艦隊これくしょん 艦これ ~水面の愛と水底の命~   作:hatahata

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注意 これは艦隊これくしょん 艦これの二次創作となっております。
別に見てあげてもいい、という心の広い方たちはお紅茶でもすすりながらゆっくり見ていってね!



青い鳥

響が無事に帰ってきてからから一か月、なかなか駆逐棲鬼の動向が掴めなかったが、遂に偵察機が姿を捉え、海斗は急遽、駆逐棲鬼討伐作戦を発令した。

しかしその間にAL/MI作戦を発動していたため、作戦の報告書の確認を終えてはまた増え、それを終わらせても次が待っている。という状況になってしまった

 

「う~ん。どうしようか...。大規模作戦中だから別での作戦行動はあまりよくないのだが。相手が駆逐棲鬼となるとな。大型艦はミスキャスト...。軽巡と駆逐もかなりが北方とウェークに行っちゃったからな...。きついなぁ~。」

 

一人、執務室で悩み続けていると、紀伊が書類を持って部屋に入ってきた。

 

「提督?大丈夫ですか?ずーっと考えごとですか。少しは休んだ方がいいですよ。けど、そうはいきませんね。美幌基地に展開する航空部隊から連絡です。攻撃機をもっと増やして欲しいということです。」

 

「んぁ?あぁ。わかった。確かまだこっちに何機か陸攻が残ってたよな。」

 

「はい。九六式陸上攻撃機が20機。一式陸上攻撃機が7機。こちらで待機中です。陸軍機の方は九七式重爆撃機が8機です。」

 

「うむ。じゃあ九六式を16機あちらに寄越してやれ。けどどうして攻撃機の増援を要請した?派遣した空母の艦載機も合わせると戦闘機だけでも400機以上だぞ。陸上型が4体、しかも一個はまだ未熟な個体だというじゃないか。未知の敵とはいえ、流石に苦戦しすぎだろ・・・。敵の航空戦力はそんなに強力なのか?」

 

そういいながら、渡された書類に目を通す。

機体も搭乗員も損害は海斗が思っているより少ない。

やはり攻撃機の数が足りなかったのか。

コーヒーをすすりながら記入事項を書いていく。

 

「いいえ、おそらくロシア軍がまだ動いていないからだと思います。」

 

途端に海斗はコーヒーを噴き出しかけた。

 

「ブフゥッ!えぇっ!?まだ来てないの!?ちゃんと決めたのに!来週には国後と択捉攻撃するってあっちはちゃんと言ったぞ!あぁもう、何やってるんだよ!爆撃機と艦娘出すって約束なのにぃ!ああもぉ~、狂うなぁ...。SBとかIL-2とか持って来いよぉ。」

 

頭から突っ伏してしまう。

 

「まぁ、そう焦らないでください。あちらの方で何か問題でも起きたのでしょう。すぐに来ますって。それに、やることは山積みですよ。」

 

「どうせまたセクハラしたんだろう。奴も学習しないよな。一体何回病院送りにされたら気が済むんだよ。」

 

「セルゲイ大佐でしょう。何回行ったんでしたっけ?」

 

「もう両手両足全部の指入れても数えきれないくらい病院送りにされてる。なんであんな奴が提督になれたんだろう?ホントにロシアはおそロシア。」

 

「洒落を言ってる暇はありません。早く書類を。」

 

「ほいほーい。」

 

残りの書類の必要事項をささっと書いて、最後のサインを書き、印鑑を押す。

 

「はいよっ。それにしても北方海域解放とハワイ奪還のためのミッドウェー解放、それに駆逐棲鬼の討伐、頭が痛いわ。それに例のアレもそろそろ来るし」

 

「提督?『例のアレ』とは?」

 

「あ~、気にするな!気にしなくていいから!ささ、陸攻の移動を指示してきてくれ。」

 

「?」

 

紀伊が書類を受け取り、執務室から出ていくのとほぼ同時に据え置きの電話が鳴った。

受話器を取ると、外にいる警備の人からきていた。

「もしもし。海斗君。先ほど研究所の方がやってきたんだけど。」

 

「大丈夫です。通してください。」

 

 

海斗に集合を命じられた艦娘達 矢矧、響、暁、陽炎、不知火、夕雲はガラガラの食堂に集まった。

矢矧は北方で大破して帰還。

響、陽炎・不知火(十六駆)は矢矧の護衛についていた。

夕雲は前進基地のウェーク島から修理の終わった装備の受領に来ていた。

全艦作戦海域からたまたま一時的に帰還していた艦で、今の鎮守府で別作戦に投入できる艦はこれくらいだけだった。

 

「呼ばれた者は集まったな!これより、駆逐棲鬼討伐作戦、秘匿作戦名DOを開始する!よく聞いていてくれ!目標は響が言ったとおり、南西諸島海域周辺に潜伏していたらしい。今は父島の水偵隊が目下これを追跡中だ。」

 

海斗が指差したマグネットシートには敵を示す赤い磁石が4つと、偵察機を表しているであろう、零戦を模したマグネットが数個貼り付けられている。

 

「偵察機からの情報だと、敵艦隊は小笠原諸島近海をただ当てもなく航行しているように見える。」

 

海斗は置いてあった油性ペンで進路方向を矢印で書いた。

書かれた航路に規則性はない。

 

