艦隊これくしょん 艦これ ~水面の愛と水底の命~   作:hatahata

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注意 これは艦隊これくしょん 艦これの二次創作となっております。
別に見てあげてもいい、という心の広い方たちはお紅茶でもすすりながらゆっくり見ていってね!


不死鳥ハ沈マズ

地獄の酒呑み大会から三日が経った。

今日はとても大事な話があるということで朝から全艦娘が鎮守府の中央にある広場に集合させられた。

鎮守府の艦娘たちは講話の始まる7時30分よりも早めに全員が集まったということで予定を早めて7時25分から話が始まった。

6月の朝は気持ちがいい。

海斗が広場の一番手前にある白の壇に上がり皆を見ながら敬礼をすると彼女たちも一斉に敬礼を返す。

 

「え~、皆にはこれから重要な話を二つする。一つ目は戦略上大事なやつ。二つ目は超うれしいやつだ。どっちからがいいか?」

 

いきなりの質問だったのでガヤガヤし始めたが、少し間をおいて、まずは前者のほうを聞くことを選んだ。

 

「まず1つ目だ。我々はこれからついに深海棲艦達に対しての反攻作戦を開始する!」

 

皆、ついに来たか!というような顔をしている。

 

「だがそこで一つ注意がある。まずは北方、ハワイ方面海域の開放から始める。だがこれらの作戦はアメリカ、ロシア海軍との共同作戦となる。」

 

アメリカ軍との共同作戦、その言葉を聞いた途端、彼女たちの表情が一気に硬くなるのが壇上からでもよく見える。

 

「確かにアメリカは君たちの因縁の敵。受け入れられない気持ちもわからないわけじゃない。けど同時に二方面海域の攻略をするのには俺たちだけでは数が足りない。昔は敵だが今は同じ目的を持った仲間だ。決して敵愾心は持たないようにしてくれ。そして大まかな作戦の内容については今から紀伊が説明する。」

一旦海斗が壇上から降りると代わって紀伊が壇上に上がり、マイクを掴む。

 

「はい。これより新作戦、AL/MI作戦の内容について簡単に説明します。」

紀伊があらかじめ作っておいたプリントを読み上げる。

 

「まずはAL作戦の方ですが、まず手始めに北方四島をロシア海軍と共同で奪還することになっています。奪還が成功した後はアリューシャン列島の島々を私たちと米露海軍と共同で奪還、ロシア、アメリカとの重要な物資補給のラインを繋ぐことを目的としています。」

プリントをめくり、二ページ目へと進む。

 

「次にMI作戦の方です。こちらは先だって奪取したウェーキ島を中継基地として、ミッドウェー島を攻撃。奪取後はハワイ諸島の奪還となります。ただしこちらはミッドウェー島攻撃の時は米海軍の支援がありません。そしてウェーキ島からの航空偵察から、敵の新型航空機の報告が上がっています。作戦の概要は以上となります。」

 

紀伊が一礼し壇上から降りると、海斗がまた壇上に上がった。

 

「さて、二つ目の知らせだが、新しい艦娘が鎮守府にやってきたぞ!」

 

先ほどの落ち着いた声からいきなり少々張り切っているような声に変わった。

また前のほうがガヤガヤとなり始める。

戦艦だろうか、いや、空母かもしれない、それか海外からの留学艦かも。

様々な憶測が彼女たちの頭をよぎる。

 

「絶対みんな喜ぶぞ~!新しく来た艦娘は...!」

 

全員に緊張が走る。

 

「間宮、伊良湖の二人だぁ!」

 

「「「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

静寂の鎮守府が一気に喧噪の渦に巻き込まれた。

海外艦達はあまりの変わりように驚きを隠せないようだ。

 

「ねぇ、マミヤとイラコって誰!?そんなに強い艦娘なの?」

レーベは近くにいた睦月に聞いた。

 

「間宮さんと伊良湖さんは給糧艦なのね!二人の甘味はね!とっても美味しいの!あぁ、あの間宮羊羹にまた会えるなんて!睦月感激ぃ!」

 

