神殿
「……」
正邪は笑っていた
「貴方の助言のお陰です」
並べられたアクセサリーを見せつけられて
「……両方とも手に入れるなんて凄いな!良くて1つと思ってたから余計に凄い!やるなぁウォルター!」
笑わざるを得なかった、褒めざるを得なかった
(なんてこった……まさか無傷で2つも奪ってご帰還は想定外過ぎる……何があったチルノ、大妖精……)
内心焦るも笑顔は崩さない
今は潜入中だからだ
「私のお陰だね、どうだエスターク!役に立ったろ?」
だから心にも無い事を言わなければならない
「ええ、貴方を仲間にして正解でした」
そう言うもののエスタークは余り嬉しそうではなかった
「これも因果に辿り着く物ではなかった……」
二人のアクセサリーも望む物ではなかったから
「なぁエスターク、バーンの遺産を集めてるけどなんかあるの?まさかコレクション目的な訳ないよな?」
「……」
正邪の問いにエスタークは少し考え返事を返した
「わかりません……それを私も知りたいのです」
理由はエスタークにもわからない、ただ使命感にも似た感情が遺産を集めさせるのだ
「あ、私には話せないって奴か、そりゃ悪かったよ」
「……まぁそんな所です」
話したくとも説明出来ないエスタークは正邪の解釈に合わせる
(なんだこいつ?嘘はついてないみたいだけど……)
正邪もそれは見抜いていた
(訳がわからないけど妹紅のスライムと遺産に執着してるみたいだ、よし、ここは然り気無く誘導だな)
その上で利用する事を決め
「そんでエスターク、次の策なんだけどさ」
切り出す
「……もう次の策があるのですか?」
少し信じられない視線が向けられる
「聞く?」
その視線に正邪は問い返す、信じないなら別に良いよ……と
「……聞かせなさい」
聞くことにする
「そうこなくちゃね!」
正邪の策は始まった
紅魔館・図書館
「うん、美味しい」
「そうね」
妹紅、続いてパチュリーが呟いた
「美味しいねチルノちゃん!フランちゃん!ダイちゃん!」
「そうね!」
「うん!」
「ピィ!」
4人は笑いながら食べる
今は皆で食事中
する事が無かったからだ
あの後、魔理沙の事はエスタークが片付いてからと皆で決めた
今下手に探しに動くとまた利用されるかもしれないからだ、もう騙される事は無いだろうがそれでも確実とは言えないから探すのは後にした
だが片付けようにも肝心のエスタークがどうしようもない
異世界の住人のエスタークが危険極まる幻想郷に居る筈がないし居たら誰かが知らせる
異世界に渡る術が無いから今はエスタークが事を起こすのを待たざるをえないのだ
早く遺産や仲間を取り返したい思いが妹紅とパチュリーには表れていた
「お気楽ねぇ貴方達……」
一緒に食事をするレミリアが呆れ顔で言った
「そう言うレミィは難しそうな顔ね」
「それは可能性を考えてたらこうもなるわよ……」
パチュリーに苦く笑う
「可能性?何の?」
「チルノが言ってたウォルターって奴の可能性よ」
「どういう事?」
「そのウォルターはヴァンパイアハンターの可能性があるの、それもとんでもないレベルのね」
「その根拠は?」
「チルノから聞いたウォルターは吸血鬼を知っている、そして服装は調べると中世のイギリスの服装が近かった訳なのよ」
「……それで?」
「最初はアルクェイドを狙うハンターかと思ったけど時代が離れ過ぎるから違う」
「アルクェイド?誰だそれ?」
気になった妹紅が入る
「私と同じ吸血鬼よ、朱い月の継承者と呼ばれる人造吸血鬼」
「人造……ブッ飛んでるわね」
「でしょう?造られた上に朱い月なんてあんまり舐めてるから潰しに行った事があるくらいだし……」
「潰しにって……お前もブッ飛んでるな」
「あの頃は若かったもの、幻想郷に来る前だから300年くらい前だったかしらね」
「それで勝ったの?」
「勝った……とは言い難いわね、途中で冷めて帰ったから」
「何故?」
「記憶がリセットされた状態だったのよ、だから気迫も何も感じないから興醒め……私が圧倒してたし」
「へぇ……大した事なかったんだな」
「そうね、全く本気じゃなかったもの」
