東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第九話 不羈奔放

彼の王は言った

 

 

 

鍛えあげて身につけた強大な力で弱者を思うようにあしらう時気持ちよくはないのか?優越感を感じないのか?……と

 

 

力ほど純粋で単純で美しい法律は無い、生物はすべからく弱肉強食、魔族も竜も皆そうだと

 

 

人間だけが気取った理屈をつけてそこに目を背けていると

 

 

 

これは力の有る者全てに当てはまる事

 

力を持てば誇示したくなるのだ

 

誰しもが通る道

 

 

王は人間だけと言うがそれは正解であり間違い

 

 

人間にも居るのだ

 

 

ただ己の欲のままに殺す狂人が

 

道徳感も無く、理屈など有る様で有りはしない魔物同然の人間も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷・とある森の中

 

「あー……肩身が狭い……」

 

愚痴るのは幻想郷に生きる普通の妖怪

 

「だな……人間襲ったらすぐ皇帝不死鳥が来るし本当に肩身が狭い……」

 

他の妖怪も愚痴る

 

「白蓮さんは俺達の味方だけど皇帝不死鳥に関しては強く出れないみたいだしなぁ……」

 

「俺達だって強くなったのにまるで敵わない……あれで元人間だって言うんだから笑えないよな」

 

「全くだ……それどころか頂点って……ありゃ真の化物だよ、人間を辞めて妖怪ですらいられない……可憐な少女でも中身は大魔王と変わんねぇよ」

 

妹紅に対する愚痴を言い合う数人の妖怪達

 

 

妹紅は生業を妖怪ハンターとしている

 

主に依頼を受けて妖怪を退治するが基本的には人間と妖怪、両方の味方である

 

しかし力の弱い人間は妖怪には大多数が敵わない

 

だから人間に害をなす妖怪から守る為に妖怪ハンターとして生きているのだ

 

その職種故に妖怪からは嫌われる傾向にあるのは仕方無い

 

 

 

「貴様等……」

 

 

 

突然談笑に新たな声が混じった

 

「こんな所で長々と何をやっている?」

 

問いながら現れたのはウェーブのかかった長髪の男

 

「なんだこいつ?」

 

突然現れた男を怪訝な顔で妖怪達は見つめた

 

「こいつ人間だな……お前には関係無いだろ!食われない内に消えろ!」

 

男は人間だった

 

ただならぬ雰囲気を持つが間違いなく人間

 

襲えばまた妹紅がうるさいから見逃す事にした妖怪達

 

 

「鼠の様に逃げ出すか……」

 

 

だが男は意に介さなかった

 

 

「この場で死ぬかぁ!」

 

 

得物である斧を構える

 

 

 

「どぉぉぉちらか選べぇぇいッ!!」

 

 

 

 

 

ザンッ

 

 

 

 

妖怪の一人が身構える間も無く叩き切られる

 

 

「「!?」」

 

 

突然の惨劇に他の妖怪達は身構える

 

「死ねぇぇぇい!!」

 

男の行動は早かった

 

体勢の整っていない妖怪達に男はすぐさま飛び掛かり斧を振るったのだ

 

「ぎゃあああっ!?」

 

「ぐぎゃああっ!?」

 

次々と切られていく妖怪達

 

「この野郎!!」

 

一人の妖怪が男の背後を取った

 

ガシッ

 

「俺の背後に……」

 

気付いた時には顔を掴まれていた

 

「立つんじゃねぇッ!!」

 

そのまま地面に叩きつける

 

「ふん……」

 

叩きつけた妖怪にトドメを刺した男は残る妖怪達に顔を向けた

 

「舐めるんじゃねぇ!!」

 

妖怪達は逃げなかった

 

仲間を殺られた怒りが逃げる事を拒否し男を睨み付ける

 

「いいぜ……来いよ……!」

 

男は微笑む

 

「貴様等全員!微塵切りにしてやるぜ!!」

 

猛る妖怪達を相手に男は退く所か楽しそうに笑い

 

 

「ぶるあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

妖怪達を向かえ撃った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森

 

「……」

 

剣士が歩いていた

 

「ここは通さないぜ~!」

 

妖怪が立ち塞がる

 

「……」

 

剣士は無視して通り過ぎる

 

「待てよこの野郎!」

 

妖怪は回り込み剣士を睨む

 

「……やれやれ」

 

呆れた剣士は妖怪を睨んだ

 

「ういぃ!?」

 

妖怪は怯む

 

剣士から強い力を感じたからだ

 

