東方愚者伝~対話と天秤と油~   作:寄り道峠

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後篇です。独自解釈多めは基本。


新米巫女と鬼 後篇

Side霊夢

 

翌日

 

朝方。嫌な予感がして蔵まで行った。

 

霊「ホント……よく当たる勘ね」

 

結界は力任せに壊され、古臭い錠前も無理やり壊されて地面に投げ捨てられていた。開け放された蔵の扉の向こうには酒瓶が何本か残っているけど、昨日見た時よりも減っている。

 

霊「なんなのよ」

 

結界の跡や蔵の中も調べてみるけど妖気すら残っていない。盗られてからかなり時間がたっているってことよね。それに、私に気付かれない程度には隠れる力もある。

 

居間に戻り、朝食の準備をする。どれだけ、変なことが起きようと日常のバランスを崩してはいけない。まずは……

 

霊「紫!!」

 

部屋に響くように叫ぶといつものように紫が現れる。

 

紫「なによ~私だって忙しいんだから、ポンポン呼ばないでほしいわ」

霊「蔵の結界が鍵ごと壊されたのよ」

紫「私はやってないわよ?」

霊「そんな事分かってるわよ。結界を壊す理由がないもの。そうじゃなくて、この近辺で私の結界を力ずくで壊せるやつに心当たりはないかしら?」

紫「ありすぎて困るわ。あなたの結界は優秀だけどあの程度なら誰でも壊せるわ」

霊「見てたの!?」

紫「悲しいわね~結界は私の専門分野だから必死に教えたのに~」

 

そんな話をしていると賽銭箱の方から音がした。

 

紫「相変わらず耳はいいわね。お客さんかしら?」

霊「上白沢 慧音?」

 

とりあえず見に行こうと立ち上がって外へ出る

外に出ると神社の前でお辞儀している女性が目に入った。

 

慧「すまない。神社に来るとつい参拝してしまうのでな」

霊「別にかまわないわよ。それで、結果報告を聞こうかしら?」

慧「わかった。と言っても、犯人が誰なのかは特定できなかった。一応それらしき人物の情報は見つけたが」

霊「聞いておくわ」

 

目撃者は夜遅くまで人里の外で活動していた狩人らしい。帰りの途中博麗神社から魔法の森へ向かう小柄な何かと遭遇したらしい狩人は子どもだと思って呼び止めようとしたけど振り向いたときには影も形もなかった。後、ものすごく酒臭かったらしい。

 

霊「一応聞くけど、この前言ってた家出少女じゃないでしょうね」

慧「おそらく違う。少なくとも昨日は森の魔女のところにいたらしい。今朝一番に確認してきた」

 

森の魔女。ああ、あの人形の……誰だっけ? 顔は出るのに名前が出ない。結構単純な名前だったと思うんだけど。

 

霊「そう。これも確認だけど、その子って家の壁をふっ飛ばしたりできるかしら?」

慧「できるわけないだろ。あいつはただの人間だぞ」

霊「じゃあ関係ないわね」

 

結界を壊せるようなやつではないと。

それから数分話し合って

 

慧「どうだ? 役に立ったか?」

霊「半々ね。酒臭い子どもなんて見つける方が難しいわよ。ああ、それから」

慧「なんだ?」

霊「どうにも犯人は妖怪っぽいのよ。私の結界をぶっ壊してくれたし。だから、里の人たちにはヤバイと思ったら酒を渡すように言っておきなさい」

慧「妖怪が絡んでいるのか。わかった、警戒しておこう。これ以上は何もないが」

霊「じゃあ帰っていいわよ。日の出ているうちに帰らないと変な妖怪にで会うかもしれないわよ?」

慧「それは怖いな。では、私はこれで」

 

さて、彼女が帰ったところで考えをまとめる。

事件の犯人は酒好き。酒臭いという情報からかなり飲んでいるようね。それにしては、あんまり盗まないけどなぜかしら?

