神殿
ブゥン……
「フフフ……」
王の間に笑い声が響く
帰還せし帝王、自身の居城たる神殿へ
「お帰りなさいませエスターク様」
ウォルターが迎える
「変わりありませんかウォルター?」
「こちらは特には……エスターク様は随分と変わられた様ですが」
主の変化を感じとるウォルターに驚きはなかった、何らかの方法で力を得たのだと察しそこで終わらせたからだ
「フフフ……皆を呼んできなさい」
「かしこまりました」
「帰ってたのか、どうだったんだ?黒のコアってのはあったのかいエスター……!?」
最初にやって来た正邪の口は止まった
「その魔力は……!?」
エスタークの身から魔力を感じたから
「それはバーンの!?」
知っていた魔力だったから
「いかがですか正邪?」
驚く正邪に満足なエスタークが問う
「どうしてお前がバーンの魔力を!?何があったんだよ!」
混乱する正邪は経緯を問い返す
黒のコアを探しに行ったエスタークが帰ってきたらバーンの魔力を持っていた、訳がわからな過ぎて混乱していた
「これですよ……この黒のコアのお陰です」
懐からコアを取り出し正邪に見せる
「このコアに内包されていた魔力、それは大魔王バーンの魔力でした……それを私のモノにしたのです」
「……他人の魔力を間接的に使うならまだしも吸収なんて聞いた事が無い……そんな事が可能だったの?」
エスタークの答えに疑問を持った正邪
正邪は魔力を扱う者ではない為詳しい事はわからないがそれでも今まで他人の魔力を吸収など聞いた事も見た事も無い
(ヤバイ……!何か……何か1つでも糸口を……)
驚きながらも冷静さはあった、エスタークから感じる力に危険を感じた正邪は詳細を尋ねると同時に隙を突く方法を探していた
「私もそれは不可能と知ってはいましたが何故か出来たのです、導かれた様に大魔王の魔力は私へ入ってきました」
「へぇ~……よくわからないけど良かったな!」
喜ぶ正邪
(出来たのですじゃねぇよ!わからないのに出来たなんてどうすりゃ良いんだ……)
内心怒る
詳細を聞けば何か解決策が出来ると考えていた正邪の目論見は潰れたからだ、理由がわからない事に対策は練れないから
「ええ……それに得たのは力だけではありません」
エスタークの言葉の終わりと同時に他の者達が現れる
「ちょうど良い、試してみます……全員ここへ」
皆を集めるとエスタークは手をかざし力を込める
「貴方達に力を与えます」
手から閃光が出ると皆に当たる
「「!!」」
当たった光が黒く禍々しい光に変わり炎の様に噴き出してくる
「力が……」
力の増大を感じたミスト、他の者も同様に増大を感じる
「貴方達を進化させました、鬼眼の力で……姿は変わらない様にしています」
増大の理由は進化
エスタークは鬼眼の力を使い皆を進化させたのだ
(ふ、ふざけんな!強くなり過ぎだろ!)
正邪は光を受け進化した皆の力に焦る、少々所ではなかったから
「なんで俺には当ててくれないんだよ!」
カメハが怒った、カメハは光を当てられてないからだ
「心配しなくても大丈夫……貴方にはこれです」
指を突き出すと指から黒い雫が落ちカメハへ渡す
「なんだよコレ?」
「それは配合の理、強い魔物を作り出す為の道を示す物です」
「本当か!?あの河童のキラーマシンにも勝てるモンスターが作れるのか!?」
「それは貴方次第ですが可能でしょう、私の魔物達を好きに使いなさい」
「やったぜ!行くぞワルぼう!」
「……」
「なんでお前喋れなくなったんだろうな?エスタークと会った時からだけど……」
カメハは精霊の様子に疑問を覚えるが配合の好奇心から気にせず走って行った
「それだけではありません、ウォルター……核を」
核を受け取ったエスタークは異なる属性の魔法球を2つ作り出し妖しげな呪文を唱えた
核に魔法球が交わる
「……何をしてんの?」
「すぐわかりますよ」
正邪の問いにそう返し交わる核を見つめる
ゴオッ! キンッ!