「はっきり言って、奴のやりたいことはよく分からない。偵察だとしたら奴だけでも十分なはずだし、通商破壊のためだとしても、輸送船はもうとっくにそっちへ物資を送ったから意味がない。誘っているのか、もしくはそれ以外の意味があるのか...。どちらにせよ、発見したら徹底的に撃破しろ。奴のせいで何隻もの船が沈められたからな。」

 

握っていたペンの蓋を閉じて言った。

 

「敵の編成は駆逐棲鬼を旗艦として軽巡ト級が1隻、駆逐ロ級が2隻だ。ロ級はエリートクラス。ト級に至ってはフラッグシップクラスだという報告も入っている。注意してくれ。それと今回はあるものを持って行ってもらいたい。」

 

そうして海斗は下に置いてあった箱から何かを取り出し始めた。

発砲スチロールのクッション包まれた中から出てきたのはスピードガンのような形をした銃だった。

 

「提督?なんですか、それは?」

 

海斗はかけてあったプラスチックカバーを取り外し、付属の説明書を片手に電源を付ける。

軽いモーター音が静かな食堂に響く。

 

「何て言ったらいいんだろうかなぁ...。簡単に言うと『誰だかわかる機械』っていうことかね。ちょっと矢矧いいか?」

 

そうしていきなり矢矧に向かって引き金を引いた。

特に何も飛翔体のようなものは飛び出さず、ただカチッという音だけしかでない。

「何したんですか?」

 

「測定中だ。ちょっと待ってろ。」

 

モーター音がより一層高くなる。

銃のスライド後部にあたるところにあるモニターにはloadingの文字が点灯しているだけ。

 

「遅っそいなぁ。やっぱり試作品だし、性能不足かぁ?」

 

しばらくするとピーンという音と共に文字列が流れてきた。

 

IJN CL AGANO CLASS YAHAGI

 

「なかなか興味深いですね。」

 

みんなが食い入るように画面を見てくる。

 

「ほんとだ!ねぇねぇ!私にもやってみて!」

 

「おい、陽炎。おもちゃじゃないんだぞ。それに試作品だからデリケートに扱え・・・って!」

 

「はいはい!カチッとな!」

 

陽炎は強引に海斗から奪い取って自分に撃ちこんだ。

 

またしばらくすると結果が出てくる。

IJN DD KAGEROU CLASS KEGEROU

 

「おぉっ!正しく私ッ!」

 

「陽炎、少々子供っぽいですよ...。司令。少々拝借しても?」」

 

「不知火。これはおもちゃじゃないって言ってるだろ。」

 

「...はい。」

少しもそうには見えないが、口調と目つきから少し苛立っているのが丸わかりである。

 

『子供かよ...。』

 

「で、提督。それってどうやって誰だか決めてるかわかるの?」

 

夕雲が訊いてきた。

 

「んぁ?ちょっと待て。えっとぉ~。簡単に言うと各艦によってエネルギーの強弱や波長に差があるらしい、まるで指紋のように、だ。それを解析して元の艦を特定するらしい。まぁ。どういう原理で測るかはさっぱりわからないが・・・。」

 

「へぇ~。」

 

「そういうわけだ。要はこいつを実地テストしてもらいたいってわけだ。有効距離はせいぜい1㎞くらいだ。かなり接近しないといけないからそこを注意してくれ。」

 

そういうと一丁を矢矧に、もう一丁を響に手渡した。

この二人ならこれで遊ばないはずだ。

 

「それでは1800に出撃。奴の情報は水偵から送られてくる。もしも水偵が見失ったら矢矧の水偵を使ってくれ。では解散!」

 

 

 

 

 

 

出撃してから三日が経ち、目的の小笠原諸島海域まで近づいた。

本土とは違い、ここまで来ると流石に暑くなってくる。

遠くにはうっすらと父島の島影も見えてきた。

矢矧はJTACSとにらめっこしてた。

 

「おかしい。なかなか父島の水上機基地に通信が行かないんだけど。」

 

「どうしようと言われても。まだ圏外なだけじゃないかな。」

 

「そう?けどおかしい。本当だったらもう通信可能なのに...。」

 

「周波数間違えてるとかじゃない?」

 

「そんなことはない。周波数はちゃんと表を見て合わせた。」

 

「それじゃあ、それ、壊れてるんじゃないの?」

 

「むぅ...。そうかもしれないわ。夕雲、代わりに通信してもらってもいいか?」

 

「了解」

 

夕雲はすぐに父島の航空隊の周波数に合わせた。

すると今まで沈黙していた無線機が反応した。

「もしもし?こちら駆逐棲鬼討伐隊、聞こえてますか~?」

 

「はい。聞こえております。」

少々ノイズが混じっているものの、とりあえず通話はできるようになった。

 

「よかった、で、今敵さんはどこにいるかわかる?」

 

「了解しました。ただいま偵察中の機体と交信しますので少々お待ちください。」

 

2,3分ほど待つと、すぐにかえってきた。

 

「目標DOは複縦陣で父島沖南東280kmを航行中でありま...っと?どうやら分厚い雲の下に入ったようです。現在は目視確認できない模様であります。少々お待ちを。」

 

「了解。一応座標を送ってもらうと助かるのですけど。」

 

「了解しました。機器に送りますね。」

 

10秒ほどで全員分のJTACSの『海図』のアイコンが光った。

開くと父島列島とそれに連なる他の島々たち、そして画像の半分より右下寄りに偵察中の水偵を示す緑の矢印と敵艦隊を示す赤い矢印が六つ現れた。

 

