夢の事件より2日後
紅魔館・図書館
「そういえば」
不意にチルノが言った
「皆何の夢見たの?」
気になったからだ
皆がどんな夢を見たのかと
「それじゃまず自分のから話しなさい」
「良いわよ!」
パチュリーの返しにチルノはふふんと鼻を鳴らした
「バーンをボッコボコにした夢よ!」
笑顔でピースした
「ふーん、そう……」
パチュリーは魔導書を読みながら気の無い返事をし
「私の見た夢は……」
魔導書を閉じて話し出す、大妖精とフランがチルノに詳細を聞こうと口を開きかけていたが機先を制されて口が空いたまま
「なんか聞いてよ!!」
チルノが怒った
「親分うるさい」
妹紅がダイと戯れながら言う
「なんですってー!子分の癖に生意気よ!」
「チルノちゃん私が聞くよ~」
「やっちゃえやっちゃえー!」
怒るチルノに宥める大妖精に煽るフラン
「賑やかねぇ……」
レミリアは呆れながらも微笑む
「レミィはどんな夢見たの?」
「私?私はバーンにフラれる夢だったわよパチェ」
「その割には普通ね」
「当然よ、だって有り得ないもの、だから呆れて夢の中で寝ていたわ」
「何が有り得ないの?」
「フラれる事よ」
「それは言い過ぎじゃない?」
「過ぎではないわ、当然なのよ、私がフラれる事は有り得ないし私がフル事も無い、だから当然なのよ」
「その根拠を知りたいのだけど……」
「それが私とバーンだからよ、それ以上それ以外の答えは無いわ」
「それを言われたら……お手上げね」
「それが愛するって事よパチェ」
レミリアは愛を汚されたが汚れが付け入る隙が二人には無かった
「パチェはどんな夢だったの?」
「私はバーンに魔の深淵の果てを教えられたわ」
「魔の深淵の果て?」
「ええ、魔の深淵へと至った者はその魔に取り込まれて自らが新しい深淵になると言われたわ、だから今までの事は徒労、無意味な事は辞めて寿命を全うしろって」
「へぇ……虚実混じってそうに聞こえるわね」
「そう聞こえるでしょ?でも私は否定した、何故なら魔の深淵に辿り着いた者は誰も居ないから」
「わかるの?」
「わかるわよ、だってメドローアも魔の深淵の1つだけど作成者は生きてたもの、それに……」
「それに?」
「バーン自身もある意味で深淵だったから」
「鬼眼王……ね」
「そう、あれは魔の深淵と言えるわ、つまり深淵とは言うなら階層ね、深みに向けての階層……」
「なるほど階層……」
「そのバーンだって真の魔の深淵に至っていなかった、あれだけの力でまだまだ階層の途中……だから魔導書を読んでいたのよ」
「ああ、読んでいたわね、つまり嘘って見抜いたのね」
「そういう事、同時に偽者……って言うか違うって事をね」
パチュリーは持つ知識で汚れを払っていた
「なんでボッコボコにしたのチルノちゃん?」
「バーンがあたいをバカにしたからよ!」
「なんて言われたのー?」
「バカは死んでも直らんな……とか、力だけの愚か者とか言われたわね」
「それでバーンさんを……」
「すっごく弱かったけどね!あれはバーンじゃないわ!まっ!本物のバーンでもあたいは勝つけどね!」
「ウン、ソウダネチルノチャン」
「大妖精はー?」
「私もバーンさんの夢だったけど……特に何も……」
「なんで大ちゃんだけ何も無いの?」
「変だよねー」
「それは多分……私が嬉しかったから……かな?」
「?……意味わかんない、どういう事大ちゃん?」
「その……嬉しくてバーンさんに抱きついて喜んでたら何言われたか聞いてなくて……」
「大妖精らしいねー」
「フランちゃんは?」
「あたしは弱いって言われた」
「バーンさんと比べたら厳しいね」
「それはわかってるけど何言っても聞いてくれなかったからあたしついカッとなっちゃって……」
「あたいみたいにボッコボコにしたんでしょ!」
「ううん……殺っちゃったー!」
「ええ!?殺しちゃったのフランちゃん!?」
「そうだよ、きゅっとしてドカーンってしたら消えちゃった」
「怖いよフランちゃん……」
「待って!違うの!確かにカッとなったけどあたしは確かめる為にやったの!」
「確かめるって?」
「本物のバーンがあたしの能力で壊せる筈無いもん、だから壊せたなら偽者、壊せなかったなら本物だからちゃんと話を聞く!って考えたの」
「それにしたって危ないよフランちゃん……」
3人も特に問題があった訳ではなかった
「妹紅は?」
チルノが聞いた
「ん?私か?」
「そうよ!なんの夢だったのよ?」
「そうだなぁ……」
ダイを見つめながら妹紅は
「フフフッ……!」
「ピピピッ……!」
笑い合った
「何よー!何だったの妹紅ー!」
フランにも聞かれるが
「バーンが……いや……」
少し恥ずかしくもあり
「内緒だ!」
秘密にした
「教えてよー!」
