史上最強の弟子達 双子の凡人   作:daiya

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第五話 二人の信念

兼一と信一の二人の危険への感がサイレンを鳴らしている

 

“やばい、やばいよ兼一。危険なにおいがプンプンするよ~”

 

兼一はイジメられっ子の感を

 

“こ、怖~!!なんか目茶苦茶強かった道場の先生に稽古つけてもらう直前みたいな感じがするんだけど!?”

 

信一は剣道の先生に稽古をつけてもらう時の経験から危険への信号をキャッチしていた。

 

「さてと、私・・・お茶を入れてまいりますわ~」

 

“ちょ、置いていかないで~!”

 

とんでもないところを紹介してしまって気まずくなったのか美羽は二人を置いてその場を後にしてしまった。

 

「美羽の奴、押しつけるだけ押し付けて逃げたぞ」

 

「まるで、クモの巣にはまった蝶を助けようとしたらもっと大変なことになってしまった時の子供のような行動じゃのう」

 

「クスクス、その表現ナイスね♪」

 

「で、この蝶々たちをどうするかね諸君?」

 

双子は並んで正座をし、がたがたと震えている、美羽の行動と双子の反応を見てどこか楽しげに話している達人たち、この二人の処遇を話合おうしようとしたとき長老が止める

 

「まぁ、それは本人に聞こうではないか。覚悟があってきたのだろうから・・・」

 

その言葉を聞き、はっとする兼一。信一はそんな弟をこの人たちの前に立ってなお引かないのかじっと見る。

 

まるでここが引ける最後の瞬間だと言わんばかりに少しの静寂が漂う。

 

そして長老が口を開き最終確認を取る。

 

「・・・改めて聞こう、白浜兼一君。入門するかね?我らが梁山泊に!!」

 

兼一は少し間を開け

 

「強く、強くなれるなら!!」

 

入門すると宣言する。その顔を見て信一はもう何も言わないという顔をし、長老はいい顔じゃ、というように笑顔を浮かべた。

 

「じゃ、この巻物に住所と名前を書いてね」

 

もう逃がさないとばかりに剣星が入門書?を書かせる

 

「じゃあ、月謝は二万円ね」

 

「「ええっ!?高!!」」

 

書き終わった兼一に、月謝を取ろうとする剣星。

しかし法外な値段に驚く二人

 

「ちょ、自分が子供の頃に行ってた剣道道場は3500円くらいでしたよ!」

 

「じゃあ、一万円くらいでいいね」

 

実はいつも財政の厳しい梁山泊、ここで貴重な収入源を逃してたまるかと一万円も落としてきた。だがそれでも微妙な顔をする双子を見て、無いよりましかと思ったのか

 

「・・・五千円でいいね」

 

と一気に安くなり

“いきなり四分の一になったよ、ほんとに大丈夫かここ?”

 

と二人そろって思ってしまった。

 

「はしたないぞ剣星!」

 

そんな一連の場面を見て注意する秋雨、彼としては月謝なんてとる気はなかったのだろう

 

「まあまあ、秋雨君」

 

だが、そんな秋雨を会長は止め、梁山泊が貧窮を極めていて美羽がよくやりくりしていることを説明する。

 

その話を聞き兼一はちょっとでも美羽の助けにならなければと思い改めて入門を決意した。

 

ちょうど話が一区切りしたところで美羽がお茶を入れて戻ってきた

 

「それで兼一さんは何の武術を習いたいんですの?」

 

お茶を配り終えた美羽は兼一が何を習いたいのか聞いてきた

 

「う~ん、できれば思い入れがある空手がいいんですけど」

 

やはり初めて手を付けたからか空手がいいとこぼす兼一、しかし当の空手の担当者は

 

「俺は弟子は取らねえ主義だ!」

 

と変に迫力を出して拒否、どうしようかと悩んでいるとしぐれがボソッとつぶやく

 

「ボク・・・秋雨が教えたらいいと・・・思う」

 

「おいおい私かね?」

 

突然のしぐれの推薦に軽く困惑する秋雨、しかし、しぐれの他にも推薦者いる

 

「そうですね、私も岬越寺さんがいいと思います。教えるのに慣れていますし」

 

「そうじゃの、わしもそう思うわい」

「それに、ほかの者じゃと冗談抜きに殺してしまうかもしれんしの」ボソっ

 

