東方愚者伝~対話と天秤と油~   作:寄り道峠

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お久しぶりです。……ホント二か月ぐらい消えてました。残りの作者さんにも「出さないの?」と何度も聞かれました。ごめんなさい。今回は独自解釈がかなり強いです。


過去話 新米巫女と鬼 前篇

これは、トイツキ ノゾムやその友人らが来る前のお話。

博麗の巫女が新たな代を迎え、幻想郷に秩序を創る準備が行われていた。そんなとき、鬼に出会ったお話。

ありえたかもしれない過去のお話。

 

Side霊夢

 

霊「暇だわ」

 

博麗の巫女になってからというもの毎日神社に閉じ込められているような気がする。外に出るのは自由と言われているけど出たいと思わないし、出たとしても人里の人間を驚かすだけ。なんたって博麗の巫女は妖怪退治の専門家だもの。私が来るということは妖怪が出るという事と思われても仕方がないわ。

 

霊「本当に暇ね」

 

ふと、外を見る。さっきまで掃除をしていたせいで落ち葉一つない境内が移る。まだ夏になったばかりだし、気合を入れて掃除しなくてもよかったかしら?

 

霊「でも他にやることもないのよね。ああ、せっかくだし中も綺麗にしておこうかしら。まだ見ていないところもあるし」

 

私が博麗の巫女に(正式に)就任したのはほんの少し前のこと。この神社もその時にもらったわけだけど、興味なかったから必要なところだけ見てほったらかしだったのよね。

 

まず、賽銭箱とその付近を見る。中身は……まあ期待しなくてもいいわね。この辺りはさっき掃除したところだから問題ない。鳥居の向こう側には小さな人里が見える。ここから見れば本当に小さな村で妖怪に襲われたら壊滅するだろう。まあ、優秀な守護者がいたしそんなことはないだろうけど。

 

続いて自分が寝室にしている部屋に来る。といっても居間の近くだったからという理由で選んだだけで何も置いていない簡素な部屋だけど。

 

霊「今度新しい家具でも用意しようかしら? さすがに寂しいわ」

 

居間は無視して寝室の隣の部屋へ。あんまり変わらないわね。誰かが来たらここに寝てもらうぐらいしか使い道が思い浮かばない。

 

 

その後もいくつかの部屋を回ったけどどこも似たようなつくりで大体六畳ぐらいの部屋。一か所広い部屋があったけどこの前、紫が来た時に使ったから客間でいいよね。

 

霊「あとは、離れにある蔵ぐらいね。あそこは、時間かかりそうだし、後回しでいいや」

 

部屋の確認が終わったので掃除に入る。部屋用の箒を持ってきて一部屋ずつ掃除する。

 

霊「あ~つまらないわ。なんで、掃除ぐらいしかやることがないのかしら」

 

どうしたって愚痴が出る。博麗の巫女なんて言っても妖怪はあらかた懲らしめたし、新しいルールの制定も紫の調整待ちで私には何もできない。人里の連中はこんな平和がありがたいのだろうけど、どうにも好きになれない。

 

霊「あれ? でも私が忙しいってことは妖怪退治をしないといけないじゃない。……やっぱり平和が一番ね!! 掃除できてよかったわ」

 

いいじゃない掃除。これなら毎日してもいいと思えるわ。

 

~少女掃除中~

 

さて、部屋の掃除も終わり離れの蔵に向かう。あそこに入るのは二回目ね。最初は就任祝いに人里から大量に送られたお酒を入れに行った時ね。あの時は苦労したわ。なんで皆お酒ばっかり持ってくるのかしら? できれば食べ物が良かったのだけれど……

 

???「人里の食べ物は傷みやすいからよ。保存のきく酒を選んだのでしょう」

霊「!!?」

 

急に後ろから妖気を感じた。まあ……いつものことだけど。

 

霊「また来たの? 紫」

紫「まったく……真面目に掃除しているから博麗の巫女としての自覚が出てきたと思ったのに。ただの暇つぶしの延長線上でしかなかったのね」

霊「神社のことなんてどうでもいいわ。あなたに教えられるまで蔵があることにすら気づかなかったのよ」

紫「ひどいこと言うわね。この神社がどれだけ重要なものか、ちゃんと教えたはずよ?」

霊「それでも……よ。私にとってここは牢獄よ。遊びたい盛りの少女をこんなところに押し込んで何が楽しいのやら」

紫「あなたにそんな心なんてあったのかしら?」

霊「どうかしら? ただ私に自覚なんて期待しないでちょうだい。不満があるならいつでも代えてくれていいわ?」

紫「代わりがきかないからあなたなのよ。少しは修行でもしなさい」

霊「いやよ。面倒くさい」

紫「まったく……先代とは全く違うわね。それはそれでいいことなのかしら? それで、蔵に行くの?」

霊「ええ。あなたも来る?」

紫「遠慮しておくわ~」

 

と言い残して裂けた空間に消えていった。相変わらず変なやつね。強いことだけは分かってるけど。

そんなことより蔵よ、蔵。掃除が終わったらあそこの酒を一つ開けようかしら?