核から大きな炎と氷が半分ずつ出現する
出現した炎と氷が人間大より少し大きめに収まる
「目覚めなさい」
エスタークの声を受ける核
パチッ
炎と氷から目が出現し体の形に両の熱を形成する
「……」
そこには魔物が立っていた
半身を炎、半身を氷の肉体を持つ異形な魔物が
「……ッ!?」
正邪の顔が歪む
異形だからではない
(魔物を……創りやがった……)
魔物を創造したエスタークに戦慄したのだ
「どうです正邪?これはバーンの記憶にあった禁呪法を用い造り出した魔導生命体です」
「バーンの……記憶?」
「ええ、黒のコアにあった魔力にはバーンの記憶も混在していました、断片的でしたが興味深い物もあった、これもその1つです」
「……」
正邪の複雑な表情を驚きで声が出ないと見て満足なエスタークは魔物へ視線を向ける
「名はどうしましょうか……味気はありませんがやはり記憶通りにフレイザードにしましょうか」
「わかりましたエスターク様」
フレイザードと名付けられた魔物は下がり骸以外の者が並ぶ
「今ならばあの骸も縛れきれます……それより正邪」
「……なんだい?」
「貴方はどうしますか?」
正邪へ問う
「貴方には聞いてからと思いまして」
「……」
正邪は黙る、内容は容易に想像出来たから
「貴方は進化の力を使いますか?」
エスタークの提案は正邪への力の行使
甦らせた者でもカメハの様に騙して利用している者とは違う、エスタークに一番立場の近い正邪だから聞いたのだ
「……」
考える正邪
「……やめとくよ」
提案は受け入れなかった
「私にもプライドがあるからね、そんな簡単に力を得たら今までの私が馬鹿みたいだろ?だからいい、あ!気を悪くするなよ?嫌いだからとかそんなんじゃないからな!」
正邪の答えにエスタークは唇を上げる
「わかっていますよ……わかりました、貴方の意思を尊重しましょう」
納得すると皆を見渡し愉快に笑う
「で?次の狙いも遺産だろ?誰の狙うんだい?」
「遺産はもう要りません、因果には出会えたのでもう必要ありません」
「じゃあ、あのスライム?」
「……それも要りません、秘法より素晴らしい力が手に入ったので」
「それじゃあいよいよ復讐?」
「いえ……」
次のエスタークの行動は目的である復讐ではなかった
「?何かあったっけ?」
そうだと思っていた正邪はわからず首を傾げる
「ええ……先に報復しなければ気が済まない相手が居ます」
「誰?藤原妹紅?」
「それは勿論含みますが……私の言う相手、それは……」
愉快気な表情に怒りが滲む
「幻想郷……」
復讐より先の相手、それは幻想郷だった
「あれだけの辛酸を舐めさせられて黙っている訳にはいきません」
「別に良いけど……なんかメリットはあんの?勝つだろうけど悪戯に兵を減らすだけと思うけど……もう奪う物もないのに……放って置いたら?」
「確かに放って置くのは簡単です、被害も無くせます……しかし正邪、私は幻想郷に触れて思ったのです」
「……何を?」
「幻想郷を倒せずに後に控える神々に勝てるのか?……と」
「……」
「だから私は恨みもありますが幻想郷で試そうと思っているのです、私がどれ程やれるのかと」
「なるほどね、戦力の正確な把握を兼ねてって事か、なら良いんじゃないか?」
「その時は頼みますよ正邪」
「任せなよ、その時は私も暴れさせてもらうよ!」
二人は笑い合う
「じゃ私は行くよ、なんかあったら呼んで」
その場で正邪は出ていった、誰の返しも待たずに
「……」
それをエスタークの目だけが見ていた
コツッ……コツッ……
「……」
コツッコツッ……
「……!」
ヒュン!
(ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイ……!!)
エスターク等が見えなくなった瞬間に飛翔し神殿内を急ぎ進む
(バーンの魔力を得たエスタークに兵の強化!)
その場所へ急ぐ
(攻められたらただじゃ済まない……)
予想外の事で冷静ではいられない
(魔帝異変……白者異変よりもマズイ事になるかもしれない……)
脅威を肌で感じたから
下手をすれば幻想郷が滅ぶかもしれないと思わせる脅威を
(予定変更だ、機を見てのつもりだったけどもう待てない、やるしかない!)