「失礼」

 

過ぎ去った後に妖怪はへたりこむ

 

(なんだあいつは……強い……襲ったら間違いなく切られてた……俺は強くないからハッキリしないけどもしかして魔剣の妖夢並みなんじゃ……)

 

今の剣士が妖夢に匹敵するのではないかと戦慄した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

剣士は歩き続ける

 

(退屈は退屈ですが私は相手を選びます……暴れるのはあの狂戦士に任せましょう)

 

剣士は無闇な戦いはしない

 

するならば強い者と決めていたから先の妖怪は見逃した

 

戦うに値しないからだ

 

「こんにちはなのだー!」

 

「はいこんにちは」

 

だから無駄な事はしない

 

(すぐに会えるでしょう……)

 

幻想郷の事を名前と強者が居る事しか知らされていない剣士は探索を続ける

 

強者に会えると信じて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「弱い……弱過ぎる……」

 

戦士は呟いた

 

「妖怪とはどれ程かと期待したがこの程度か……」

 

死体の上で

 

妖怪達は戦士に皆殺しにされたのだ

 

軽傷すら負わせられずに……

 

「もう少しマシな奴を探さねばならんな……」

 

死体を踏み潰しながら戦士は歩く

 

(片っ端から殺していけばその内出てくるだろう……)

 

自らの渇きを潤す相手を探しに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼

 

シュ……シュ……

 

「……」

 

シュ……シュ……

 

「……よし!」

 

刀を見上げる妖夢は満足

 

「これで手入れ完了です!」

 

自慢の剣の手入れが終わったからだ

 

(本当に感謝しなければなりません……)

 

刀を見ながら思う

 

(この剣があったから私はここまで強くなれた……まだ目標は遠いですけどね)

 

納刀すると上を見上げる

 

「私の意思が折れない限り、この剣は決して折れる事は無い……」

 

遠き戦友が残した言葉を思い出す

 

「またお会いしたいものです……」

 

想いを馳せた後、妖夢は瞑想を始める為に精神統一を行おうと目を閉じる

 

「……あ!」

 

思い出して立ち上がる

 

「買い出し忘れてた!」

 

用事が済んでいない事を思い出した妖夢は身支度を整える

 

(食べ過ぎなんですよ幽々子様は……ほぼ毎日買い出しじゃないですか……)

 

買い出しが嫌と言う訳ではないが主の衰えない食欲に若干呆れていた

 

(今日は何にしましょうか……)

 

そんな平和な事を考えながら妖夢は人里へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「なぁダイ……」

 

尋ねるのは妹紅

 

「お前の会いたい奴ってどんな奴なんだろうなぁ……」

 

気になっていたから

 

何十年も探し続ける程会いたかった者が

 

「ピィ……」

 

ダイは困る

 

わからないからだ

 

わからないが会いたい

 

それだけは確かなのだ

 

 

「バーンさんみたいな人でしょうか?」

 

大妖精

 

「あたいは筋肉モリモリマッチョマンの変態だと思う!」

 

チルノ

 

「人間じゃないかもしれないわよ?ダイは金色だから銀色じゃないかしら?」

 

パチュリー

 

「あたしは普段は普通の人だけど怪人が現れたら変身して戦うカッコイイお兄さんだと思う!ゆ"る"さ"ん"!みたいな!」

 

フラン

 

「好き勝手言ってるよ……」

 

何も情報がないから仕方ないが流石な予想に妹紅は呆れる

 

「そう言う貴方はどうなの妹紅?」

 

「レミリア……おはよう」

 

問うのはレミリア

 

優雅に現れるが寝癖が見えていた、寝起きだったみたいだ

 

「それでどうなの?」

 

「私は……」

 

再度の問いに妹紅は思ったまま、感じたままを語りだす

 

「……子どもだと思う」

 

「へぇ……」

 

答えにレミリアは感心した様な声をだす

 

「子どもってあたいみたいな!?」

 

チルノが嬉しそうに跳ねる

 

「あーそうそう、親分みたいな100歳越えた子どもだよ」

 

「でしょ!」

 

「チルノちゃん……」

 

皮肉を理解出来ないチルノに大妖精は涙をハンカチで拭いた

 

「バk……チルノは置いといて子どもだと思う根拠は何?」

 

最強と喧嘩になりそうな言葉を正したレミリアは問う

 

「根拠なんてない……ただダイを見てたらそう思っただけさ」

 

「ふーん……」

 

答えを聞くとレミリアは踵を返す

 

