とある無能力者の絶対能力   作:ノナノナ

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都市伝説

 ふふん、ふんふふん、ふっふんふーん・・・

 

 風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、パジャマ姿でパソコンの前に座り、電源を入れる。

 左手には入れたてのホットチョコレート。

 湯気を立てているカップをスナック菓子の傍らに置き、佐天涙子は、お気に入りのサイトをクリックして、鼻歌まじりに、今日も新たな情報が無いかと書き込みをスクロールしていく。

 

 『バレーボールが白いカブトムシと出逢う時、報われない者にも日の目が当たる。』

 『グレムリンの脅威は終わっておらず、不死の魔神が学園都市に潜伏している。』

 『AIM拡散力場を彷徨う謎の老人。』

 

 (・・・なんか、パッとしないなあ。具体性無いし、バレーボールと白いカブトムシとか、煽りの割に意味不明・・・)

 ゴソゴソとスナック菓子の袋からプリッツを摘まんで口にくわえる。ポリポリポリとかじって、ホットチョコレートを一口。

 

 『とある少女のネットワークが暴走するとき、雷鳴と共に学園都市に危機が訪れる!』

 (雷鳴と言えば電撃使いよね。もしかして御坂さん?)

 大覇星祭の時、学園都市を襲ったテロリストを追う白井さんを、第177支部で初春とサポートした事件。婚后さんや、湾内さん泡浮さんも巻き込まれた大事件だったが、御坂さんが事件の中心に居た気がする。しかしあの時の記憶がどうも曖昧なのだ。どこか記憶の印象に辻褄が合わない気がしている。

 

 熱いホットチョコレートを、口に含んだ甘さの後に来るほろ苦さを味わいつつ喉に送る。そしてもう一口。

 濡れた髪が冷えて来たので、ネットを漁るのをいったん中断し、ヘアドライヤーを当て、ストレートの黒髪を整える。

 

 「ふう」

 

 一息ついで、熱さの消えたマグカップから焦げ茶の液体を口に含むと、ネットサーフを再開。

 『学園都市の闇を駆けるバスカヴィルの犬(魔犬)!』

 『男の子に無理矢理ランドセルを背負わせ、拉致する赤毛の痴女!』

 (赤毛の痴女っていや初春の同僚。でもあのヒトは御坂さん限定か)

 『お嬢様学校、常盤台中学にはレベル5を凌ぐ最恐の怪人がいる!』

 (・・・もしかして、寮監さん・・・)

 

 『無人ペイロードの集団暴走事件!』

 口に含んだココアを吹きそうになる。

 「これって!」

 スレッドを開き内容を読む。

 ――無人の作業機械やペイロードが突然人間に襲い掛かる!

 それは、人工知能の実験による暴走。自律型プログラムが自我を持つようになり人間に反旗を振りかざした。能力至上主義の学園都市にあって、その階級社会の怨嗟をプログラムに打ち込むことにより生み出された怪物。学研会で発表予定のものがコントロールを離れて暴れ出す――

「まあ、『能力至上主義の学園都市にあって、その階級社会の怨嗟』ってとこは合ってるんだけどねえ…」

 苦笑しながら思わず突っ込みを入れる。

 「フェブリ元気にしてるかなぁ」

 

 プリッツを咥え、パソコンの画面からうーんと背伸び。

 

 マウスのローラーを回し、記事スレッドをスクロールしていく。

 余り目ぼしい話は見当たらない。というより、既知の事が元ネタとなっているものが多い。内容が現実とはかなり違っていたり、既にある都市伝説のバージョンを変えただけのもの。大概、都市伝説というものはそういったものが殆どである。

 という事は、都市伝説となるようなイベントに自分は案外関わっていたのだ。――視界を流れていくスレッドをやり過ごしながら、意外な事実に気付いた。

 

 (だからといって、佐天さんが学園都市を揺るがす大事件に居た訳でも無いんだけどねー)

 

 すっかり冷えた飲みさしを一気に飲み干す。

 脱ぎ女から始まるレベルアッパー事件、ディフュージョンゴーストによる革命前夜事件、テロリストによるものとされたレベル5暴走事件、どれも学園都市崩壊寸前だったんだが。

 

 くるくると回していたマウスの動きが止まり、視線が一つの記事に。カップを持った手を放す。

 『能力者狩り』

 最初佐天は無能力者狩りかと思った。能力者による無能力者への暴力。自分がレベルアッパーなんてものに手を出すきっかけとなったリンチ事件。

 しかし記事には、能力者狩りとあった。

 スレッドを開く。

 『巷での能力者狩りで、高位能力者の脳を売買している』

 そんな書き出しで始まっていた。

 『いま社会問題化している能力者狩りは、スキルアウトによる抗議行動では無く、学園都市に蠢く闇の組織が、能力者の脳を実験に使用するために行っているものである。スキルアウトはその濡れ衣を着せられているに過ぎない。いまのところ被害者はレベル3、4が殆どだが、対象はレベル5も例外ではない。

 ――なお消えた能力者は、元々居なかったことになるという――。』

 佐天涙子はレベル0だが、高位能力者の友人がいる。

 御坂美琴に白井黒子。御坂美琴はレベル5の第三位。白井黒子はレベル4ながら稀少な空間移動能力者だ。白井黒子は優秀なジャッジメントであり御坂美琴は圧倒的な超能力者、単なる能力者狩りごときに不覚を取るとは思えない。

 

 「まっさかねー。そんなことが実際あったら、アンチスキルが動かない訳ないじゃん。学園都市だって貴重な能力者を失う事は重大な損失ですよー」

 ――しかし、

 (でも、スキルアウトじゃないってあるよね。学園都市に蠢く闇の組織だって)

 そして最後の一文が気になった。

 ――消えた能力者は、元々居なかったことになるという――

 

 

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