大分登ったわね。
すでに山に入ってから数時間。
もう頂上に着くまで良い頃合である。
このまま何も起こらずに目的地を辿り着くわね。
「止まれ!此処からは我ら天狗の領域!人間は即刻立ち去れ!!」
訂正、すでに厄介事に巻き込まれました。
外見はさっきの天狗と同じで、剣と盾を持っているから白狼天狗ね。
「あぁー、別に貴方達、天狗には用はないの。そこを退いてくれないかしら?それと私は戦闘は専門外よ」
「用があるのはこの先の神社なのはわかっている。戦えないと言ったが、先ほど仲間を気絶させたにも関わらずか?」
「!?…見られていたのね」
「私の能力『千里先まで見渡す程度の能力』を用いれば、容易ではありません」
たたでさえ、白狼天狗は鼻が利くというのに…
この天狗は白狼天狗の性質を兼ね備えながらも、目で遠くまで見る力を持っている。
子供の遊びで、かくれんぼなんかしたら確実に見つかるわね。
「つまり、仲間の仇討ちのつもりかしら?」
「それもあります。ですが…」
天狗はそこからは口篭る。
しばらく視線を地面に落としていたが、やがて顔を上げ、こう言った。
「私は何より、貴方と戦いたい!!」
…は?
え?どういうことなの?なぜ私と?
霊奈は混乱し始めた。
「え、えっと…なぜかしら?」
「仲間の天狗が応援を呼ぶ前に、貴方は瞬時に敵を動きを封じた。ただの人間ならば、今頃大勢の天狗が此処に押し寄せていただろう」
確かにいくら霊夢や魔理沙でも、実力はあるが、私のような瞬時に敵を気絶させる。
そういう細かいことはできないかもしれない。
むしろ、今の勝負方法は弾幕ごっこなのだから。大雑把なことが多いと思う。
「それが、なぜ私と戦いたいという理由に繋がるのかしら?」
「貴方は強い。少なくとも、鬼と互角かそれ以上に」
「過大評価しすぎよ。鬼と比べるほど、力はないわ」
「それを決めるのは私です。此処で貴方に挑み、それで評価すればいい話です」
しつこいわね。
この白狼天狗は…戦う気満々じゃない。
「はぁ……やってもいいけど、私にもそれなりの理由がないと戦わないわ」
霊奈は溜息をし、準備体操を始めた。
「そうね。私が勝ったら、■■■に会わせてくれないかしら?」
「!?…白狼天狗である私では、何とも相談し難い内容ですね」
「できるの?できないの?」
椛は少し考え始める。
さすがに身分の違いとなると、無理があるかもしれないけど、彼と話す機会なんてこんな強引なことでしかない。
「私の上司、鴉天狗様に話を通せば、何とかいけないことにはないですが、確証はありません」
「確証が無くなっていいわ。理由さえあればいいのだから」
霊奈は準備体操が終わるが、次に背伸びをし、深呼吸をする。
空気を吸って、吐くを二回繰り返した。
「さてと、準備ができたことだし、始めましょうか」
さっきとは全く以って違う雰囲気。
いつも戦いたくないと逃げ腰な姿とは一変し、そこには覇気に満ちた姿があった。
椛はその気迫に圧倒されるが、さすが天狗と言ったところか。
怖気付く姿など微塵も見せない。
「戦う前に、聞いておくわ。私は博山霊奈。貴方は?」
「犬走椛と申します。いざ、尋常に勝負!」
名乗り終わった瞬間、椛が先制した。
勢いある速さと共に、剣の渾身の一振りを見せる。
霊奈は斬られる瞬間に軽く横に体をずらし避けた。
隙ができたところを、裏拳で椛に殴りかかる。
椛は盾を使い防いだ。
霊奈は防がれたのにも関わらず、ボディーブローで追撃し始めた。
椛はそれに感づき、逸早く後退した。
しかし、椛の目の前まで苦無が迫っていた。
霊奈はさらに、苦無を投擲させ、追撃したのだ。
椛は当たる寸前で、剣を使い、払い飛ばし、そのまま霊奈に向かって弾幕を放った。
霊奈は弾が全ているかのように、スムーズに避けていく。
椛が弾幕と放つと同時に接近し、近距離まで迫っていた。
大きく剣を横に振り、霊奈を斬りかかる。
霊奈はバックステップで、後ろに跳ねる。
椛は攻撃をやめることなく、一歩ずつ前進しながら斬りかかる。
一歩、二歩、三歩…
霊奈は後退しながらも踏み込みと剣を振り上げるタイミングを見計らい、次の攻撃では剣を振り下ろす前に椛の手を止めた。
足を払い、椛の体勢を崩した。
倒れた椛の目の前には、霊奈の肘が頭を目掛けて落とされていた。
体を横に転がし、間一髪で回避した。
霊奈の肘は地面へと落とされたが、そこには地面が抉られていた跡があった。
「今の攻撃に反応できるなんて、並の天狗でも早々できるようなことではないわ」
霊奈は立ち上がり、椛を感心するように言った。
「恐ろしいですね。妖怪相手にここまで追い込むなんて…」
椛は膝を付きながら、相手をより警戒し始める。
霊奈がどれほど強くて、底なしかと考えると冷や汗を掻いた。
人間と妖怪、普通に考えれば力は圧倒的に妖怪が上回る。
だが、霊奈はその逆である。
「私なんてまだ弱い方よ」
妖怪の賢者、四季のフラワーマスター、天魔、閻魔。
幻想郷の人柱とも呼べる妖怪の実力者達。