「案外合ってるかもね」

 

そう言うと去っていく

 

「意味深に去るなよな……」

 

何か考えさせる去り方に妹紅は呟く

 

(……私とダイが出会ったのは必然だったのかな?ダイは異世界の住人だし……だとすれば互いに引かれる何かがあると私は思うけど……)

 

 

二人を引き合わせたのが偶然ではなく必然ならば二人の間には何か共通するものが居たのかもしれない

 

 

 

互いに知らぬが共通する部分はある

 

 

 

それはとある者

 

 

 

片方は友として……

 

 

片方は敵として……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

回廊を歩くレミリアは頬を緩ませていた

 

(出会いには意味がある、この出会いは必然……運命と言い換えてもいいわ、だから妹紅は子どもと言った、運命がそう感じさせたのね)

 

友が良き出会いをしたのが嬉しかったから

 

(この運命の果てには何が待つのか……)

 

足は止まる

 

(永久の別れか……再会か……)

 

運命を感じる

 

(願わくば悲しい別れにならない事を祈るわ……)

 

窓から空を見上げた

 

(ねぇ……バーン?)

 

太陽に友の先を願う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺

 

「……なんだここは?」

 

戦士は命蓮寺を見上げて呟いた

 

寺と言う物を知らなかったからだ

 

「つまらんから人間の集落を避けて来てはみたが……チッ」

 

舌打ちして去ろうとする

 

勝手な決めつけだがこんな妙な場所に渇きを潤す者など居ないと考えたのだ

 

「そこの兄ちゃん!」

 

声が掛かった

 

「参拝かい?」

 

掛けたのは水蜜と

 

「本堂はあちらですよ」

 

一輪だった

 

「……」

 

二人を見つめる戦士

 

「……」

 

口角が上がる

 

「外来人か?案内してやるよ」

 

水蜜が寄った瞬間

 

「危ない!」

 

一輪が叫んだ

 

 

ドゴォ!!

 

 

斧が地面に炸裂する

 

「ッ!?」

 

水蜜の顔が歪む

 

一輪の叫びに足を止めなければ斧の一撃を受けていたからだ

 

当たれば重傷では済まないかもしれない

 

何故なら斧は地面に突き刺さり大きなヒビを入れていたからだ

 

 

「今のは偶然だろうが……さっきの妖怪どもよりはマシな様だな」

 

斧を引き抜き戦士は二人に笑う

 

戦いを好む本質が興奮しているのだ

 

「こいつ戦闘狂か!?」

 

「気をつけて水蜜さん!ただの外来人じゃない!」

 

二人は警戒し距離を取る

 

地面を割る程の力に加え戦士の余裕

 

自分達二人を相手に緊張もしない事がただ者ではないと思わせた

 

「……」

 

斧を構えた戦士の周囲に術式が展開される

 

「魔法?……いや魔法に近いけど違う……」

 

術式は今まで見たことが無い物、何が起きるかわからない為更に警戒する水蜜

 

「殺戮のイービルスフィア!」

 

術名を唱えた瞬間に水蜜の周囲を闇の力が覆う

 

「なっ!?」

 

驚いた水蜜は動けなかった

 

それは

 

「どりぃぃあッ!!」

 

戦士が同時に切りかかって来たからだ

 

術で様子を見るだとかそんな駆け引きも無い突撃に面食らったのだ

 

「させません!」

 

一輪が飛び出し斧を金の輪で受け止める

 

「!?」

 

一輪の体が宙に浮く

 

(なんて力!?)

 

戦士の力は想像を越えていた

 

「纏めて死ねい!!」

 

そのまま一輪を水蜜に投げつける

 

「うっ!?大丈夫か一……」

 

水蜜が受け止めたと同時に

 

 

ズドドドドド!!

 

 

周囲の闇から撃たれた弾が二人を襲った

 

 

「ほぉ……生きていたか」

 

倒れる二人に歩む戦士

 

「くっ……」

 

二人は生きているがダメージに起きれない

 

「あばよ……」

 

トドメを刺そうと斧を振り上げる

 

 

 

 

バチッ!