「そ、そうなの...。」

 

「まあ、落ち着け。二人にはこれから鎮守府で甘味処を開いてもらう事にしてもらう。食べたくなったらいつでも彼女の所に行くように。今回は以上だ!この後出撃任務のある者は速やかに支度を整るように。では解散!」

 

 

 

それから数日後、太平洋を進む三隻の輸送船が五隻の艦娘に護衛されながら日本を目指していた。

MI作戦の為の前哨基地を作るための資材を積んでいた船で、今は積み荷を降ろして日本に帰還しようとしていた。

護衛艦隊の旗艦の天龍はとても暇そうにしているように見える

「はぁ~。ったくかったりぃな~。やるとしたら派手な戦闘任務が良かったぜ。」

 

「天龍さん、護衛任務も大事な任務なんですよ。それに帰ったら間宮さんの所に行きましょうよ!」

 

「たっく、わかってるってそのくらい。...おい!チビども!そっちの調音機とか電探に何か引っかかったか?」

 

「こちら暁、異常ないわ。」

 

「こちら響、同じく。」

 

「雷、問題ないわ。」

 

「電の方も問題ないのです。」

 

「あぁぁぁぁ、ひまだぁ。何か出てこいよ。暇で暇で仕方がねぇ。」

 

「何も来ないのが一番いいんですけどね...。」

 

すると、天龍の腕にはめてあるJTACSに通信が届いた。

 

「おぉ!何だ何だ!?敵発見の報告かぁ!?」

 

素早く受信し耳に当てると、声の主は海斗だった。

 

「チッ、提督かよ。どうかしたのか?」

 

「何でそんなにイラついているんだ。」

 

「何でもねぇよ。」

 

「まあ、いいか。それよりも報告がある。たった今急速に発達した低気圧が小笠原諸島沖に発生しているから、出来る限り避けて航行してくれ。」

 

「えっ、ちょ、もうすぐそこなんだけど!何でもっと早く言わなかったんだ!」

 

「仕方ないだろ!さっき父島の天候偵察の結果が来たんだから!一応データは転送しておくが...。」

 

数秒も経たないうちに、JTACSの『海域』のコマンドが点滅し始めた。

押すとホログラム映像として、目の前に立体的な海図が浮き出てきた。

自分たちは緑色の矢印で表示されており、陸地はもっと濃い緑色、そして赤く、もやみたいに表示されている低気圧は海図の上をすっぽり覆っている。

コマンドを海域から通話に変え、提督に報告する。

 

「提督、こりゃ無理だ。低気圧に突っ込むしか方法はない。かなり危険になる。」

 

「了解した。健闘を祈る。ちゃんと帰ってきたら間宮さんの羊羹でも奢ってやるよ。」

 

通話を切ると天龍は大きなため息をついて随伴艦達の方を見た。

 

「チビども、よく聞け。今からでかい低気圧を突破する。これはかなり危険だ。衝突に気をつけろよ。ぶつかったらひとたまりもないからな。」

 

目の前には暗雲が広がり、雷の音もちらほらと聞こえはじめ、海の段々と荒れ始めてきた。

 

 

 

海は彼女たちの想像を絶する荒さを見せていた。

大粒の雨が横殴りに吹き付け、波は幾度も彼女たちを飲みこみ、叩きつけ、息すらすることが難しくなっていた。

 

「おい!大丈夫か・・・ってうぇっ!くっそぉ~!最悪だ!大丈夫かぁ!?」

天龍が全員の安否を確認しようと通信を入れるが...。

「「「よく聞こえませ~ん!」」」

案の定雨と雷と波の音で全然聞こえない。

「チッ」

 

舌打ちをし、探照灯を出し、妖精に明かりをつけてもらう。

何度かカチカチとカバーの開け閉めをした後に配下の第六駆逐隊に向かって発光信号を送る。

『ソチラハ大丈夫カ』との信号に第六駆逐隊旗艦の暁から『全艦異常ナシ』との返答が来た。

内心ほっとするもこの嵐だと転覆の危険性も大きい。

海図をもう一度見てみると安全な海域に入っている。

 

