艦隊これくしょん 艦これ ~水面の愛と水底の命~ 作:hatahata
という考えのお持ちの方は読むのをお勧めしません。
別にええ。という方はビールを片手に飲みながらゆっくり見ていってね!
深夜の執務室、海斗が紀伊に一枚の紙を提示していた。
海斗の表情は明るいが紀伊の表情はあまり良くはなかった。
「...提督。本当によろしいのですか?このような時期にこのようなことを...。」
紀伊が怪訝な顔で海斗と紙を見つめながら言った。
「ああ、大丈夫だ。まだ俺たちの発案したROTUS作戦は各国との足並みを揃えないと叶わない。陸自の準備がまだできてないし、準備が出来てない国もある。彼らの準備が出来次第、作戦は発令する。その前のちょっとしたお祭りだよ。」
「しかし鎮守府選抜と言えどもかなりの数が必要になると考えられます。その方は確保してあるのですか?」
「全然大丈夫。逆に減らしてもらいたいほどだ。」
「まさにうってつけってことですね。確かにこういう開き物は初めてですし、日頃のストレスが溜まっている彼女たちにはちょうどいいかもしれませんね。明日の朝にでも伝えておきます。」
「おう、開催は一週間後。その間に選手の選抜と会場の準備とかもしなくちゃな。」
「わかりました。もう夜も遅いので布団敷きますね。」
「サンキュー。俺も手伝うよ。」
海斗が言っていた一週間が過ぎた。
いつもは演習の炸裂音や工廠の作業音でうるさい新生横須賀鎮守府も今は静まり返っている。
中央広場を除いて。
そこには横須賀鎮守府の全艦娘200人はいるだろうか。
おしゃべりをしているものの艦種別にきちんと整列している。
中には海外から来たであろう、明らかに日本の艦娘でない艦も少しだけだが混じっている。
中央広場の一番手前には白く塗装された壇がある。
そこに海斗が上がると艦娘たちはいきなりおしゃべりをやめ、真面目な顔で敬礼をした。
「まあまあ、こういうときくらい気を緩めたらどうだ。今回は大会なのだからな。」
と軽い敬礼をした後に海斗が手に持っているマイクで促した。
「というわけで」
広場に緊張が走る。
「今後やるかわからないけど第一回横須賀鎮守府飲兵衛大会を開催する!皆の衆!覚悟はできているかぁ!」
「「「「おぉ~~~!!」」」
海斗の号令と共に艦娘たちの関の声も響いた。
「みんな!ここまで本当に頑張ってくれた!そこでこの大会を開催することとした!選手の者も!観戦する者も!今日はいつもの事を忘れて楽しんでくれ!私からは以上だ!この後は紀伊から大会のルールについての説明がある!よく聞いてくれ!」
と言って海斗が壇上から降りると、紀伊が上がって、一礼した後にルールを読み始めた。
「今回の大会についての諸ルールを説明します。今回は艦種別選抜対抗でどれだけ多くの酒を飲めるのかを競う大会です。会場は各艦種別の寮の大食堂で行います。しかし、伝えたとは思いますが駆逐艦については他の艦種とは異なる方式で行います。次に禁止事項です。次の行為があった場合には失格とします。相手に暴力を行使したとき、
相手に自分の酒を飲ませる等の不正行為をしたとき、試合の途中でトイレに行く行為、等です。試合中は無理をせずに具合が悪くなった場合は直ぐに各部の担当者に伝えてください。なおその際にも失格となりますので注意してください。ルールの説明は以上です。選手の健闘を祈っています。」
と、紀伊が壇上から降りたら海斗が紀伊からマイクを貰ってこう言った。
「ああ、言い忘れてたけど、各部の優勝者には豪華景品が当たるよ~!頑張ってね~!」
