陰るのが早い冬の日差しが、中央病院の病室に差し込んでいる。
ぱらりとページをめくる音。
「ふむふむ、『死人使いは古来より世界中に見られる秘術で、よく知られるところではカリブ海のゾンビが有名であるが、日本においても西行法師が吉野での修業時代、寂しさから骸骨を糸で結び、砒霜と呼ばれる秘薬を降り掛け、死体を蘇らせたという言い伝えがある。しかしそれはもはや人ではなく、魂の無い存在だった・・・』と。魂の無い人間ってアンドロイドのようなもの? 人に作られた人間って――」
人工的に作られた人間、その存在を佐天涙子はよく知っている。――フェブリにジャーニーの姉妹。ケミカロイドと言われる薬品だけで造られた命。でも彼女たちには魂があった。遺伝子で受け継がれる生命でなくても魂は宿る。ではその魂って何だろう。
「動物だけでなく、機械や草花にも魂ってあるのかな・・・。死んで魂が抜けるなら、その魂はどうなっちゃうんだろうな・・・。死ぬって植物なら枯れる事なんだろうけど、機械が死ぬってどういうこと? 機能停止? 世界じゅう魂で一杯だってこと??」
ぼんやりとそんなことを思っているうち、自分を襲った能力者狩りの少女の顔が浮かんだ。生きた人とも死人とも言えない土色の顔。
「彼女って、生きてたんだろうか。でも、魂は有ったよね?」
パタパタと数人が廊下を掛ける音が近づいてきて、勢いよく病室のドアが開いた。
そして雪崩れ込んでくる三人の少女。
「大丈夫なの佐天さん!」
「何があったんですの!」
「・・・・・・!!」
いっせいに、心配する顔が覗き込む。
「へ?」
読んでいたオカルト雑誌の『月刊ザラスシュトラ』を膝に置き、あっけにとられる佐天。
「へ?じゃありませんの。貴方襲われたって言うじゃありませんの。初春から連絡があって駆け付けたんですの!」
大変な剣幕で迫る白井黒子。
「アタシも黒子から連絡を受けて、びっくりして」
その横に真剣な先輩の顔。そして――、
聞けば、連絡して来たとき、彼女は相当取り乱していたらしい。佐天が幻想御手で昏倒した時よりも、春上衿衣らがテレスティーナに奪われた時よりも、嗚咽と泣きじゃくりで要領を得ず、ただ「佐、天さんが。佐天・・さんが・・・」と繰り返すばかり。
白井黒子が電話口で泣きじゃくる初春を叱咤していたところに、第一七七支部に佐天涙子の入院先を知らせるメールが入る。そして三人は合流して駆け付けたという。
見れば、目に一杯涙をためて、小さな肩を震わせて、何も言えずに一生懸命耐えている親友の姿があった。
「初春――」
「さてん、さん。さてん、さん――」
名前を呼ばれて、堰を切ったように涙が流れ、佐天涙子にしがみ付く初春飾利。佐天涙子は、ベッドサイドに立ちあがって親友を抱きしめる。
「初春無事だったんだ、よかったぁ」
「良かったじゃありません。私が襲われそうになって、佐天さんが飛び出して来て、――後の記憶が無くて――、気が付くと佐天さんが、佐天さんが居なくって。あの能力者狩りも居なくなってて。私、どうしたらいいか本当に解らなくなって・・・」
「ゴメン、心配かけて。でも何があったのか私にもよく解らないんだ。気を失って気が付いたら病院にいて」
「佐天さん、本当にどこも何ともないんですの?」
白井黒子は、能力者狩りにあった被害者が、発見された時どのような姿をしているかを知っている。惨状を薄めるため画像処理された写真だったが、アンチスキルとの合同連絡会で見せられた時、はじめて吐き気というものに襲われた。そして説明で聞いた、被害者は一様に脳を抜き取られていたという言葉。
「はい。特に外傷などは無いようだけれど、念のための検査入院だって、カエル顔の先生が言ってました。明日には退院できるそうです」
「そうでしたの――」
ほっとする白井。
そんな後輩を見て、御坂が言う。
「能力者狩りって、そんなヤバイものなの? アンタなにか隠してるでしょ」
「べ、別に隠している訳では。ただ一般人であるお姉様が事件の度に首を突っ込んでくるのはいかがなものかと」
御坂が被害者の概要を知ったなら、間違いなく突っ走ってしまう。しかもレベル5となれば、犯人には垂涎ものだ。だから噂以上の事は御坂には伝えていない。
すました顔でしらばくれる後輩に、御坂は口を尖らせる。
しかし、御坂美琴も既に能力者狩りと関わってしまっている。ユグドラシルのハッキングを仕掛けた夜、寮に帰ってから冥土返しから連絡を受けたのだ。シスターズの一人が襲われた事を。そして寮監が言った「レベルに関係なく、稀少な能力、利用価値の高い能力を求めて。レベル5など格好の的とは思わんか」という言葉。そして今度は、自分の大切な友人が能力者狩りに狙われたのだ。目的が何かは知らないが、犯人のターゲットは間違いなく自分。自分のせいで周囲が危険に巻き込まれている。
狙うんだったら、直接アタシを襲えばいいのよ!!