「ありがとうございます。ではこれから敵艦隊の方へ移動を始めます。また新しい情報が出次第にまた通信を入れてください。交信以上。」

 

「了解であります」

 

 

 

しかしその連絡は進路を変更してすぐに入った。

 

「こちら父島航空隊!非常事態だ!」

切羽づまった口調から悪い知らせだとすぐに予測できた。

「えっ!?どうかしたんですか!」

 

「追跡中からの水偵から目標DOを見失ったとのことであります!雲から出てきたときにはすでに奴がいなくなっていたとのことです!真に申し訳ありません!」

 

もう一度JTACSを見ると、赤い矢印が一個だけなくなっている。

 

「恐らくは追跡がばれて、雲の中に入った後に駆逐棲鬼だけ逃げた。という事ですね。それにしても撃破目標が消えてしまうとどうしようにもなりませんね。矢矧さん、どうしますか?追撃しますか、撤退しますか?」

 

「どうしようか、最重要目標が消えてしまった以上やることは二つ。進撃か、撤退か。」

 

「追撃しよう。」

そう言ったのは響だった。

 

「どうしてそう思ったの、響?」

 

「最初の通信から次までの時間は15分ほど。その間に移動できる範囲なんて限られている。矢矧さん。基地に水偵の増援を要請して。それとあなたの艦載機も使って見つけるんだ。早く見つけないと本当に逃げられる。」

 

「わかった。その案、乗ってみましょう。夕雲!通信お願い。」

そして通信を父島につないだ。

すぐに応答が来たが、かなり慌てているような様子だった。

 

「はい!こちら父島航空隊!どうぞ!」

 

「こちら夕雲。我々は目標DOを追撃します。そこでお願いなのですが。DO捜索のために水偵を増やしてもらえませんか?」

 

「了解しました。ではこちらで零式水偵4機を増援で出します。」

 

「わかりました。こちらの艦載機も発艦させますので、合計で5機体制で敵を見つけましょう。」

 

「了解!通信以上!」

 

 

「さてと。こっちも出しますか。」

 

「わかってる。もうちょっと待って...。妖精さん、カタパルトと飛行機の準備はできた?」

 

『エンジン回転良好!ラダー、エルロン、フラップ、エレベーター、動作異常なし!いつでも行けます!』

 

機内電話の雑音が少しひどいが、何となく言っていることはわかる。

「わかりました。」

 

左腕についているカタパルトでは、今にも飛び立ちたいと言わんがばかりに水偵がエンジンをふかしている。

カタパルトの付け根のところからコードが伸びている。

矢矧の左手にはカタパルトの推進用の火薬の起爆スイッチが握られている。

 

「いきます、発艦!」

 

矢矧がボタンを押すと、バンッという炸裂音と共に、零式水上偵察機はカタパルト上で一気に加速していく。

射出台から外れると、少し機体が下がったが、すぐに持ち直し、ゆっくりと上昇していく。

 

『発艦完了。これより当機は目標の捜索を開始します。』

 

「お願いしますね!」

 

水偵はその後もぐんぐんと昇って行き、豆粒ほどの大きさになり、ついには見えなくなった。

 

「今度こそ見つけてくれたらいいんだけど。」

 

矢矧の水偵の出撃はこれが初めてではない。

しかしこれまで一回も索敵に成功したことがない。

別に搭乗員が悪いわけではないし、機体の性能の問題でもない。

偵察機による洋上の敵の索敵は元々空振りの確立がかなり大きい。

何せ海の上の芥子粒の様な敵を探さなくてはならない。

今回こそは--- 矢矧はもう見えない水偵に向かってそう祈った。

 

 

 

偵察機を出してから4時間ほどたった。

未だ駆逐棲鬼は見つけられず、艦隊は目下、駆逐棲鬼の元随伴艦隊に向かって進撃中だった。

 

『コチラ、矢矧艦載機、敵影ヲ見ズ。』

 

30分に一回の定時報告も、敵影を見ずの一点張り。

父島の基地の偵察機からも敵発見の報告は一切ない。

後少しすれば日が落ちてしまい、索敵が不可能になってしまう。

何としてもそれまでには見つけないといけない。

 

その間に、やっと気づいたのか、随伴艦隊が一気に速度を上げて、海域から離脱した。

元随伴艦隊の偵察をしていた偵察機も捜索に加わったが、駆逐棲鬼の『く』の字も出てこない。

じりじりと、太陽が沈んでいき、あたりが薄暗くなってきたが、一縷の望みをかけて、最後の報告を待っていた。

が、結果は敵影を見ず、だった。

 

「はぁ...。駄目だったか...。全艦、偵察機を回収したのちに父島へ撤退。作戦、失敗です。」

 

駆逐棲鬼をロストし、その随伴艦隊も取り逃がしてしまうという完璧な失敗だった。

矢矧は艦載機を収容して、艦隊は父島へと進路を変えた。

いつもは綺麗に見える夕焼けの水平線が、なんだか哀愁を感じさせた。

 

 

父島に六人が上陸したころは既に夜になっていた。

基地は灯火管制が敷かれており、廊下を照らすロウソクの炎が唯一の光だった。

矢矧が提督に連絡をしたところ、駆逐棲鬼の捜索はAL/MI作戦の関係もあって、あとたった1日の猶予しか与えられないとのことだという。

 