そのまま地下へ向かって行った
紅魔館
「……ただいま」
戻ってきたのは妹紅、落ち込んだ表情
「おかえり……どうだった?」
パチュリー等皆が迎え詳細を促す
「二人は一応生きてる……重傷だけど」
「そう……生きてるなら一安心ね」
文と白蓮の生存に安堵する皆
「……そうだな、だけど危なかった」
拳が握られる
「文は焼死寸前……白蓮だって体の至る所が抉れて息も絶え絶え……永琳が言ってたよ、私でなければ助けられなかったって……」
多大な怒りがあった
仲間を殺されかけた怒りが
「……エスタークかしら?」
表情の変わらないレミリア
「そうだろうな」
少し不機嫌に妹紅は返す
「……どうしてエスタークは勝てたのかしらあの二人に、あの二人も私達程じゃないけどエスタークが簡単に勝てる相手ではないわ」
疑問、今まで強者の内誰にも敵わなかったエスタークが何故勝てたのかが気になった
「……数で攻めた?」
「それだと誰かがすぐ気付くわ」
パチュリーが答える
「この前みたいに何らかの術?」
「文はともかく白蓮が居たなら流石に二度目は見抜く筈よ」
「なら考えられるのは……」
「……秘法ね」
「使ったのかしら?」
「そう考えるのが妥当でしょう、守矢神社を全壊させ二人を倒せる……脅威ね」
二人は結論付けた
エスタークは秘法を使ったのだと
エスタークがバーンの魔力を得たなど知る所か考えもしない故の結論
「そうね……油断しないようにしましょう」
そして出来るのは対峙の際の心構え
秘法をよく知らないから対策の練り用がない、だからそれぐらいしか出来ない
「……なぁ」
妹紅が話し掛ける
「何?どうしたの妹紅?」
普段通りに聞き返すレミリアに妹紅は怒鳴った
「なんでそんなに冷静なんだよ!」
二人が感情を出さず淡々と話しているのにイラついたのだ
「怒らないのかよ!怒りが湧かないのかよ!」
仲間がやられたのに冷静に対策を練る二人が冷血に感じたから
「……湧かないわねこれ以上は」
「なんっ……!?」
また怒鳴ろうとした口は止まった
(手が……)
レミリアの手が震えているのを見たから
「湧かせてはいけないのこれ以上……抑えられなくなる……」
冷静に見えるレミリアはその内に怒りを溜めていた
許せれないから
「ねぇ妹紅?悪いんだけどエスタークを退治するのは早い者勝ちで良い?」
パチュリーも素っ気なく言うが魔導書が指の圧でへこんでいた
「落ち着いてお姉様……怖い……」
「パチュリーさんも……」
「そ、そうよ……」
フラン、大妖精、チルノすらも気圧され宥める
3人も充分怒ってはいるがレミリアとパチュリーはそれ以上だった
まだ3人は仲間がやられたから許せない、遺産を取り戻す、と言った部分的な怒り、こういう怒りは一時だけで倒すや取り返すと言う目的は残るが怒りの感情は薄れる事が多い
だがレミリアとパチュリーが抱くのはそれ以上
仲間がやられたのは当然、その上に皆の遺産もある
そして何よりも幻想郷に攻めてくるのに怒るのだ
バーンの守った幻想郷を乱すエスタークに
友が命を賭して守った幻想郷を乱されるのが堪らなく不愉快だった
「……いいよ、そうしよう」
提案に妹紅は賛成した
彼女も二人と気持ちは同じ
だから賛成した
「どうする?」
「……待つしかないわね」
「エスタークは遺産とダイを狙ってるみたいだからまた何か仕掛けてくる筈よ」
「その時は逃がさない様にしないとな……」
「それは私に任せて、エスタークを捕捉したら結界で閉じ込めるわ」
「頼むよパチュリー……」
妹紅は立ち上がると墓へ向かう
「大丈夫だバーン……絶対に幻想郷を守るから……」
写真へ誓う
バーンへ守ると約束した
そのバーンが敵になっているとは露知らず……
神殿・地下牢
「紫!!」
息を切りながら入って来たのは正邪
「正邪……どうしたの?」
紫は演技無く聞いた