次、犯人は妖怪もしくはそれを使役できる人間。一応候補に妖怪並みの人間も入れておきましょうか。そんなの見たことないけど。で、小柄。

少なくとも知り合いにはいないわね。

 

霊「やっぱり燻り出すしかないようね」

 

敵を捕らえるなら敵が何者かを知ること。そして、相手の思考を読むこと。ならば……

 

霊「単純だけどこの手が一番ね。お相手は相当の馬鹿らしいし」

 

夜までに細工を完成させ、昨日と同じ結界を張る。その後、神社から降りて魔法の森へ行く。

 

 

夜、私が寝静まる時間帯。

 

霊「あれ? 今朝、生活バランスを崩してはいけないと思っていたのにもう破っているじゃない。おのれ妖怪、私の睡眠時間まで盗むか」

 

それから、数十分が経つ。

 

霊「出たわね」

 

お酒には探知用の札を貼っておいた。相手は山を下り目撃証言通り森の方へ向かってくる。

体を浮かし相手のもとへ向かう。暗闇の中うまく見えないけど小さな人影を確認。

 

霊「見つけた!!」

 

相手の死角からお札を投げつける。

数十枚の札が人影に襲い掛かり土煙を巻き上げる。

 

???「な……なんだ!?」

 

しかし、相手はピンピンしていた。

 

???「む、さっきのはお前の仕業か。いきなりなにをする」

霊「仕留め損ねたか……じゃなくて、やっと見つけたわよ、犯人!!」

 

大きな二本の角に小柄な体躯、でも、感じられる妖気は並の妖怪と比べ物にならない。何物なのかしら?

 

???「なんのことだ?」

霊「とぼけないでくれるかしら?ここ最近家のお酒がなくなっているの。あんたが盗んだんでしょ!!」

???「私はそんなことしないさ。そこら辺の妖怪と一緒にしないでくれるかな」

霊「下手な嘘を……その手に持ってる酒瓶は何かしら?」

???「これか? 最近よく会う友人にもらったんだ。あいつ、会うたびに酒をくれるんだがもう少しまとめてほしいな」

霊「いい加減にしなさい!! それには細工をしてあるの。私のものだってすぐにわかるような細工を!! さっさと返しなさい!!」

???「だ~か~ら~!! 貰い物だって言ってるだろ!! 人からもらったものを渡せるか。これは、私のものだ!!」

霊「人の家の蔵を壊して、何度も盗みを働いた揚句、そんな嘘が通じるわけないでしょ!!」

 

私の大声が野原に響いた。あれ? さっきまで威勢よく返してきた声が帰ってこない。

 

???「嘘……嘘といったか。この私が、鬼である私が嘘を言っていると」

霊「なによ、鬼? へえ、あなた、鬼だったの」

???「ああ、私は鬼の伊吹 萃香」

霊「そう。じゃあ、萃香。さっさと私のお酒を返してもらえるかしら?」

萃「嘘は言わない」

霊「は?」

萃「鬼は嘘をつかない。嘘をつくのはいつも人間だ!!」

 

急に叫ぶと彼女の拳が目の前に迫っていた。

とっさに体を横にずらして回避する。

 

霊「何よいきなり!!」

 

勢い余って飛んでいった彼女はゆらりとこちらに向き直る。

 

萃「わかったよ人間。この酒くれてやる。私に勝てたらな!!!」

 

彼女から刺すような妖気があふれ出る。さっきまでとは比べ物にならない。

 

霊「上級どころか、それ以上じゃない。それに鬼って地上には残っていなんじゃなかったかしら? あのスキマ妖怪。また、適当なこと言って」

 

とりあえず、牽制に霊力を込めたお札を投げる。だが、当たる直前に込めた霊力が散ってしまい風に飛ばされてしまった。

 

霊「霊力が散った? 何をしたのかしら?」

萃「この程度か? 人間」

霊「どうかしら!?」

 

萃香の周囲に結界を張る。強度はできる限り強くかつ二重構造で。

 

萃「ふん!!」

 

しかし、その結界も萃香の腕の一振りで吹き飛ぶ。

パワーの高さに、霊力を散らす何か。かなり、めんどくさい相手のようね。

 

霊「けど、この距離なら防ぐ暇もないでしょ!!」

 

結界を壊している間に後ろに回り込み、破壊されたと同時に巨大な陰陽玉をたたきつける。そして、再び巻き上がる土煙。すぐに距離をとるが。

 

霊「いない」

 

視界が晴れた先には誰もいない。いや、周囲にもいない。

後に残った煙だけで。

 

霊「っ!! 煙!?」

 

突如、煙がこちらに向かってきてまとまり、拳になった。

体を思いっきり後ろに下げてかわす。

 

萃「ほう……このからくりを一発で見抜くか」

霊「一々でかいのよ。その妖気」

萃「そうか……しかし、お前、強いな。さっきの言葉を撤回するなら、酒を分けてやってもいいぞ」

霊「面白いことを言うわね。けど、調子に乗った妖怪を懲らしめるのも博麗の巫女の仕事よ!!」

萃「ん? お前……」

霊「「夢想封印」!!」

 

霊力を複数の巨大な玉に変え彼女へと打ち出す。あちらも、これを見てすぐによけようとするが。

 