「教えなさいよー!」
「私も知りたいです妹紅さん!」
3人に詰め寄られるも
「……ヤダ!」
悪戯っぽく笑った
「ねぇパチェ?輝夜が言ってた……秘法?って書くのかしら?何か分かる?」
パチュリーにレミリアは聞いた、あの輝夜が発した謎の単語の意味を
「それは私も考えてた……秘法を使えの後にシンカしろ……シンカが進化だとすればあの輝夜が言っていたのは進化の秘法……」
「進化の秘法……ね、わかる?」
「流石にわからないわ……おそらくエスタークが独自に作った法だから」
「……その法が進化を促すのだとしたら何故エスタークは使わないのかしら?秘策だとしても使う素振りすら見せなかったけど」
「それは簡単な理由だと思うわ、代償があるか、未完成だからか……そんな所でしょう」
「でもそれにしても使わざるをえない機会はあった筈だけど……」
「……もしかすれば一度使って未知なる進化に恐怖があるのかもしれないわね」
「何にせよ警戒しとくに越した事はないわね」
「そうね、それにしても……進化ねぇ……」
「何か気になるのパチェ?」
「ええ、進化を促す力……似てると思わない?」
「何に?」
「バーンの鬼眼に……」
「……!!」
「鬼眼も進化を促す力……何か因果的な物を感じない?」
「……そうね、もしかすればエスタークはその為に遺産を狙っているのかもしれないわね」
「でも遺産に鬼眼の力が宿る物は無い……」
「……」
「……」
二人は一抹の不安を覚えるも何も出来る事は無かった……
神殿
「……」
王座に座りエスタークは物思いに耽っていた
(あの時現れた蓬莱山輝夜が何故秘法の事を……)
疑問だった
正邪にしか話していない秘法の事を何故輝夜が知っていて使用を促して来たのか
(いや……あれは蓬莱山の持つ気配ではなかった……あれは寧ろ夢の……)
エスタークもあの輝夜がおかしいと感じていた
そして思った
あの輝夜と自分の見る夢の声が同じ様に感じたと
(……あの時私は奴隷を殺したいと思った、幻想郷を滅ぼそうと考えた、知らず知らずの内に私は影響……いや、変えられていたのか?)
あの時感じた感覚を思い出しながらエスタークは薄く笑った
(それもまた良いかもしれません、お陰で切り札が出来そうですからね)
聞き出した情報に楽しそうに笑い
「正邪」
仲間を呼んだ
「なんだい?」
呼ばれた正邪が現れる
「夜を待ち守矢神社に向かいます、ミスト、ウォルター、カメハはまだ傷が癒えていないので休ませます、バルバトスを呼んでおいてください」
「あいよ、私も行こうか?」
「……いえ、貴方は待機です、骸を見ていてもらいます」
「つまらないねぇ……わかったよ、気を付けてな」
正邪はバルバトスを呼びに出ていった
(さて……黒のコアとは一体どんな物でしょうか……)
物を想像しながらエスタークは楽しみに夜を待った
(ふーむ……)
歩く正邪は表情に出さず考えていた
(てっきりミストとウォルターを見ていろって言われると思ったんだけどな、あの二人なら私を監視する事にもなるから)
(それをあの骸の監視に当てるって事は割合がまだ大きいんだろうな……信用の割合が……)
そう考える正邪には少し複雑な感情があった
(残っていた最後の良心なのかねぇ……裏切る予定とは言えそこまで信用されるとちょっと……いや、ほんの少しだけだけど……)
頭を掻き、困った
(裏切りづらい…… )
正邪は人にあまり頼られたり好意的に来られた経験が少ない
だから信用の混じる措置に少し戸惑った
(でもどっちがって言われたら比べるべくもないからね)
それでも目的に揺らぎは無い、滅ぼそうとするエスタークと幻想郷ならどちらが大事かなど考えるまでもない
(黒のコアが何かはわからないけど……神奈子のあの様子じゃ危険な物みたいだ、どの程度の物なのかはわからないけど……)
骸の居る部屋の前に来た正邪
(そろそろ……壊れ時だね)
表情を引き締め部屋へ入っていった
永遠亭
「もう大丈夫ですよ椛さん、霖之助さん、慧音さん」
鈴仙は3人に言った
「ありがとう鈴仙」
霖之助が礼を述べ二人も礼を述べる
傷が癒えた3人は退院するのだ
「これからどうされるんですか?」
鈴仙が問う
「そうだね、何かしたくても今は何も出来ないから備えるだけだよ」
「私もだ、人里を守らないとな、私がマヌケだったせいで危なかった……次はしっかり守らないとな」
「射命丸は今張り込みをしてるみたいなので私は妖怪の山をにとりに任せて幻想郷全域を警戒します」
そう言うと改めて礼を言った3人は永遠亭を後にする
(姫様はまだ寝てるし師匠はずっと部屋に籠りっぱなしだしてゐはいつも通りだし……)
鈴仙はよし!と意気込む
(修行しよう!これも備え!それに師匠を越える為にも!)