誰もが寝静まり、灯火管制で電球の光ひとつない基地を満月が照らしている。

空は幾千、幾万もの星々が空を飾っている。

そんな夜空の下の波止場には矢矧と響の姿があった。

 

「まさか私と矢矧さんが同じ場所に来るって、奇遇だね。」

 

「まぁ、私もあまり寝付けなかったから潮風に当たりながら一服しようと思ったら先客がいたものでね。どう、一本吸う?」

 

「ありがとう。いただくよ。」

 

 

差し出されたタバコを一本もらい、ライターを貸してもらって火をつけた。

月明かりしかない波止場に二つの赤い火が灯る。

 

「何で矢矧さんはここに?」

 

「何でと言われても...。」

 

「大丈夫。こんな私だけど相談にのってあげるよ。」

 

矢矧は一回吸った後に少し間をおいて言った。

 

「...私って本当に必要な存在なのかなぁ、ってずっと思ってるのよ。」

 

「どうしてそう思うんだい?私は矢矧さんはとっても頼もしいって思ってるけど。」

 

響もタバコを吸いながらそう尋ねる。

 

「夕食を食べ終わった後、提督に今日の事報告したんだよ。」

 

「もしかして怒られたの?」

 

「ううん、逆に慰められちゃった。けど提督は絶対に私がみんなの足を引っ張ってるって思ってる。北方のときだって旗艦の私があそこで大破しなければ敵基地への砲撃が出来た。私のせいで失敗しちゃったからね。あぁ~、昔も活躍できなかったけど生まれ変わっても活躍できないのかぁ。」

タバコを咥えながら物寂しそうにそう話した。

 

「私はそうは思わないな。」

 

煙をはきだし、響はそう言った。

 

「だって私は矢矧さんは強いと思ってるからね。」

 

その言葉を聞いて矢矧は少しビクッとした。

 

私が強い?

私が生まれた頃には、既に水雷戦隊による砲雷撃戦は過去の産物と化し、航空機と優秀な電探が戦場の支配権を握っていた。

それに敵との物量や技術力も、彼我との差は圧倒的だった。

だから私は負け戦しか経験していないし、これと言って見映えのある戦果もない。

最後に至っては護衛対象(やまと)を守れずに自分もやられてしまった。

はっきり言って私の存在意義は果たしてあの時には有ったのだろうか?

矢矧にはそうとしか思えなかった。

 

「確かに矢矧さんの専門は砲雷撃戦。対空対潜戦闘は私もそうだけど、あまり得意じゃない。そういう時代になっちゃったんだ。司令官もそれを十分承知していると思う。だからこそ司令官さんは私たちを活躍させたいと思ってるんじゃないかな。矢矧さんのようなあの時に活躍できなかった艦には、特にその思いが強いと思うんだ。だから自信を持って戦えばいいと思う。矢矧さんが活躍すれば司令官さんもきっと喜ぶよ。」

 

「ふぅん...。たまにはいいこと言うじゃないの。」

 

響の頭をくしゃくしゃ撫でながらそう言った。

 

「じゃあ、私も聞くけど、響はどうしてここに来てるの?」

 

「それは...。」

 

「大丈夫。心配しないで話してみて。」

 

響は少しだけ、タバコを吸いながら間を開けていた。

 

「あいつと...駆逐棲鬼ともう一度勝負がしたいんだ。」

 

「どうして...。」

 

「最初に対峙した時に感じたんだ。恐怖感の中にある親近感を。 私がやられかけた時にあいつの目を見た時に、何かを感じたんだ。」

 

響は吸い終わったタバコを海に投げ捨て、そう言った。

 

「そうしたらあいつは退いていったんだ。おかげで命拾いしたけど...。もう一度会いたいんだ。会って、戦いたい。」

 

「そうだったの...。」

 

矢矧は吸い終わった吸い殻を携帯灰皿にしまってそう言った。

 

「だから不安だったんだ。明日はどうしても見つけなくちゃいけないって。けど、もうここからいなくなっているかもしれない。それに戦うとしても勝てるかわからない。一度だけ対峙したけど、速力も武装も私たちより強い。

もしかしたらやられちゃうかもしれないけど...。」

 

「大丈夫よ。響なら勝てるわ。」

 

「何でそう思うんだい。私はあいつと戦ったんだ。けど全然歯が立たなかったんだ。確かにあの時は圧倒的に形勢は不利だった、けど今でも勝てるかどうかわからない。絶対・・・」

 

「何言ってるのよ。あなたは『不死鳥』なんでしょ。負けるわけないじゃない!」

 

不死鳥 それは響が大戦中につけられた二つ名。

何度も戦火で沈没しかけても決して沈まず、ついに彼女は大日本帝国最後の日まで生き残った。

絶対に沈まない艦

その偉業を讃えて名付けられた名誉ある呼び名だ。

 

「この前もちゃんと帰ってきたじゃない。響は絶対に負けない。絶対に沈まない。だって『不死鳥』だからね。」

 

「そう・・・なのかな?」

 

響ははっきり言って自信がなかった。

不死鳥の名は確かに伊達には語れない。

しかしそれは昔の事であって今はそこまででもない。

それにあの時も全然歯がたたなかった。

 

「おっ!響、空見て!」

 

言われるがままに夜空を見てみると、満面の星空に流れ星が飛び散っている。

一個だけではなく何個も夜空を駆けていく。

極寒の北方でも、地獄の南方でも、絶望の中の本土でも、このような光景は見たことが無かった。

 