桜花と長老の二人も秋雨が教えることに賛成のようだ

だが長老がつぶやいた言葉は兼一並びにほかの者にも聞こえており、兼一は脅え、何人かは目をそらす。

 

「み、美羽さん~、兄さん~」

 

脅えている兼一は思わず二人に縋り付く

 

「大丈夫、岬越寺さんは比較的常識的な方ですから」

 

「美羽ちゃんがこういっているんだし大丈夫だろ、小さくつぶやいたことがなんか気になるけど、しっかりしなよ兼一」

 

大丈夫だと元気づける美羽、しっかりしろと背中を押す信一そんな二人の後ろから秋雨が顔を出し、兼一に質問する

 

「一応聞くが、君は全くの武術素人かね?」

 

「は、はい!!どうしても強くならないと先輩に殺されちゃうんです・・・」

 

兼一の答えを聞き、ここに来た理由を察する秋雨

 

「なる程、そういうことか。わかるよ私も昔いじめられていたからねえ」

 

「ええ!?本当ですか!」

 

半信半疑な兼一をほんとだよというように微笑む秋雨

 

「柔術は身を守るのにとても有効だ、大丈夫、私はそんなに厳しい方じゃないから」

 

その言葉を聞き安心する兼一、この人なら大丈夫そうだと思っている。だが信一は、

 

“う~ん、確かに任せても大丈夫そうだけど。厳しくないと自分で言う人ほど大抵はかなり厳しいんだよな~経験的に”

 

任せられるがどこか安心できないと思っているのだった。

 

 

 

 

「さて、とりあえずは大丈夫そうだから俺はもう帰るよ」

 

「あら?あなたは入門しないですか?」

 

梁山泊に兼一を預けても大丈夫だと思った信一は、ここでお暇しようと立ったところ桜花に話しかけられた

 

「え、ええ自分は弟の付き添いで来ただけですから」

 

長老に言ったことと同じことを言う信一

 

「あら、そうでしたの。てっきりあなたの方はしぐれに師事するのかと思いましたわ」

 

桜花のその言葉に疑問を持つ

 

「なぜ、武器を使う人に教わると思うんですか?」

 

そう、なぜ武器使いに教わると確信しているんのかということだった、長老以外には剣道をしていたことを言っていないのに、だ。

 

その疑問を聞いた梁山泊の豪傑たちは全員不思議な顔をし皆を代表して秋雨が言った

 

 

「おや?君は剣を使うんじゃないのかい?」

 

うんうん、と頷く豪傑たち

 

 

「いや、まぁ剣道をしていましたけど。というか長老さんもですけどなんでわかるんですか?」

 

自分が剣道をしていたこと打ち明け、どうして何をしていたのかがわかるのか聞く信一、その疑問に秋雨は

 

「ああ、やっぱり剣道か道理で刀を振っているのとは少し違う筋肉の着き方をしていると思ったよ。」

 

「なぜわかったのかという、と。

筋肉の着き方を見れば、一目瞭然。

あと手に剣ダコが出来て、る。

よく見れば誰でもわかること、だ」

 

“いや誰でもは分かんないでしょ”

 

予想通りという秋雨、そしてそれに続いてしぐれが信一の疑問に答える。長老と同じく筋肉を見ただけでわかることに驚きながらも、だれでもわかるという言葉に心の中で突っ込みを入れる信一

 

「でも残念ね~しぐれ、弟子ができるかもってちょっと期待したでしょう?」

 

「・・・・・・べつ、に」

 

桜花がしぐれを茶化す。確かにそこはかとなくしぐれは残念そうにしている

 

そんなしぐれを見てなんだか罪悪感に駆られる信一

 

「その~すいません。なんか期待させたみたいで」

 

罪悪感から思わず謝罪してしまう信一

 

「ああ、気にしないでいいですよぉ、こっちが勝手に勘違いしてしまっただけですから、ですけど、もし何かあったら遠慮なく来てくださいね」

 

その言葉を聞き、まるでまた自分が来ることを確信したような物言いに疑問を持ったがもういいかと思い、今度こそ帰ろうとする信一、障子を開け兼一に頑張れよといい廊下に出て、玄関に行き、門を出ようとした

 

「まちなさい」

 