『この嵐の中で航行するのは危険すぎる・・・』

 

そう考えた天龍は輸送船に通信を入れた。

 

「こちら天龍!嵐が酷すぎて航行が困難になっている!そちらへの移乗を求む!」

 

輸送船団に無線を入れるも、なかなか返信が来ない。

しばらくすると一隻の輸送船から返信が来た。

 

「こちら輸送船弥生丸。移乗は許可するが本船の揺れもかなり激しい。移乗には梯子を使うしかないが振り飛ばされたり衝突しないよう気を付けてくれ。」

 

移乗の許可がでた。

 

『我移乗許可得レり、コレヨリ全艦輸送船弥生丸へ移乗セヨ。ソノ際ニハ揺レト追突二注意セヨ。』

 

『了解』

 

発光信号のやり取りの後に五人は先ほど天龍が通信を行った弥生丸へと近づく。

弥生丸は艦隊の中央に位置しており、その他にも二隻の輸送船をぐるりと囲むようにして五隻の艦娘が散らばっていた。

最初に弥生丸に辿り着いたのは一番近かった天龍だった。

弥生丸の右舷側に一本の縄はしごがブランと垂れ下がっていた。

波に揺られながら、ゆっくりと衝突しないように接近し、縄はしごをつかんだ。

縄はしごを登り切り、広い甲板に上がって下を見てみると既に暁と電がはしごを登っているところだった。

 

「ハァ...ハァ...。疲れた~。電、大丈夫?」

 

「電は大丈夫なのです。それよりも響ちゃんと雷ちゃんは?」

 

「あいつらは左舷側にいたからあとちょっとでくるはずだが...。」

 

『こちら響。天龍さん、聞こえてるかい?梯子の所まで来た。今から行くよ。』

 

響の淡々とした声が無線越しで聞こえてくる。

 

『まず最初に雷から先に行って私が次に行く。』

 

風に揺られて暴れている縄梯子をやっとの思いで掴んで雷は上に登り始めた。

雷が少し登ったところで響も梯子を登り始める。

雨風と戦いながら梯子を登り、上を見ると雷はもう殆ど上までたどり着いたようだ。

響はまだ半分ほどしか登っていない。

するといきなり無線が飛んできた。

 

「こちら富士川丸!落雷により電力系統に異常!舵が効かない!このままだと弥生丸に衝突する!」

 

「はぁ!?嘘だろ!」

 

天龍は富士川丸が位置していた方向、弥生丸の右舷側を見た。

先ほどまでは何もなかったはずの海に巨大な輸送船の姿があった。

今にも届きそうな距離、おそらく100mも離れていないだろう。

その距離はどんどん縮まっている。

 

『雷!響!早くしろ!輸送船が衝突してくる!』

 

『わかってるわよ!あとちょっとで着くからぁ!』

 

『これは少々厳しいな...。』

 

もう一度上を見ると天竜が下をのぞき込んで何か叫んでいる。

雷はもう上に着いたようだ。

後ろを見ると輸送船の横っ腹がもう目と鼻の先まで来ている。

響はありったけの力を振り絞って梯子を登り続ける。

 

「早く!早く!あと少しだ!頑張れ!」

先ほどまで風雨の音で遮られていた天竜の声が聞こえてきた。

 

「その調子だ!あと少し!頑張れ!」

 

あと少しで甲板だ。

天龍が手を差し伸べているのが見える。

あと少し、あと少し。

差し伸べられた手をつかもうとしたその時、激しい衝撃が響を襲った。

響は縄梯子ごと弥生丸の側舷に叩きつけられた。

その拍子で手が梯子から外れてしまった。

思わず、つかもうとした天龍の手を掠め、空を掴んだ。

甲板でみんなが叫んでいるのが見えたが、何を言っているのかわからない。

みるみるうちに四人の姿が小さくなっていく。

口の動きから彼女の名前を呼んでいることだけがわかる。

響は無線で話そうとしたが、その時にはもう暗く、荒れた海に落ちていた。

必死に浮き上がろうとするも、海は彼女を海底へ引きずり込もうとしていく。

荒れ狂う海と格闘するも、そのうちに意識が朦朧とし始める。

もうみんなの元には帰れない...。

そう思った響は抵抗をやめて波に身を任せた。

 

