ごめんなさい、投稿遅れました。
side,T
運命とは残酷なものである。どこかのカリスマ吸血鬼さんでも、このことは理解しているであろう。俺たちがここに来たこともまた、運命の見えざる力だったのかも知れない。だから、俺が今日、博麗神社に訪れた事も、偶然、霊夢が用事で神社を空けるから、留守番を任されたこともきっと運命なんだろう。でないとやっていられない。
???「お前はぁ~、誰だぁ~?」
T「はあ……」
事の発端は今朝にさかのぼる。
烏天狗に会って数日後のこと。休日の朝、俺は人里の周辺を暇つぶしがてら歩いていた。なぜかと言われてもよくわからない。暇になるととりあえず歩きたくなるのだ。
T「しかし、人には狭いな、ここは。これ以上行けば命の保証はないと」
人里を出てすぐの平原はともかく、そこを超え森や山になると妖怪の巣窟になる。ここは森が見える程度の草原。土と草が生い茂る人里の安全地帯。この範囲は慧音先生の防衛範囲なのでここにいる限りは妖怪襲われることはほとんどない。
森に行くなら霊夢から妖怪除けの札を買わないといけない。高いんだよな。別に無理をしてまで行く必要もない…………
T「じゃあ、博麗神社に行くか」
心とは逆に神社に行くことは決まった。暇だし霊夢とお茶でも飲もう。茶菓子か何か持っていけば喜んで淹れてくれるだろう。
そして、博麗神社に着いて賽銭を入れてすぐだった。すさまじい速度でやってくる霊夢。少し後ろにさがる俺。
霊「お賽銭!! ってノゾムじゃない。どうしたの?」
T「暇だから来てみた。お茶でも出してくれないか?」
霊「来て早々図々しいわね。んー、別に出してあげてもいいんだけど……」
彼女は少し考え込む。
T「どうした?」
霊「ちょっと用事ができたのよ。それで、人里まで行くんだけど、そのあとでいいかしら?」
T「別にいいよ。暇だから来たわけだし……また出直す」
霊「ああ、できれば神社にいてくれるかしら? 今は留守にしたくないから」
T「? いいけど」
霊「それはなにより。じゃあ、また後で」
そう言い残し人里へと飛んでいった。……いいな、飛行能力。便利そうだ。
そんなわけで神社の一室に荷物を置き縁側で帰りを待つ。
T「暇だ……」
どこに行っても暇だった。適当に風景を眺める。階段からなら幻想郷を見渡せるんだっけか。庭の手入れはしっかりとされているし、外見はさびれた神社だが中はちゃんと掃除されている。霊夢は綺麗好きなのか、掃除ぐらいしかやることがないのか。
T「重ねて暇だ……」
掃除がされていなければ汚かったからという理由で掃除ができる。お茶を勝手に淹れるのは、あまりよくないよな。友人の家なら適当に物色もできるが、一応少女の家なわけだしそういうこともはばかられる。
やることはなく手をついて体を後ろにそらす。世界が逆向きに見える。だが、自分が頭をそらしていると知っているので違和感がない。いや、違和感はなかったのだが、代わりに絶望が現れた。
そこに、少女がいた。ガッツリ目が合った。
???「お前はぁ~、誰だぁ~?」
T「はあ……」
ため息も出よう。俺は彼女を知っている。小柄な体、明るい茶色の髪。そして、その髪から横に突き出ている一対の巨大な角。手には瓢箪を持っておりその手首に鎖のようなものがついている。
これは幻覚だったりはしないのだろうか? そうであってほしい。
T「いつもより安くしたのが悪かったのだろうか?」
???「?」
T「いや、お賽銭の話。あとで、追加で入れておく」
幻覚じゃなかった。多分、賽銭箱が拗ねたのであろう。だから、俺の身に不幸が落ちたのだ。
???「で、結局お前は誰だい?」
T「トイツキ ノゾム。最近幻想郷に引っ越してきた人間です」
???「ふーん。私は伊吹 萃香。鬼だよ」
T「ほう、そりゃ珍しい。鬼は絶滅危惧種と聞いていたのですが」
萃「まあ、少ないね。だが、人間と比べれば消えるまでは長い。そう簡単に死にはしないよ」
T「で、その鬼が博麗神社になんの御用で?」
大体想像つくが。
萃「霊夢からもらった酒が無くなった」
T「その瓢箪の中身は酒じゃないのですか?」
萃「いつも同じ味じゃあ飽きるだろ?」
分かりやすくて、結構。
T「霊夢は留守なので、また改めて来てください」
萃「それは知ってるよ。帰って来るまで待つさ。それより人間」
T「ノゾムです。ひとくくりにされると、反応しづらいので名前を呼んでください」
萃「鬼に対して強気だね~」
内心は怖くて死にそうです。
T「名前はその個人を把握するためにあるのです。だからこそ、初対面ならまず、名を名乗るのですよ」
萃「ふーん。まあいい。気に入った。ならノゾム」
T「なんでしょう?」
萃「私と勝負しろ」
T「嫌です」
なにを口走っているんだこの酔っ払いは。
萃「いいじゃないか少しくらい。お前も暇だろ?」
T「鬼に勝てる人類なんて、紅白巫女ぐらいですよ。進んで死ぬ馬鹿がどこにいるんですか」
萃「むう……じゃあ、遊戯にしよう。前に霊夢に教えてもらった」
T「まあ、内容によりますが。弾幕ごっこならしませんよ?」
萃「なんだっけか……おせろっていう遊びだったかな?」
それ、俺が教えたゲームなんだが……というか、酔っ払っていても出来るのか?