「?……何で?」
「それは人造なのが関係してそうね、興味なかったから放っといたけど」
「ふーん……」
「おそらく本気を出せば対等以上だったかもしれないわね、当時で考えれば……だけど」
「じゃあ今は?」
「当然負ける要素が無いわ」
「だろうなぁ」
「まぁ本気の先が有りそうな感じもしたから一概には言えないけどね」
「……二人共、ウォルターは?」
「あ、忘れてた、どこまで話してたっけ?」
「服装がイギリスの所からよ」
「そうね、話を戻しましょうか……ウォルターが中世のイギリスを生きていたとすればその時代にはとんでもない吸血鬼が居たの」
「……そんなになの?」
「ええ……その吸血鬼は言わば吸血鬼の祖とも言える純血種、私も生粋の吸血鬼だけど彼に比べたら不純物が多いと言われるわね」
「吸血鬼の……祖……」
「知ってるでしょドラキュラ伯爵、彼がその伯爵その人よ」
「……マジで!?」
「マジよ……名をアーカード、起源にして頂点と呼ばれる伝説の吸血鬼……」
「強いの?」
「……吸血鬼の体の強度で100万回ぐらい殺さないと勝てないって言えばわかりやすいかしら?だからウォルターって奴がそれを狩ろうとしていたのならやりあえる程度の強さはあった筈よ、なら当然強いわね」
「……何からツッコめば良いんだよ」
「?……100万回の事?確かに化物だけど別に大した事ないじゃない」
「いやいや!大した事あるだろ!」
「そうねレミィ、それぐらいなら……面倒ね、で済むわね」
「パチュリーまで!?」
何故か二人はそれを凄いと思わない、思うのは妹紅だけ
「何を慌ててるのよ妹紅……」
「お前等こそなんでそんなに普通なんだよ……100万回だぞ100万回!おかしいだろ!」
妹紅は声を荒げるが二人の態度は崩れない
「だって……妹紅を知ってるもの、ねぇレミィ?」
「そうねぇ、妹紅を知ってると大した事じゃないもの」
二人は顔を見合せ苦笑する
「……あ、そうか」
妹紅もようやく気付いた
「そっ……貴方、不死じゃない」
レミリアが笑みを向ける
「回数なんて概念が無いでしょ?無限だものね、それに比べたら100万なんて全然大した事ないわ」
パチュリーは魔導書を読み始める
「あぁ……確かになぁ……」
説明されて再度納得する
そう、妹紅は死なない
老いる事も死ぬ事も無い
完全なる不老不死
不死を前に何回殺されても大丈夫だとかそんなのは低次元の話なのだ
次元が違う事なのだ
如何にそのアーカードが化物だろうと不死の点のみで言えば遥か格下だったからだ
「……ちょっと外に行ってくる」
不意に立ち上がった妹紅は返事を待たず出ていった
「どうしたの妹紅?」
「さぁ……」
出ていくのを見送った二人はまた顔を見合せる
妹紅の気持ちなど想像も出来ずに……
紅魔館・バルコニー
「バーン……ちょっと座らせてくれよ」
椅子に話し掛けると妹紅は座る
この椅子はバーンがバルコニーに来た際にいつも座っていた椅子、大事にされているので100年経っても何一つ壊れていない
「……」
座る妹紅の表情は暗い
「化物か……」
呟くと1人独白が始まった
「そのアーカードって奴は確かに化物だろうさ……」
「100万回殺さないと死なないなんて正真正銘の化物だよ……」
顔が下を向く
「……じゃあ私は?」
気持ちは落ちる
「死なない……死ねない私は何なんだ?化物以上の何かか?」
酷く心が痛む
「人間で居られなくなった私は化物ですらないのかな……?」
苦しい
「私にはわからないよ……」
泣きたい
「バーンも化物みたいに強かった、大魔王だったもんなぁ……でもバーンには寿命があったし死んだ……実際はそう思ってた私の方が化物だったんだ……」
辛い
「……これから先も私は生きていくんだろうな、何千、何万、何億と……」
「私一人で……」
妹紅が悩み、悲しく、辛い理由
それは不老不死
老いも死も無い自分の先を感じていたから
人間の形をしているが既に人間を辞めている、なら妖怪に分類されるのか?それも違う、妖怪ですら居られない
ならその妖怪から化物扱いされてる連中と同類か?