霊「そんな甘い回避じゃ逃げられないわよ!!」

 

どれだけ逃げても玉は彼女を追い続ける。

 

萃「だったら!!」

 

彼女の体が消え、玉が行先を失う。けど、それも想定通り。あいつが霧になるのはさっき確認した。

 

霊「「二重結界」からの、圧縮!!」

 

その霧を覆う巨大な結界を張る。さらに、その結界を狭めていく。

すると、結界の中に彼女の姿が現れる。

 

萃「!? 体が元に……なんで?」

霊「やっぱり霧と同じ性質なのね」

萃「なにが」

霊「その霧よ。妖力だけでできているか、はたまた水分も含んでいるのか。まあ、あなたの能力もよくわからないから勘頼りなんだけど。あなた、体をかなり細かくバラバラにして霧に変質しているんじゃないかしら? だったらその主成分は水。あなたが今、入っている結果は二種類の結界の複合。一つは妖力を逃がさない結界。もう一つは、湿度を落とす結界。要するに除湿結界よ」

 

もし、あの霧が水分を必要とする霧であるなら、あの結界内では彼女は霧になれない。

 

萃「どうでもいいよ。そんなもの、壊してしまえば一緒だ!!」

霊「ええ、そう来ると思ったわ。結界だけであなたを封じることができないことは証明済みよ!! 「八方鬼縛陣」!!」

 

結界の至る所に貼られたお札から光の鎖が現れ拳を構えた彼女の体に巻き付く。絡みついた鎖は彼女がどれだけ力を込めても砕けない。

 

萃「くっ、なんだこの鎖は!!」

霊「対鬼用の特殊な結界でできた鎖よ。ついでに、私がちょっと霊力を送り込めば内部の霊力が暴発するおまけつき」

萃「!!」

霊「「亜空穴」!!」

 

自分と彼女の足元に空間の穴を創り、霊力の塊を叩きつける。それを起爆剤に結界内の霊力が爆発し巨大な光の柱が生まれた。

 

霊「終わりね」

 

彼女が置いていたお酒をとりに行く。

 

萃「おいおい、まだ勝負終わってないぞ? そう、焦るなよ」

霊「!?」

 

背後で妖力が爆発的に跳ね上がる。頭より先に体が動いた。ここにいてはいけないと本能が叫んだ。その場から一気に離れると私がいた場所に巨大な拳が突き刺さった。

 

霊「なによ……それ……」

萃「「ミッシングパワー」私の能力だよ」

 

さっきまで小さかった彼女の体は私の二倍以上の大きさになっていた。物理的に。

体格は変わらず大きさだけが変わっているということは、巨大化したということ。

 

霊「霧になったり、でかくなったり忙しいわね」

萃「この力を人間相手に使うのは久しぶりだよ。どいつもこいつも弱いからな」

霊「じゃあ、もう一つ質問。どうやってあれに耐えたのかしら。「八方鬼縛陣」は対鬼用の結界。手加減した覚えもないのだけど」

萃「さっきのはさすがに危なかったよ。ただお前は勘違いしている。霧になることや巨大化することだけが私の能力じゃない。あれは私の力を私に使った結果だ。私の力は私以外にも使うことができる」

 

そういえば最初の攻防で私の霊力を散らしていたわね。そして霧になる力。霧、体が霧になる。体そのものを散らした?

 

霊「密度を操作して鎖を脆くした?」

萃「いい勘だね。だけどここからどうする?」

霊「どうもしないわ。あなたを退治するだけ」

萃「威勢がいいな」

霊「当然よ。あなたは私には勝てないわ」

萃「……強がるなよ……人間」

霊「あなたの力を総合的に見て出した答えよ。どれだけ頑張ってもあなたは私に触れることもできない」

 

体中の霊力を能力と合わせる。ふわりと体が浮き上がり、この世界から離れていく。

 

霊「夢想天生」

萃「なにが……」

 

彼女が巨大な拳を振り上げる

 

霊「無駄よ」

 

が、その攻撃は私をすり抜け空を切る。

 

萃「なあ!?」

霊「私の力はこの世界から浮くことすら可能にする。今、私は世界から浮き、世界からの干渉を一切受けない」

萃「ぐう……」

霊「さあ、戦いを続けましょう。萃香」

 

残った霊力で七色の弾幕を作り出す。

 

霊「教えてあげる。私に喧嘩を売ることがどういうことかを」

 

~省略~

 

あれから数分、煙になって逃げるあいつにひたすら攻撃し続け、ようやく倒した。

 