その言葉を聞いて俄然やる気が出たのか選手と思われる艦娘たちの気合いを入れる声があちらこちらから聞こえてくる。
「それではまず駆逐艦の部から始めます。選手と観戦者は駆逐艦寮に移動してください。」
駆逐艦寮の大食堂はたくさんの艦娘で賑わっている。
そして目の前の木製の横長テーブルには10人の選手が今かと開始を待ちわびている。
「さあ、いよいよ鎮守府大...何だっけ?大会が始まろうとしています!司会兼実況はこの私、島風が、そして解説は漣ちゃんでお送りいたします!」
「どーもー。よろしくお願いします。」
「駆逐艦の部では予選を勝ち抜いたこの二人が王者をになります!」
「それではまず選手の紹介から行きましょうか!赤コーナー!近代型駆逐艦の母!みんなのお姉さん!吹雪型一番艦!吹雪!」
「今回の大会は吹雪型のネームシップとして負けるわけにはいきません!頑張ります!」
「青コーナー!鎮守府最強デストロイヤー!ソロモンの悪夢は伊達じゃない!?白露型四番艦!夕立!」
「今回は夕立が吹雪ちゃんに悪夢見せるっぽい!頑張るっぽい!」
「ここで出場選手10人の説明が終わりました!それでは駆逐艦ルールでの試合を始めたいと思います!」
と言って島風が指を鳴らすと大きなカートと共に運ばれてきたのは
牛乳だ。
「はあ!?おかしいだろ!?酒飲み大会だろ!何で牛乳なんだよ!?」
「駆逐艦たちの総意で駆逐艦の部はお酒から牛乳になりました~。ここでルールの説明~10本の牛乳瓶を一番早く飲み終わった人が勝ち!おかわりが欲しいときは手を挙げて伝えてね!いい?」
二人は首を縦に振った。
二人の前に牛乳瓶が用意される。
「制限時間は20分です!はじめ!」
合図とともに瓶のふたを開けるポンという音が弾ける。
「両選手飲むスピードが速いです!おおっとここで夕立選手!早くも一本目を完飲!二本目に移った!それに続いて吹雪選手も一気に飲み干した!かなりのペースの速さです!」
「島風はもっと早く飲めるかも!牛乳嫌いだけど。」
「そうっすか。まぁ、それは置いておいて、夕立選手は早くも3本目に手を出している!ものすごいスピードです!対する吹雪選手も二本目を一気に流し込んでいます!両者一歩も譲らない戦いです!」
その後もカートの中の牛乳瓶は次々と減っていった。
しかし六本目を飲み終え、七本目に入った途端に急に飲むスピードが下がった。
全く手が着かないような状態になってしまった。
「選手の手が止まりましたね。漣さんこの状況。どう見ますか?」
「完璧に選手達はペース配分を見誤りましたね。序盤で飛ばしすぎているとは感じてはいましたが、遂にそのツケが回ってきましたね。」
「う~ん...。」
島風は考えた。
どうすれば選手達はまた牛乳を飲み始めてくれるか。
「わかった。」
「おお、島風さん。いい考えを思い付いたのですか。」
「今から十秒後に今飲んでいる牛乳を飲みきらないと強制失格ね。はい、10、9、8」
「「えぇぇぇぇぇ!!?ちょっと待ってぇぇぇぇ!」」
吹雪と夕立は死に物狂いで牛乳を飲み始めた。
口の間からかなりの量の牛乳を噴き出していたが、一応両選手とも7本目の牛乳を飲み干した。
観客席からは喚声が上がる。
しかし両選手は死んだ魚のような目をしている。
もう限界にまで達したのだろう。
『ここで頑張らないと!夕立ちゃんに負けちゃう!私の方がお姉さんなんだから!』
そして八本目の牛乳を飲んだ。
『ちょっとヤバイっぽい...。けど、まだ行ける!』