だが後ろから声をかけられる

 

信一が振り向くと、そこには長老がいた

 

「何か、悩んでいるようじゃの」

 

・・・・・

 

信一は沈黙する

 

そんな信一を見て、何も話さないと思ったのか長老は一方的に話し出す

 

「人間だれしも悩むことはある、わしだってそうじゃし、まだ若い信一君なら悩みの無い日の方が少ないじゃろう。じゃが、そこで足を止めたらいかん、前に出れる機会に巡り合えたなら前に進んだ方がええぞい」

 

その言葉を聞き信一は長老に聞き返す

 

「今がその前に出れる機会だというんですか?」

 

「どうかのぉ、わしは神様じゃないからの~、ただまぁ長生きしてきたじじいのあどばいすじゃと思ってくれ」

 

「なんかはぐらかされてる気がしますが、ご助言ありがとうございます。改めて兼一をよろしくお願いします」

 

「うむ、またいつでも来なさい」

 

そう言って梁山泊を後にする信一を長老は見送った。

 

 

 

その日から兼一はボロボロになって帰ってきた。

ただ、空手部の時みたいに暗鬱な感じではなかったので信一は特に気にしないことにする。

 

数日後、いよいよ筑波先輩が本格的に兼一を探し始めたらしい、それに合わせて兼一がより一層ボロボロになって帰ってくるようになった。

 

あまりにもボロボロなのでとうとう両親が兼一を呼び出しその道場がまともなのか聞いてくる。当然、兼一はまともじゃないと答えたがまともじゃ間に合わないと言い、特に詳しく説明はせず席を立つ。

 

兼一が去った後、道場の方に行ったことのある信一にどんなとこか聞くことにした両親、信一は初日以外行っていないからどんなことをしているのかは解らないと答えたが、教えている人たちは悪い人じゃなさそうだったと言い説得する。

最終的には母が父に今まで何をやってもすぐに逃げ出してきた兼一が今戦おうしているから見守ってあげましょうと援護してくれて、父には納得してもらうことができた。

 

 

 

放課後

部活に行こうと教室を出る

 

「信一~」

 

例のごとく宇宙人が来た

 

「なんだ、宇宙人。せっかく今から楽しい部活に行こうとしてたのに」

 

「そういうなよ、それよりもとうとう兼一が筑波に捕まったぞ」

 

「なんだと!?」

 

とうとう捕まったと聞き驚く信一

 

「今どこに居るんだ!?」

 

急いで駆けつけようと場所を聞き出そうと新島の襟元を掴み前後に揺らす

 

「校舎裏に連れて行かれたらしいぜ」

 

場所がわかり新島から手を放し走り出す信一

 

「ちょっとまちな」

 

走り始めた信一を新島は呼び止めた

 

「急いでいるんだよ、また後でね」

 

無視して行こうとする信一

 

「だから待てって、お前丸腰でどうするんだよ」

 

そう言われて気がついた、自分は竹刀は持っていないと

 

「・・・す、素手で何とかするさ!」

 

明らかに強がっている信一

 

「竹刀持ってても勝てないだろう相手に経験の無い素手で何とかできるわけないだろうが」

 

「うっ」

 

図星を刺される、どうしようと悩み始めた信一に新島は何かを投げつけた

 

「たく、ほれこれでちったぁマシだろうよ」

 

新島が投げつけてきたものそれは竹刀だった

 

「これは」

 

「剣道部からパクって来た、まぁそれでも負けるだろうがせいぜいやられて来い」

 

ありがたがったがなんだか気味が悪くなった信一

 

「どうした、いやに親切じゃないか気持ち悪い」

 

「ひゃははは!喧嘩系の記事は人気だからな。武器を持った相手に勝ったって書きゃそれなりに新聞が刷れるんだよ!というわけで盛大に負けて来い」

 

やはり裏があった、まぁ確かに負けるだろうが人から言われるのはムカついたので一発拳骨してさっさと走り出した

 

 

 

校舎裏

 

曲がり角をまがって信一が校舎裏に着いたときに兼一が筑波に腹を蹴られているのが目に入った

 

「うぐぇぇぇぇ~、ぐ、ぐぇぇ」

 

よほどきれいに入ったのか腹と口を押さえてのたうちながら吐き気を抑えている

 