ただならぬ雰囲気を出す正邪に芝居を感じなかったから
明らかに焦燥し急いでいる
芝居をしない訳があるのだと察したからだ
「話は後だ!お前の拘束と術を外す!」
叫ぶとすぐに取り掛かる
「何があったの!?」
来るやいなや直ぐ様外しに掛かる正邪に尋常ではない事態を感じ声が荒ぐ
「黙ってろ!」
「いいから話しなさい!」
紫の追求に顔をしかめた正邪は外しながら告げた
「幻想郷が危ないんだよ!」
「何故!?何があったの!?」
要領を得ない回答に紫も焦り声が高くなる
「エスタークが……」
「エスタークがどうしたの!?」
「エスタークが……!」
汗を滴らせそれを告げようと口を動かす
「バーンの……!!」
「バーンがどうしたの……ッウ!?」
ブゥン……
「どうした紫……?」
急に痛がる紫を疑問に思い顔を上げる
「……逃げなさい」
「……えっ?」
聞き直した瞬間
「残念です……正邪……」
正邪の背後から声が聞こえ作業が止まる
「!!?」
正邪は振り向く
「エスターク……!」
居たのは……いや、現れたのはエスターク、冷たい表情で正邪を見ていた
「杞憂だと信じていたのですが……」
牢へ入り正邪と相対する
「仲間と思っていた貴方は仲間ではなかった……巧みに私を破滅へ導く死神でしたか……」
「……その気になっていたお前の姿はお笑いだったよ」
「獅子身中の虫が……」
「ハッ……獅子ぃ?寝惚けるなよエスターク、お前は獅子じゃなかったじゃないか、成ったのはさっきだろ?えぇ!?負け続きの帝王さん?」
「フッ……えらく嫌われていた様です、貴方と私は似ていると思っていたのですが……理由を聞いても?」
「……そこだよ」
「そこ?」
わからないエスタークに正邪は理由を語った
「同族嫌悪ってヤツさ、お前は昔の私と似ていた……謀略を巡らせ、他を利用し捨てる……昔の私と重なるお前が気に入らないのさ!」
同時に宣戦布告した正邪は構える
「……わかりました」
正邪の意思を確認すると魔力を解放する
「!?これはバーンの!!?」
その魔力に紫は驚愕し正邪が慌てていた訳を知る
「上等だよエスターク……」
正邪も妖力を解放する
「ハハハ……素晴らしい正邪!その程度の力で私とやり合おうとする愚かさ!哀れ過ぎて躊躇ってしまいます」
エスタークは笑う
笑う余裕がある程二人には力の差があった
正邪も決して弱くはない、頂点を越える為に鍛えた力は紫や萃香等に次ぐ強さを持っている
それでも今のエスタークには及ばない
「それでもやらなきゃならない時がある……バーンを救った時みたいに……今が……」
正邪もそれは理解している
でも臆せず対峙するのだ
「今がその時なんだ!!」
幻想郷を守る為に
「フフフ……」
気迫を見せられたエスタークは不気味に笑う
「これは私が相手をするのは可哀想……」
ブゥン……
「代わりの者達に任せましょう」
スキマから現れる者達
「……ハンッ!ぞろぞろとまぁ……」
現れたのはカメハと骸を除いた6人
「貴方達が相手をしなさい」
正邪の前へ立つ
(……覚悟は出来てるさ)
6人が正邪へ構える
ドドドッ!
弾幕が7人を襲った
「むう……」
当たりはしなかったが一瞬怯む6人
「ぬっ!?」
ミストが蹴り飛ばされる
ヒュン!
同時に正邪が牢を飛び出して行った
「……行きなさい」
命を受けて6人は正邪を追いかけて行き
「少々お待ちください」
紫へそう言うとゆっくり牢を出ていった
「……ッ!」
残された紫は歯を食い縛る
エスタークの言葉の意味を察したから
貴方を助けようとした者の死体を見せてやる……と
(逃げて……)
そう願うしか出来ない
だがここは敵の居城であり異世界、どこへも逃げれないのはわかっている
逃げるにはスキマが必要
(……!)
紫は気付く
(これならば出来る?いや!やらなければならない!)