そう思い、唇を噛む。
「御坂さん、なんか顔が怖いんですけど・・・」
「え、あ、いや」
ひとり物思いに浸っていた御坂に向かって佐天。
「また、事件をビリッと解決してやろうなんて思っていらっしゃるのではないでしょうね。お・ね・え・さ・ま」
わざわざ「お・ね・え・さ・ま」と釘を刺す白井黒子。崇拝する先輩が何を考えているか位、容易に判る後輩である。もっとも顔に出やすい御坂の考えは、誰でも読める事だったが。
そんなやりとりを見つつ、佐天は抱き締めていた親友の華奢な身体から手を下ろす。
「それはそうと、挨拶がまだだったね初春。」
え?という初春。
「幻想御手のときもそうだったよね。いっつも初春に心配ばかりかけて・・・ありがとう。――そして」
「たっだいまー!!」
勢いよく捲し上げられる初春飾利のスカート。
「へ? !!!」
ひやあああああああ。
甲高い少女の悲鳴が病棟じゅうに響き渡る。――まあ、お約束だ。
面会時間が過ぎそろそろお暇しなければと、初春、白井、御坂が立ち上がる。
「じゃあ初春、明日また一七七支部で」
「佐天さん、風紀委員第一七七支部は部外者立入禁止ですのよ」
「そんなあああ。御坂さんも、婚后さんや泡浮さん湾内さんも出入りしてるじゃないですかぁぁぁぁ」
「お姉様は、まあ良いですが。婚后光子には一度きちんと言わなくてはですね」
「それって、もろ公私混同ですよね」
ぽろっと言う初春をにらみ付ける白井。
そんなやりとりを交わしつつ、いつもの四人は別れたのだった。
病院からの帰り際、御坂は冥土返しに呼び止められる。
「黒子、ちょっと用事があるから、先に帰ってて」
「でも、もうすぐ門限ですわよ」
そこは、お願いと、白井に手を合わせる御坂美琴。
「仕方ありませんわね、あまり遅くなりますと、誤魔化しも効きませんわよ」
そう言い残して白井と初春は御坂と別れた。
二人きりになって、話を切り出す。
「妹のことですね」
うんと頷く冥土返し。
「付いて来なさい。」
明かりの消えた病院内の、一般病棟を抜けてとある一角へと向かう。
暗い廊下にぽつんと一カ所だけ、明かりが灯った病室に入ると、
そこにはベッドに腰掛けた19090号の姿があった。そしてもう一人、小さなミサカ。
「意識が戻ったのね!」
「はい、お姉様には御心配を掛けていたようで、申し訳ありませんでした。とミサカ19090号はまず謝罪します。」
「そんな、姉が妹を心配するのはアタリマエじゃない。いきなりここが襲撃されて、妹達が怪我を負って、その上アナタは意識不明のまま。――能力者狩りの奴!」
「お姉様が正体不明の能力者狩りを追って、またアブナイ橋を渡ろうとすることは、容易に推測できました。ですからミサカ達はドクターと打ち合わせの上、姿を見られたシスターズの存在を隠すために、お姉様には検査で来ていたという事でこのミサカの代役をしてもらう計画でした。あくまで一時的な緊急避難に過ぎませんが、でももう突っ走っておられたようですね」