萃「くっそ~そのうち力が切れると思っていたんだが、逃げきれなかった」

 

うつ伏せに倒れている萃香からは卑怯やずるい、正々堂々と戦え~等聞こえるがすべて無視する。

 

霊「ほら、勝ったんだから酒を返しなさい」

萃「ああ、約束は約束だ」

 

素直に酒瓶を返してくる。うん、中身もなくなっていたりしていない。

 

霊「で、いい加減盗んだことを認めなさいよ。もう、懲らしめたし、怒ったりしないから」

萃「だから盗んでいないって言ってるだろ。鬼は嘘をつかない」

霊「本当に?」

萃「……いや、絶対ってわけじゃないけど……少なくとも今回嘘は言っていない!!」

 

じっと彼女の眼を見る。確かに嘘を言っているようには見えない。

 

霊「いいわ、信じてあげる。じゃあ、この酒はどうやって手に入れたのかしら?」

萃「だから言っただろ。もらったんだ」

霊「もらったって、誰に?」

萃「そりゃあ

 

 

 

Side霊夢終了

木の廊下を駆け抜ける音がする。すさまじいその音はある一室の前で止まり、部屋の扉が強引に開かれた。

 

霊「紫ーーー!!」

紫「おかえり~遅かったわね、早く座りなさい。お客さんも来ているわよ」

???「おう、巫女さん。お邪魔してるぜ」

霊「このスキマ妖怪が、それに家出娘まで」

 

博麗神社の客間にはいつものスキマ妖怪に加え霊夢とそう変わらない年の少女が座っていた。

 

魔「霧雨 魔理沙だ。よろしく霊夢」

霊「なんで私の名前知ってるのよ」

魔「そっちの妖怪が教えてくれたぜ!!」

 

魔理沙は向かい側の席を指さす。

 

霊「余計なことばかり……じゃなくて」

紫「ふふふ、霊夢も成長したわね~あの鬼の萃香を退けるなんて」

霊「やっぱり……酒を盗んだのもあなたね」

紫「だって、最近、修行をサボるようになったし~」

霊「だってじゃない!!」

 

霊夢は紫の近くに座ると思いっきり机を叩く。

 

魔「そんな怒るなよ、霊夢」

霊「なんであんたはそんなに馴れ馴れしいのよ」

魔「せっかく会えたんだから仲良くしたいだろ?」

紫「魔理沙ちゃんはアグレッシブないい子よ~私の誘いも二つ返事でOKしてくれたんだから」

 

それも紫かーーー!! と叫び霊夢は机に突っ伏す。

 

紫「それにしても早かったわね。手加減でもしたのかしら、萃香?」

萃「う~ん、そのつもりだったんだけど。途中から本気だったよ。その時には手遅れだったけど」

紫「あらあら、博麗の巫女相手に油断なんて、四天王の萃香さんも見る目がなくなったわね」

萃「なんだと~!!」

霊「で、犯人は紫だった。でいいのよね? よくよく考えたら萃香の盗む動機が小さすぎる」

紫「一応萃香も共犯よ。盗ったのは私だけど飲んだのはそこの飲んだくれ」

萃「道理で酒が少ないわけだよ。もっと寄越せ~」

霊「あなた達は……」

 

そうやって話していると急に魔理沙が立ち上がる。

 

魔「そんな事より妖怪!! 霊夢が帰ってきたら教えてくれるんだろ?」

霊「教えるって何よ?」

紫「そうね。約束通り教えてあげるわ。スペルカードルール」

霊「できたの!?」

紫「原案が原案だけあって時間がかかったわ。もう少し具体的な案なら採用も早かったでしょうに」

魔「どうでもいいから教えろ!! 人間でも妖怪に勝てるんだろ!?」

紫「ええ、スペルカードルールというのは…………

 

 

~それから数年~

 

 

T「で、そのあと、博麗神社に居座ったと」

萃「ほかに居場所がなくてね。ついでに、霊夢にお酒をねだったら」

T「人里との連携で定期的に酒をもらえるようになったと」

霊「いい迷惑よ」

T「ふーん」

霊「なんだか納得いかなそうな顔ね」

T「いや、そんなんだったけ? て思って」

霊「なによそれ?」

T「さあ? 俺にもよくわからん」

霊「あんたが一番わからないわよ」

 

もしかしたら彼女達はこうやって出会ったのかもしれない。

 




なんか変なこと書いてますが愚者伝ではこれが正史です。誰が何と言おうと。矛盾点とかあると思います。よっぽどのことがないなら「まあ、これぐらいならいいや」で済ませて下さい。
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