東方博麗記   作:zye医師

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第十話 風祝再び、異変の終わり

やっと、見えたわね。

霊奈は大きな鳥居を見上げていた。

鳥居を抜けたところには、かなり遠いところまで、石段が見えていた。

 

「ん?」

 

霊奈は石段をよく覗いて見た。

そこには見覚えのある人が倒れていた。

 

「あら?貴方は確か…」

 

緑色の長い髪、青と白の巫女服をアレンジした装束。

東風谷早苗である。

様子を見てみると、気絶していた。

 

「しまったわね。先に霊夢が上に登っちゃったかしら?」

 

一戦始まる前に話しておきたかったけど、この子の様子を見る限りでは、霊夢が勝って、そのまま本殿に行ったというところかしら。

とりあえず、この子をどうしようか。

起こしてあげて、本殿まで行ったほうがいいのか。

そのまま気絶している状態で、本殿まで背負って行ったほうがいいのか。

 

「私は…」

 

霊奈が悩んでいる中に、早苗は目を覚ました。

 

「あ、目が覚めた?」

 

霊奈は早苗の顔を覗いた。

 

「あ!?霊夢さん!」

 

早苗は急に体を起こし、立ち上がった。

その前に、何時からさん付けされるようになったのかしら?霊夢。

 

「私は、まだ負けてはいません!!」

 

どうやら、また私が霊夢だと勘違いしているわね。

何度目かしら?

 

「はぁ…残念だけど、貴方の負けよ」

 

勘違いされたことの溜息混じりに、早苗の負けたことを告げた。

 

「スペルカードルール。その一、手持ちのカードが全て破られたら負けを認めなければいけない。気絶や戦闘不能も含むわ」

 

幻想郷の決闘法。スペルカードルール、通称弾幕ごっこ。

この決闘は博麗の巫女が決めたルールが記されている。

霊奈はその一つを上げた。

 

「貴方が負けてないと思っても、これがルールよ。でも、勝者は敗者の再戦を積極的に受けなければいけないんだったわね」

 

「それじゃ、私ともう一度「でも駄目よ」え?」

 

早苗は再戦を申し込もうとしたが、霊奈が途中でその言葉を遮った。

 

「私は、霊夢ではないからよ」

 

早苗はどういうことなのかわかなかった。

顔がほぼ同じに見えるのに、違うと言われたからだ。

 

「私は博山霊奈。霊夢はすでに貴方を倒した後、そのまま神社の方へ向かったと思うわ」

 

私がそう言い、早苗は後ろを振り向き、神社の方向を見る。

神社の本殿からは、弾幕の光が此処までちらついて見えていた。

 

「神奈子様!」

 

早苗は本殿へと石段を登り始めた。

 

「待ちなさい」

 

私は早苗の腕を掴み、足を止めた。

 

「離してください!私は神奈子様に加勢しにいくんです」

 

「行ったところで、貴方は邪魔者になるだけ。大人しく此処に居なさい」

 

私は早苗の腕から力が抜けていくのを感じ、早苗の腕を離した。

 

「心配しなくても、誰かが死ぬようなことはないから安心しなさい。そういうための弾幕ごっこなのだから」

 

「でも…神奈子様が負けたなんて知られたら…信仰が…」

 

早苗はそのまま座り込み、顔を下へと向ける。

前も同じように言ったけれど、信仰が無くなれば、神力が薄れていき、やがては存在が消えてしまう。

早苗は恐らく、その神様が巫女なんかに負けたなんて人や妖怪に知られて、信仰が無くなってしまうと考えたのだろう。

 

「なぁに、沈んだ顔してるの。貴方の顔、神様が見たらどんなこと思うだろうね」

 

早苗は顔が上がり、私の方に視線を向ける。

 

「そんな顔で会ってみなさい。貴方の神様は少しも喜ばないわよ!!」

 

「でも、私は…」

 

「でもも何もないわ!…笑ってあげなさい。貴方が笑ってくれれば、神様も一緒に微笑んでくれる」

 

私はそう言って、早苗に手を差し伸べた。

早苗は私の手を掴み、私は早苗を引っ張り、立ち上がらせる。

 

「霊夢さん、ありがとうございます」

 

「私は感謝されるようなことはしてないわ。それと、私は霊奈よ」

 

「あ、すいません霊奈さん。霊夢さんに似てて…つい……」

 

もうしょうがないと思っているけど、堂々と間違えられるのは少々傷付く。

私は早苗とこうしているうちに、本殿から光が止んでいたことに気付いた。

 

「どうやら、終わったみたいね」

 

私がそう言うと、早苗は後ろを振り向き、本殿の方向を見る。

 

