乙女はアイドルになる   作:s.s.t

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皆様の生暖かい声援を受けて続きを書くことができました。
これからも色々な性癖の読者が集まる作品を作れるよう精進していきます。

まあ正直に書くといくつか感想をいただけたのが嬉しい反面、テキトーに書いてる作品なんでがっかりさせないか心配です。
あんまり期待しないでどうぞ気軽に読んでください。


三村式ダイエット塾(お菓子付き)

「有ちゃん、自分の体重は知ってる?」

 

その日の俺はいつものように朝から事務所にやってきて、スケジュールを教えてもらうために応接スペースでPさんを待っていた。

ソファで横になってスマホを眺めていたところにこのセリフが飛んできたわけだが、俺の体重いくつだったっけ?

 

 

「『小鳥遊有 体重』っと」

「まだHPにも載せてない無名なんだから検索して出るわけないでしょ」

「あースマホかえしてー」

「今日の予定こなしたら返してあげるわ」

 

 

くそー相変わらずの鬼っぷり。

しかし体重なんて大学入ってからはそもそも計る機会自体がないじゃん。

あ、でもプロフィール作るときに計ったか。

 

「えーと、49kgでしたっけ?」

「そう正解。でもねこれ、アイドルとしては重い方なの」

「むしろ私、毎年健康診断でやせすぎ判定出されてたんですけど」

 

アイドルって怖い。

特に意識してたわけじゃないけど十分軽い方と思ってたのに、まだ重いと申すか。

これ以上やせても体に悪そうなんだけど。

 

「油断は禁物よ。以前も有ちゃんと同じように女装していることを隠してアイドルやってた子がいたの。でも体重が重いことが原因の一つになって疑惑をかけられ最終的にはバレたわ」

「つまり私もバレればアイドルを引退できる……?」

「その子はそのまま男性アイドルとして今も活動してるわ」

「やっぱり一度決めたことは最後まで隠し通さなきゃね!」

 

世間に女装をバラされた上でまだ働かされるって俺にとってはただの拷問じゃないですかやだー。

いやでもぼっちだからダメージは少ない方かな?

でも親には内緒にしてるし、かといって隠すためのダイエットもきつそうだし。

どっちもやだなー。

 

「もちろん、アイドルとはいえ無理に痩せるのは良くないし事務所の方針としても健康優先よ。ぶっちゃけ世間に公開されているプロフィールはサバ読みしてる子も多いしね」

「あ、そうなの? じゃあ私もそれで」

「ただし、346のアイドルに体重詐称者はいない」

「え?」

「詐称者はいないの。いいわね?」

「あっはい」

 

これは反論したらあかんパターンですよ奥さん。

くそ! 詐称者はきっといる。いるはずなのに!

上からの圧力で捜査が禁止されるなんて!

 

 

「俺は、なんて無力なんだ……」

「無職じゃないだけよかったわね」

 

 

それは暗に余計なことしたら俺のクビが飛ぶぞって脅してるの?

ちょっとした茶番のつもりだったのに、内部からの情報漏洩を警戒されてしまったようだ。

俺はバイト先の悪口をツイッターに書きこむ若者かっつーの。

 

現実でぼっちのやつはネットでもぼっちだからSNS全般はやらないんだぜ?

やるとしてもソシャゲのキャンペーン用だから普段は全く利用しない。

つまりSNSを使うのはリア充とキョロ充のみ。

だから俺は安心。なんでこんな話してたんだっけ?

 

 

「ま、冗談はこのくらいにして」

「あれは本気の目だったでござる」

「有ちゃんには今日ダイエット体験をしてもらうわ」

「なんぞそれ?」

「文字通りよ。女の子の嗜みとして一度はダイエットを経験しておかないとね。話にもついていけないでしょ?」

「たしかにやったことないですけど。でも何するんですか?」

「詳しくはダイエットの大先輩がいるからトレーニングルームへ行きなさい」

「へーい」

 

 

Pさんの説明が少ないのはいつものことだけど意外と問題は起きないんだよね。

リスクはせいぜい毎回誰に会うかわからないくらいだ。大先輩って誰だろ。

 

ダイエットに関しては大先輩と呼ばれるほど経験豊富になっちゃいけないと思うんだけど。

 

 

 

 

 

「こんにちわー」

 

やってきましたトレーニングルーム。

さすが346と言わんばかりに様々なトレーニング器具が広い室内に揃えられている。

しかしドアを開けた俺の目にまず入ったのは力士と見間違えるほどの巨体だった。

 

 

「で、でかい! とてつもなく! まさか346には巨漢アイドルが存在するとでもいうのか!?」

 

 

いやジャンルとしては需要がないわけじゃないだろうけど。

でも力士級ならダイエットの大先輩というのも頷けるかもしれない。

 

 

「あ、あのー」

「これはぜひとも角界に伝わる痩せる秘訣を教わらなければ! あとおいしいちゃんこのレシピも」

「あの、すみません!」

「ありゃ?」

 

力士が消えた?

さっきまであれほど大きな威容を見せていたのに、いつの間にか正面には俺より少し背の低い女の子しか立っていない。

 

しかもこの子は三村かな子じゃないか。

元CPメンバーで、杏ちゃんともユニットを組んでいたアイドルだ。特徴はたしかスイーツが好きなんだっけ?