その後すぐに輸送船団のサーチライトが海を照らしたがすでに響の姿は海上になかった。

 

 

 

誰かが私を呼ぶ声がする...。

しかし私はあの嵐で沈んだはず...。

ということはここは天国か?いや、艦娘に天国も地獄もあるのだろうか?

 

仕方がない、起きるとしよう。

響は横たわりながら目を開けた。

目の前には白い砂浜と一匹の白色の蟹、そして喜び跳ね回る響の妖精さんたち。

妖精さんの喜びようからかなり長い時間気を失っていたらしい、万歳コールをしている妖精さんもいる。

辺りを見回すと目の前には輝く海、横に長く続く砂浜、後ろには何本かのヤシの木と謎の小屋がある。

小屋のすぐ前には朽ち果てた『何か』の残骸が転がっていた。

外にいても仕方がないので、響は小屋に向かおうと立とうとしたが、体が重く感じてなかなか立てない。

すると妖精さんがどこからか木の棒を持ってきてくれた。

一言ありがとうと言って足を引きずりながら棒を支えにして小屋へと向かっていった。

 

弾痕の後のある殆ど腐りかけの木のドアを開けると、重油の独特の匂いが鼻を突いた。

中には数個のドラム缶と椅子、壁には黒板が置かれ、色が薄くなった自衛隊旗がその上に飾られていた。

黒板をよく見てみると、正の字が二、三個ほど書かれており、床には血の付いたヘルメットが三個転がっている。

多分ここは元々は自衛隊の何らかの設備でとっくに放棄されているものだと響は推測した。

響は小屋に入って左側のほうにあったドラム缶のほうに行った。

10個ほどあるドラム缶には何故か船舶用の重油が入っていた。

『どうせこの燃料は誰も使わないのだからもらおう。』

そう思い、彼女は艤装を下した。

妖精に頼んでもらってこの重油で燃料を補給してもらうことにした。

 

しかしここはどこなんだ?

 

響はダメ元でJTACSを再起動させようとした。

故障していると思ったら、以外とすんなり電源が入った。

響はすぐに『通信』のコマンドを押したが反応がない、どうやらこれは故障しているようだ。

次に『海域』のコマンドを使用した。

今度はちゃんと作動し、ホログラムで海図が目の前に姿を現した。

しかし、これも調子が悪いらしく、映像に時々ノイズが混じっている。

荒い画像に目を凝らして自分の現在地を確認した。

どうやら無人島に流れ着いたらしい。

日本からはそこまで離れてない。

少し休憩してから出発しよう、少し疲れた。

そう思った響は腰を下ろして、壁に寄りかかった。

重油と埃の匂いが少しキツかったが、疲れはそれ以上に彼女の眠気を誘った。

 

 

起きると鳥の鳴き声が聞こえ、小屋の壁の隙間から日が差し込んでいた。

丸一日寝ていたらしい。

起きると昨日のような体のだるさはなくなっていた。

燃料の補給も終わっており、いつでも出発できる状態になっていた。

妖精を艤装の所定の位置に着いたことを確認してから機関を背負い、主砲を手に取り、魚雷発射管を脚に取り付けた。

響はもう一度JTACSの電源を入れようとしたがうんともすんともいわない。

電池が切れたのか、完璧に壊れてしまったかはわからない。

 

「はぁ。」

 

ため息がこぼれるが、自分の位置は昨日のうちに把握している。

外に出ると太陽がさんさんと輝いている。

白い砂浜が広がり、空の上を海鳥たちが飛んでいる。

まるで戦いなど起こってないようなとても平和な風景。

まるで戦争なんて起こっていることを忘れてしまいだ。

 