「すごく...きれい...。」

 

「流れ星と言えば、願い事だな。」

 

そして矢矧は手を合わせ、目を閉じた。

響も合わせて手を合わせた。

流れ星が流れている間に3回願い事を頭の中で唱えれば願いは叶う、という『迷信』は知っていたが、別に響は信じていなかった。

しかし流れ星に向かって必死になって願い事を唱えた。

 

「響、ちゃんとお願いした?」

 

「うん。ちゃんとしたよ。もちろん。」

 

流れ星は絶えることなく、二人に降り注いでいる。

上を見上げていた響が何かを思い出したように、足元に手を伸ばした。

 

「あぁ、すっかり忘れていたよ。」

響の手に握られていたのは一本の一升瓶だった。

 

「響、どうしたのそれ。どこから持ってきたの?」

 

「ふふっ、ちょっと基地の倉庫からギンバイしてきた。本当は夜空を肴にして一杯やろうかなって思ってたんだけど...。一杯どう?コップ無いから直になっちゃうけど...。」

 

「ハハハ、別にいいわよ!明日の作戦に支障が出ないところまでなら付き合うわ。」

 

「スパシーバ。」

 

一口ふくむと、いつも飲む酒とは違う味がした。

 

 

 

 

次の朝、まだ日が昇り切らない早朝に、響の他五人はけたたましいエンジン音で起きた。

本土からの命令で早いうちから偵察機を出すらしい。

五人は出された朝食のご飯と味噌汁、焼き魚を平らげた。

 

出撃準備を整え、いつでも行けるという状況になったとき、一機の水上機が帰ってきた。

するとその水上機からある報告が来た。

 

「何だって、敵が!そこに駆逐棲鬼は!?」

水偵の妖精は首を横に振った。

報告によると、敵の数はどれも駆逐艦が2~3隻程度、多くても軽巡を含めて最大4隻の艦隊がこの近辺だけで数個発見された。

 

「おそらくは駆逐棲鬼の捜索隊。ということはあいつはこの近くにまだいるはず。今すぐ出よう!」

 

そう提案する響。

 

「そうだな。よし!では0900時に出撃を今すぐ、0826時に出撃する!いいな!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

今日の空模様は雲ひとつない快晴。

昨日よりは偵察に成功する確率は高い。

 

「今日こそ、お願いね!」

 

矢矧はそう言って、偵察機の射出ボタンを押す。

射出を成功させ、偵察機は青い空に吸い込まれていった。

一方、もう片方の手には、羅針盤が握られている。

深海棲艦が近くに居れば、反応するはずだ。

しかし、今のところは何も変化はない。

 

「今度空振りだったらおしまい。早く見つけないと...。」

 

響の顔にははやくも焦りの表情が浮かんでいる。

 

「だーいじょうぶよ!絶対見つかるって!まだ始まったばかりよ!」

 

「確かにそうだけど、陽炎、まだ肝心の駆逐棲鬼は見つかってない。偵察機も雑魚しか見つけていないし、羅針盤にもまだ反応はないみたい。」

 

不知火のいう通り、未だに目標はやく発見できず、入ってくる情報も、全部が捜索隊の報告だった。

 

出撃してから数時間がたった。

五人は昨日最後に駆逐棲鬼の報告があった海域まで来た。

海図を見ると、島もないただの大海原。

隠れる場所など何処にもない。

 

ここまでに、数回ほど、敵と遭遇しているが、すべてが捜索隊で、ほとんど損害を受けていない。

その間に、この前提督から渡されたチェッカーの実地テストも行い、その動作の無事を確認した。

しかし、捜索隊と思われる小規模の敵艦隊の数は、潰した数を省いても、10を越えていることが父島と矢矧の偵察機のわかっている。

 

「これじゃあらちが明かない。このまま雑魚だけを叩いても弾薬と燃料を浪費するだけ。もしも駆逐棲鬼が出てきたときには戦闘ができなくなってしまうかも知れない。矢矧さん。偵察機と羅針盤の様子は?」

 

「ダメね。偵察機も今のところは報告は入ってない。羅針盤も反応なしだわ。」

 

もう既に太陽は頭の上を通りすぎてしまっている。

捜索に使える時間は残り6時間ほど。

帰りの時間も考えると残りはわずかしかない。

 

「ここままじゃ見つからないわ。どうしましょう...。」

 

そう夕雲が呟いた。

 

『どうしよう...ここままじゃ本当に見つからないいったいどうしたら...でも...』

 

 

『..........コッチニ....オイデ....』

 

そんな声が響には聞こえた気がした。

 

 

どうしたのかな?昨日飲みすぎたのかな?

