、もう一人の方の子の自己紹介も聞いてあげて。」

 

「あ、わかりました。」

 

「あ、あの、提督。もう自己紹介していいですか?」

 

「ああ、いいよ。」

 

今度は控えめの女性が自己紹介をした。

 

「軽巡洋艦、神通と言います。よ、よろしくお願いします。」

 

神通の自己紹介が終わった時、他の駆逐艦達の目は輝いていた。

 

「神通さんって、あの神通さん!?あの第二水雷戦隊の旗艦の!?」

 

「はい。そうですけど...。」

 

「なんだかすごい人と一緒になっちゃったね!」

 

「本当だよ!何せあの華の二水戦の旗艦だからね!」

 

「絶対強いわよ!これでこの鎮守府も安泰ね!」

 

おろおろしている神通をよそに、他のみんなは神通の編入を心強く思っているようだ。

 

「あ、あのぉ。まだ慣れてないので、昔みたいにはなれないかと...。」

 

「いいんですよ!慣らせばそのうち勘も戻ってきますよ。」

 

「そうかなぁ・・・?」

 

そこに紀伊が大きな鍋を持って現れた。

 

「夕食の用意が出来ましたよ~。今日は初戦果ということで、提督がすき焼きを奮発して買ってきてもらいました!」

 

「まあ、元々海自の分だった防衛費が全部こっちに回ってきたからこそできたことだからな。みんな!遠慮しないで食べてくれ!今日は我々の初勝利だ!この勝利を重ねていき、この世界から深海棲艦を駆逐しようではないか!」

 

「「「「「おう!!」」」」」

 

テーブルにはこのご時世ではまず口にできない程の豪勢なすき焼き鍋が置かれていた。

海斗はビールを、他の皆は日本酒を手に取った。

 

「吹雪!乾杯の音頭をとれ。」

 

「わ、私ですか!」

 

「ああ、今回の作戦の旗艦はお前だろう。いっちょ派手にやってくれ!」

 

「わ、わかりました!み、みなさん!これからも頑張って行きましょう!かんぱーーい!!」

 

「「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 

 

 

 

「うーん!美味しい!こんなに美味しいすき焼き初めて食べたよ!」

 

「司令官。このお肉あげる。へ?叢雲は優しいなって?べ、別にあんまりお肉食べてないから、あげようかなとか思ってないからね!」

 

「いやぁ~美味いねぇ。おっ、牛肉いただきぃ。」

 

「美味しいですね。あ、その春菊貰いますね...って。あっ!卵の器落としちゃいました...。すいません、今すぐ拭きますね...。」

 

「電はこんな平和な時間が好きなのです。白滝、貰うのです。」

 

「素敵な宴ですね。私達も早くここに慣れて活躍できるようにならないといけませんね。お豆腐、いただきます。」

 

「新しい子も増えたし、この活躍が世間に広まって国民の、いや、全世界の人の希望になれたらいいなぁ」

 

「きっとなりますよ、提督。」

 

「そうかな、けどまだまだ最初の一歩だ。先はまだ長い。紀伊。ついてきてくれるか?」

 

「はい。もちろんです。」

 

夜の横須賀基地に笑い声が響いている。

海斗は去年から笑い声というものを聞いてなかった。

みんな深海棲艦に脅え、苦しみ、笑うことなどできなかったのだ。

しかし、今は笑える。

人類に希望の光が見えたのだ。

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