「...きれいだな。」

 

そう呟いてから海に一歩踏み出す。

まだ缶圧が低いので機関の出力がなかなか上がらない。

普段だったら速度が出ないと危険だがここは比較的安全な海域、深海棲艦が出てくるわけがない。出てきてもそこまで強くはないだろう。

響自身も双眼鏡を流失していたが周りの索敵は気にも留めていなかった。

 

出発してから数分後、缶圧も僅かずつだが上がってきており、速力も13ノットほどまで回復してきた。

すると見張りの妖精が遠くで艦影を見つけたと報告してきた。

『迎えに来てくれたのか...。少し恥ずかしいな、なんと言えばいいのだろうか。』

その艦影はこちらへと近づいてきているらしい。

方角的にも深海棲艦だという事はあり得ない。

手に持っていた主砲を肩にかけていた。

機関の出力も上げれるだけ上げるよう命令した。

響の目には薄らと涙がにじんでいた。

 

「しまった!敵です!深海棲艦です!友軍じゃない!くそっ!」

 

その報告は響を恐怖のどん底に叩きだした。

敵との距離はじわじわと近づいている。

駆逐艦の武器である機動性も今は封じられている。

主砲弾も遠征任務という事であまり搭載してこなかったし、流されている間にも流失し、ほとんど残っていない。

魚雷も今発射管に入っている物のみ。予備なんてものは持ってきていない。

しかしまだ希望は残っている。

敵の数が一隻、もしくは二隻だったら勝機はいくらかはある。

 

「妖精さん、敵の数はわかるかい?」

 

外側だけは落ち着いているようにいつもの淡々とした口調で言ったが、内心は恐怖で満たされていた。

 

「確認中です!」

 

帽子の上に立って一人の妖精が双眼鏡を持って何もない水平線を凝視する。

 

「ちょっと待ってください...。最悪だ...。数3!」

 

1対3と数では負けている。

しかし相手が駆逐艦だけであれば勝機は僅かだがある。

 

「艦種特定急げ!」

 

「二隻は駆逐艦イ級。も、もう一隻は...。」

 

「何なんだ、早く報告してくれ。」

 

「く、駆逐棲鬼です...。」

 

『駆逐棲鬼』その神出鬼没な戦法で幾多の輸送船を海の底へ沈めた深海棲艦の通商破壊部隊の旗艦と考えられていた艦。

日本近海の解放に向けての最重要攻撃目標だったが動きを察知する事すら難しかった。

海域の解放が進むにつれて、出没回数が減り続け、全解放が終わった頃には姿を現すことはなくなった。

制海権を失ったので撤退したという見解に達したのだ。

しかし、奴は今ここにいる。

撤退などはしていなかった。

 

しかしここで疑問がわいた。

何故駆逐棲鬼の随伴艦がイ級二隻だけなのだろうか。

普通だったら5~6隻で行動しているはずだ。

それに駆逐艦もハ級や二級といった高性能艦でもなければflagshipやelite(こうれんどかん)でもない。

 

「敵艦発砲!」

 

響は回避運動をしようとするも、速度が乗っておらずうまく曲がれない。

かなりの遠距離での砲撃だったので幸いにも砲弾はかなり手前で落ちた。

しかしイ級の砲弾は距離も方角もあてずっぽうだった。

 

『これは訓練航海でもしていたのか?だったら一対一も同然。まず先に雑魚のイ級から叩いて旗艦をやるか。』

 

イ級程度の装甲だったら手持ちの12.7cm連装砲で十分貫通できる。

しかし駆逐棲鬼のスペックは殆ど謎に包まれている。

 

敵の姿が豆粒のようだが見えてきた。

あちらは何発も撃ち込んでくるが響はまだ砲弾を撃とうとはしない。

搭載してある砲弾の数が響の予想をはるかに超えるほど少なかった。

その数たったの10発。

そして接近戦用の小刀もなくなっている。

一切の無駄弾が撃てない。

 