 

 

 

 

戦士は防御の構えのまま飛ばされ地面を擦る

 

「……新手か」

 

邪魔者を睨む

 

「二人共大丈夫ですか!」

 

二人を救ったのは白蓮

 

戦闘音を聞き見に来た彼女は危険な状況だった二人を見て直ぐ様割って入ったのだ

 

「……ふん」

 

防御した腕から高い力を戦士は感じていた

 

「そいつらよりはマシな様だな」

 

嬉しさに斧を持つ手に更に力が入る

 

「狂い人……狂人に何を説こうとも無意味……」

 

二人を下がらせた白蓮が魔法を使用する

 

「その狂う魂……祓いましょう」

 

体を魔力が行き渡る

 

「いざ……南無三!!」

 

白蓮は駆けた

 

「……来いよぉ!!」

 

戦士は迎え撃つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森・アリスの家

 

コンコン

 

「今行くわ」

 

来訪者にアリスはドアを開ける

 

「こんにちは」

 

そこに居たのは剣士

 

「……何か用?」

 

アリスは用件を聞きながらも警戒する

 

明らかに異形だからだ、人間にはとても見えないし妖怪にも見えない、更に剣を携えているという事は戦えると言う事だからだ

 

「大した用ではないのですが……」

 

剣士もアリスを凝視する

 

しかしそれは警戒ではなく値踏み

 

アリスの価値を測っていた

 

「……お嬢さん」

 

「……何?」

 

「殺してもよろしいですか?」

 

「……何言ってるの貴方?」

 

「言葉通りです!殺し合いをしませんか?と言う提案です!」

 

「お断り」

 

バンッ!

 

ドアは勢い良く閉められた

 

スッ……

 

アリスはドアから1歩下がる

 

バキャ!

 

人形を操りドアをぶち破った

 

「!!」

 

アリスは目を見開く

 

剣士は居なかったから

 

外に出たアリスが周囲を見回していると上から声が掛けられた

 

「合意と見なしてもよろしいですか?」

 

その声は剣士、屋根の上でポーズを取っていた

 

「合意も何も断っても襲ってくるでしょ?」

 

「御名答!」

 

アリスの先の奇襲は剣士が諦めないと思ったからの奇襲だった

 

ストーカーの様に追われるなら危なくなる前に叩きのめしてしまおうとしたのだ

 

「では始めましょう!」

 

剣を構えた剣士はアリスへ飛び掛かる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

「こんな所ですかね」

 

買い物袋を幾つも携えた妖夢が帰ろうと歩いていた

 

命蓮寺は近いとは言えそれなりの距離があるから流石の妖夢も大きな音でもしない限り気づかない

 

「買い忘れは無し……後は帰るだけです!」

 

里の外に出た妖夢は飛ぼうとする

 

「あ……魔剣の妖夢……」

 

「?何か用ですか?」

 

妖怪の呟きに気づいた妖夢が尋ねる

 

「あ、いや……さっき強そうな剣士に会ったから……」

 

「剣士……ですか?」

「ああ……妖怪には見えなかったな、人間でもなかったし……」

 

妖怪の情報に妖夢はある可能性を考えた

 

(まさか……以前追い払ったあの男?)

 

剣士は男だと考えたのだ、あの男も剣を使う、自分からすればあの男は剣士とは言えないが剣を使わない者からすれば剣士と思うからだ

 

「……その剣士はどちらに?」

 

「魔法の森だよ、今も居るかはわからんけど」

 

「ありがとうございます」

 

礼を言うと妖夢は買い物袋を下ろし飛び立って行く

 

「……これ要らんのかな?」

 

買い物袋持った妖怪はどこかへ消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺

 

「ぬぅりゃあ!」

 

「せああっ!!」

 

戦士と白蓮の交戦は続いていた

 

「ウラァッ!!」

 

「ハアッ!!」

 

互いに接近戦での打ち合い

 

「ヌアアッ!!」

 

斧を振るう戦士

 

「ふっ……ハアッ!!」

 

避けて連打を浴びせる白蓮

 

「チィ!ちょこまかと!」

 

戦士はイラついていた

 

「いくら強い力と言えど、当たらなければどうという事はありません」

 

攻撃のほとんどを避けられていたから

 

白蓮は致命に成りうる斧だけは避けて攻撃していた、素手の殴打や蹴脚は受けてしまう事はあるが斧に比べればダメージこそ軽くはないが遥かに安全だからだ

 

「回避に専念した攻撃では俺は倒せんぞ!!」

 

しかし守備に重きを置いた肉体強化は攻撃に重さを持たせれていなかった

 

「逃げ回らずにかかってこい!臆病者が!!」

 

「……お断りします」

 

挑発にも乗らない

 

確かに威力に欠けるがダメージが無い訳ではない、少しずつでもダメージを与えれていると感じるから断った、持久戦を行い確実に倒すつもりだった

 

「……クズが!縮こまってんじゃねぇ!!」

 

白蓮の戦い方に嫌悪する戦士は術の詠唱を始める

 

「白蓮様!気をつけて!」

 

水蜜が注意を促す

 

「わかっています」

 

白蓮も一切気を抜いていない

 

「破滅のぉ……!」

 

詠唱が完了した戦士は叫んだ

 

「グランヴァニッシュ!!」

 

ゴゴゴゴ……!

