神殿
「……」
男は本を読んでいた
(ふむ、バルバトスが交戦したのは聖白蓮とその一派、なるほど……目立たないだけで彼女もまた強き者ですか)
傷が癒えた男は先日に執事が持ち帰った本を読んでいた
それとバルバトスが交戦した者を照らし合わせていたのだ
(そして伊吹萃香……最上位たる種族、鬼……彼女もまた強者、八雲紫と同格の者……)
項目を読みながら思案に耽る
(風見幽香と同じく好戦的な様ですね……いや……昔に鴉天狗や白狼天狗を従えていた……なるほど、あれは白狼天狗の様でした、敵討ちですか……)
そこで読むのを止める
(いずれにせよ誇り高い種族、支配はまず受け入れないでしょうね……)
拒否は目に見えていた
(その時は洗脳なり如何様にも方法はありますが……そこまで行けるかどうか……)
幻想郷の高いレベルに困難を感じる
(まず主な所はレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレット……パチュリー・ノーレッジ、チルノ、大妖精、藤原妹紅……これが頂点)
(その下に今の伊吹萃香、風見幽香、魂魄妖夢の3人……そして八雲紫と八坂神奈子……)
(そしてまだ数人の強者……)
「どうするべきか……」
声に出た
その余りにも難解なレベルに
自身では頂点より下の者にも勝てない、仲間もやられる始末
現状では正攻法で勝ち目はなかった、策を使おうにも本だけの情報では不完全過ぎて考えるに値しない、直接会った者も居るがあんな一瞬の接触では全然足りない
(諦めるのが正解でしょうか……)
男に諦めが過る
リスクを考えたのだ、下手をすれば多大なダメージを負うかもしれない、築いた軍に大打撃、もしくは壊滅すらあり得そうな可能性を
(……もう少し模索してみてから結論を出しますか)
そう考えた男はまた本を取り適当に開いた
「……ん?」
気になる文を見つけた
「頂点より……上の者?」
すぐに目を走らす
「……100年前……幻想郷には魔族……大魔王が居た」
(大魔王……)
特設された項目を捲る
「名はバーン……能力は……友を守る程度の能力……」
見つけたのはバーンの項目
歴史に残ったバーンの事は幻想郷がいつまでも忘れない様にと追加されていたのだ
(……まさかこの者が今の幻想郷を?)
書かれている項目はバーンが行った事、接した友と仲間の事
(魔帝を倒し幻想に消える……)
読む目は止まらない
非常に興味深いからだ
自分と同じ魔族、更にそれを束ねる王より更に上の大魔王の所業が
(信じられません……記される限りでは私の軍を容易く蹴散らせる力……いや、幻想郷すらも消せる力を持ちながらそれをしなかった?魔族の王が?)
男にはバーンが信じられない
凄まじい力を持ちながら支配も破壊もせずに逆に守った事が
(……考えても仕方ありません、もう会う事は不可能ですからね……ですがやはり今の幻想郷にこのバーンが関わっているのは間違いない様です)
項目が終わりかけた時
気になる項目を見つけた
(バーンの……遺産?)