期待してた兼一がまるで素人だったのが気に入らなかった筑波は近できさらに追い打ちをしようとしていた

 

だが信一がそんなことさせまいと駆け出す

 

「兼一!!」

 

突然聞こえた声に足を止めた筑波、信一はそんな筑波を気にせず兼一の元に駆け寄る

 

「大丈夫か!?兼一」

 

「に、兄さん?なんで」

 

「なんではこっちのセリフだなんで逃げないんだよ!今はまだ勝ち目なんてないのは分かってただろ!?」

 

兼一に駆け寄りなぜ逃げなかったか問う

 

「・・・あの人は僕をフヌケって言ったんだ」

 

「兼一?」

 

「それを訂正させたくて、僕はもうフヌケじゃないって、その言葉からもう逃げたくなかったから、だから!!」

 

目に涙を溜めながら自分の心の内を語った兼一

 

「・・・そうか、そうかぁ。よく、頑張ったな、お前は確かにもうフヌケじゃないよ」

 

兼一が逃げなかったことを認め、ほめる信一

 

「でも、ここからは俺がやる」

 

そして、信一は筑波の方を向く

 

「ダメだ兄さん!」

 

兄を止めようと動こうとする兼一、だがいまだにダメージが抜けきらないから動けなかった。

 

「おめぇは誰だよ、いきなり横入りしやがって」

 

ただでさえ兼一が期待外れだったためイラついていた筑波はさらに邪魔されて余計に頭に来ていた。

 

「白浜 兼一の兄だ」

 

一応、問われたことに答える信一。そして竹刀を中段に構える

 

「は、なんだよそこのフヌケの兄貴か。じゃあ全然期待できねぇじゃねえか!!」

 

さっきまで自分がボコっていた者の兄だと知り、全然期待できないとさらに怒りだす筑波

 

「なんだぁ?竹刀なんてもって、いつもの鉄パイプとと違ってそんな棒切れ当たったって痛くもなんともねぇ!本気で俺とやるって言うんなら覚悟はいいんだろうな!!」

 

そういって筑波は構えた、半身になり両手はまるでボクシングの構えのようにして、足は肩幅と同じくらい開き左足を前に右足を後ろにしてピョンピョンとスッテプを踏んでいる

 

「見たところ剣道をしているみたいだな、だがんなもん珍しくぇ。いつも遣り合っている連中のなかにも五万といるぜ!」

 

そういって掻い潜り攻撃を繰り出そうとする筑波、だがそれなりに距離があったため信一は竹刀の先端を素早く筑波の喉に向ける。前に出ようとしたところに竹刀があるため攻撃せず筑波は踏みとどまる

 

「そいつらは間合いってもんを分かってないだけじゃないですか?剣道をしている人は普通はこういう風に牽制できるんですよ」

 

武器を持っている者が無手の者と戦う時の最大の利点それは間合いの違いだ。

武器というのは強力だ。それは威力の事だけを指しているんじゃない、攻撃範囲も驚異の一つ、いやむしろ攻撃範囲こそが武器を持つものと戦う時に一番に気お付けないといけないことなのだ。自分の攻撃が届く前に攻撃されるのだからたまったものではない

 

「ちっ、ちょっとは出来るみたいだな!」

 

今の攻防で少しは出来る奴と認識した筑波、ちょっとは警戒させれたかと思った信一。

しかしこの心の隙が命取りだった、武器使いとして一番に気お付けないといけないことは武器を持っていることに対する安心感だ。その安心感が慢心になり隙を生む

 

ここで信一の経験の無さが出てきた。

 

この間合いを保っている限り大丈夫だと、安心してしまったのだ

 

「だが、言っただろう!お前ぇみたいなやつとも遣り合って来たってな!!」

 

そういうと筑波は竹刀を思いっきり下から蹴りあげた

安心していたところにバットを折る蹴りを受け竹刀が跳ね上げられた。

 

小学生のころに行っていた道場の先生からの言いつけから絶対に竹刀を手放さないようにしていたので、かろうじて竹刀は持ったままだが腕ごと跳ね上げられているため体はがら空き、保とうとしていた間合いは崩れた

 

その瞬間を見逃すわけはなく、筑波は懐に入り込み中段突きを放った。

頭一つ分の身長差があったため筑波にとっては中段突きでもちょうど信一の顔が胸のあたりにあるため筑波の拳は信一の顔面に突き刺さる

 

ばきゃあ!