隣を見ると夕立も僅かながら遅れているが確実に八本目を飲み続けている。
勝負はいよいよ大詰めの所まで来ていた。
「ちょっとトイレ行ってくる~。漣ちゃん。実況の方もよろしくね~。」
と、実況の仕事を放り出して行ってしまった。
会場から一番近いトイレは台所にある。
島風が台所に入ると軽巡の部の準備をしていた。
「あら。島風ちゃんじゃない。どうしたの?司会のお仕事は?」
「おう?鳳翔さんですか。私はちょっとトイレに行きたくて。」
「そうだったの。あと、昨日ここにおいてあった牛乳はどうしたの?台所に入った時にはなかったのだけど...。」
「あれですか。あれなら牛乳の数が足りなかったから二本ほど持っていきました。」
その言葉を聞いた瞬間に鳳翔の顔が青ざめ、慌て始めた。
「ちょっと待って!それって本当の話!?その牛乳ってもう飲ませちゃった!?」
「多分。どうかしたんですか?その牛乳。何らかの事情でとっておいてあったんですか?」
「違うのよ!あの牛乳腐ってたの!冷蔵庫の奥の方にあって後で処分しようと思ったら無くなってて...。」
「へ?」
確かに昨日とったときには少し牛乳の色が変だったような記憶があるが、そこまで気にしてはいなかった。
鳳翔は誰かが牛乳を処分してくれたと思っていたらしい。
最悪の処分方法だが。
「昨日のうちに捨てておけば良かったわ...ああ、どうしよう。まだ飲んでないことを願うしかないわ。」
しかしそこへ漣が飛んできた。
「島風ちゃん!大変だよ!吹雪ちゃんと夕立ちゃんが!」
島風はその時に真っ青な顔になってこう思った。
やっちまった。と。
「も、もしかして、お腹が痛いとか、気持ちわるーい、とかそんなやつ?」
内心NOの応えを期待していた、が
「正しくその通りだけど何でわかるの?」
余計顔に焦りの色が濃くなる。
「と、とにかく戻ろう!今は二人のことが優先だから!鳳翔さん!手伝ってください!」
「わかったわ!一応提督さんも連れてきます!」
と言って鳳翔は海斗が待機している執務室へと小走りで去っていった。
『絶対司令官さんに叱られるぅ..』
そう思いながらも二人が倒れている会場へと走っていった。
島風と漣が会場に着くと観戦者に囲まれた吹雪と夕立がいた。
両方ともお腹を押さえてうずくまっている。
顔色も真っ青だった。
「うぅ...お腹がぁ...気持ち...悪い...。」
「さっきの...牛乳..腐ってた..っぽい。」
テーブルには飲みかけの九本目があった。
どうやら八本目を飲み終わり、九本目を飲んでいる途中で発症したらしい。
数分すると鳳翔が海斗を連れてきた。
「二人とも!大丈夫...じゃないなこりゃ。救護班はすぐに朝日川さんのところに連れて行って!」
すぐに担架が運ばれ、吹雪と夕立が乗せられ離脱した。
問題の牛乳瓶を見ると消費期限を一週間近くオーバーしている。
腐った牛乳特有の臭いが鼻に着く。
牛乳瓶を手に取り、海斗は島風の方を向いた。
「で、どうしてこうなったんだ?島風。」
「え、えっと、その、あの、う~。じ、実は...」
「私の責任です。」
そこへ鳳翔が割って入ってきた。
「私がちゃんと牛乳を処分していたらこのようなことにはなりませんでした。島風ちゃんは悪くありません。お叱りは私が受けます。」
海斗の方を向き、深々と頭を下げた。
海斗は驚きの表情を見せたが、腕を組みながら鳳翔を見た。
「わかった。鳳翔は後で部屋に来てくれ。」
結局駆逐艦の部の優勝者は僅かながらに飲んだ牛乳の多かった夕立となったらしい。