そのまま竹林へ消えていった
地獄
「どうですか映姫様?」
「思ったより掛かっていますね」
「やはり力の高が?」
「ええそうです、力の高い者には相応の時間が掛かりますがやはり頂点と歴代最強……予想より遅れています」
「……間に合いそうですか?」
「それは何とも言えない所です、帝王がいつ決起するかは私の預かり知らぬ事です」
「不眠不休ですかね?」
「心苦しいですが頼みます」
地獄の二人の準備は続けられていた
夜・守矢神社
ブゥン……
現れるはエスターク
(……ここに黒のコアが)
降り立つエスタークは周囲を見回す
(ここには誰も居ませんか)
誰の気配も無い事に安堵する
恐ろしいのだ幻想郷が
エスタークからすれば狙っている幻想郷から狙われる身、それも自身が敵わないレベルの敵が幾人も
先の夢の事件で本当に危なかったエスタークはその身に幻想郷に対する怯え、妹紅に対する恐怖があった
だから夜にこんな隠密行動を取っている
「行きますよ」
神社内へ進む
「……!」
足が止まる、神社の入口にある気配に気付いた
「……誰です?」
そこに居る者に問う
「あやや……気付かれましたか」
「来る確証はなかったのですが……」
物陰から二人の影が現れる
「ですね、一応守矢の人達も関係してるからもしやと思ってはいたんですが私もする事が無いとは言え来るとは思いませんでした」
「まぁ良いでしょう、来たのですから」
二人は文と白蓮
二人は守矢神社にて待ち構えていた
宛の無い文は守矢神社を見張る事にしていた、エスタークが神奈子達を捕まえているなら来るかもしれないと考えて
だがそれはかなり可能性が少ない事だとはわかっていた、エスタークは遺産を狙っているから張り込むなら紅魔館にすれば良い、でも紅魔館に居るのはこの幻想郷を代表する頂点達、その頂点達に加え美鈴や咲夜も居る紅魔館に自分が見張るなど要らぬ世話だと考えた文は可能性こそ低いも捨て切れない守矢神社に居たのだ
白蓮も守矢神社の様子を見に来た時に文に会い共に待つ事にしていたのだ
「射命丸文と聖白蓮……!」
怒りが滲むエスターク
(何故こうも邪魔が入る!)
思い通りに進まない事態に腹が立つのだ
何をしても幻想郷から何らかの邪魔が入る、その邪魔に腹が立ち、邪魔を払えない自分の弱さにも腹が立つのだ
「逃がしませんよ~」
「油断なさらぬように」
二人が構える
「……バルバトス!」
背後に居るバルバトスを呼ぶ
「抑えれますか?」
「あの時の女と妖怪か……無理だな」
バルバトスはエスタークの前に立ち
「抑えるのは無理だ」
斧を構え、叫んだ
「ブチ殺すからなぁ!」
二人へ駆けていく
「どりぃぃやっ!!」
斧の一閃を二人へ放つ
「おっと!」
文は軽く避け白蓮も避ける
「変わりませんね貴方は……」
「そんな力任せな攻撃では当てれませんよ!」
哀れむ様な白蓮と余裕の文
「余裕かましてんじゃねぇぇ!!」
バルバトスの全身からエネルギーの矢が無数に発射され二人を襲う
「なんの!」
「これしきで!」
それも避ける二人
「メラミ」
火球が白蓮を襲う
「ハアッ!」
その火球を拳で弾き飛ばす
「どりゃあ!!」
そこに間髪入れずバルバトスが向かう
ズアッ!