見つけたのはバーンが遺した道具について
(頂点と数名に遺した道具……)
隈無く読む
(優れた物もありますがただの装飾品もありますね……扇子や花の種……ああ、この種が風見幽香の……)
本には誰に何を贈ったか、更に簡単にだが効果までも書かれていた
(奴隷は……何も貰ってはいないのですか、見せて貰おうと思ったのですがね)
(……)
考え込む
(大魔王の遺した道具……気になります、少し見に行ってみますか……そのついでに……)
スキマを開き男はまた煮え湯を飲まされた幻想郷へ向かう
紅魔館・図書館
「手紙が来てるわ妹紅」
入ってきたのは咲夜
「誰から?」
「誰かは想像つくわね……果たし状って書いてるから」
「あ~……暫くほっといたからなぁ……にしても果たし状って……」
妹紅は差出人に心当たりがあった、咲夜も同様
封を開けて読む妹紅はやっぱりかと苦笑する
「どうなの彼女?」
「今のとこ私の1150連勝かな、年12回で負けたのは最初の頃だけだからな……あいつもだいぶ強くなった」
「根性あるわね」
パチュリーに返すと妹紅は準備を始める
「昔は殺し合う仲だったけど今はただの喧嘩友達みたいなもんさ……特別仲が良いわけでもないけどそれぐらいが私達には一番良い、あいつもそう思ってるだろうさ」
準備を終えると妹紅はダイに顔を向けた
「よしダイ!久し振りに永遠亭に行くか!」
「ピィ?」
何をしに?とダイ
「そりゃダイ……果たし状とくれば1つだろ!」
ダイを頭に乗せた妹紅は出発する
「決闘だよ!」
人間の里
(さて……来たは良いですが道具に関しては大した情報も無し……どうしましょうか……)
里に居た男は考えていた
(聞いた話だと頂点は最近は紅魔館と言う場所に常駐している……行くのは自殺に等しいですね)
おもむろに里の中を歩く
「……」
道行く人間が眼に入る
「人間共が……!」
ボソリと呟くその目には憎悪があった
(……永遠亭に行きますか、気になる事もありますし……)
行き先を決めた男は飛び立っていった
永遠亭
「待っていたぞ妹紅!」
庭で腕を組んで待ち構えていた彼女が妹紅を睨む
「久し振りだな……輝夜!」
構える彼女に少しばかりの笑みを向ける
彼女は蓬莱山輝夜
永遠亭に住む元、月の姫、妹紅と同じく蓬莱の薬を飲んだ不老不死
数えきれない時を生きた彼女は生きるのに飽き、精神が死へ向かっていたがバーンのお陰で生気を取り戻し今は妹紅に勝つ事を目標に生きている
「今日は……」
輝夜が意気込みを語ろうとしたら
「ププッ……」
妹紅は口を押さえて笑いを堪えた
「……何よ?」
輝夜が問う、笑うのが不満な様だ
「今日はなんだって?いい!言わなくていい!前は「100年に一度の~」その前は「類稀に見る~」更にその前は「空前絶後の~」……アハハ!」
笑いを堪えきれない
「今日は未曾有か?ププッ……」
「……妹紅」
笑う妹紅に輝夜の睨みが刺す
「絶対に許さない!!」
同時に飛び掛かった
「……ダイ、離れてろ」
ダイに告げる表情は既に笑ってはいなかった
油断も慢心も無く輝夜を見据える
それは輝夜の力を認めているからこそ、気を抜いて勝てる相手ではないと知っているから真剣になったのだ
「ピィ!」
気を付けて!と妹紅に言う、二人の関係を知っているからこそダイも安心して離れる、これは憎しみの戦いではないから、殺し合いではないとわかっているから
「今日も勝たせて貰うぞ輝夜!」
二人の不死人は試合う
永遠亭・医務室
「またあの二人がやり合ってるんですか?」
椛の寝るベッドの傍で文が鈴仙に尋ねる、萃香により椛が重傷を負った事は妖怪の山へ伝えられ文は見舞いに来ていた
「そうですよ、負け続けなのに諦めないんですよ、元気ですよね」
「そうですね、あの姫様があんなになるなんてやっぱりバーンさんは凄いです」
「さて……では私は行きます、椛の事は頼みました」
「見ていかないんですか?」
「え?あの二人をですか?」
「そうです」
「行きませんよ、結果が見えてる勝負を見ても仕方ありません、この前1100連勝を記事にしたのでネタにもなりませんしね」
「アハハ……可哀想な姫様……」
「それにあまりサボってると怒るんですよにとりが……」
「なんでですか?」
「椛はにとりの友達ですからね、今もロビンと一緒に探し回ってますよ」
「ああ……わかりました、気を付けて」
「また来ますね」
文が去った後に鈴仙も医務室を出て体に力を入れる
(何かあれば私も戦いますよ!師匠!)
構えた鈴仙はすぐに解きパタパタと廊下へ消えていった
「それっ!」
弾幕を広範囲に放つ輝夜
「まだまだ!」
妹紅目掛け更に放つ
「これで!」
おまけとばかりに大玉を放つ
「これは避けるのはしんどいな……」
目前に広がる広く濃い弾幕に妹紅は力を高める
ボウッ!
妹紅の背から巨大な炎翼が現れる
「せぇぇい!!」
ゴオウッ!
炎翼が弾幕を薙ぎ払う様に振り抜かれる
炎翼は炎を巻き上げながら猛り
弾幕を全て焼き払った
「また強くなってる……」
輝夜は光景に顔をしかめる
(私も強くなったのに……なんで差が詰まらないのよ!)