可能性を知りすぐに取り掛かった
迷いの竹林
「よっと」
てゐは何かを作っていた
「今日はこんなもんかね」
一息ついたてゐは座り込み出来た見えない物を眺める
「また落とし穴作ってるの?精が出るわねてゐ」
「鈴仙……ありがと」
お茶を持ってきた鈴仙に礼を言うと二人は並んでお茶を飲む
「落とし穴を作ってるとあいつを思い出すよ」
「誰?悪戯した人?」
「悪戯したヤツなんて星の数さ、覚えちゃいないよ、あいつってのは鬼人正邪の事さ」
「そういえばてゐと仲が良かったわね、最近全然聞かないし心配?友達の事が?」
「そんな上等なもんじゃないよ、ただの腐れ縁さ……あいつは魔帝異変の後からちょくちょく見に来る、手土産とか持ってきてね」
「確かてゐが手助けしたんだったっけ?」
「そ……気にしなくて良いのにあいつはお陰でバーンを助けられた!って言ってね」
「それで気になると」
「少しだけさ」
「アハハ……素直じゃないわねぇてゐ?」
「……何さ」
「歳を取ると素直さが無くなるのかしら?腐れ縁なんかじゃないでしょ?とっくの昔に友達でしょ?」
「……」
「てゐは鬼人正邪が来るのが嫌じゃないでしょ?」
「……そうだね、楽しいよ」
「ならそれはもう友人の関係、心配するのがその証拠」
「そんな契りをした覚えはないんだけどねぇ……」
「友達って言うのは作ったり契約するモノじゃないのよ?成るモノなんだから」
「……そうか、そうだね」
てゐは空を見上げる
竹林で見えなかったが思いを飛ばす
(また元気な顔を見せに来なよ……正邪……)
友の安否を心配し無事を願った
神殿
ザンッ!
「ッグッ!?」
腕を切られ後退する正邪
「ハアッ!」
弾幕を放つ
「温い……」
弾幕をすり抜けた男の拳が迫る
「グッ!?クッ……!?」
防御するも飛ばされる
「うがっ!?」
背後に回ったミストの手刀に打ち飛ばされる
「こ……の……!!」
弾幕を放とうとするが
「させません」
ウォルターの鋼線により止められ肌を刻まれる
「ヌラアッ!!」
バルバトスの斧の一閃
「がっ!?あああっ!?」
切られはしなかったが防いだ腕に斧がめり込み血が噴き出す
「良いザマだ……ぜ!!」
そのまま正邪の腹を蹴り飛ばす
「……ッ!?」
壁に打ち付けられた正邪にフレイザードが寄る
「焼くのと凍るのならどちらが良い?」
炎と氷を出現させるフレイザードに
「どっちも……」
体に力を込め
「お断りだ!」
突進した
「うぐっ!?」
フレイザードに体当たりを食らわせ怯ませた直後に大玉の弾を食らわせる
「うらあああ!!」
渾身の弾幕を放ち食らわせ続ける
「フレイザード!」
5人が正邪に向かう
「……邪魔すんな!」
片手を払い能力を向ける
「「!?」」
5人の動きが変わった
「思う様に……動けん……!?」
正邪に向かわず全員あらぬ方へ向かう、逆に向かったり腕や足がおかしな方向へ上がる
「初見殺しさ!黙って見てな!」
正邪が叫ぶ
能力を使って5人の動きをひっくり返したのだ
ひっくり返された5人は思う様に動けずフレイザードを攻撃する正邪を止められない
(初見殺しを足止めに使わないといけないとはね……いよいよ詰んできたか)
この状況を正邪は良く思わない
自身の力の全てを使ってようやくフレイザードとタイマンに持ち込めたのだから
「……!」
ウォルター、ミスト、次いで他の3人がひっくり返された感覚に適応してくる
正邪の能力は種さえわかればそう脅威な能力ではない
時間があれば対処出来る
故に初見殺し、本来はタイマンで相手が適応前に倒す奥の手なのだ
「……ラァ!」
大玉を放ち爆煙を見つめる
「うっ……ぐぅはっ……」
フレイザードは生きていた
(チッ……しぶとい!)
トドメを刺すべく弾幕を放つ
バチィ!
弾幕は防壁に防がれた
「やりますね正邪……」
「エスターク……!」
防いだのはエスターク
「生まれて間もない、経験の無いフレイザードを狙い戦力を削ろうとする……やはり油断なりませんね正邪」
エスタークが腕を振るうと魔力が5人に当てられた
「解除されたか……」
魔力により能力を解除された5人が正邪を囲む
「命を賭けて戦力を削る……素晴らしい気概です」
「褒めるなよ……気持ち悪い」
「そんな貴方に選択を与えます、死と洗脳……どちらが良いですか正邪?」
「おお慈悲深いねぇ選択肢をくれるなんて……私に惚れたかい?」
「フッフッフ……惚れていますよ……」
5人を抑えエスタークが正邪の前に立つ
バン!