風がバルバトスを止める
「やらせませんよ~」
風で妨害した文が得意気にバルバトスに笑う
「鴉がぁ……!」
余裕に見てくる文にバルバトスの怒りが溜まる
「お前から殺す!」
標的を文に決めたバルバトスは構える
「では貴方は私が……お覚悟を」
エスタークに立つは白蓮
(このままでは膠着状態……いずれ増援が来る、妖怪の山なら報告にあった河城にとりか……カメハを楽に倒せる者が来るのはマズイ、強引にでも早急に事を運ばなければ……)
この状況が危険と判断したエスタークはすぐに呪文の詠唱に入った
「マヌーサ」
妖しき光が二人へ放たれる
「これは……」
白蓮はすぐに気付いた、大魔法使い故にそれが何かをすぐにわかったのだ
(幻覚の魔法!)
「文!」
注意を促す言葉を投げるも
「あやや!?敵が沢山!?」
(遅かった……)
文は既に掛かっていた
(……文ならば幻覚に掛かっていても心配要りません!エスタークを!)
エスタークへ視線を戻す白蓮
「……!?」
有り得ない光景が映っていた
(私が幻覚に……)
エスタークが幾重にも重なり、大量に見えていた
(ただの幻覚の魔法ではない?)
白蓮は大魔法使い、その力を肉体強化に使ってはいるが魔法使いである彼女が他の魔法を使えない訳がないし知らない訳がない、幻覚の魔法も当然知っていて掛からない様に抵抗するのは彼女のレベルなら簡単だ
なのに掛かってしまっているから考えるのだ
「何……術を混ぜているだけですよ、魔法に対する抵抗力を下げる術を……」
エスタークが種を明かした
白蓮の高い抵抗力を術で落としてから幻覚に掛けたのだ
「……小賢しい事をしますね」
「いえ……貴方には有効でしょう?」
エスタークの笑みに白蓮は内心歯噛みする
肉体強化を行う白蓮の攻撃方法は肉弾戦、弾幕が使えない訳ではないが主な攻撃は肉弾戦、言わば戦士や武道家と同じ
肉弾戦を行う者に幻覚はかなり有効だったのだ
「フフフ……では!」
エスタークが何かをしようと構える
「くっ……!?」
白蓮も身構える
「ごきげんよう」
エスタークは駆けた、白蓮へではなく神社の方へ
「……!?待ちなさい!」
幻覚により多重に見えるエスタークの姿に反応が遅れた白蓮はエスタークの後を追い神社へ入っていく
「はぁ!」
「ぬぅりゃあ!」
白蓮とエスタークを他所に文とバルバトスの戦いは続いている
「これも外れ!?」
文の攻撃は当たらない
「ちょこまかと……!」
バルバトスの攻撃も当たらない
「これなら!」
文は加速し多重に見えるバルバトスに向かい突進をかます
数体のバルバトスをすり抜けた後に衝撃が襲う
「ぐっう!?」
文は地面に倒れていた、バルバトスは幻覚に突進する文の速さを見切り背を殴り叩き落としていたのだ
「速いだけで勝てたら苦労は……ねぇ!!」
力いっぱい蹴り飛ばす
蹴りを防いだ文は地面を擦り飛ばされる
「お前は素早しこいだけの能無し……死ね……クズが!」
罵りながら近付くバルバトス
「フッフッフ……」
笑い声に足は止まった
「素早しこいだけですか……確かにその通りかもしれません」
ゆるりと立ち上がる文
「ですが私にはそれしかないのです、速さこそが私の力……」
その顔は笑っていた
「見せてあげます……」
腰に着けてあるポーチからマントを取りだし、羽織る
「私の本当の速さを……」
ビュウゥゥ……
文の回りを風が舞う
「幻想郷で最も速い力を!」
キュン
「!?」
バルバトスの横を風切り音だけが通った
「また外れですか……まぁ良いです、その内当たるでしょう」
遥か後方から文の声
「さぁ……行きますよ!」
守矢神社内
「ここではない……」
ズガァ!!
「くっ!?」
部屋を突き破る衝撃に怯む
「……そこ!」
ドンッ!!
白蓮の拳が壁を殴り穴を空ける
「……」
壁の穴を見つめる白蓮
(やはり幻覚は厄介……解くには数瞬の時間が掛かってしまう、それを見逃す者ではありません、圧を掛け続けなければ!)