自分の行動が見透かされていたことに御坂美琴は怒る。
「もし意識が戻らなかったらどうするつもりだったのよ。それに、私は能力者狩りを許さない。私の大切な友達まで襲ってきたのよ、絶対突き止めてやるわ!」
「ですから、お姉様には、事件が解決するまで昏睡していてもらう予定でした。あるいは強制的に国外へ飛ばしてしまうか。しかし、こちらがおびき出す前に、既に飛び出してしまわれていました。」
「何、その手段を選ばず的な。言葉のはしばしに不穏なものを感じるんだけど」
「しかし、サイレントパーティー事件を見るように、象を動けなくする麻酔を使っても、はたしてお「姉様を止めることが出来たか甚だ疑問です。また世界の果てまで追い出しても、お姉様は戦闘機をハイジャックして舞い戻って来たでしょう」
よく解ってるじゃないと思ったが、話の内容は、超絶な人外野郎と言われている気がしないでもない。
「それがレベル5たるお姉様というものです。と、ミサカは冷静に推察します。」
やっぱ言葉に毒がある。って、19090号はこんな話し方をする妹だったか?
妹達は今でこそ各個体ごとに個性が出てきているが、19090号は最初のうちから控え目でオドオドしたところがあって、他の妹達と違う翳りのようなものを持った個体だった。それは、布束砥信が打ち込んだココロの欠片のせいだったが。
「なんだか、色んな意味で・・、個性が出て来てるようで・・よかった?」
ちょっと複雑な心境。
「見ての通り、19090号君は意識を取り戻したんだね。身体機能も別段変わったところも無い」
「先生、ありがとうございました!」
ぺこりとお礼する御坂美琴。
「いや、私は何もしていないんだね。彼女は昼過ぎに、急に意識が戻ったんだ。意識不明の原因は不明、解剖学的には何処も異常が無いにもかかわらず、彼女の頭の中は空っぽだったんだ。原因も検査の所見も不明では、治療のやりようが無くてね。やったことといえは点滴ぐらいだね」
「頭が空っぽだった?」
「意識不明でも昏睡ではなかったんだね。刺激での反射や五感の働きは正常に機能したんだが、反応が無い。」
「聞こえているのに伝えられないとか、生命維持だけ動いていたとかですか」
「いや遷延性意識障害や植物状態とは違っていたねえ。彼女の心だけが何処かへ行っていたようだった。MNWとも切り離されていたね。意識が戻ると同時にネットワークには繋がっているようだが・・・」
「て、ことで私が呼ばれたの。とタイミングを見計って会話に参加してみる。」
ちょこんとアホ毛が立った一〇歳くらいの女の子、キラキラした眼差しを御坂美琴に向けている。
「私は打ち止め(ラストオーダー)だよ。と自己紹介してみる。って会ったのはじめてじゃないから、お久し振りだねお姉様。」
へ? そういえば、この子どこかで見覚えが、っていまさらっとお姉様って言ってなかった?