自分だって強くなった、それも昔とは比較にならない程
でも勝てない、差が詰まらない
一方的にライバル視している輝夜はそれが気に食わない
「ならぁ!!」
輝夜は構える、能力を使う為に
「!!……ハッ!」
察知した妹紅は自分の周囲に炎を広げる
………………
一瞬の集まる空間
その中で唯一動ける輝夜
「……あーもう!!」
悔しく怒鳴っていた
「近付けないじゃない!」
それは妹紅の出した炎のせい
妹紅の周囲に広く広げられた炎により近付けないからだ
一瞬を集めたと言えど時は流れる、時を止めた訳ではないから炎に触れれば焼かれるのだ、ただの炎なら自分の力で払い攻撃出来るが相手は妹紅、その炎はあまりにも強過ぎるのだ、自分の力では消せないし弾幕も通さない
一瞬を集めると言う幻想郷屈指の能力に対抗する為に妹紅はこれを思い付いたのだ
「くぅ……」
成す術が無い輝夜は能力を解除するしかなかった
「……!今だ!!」
解除された瞬間に妹紅は空を駆ける
「はああっ!!」
輝夜の放つ弾幕を焼き付くしながら一直線に向かう
ゴウッ……
「……私の勝ちだな」
妹紅は微笑んだ
「……参った、私の負け……」
目前に突き立てられた拳を引かれた輝夜は降参した
「なんであんなに強いのよ~ねぇダイ~」
ギュ~っとダイの頬を押しながら輝夜
「ピィピィ!?」
そんな事言われても……とダイ
「なんでだろうな」
ハッキリとはわからない妹紅
「ふん……」
「ピッ!?」
ダイをデコピンで弾く輝夜
彼女は理由をわかっていた
(そんなのあんたがバーンと友達だからに決まってるじゃない……)
理由はバーン
(想いの差が力の差……)
妹紅とバーンの間にはとても強い絆がある
自分とてバーンに救われた身、恩義も感じてる
だがそれよりも遥かに強い想いが妹紅にはあり、妹紅はそれに応えている
それが今の差を作っているのだと考えていたのだ
妹紅はそれが当たり前になってるからそう思わないだけで誰もがそう知っていた
「次は勝つからね妹紅!」
でも彼女は諦めない
それが自分の決めた約束だから
遠い昔に越えるべき壁と思われていた事を実現させる為に彼女は鍛えるのだ
「いつでも相手になってやるよ輝夜!」
妹紅も応える、彼女もこの関係をまた心地好いと感じていたから
ザァァ……
その時、竹林が不気味に揺れた
「こんにちは……ここが永遠亭ですか?」
竹林の揺らめきの中、フードを被る男が現れた
「そうだけど……」
「治療か?」
輝夜が答え、妹紅が聞いた瞬間
ブゥン
「お聞きしたい事があります」
輝夜の背後に男が現れる
「輝……!!」
妹紅が振り向いた時には遅かった
「離しなさい!!」
輝夜は鎖に縛られていた
「ピィ!!」
危機を感じたダイが男に体当たりを行う
バシッ!
手で払われたダイは竹にぶつかり気絶してしまう
「ダイッ!!」
(なんですかアレは……妙な……いやそれより……)
ダイに何か感じるがそれよりも今は優先すべき事があった
「もしや貴方は藤原妹紅さんですか?」
「輝夜を離せ!」
ギシッ
「あうっ!?」
鎖を締める
「藤原妹紅さんですか?」
「ッ!?……そうだ!」
輝夜を人質に取られた妹紅は従うしかない
(こいつ……私と輝夜が油断した瞬間を見逃さずに……)
男に周到差を感じる
フードを被る男に最初二人は油断はしていなかった、明らかに怪しい男を警戒していたからだ
だが永遠亭かと尋ねられた事で二人が思ったのは永琳の客
治療の為に永遠亭に来たのだと思ったのだ、フードは怪我を隠す為に着けていると
それが二人から警戒を消していた
(輝夜を選んだのは弱く見えたからだろうな……私との勝負で疲れてたから)
考えを纏め、妹紅が出した答えはこの男は恐ろしく頭がキレて行動力のある者だと言う事だった
「貴方が頂点……皇帝不死鳥……」
男もこの邂逅に驚いていた
予定ではここで会うつもりはなかったからだ、名を聞いたのは本で読んだ人相に合っていたからもしやと思い聞いたのだ
(これは行幸?それとも……)
この邂逅は自分にとって有益かどうかは測れない、完全に予定外だから
(この状況なら……)
試案する男
(輝夜!能力を使え!)