……違う
実はその化物よりも自分は遥かに化物だった
蓬莱と言う化物が人の形を成しているだけ
あの大魔王と恐れられ、化物と思っていたバーンよりも恐ろしい化物を……
そして自分の行く末を想像したのだ
死の理から外れ、無限に続く誰も居ない道を一人で進むのを……
皆寿命がある、いつか死んでしまう時が来る
妖精は死なないが自然が保たれなければ消えてしまう、何かが原因で壊されるなどよくある話だ、なら厳密には死はある
もしそうなれば間違いなく妹紅は一人になってしまう
輝夜や永琳は同じ存在ではあるが輝夜は死を与えられているし永琳はその気になればどうにでも出来るだろう
でも妹紅は違う、死を無くしたまま生きなければならない、生きざるをえない
決まっている道を歩く、それは受け入れている、辛いのは辛いが支えはあった
バーンと交わした約束
死なない約束
それは肉体のみではなく心、魂の死も含むと解釈していた妹紅はそれを唯一の支えとして耐えていた
約束は守る、それは破らないし変えない
生きる気でいる妹紅は来る孤独が怖かったのだ
「……考えてもしょうがないけどさ」
どうしようも無い、だから考えない様にするしかない
「なぁバーン……お前が生きていたら……」
太陽を見上げる
「お前なら何て言うのかな……」
亡き友を想うと少しだけ弱音を吐かさせた
「……ピィ?」
柱から声が掛けられる
「……ダイ」
そこに居たのはダイだった、妹紅の様子が気になり見に来たのだ
「一人で来たのか……危ないだろダイ」
嗜めた
いつエスタークが襲って来るかわからないのに狙われているダイの一人行動を諌めたのだ
「……ピィ」
気の無い返事をしながら妹紅へ近付くダイ
「ピィ?」
大丈夫?
と問い掛けた
「ッ!」
顔が歪むも
「……大丈夫だよ」
そう返した
「……ピィ?」
本当に?
「だから大丈夫だ……って……」
妹紅の言葉は止まった
「……」
ダイの優しい瞳と
「ピィピィ?」
本当に大丈夫?
と言う言葉に
「……悪いダイ、少し強がってたよ」
観念した妹紅は謝り、語り出した
「なぁダイ……永遠なんて得る物じゃないよなぁ……」
「……」
妹紅の語りにダイは聞き入るだけ
「誰もが望みながら信じない、そんな物を私は手に入れてしまった……」
作り笑いをしながらダイへ向く
「……辛い事なんだぞ?終わりが無いって言うのは……それは地獄さ……」
握る拳が震える
「たまに……とても苦しいんだ……!」
「……!」
妹紅の様子にダイは一瞬驚く
「今は楽しいよ……でも、いつかは皆居なくなる、そうなったら私は一人だ、今まではそれでも大丈夫だったけど……もう無理なんだ……!」
拳は更に強く握られる
「友達の暖かさを知ってしまったから……!」
妹紅が皆と出会う前なら大丈夫だった、孤独だったから
一人で生きていた頃の妹紅なら何も感じなかっただろう
しかし今は友が居るし仲間が居る
それはもう体に染み付いたもの、消せない
絆は消せないのだ
「……皆が居なくなったら私は狂うかもしれない」
そんな事を言ってしまう
理解出来るかはわからないダイにそんな事を言ってしまうほど妹紅は参っていた
「……ピィ」
ダイが口を開く
「ピィ……ピィピィ?」
妹紅は……人間になりたいの?