 

最初はそう思った。

しかし

 

『.........コッチニ....オイデ.....』

 

また聞こえてきた。

まるで、子供が遊びに誘ってくるような感じに似ていた。

そしてふと、JTACSを見ると、通信のところが不規則に受信していることを表す緑色に点滅している。

しかし、ボタンを押して、応答しても返事は帰ってこない。

 

どうせ陽炎か夕雲のいたずらだろう。

 

そう思い、響は陽炎に近づいて、直に聞いた。

 

「無線で遊ぶのはやめてくれ、陽炎。暇なのはわかるが、敵に逆探されて、こちらの位置がばれたらどうするんだ?」

 

「えっ?どうして?私は響に無線なんていれてないわ。いったいどうしたの?」

 

「いや....何でもない...。ごめん、疑って。」

 

陽炎からの答えに驚きを隠せない。

同様の質問を全員に言ったが、答えはすべてNOだった。

そして、謎の通信は頻度を増やしていき、3分に一度の感覚で入るようになっていた。

どうも気味が悪い。

あのときも海軍の間で、謎の通信のことはよく世界中の陸海軍両方の怪談として取り上げられた。

全滅したはずの部隊から通信が入ったとか、沈んだはずの船から通信が入った、等々縁起のいい話ではない。

 

「矢矧さん。ちょっといいかな?」

 

不安になってきたので、矢矧に相談しようとした。

 

「この通信何だと思う?気味が悪くて仕方がないんだ。」

 

その時ちょうどまた、

 

『.....コッチニ......オイデ.....』

 

と通信が入った。

そしてまた受信したことを示す緑色に点滅する。

二人は顔を見合わせた。

 

「何なのだろうか。私にも一切わからない。気味が悪いわ。」

 

結局、理由は分からない。

しかし、作戦海域を変更するために転舵したら状況は変わった。

 

『ソッチジャ......ナイ....』

 

謎の通信がそう変わったのだ。

響はある確信を得た。

 

『これはもしかして、駆逐棲鬼からじゃないか?』

 

しかし、深海棲艦から艦娘に通信を寄越すなんて聞いたことがない。

そもそも通信コードは暗号化されているから、通信に割り込んでくること事態があり得ない。

 

「矢矧さん。これって、もしかして...。」

 

「ええ、その『もしかして』だわ。私も理解ができないけど...絶対奴だわ。北西から北東に全艦転舵!急いで!」

 

北東に転舵しても、そっちではないと言っている。

 

「矢矧さん。これが本当に駆逐棲鬼からの通信だったら罠の可能性もあります。このまま、辺りを無駄に航行させて、燃料の浪費を狙っているのかもしれません。」

 

「確かに私もそう思うわ。お相手は私たちの敵、深海棲艦ですよ。そんなみすみす、私たちを導くなんてことはあるはずないわ。」

 

不知火も夕雲もまっとうなことを言っている。

普通なら誰もがそう考えるだろう。

 

「そうかもしれない。だが、今までの偵察は全部空振り。藁にもすがりたい気持ちだ。これが罠だったら、私が責任をとる。進路変更!北東から西へ!」

 

すると、転舵してからすぐに通信が入ってきた。

 

『......コッチ.....ハヤク....。』

 

どうやらこの方角で合っているようだ。

すると今度は別の通信が入ってきた。

矢矧の偵察機の無電通信だった。

 

『敵ノ強力ナ水雷戦隊ヲ貴艦隊後方ニ見ユ!数 重巡1 軽巡1 駆逐4』

 

「やっぱり罠だったじゃないの!それに敵は旗艦に重巡洋艦を置いてるじゃない!完璧に潰しにかかってきてるわ!」

 

直後にドーンという重い音が遠くでなった後に地の底から響くような音が聞こえた。

そしてかなり後方だが、大きな水柱が何個も立った。

 

「あちらの方もやる気満々ですね。どうしますか?矢矧さん。」

 

前方には駆逐棲鬼が居座っている。

後方からは数も火力も勝っている敵艦隊が迫ってきている。

悩んでいるところに砲弾を撃ち込まれる。

弾着距離がだんだん狭まっている。

敵艦隊がだんだん近づいている証拠だ。

早く決めないとここで何も出来ずに殺られてしまう。

 

「矢矧さん!どうするの!ここままじゃ!」

 

「わかってる!けど!」

 

砲弾が空気を切り裂く音が聞こえたと思ったら、矢矧の真横に着弾した。

幸いにも被害は一切なく、ただ水を頭から被っただけだった。

砲弾の威力からしておそらくは8インチ砲、敵の重巡洋艦の装備している砲だ。

軽巡や駆逐の装甲では致命傷は免れない。

当たり所が悪ければ、一発の被弾で戦闘不能、最悪の場合、轟沈してしまう。

砲弾がここまで飛来してきたということは、既に敵の射程圏内に入っているということになっている。

 

「わかった!みんな聞いてくれ!これから響を除いた艦は追撃中の敵艦隊と戦って!響は駆逐棲鬼をお願い!」

 

「矢矧さん、無理だ。ただでさえ数でも劣っているのに私を省いて行ったら絶対やられちゃう。」

 

「大丈夫よ、響。」

 

そう言って響の頭に手をのせて言った。

 

「あなた、私に言ったじゃない。『矢矧さんは強い』って。私はこの言葉を信じようと思う。確かに数でも火力でも不利だ。だけど頑張ってみようと思うの。」

 

「でも....。」

 

「大丈夫!私に自信をつけてくれたのはあなたじゃない。私は沈まないわ。さあ、行って!奴とのケリをつけてきなさい!響以外転舵!牽制魚雷を撃った後は主砲で弾幕張りつつ敵艦隊に突撃!いい!?」

 

「「「了解!」」」

そう言って矢矧たち四人は反転し、全員が響に向けて敬礼をした。

響も最敬礼で返し、一人、駆逐棲鬼へと向かっていった。

 

 

駆逐棲鬼の言葉に導かれて30分ほどすると、響の見張り妖精がある影を確認した。

白く長い髪。

純白の顔。

深海のような黒く、吸い込まれそうな目。

華奢な体に似合わない砲と魚雷発射管。

まさしく響が小笠原で見た駆逐棲鬼そのものだった。

響も双眼鏡でその姿を捉えた。

 

『...ヤット....アエタ....。』

 

JTACSから流れてきた音声には今までとは違ったものが流れてきた。

あいつが求めているものは何だ?