直ぐ様振り向き多重のエスタークに攻撃を仕掛ける
「チィ!」
剣での応戦をするが完全に気を入れた白蓮には当たらない
(このままではいずれ被弾しそこから一気に……)
エスタークも白蓮の力に焦りを感じていた
マヌーサを掛けているとは言え攻撃が絶対に当たらない訳ではない、当たればただでは済まない威力を感じる攻撃に危険を感じたのだ
(ならば先に黒のコアを……しかしそれらしい者は感じない……詳しい場所を聞き出しておくべきだった……)
後悔しながら白蓮の幻覚を狙う攻撃を1歩引き見つめる
「……!」
「!?」
白蓮の振り向き際に知った、目が合ったと、幻覚にではなく自分と
「セアアッ!」
身構える間もなく白蓮は蹴りを放ってくる
「ぬぐうっ!?」
まともに受けたエスタークは部屋を突き破りある部屋で止まる
「かっ!?ゴホォ!?」
胃液と血をを吐きながら顔と肩までを上げ自身が突き破って作った穴を見つめる
「本体は見抜きました……もう惑いません」
穴から白蓮が歩いてくる、その目はしっかりエスタークを捉えている
(……ここは八坂神奈子の部屋……)
部屋に入った白蓮はその部屋が誰の物であるかを思う、彼女にとって今はどうでもいい事だが
「くっ……!?」
身の危険を存分に感じるエスタークだが
(神社内には何もない……何らかの方法で隠されている?こうなれば試すしかありません!)
逃げる事は考えなかった
「……」
魔力を充分溜める
「……イオナ……」
極大の呪文で守矢神社ごと爆破しようとした
ドン!!
白蓮が床を打ち咄嗟の反応で呪文は中断された
「終わりです」
中断の隙を突いた白蓮が一足にエスタークに詰め寄り上に立つ
「……南無三!」
ドン!!
降り下ろされた強烈な拳がエスタークを打った
「ゴハアアッ!?」
拳を受けたエスタークは床を突き抜け大地に衝突
「!?」
しなかった
床の下には既に穴が広がっており長い距離を落ちていく
「八坂神奈子の部屋の下にこんな穴が……」
穴の存在を知らない白蓮は穴の意味を考える
(いえ!エスタークが先!)
優先する事を思い出した白蓮はすぐ穴に飛び降りて行った
守矢神社地下・黒の間
「ぐぅぅ……」
痛みに呻くエスターク
(ここ……は……?)
堪えながら周囲を見回す
「……」
狭い空間だった
僅かな灯火があるだけで薄暗い空間
「……!!」
だからすぐに見つかった
(あれが黒のコア……!!)
台座に置かれている拳大の物
一目でわかった、あれが黒のコアだと
それは幻想郷の如何なる本にも記されず、神奈子以外は知らない遺産
バーンが幻想郷を守る為にと神奈子に託したバーンの魔界に伝わる超強力爆弾
幻想郷の半分以上を楽に灰に出来るその危険度から神奈子は要らぬ混乱と狙われるのを防ぐ為に存在を隠していた
バーンの願い通りに幻想郷に危機が訪れた時だけに使う為に
その黒のコアが遺産を狙うエスタークと人質を取られた神奈子との間に生まれた数奇な運命に暴かれてしまった
(あれが……私の求めた……!!)
一目でわかった、あれが自身の求めていた物なのだと
「くっ!?」
身を捩らせ台座に近付いていく
あれが幻想郷を破壊出来る爆弾だからではない
「ハァ……ハァ……」
台座の前で立つと手を伸ばす
求めたのは爆弾ではなく中身
バチィ!
手は弾かれた
「封印結界……」
黒のコアは結界により守られていた、強力な結界で
「……」
バチッ!バチチッ!!
両手で結界に触れる、拒絶しようと手を痛めるなど構いなく
「ようやく……見つけたのです!!」
バチィ!バチチチチッ!
手が裂けようと止めない
「因果を見つけたのです!!」
ガガッガガガガガ!!
「邪魔を……」
ガガガガガガガガ!!
「スルナアァァァァァ!!」
バァン!!