 

“はや、重!!”

 

今まで受けたことのない痛みに衝撃

去年の冬の奴とは違う、鍛錬された拳、本当に喧嘩慣れしている拳

その威力に一発で心が折れそうになる

 

だが、後ろにはボロボロの兼一がいる。

逃げなかった弟がいる。

双子の弟が逃げなかったのに自分が逃げてたまるかという対抗意識と、そして大切なモノをこれ以上傷つけさせてたまるかという気持ちがわき出てくる。

 

信一は何とか吹き飛ばされず踏ん張り、上がっていた腕を振り下ろす

 

「なに!?」

 

吹き飛ぶものかと思っていた筑波は、その攻撃に虚を突かれた。

だが素早く横に跳び回避する

 

「ふん、今ので吹き飛ばなかったのはほめてやる、だがもうフラフラのようだな」

 

筑波の言うとおり、信一の意識は今の一撃で朦朧としている

 

ここでも信一の経験の無さが出た

実は兼一もまともに顔面に突きをもらっていたのだが信一ほどダメージは受けていなかった

 

なんだかんだで兼一は殴られ慣れていたので無意識に体を引きダメージを少し減らしていたのだ。しかし信一は衝撃には慣れているが直接殴られる経験は全然ない、その結果が今出てきた

 

“ちくしょう、たった一発で意識が朦朧としてきた”

 

だけど

 

“まだ、まだやれる!今倒れたらまた兼一がおそわれる!”

 

兼一を思う一心で意識を何とか意識を引き戻した、だがやはりダメージは甚大

 

だから

 

“あの冬の日みたいに次の一撃にすべてをかける”

 

中段の構えから上段の構えに変える

 

「ふん、一撃に全力を込めるってか無駄だ!!」

 

また構えステップを踏む筑波

すぐにでも前に出ようとしたが踏みとどまる

 

あの日と同じ信一は今、持ちうる限りの気合で迎え撃とうとしている

その雰囲気を感じ取ったため筑波は踏みとどまったのだ

 

「ほう、いい感じじゃねぇか」

 

「だが、このくらいはいつもこのくらいの気迫はいつも感じてるんだよ!!」

 

信一の全力も対して意に介さない筑波

前に出てくる、そして信一の間合いに入った

 

“今だ!!”

 

信一は振り下ろす、あの日と同じ乾坤一擲の一撃を繰り出す

 

そして竹刀が筑波の頭に当たった

 

信一の感覚としてはあの日と同じくらい会心の一振りだった

 

だが

 

「ふん、やっぱりこんなもんか」

 

筑波はぴんぴんしていた

 

“そ、んな”

 

会心の一撃を難なく耐えられ精神的にもダメージを負う信一

 

「言っただろうが、いつも鉄パイプを相手にしてんだよ俺は!いまさら竹刀なんてもんどうってことはねぇよ!!」

 

そういってまた信一の顔面に突きを繰り出す

 

この一撃で信一は完璧に意識を失った

 

だが、筑波は追い打ちをかける

 

「だが、まぁまぁな一発だっだぜ、そのお返しだ!!」

 

倒れている信一の腹を思いっきり蹴り、そのまま足蹴にする

 

しかし信一を完全に踏む前に兼一が筑波の足首を掴んだ

 

「もう勝負はついたでしょう!?これ以上兄さんに触るな!」

 

「また手前か、離せ!!」

 

筑波は兼一の顎を蹴る

 

「おごっ」

 

兼一は蹴り飛ばさた、顎に当たったことで脳が揺らされたのかもう立ち上がれなかった

 

「ちっ、雑魚どもが手間かけさせやがって」

 

筑波はそう言い、気が済んだのか立ち去った

 

 

 

そこそこ距離が離れたところで筑波は頭を抑えた

 

「く、今頃打たれたダメージがきやがった」

 

信一の一撃はダメージを与えてなかったわけではない、だが筑波もなんだかんだで打たれ馴れている。それも竹刀よりも固いもので

 

「まぁこの程度いつも喰らっているから気にすることじゃねぇか」

 

特に気にせずまあ歩き出そうとした

 

だが今度は足首に違和感を感じた、制服の裾を捲ってみると

 