T「別にいいですよ」
萃「よしゃあ」
大丈夫かな~?
第一局
ルールは知っているようだけど定石は知らないようで普通に勝てた。
萃「うが~うまくいかない~」
T「どうしよう……後が怖い」
第二局
少し手加減して幾つか悪手を打ってみた。しかし、
T「まさか、悪手に悪手を返されるとは……」
萃「くそーー!!おせろじゃ勝てないか。だったら将棋だ!! 山の連中とよくやったから負けない」
T「将棋なんて駒の動かし方ぐらいしか分からないんですけど」
萃「知るかーー!!」
将棋第一局
将棋なんて中学校の修学旅行の暇つぶし以来だった。
T「萃香さん……歩は横に動かないです」
萃「あれ?」
せめて金になってから動かしてくださいよ。
萃「これならどうだ!!」
T「飛車と角が入れ替わっています。飛車は斜めには動きませんよ」
萃「だああーーーー」
T「あ、これで王手です」
萃「ふっ、こっちも王手だ」
T「せめて王様を守ってあげてください」
こんな感じで勝ってしまった。山の連中は接待将棋でもしていたのか?
霊「ただいま~。あれ? ノゾム?」
萃「くっそー。もう一回だ」
T「萃香さん。もう止めましょう。霊夢も帰って来たし」
霊夢が帰って来るまで、かなりの時間を使ったが、いまだ負けなし。いい加減疲れた。
萃「もう一回。次は勝てる気がするから」
失敗するギャンブラーみたいなこと言ってる。
霊「ふーん。楽しそうね」
萃「おお、霊夢ちょっと待っていてくれ。次勝って終わらせるから」
T「その次は、いつ来るんでしょうね」
萃「次は絶対勝つ!」
霊「随分仲良くなったわね」
T「なぜそうなる? さて、俺、家の仕事しないといけないので、次が最後ですよ」
萃「今度こそ、勝ってやる!!」
この人……この鬼? そんなに強くないし、手を抜くと文句言ってくるからやりづらい。オセロの二局目は例外で、こっちが手を抜いていることに気付けないほど初心者だっただけね。
T「ううーん、次はそこに来るだろうから……ここかな?」
萃「うげ……」
数分後、今日だけで何度聞いたかわからない敗北の叫びが博麗神社に響いた。
T「そういえば、霊夢の用事って?」
霊「萃香が来たから、お酒を調達してきてたのよ。家にはもう残ってなかったから」
T「そっか……もう帰るわ。疲れた」
霊「そう。また来るといいわ」
意訳、また賽銭を入れに来てね。て、ところか?
……あ、お茶貰い損ねた。
T「まあいいか、晩飯のおかずでも買って帰ろう」
博麗神社から、人里に入ってすぐの通りでいつもお世話になっている魚屋に行く。
T「あれ?」
すぐに店に着いたのだが……店の商品すべて無くなっていた。
T「なあ店主、今日はもう売り切れかい?」
「ああ、さっき二人で来たお客さんが全部買って行ったよ」
T「全部!?」
宴会の予定なんてなかったはずだが。
「ははは、運が悪かったな。また来てくれ」
T「そうするよ」
しかし、ほかの店を探しても見事に売り切れている。くっそ、主食抜きは辛いぞ。
どうしたものか……………
???「…………まだ買うんですか? もういい気が……」
???「……さんは、あの人のことを知らないからそんなこと言えるんですよ。これでも数日……」
……………だけど、あれは昨日食ったばかりだし。やっぱり余りものだけじゃあな……
T「ん? 今どっかで聞いたことある声が……」
後を振り向く。ほとんど売り切れで活気のない商店街である。
T「誰もいない……気のせいか。それより、どうする? 変なの作るとあいつ怒るし」
本当に申し訳ありません。現在の博麗神社に伊吹 萃香はまだ現れていませんでした。この先の展開上この話を消すこともできませんでした。しかも、一週間近く放置とは……とりあえず、なんとかします。