疑問しかわかない。

その疑問を振り払って、まずは提督に言われた通り、チェッカーのテストに入った。

先の敵捜索隊の戦闘で使用したときは異常はなかった。

チェッカーのスイッチを入れると、小さなモーター音が鳴り、緑色の画面が点く。

チェッカーの有効距離は半径およそ5㎞。

十分圏内に入っている。

駆逐棲鬼とだけ言われているから余程すごい艦が元だろう。

そう思いながら引き金を引いた。

そして、画面にNow Loading と出た。

距離が近いのかなかなか判定結果がでない。

その間に、奴は撃ってくるかと思ったが、一向に撃ってこない。

そして数分後、ピーンという高い音が鳴り響き、結果が出た。

 

IJN DD AKATSUKI CLASS HIBIKI

 

 

 

「えっ.....あいつは.....私?」

 

あまりの驚きで、その場に立ち尽くすばかりだった。

が、すぐに冷静を取り戻した。

 

「あっ、あなたはいったい何がしたいの?」

 

『ワタシハ...ヒトリダケデ....イイ。』

 

彼女は知っていた。

彼女が『私』であることを。

 

『ココデ...ドチラガ...ホンモノノ...ワタシカ...!」

 

すると駆逐棲鬼が砲を構えて突進してきた。

 

「...来るか。機関両舵全速。主砲安全装置解除。徹甲弾装填準備。魚雷安全装置解除。響、突撃する!」

 

双方とも30ノット以上出してるので、距離はグングン縮んでいく。

「主砲照準完了...てっ!」

 

響の12.7cm砲が火を吹いた。

砲弾は大きな弧を描き、一撃目は大きく逸れた。

 

「次弾装填急いで。」

 

「敵、砲撃を開始!」

 

見張り妖精概念がそう叫んだ直後、響の左右に水柱が立った。

 

「初弾から狹叉させるなんて...なかなかのやり手だな。」

 

「次弾、来ます!」

 

「何!?」

 

最初に着弾した弾は約5秒前に発射されている。

発射速度が桁違いに早い。

目が弾道に追い付いたときには既に遅かった。

一発はなんとか避けれたが、二発目は砲塔の側面装甲をも掠めとり、右胸につき刺さった。

 

「かはっっ!?」

 

鋭い痛みが走る。

 

「っつ!速い!妖精さん!大丈夫!?」

 

側面がなくなった砲塔から妖精が顔を出している。

見たところ大丈夫そうだ。

 

「全員無事です!動作も異常ありません!そちらこそ大丈夫ですか!?」

 

「私は大丈夫!作業に専念して!」

 

「了解!」

 

そう言われ、首を引っ込めて、空薬莢を出し、砲弾を詰める。

本来は砲搭下部から排出される空薬莢が側面から放り出される。

この間にも砲弾が次から次へと襲いかかってくる。

「装薬は少なくていい。装填時間を重視して。そして魚雷妖精さん、私が合図したら全門投射。いい?」

 

「了解しました!しかしこの距離だと確実に避けられます!」

 

「大丈夫。私に考えがある。」

 

砲塔内で尾栓を閉める音が聞こえた。

 

「装填完了!」

 

「よし、魚雷投射。あいつの進路を塞ぐように少し広めに。」

 

両足に取り付けられた発射管から次々に魚雷が発射される。

発射された魚雷の内の幾つかは駆逐棲鬼を捉えている。

だがやはり、瞬時に気づかれ、魚雷を避けるため、回避行動に移った。

これが響の狙いだった。

 

「弾道計算よし、射点についたもいい。無防備な側面を叩く。撃てっ!」

 

発射された砲弾が駆逐棲鬼の横っ腹に突き進んでいく。

それに気づいたのか、駆逐棲鬼は再度回避行動をとろうとしたが、既に響との距離は1㎞にも満たない距離。

一発目は弾かれたが、二発目は右腕の魚雷発射管に直撃。

当たった瞬間に発射管から火の手が上がり、その直後、大爆発を起こした。

その後も大小様々な爆発音が鳴り響き、どす黒い煙と炎がが駆逐棲鬼を包み込んだ。

 

「やった....?妖精さん、どう?見える?」

 

「煙でよく確認出来ませんが、撃沈確定と思われます。」

 

勝った。

そういう思いと

本当にこれで良かったのか?