駆逐艦の部が終わってぞろぞろと観客たちが軽巡洋艦寮へと入っていく。
「やっほ~!みんな~!これから軽巡洋艦の部が始まるよ~!司会と実況は艦隊のアイドルの那珂ちゃんだよ!よっろしくぅ!解説は最後の連合艦隊旗艦!艦隊の頭脳!大淀さんだよ!」
「よろしくお願いします。では那珂ちゃん。選手説明の方を。」
「了解で~す!軽巡洋艦の部も予選で勝ち抜いたこの二人が王座をかけて戦っちゃうよ~!赤コーナー!亀の甲よりも歳の功、まだまだ新造艦には負けられない。天龍型二番艦、龍田!」
「うふふふふ。よろしくねぇ~。あと那珂ちゃん。後で工廠裏ねぇ~。」
「龍田選手は鎮守府内でも屈指の大酒飲みという情報が姉妹艦である天龍さんから入っています。優勝候補の一人ですね。」
「つ、次行こうか!青コーナー!最新鋭は伊達じゃない!粘り強さならだれにも負けない!阿賀野型三番艦矢矧!」
「どうも、矢矧です。最新鋭軽巡として優勝する以外に道は見えていないわ。頑張ります。」
「矢矧選手は鎮守府でも名の通った酒豪ですからね。空母の部でも出場予定の水上機母艦の千歳さんとの酒飲み勝負でも勝利するという戦果を持っています。」
「さあ!すべての選手が出そろいました!では今回のルールを紹介させていただきます!皆さんに飲んでもらうのは500MLの缶ビール!一本飲み干したら手を挙げて知らせてください!ルールはこれだけだよ!二人とも!いい!?」
両選手が首を縦に振る。
駆逐の部とは違うピリピリ感が会場を包み込む・・・
「制限時間は90分だよ!はじめ!」
那珂の14cmの空砲が鳴り響き、両選手の前に缶ビールが置かれた。
彼女らは手に取り、栓を開け一気に飲み込んだ。
一応テーブルの上にはビールを注ぐ用のコップが置かれていたが二人ともも使わずに直飲みしている。
普通に一本の缶ビールを飲むのだったら2、3分ほどかかるはずだが、彼女たちのスピードは一本を平均30秒で飲みほしている。
1分もしないうちに三本目に突入しようとしている。
「おお~!早い早い!もうみなさん二本目を飲み干そうとしている!あっ!今矢矧選手が手を挙げました!続いて龍田選手接戦です!」
「序盤からこのスピードだと終盤での小競り合いで負担が出てきそうなのが少し心配ですね。アルコールに負けて倒れてしまう、という危険があります。スピードを重視するか、安全策を取って終盤を有利に進めるか。選手の采配で変わりますね。」
「ゆっくりいくなんて、私の考えにはないわぁ~。出来るだけ早く飲んでみんなを引き離すだけよ~。ああ、お替わりおねがいねぇ~」
「龍田早ぇな。ガンガン行くのもいいけど無理するなよ。ほらよ。」
受け渡し役の天龍が雑に缶ビールを龍田に放り投げた。
流石に四本目ともなると酔いが回り始めたのか、うまく取れず缶を取れずに手の中で遊ばせていた。
「天龍ちゃん、ちょっと乱暴じゃない~?落としてたらせっかくのビールが台無しになっちゃうところだったじゃない。」
「投げたほうが早く渡せるだろ。そんなことよりも矢矧がもう四本目飲んでるぞ。俺たち天龍型の底力を新参に見せてやれ、性能より腕っていうやつをな」
「そうよねぇ。私もがんばるわぁ~。ていうわけで天龍ちゃ~ん。お替わりぃ~。」
「お替わり頂戴。ふぅ。」
「ちょっと矢矧。ペースが速いのはいいことだけどさ、早すぎだよ!やばくない!?」
「姉さん、私は大丈夫だ。まだまだ行ける。ただ少々気がかりなのが龍田。あいつのペースが全然落ちていない事だ。かなりの酒豪だとは聞いていたがまさかあそこまでとはな。」