「それじゃ、私達も行きましょう」

 

「は、はい!」

 

私は早苗よりも先に、階段を上り始める。

早苗は私の横には並ばず、一歩ずらしながら階段を上った。

早苗が体を少しだけ震えているのに、気付いた。

やっぱり、まだ不安が残っているようだったが、そっとしておくことにした。

 

 

 

________________________________________________________

 

 

 

「これはまた、派手に暴れたわね」

 

私は神社周辺を見回す。

建物が破損している部分が、所々見られる。

そして、青色の短い髪の女性が倒れていた。

 

「あれ?あんた来てたの?」

 

「もう、異変解決かしら?」

 

「とっくに終わってるわよ、あんたこそ何しに来たわけ?」

 

「神様に興味があって来ただけよ」

 

「…あんたも紫みたいに胡散臭いわね」

 

失礼ね。

私はスキマ妖怪ほど胡散臭くはないわよ。

 

「いたたっ…もう少し手加減してくれないかね?」

 

青色の短い髪の女性は立ち上がり、霊夢に向かって言った。

 

「手加減無用とか言ったのはどこの誰?」

 

「うっ…確かにあたしが言ったけれどもさ」

 

「じゃあいいじゃない」

 

「手加減無用って言っても私は手加減していたんだぞ!」

 

「言い訳かしら?見苦しいわね」

 

「うるさい!この腋巫女が!」

 

「なっ!?あんた、腋巫女ってどういうことよ!」

 

「お前のような腋を露出している奴のことだ!」

 

「年食った神様に言われたくない!」

 

「遠回しにあたしをおばさん呼ばわりしてるのかい!?」

 

霊夢と神奈子は口喧嘩をし始めた。

神様でも、人と同じように往生際が悪いらしい。

私はこのまま二人の言い争いを見ているのもいいと思ったが、さすがに止めることにした。

 

「はいはい、喧嘩は後でやってちょうだい」

 

「邪魔しないでちょうだい!」

 

「そうだ、今はこの貧乏巫女と話し合っているところなんだ」

 

「誰が貧乏巫女ですって!」

 

私は二人がまた喧嘩し始めてしまうので、二人の頭に拳骨を落とす。

二人は頭を抑えて、体が縮こまっている。

 

「喧嘩なら後でいくらでもやってもいいけど、今は大人しくしてなさい」

 

「「はい…」」

 

「それで神様、八坂神奈子だったかしら?貴方に謝りたい人がいるらしいわ」

 

「ん?誰のことだ?」

 

私は後ろを振り向く、神奈子は私の見る方向へと覗く。

そこには、守矢神社の風祝、東風谷早苗が居た。

 

「早苗…」

 

「神奈子様、申し訳ありません」

 

早苗が神奈子に向けて、深く頭を下げる。

 

「どうして、早苗が謝るんだい?」

 

「だって、私が博麗神社に行って、霊夢さんに喧嘩を吹き掛けなければ、神奈子様が負けるようなことには…」

 

「別に、早苗のせいじゃないよ。あたしが負けたのは、ただ普通に実力で負けただけなんだ」

 

「それに貴方が神社に喧嘩を吹き掛けなくても、遅かれ早かれ結末はこうなっていたわ」

 

「どういうことですか?」

 

早苗は私が言ったことに、疑問を持った。

 

「今回は、早苗が博麗神社に宣戦布告したことで異変が始まったけれど、貴方達が山で静かに信仰が集めていても、噂が広がり、それを聞いた霊夢は結局貴方達の所に来ていたわ」

 

「つまり、どの道退治されるのは必然的ってことか」

 

私の説明に、神奈子が納得したようだった。

 

「それに、信仰は減ることはないでしょう」

 

「なぜですか?」

 

早苗は疑問を持ち始める。

 

「幻想郷の大半の人が『博麗の巫女なら仕方ない』と思っているからじゃない?」

 

「ちょっと!それどういう意味よ!!」

 

「貴方の日頃の行いのせいじゃないかしら?賽銭寄越せとか」

 

霊夢本人が歴代の博麗で一番の実力を持っているというのもあるんだろうけどね。

 

「は、はぁ…それならいいのですが…」

 

早苗はぎこちなく答えた。

最初は誰だって、そんなことで大丈夫なのか?と心配するけれどもね。

幻想郷に慣れたら、考え方が自然に変わってしまう。

私はそんなことを思いながら、歩き始めた。

歩いた先は、八坂神奈子の目の前で止まった。

 

「さてと、神様。いちおう幻想郷の仕来りとして、やっておくことがあるのだけれど、いいかしら?」

 