そうダイは聞いた
「……」
その問いに少し止まった妹紅
「なりたいさ……」
言葉にした
無理だとわかっていても切望する事を
純粋な願いを……
「ピィ」
ダイは言った、わかったと
「ピィピピィ……」
妹紅がそれをお願いするなら
「ピピィ」
やってみるね……と
「?」
意図の掴めない妹紅はダイを見つめる
「ピィ……!!」
ダイが力を高める、しかし妹紅には高まる様には感じられない
「ピィィィィ!!」
尚も高め続けるダイ
バチッ
ダイの力は弾かれた
「ピィ……」
悲しく俯きながらごめんと謝るダイ
「……よくわからないけど励ましてくれたのはわかったよ」
妹紅にはその力を感じられなかった
自分の中の化物に干渉しようとした事さえも
「ありがとうダイ、元気出たよ!」
調子は戻っていた
「ピィ?」
「大丈夫だよ、ダイに聞いてもらったら楽になったからさ、さぁ行こう!」
ダイのお陰ではない
空元気だ、何をしても覆らない事を悩んでも仕方ないと思う妹紅は切り換えただけだった
「……ピィ」
頭に乗せられたダイは小さく呟く
絶対に叶えてあげるね……と……
それから数日後
神殿
「準備は出来ました……後は実行するのみです」
エスタークは不敵に笑う
「1つ言っとくけど絶対成功するとは言えないよ?それはわかってくれよ?」
「ええ、それはわかっています、しかし貴方も中々の趣味をお持ちですね」
正邪にニヤリとエスタークは笑う
「そう?そんなに変な趣味かな?」
「いえ……良い趣味ですよ」
「ハハ……ありがとう、じゃあ始めようか」
背を向け歩き出すエスタークを見ながら正邪は笑みを崩さず願う
(悪い……お前等には酷な事だけど……乗り越えられるって信じてる、こっちももう少しなんだ……だから……頼む!)
後ろめたさを感じながらも正邪も歩く
幻想郷の為に……
夜・紅魔館
「……うーん」
「ピィ……ピィ……」
妹紅とダイの寝息が聞こえる
ここは妹紅にあてがわれた部屋
エスタークがダイを狙った日から皆は単独行動を避けて紅魔館で寝泊まりしていた
「……うむぅ……」
熟睡している様にも見えるが何かあればすぐに動ける様に眠りながらも気は張っている、エスタークの襲撃があったとしても大丈夫な様に
「……!……う、うぅん……」
妹紅の寝顔が変わった、苦しそうに唸っている
「う……ぅ………」
何かを見ている様で寝言ながらも声にでた
「バーン……」
博麗神社
「そろそろ寝ようかな」
特に何かをしていた訳ではない靈夢、就寝の為に床につこうとする
「……?」
何かを感じる
(博麗神社の聖気が何かを弾いてる?)
感じたのは神社に干渉してくる何か
(……何?)
気になった靈夢は外へ向かう
「……これって……」
外に出た靈夢は干渉する何を知る
「術が入って来ようとしてる……」
それは術だった、見えはしないがそれを感じとる
(ここだけじゃなくてとても広範囲……幻想郷全体?)