「確かにあの方も2分に一本のペースですもんね、」
「いや、わからない。あっちから自爆してくれるかもしれない。この大会ではトイレに行くことが失格になる。あれだけ飲んでいれば恐らく途中でトイレに行きたくなる。そうすれば我慢すればペースは自然と遅くなる。そこが狙い目だな。」
「なるほど~。流石矢矧!頭いい!こんな妹を持てて阿賀野はうれしいよ!」
「ありがとう。姉さん。あとお替わり頼むよ。」
両選手は缶ビール15本ほどを飲み干していた。
酒に強いといえどもさすがに約4リットルもビールを飲めば体のどこかに異変が起きるはずだ。
しかし龍田と矢矧は全然そのようなそぶりを見せない。
「両者とももう20本以上を飲み切っていますがまだ行けそうですね。」
ただ彼女たちは黙々とビールを飲み続けた。
龍田は古参艦として、矢矧は最新鋭艦として、己のプライドをかけて飲み続ける。
根性で缶に手を伸ばす。
しかしこの戦いは意外な結果で幕を閉じることとなった。
「クソッ。しつこいわね。このオンボロ艦が。旧式の癖に私に刃向うんじゃないわよ・・・。」
酔いが回っているのか矢矧が子声で龍田の悪口をつぶやいた。
観客の声援で殆どかき消された矢矧の小言。
しかし真横にいた龍田の耳にはしっかりと届いていた。
その言葉を聞いたとき、ほとんど本能的に立ち上がり、いつの間にか矢矧の襟首を掴んでいた。
「えっ?龍田さん?一体何する...」
次の瞬間、龍田は矢矧を思いっきり壁に叩きつけた。
「がはぁ!!?」
龍田が矢矧を叩き付けた壁には大穴が空き、矢矧は外に放り投げだされていた。
起き上がろうとすると目の前にあったのは抜身の紫の薙刀。
「うふふふふ。新参のお子様のくせに、よくそんな大口叩けるわねぇ。もう二度とおしゃべりできないようにしてあげようかしらぁ。」
叩き付けたときの大きな音に驚いたのか海斗も軽巡寮に来ていた。
「全く今度はいったい何が...ってえぇぇぇぇぇ!!?ナニコレ!?どうしてこうなったの!?」
「いや、俺にもさっぱりだ。いきなり龍田がぶちぎれて矢矧の襟首掴んで投げたんだ。けどあの目はヤバイ。完全にぶちぎれた時の目だ。俺も一回あの状態にしちまった時があるんだ。」
天龍が淡々と説明する。
「そうしてどうなった?」
「半殺しにされた。あいつの気が済むまであの薙刀で切りまくってきたんだ。あの時はガチで死んだと思ったぜ。」
鎮守府でもかなりの連度を誇る天龍でさえ半殺しだ。
最新鋭軽巡とはいえ矢矧はこの鎮守府に来てまだ一ヶ月も経っていない。
連度で言ったら龍田の方が圧倒的に上だ。
「このままじゃ矢矧が危ない!龍田にゃ悪いがこの手しかない!」
と、天龍は大剣を出して龍田へと一直線に突進していった。
「龍田ぁ!すまねえが覚悟しろぉ!」
しかし、天龍の一撃は龍田にひらりとかわされてしまった。
「あらぁ、天龍ちゃーん。邪魔しちゃだめよぉ。」
龍田はかわした体勢からそのまま天龍の鳩尾にカウンターを喰らわせた。
「うがっ!?」
そして海斗のいるところまで飛ばされてしまった。
幸い柄の部分で攻撃したので命に別状はないが気を失っている。
しかし矢矧はその間に起き上がり、懐から何やら棒のようなものを取り出した。
「角材?」
それは人間の腕より二回り程の大きさの木製の角材だった。
「旧式のポンコツのくせに、この私、最新鋭軽巡洋艦阿賀野型にケンカ売るってアンタ大丈夫?あなたと私たちでは20年以上の技術の差があるのよ!それで私に勝とうって言ってるの!?おめでたい話ねぇ!」