彼我との距離が1000mを切ってもまだ砲を構えようとはしない。

砲弾が響の周りに降り注ぎ、水柱を立てた。

 

距離が500mを切るとようやく砲を構えた。

この距離だったら外すほうが難しいだろう。

響は突っ込んでくるイ級の一隻に照準を合わせた。

その間にも砲弾は響を掠め通る。

 

「無駄だね。」

 

盛大な炸裂音とともに砲弾が発射される。

秒速910mにも及ぶ12.7cm砲弾はまるで吸い込まれるようにイ級の前面に直撃した。

イ級は弾薬庫、さらに魚雷に誘爆し、大爆発を起こし塵も残さずに海上から消え失せてしまった。

 

「よし、まずは一隻。妖精さん、装填急いで。」

 

次に狙うは二隻目のイ級。

イ級に照準を向けると、敵は果敢にも突撃してながら発砲してきた。

しかし砲弾は響の頭を通り越して、かなり遠くへ着弾した。

 

「計算が甘いよ。撃て。」

 

逆に響の砲弾はイ級の頭部に当たり、そのまま静かに沈んでいった。

 

「あと一隻!」

 

「右舷!駆逐棲鬼急速接近中!」

 

横を振り向いたその時、駆逐棲鬼がもう目と鼻の先まで来ている。

向けられた砲口は響を冷淡に見つめているように見えた。

とっさに砲撃するも、照準をあわせてない、半ば腰撃ちのような状態で撃った弾は駆逐棲鬼の横をすり抜けて行った。

やばい! そう思った時にはもう遅かった。

奴の連装砲から発射された砲弾は一発は主砲塔へ、もう一発は魚雷発射管に直撃した。

一発目は砲塔に直撃し大破。二発目は魚雷発射管を根元から引きちぎった。

 

「なっ!?」

 

幸いにも機関部には損傷がなかったが主砲と魚雷をやられてしまい、戦闘能力を失ってしまった。

絶望し、立ち尽くしていた響に駆逐棲鬼は主砲を向けている。

何も手出しができない響はただ運命の時をただ待つことしかできない。

駆逐棲鬼は響に近づき、襟首を掴むと砲を響のこめかみにつきつけた。

殺される。

そう思うと途端に涙があふれてきた。

私にはまだやるべきことがたくさんある。

それに待っている人もたくさんいる。

『せめて私を殺す奴の顔ぐらい見ておこう。』

涙の流れる瞼を恐る恐る開ける。

にじんだ世界に見えるのは深海のように深い色をした瞳をした少女だった。

無表情でこちらを見つめてきている。

しかしその彼女の目を見ていると何故かはわからないが強い親近感を感じた。

どうして?敵なのに・・・。

あちらも目を合わせてくると、無表情だったのが驚きに変わっていった。

するとあちらから絞めていた手を緩め、背を向けて去って行ってしまった。

 

響は駆逐棲鬼の行動にあっけにとられて呆然としていた。

なぜやつは私を見逃したのか?

その疑問が彼女の頭の中を駆け回った。

妖精はそんなことは露知らず、奇跡の生還を泣いて喜んでいた。

 

 

 

「今日も来ないのです...。」

 

夕暮れの鎮守府の埠頭に電が双眼鏡を持ってたたずんでいる。

響が遭難してからずっと空き時間にはここにきてずっと水平線を見ている。

響が遭難してからもう五日が経っている。

捜索隊や偵察機も響を捉える事が出来ず、遂に今日正式に沈没と発表された。

それでも電はあきらめてはいない。

絶対に響は生きている。

 

「夕ご飯の準備できたわよ。さ、早く戻って。」

 

「暁ちゃん...。わかってるのです。けど、もう少し待ってほしいのです。もしかしたら戻ってくるかもしれないのです。」

 

「電、響はもう...。電も知ってるでしょ。どこ探しても見つからなかったのよ。それにもう5日も経ってるのよ。もし海の上だとしても燃料は完全に尽きているはず。そこを深海棲艦にでも狙われたら...。」

 