術が来ていたのは博麗神社だけではなかった
(それにこの術……幾つかの魔法と術を合わせてる、主なのは眠りへ誘う魔法ともう1つは……)
(夢を見せる術……)
術の効果を知った靈夢は暫し考え結論を出した
(またエスタークって奴の仕業でしょうね、どうせ妹紅さん達が何とかするでしょ、自殺願望者の邪魔しちゃ悪いから傍観ね)
中へ戻ろうとする靈夢はふと足を止め術を見上げる
(夢の術は色々あるって師匠が言ってたっけ……)
記憶を辿る
(悪夢を見せたり良い夢を見せたり……それでこれは……)
術を詳しく探り
(想いを汚す悪夢……趣味悪いわ)
歩きだし靈夢は中へ戻っていった
神殿
「博麗神社は予想通りダメみたいだな」
映像見ながら正邪
「その様ですね」
エスタークが返す
「あいつの遺産は盗らないのか?」
「ええ、呪いの道具が正解とは思えないので」
「同感だね、もっとも持ち主の靈夢は持ってないしどこに置いてあるかもわかってないよ多分……それより行かないのかい?」
「そうですね、そろそろ頃合いでしょう」
「術を使ってる間は鎖と洗脳術は使えないんだから気を付けなよ、私はここで動きがあったら伝えてやるからさ、任せときなよ幻想郷の事はだいたいわかるから良い指示を出せると思うよ」
「任せましたよ正邪」
「行ってらっしゃ~い」
スキマを開き出ていったエスタークを見送ると正邪は小さく息を吐く
(さぁここからだ)
映像を睨みながら機を待つ
永遠亭・医務室
「てゐへんだてゐへんだー!」
ドタドタと走ってくる音が聞こえる
「襲撃だー!」
扉を開けて叫ぶのはてゐ
「わかってるわよてゐ」
永琳は素っ気なく返す
「やっぱり知ってたかい」
てゐは永琳の予想出来た様子にニヤリと笑う
「当然よ、気付けたのは私とずる賢いてゐくらいじゃないかしら?」
「ずる賢いとは随分な言われようだね、まぁ気付いたのは危険に敏い私達ぐらいだろう、エスタークが大して強くないからって余裕がある奴らは今頃夢の中さ、鈴仙みたいなね」
「まったくあの子は……」
永琳は溜め息を吐くと立ち上がる
「行くのかい?」
「ええ……てゐはどうするの?」
「行くのは紅魔館だろう?んじゃあたしゃ術の発生源を潰しに行こうかな」
「そうね、頼むわ」
「姫様は良いの?」
「アレ以来エスタークは来ないからここの遺産には興味がないんでしょう、来るなら前の妖怪の襲撃の時にもこれたからね、だから心配無いでしょう」
「鈴仙は?」
「……放っておきなさい、私以外の師匠を持って妙な演舞だか挨拶だか知らないけど遊んでる弟子は必要ないわ」
「アッハッハ、手厳しいねぇ……慧音も心配無いだろうし、じゃ行きますか」
二人は永遠亭を出ていく
永遠亭・輝夜の部屋
「……」
眠り続ける輝夜
「……」
ピクッ
体が反応する
「……」
輝夜は起き上がっていた
永琳が何をしても起きなかったのに
起きたのは術が原因なのかもしれない
夢を見ていた彼女に掛けられた夢の術がもしかしたら……
「……カラ……ダ……」
そう呟いた輝夜は布団を出て歩き出す
暗い瞳を開かせて……
紅魔館・付近の森
「……フッ!」
拳が空を切る
「ハアァッ!」
目にも止まらぬ蹴脚の連打
「ハッ!!」
最後に掌底を繰り出すと動きを止める
「……ふぅ」
美鈴は汗を拭う
「今日はこれぐらいにしますか」
持ってきたタオルで顔を拭きながら歩き出す
美鈴は修行していた、昼間は仕事があるので満足な修行が出来ないから夜にしている
良い心掛けなのだが代わりに昼間にツケが回り居眠りしがちなのが問題ではあるが
だが今回はそのお陰で気を張っていた美鈴は術に掛からなかった
……ですか……
「ん?」
紅魔館の近くまで戻った美鈴に声が聞こえた
(誰か居る……訪問者?……な訳ありませんねこんな夜中に……となれば賊ですか)
そう判断した美鈴は気配を断ち賊が見える場所まで向かい様子を窺う
「紅魔館にスキマを通さない結界を張るとは……やられましたね、賢者の仕業でしょうか……まぁ考えてみれば当然です」
(あれは……まさかエスターク?)