 

地鳴りが起き始める

 

「これは……大地に!?」

 

感じた時には遅かった

 

「くっ!?ああッ!?」

 

隆起した大地が白蓮を襲う

 

広範囲に発動した術は二人も巻き込み荒れ狂う

 

 

「クックッ……良い様だ、臆病者には相応しい姿よ」

 

「くぅ……」

 

隆起した大地の上に膝をつく白蓮に戦士は溜飲を下げる

 

「潔く死ね」

 

足を一歩踏み出した時だった

 

「!?」

 

戦士は気付く、辺り一帯に霧が立ち込めているのを

 

(砂埃かと思ったが違う……なんだ?)

 

思案している戦士に声が掛けられる

 

 

「あんたかい……?」

 

 

声には敵意が籠っていた

 

「何者だぁ!!姿を見せい!!」

 

この霧を作ったのはまた違う新手だと知った戦士は怒鳴る

 

スゥゥゥ……

 

霧が集まっていく

 

「あんたかい?」

 

そこに立つのは萃香

 

探していた萃香は命蓮寺から出た大地の隆起を見てやって来たのだ、元部下を虐めた者と思って

 

「……なんだ?」

 

戦士は呆気に取られていた

 

「ガキ……だと?」

 

自分に強い敵意を見せる者が自分の半分にも満たない子どもだったからだ

 

見てくれから妖怪であるとはわかるがそれにしても子どもが自分に敵意を向けるのに違和感があった

 

「ガキじゃないよ、あんたより歳上さ」

 

「……失せろ」

 

戦士は消えろ言う

 

気を削がれていたのだ、いくら戦いが好きだからと言っても子どもとやりあう気は無かった

 

「私は今気が立ってる……下手な事は言わない方が身の為だよ坊主……」

 

萃香の凄味が増す、ただでさえ気分は悪いのに戦士の自分を明らかに格下と見ている言動

 

まだ犯人だと確信が持てないから凄むに留まっているがもし犯人だとわかっていたら既に殴り掛かっている所だ

 

(このガキ……)

 

凄味に戦士の認識が変わる

 

その小さいなりからは考えられない凄味と威圧感が変えさせた

 

「……灼熱の……」

 

試す為に詠唱を始める

 

「あぁん?」

 

前振り無しの詠唱に萃香が顔を怪訝にすると

 

「バーンストライク!!」

 

詠唱が完了し3発の炎弾が萃香を襲った

 

 

バチィッ!

 

 

弾く様な音が響くと炎が四方に散る

 

「……」

 

萃香は炎弾を素手で払い消したのだ

 

だが萃香は何も顔に出さず無表情に散る炎を見つめていた

 

「ククク……」

 

戦士が笑い出す

 

「ガキかと思ったが……なるほど中身は妖怪と言う訳か、さっきのは取り消す!さぁやろうぜぇ!!」

 

萃香の力を知った戦士は完全に認識を改めた、戦うに値する者だと

 

それも自らの渇きを潤せる相手かもしれないと

 

「何を呆けている!!」

 

戦士は怒鳴る

 

萃香は散る炎を見ながら微動だにしていなかったからだ

 

 

「……あんたかい」

 

 

ゴゴ……ゴゴゴゴ……

 

一言呟かれたと同時に妖力が高まっていく

 

椛の傷は火傷が大半だった、だから戦士の放った炎弾に椛をやったのはこの戦士だと確信したのだ

 

「覚悟しな……加減が出来る自信が無いからね……誤って黄泉路を歩く……」

 

 

 

「覚悟をねぇ!!」

 

 

 

ズギャア!!

 

 

 

「ぬがくっ!?」

 

飛び出した萃香の殴打を受けて戦士は防御ごと吹き飛ばされる

 

「そらぁ!!」

 

体勢の整わない戦士に追い付き追撃の殴打を食らわせる

 

「ぐおっ!?」

 

斧で受けるが怯む

 

「……ものには限度ってもんがある」

 

ドッ!

 

「あんたのはやり過ぎさね……」

 

ドッ!ドゥ!