「何だ?」

 

「まあ、始めたほうが手っ取り早いのだけどね」

 

「あたしは此処のことはよくわからないから、あんたに任せるよ」

 

私はわかりましたと了承し、深呼吸をしてから発声する。

 

「では、八坂神奈子。貴方様は此度、異変を起こしました。貴方様の起こした異変は、周りに大きく影響されます。よって、幻想郷に移住するための条件をいくつか設けます」

 

私は普段使わない敬語で喋った。

私も神奈子も、真剣な表情だった。

 

「一つ、貴方様の信仰する領域内として、人里及びこの妖怪の山のみと制限すること。

 二つ、信仰はできる限り人のみ、脅迫や強制はしないこと。

 以上の条件を呑めない場合は、幻想郷から立ち去ってもらいます」

 

仕来りといっても、何も厳しい罰則を付ける訳でもなく、ただ簡単な条件だ。

 

「わかった。条件を呑むよ」

 

神奈子は了承した。

 

「ありがとうございます。それでは改めまして、ようこそ、幻想郷へ」

 

幻想郷の住人は、外来人に対して、ちょっとした決まった言葉がある。

私はそれを真似てみたのだ。

 

「ふわぁ~…終わったの?」

 

あくびを掻いた霊夢が眠そうに私を訪ねてきた。

寝ていたのだろうか?それとも疲れたのだろうか?

とりあえず考えているよりも、霊夢に話しかけた。

 

「ええ、これで異変解決よ」

 

「そう。それじゃ、宴会の時間よ!」

 

唐突に霊夢は宣言した。

神奈子と早苗は口を開いて、唖然としていた。

早苗に簡潔に説明する。

 

「早苗。異変解決の後は皆、宴会って決まってるらしいわ」

 

「そうなんですか?」

 

「あ、場所は此処でやるからね。酒の用意よろしくね」

 

「霊夢さん!勝手に決めないで…あぁ、もう…」

 

勝手な霊夢はそのまま空へと飛び去っていく、早苗は全く話を聞かない霊夢に呆れてしまった。

 

「天狗も来ると思うから。大勢になるわよ」

 

「はぁ……」

 

早苗は溜息を吐いた。

私はそんな早苗に、肩をポンッと叩いた後に、こう言った。

 

「大丈夫よ。私も手伝ってあげるから、一緒に頑張りましょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

私は早苗に感謝された。

 

 

神社を丸ごと妖怪の山に移住させた神様、軍神・八坂神奈子は幻想郷で信仰を集めていた。

しかし、その神社を務める風祝・東風谷早苗が、博麗神社を亡き物にしようと宣戦布告。

博麗の巫女はこれに対して異変と考え、妖怪の山へと向かう。

博麗は、神様、天狗、神。立ちはだかる者を難無く退治する。

やがてはこの騒動の首謀者、八坂神奈子を退治した。

八坂神奈子は、騒動を起こしたことによって、人間や妖怪の中に不満を持つ者が現れるため、条件を設けられた。

条件の承諾と共に、守矢神社と八坂神奈子、東風谷早苗、他一名の幻想郷妖怪の山への移住を許可した。

正確には異変ではないため、一つの騒動という認識と捉えられる。

なお、これは表向きの記載として記されている。

 

 

~幻想博麗記~

 

 

「とりあえず、ここまでかしらね」

 

私はその本に書き終わり、本を閉じた。

あの後、一度博麗神社に戻り、夜は普通に夕飯、風呂、就寝するだけだった。

その翌日に、私はこの騒動を日記に記そうと考え、書いたのだ。

廊下から、歩く音が聞こえた。

私は障子を方を見る。

 

「失礼します。博山霊奈さん、上司の命により貴方様をお迎えするよう言われました」

 

障子の向こう側に、見覚えのある声と、見覚えのある姿があった。

障子を開けて入ってきたのは、白狼天狗の犬走椛だった。

 

「わざわざお迎えとはね。それじゃ、待たせるのもいけないから。早く行きましょうか」

 

私は椛の後について行き、空へと飛び去った。




約一ヶ月ほど長くなってしまいました。
すいませんでした。

今回は、再び早苗とガンキャ…ゴホン、神奈子の登場でした。
主役と早苗の会話が何とも、説教臭い感じになってしまいました。
あれ?主人公こんなんだったっけ?みたいに疑問を抱きました。
そして相変わらずの人違いです。
神奈子には、というよりも守矢に対して、条件付きの移住という形になりました。
もっと良い条件があったんじゃないかと思ったのですが、深く考えるとより複雑になりのでやめておきました。

次回は宴会話とオリキャラを出す予定です。
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