「なんだぁこりゃあ!?」

 

そこには手形がついていた

 

「完全に内出血してやがる!?あのフヌケ野郎どんな筋力トレーニングをしやがった?」

 

こんなになる程の筋力が短期間で付くものかと驚愕し、兼一の顔を思い浮かべ

 

「明らかに素人の動きだったのにわけわかねぇ」

 

とつぶやきまた歩き出した

 

 

 

 

「はっ、ここは?」

 

信一は目を覚まし、当たりを見回す。

古臭いがどうやら病室らしい

 

「そうか、俺は・・・・負けたのか」

 

少し頭を整理して自分がどうなった思い出す。

 

“俺の全力の気合も意に返されず、渾身の一撃も通じず完敗か・・・”

 

ケンカでは初めてだが負けること自体は初めてではない、心の整理のつけ方は身に着けている

 

「は!?兼一、兼一は!?」

 

兼一がいないことに気がつき焦り出す、その時、帽子をかぶり中国服を着た者が入って来た

 

「ほ、どうやら目を覚ましたようね」

 

「あなたは、確か」

 

「おや、どうやら覚えてたようね。そう、兼ちゃんに中国拳法を教えている馬 剣星ね」

 

確かに覚えていた、だが信一は気になることがあった

 

「そうですかここは梁山泊でしたか・・・・・・あれ?兼一が教わっているのは確か柔術じゃありませんでしたっけ?」

 

「あれ?兼ちゃん言ってなかったのかね?」

 

「何をですか?」

 

「兼ちゃん柔術だけじゃなく、ムエタイと中国拳法も習い始めたね」

 

「・・・それ大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、出来なかったらそこまでね。強くならないわけじゃないし」

 

「はあ」

 

何か思うこともあるがとりあえず相槌を打つ信一、だが剣星の話はまだ続いていた

 

「それに」

 

「それに?」

 

「昔から、弟子は生かさず殺さずと言うしね」

 

何とも言えぬ雰囲気を醸し出し、何やら目が光っているように見えた

 

“ひぃぃぃ!?”

 

その雰囲気に信一は脅えるが

 

「そ、そうだ兼一はどこですか!?あいつは大丈夫なんですか!?」

 

と最初に聞きたかったことを思い出す

 

「落ち着くね、というか兼ちゃんよりも君の方が重体ね」

 

「じゃあ」

 

「うん、軽く手当をして今は母屋の方にいるね」

 

「そう、ですか」

 

兼一の無事を聞き安心する信一

 

「じゃあ、ちょっと体を見せてね。おいちゃんこう見えて医学の心得もあるからね」

 

「あ、はい」

 

そう言い信一の体を診る剣星

 

「うん、少し内臓にダメージがあったけどこれなら特に問題なさそうね」

 

「そうですか」

 

「でも、念には念を入れて薬を飲んでね」

 

と言われ出されたのは独特の香りのする粉薬だった

 

「これもしかして」

 

「そう、漢方ね。それもおいちゃん特性よく効くよ~その分かなり苦いけど」

 

そう言われ顔をゆがめながら飲む、その瞬間信一の顔が崩れ、涙も浮かべている。どうやら相当苦かったようだ。

 

「じゃあ、兼ちゃんのところに行くかね実際顔も見といた方がいいよね?」

 

「あ、はいお願いします」

 

 

剣星についていき病室を出て兼一のいる母屋に向かう信一

 

「ここね」

 

兼一のいる部屋に着き中に入ろうとしたが

 

「ん?ちょっと待つね、何やら取り込み中らしいね」

 

「え?」

 

剣星に止められる

 

「ちょっといけないけど、聞いてみるかね」

 

そういうと障子を少し開け中の声が聞こえるようにする

二人はなるべくばれないよう身をかがめる

 

中をよく見ていると、中央付近に秋雨と兼一が座っていた。確かに何やら真剣な雰囲気だ

それにほかのところではアパチャイと逆鬼が隠れる気もなく堂々と聞きに来ており、天井にはしぐれと桜花がいる

 

「で、君はどうしたい?そいつを同じ目に合わせてやりたいのかい?」

 

どうやら兼一の今後を話しているようだった

 

秋雨の問いに兼一は泣きながら答える

 

「僕は、間違っていることを間違ってるって言いたいだけなんです」

 