「本当はまだお姉様に自己紹介するつもりは無かったんだけど、19090号がネットワークから離れて、そして再接続されたとき、ネットワークに妙なノイズがあったの。それで私とお姉様が呼ばれたって訳」
「妙なノイズって、ウイルス!」
御坂の顔色が変わる。大覇星祭のとき木原幻生のウイルスが御坂妹に打ち込まれ、MNWの暴走で学園都市が消し飛びかけたことがある。その中心に居たのは自分。
「私がオリジナルだから呼ばれた事は解るわ。でも貴方は何?」
「あ、そうか。お姉様は知らないんだった。ミサカの検体番号は20001号、MNWの上位個体として造られたシスターズの最終ロッドなんだけど――」
御坂美琴は頭がくらくらした。ここでまた新たなクローンの存在。しかも見掛けが他の妹達と違ってずっと幼い。そう、ちょうど自分がDNAマップを提供してしまった、あの頃と同じ。
「MNWにおけるハブみたいなもんなんだけど、ネットワークの運用を制御することが目的だからコンソールかも。」
「ネットワークの運用って・・・」
「上位個体としてMNWに直接命令することが出来るから、ネットワークが研究者の意図から離れた行動を取る事を防止するための安全弁なんだよ。だから他の個体よりちんまい形で培養されたんだけど、DNAマップの出所を見ると、あまり将来も期待できないかもって、ミサカはミサカは悲嘆にくれてみる・・」
ちらりと、御坂は視線が自分の胸辺りを指したのに気付いてムッとなる。
「でも、より成長した姿で調整された個体(ワースト)は、見違えるほど成長(ナイスバディ)してるから、お姉様も希望が持てるかも!って藁にもすがる気分」
より成長した個体!って、まだいんの!?
そういえば、グレムリンと対峙したハワイのとき、やたら目付きの悪いアオザイ女が居たっけ。上位個体がなんたらって言ってたけど、アレ?じゃあ彼女もクローンだった?!?
湧き上がる御坂美琴の疑念をよそに打ち止めは続ける。
「ウイルスとは違うようなの。なんていうか、ココロの欠片っていうか、19090号が貰った感情プログラムとも違って、別の人の想いが入り込んでいるような・・・。問題なのは、それがMNWに繋がったミサカ全員に共有されているって事。本来、そういった外部からの侵入プロトコルは、上位個体である自分を介さないと受け付けないの。19090号の感情プログラムがネットワークに拡散しないものそうした理由。プロトコルが一緒なら情報は共有されるし、ネットワーク内の特定の感情だけを集めることも出来るけどね。
で、お姉様は変わったところは無い? 違和感とか、これまでには無かったフラッシュバックとか」
「フラッシュバックて、怪しい薬をやってる人みたいに言わないで。特に変わったことは無いわ」
そもそも自分は妹達のネットワークにリンクしていない。そりゃあDNAマップの提供者だし脳波パターンが似ていることは事実だけれど。
「え・・あれ???」
そこで気付く。では何故、大覇星祭のとき、御坂妹に打ち込まれたウイルスで自分は暴走したのだろう。あれはMNWをブースターにした暴走能力の誘爆実験。ネットワークに繋がっていることが必要条件だ。あのとき、自分は確かにネットワークにいた!
「お姉様にシスターズの意識は流れていないようだけど、あの時のログはMNWには残っているの。お姉様の孤独も、大切なものを守ろうと、自分を犠牲にしようとしたことも」
幼い顔が陰る。御坂美琴は、自分の恥ずかしい覚悟を見られた気がして顔が赤くなる。
が、打ち止めは、自分たちはどんなことがあっても死んでやるものかと決意しているのに、お姉様もあの人も、自分を犠牲にすることを、ためらいも無く選ぼうとしてしまうことが悲しかった。
「今回の19090号君は、大覇星祭の事例と似ているんでね。どちらも上位個体を介さずに起こっている。接触した19090号君の覚醒と同時に拡散している点が異なるが、もしウイルスなら遅延型の可能性があり君にも病院に来てもらう必要があったんだ。」
遅延型ということは、ある日突然発症するのだろうか。知らない間に進行していて、意識を失って暴走する――。レベル5の能力が暴走したら、それはもうGODZILLA(怪獣)。