「あらぁ。お子様のくせに、本当は怖くてそんな戯言しか言えないんでしょう?じゃあ先輩の私が後輩に直に再教育しなくちゃいけないねぇ。」
二人とも相当酔いが回っている。
誰も二人を止められない。
二人は真正面からぶつかりあった。
角材は直ぐ折れると思われていたが、全然折れない。
何らかの特殊な力が働いているのだろう、角材なのに薙刀とのつば競り合いで火花が散っている。
「ふ~ん。旧式のくせに中々やるわね。けど馬力が全然足りないね!」
「最新鋭ってうるさいからどのくらいかと思ったけど、対して手ごたえ無いわねぇ。これだったらト級の方が強いんじゃない?」
「...奴らが飽きるまでやらせろ。次行こう次。」
「へ、いいんですか?提督?」
「もう奴らを止めるだけ時間の無駄だ。それに二人とも死ぬまでやり合うことはないだろう。次は重巡の部だろう。みんな!重巡寮に移動だ!奴らはほっとけ。好きにやらせておけ。あとちょっとで報告書のまとめが終わるから重巡の部には顔を出せると思うかな。」
軽巡の部の結果は最終的に龍田と矢矧の反則負けで勝者なしという結果に終わった。
「どーも!今回重巡の部の司会、実況をやらせていただく青葉です!よろしくお願いしますぅ!」
「そして実況は私、高雄が行っていきます。どうかよろしくお願いします。」
「まずは選手紹介ですね!予選を見事勝ち抜き、飲兵衛王の座を手に入れるのは果たしてどちらなのでしょうか!?赤コーナー!飢えた狼の咆哮を轟かせ!妙高型三番艦!足柄!」
「この大会の勝利も私のものだわ!当然よ!」
「ここで足柄選手ですか...。私はてっきり那智さんが出てくるかと。」
「ああ、那智姉はこういうのあまり好きじゃないって。ゆっくり味わって飲むのがあの人流だから。」
「へぇ~。そうなんですか。さて、対するは青コーナー!艦娘1,2を争う胸部装甲が自慢の一品!高雄型二番艦!愛宕!」
「愛宕よ~。お酒には自信あるのよ~。優勝は私のものよ~。」
「ほんとに愛宕はよく飲むわよねぇ。一回非番の時に酒保にあった日本酒全部買ってったことあったわよね。結局二日で全部飲んじゃったし。かなりの強者ですよ。」
「選手の説明が終わりました!これから本番に移りたいと思います!選手の皆さんには坂本やでもおなじみのジョッキビール(中)を飲んでいただきます!制限時間は90分!お替わりが欲しいときは手を挙げてください!ではいきますよぉ!」
青葉の20㎝砲の空砲の合図とともにテーブルにビールが置かれ、豪快に飲み干していく。
重巡の選手たちはこれを戦いと見ていないのか、さながら女子会のようにビール片手におしゃべりを始めていた。
話のネタは最近重巡の間でブームになっている合コンの話だった。
ここで説明を挟むがこの鎮守府では三パターンのローテーションが組まれている。
出撃や遠征を行う実戦部隊、万が一鎮守府が攻撃されたときや実戦部隊が支援を必要とした時のための即応部隊。
この部隊は基本鎮守府内では艤装をつけたまま待機している。そして4~5回ほど出撃をした艦娘は非番となる。
非番の艦娘は自由を与えられ、鎮守府外にも行くことができる。基本的には行動の束縛はない。なので艦娘は普通にショッピングを楽しんだり、提督からの許可さえ取れば旅行にも行ける。
「そういや足柄さん、この間の合コンのどうでした?」
「う~ん。手ごたえはあったかな?けど私はいっつもその後からの展開がないのよね~。なんかみんな友達止まりよ。おかげで非番の時はその人たちと遊びに行ったりしてるからいつも給料日の前の日は金欠病よ。そう言う愛宕はどうだったのよ?」