賊はエスタークだった
紅魔館へ侵入しようとして結界に弾かれていたのだ
(そういえばパチュリー様が何かしていましたね、成程……スキマ対策でしたか)
紅魔館は常時結界に守られていた
スキマを使うエスタークは何時でも何処にでも現れる事が出来る
だからパチュリーは紅魔館にスキマを弾く結界を張っていた、幻想郷全ては無理だが友だけでも安心して眠れる様にと
「ならば直接入るのみです」
門へ歩を進めるエスタークに美鈴は身を強張らせる
(まだ私に気付いていない……今が好機!)
エスタークへ踏み出す瞬間
『後ろだよエスターク』
「後ろ?」
エスタークが振り向いた
「!?」
美鈴は視認される
(気配は絶っていた筈!気付いてもいなかったのに!?)
正邪の声が聞こえない美鈴は驚愕し動きが止まる
「門番……紅美鈴が居たのですか、貴方も充分脅威……消えてもらいましょう」
指を突き出すと光球が撃たれ美鈴へ向かう
「……?」
身構えた美鈴だが光球を不思議に見つめている
(魔法?でも全く大した事無い……)
強い攻撃では無い、それも攻撃性が無いくらいに感じる
「……!!」
危険は無いと拳に力を込め
「ハッ!」
拳で光球を弾いた
「……さようなら紅美鈴」
弾いた美鈴を見てエスタークは笑った
「なっ!?」
弾いた光球が割れ美鈴の体を魔力が覆う
「……くっ!?」
バシュ
美鈴は空へ消えた
「攻撃ではなく……バシルーラ」
エスタークが使ったのはバシルーラ、対象を強制的にどこかへ飛ばす呪文
「武道家なのが致命でしたね」
美鈴が受けてしまったのは武道家故
呪文の知識があまり無い美鈴は弾く行動に出たのだ
避ければ済む事だが己の四肢で戦う武道家だから避けるまでもないと弾いてしまったのだ
「では……」
進む
目的を果たさんが為に
神殿
(あー……今のは言わないべきだったか)
正邪は頭を掻いた
(でも美鈴が絶対エスタークをのすとは限らなかったからなぁ……)
後悔していた、美鈴がエスタークを倒していたかもしれないと
でもあくまでかもだったから映像に美鈴が映ってから咄嗟に思考した末に知らせたのだ
美鈴の実力を疑う訳ではなかったが慎重に事を行おうとする正邪の思考は冒険をしなかった
(まぁ今から私がする事も似たようなもんだけどね、事を成せるか、成せても成せなくてもその後に言い訳を信じてくれるか……賭けだけどしょうがない、用心深過ぎてあいつが居る間は何も出来なかったからね)
エスタークが紅魔館に入るのを確認すると正邪も行動を決意した
「なんだここ?」
妹紅は気付くと真っ暗な空間に立っていた
「……夢?」
明らかに異常な空間と最後に記憶した紅魔館と違い過ぎる景色にそう感じた
「面白くない夢だ……」
感想を溢した妹紅は気配を急に感じ視線を向ける
「誰だよ?」
闇で姿を見せない者に問い掛ける
「久しいな……」
姿が現れる
「妹紅……」
「!?バ……!?」
妹紅は驚愕し見つめる
「バーン……!!」
忙しい……これに尽きます、休みくれ~
はい、今回は前話とうって変わって重い話です、ちょっと自分のブルーな気分が反映されたからかもしれません……
また大きな作戦に出たエスターク!
どうなるか……
次回も頑張ります!