 

「その様子じゃあんたは殺すのに躊躇いが無いんだろ?」

 

ドッ!ドッ!ドゥ!

 

「殺す覚悟があるなら殺される覚悟も当然持ってる筈さね?そうだろ?」

 

ガシッ

 

 

「落とし前はつけさせて貰うよ……」

 

 

スッ……

 

 

「うらあああッ!!」

 

 

ズドォ!!

 

 

渾身の殴打を食らわされた戦士は吹き飛び大地の隆起に衝突し粉塵を撒き散らす

 

「まだまだこんなもんじゃないよ……」

 

砂埃に歩く萃香

 

 

ブワッ

 

 

「調子こいてんじゃねぇぇ!!」

 

 

砂埃の中から斧を構えた戦士が飛び出した

 

「!?」

 

萃香は反応が遅れる

 

あれだけの攻撃を食らわせて動きに鈍りがなかったからだ

 

「死ぬかぁ!」

 

轟炎斬

 

炎を纏う斧の切りつけ

 

「消えるかぁ!」

斬空断

 

切り上げと同時に風を発生させ切り刻む

 

「土下座してでも生き延びるのかぁ!!」

 

裂砕断

 

掴み、膝蹴りを食らわせ地面に叩きつける

 

 

「これぞ我が奥義、三連殺!」

 

 

倒れる萃香に決めると戦士は暫し見つめる

 

「ふん……ぐっ……!?」

 

振りかぶりかけた斧は下ろされた、平静に見えてダメージはかなりあったのだ、口から滴る血とふらつきがダメージの高さを表していた

 

「……今日の俺は紳士的だ、運が良かったな」

 

トドメは刺さなかった、楽しい戦いが出来て満足だった様だ

 

「……何が紳士的さ、どの口がほざくんだい坊主……」

 

「……なにぃ?」

 

戦士が再び目線を向けると仰向けに倒れながら笑う萃香だった

 

「終わりかい?」

 

「……まだやる気か?」

 

「愚問だねぇ……これくらいじゃ他はともかく鬼は……特に私はやれないねぇ」

 

「なら……」

 

足が上がる

 

「いつまで寝てんだ!!」

 

踏みつけた

 

 

ガッ

 

 

「乱暴な目覚ましだねぇ……よしとくれよ、私は好きな時に起きるの……さ!」

 

受け止めた足ごと放り投げる

 

「いやぁ存外やるねあんた、少し加減し過ぎたみたいだよ」

 

「……なんだと?」

 

着地した戦士は起き上がった萃香を睨む

 

(あれで加減していただとぉ?)

 

かなりのダメージを受けた、一瞬敗北が頭を過る程に

 

それだけの攻撃を加減していたと言うのだ

 

信じられない

 

「信じられないかい?あんた鬼は初めてか、なら信じられないのも無理はないね」

 

「……」

 

睨む戦士はまた認識を改め始めていた

 

自分の奥義を受けてピンピンしている萃香にハッタリではないと思い始めていたのだ

 

「これで信じてもらえるかい?」

 

萃香が問うたと同時に

 

ドウッ!

 

妖力が一気に高まる

 

「……バカな……!?」

 

戦士は認められない

 

その力はさっきとは比較にならない程だったからだ

 

「いくよ」

 

ゆっくりと歩み寄る萃香

 

「……!ウラアァァ!!」

 

斧を振り下ろす

 

 

メキィ……!!

 

 

斧を弾いた拳が炸裂していた

 

「カッ……ハグアッ!?」

 

痛みと驚きに動けない戦士に萃香は語る

 

「加減は丁度良かったみたいだね、良かったねあんた死ななくて、あんたが椛をやった奴なら今頃物言わぬ骸さね」

 

「ぐぬぁ……貴様ァ……!!」

 

憎らしく睨む戦士に萃香は告げた

 

まだ手加減していると、優しくしてやったと

 

戦う内に戦士が犯人ではないと感じたからだ、戦士の戦い方は斧による攻撃が主、術も強力だがあくまで補助程度で主軸にはしていない

 

炎の術を使うが肉弾戦を好んでいる戦士が椛を術で仕留めるとは思えなかった、それによくよく思い出すと爆破を受けた様な傷もあり僅かな魔力も感じた

 

以上の事から確定ではないが違う者だと判断し本気は出さなかったのだ

 

「でもあんたはやり過ぎた」

 

やり過ぎたとは勿論椛ではなく戦士の凶行

 

見えるだけでも命蓮寺の3人を殺しかけ、見えないが当然一人二人は殺していると考えたからここまで痛めつけた

 