「でも、それを口に出すだけじゃ・・・何も変わらなくて」

 

「それにもう僕の所為で兄さんが傷つくのを見たくないんです!!僕の所為で剣道をやめる羽目になって、今回だって僕をかばったせいで兄さんが怪我をした!」

 

「自分が思ったことを実際にやろうとするには、兄さんをこれ以上傷つけないためには」

 

「力がいるんです!!力と勇気が!!」

 

「僕にはどちらもまるでないけれど・・・」

 

兼一の答えに達人たちは笑みを浮かべる、その笑みの意味はそれぞれ違うだろう

だが、これからすることは全員一致した

 

「よし!明日より技の稽古に入る!!」

 

今の兼一の心からの叫びに達人たちは認めたのだ正式な弟子にすると

 

“「信じる正義を貫くための力」か・・・まさか遙か昔わが師に言ったことが自分に返ってくるとはな!!”

 

秋雨が懐かしさに浸っている

 

他の者たちもどこか昔の自分と重なっているんだろう

 

そんな中、剣星の横にいた信一はその場にいない

 

 

 

信一は道場の方にいた

 

「こんなところに来て、どうしたんですか?」

 

道場の真ん中で突っ立ていた信一にいつの間にか桜花が来て話しかけてきた

 

「おおう!?ビックリした~急に後ろから話しかけないで下さいよ。ええ~っと」

 

話しかけられるとは思わなかったのか驚く信一、名前を思いだそうとしていると

 

「ああ、そういえばまともに名乗っていませんでしたね」

 

「わたし世戯 桜花と言います。桜花と呼んでくださいな」

 

桜花は軽く自己紹介をして話を戻す

 

「それでどうしたんですか、こんなところに来て安静にしてた方がいいですよ」

 

至極当然のことを言う桜花、しかし信一は何も答えない

 

「もしかして、気にしてますか兼一君を守れなかったことを」

 

「なんで・・・わかったんですか」

自分の心の内を言い当てられた信一

 

「なんとなくです。そういう顔をしてるな~って思っただけですよ」

 

その答えを聞き、隠し事は出来そうにないとどこか諦めて語り出す信一

 

「自分は子供の頃から剣道をしていたんですよ、始めた理由はよくいじめられていた兼一を守ろうと強くなりたかったからで、剣道を選んだのは自分は兼一と同じく恵まれた体格をしていないから武器を持ってたら何とか太刀打ちできるかなって考えたからなんですよ。まぁ才能はなかったから目立った成績は残せてないですけど」

 

「していたとは?」

 

「去年の冬、まぁ今日みたいに兼一が苛めれていたところに横入りして、竹刀で防具をつけてない人を殴っちゃったから剣道をやめたんです」

 

そこで疑問を持つ桜花

 

「もともと兼一君を守ろうと身に着けたモノなのになんでそれでやめたんですか?」

 

「結構ぐいぐいきますね、まぁ気にしませんけど」

 

「理由は簡単です。小学生のころ通っていた道場の先生に初めに習ったことが剣道家が防具をつけていない者を竹刀で殴るのは、剣道家として最低の行為だってことです。その言葉を聞いたとき理由もなくかっこいいって思ったんですよ。それで剣道をはじめるときに竹刀で人は殴らないと決めちゃったんです」

 

「今思うとおかしい話ですよねぇいじめられっ子から兼一を守るには殴らなきゃいけない時があるかもしれないのに自分から目的を忘れちゃっているんですから」

 

気がつけば先ほどの兼一の時みたく周りに達人たちがいる

 

「信一君は剣道が好きだったんですねぇ、真摯に向き合っていたから竹刀で人を殴った自分が許せなくて剣道を、正確には剣道家をやめたんですね」

 

その通りだった

 

「・・・はは、なんでもお見通しですねぇ。まぁそういうことです」

 

「あいつは自分の所為だと言っていたけど所詮は自分のエゴでやめたようなもんですよ」

 

「剣道家をやめてからも未練たらしく竹刀を振り続けました。高校でも兼一を守るため鍛えると理由をつけて」

 

「でも」

 

「でも?」

 

「今日、いやほんとはあの冬の日からわかってたんです。剣道じゃ兼一は守れないって、でも自分の今までやってきたことが無駄になるのが、剣道が役立たずと思うのが嫌で勝手に理由をつけて納得していたんです!」