目で訴える妹紅
(ダメ!この鎖で能力が封じられてる!振りほどけない!)
縛から逃れるのは不可能だった
「……何の用だ!」
輝夜の自力の脱出を諦めた妹紅は目的を問う
「……蓬莱の薬」
男は目的を語る
「それを頂けませんか?」
目的は蓬莱の薬
本で輝夜と永琳、そして妹紅の不老不死を知った男はそれをもたらした蓬莱の薬を手に入れるべく永遠亭に来たのだ
「……残念だったな、薬はもう無い!作る事も出来ない!」
「本当ですか?蓬莱山……輝夜さん?」
輝夜に問う、男が輝夜だと思ったのはさっき妹紅が名を叫んだから
僅かな事も見逃さない注意深さが今日まで男を生かせていた理由の1つでもある
「本当よ……」
二人の目を見た男は嘘ではないと悟る
「でしたら蓬莱の薬は諦めましょう」
男はすぐに諦めた、それは手に入れるのが限りなく薄い望みだと知っていたから、だが万が一もあるから可能性を捨てずに一応来たのだ
可能なら永遠亭を支配出来ればと思いながら
「ここで会えたのも導きなのでしょう……」
諦めた男はならばと当初の目的に切り換える
「私の仲間になりませんか?」
それは妹紅を仲間に引き入れる事、支配より先に簡単な方法を試してみた
「……なると思うか?」
「ハハ……でしょうね」
無論断られる事は承知していた
「では荒くなりますが……」
輝夜を盾に近付く、男に微塵の油断も無い、鎖を使わないのは頂点の力を警戒したのと不死人の妹紅故
鎖を使う際の一瞬の動作が命取りと思ったからだ、まだ頂点の力を把握していないからもしかしたら鎖ごとのされる可能性を考えたのだ
頂点より下である妖夢と幽香に敗走した経験故の行動
「……」
剣を抜き、上段に構える
「……切る気か?」
「……切らないと思いますか?」
ザンッ
「ぐあああああああっ!?」
苦痛の絶叫が上がる
剣は容赦無く降り下ろされ
妹紅の左腕を切断した
「かっ……あぐっ!?うぅ……!!」
「!」
苦しむ妹紅の様子に男は気付く
(自らの炎で傷口を焼いて止血を……)
妹紅は切断された傷口を焼き、血を止めていた
「器用な方だ……まぁそれぐらいは許しましょう」
本来はそれすら許す気はなかったが妹紅の様子に許す
(かなり弱めれた様ですから)
いくら止血しようと腕を切られたのだ、無事な筈が無い
不死と言えど基本は人間と変わらない、弱めるには充分過ぎた
ドッ
蹴りを入れて転がす
ガッ
残る右腕を足で押さえつける
ザスッ
手を剣で刺し固定する
「あ……ぐ……はぐぅ……」
「気は変わりましたか?」
呻く妹紅に再び告げた
仲間にならないかと
「……お……」
声を捻り出す
「お断りだ……!!」
気は変わらない、変わる筈がない
這いつくばりながらも意思を持ち男を睨み付ける
「わかってましたよ……」
知っていた男は妹紅の頭を掴む
「初めからこうするつもりでした」
術が発動し妹紅に送り込まれる、洗脳するつもりだ
「……?」
男が顔をしかめる
「何が……したいんだ?」
何も感じない妹紅が問う
(術は確かに発動している……力が足りない?)
妹紅には洗脳が効いていなかった
(耐性がある?ならば精神に異常を来すかもしれませんが最大で……!!)
術を最大限にして送る
……バチッ!
男の手は弾かれた
「何故……何が……」
訳がわからず妹紅を見る
(基本は人間である蓬莱人が洗脳を退けれる筈が……遺産も洗脳の耐性は無い筈……)
そこで男は気付く
(遺産……まさか!)