それと比べたら私なんてちっぽけのような存在。
「私は博麗の中でも、一番才能がない巫女だった」
霊奈は強く拳を握り締め、地面へと視線を落とした。
やがて、霊奈は手を構えを取り、こう言った。
「それでも、私は努力してここまで強くなった」
「……貴方の過去に何があったかはわかりませんが、私は全力で挑むまでです」
椛は付いた膝を立たせ、再び剣を構える。
両者一歩も動かず、睨み合った。
そして、先に仕掛けたのは霊奈だった。
「(消えた…)」
椛は辺りを見回すが、霊奈の姿はどこにもなかった。
「(上か!)」
椛は空を見上げると、そこには苦無が迫っていた。
何度も同じ手はくらうこともなく、難無く弾く。
だが、肝心の霊奈の姿はどこにもなかった。
「(後ろ!?)」
椛は後ろから聞こえた微かな足音が聞こえ、振り向いた。
そこには、風を裂くように突進してくる霊奈が居た。
「チェスト!」
霊奈は渾身の一撃である、掌抵を放った。
「…残念ですね。貴方の攻撃は中々に読みづらいですが、惜しかったですね」
霊奈の掌抵は盾によって、防がれていた。
椛はこの隙を逃さず、余った片腕を使い斬りかかる。
霊奈は避ける仕草は全くなかった。
「いいえ、まだよ」
霊奈がそう言った瞬間、真上から四本の苦無が降り注いだ。
椛に当たることなく、外側へと。
四本の苦無は何もないところに刺さった。
だが、その苦無は四角形の頂点で包囲するかのようになっていた。
夢符「封魔陣」
スペルカードだった。
四つの苦無の内側にいる椛は、光に包まれる。
霊奈も椛を法陣から出さんと裾を持ち、自分の符に巻き込まれた。
数秒間、封魔陣の効力は続いた。
やがて、段々威力は弱まっていき、光が消えていく。
そこには、二人ともまだ立っていたのだ。
「…まさか、自らを犠牲にして、敵も道連れとは、予想外でした」
椛は苦し紛れに喋り出す。
「……」
霊奈は何も言わずに、拳だけ振りかぶり。
思いっ切り椛の顔面へと強く殴りつけた。
椛は勢いよく数メートルまで飛んでいった。
霊奈は椛が飛んでいったところまで近寄った。
「何時から…あの苦無を…投げたんですか…」
椛の目線は地面に刺さった四本の苦無だった。
今にも、意識が遠退きそうになりながらも、法陣の謎を聞いてきた。
「あれは、貴方が上空からの苦無を弾く前に、同時に空中で浮かせていたのよ。一本は囮、そして私自身も」
「魔力や霊力の…気配すら感じなかった。一体…どうやって…」
「まだ言ってなかったわね。私の能力」
霊奈は裾から一本の苦無を取り出し、静かに浮かし始めた。
「これが私の能力『物を浮かせる程度の能力』対象が『物』なら限りあるものならなんでも浮かしたり、移動させたり、飛ばすこともできる。こうやってね」
浮いていた苦無は、勢いよく飛んでいき、そのまま近くの木に刺さった。
「それにしても、我ながら無茶な戦い方をするわね。自らを犠牲に敵を叩く。肉を斬らせて骨を断つ、と言ったところかしら。あれ?意味間違ってる?」
「貴方は、博麗の巫女と同じように…規格外…ですね」
心外ね。
私は霊夢よりちょっと無茶なことするだけよ。
「やはり、私は正しかった。貴方は、つよ…い…」
椛はさすがに意識の限界か、力なく倒れていった。
「しばらくそこで寝ていなさい。私の用が終わったら、また会いに来るわ。椛」
霊奈はどこか、椛に敬意を払うように名前で呼んだ。
天狗の誇りとしての敬意なのか、それとも一人、一妖怪としての敬意なのか。
それは霊奈本人ですらわからなかった。
「さて、そろそろ神社かしらね。私の勘がそう言っているから」
いよいよ今回の目的地、守矢神社。
やっと神様のご対面である。
霊奈はこれ以上厄介事に巻き込まれたくないと、早足で山頂へと急いで行った。
どうもです。
やっぱり私には戦闘シーンの描写には限界があるみたいです。
みじかっ!短すぎるよ!
こう思っている人も多々居るかもしれないんね。
ラノベ小説でも、これだけ苦労しても3~4ページ分と言ったところでしょうか。
えぇ~っと、それでは説明に入りますね。
まずは、博山霊奈が使ったとされる能力『物を浮かせる程度の能力』
これは浮かせた物ならば、移動や投擲も可能とします。
形を変えたりなどはできません。
ちなみに、人も浮かせたり移動などはできますが、操って飛ばすなんてことはできません。
そしたら、チート級になっちゃうじゃん?
それと『限りあるものならば』と言いましたが…
何でも浮かせれる訳じゃありません。
軽ければ軽いほど力の消費は少なく、重ければ重いほど力の消費が多いです。
人より重い物、車や建築物は無理だと思ってください。
タイトルに書かれていた⑨は、別にチルノが出るわけではありません。
なんかすいませんでした。
■と伏せていた人物、それは一体何者なのか…
某鴉天狗と椛の上司。
だいたいの人がすでに予想しているかもしれません。
次はいよいよ、守矢神社へ。
また長々と更新が遅れてしまいますが、次回も見てくださると嬉しい限りです。