「助かりました伊吹萃香」

 

萃香に白蓮が寄る、意外に元気だった

 

「あんたも間抜けだねぇ……その気ならこんな坊主くらい倒せるだろうに」

 

「探りを入れようと思ったのです、何が目的か、誰かの命令なのか単独なのかを……ですがまさか書物に伝わる晶術、しかも上級晶術を使えるとは思いませんでした」

 

戦士が使っていたのは晶術

 

レンズと呼ばれるエネルギーの結晶を使い行使される術

 

魔法とは似て非なるものではあるが本質は同じものだ

 

 

「そんなのはどうでもいいさ……」

 

萃香にとってはそれはどうでも良い事、白蓮を退けて戦士の前に立つ

 

「土下座してでも生き延びたいなら許してやるよ」

 

ニヤリと笑う、戦士への意趣返しが決まり満足だから

 

「……見損なうなよガキィ!」

 

憤怒する戦士は飛び掛からん勢いで睨む

 

「一丁前に言うじゃないか坊主、私はもうどうでも良いからそれで許してやるけどこっちの住職は知らないよ?」

 

萃香は白蓮を指差す

 

「……貴方は妖怪を殺めましたか?」

 

白蓮が神妙に問う

 

「それがどうしたぁ!」

 

罪の意識すらない戦士は怒鳴り返す

 

「……南無三」

 

腕に魔力を込める

 

 

 

 

スゥゥゥ……ズッ!!

 

 

 

 

急に辺りに霧が立ち込め戦士を隠す

 

「……逃がす気かい」

 

この霧は戦士が作ったものではないと悟る

 

 

「ガキィ!!」

 

 

霧から怒声が響く

 

「俺の名はバルバトス・ゲーティア!次は必ず殺す!!」

 

名乗りに萃香はやれやれと言った顔で返す

 

「私は萃香!伊吹萃香さ!霧の名を持つ鬼!いつでも来な!遊んでやるよ坊主!」

 

「伊吹萃香ァ……!その名……二度と忘れん!!」

 

バルバトスと名乗る戦士の声はそれ以上霧から聞こえなくなった

 

「あんたは……?」

 

残る霧に問う萃香

 

「……」

 

スゥゥゥ……

 

何も返す事無く霧は消え、そこからバルバトスは消えていた

 

「ふん……私に対して霧を使うたぁねぇ……」

 

萃香は消えた霧に何か因果を感じていた

 

 

 

 

「さて、私は行くよ、あいつらはまた来る、気を付けなよ、特にバルバトスって奴さ、ちょいと嫌がらせをしてやったからねぇ……」

 

「それは勿論ですが……何故笑ってるのですか?」

 

「ふふん、少し……」

 

笑う萃香は霧になっていく

 

「面白くなってきたからだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の森・アリスの家

 

「降参されては如何です?」

 

剣士はアリスに問う

 

「冗談……!」

 

強く否定するアリスだが顔色は悪い

 

(相性が悪過ぎる……)

 

アリスは剣士と相性が悪かった

 

アリスの主な戦法は人形による攻撃、弾幕も張れるが人形による攻撃の方が得意な為、弾幕も並み以上ではあるが剣士には効果が薄かった

 

 

「行って!」

 

人形を剣士に飛ばす

 

 

スパッ

 

 

「もうその芸は飽きました」

 

糸を切った剣士は告げる

 

人形を操るのに糸を使うのだが剣士は糸を切れば人形を使えないと知り、更に切る事が出来た

 

最初は既成の糸に魔力を伝わらせていたが全て切られた為に今は魔力の糸を生成し人形を操っている、だがその魔力糸さえも切られる

 

だから相性が悪過ぎるのだ

 

(糸が切られるだけでこうも劣勢になるのね……指輪で粘ったけど……もうダメね……一旦逃げるしかない……悔しいけど……)

 

相性の悪さが敗北を悟らせる

 

糸さえ切られなければ少なくとも善戦以上は出来る、本気を出せば勝つ可能性も見える

 

糸を切られる、たったそれだけでアリスは封じられたのだ

 

(魔理沙みたいにはいかないわね……)

 

友を思い逃げる準備をするアリス

 

「逃がしません」

 

剣士が一足に詰め寄った

 

「!?」

 

「気配を隠せれていません……逃げようとするのが丸分かりでした」

 

剣を構える

 

「ッ!?」

 

咄嗟に身構え攻撃に備える

 

 

 

 

「待ていッ!!」

 

 

 

 

同時に二人に駆ける者が一人

 

キィン!