 

 

神社の奥にある少し大きな建物。

一体いつから建っているのだろうか? 白塗りの壁は剥げてボロボロになっていて、大きな扉には鉄の錠前がついている。

 

霊「こんなものなくたって誰も入りやしないのに……」

 

錠前に鍵を差し込み開錠する。扉を開くとこの前置いたお酒がある……はずだった。

 

霊「あら?」

 

お酒自体はあった。そこらかしこに置いてあるものは人里からもらったもの。でも、やけに少ない。確かにここに入れた。数が多いからそこら辺の妖精たちにも手伝わせて何とか入れたことは記憶に新しい。しかし、目に見える量で減っている。

 

霊「う~ん……鍵は私が管理していたし鍵開けの名人でも入ったのかしら?」

 

別にお酒が減ること自体はどうでもいい……けれど、自分の所有物を誰かにとられたのは癪に障る。博麗の巫女から物を奪うなんていい度胸しているじゃない。捕まえてぼこぼこにしてやろうかしら?

で……一番怪しいのは

 

霊「出てきなさい紫!! さもないと神社に巨大陰陽玉投げつけるわよ!!」

 

大声で叫ぶと、目の前の空間が裂けさっきの女が現れる。

 

紫「どうしたのよ霊夢。物騒なこと叫んで……」

霊「蔵の酒が盗まれているのよ。あんたなら鍵なんてなくても盗めるわよね?」

紫「なんで私がそんなことしなければいけないのよ。神社に贈られた酒程度なら簡単に手に入るわ」

霊「じゃあ、他に誰がやれるのよ」

紫「あの錠前って大きいだけでちょっと器用なのが一人いれば簡単に開くわよ。誰もやったことないけど」

霊「ここまで来てそんなことする奴いるの?」

紫「いなかったわ。これまではね。それより霊夢、手段なら誰でもできるなら、別の視点で考えてみるのはどうかしら?」

霊「別の視点?」

紫「私にとっては安酒でも人里にとってはそこそこのお酒だったはずでしょう? それなら、飲んだ相手を見つけることはそう難しくないわ。狭い人里なら目撃証言は簡単に見つかるはずよ?」

霊「盗む方法じゃなくて、酒そのものの目撃証言を探せってこと?」

紫「そうそう。さすが霊夢ね。理解が早いわ」

 

言われたとおりにするのは嫌だけど、あながち間違いでもないかしら? でも、人里に下りるのはちょっと悪い気がする。

 

紫「そんなこと気にしなくてもいいのに……でもそうね。嫌なら人里の守護者にでも来てもらう? 彼女ならあなたを無下に扱ったりはしなわよ」

霊「そう? じゃあ、お願いしようかしら?」

紫「では、すぐ来るでしょうからからお茶でも用意しておくといいわ」

 

そして、また消える。まったく、まあ紫ならしょうがないのかしら?

 

霊「て、あいつが呼んだら本当にすぐ来るじゃない。お茶だけでも用意しておかないと」

 

数分後、神社に一人の女性が現れた。もちろん知っている。人里の守護者、上白沢 慧音。就任した時もこっちに来ていた。

 

慧「でだ。八雲 紫に呼び出されたのだが。何か問題でも起きたのか?」

霊「ええ、そんな感じ。あなた達からもらった酒がいつの間にかかなり減っているのよ」

慧「そうか……それで、なぜ私が呼ばれたのだ?」

霊「紫が言うにはあの蔵は少し器用なら誰にでも開けることができるんですって。で、たしかいい酒ばっかりだったわよね。持っていれば目立つでしょ? 人里でそんな人がいなかったか探してほしいの」

慧「人里にそんなことする奴はいない。と言いたいところだが、貧しい者もいる。ありえないわけではないか。分かった、少しばかり時間がかかるかもしれないが探してみよう」

霊「助かるわ」

慧「いや、こちらも博麗の巫女には世話になることもある。こういう時は、こちらに頼ってもらいたいぐらいだ。……ところで、一つ聞きたいことがあるのだが」

霊「なにかしら? 酒の銘柄までは覚えていないわよ?」

慧「いや、酒には関係しないのだが……ここに金髪の少女が来たりはしていないか? 君と同じぐらいの年なんだが」

霊「金髪?」

 

そんな奴来たかしら? この前神社に住むようになって荷物の整理をして…………

 

霊「……あっ!!?」

慧「何か知っているのか!?」

 

そういえばそんなのが来た。数日前の早朝に

 

霊「ええ、ちょっと前に来たわ。うるさいから追い返したけど。あいつがどうかしたの?」

慧「ああ、少し前にとある店の娘が家出したんだ。主人は放っておけと言っていたが、人里の外に出たとなれば話は別だ。それで……彼女はどこに?」

霊「知らないわよ。この辺を探してもいないなら向こうの森にでもいるんじゃない?」

 

まったく興味がないけど、人里にいないならあとは森だろう。あそこは毒キノコが生えていてまともに生活できないと思うけど。

 

慧「あっちか。たしか、人里によく来る人形師がいたな。彼女に聞いてみるか……」

霊「そっちはそっちでやってくれていいけど、こちらのことも忘れないでよね」

慧「わかっている。できるだけいい情報を集めるよう努力する」

 

そういって彼女は人里へと降りていく。気づかいはできるけど空回りするタイプね。

さて、これでできることはやったし後は、彼女の報告を待とうかしら。……いえ、一応防犯はしておきましょう。

 

霊「ちょうど紫も修行しろってうるさかったし結界でも使ってみましょう」

 

蔵の前に立ち防御用の結界を張る。中級妖怪でも壊せない頑丈なものだ。

 

霊「これで、人間には盗めないわ。妖怪も頭の悪い雑魚では開けられないでしょ」

 

中々の出来栄えに納得し部屋に戻る。これで結界が壊れていたら面倒な敵ってことね。

 




長くなったので前後編分けました。次回はすぐ出します。
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