心臓を冷たい手で鷲摑みにされたような悪寒が走った。あの時、自分の大切な人達丸ごと消し飛びそうになった。でも意識までは失っておらず、能力が自分の手を離れて暴走して行くのが判った。その暴走の原因となっていたのは、『街の嫌なものを消し去りたい』という自分の深層心理。暴走して行く自分も判らず、深層心理だけが剥き出しになったら。
「今回は、簡単な問診と脳波パターンの測定だね。――いいかい?」
「はい。」
「じゃあ始めるよ。」
頭に脳波測定のゴーグルを装着して、冥土返しの診察を受ける。
「なにか、これまでと違った感覚や感情を感じる事は無いかね。――具体的でなくていいんだ。印象で構わない」
「特にありません。」
「既視感は、何の脈絡も無くデジャヴを観ることはあるかね」
「デジャヴはたまにありますけど、あ、ここ前に来たことがあるとか、みんなでお茶してる時、この会話って聞いたことがあるとか――」
「君位の年頃にはよくあることだね」
「悩みみたいなものはあるかね」
「特に悩みは。――そうですね、妹やちが社会に受け入れられるために、自分は何が出来るんだろう。あ、先生にはすごく感謝してます。はい。」
「特別な人への悩みは」
「それは聞いてみたいかもって、ミサカは身を乗り出してみる!」
「個性の検証においても有意義な情報です!いわゆる勝ち組になるため、とミサカは――」
途端に外野がうるさくなる。御坂美琴は耳まで真っ赤になる。
「ぶ、ぶぁ・・・そそ、そんな、悩みなんて。す好きな人なんていないし、アイツとは一緒に並び立って居たいだけで、そもそも恋愛感情なんてないし、いっつも先走ってて私は蚊帳の外だし、デリカシー皆無だし、あのばか・・・」
「いや、別に君の恋愛を尋ねた訳ではなかったんだが、――まあ、人並みにってとこなんだろうねえ」
そのほか食欲とか、勉強とか、体調とか、日常生活の質問が続き、脳波パターンの計測が行われ、データと付き合わせながら冥土返しは続けた。
「特に異常な所はないようだね。脳活動にもノイズは見られない。シスターズに見られるノイズは、君には無くてシスターズにあるもの、クローンに起因するものか妹達の特性によるものなのか」
「妹達の特性って」
「例えば、死を共有している。」
シスターズは一万三十一回にも及ぶ絶命を、自分の死として体験している。
「これまでシスターズに使われたウイルスとは違うようだね。悪意や目的が見られない。人の想いというか、打ち止め(ラストオーダー)が言うように『心の欠片』なんだね」
――これまでって、じゃああんなこと(大覇星祭)が何回もあったって事?!――
「詳しく検査を受けてみるかい。それには遺伝情報の分子構造走査や学習装置を使うことになるが、君は望まないだろうね。」
「はい」
「今のところはここまでだね。――外まで送ろう」
冥土返しに促され病室を出る御坂美琴。
出しなに二人の妹が見送る。一人はぺこりとお辞儀を、もう一方はアホ毛を揺らしながら元気に手を振りながら。
「あの、妹達は大丈夫なんでしょうか。安全という意味で。私が傍に付いていた方が――」
「君には学校があるだろう。身辺警護なら、彼女たちには学園都市最強と言っていいボディーガードがついている。特に打ち止め(ラストオーダー)には常時付きっ切りでね。19090号君が殺されずに済んだのは、彼のお陰だ」
「でも、いくら学園都市最強クラスと言っても、相手があの一方通行だったら!」
「――大丈夫だねと断言できる。それに一方通行は、とある無能力者にあっさり敗北したって言うじゃないか」
そう言って余裕でウインクする冥土返し。彼女たちを護っているのが、その一方通行だという事を御坂は知らない。
「で、ノイズの事なんだが――」
話題に深入りせず話を戻す冥土返し。
「悪さをする様子は見られないが、ただ今回は、科学によるウイルスじゃあ無く、魔術によるものなんだ。用心するに越したことはないね。」
「魔術、ですか――」
魔術って何よ。あのちびっこいの(レッサー)やコスプレ剣士(ブリュンヒルド=エイクトベル)が使ってたもの? そりゃ学園都市のとは違う法則の能力があるらしいけどさ。
「私も、魔術に詳しいわけではないからね。妹達の事は引き続き経過観察していくが、君もなにか変化を感じる事があったら、すぐ私のところに来なさい」
はいと返事を返し、御坂は病院を後にする――。