妹紅を探り胸にある異物を見つける
「……」
手は伸ばされる
「!?……やめろ!!」
伸ばす手の軌道が目標を知らさせる
「……これがバーンの遺産……バーンの守り、ですか……」
抜き取った物はバーンが妹紅に贈った御守り
名は無かった御守りはバーンの守りとして妹紅が肌身離さず持っていた一番大事な物
「返せ……!!」
取り返そうと身を動かすがダメージと張り付けにより動けない
「……やはりこれでしたか」
バーンの守りを見た男は洗脳が効かない理由を知る
(本には精神破壊や封印の類いに耐性があるとありましたがこれはそんな簡単な代物では無かった……精神に影響を与える全ての術や魔法に完全な耐性がある……効かない訳です)
その御守りは妹紅が考える以上に凄い物だった
バーンは精神破壊や封印の類いと言ったがそれは一端、妹紅の精神に悪影響を与える考えられる全ての術に対する耐性が施されていた
「焦りましたが原因が分かればどうという事はありません」
バーンの守りを妹紅から離し、また手は頭に伸ばされる
「それを……」
俯いた妹紅が呟いた
「!?」
男は退いた
(熱気!?)
辺りは一瞬で温度が上がっていた、妹紅を中心に
「返せぇぇぇぇぇぇ!!!」
ドゴォ!
火柱が上がる
怒りが炎となり天を衝いていた
剣を容易く溶解させ妹紅はゆるりと立ち上がる
「こ……これ程とは……」
その力に戦慄する
その力は滴る汗すら蒸発させる程
「藤原妹紅!!」
男は輝夜を前に突き出す
「蓬莱山輝夜がどうなっても良いのですか!?」
人質を盾に妹紅を静めようとしたが
「……良いな?輝夜……」
妹紅は止まらない
(くっ!?不死を利用する気ですか!)
蓬莱人は死んでも魂を基点に甦る事が出来る
だから妹紅が輝夜ごと男を殺っても輝夜だけは甦る事が出来る
男はその意図を察したのだ
「良いわよ妹紅……早くやりなさい」
輝夜もそれを理解し承諾した
「観念しろ……クソ野郎!!」
火柱収まると炎翼が顕現し
「らああああっ!!」
駆けた
「……!!?」
男は動けない
ピタッ……
拳は輝夜の目前で止まっていた
「……」
拳を退いた妹紅が後ろを睨む
「……まだ死ねないものでしてね」
男が立っていた、息を荒げて
「それを返せ……」
「嫌だと言ったら?」
「殺すぞ……」
殺意に嘘は無い、さっきので倒れてはいるが輝夜は解放されたから気兼ねも無い
返しても返さなくてもどの道本当に殺すつもりだった
(冷静を失っている……今ならスキマで……)
スキマを使い捕らえようとした瞬間
「むっ!?」
弾幕が男を襲った
「大丈夫ですか!」
撃ったのは鈴仙、試合とは思えない妹紅の火柱に出て来たのだ
「何!?」
弾幕を避けた男に鎌鼬が襲う
「あやや!?妹紅さん!?無事ですか!!」
鎌鼬は文、同じく火柱を見て急遽戻って来たのだ
(アレは鴉天狗?射命丸文ですか?もう一人は確か月兎……何にせよこれは余りにも多勢に無勢……)
さしもの男にもこれ以上は無理だと感じた
ブゥン……
スキマが開かれる
「今日は潔く退きましょう……土産も出来ましたしね」
足を踏み入れながら告げる、逃げるのだと
「返せ……!!」
「またいずれ会うでしょう……その時まで預かっておきます」
「……ッ!!」
怒りを精一杯抑え、妹紅は聞いた
「お前……何者なんだ……?」
スキマを閉じながら男は妹紅に告げた
「私の名は……」
エスターク……
地獄の帝王……
「なんですか今の男は……」
文が消えた場所に向かって呟く
「妹紅さん!!」
鈴仙が叫んだ
炎が消えた妹紅はフラフラと真っ直ぐに立てていなかった
目の焦点はズレ、止血した腕はまた傷が開き血が流れている
「……ぁ……」
そのまま倒れた妹紅は気を失った
これが夢との接触……
最悪の……
ファーストコンタクト……
盆休みが貰えたのは嬉しい!3日だけど……
帝王の名はエスターク!……まぁわかってますよね。
バーンの存在を知ったエスターク、これがまた物語を加速させます。
次回も頑張ります!