結界は壊された
エスタークの執念によって
「……」
黒のコアを手に取る
(そうか……因果との出会いとはこの事だったのですね……)
コアから感じる魔力を知り微笑んだ
「さぁ私の中へ……」
念じるとコアから力が溢れだしてくる
「大魔王の力よ……」
「……」
降り立った白蓮はすぐにエスタークを探す
「!!……何をしているのですか?」
見つけたエスタークに問う
「……知りたいですか?」
背を向けたままのエスターク
「いえ……やはり構いません、倒させてもらいます!」
構える白蓮にエスタークはゆっくりと振り向いた
「貴方ごときが私を……?」
「……?」
白蓮は不思議にエスタークを見る、急に強気になっている意味がわからなかった
「やってみなさい……」
ゴゴ……ゴゴゴゴゴゴ……
「なっ!!?」
思わずたじろいでしまった、圧倒的な魔力に
「そ、その魔力は……!?」
知る魔力に
スッ……
エスタークの手がかざされる
「イオナズン」
守矢神社
キュンキュンキュンキュン!!
無数の風切り音が聞こえる
「ぬっ!?ぐっ!?がっ!?」
同時にバルバトスの苦痛の声
「私に勝てない貴方が足りない物……それは!」
見えない文の声
「情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!」
ズガガガガガ!!
「そしてェなによりもォーーー!!」
ズガァ!!
……シュタ!
「速さが足りません!!」
吹き飛ばしたバルバトスに文が決めた
「ぐっ……あっ……」
バルバトスは立てない
さしものバルバトスにも風のマントを羽織った文の超速の連続攻撃には反応出来ず打ちのめされるだけだった
幻想郷最速はバルバトスを触れさす事無く地に捩じ伏せたのだ
「さて!とりあえず貴方には気絶してもらいましょう!」
文が動き出す瞬間
カッ……!
守矢神社が閃光を放ち
「あややややや!?!?」
吹き飛んだ
「ななな……何で……何が……」
状況を掴めない文、爆煙を眺めるだけ
「想像以上です……」
爆煙から声
「エスターク……?あっ!!」
爆煙から現れたエスタークの持つ者に文は驚いた
「白蓮さん!?」
ボロボロの白蓮はエスタークに胸ぐらを掴まれ気を失っていた
「ハハハ……」
ブンッ……
白蓮を文へ投げるとエスタークは告げた
「汚いから片付けておきなさい……そのボロクズを……」
「何て事を……!!」
物言いに文は怒った
「許しません!!」
白蓮を寝かせると風を纏う
「……フッ」
その様を愉快気に見つめるエスターク
「ハアッ!!」
目に止まらぬ体当たりを食らわせた
ガンッ!
文の体当たりは止められた
「大した速さと威力です……」
「い、痛っ……」
文はぶつかった何かを見る
(魔力の……防壁……)
エスタークの前には壁があった、文の渾身の一撃を防げる防壁が
「次は私のターンです」
文に指を突き出す
「メラ」
小さな火の粉の様な火球が文に当たった
ゴウッ!
「あああっ!?」
瞬間に火柱を作り文を焼く
「ククク……」
また指に魔力込める
「メラ……」
ボウッ!
「メラ……!」
「メラ……!!」
「メラ……!!!」
何発も放ち文を焼いた……
「素晴らしい……!」
倒れる文と白蓮を見ながらエスタークは歓喜に震えた
「これがバーンの……」
拳を握り見つめる
「これが大魔王の力……」
手にした力に喜びが止まらない
あの手を焼いた幻想郷の強者を一方的に倒せる力に
自ら望んで止まなかった力を手にした事に
因果と出会えた事に
「フッフッフ……」
笑いながらスキマを広げバルバトスを回収し文の羽織るマントを奪う
「ハッハッハ……」
もう文と白蓮の支配などどうでも良かった、死んでいるかもどうでもよく、気にもならなかった、マントを奪ったのは戦利品の様な物、何か考えがあったわけではない気紛れ
「ハーッハッハッハ!!」
スキマを閉じたエスタークは幻想郷から消えた
それは帝王の尽きぬ憎しみと執念が生んだ結果
幻想郷で、いや……大多数の世界で帝王は悪だろう、原因は関係無い、行った所業は自らの意思だから
その悪に起きた
消え果てぬ憎しみを持つ彼だからこそ起きたのかもしれない
奇跡が……
超展開!
誰もが予想出来ない展開になったと自負しております!読めてた人は私の代わりに書いてくださいww
序盤で神奈子の遺産だけ誰も話題に出さず本にも記されていなかったので黒のコアがキーかと思った人も居ると思います、ようやく回収出来ました。
バーンの力を得たエスターク……果たして……
次回も頑張ります!