「私?私は...。」
お替わりを待っている間にも彼女たちのトークは途切れない。
お替わりを重ねに重ね、各人8杯ほど飲んでいくと酔ってきたのか言動が過激になり、足柄と愛宕の会話はかなりギリギリなものになって行ってしまった。
「だ~か~ら~!男共を釘付けにしてから甘い言葉で誘っちゃえばぁ~!簡単に堕ちるの!そうすればぁ!すぐにいい関係になれるわよぉ!お金ももらえる時もあるしぃ!」
「はあ!?お金って!どうやってもらってるのよ!まさか!」
「手段さえ選ばなかったらお金なんてジャンジャン入ってくるわよぉ~。お給料より多くもらえる時もあるし~。」
「よ~し。終わったな。ふう~。疲れたぁ~。」
海斗は執務室の机に突っ伏していた。
先ほどまで書類の確認をしていたらしく、机の上にはこれからの反攻作戦の概要がかかれたマル秘の印が押された重要書類の山ができている。
「今は重巡の部がやっている頃か。どうなってるかちょっくら見てくるかぁ。」
時間からして重巡の部が始まっておよそ一時間
熱烈な競い合いが行われていることが予想された。
執務室から重巡の部の会場の重巡寮までは歩いてほんの数分ほどのところにある。
が、かなりの艦娘がぞろぞろと重巡寮を後にしている。
『おかしい。重巡の部が始まったのは3時ちょっと過ぎだったはず。けどまだ4時にすらなっていない。制限時間は90分のはず。もう決着がついてしまったのか?』
疑問に思った海斗は近くにいた扶桑に話を聞いた。
「扶桑。もう重巡の部は決着が着いたのか?それにしても早いなぁ。誰が一番だったんだ?」
「あの...。提督、ちょっと言いにくいのですけど...。ちょっと特殊な状況になってしまいまして...。」
「特殊な状況って...。まさか軽巡の部みたいにまた乱闘になったのか!?」
「いえ、それとはまた別です。出来たら止めていただきたいのですが。」
海斗はわかった。とだけ言い重巡寮へ向かって歩いて行くと段々と騒ぎ声が聞こえてくる。
ああもう!今度は何なんだ!?これ以上設備を壊されると困るのだが。
海斗はそう思いながら寮の扉を開き会場に入っていった。
そこで海斗が見たものは・・・。
「あんたなんか下品な乳ぶら下げて腰ばっか振ってる淫乱女よ!この変態が!」
「あなたこそ別に何も感じられないただの売れ残りよ!う・れ・の・こ・り!わかる!?」
修羅場だった。
互いに罵詈雑言を浴びせ合う汚い戦い。
両選手の姉妹艦も顔が真っ赤になっていた。
かろうじて残っていた観客たちも半ば呆然と眺めているような状況だった。
「おい。長門。今度はいったいどうしてこうなったんだ?」
と小言で駆逐艦娘の耳を塞いでいた長門に耳打ちする。
「おお、提督か!ちょうどいいところに来てくれた!早くこの下品な争いをやめさせてくれ!駆逐艦たちに悪い影響が出る!」
「わかってる。しかしどうしたものか。あいつらかなり酔ってるぞ。もしも俺が止めに行って二人にボコられそうになったら、二人に攻撃しろ。これは上官命令だ。今回限りは許可する。」
「承知した。気を付けてくれよ。」
「それにあなたはオバサン臭いのよ!そんなんで男は寄ってこないわよ!そんなこともわからないで行ってたの!?救えないわぁ!」
「オバサン臭いって!あんた!言ってもいいことと悪いことがあるわよ!それにあんたは身体で男を釣っているだけじゃない!それに真の愛があると思っているの!?あると思っているんだったらそっちの方が笑いものだわ!」