ならダイエットの大先輩っていうのはスイーツの食べ過ぎが原因か。体型もよく見れば太く見えないこともないし。

 

うん、なるほど。謎は全て解けた。

 

 

「どうやら三村大先輩の巨大なアイドルオーラがその姿を実物よりも大きく見せてしまっていたようですね」

「さっき角界とかちゃんことか言ってましたよね? 完全にお相撲さん扱いじゃないですか!」

「すんませんふざけてました」

 

 

あっさりバレちゃった。

いやネットでなぜか相撲取り扱いが絶えないからさー。

オーラのせいにしとけばなんとかなるかなって。

 

 

「もう。体型のことは気にしてるんですからやめてくださいね」

「でもスイーツをやめる気はないんですよね?」

「それは、まあ。作るのも食べるのも大好きだし……」

「ならいいじゃないですか! だいたい大先輩は全然太ってませんよ。ダイエットなんて必要ないくらいです。ということで私もダイエットしたくないですし今日は解散にしましょう。おつかれさまでしたー」

「だめです」

 

 

な、動けない!?

大先輩に腕を掴まれた途端に体が鉛にくくりつけられたように重く……ってもうこのネタはいいか。

 

 

「帰っちゃだめですか?」

「だめです」

「ちえーそれじゃスマホも返してほしいし頑張りますか。改めまして小鳥遊有です。今日はよろしくお願いします三村大先輩」

「えっと、三村かな子です。増田さんには小鳥遊さんのダイエットを手伝ってあげてって言われてるんですけど、その前にさっきから大先輩ってなんですか?」

「そのままの意味ですけど?」

「でも、私より先輩のアイドルなんていっぱいいますし」

「あ、アイドルじゃなくてダイエットの大先輩です。Pさんがそう言ってました」

「ま、増田さーん!」

 

 

どうやらPさんがおにちくなのは俺に対してだけではなかったようだ。

かわいそうに三村大先輩。せめておふざけがおふざけでなくなるように俺だけでも敬意を込めて大先輩と呼ぼう。

 

 

「安心してください大先輩。私は冗談とか抜きで大先輩がダイエットのエキスパートだと信じてますから。今まで数え切れないほどのダイエットを乗り越えてきたんですよね!」

「そ、そんなに何回もやってないです! 今年もまだ、その、ほんの10回くらいですから」

「月1ペースなんですがそれは……」

「とにかく! 早く始めましょう!」

「うーい」

「もう。増田さんに聞いてた通りの性格ですね」

 

 

これ以上は本気で怒らせそうなんで自重。

でもここまでキレなかっただけでもすごい。

見た目からして包容力あるよね。

 

あとPさんもしかして俺のこと言いふらしてる?

 

 

「まずは小鳥遊さんの身長と体重を教えてもらっていいですか?」

「165cmの49kgです。身長はもう成長止まってて悲しい」

「十分背高いと思うけどなあ。うう、新人の人まで体重が私より軽いなんて。やっぱり私って太ってるのかなあ」

「大先輩は普通っしょ。まあ、やせてはいないよね」

「そんなにはっきり言わなくても……。じゃあ、次は普段の食生活を調べるのでこの用紙に書き込んでください」

「おーなんか本格的」

 

 

こんなの用意してるとはマジでエキスパートじゃないのこの子?

質問内容も的確な感じがするしプロのトレーナーさんみたいだね。

 

 

「書き終わりましたー」

「はい、ありがとうございます」

「それで、これをどうするんですか?」

「ルキトレさんに渡して食事とトレーニングメニューを作ってもらいます」

 

 

プロやん。

そら、(三村大先輩だってちゃんとしたトレーナーがいるなら)そう(そっちに頼るに決まってる)よ。

 

 

「私もいつもお世話になってるので、効果は保証しちゃいます!」

「いや、いつもお世話になっちゃあかんでしょ」

 

 

ルキトレさんもきっと毎回刑期を終えた受刑者に「もう戻ってくるなよ」って言う気持ちで見送ってるだろうよ。

そんでまたケーキを食らって戻ってくるわけですね。アホか!

 

 

「あ、そうだ。お近づきの印にカップケーキを焼いてきたんですけど食べませんか?」

「共犯のお誘いかな? でも甘いもの好きなんでいただきます」

 

 

ダイエットのお手伝いしに来たのにカロリーを差し入れとはたまげたなあ。

受験生に参考書を差し入れするみたいなもんかな? 登る山は高い方が良い的な?

これでまたダイエットできるねって? もう一回やせれるドン!

もしかしてダイエットマニアには太らないお菓子よりも太るお菓子の方が売れるんじゃね?

 

 

 

 

 

このあと滅茶苦茶スイーツした。

 

 

 

 

 

さすがと言うべきか味はとても良かった。

しかしその後やってきたルキトレさんからは2人仲良く懲役2週間のトレーニングと食事制限を課されてしまったとさ。

 

 

やっぱり無理にダイエットなんてするもんじゃないよね。

今回のことで学んだよ。

 

 

ダイエットすると太る(断言)

 




今のところネタのストックは10個くらいあるんですが、クオリティは今回と似たり寄ったりになりそうです。
更新は週1がとりあえずの目標で、早く書き上がればすぐに投稿します。


人物紹介のコーナー。

●三村かな子(みむらかなこ)
「美味しいから大丈夫だよ」はアイドル史に残る名言。
巨漢でも大食漢でもなくただのスイーツ好き。
作者も最初は食べること全般が好きなキャラだと思ってた。

なんか新カードが出るたびに体重が戻って特訓したら痩せるらしいので、この作品ではダイエットの大先輩になってもらった。
アニメを見てると自力で痩せられる人間には到底思えないのでルキトレさんに出張ってもらっている。
ルキトレさんは上3人の姉に比べて技術的な指導はまだ未熟だが日頃から頑張って知識を身につけているためアイドルの身体ケアに特化している設定。

三村大先輩の手にかかればダイエットをしていたと思ったら太っていた何を言ってるのか(ry という1人ポルナレフごっこもできる。

主人公と一緒にカップケーキを食べてるところをルキトレさんに見つかった後は丸一日トレーニングルームでしごかれた上に今日で終わりだったはずのダイエットが延長した。

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