という思いがこの時胸の奥で交差していた。

任務は無事達成した。

 

「...なんだあれ?」

ふと頭の上の見張り妖精が声をあげた。

 

「どうしたの?」

 

「何かが煙の中で動いたような影が見えたのですが...すいません。ただの気のせいかも...。」

 

「いや、違う。」

 

響、他の妖精もちゃんと見えている。

もうもうとたちこめる煙から駆逐棲鬼が出てくるのを。

 

「なんで....。まだ動けるの...。」

 

こちらに向かってきているが、駆逐棲鬼の速度は5ノットも出ていない。

足取りもおぼついておらず、右に傾いたり、前のめりになったりと、今すぐにでも転覆しそうだった。

 

「どうしますか?止めを刺しますか?装填は既に完了しています。」

 

「ううん。機関微速前進。」

 

「えっ、けどしかし....。」

 

「いいから早く!動かして!」

 

「りょ、了解!」

 

いつも冷静な響が珍しく荒い口調になっていた。

機関が動きだし、ゆっくりと、距離が縮まっていく。

 

10分もすると、肉眼で様子が伺えるようになった。

全ての兵装はなくなっており、身体中の損壊が激しい。

特に右腕は魚雷発射管があったところからなくなっていた。

動くたびに、体から何かがボロボロと剥がれ落ちていく。

 

フラフラしていた駆逐棲鬼だが、ついに力尽きたのか、前に倒れそうになった。

 

「もう少し増速して!このままじゃ!」

 

体が海面に倒れるギリギリで響は彼女の手をとった。

弱々しいが、握り返してくる感触があった。

しかし、呼吸は安定しておらず、目も閉じている。

「大丈夫!?しっかり!」

 

口は開いているが、声が小さくて何を言っているのか全く分からない。

 

「ごめんなさい!」

何でそう言ったのか自分でもわからない。

その間にも口をパクパクさせているが、聞き取ることができない。

 

「ごめんなさい....ごめんなさいっ!」

響にはただ謝ることしか出来なかった。

ただ自分の置かれている立場が憎く、悲しかった。

 

その時腕のデバイスの通信の文字が光った。

 

『ナン....デ....タス......ケ.......タ。』

 

掠れて、弱々しい声だった。

自分でも助けた理由がわからない。

 

『アナタ.....ハ....ワタシ.....ノ....テキ。ナゼ....。』

 

「そんなこと....ない...。」

 

涙が幾つもこぼれ落ちる。

 

『ナ......ゼ......ナク。』

 

泣くなと言われても無理だ。

堪えようとしても後からあふれでてくる。

 

『ワタ....シ....オマエ....ヲ...シズ...メ.....ヨウ....ト...シタ....ナノニ....。』

 

駆逐棲鬼が、睨んで響を見つめる。

 

『タスケ....ルナ....。ケガ...ラ...ワシ...イ.....。』

 

「嫌だ!私は助ける!何言われてもいい!あなたを沈ませたくないんだ!私が沈むような感じがして嫌なんだ!」

 

『ワタシ...カ...。』

 

初めて彼女が微笑んだ表情を見せた。

しかし駆逐棲鬼呼吸がだんだん浅くなっていくのがわかる。

これ以上は持たないと悟ったのか、最後の力を振り絞り響の手を払った。

その体は水底へと沈んでいく。

 

『こちら矢矧!追撃部隊は追い払った!...響?どうしたの?聞こえてるの?大丈夫!?』

 

矢矧から通信が来ているが、耳に通らない。

ただ、沈んでいった水面をただ涙を流し、茫然と見つめることしか出来なかった。

すると、何かが浮かんでくるのが見えた。

ゆっくりと浮上してくる。

涙で瞳が濡れて、ぼやけてよくわからない。

腕で涙を拭った。

目の前にあったのは、淡く輝く、コアだった。

響はそれを手に取った。

間違いなく、彼女の物だと響は確信した。

 

「...お帰りなさい。」

 

そう言ってコアを強く抱き締めた。

温かさが伝わってくる。

 

「お~い!響~!大丈夫か~!」

 

遠くで矢矧が呼ぶ声が聞こえる。

声の先に進んでいくと、4人がいた。

みんなボロボロになっていた。

 

「大丈夫っぽいわね!私たちは...まぁ、見ればわかるけど、一応みんな無事よ。...どう、強かった?」

 

「あぁ、とても強かった。友達になりたいくらいだったよ。」

 

コアを撫でながらそう答えた。

 

 

 

紀伊は海斗に呼び出されて、執務室にいた。

海斗は例のチェッカーを持っているが、響たちに渡したのとは少し形が違う。

 

「海斗さん...それって...。」

 

「ああ、そうだ。特注品だ。これは、『計画倒れの艦、もしくは未完成艦』の魂を測るやつだ。...紀伊、自分が何者なのか、知りたいと思わないかい?」

 

「本当の....私?」

 

「そうだ、本当の紀伊だ。ちなみに俺は目星はついている。確信はないけどな。」

 

「...少し考える時間をください。」

 

「いいよ。」

 

紀伊は本当の自分が何かということは前々から気にはなっていた。

だが、逆に本当の自分を知るということの恐怖心もあった。

 

「......やります!」

 

「本当に大丈夫か?」

 

「はい!」

 

「わかった。いくぞ。」

 

海斗は紀伊に向けて引き金を引いた。

そして、画面にはNowLoading の文字が。

海斗は紀伊の手を握った。

紀伊も強く握り返した。

なかなか結果が出てこない。

握る手にさらに力が加わる。

5分後、画面が切り替わった。

紀伊は怖いのか、目を閉じている。

測定結果が出た。

 

「やっぱり....な。」

 

しかしその声は声はかすかに震えていた。

海斗の声を聞いて、恐る恐る目を開けた。

 

 

 

 

IJN BB SUPER YAMATO CLASS KII

 




第八話出来ました!
この間に冬イベがありましたね。
自分はオール甲で完遂させました。
編成で出撃位置が変わるのには驚きましたね。
天城、オイゲン、沖波とレアドロップに恵まれたイベントでした。
(今回だけ)運営に感謝。

次回もお楽しみください!
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