 

信一が叫ぶ、心の中にため込んでいたものを吐き出すように

 

「剣道家をやめると言いながら、新しいモノに手を付けず結局、剣道しかやってなかった剣道家の自分を変えることから逃げていたんです俺は!!」

 

この間、梁山泊に来た時に心の奥底で悩んでいたのはこのことだったのだろう、桜花は納得する

 

「でも今日はあなたがいなかったら兼一君はもっと怪我をしていましたよ」

 

その言葉に感情的になっている信一は声を荒げて

 

「傷つけさせたくないんです!あの冬の日だって今日だってそうだ、俺がもっと強かったら、俺がいるから兼一に手を出そうなんて思わせないようにできていれば兼一を傷つくことがなかったかもしれないのに!!」

 

その言葉を聞き桜花は信一に問う

 

「タラればを話してもしょうが無いですよ、あなたは、今、何がしたいんですか?」

 

桜花は少し口調を強めて信一に問いかける

 

「一度断った手前、図々しいのは百も承知ですが。俺を、自分を弟子にしてください!!」

 

信一は弟子入りを申し込む、自分が変わるために

 

「私たちに教えを買うても、兼一君を守れる保証はありませんよ」

 

「それでも!ある人から足を止めなと、前に出れるチャンスがあるなら前に進めと、言われました。それに」

 

「それに?」

 

「今は力が欲しいんです!!大切な人を降り注ぐ暴力から守る力が!!!」

 

これが信一の本心なんだろう自分を変えるための一歩、それに力に対抗するための力が欲しいというのが

 

 

少しの静寂、信一の言葉に桜花は一瞬どこか懐かしいといった顔をし、まっすぐと信一の目を見る

 

「・・・・・・わかりました。今日よりあなたを弟子にします」

 

この言葉に喜ぶ信一

 

「ただし、しばらくはあなたの後ろにいるしぐれが教えることになります」

 

後ろ?と思い振り向く信一

 

「よろし、く」

 

そこには逆さになっている香坂しぐれがいた

 

「うおおおおおおおお!?」

「び、びっくりしたぁ!!今までの人生で一番びっくりしたぁ」

 

期待通りの反応だったのかどこかうれしそうなしぐれ

そんな二人を後に桜花は部屋を出た

 

他の達人たちはひと段落したところでもう解散している、弟の兼一同様これからが楽しみだと言わんばかりの顔をしながら

 

だが一人だけその場から離れずにいた者が居た、秋雨だ

 

秋雨は自分の前を通り過ぎる桜花に話しかける

 

「懐かしいセリフを聞きましたな」

 

「・・・・・・ええ」

 

「まさか、あいつ以外にあのセリフを言うものが出てこようとは」

 

「そう、ですねぇあんなくさいセリフを言うような人はあの人以外いないと思っていましたよ。そう私の夫以外は」

 

二人は昔を懐かしむ、かつての友が言っていたセリフを。夫が言っていたセリフを。

 

「「守りたいものを守れる力」かあいつの口癖であり、武術を始めたきっかけでしたな」

 

「・・・そう聞いてます」

 

懐かしんでいる桜花の邪魔をするのは無粋だと思いここから去る秋雨

 

「これからが楽しみになってきましたな」

 

「ええ、本当にそうですわねぇ」

 

最後に一言いい二人はこの場を後にした。

 

 




あとがき

出張で水曜日更新できんかった

ようやく信一も入門長かった
そして久々に戦ったと思ったら、敗北するし。まぁでもこのタイミング逃したら入門するタイミングがほかでは書けそうになかったので勘弁してください

さて感想の方で言われましたが
桜花のイメージとしてはセキレイという漫画の美哉というキャラクターを黒髪にした人をイメージしてください私服もこのキャラとほぼ一緒で構いません
ただ、戦闘服は世戯煌臥之助の格好(マフラー込)に赤色の薄い羽織を着ているということにしています。

信念の方も兼一と対して変わらないようなシチュですが

兼一の方は自分の正義を貫く
兼一の正義の中には大切なモノを守るというのも入っている
ただ信一の方はただ単純に大切な人は守るというだけ

この作品では兼一は広くて深く、信一は狭くてより深くで信念を貫くと思ってください
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