「そんなこと...、そんなことはないのです!響ちゃんは絶対に帰ってくるのです!」

 

「私だって認めたくないわよ!...けど、もうこれは決まっちゃったこと..な..の。」

 

「暁ちゃん...。泣かないで。私だって泣きたくなっちゃう。」

 

そう言うと電はまた双眼鏡で水平線を見始めた。

そして見えるのはまた何見えない、何も変わらないふつうの景色だ。

 

『やっぱり響ちゃんは...。』

 

電が諦めかけていたその時だった。

薄らと何かがこちらに近づいてくるのが見えた。

出撃している艦娘は一隻もいないし、ましてや深海棲艦などもってのほかである。

 

「えっ...。」

 

「どうしたの?電?」

 

白い髪、駆逐艦用のセーラー服、錨のマークの海軍帽。

電はその姿をちゃんと捉えていた。

 

「うそ...。そんな...。」

 

今からでも海に出て会いたい。

その気持ちでいっぱいになった。

しかし、いきなりの出来事で体が動かない。

その間にも、彼女はだんだんと近づいてくる。

そして遂に彼女は辿り着いた。

 

「ただいま。心配かけたね。」

 

その声で二人は我に返った。

 

「遅かった...じゃ...ない...のぉ!」

 

「みんな心配してたのですよぉぉぉ!」

 

二人は泣き出して響に抱きついた。

あまりの勢いに響はそのまま倒れこんでしまった。

 

「本当にごめんね。私もみんなに会えてうれしいよ。」

 

いつもの淡々とした口調だが、その眼には大粒の涙が流れていた。

 

 

 

落ち着いた3人はみんなの待つ鎮守府へと帰って行った。

ちょうど夕飯時だったので艦娘たちは食堂に集まっていた。

食堂に入ると、みんなピンピンしている響を見て驚いた。

なにせ沈んだはずの艦が帰ってきたのだ。

その時食堂に海斗が飛び込んできた。

「本当か!響が帰ってきたって本当なのか!」

 

「あ、あぁ。戻ってきたよ。」

 

「あぁぁぁ!心配したんだぞぉぉぉぉ!もうてっきり沈んだかとぉぉ!」

 

そしていきなり周りの目も気にせず、響に抱きついてきた。

 

「提督。心配してくれたのはいいのだけど。苦しい。」

 

「おっと、すまない。でもよく戻ってきた!5日間も見つからなかったから、あの嵐で沈んだのかと思ったよ。あれ以来ずっと偵察機飛ばしたり、捜索隊を編成して探したり。大変だったんだぞ!」

 

「ありがとう。...でも司令官。何で私一人の為にそこまでしたんだい。大きな作戦が控えていたんだし、私のような駆逐艦一隻を失ったって艦隊には何も影響はないはずなのに。」

 

「何言ってるんだよ。」

 

「えっ?」

 

「確かに言ってしまえば駆逐艦一隻の損失では特に影響は出ない。けどな。君がいなくなって悲しまない人はいないんだ。」

周りを見ると、みんな笑顔だ。

そして、前には第六駆逐隊のメンバーがこちらを満面の笑みで見ている。

 

「フフッ。そうだな。ありがとう、司令官。」

 

「なに謝ってるんだよ! さて!響も無事帰ってきたことだし!飯にするか!通夜ムードも消し飛んだことだし!帰還パーティーだぁ!」

 

 

暁、雷、電(しまいたち)がこっちにおいでと手招きしている。

 

『そうだね。私たちにはあの子たちがいる。沈んじゃいけないよね。』

 

「本ッ当に心配したんだからね!」

 

「けど無事で本当によかったわ!」

 

「これで第六駆逐隊は全員そろったのです!響ちゃん、もういなくならないでくださいよ!」

 

「・・・大丈夫さ。」

 

響は自信を持ってこう言った。

 

「不死鳥は沈まないさ。」




やっとこさ第七話出来ました!
新年前に投稿しようと思いましたけどいろいろあって年明けになっちゃいました。
秋から書いてたのに・・・なんでだろ?
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