この二人の会話に楔を打つことはかなり危険なことだ。
しかしやらねば男が廃る。私は提督だ。
頬を冷や汗が伝う。
「お、おい!やめないか!みんなが不快に思っている!やめないとその分の制裁を下すことも考えている!やめるなら今のうちだ!」
いつもとは違う提督の怒りの籠った言葉を聞いて二人は言い争いを
「「提督はどっちがいいの!!?」」
やめるどころか矛先が海斗に向いてしまった。
『えぇぇぇぇぇ!?嘘だろぉぉぉぉ!?』
「ね~ぇ。提督~。こんなババ臭いやつより私の方がいいでしょう?そうでしょう?」
「提督!こんな淫乱女に騙されないで!私の方がいいに決まっている!ねえ!そうでしょ!?」
海斗を壁に押し寄せてグイグイ攻めてきている。
引きはがそうにも重巡二隻の力が働いて押し返そうにもびくともしない。
「お、俺には、」
「「どっち!?」
こりゃどっちだか言わないと助からない。
言いたくはなかったが自分の身が危ない。
「お、お、俺、俺は・・・」
その時だった。
「ワタシノテイトクニナニシテクレテイルンデスカ?」
二本の腕が愛宕と足柄の頭の上に載った。
奥の観客たちは全員真っ青になっている。あのビッグ7の長門でさえもだった。
「「ふぇ?」」
次の瞬間には二人の首はクキッという軽快な音を立て、回ってはいけないところまで一気に回った。
白目を剥いて二人が倒れ、目の前にいたのは鬼神の様な形相をしていた紀伊だった。
が、その顔は直ぐにいつものさわやかで大人っぽい中に幼さが残る可愛らしい笑顔に戻った。
「提督!大丈夫ですか!?」
「ありがとうぅぅぅ!紀伊ぃぃ!助かったぁぁ!けど大丈夫か?こいつら。首が見事に半周しているんだが。」
「さあ?知りません。船で言うなら艦首が180度曲がっただけですよ。この二人にはこのくらいが妥当です。もうちょっと過激な行為に移っていたら首が取れていたかもしれませんね。」
「艦首が180度曲がるってさらっと言うけどかなりの重傷だぞ。一応二人は入渠させるか。そして非番の時の合コンは禁止にするか。こんなことが二度と起こったらたまらないからな。」
「それで。提督。一体あの時はなんて言おうとしていたんですか?」
あの時はとても混乱していて何を言おうかさっぱり思いついていなかったが
「そりゃぁもう。俺には紀伊しかいないよ。って言うしかないだろ。俺は基本真実しか言わないからな。」
「もう。提督ったらぁ。」
「やめてくれよ。みんな見てるだろ。少し恥ずかしい。」
そう言うと海斗は立ち上がり、あたりを見渡してみた。
殆どの艦娘は次の会場である空母寮へと行ってしまい、残っているのは倒れた二人を必死になって入渠ドックに運ぼうとしている姉妹艦達ぐらいしか残っていなかった。
「さあて、次は空母の部かぁ。紀伊。一緒に行くか。」
そういって紀伊に手を差し伸べた。
「もちろんです。提督。」
手を取って立ち上がり二人は次の会場の空母寮へと向かっていった。
今回は息抜き回(?)という事で酒飲み大会について書かせてもらいました。
私はまだ未成年なのでお酒が飲めないので結構個人的な見解が混ざっています。
変なところ等があったらご指摘ください。
それと後、実はこの回は7月上旬から書いていました。
何で遅れたかって?そりゃあ夏イベと学校があったからに決まってるじゃないですか~
やだ~(すいません)
私は夏イベは甲甲甲甲甲乙丙でクリア、掘り艦も無事全員ゲットした代償に大破バグで瑞鶴を失いました・・・。(E-2掘りで戻ってきた模様)