 

「ムッ!?」

 

剣を弾かれた剣士が距離を取る

 

「大丈夫ですか!」

 

「助かったわ妖夢!」

 

助けたのは妖夢

 

刀を構え剣士を威圧する

 

(あの男ではありませんでしたか)

 

一応気配を探り周囲を見渡すが他には誰も居ない、一人だと確信する

 

「……貴方は?見たところ手練れの剣士とお見受けしますが?」

 

「人に名を尋ねる時はまず自分からでしょう?」

 

「これは失礼……いや!よく聞いてくれました!」

 

剣士は目を閉じポーズを始める

スゥゥゥ……

 

「私の名前は!」

 

スゥゥゥ……

 

霧が剣士を包む

 

「逃がした様です……」

 

霧が晴れた場所で納刀する妖夢

 

「助かったわ妖夢……貴方が来てくれなかったらやられてた所よ」

 

「お気になさらないでください、それより……」

 

「ええ、わかってる……何か異変が起きてる様ね……突然あんな外来人が現れるなんてまずありえないもの」

 

「アリスさんはどうされますか?」

 

「そうね……異変の規模もわからないし情報が無いからまだ様子見って所かしらね、調べてはみるけど」

 

「その通りですね、今は警戒しておくべきですね、私も気になる事がありますし」

 

「出来れば大事にならない事を祈るばかりです……」

 

これ以上は意味の無い会話と感じた妖夢は帰る為アリスの前から消える

 

「……あ!買い物袋……」

 

忘れ物に気付いた妖夢

 

取りに向かうが買い物袋は既に無かった

 

そして手ぶらで帰った妖夢は幽々子にこっぴどく怒られたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿

 

「……界、最高の剣士!!」

 

剣士が名乗りを決める

 

「おかえりなさい」

 

男が応える

 

「……連れ戻されたのですか」

 

邪魔された剣士は面白くなさそうに男を見た

 

「ええ、ミストに様子を見させて頃合いをみて合図を出させました」

 

「せっかく楽しそうな相手が現れた所だったのに……邪魔しないでもらいたいですね」

 

剣士は男の傍に居る衣を纏う者、ミストに視線を向ける

 

「……帝王様の御言葉は全てに優先される……お前の楽しみなど知った事ではない」

 

「……やりますか?」

 

二人は威圧し睨み合う

 

「まぁ落ち着きなさい、貴方があのまま戦えば無事では済まないと思ったのですよ」

 

男が二人を抑える

 

「……まぁ良いでしょう、私が退屈だと無理を言ったのです、ここは貴方の顔を立てて退きましょう」

 

剣士は踵を返し男の前から消える

 

 

「ぐうおっ!?」

 

 

バルバトスが苦痛に呻いた

 

「あの……ガキィィ!!」

 

膝をつき腹を押さえるバルバトス

 

「……呪いですか」

 

男はバルバトスに何が起きているか知った

 

萃香は最後、バルバトスに呪いを与えていた

 

痛みが襲う呪いを

それが萃香がバルバトスに行った嫌がらせ

 

「ぶち殺してるぞ……伊吹萃香ァ……!!」

 

怒りが溜まる

 

 

 

「ぶるああああああああああッ!!!」

 

 

 

怒りは咆哮に変わり神殿を駆け巡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

 

「首尾は?」

 

謎の場所で話し声が聞こえる

 

「まだ見つかってないです……多分あの妖精の仕業だと思うんですけど何しろ隠密になんで中々……」

 

「……サボってる訳ではありませんね?」

 

「いえいえまさか!」

 

「では引き続きお願いします、獄に干渉される前に見つけ出してください……」

 

了承した部下が出ていくと一人物思いに耽る

 

(まだ干渉こそしていませんが既に認知されている……早くしなければ幻想郷どころでは済まないかもしれません……)

 

 

事態を重く見る謎の者

 

夢は様々な運命を巻き込み広がっていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅くなりました、仕事マジヤバイ!書く間が無い!

帝王のお仲間が二人明かされました、テイルズオブバルバーティア(テイルズオブデスティニー2)よりアナゴ……もといバルバトスです、性格はリメイク版デスティニーよりになってます。

ミストに関しては名前だけなのでまだ想像にお任せします、剣士はやった事がある人ならピンと来るかもしれませんね。


そして年齢ですが……25になりました!
意外でしたかね?ネタに走るのはニコニコの影響ですww

次回も頑張ります!
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