「うっ!?」
魔力を衝撃に変えて正邪を打つ
「好きですよ正邪……」
バンッ!
「大好きですよ正邪……」
バン!バン!バン!
「殺したくなる程に……」
「……ぅ……っ……」
虫の息の正邪
散々いたぶられてもはや死ぬ寸前
「どうしますか正邪?」
かろうじて話せる程度に抑えたエスタークの最後の問い
「……ぉ……ぁ……」
喋ろうとする正邪に耳を傾ける
「お断り……だ……エス……ターク……」
正邪は洗脳を拒否し、死を受け入れた
もう昔の自分ではない、幻想郷をひっくり返し壊そうとした邪な自分はもう居ない
今は大好きな幻想郷を守りたい
その為に自分も命を賭ける、恩人がそうした様に
正しき邪が今の自分だから……
「……さようなら正邪」
指先からメラが飛ばされ倒れる正邪に当たる
ゴウッ!
火柱が上がり正邪を焼く
「……」
焼かれる正邪は目を閉じる
(悪いバーン……私じゃここまでだったよ……)
目前の死に深く謝った
ブゥン……
正邪をスキマが覆う
「!?」
驚いたのはエスターク
(スキマ!?何故スキマが勝手に!?)
出したのは自分ではなかったから
(止め……)
阻止しようと動くと同時に
ゥン……
正邪は消えた
「……」
火柱を眺めるエスターク
考えているのは逃げられた正邪の事ではない、正邪など裏切りの時からどうでもいい
(八雲紫ですか……)
炎を消したエスタークは踵を返し地下牢へ向かった
神殿・地下牢
(……やはり)
術式を見たエスタークは納得した
(式が緩められている)
術式に原因が見えたから
(あの僅かな間に八雲紫がスキマを1度だけ使用出来るまで反転させるとは……危ない所でした)
正邪は能力を使い術式を解こうとしていた
ひっくり返す力を法式に使い0に戻そうとしていた、これならば普通に解くより断然速い、正邪だから出来る事
(これが正邪の目的でしたか、八雲紫を救い反撃の芽を作る……もう少しでしてやられる所でしたね)
正邪の目的を知り、潰せた事に微笑む
「……」
項垂れる紫は何も話さない
「……ふん」
術式を直したエスタークは牢を出ていく
(そういえば……あの夢の時に正邪は何をしていたのでしょうか?何かをしていた筈ですが……)
(まぁ今となってはどうでも良い事ですがね)
階段を上がっていった
永遠亭
「今日のご飯何?」
「今日は……あれ?」
帰ってきた二人、その鈴仙が気付いた
「誰か倒れてる?」
永遠亭の前に誰かが倒れているのを
「本当だ……行き倒……!?」
気付いたてゐが走っていく
「正邪!!」
倒れていたのは正邪
「大丈夫か!しっかりするんだ!何が……何があんたにあったんだよ……!!」
瀕死の正邪に冷静では居られない
久し振りに見た友が今にも死にかからんとしていたのだから
「てゐ!急いで手術室へ!師匠を呼んでくる!」
「あ、あぁ……わかったよ……」
鈴仙の指示を受けてもまだ動転しているてゐ
「急いで!!本当に死んじゃうわよ!!」
「……!!」
気を取り戻したてゐは鈴仙と共に正邪を抱え中へ入っていった
神殿
「……」
王座でワインを飲みながら愉悦の時を楽しむエスターク
「どうされますかエスターク様?」
ミストが問う
「それを考えていました……」
ワインを飲み干したエスタークは次の考えを話し出す
「幻想郷の……藤原妹紅への報復、何が良いかを考えていたのですが……決めました」
表情を引き締め告げる
「幻想郷の誇る力の象徴、紅魔館を落とします」
狙いを紅魔館に決めたエスタークは準備を命ずる
「フフフ……」
妖しき笑みが浮かぶ
(気になります……王女、レミリア・スカーレット……)
紅魔館へ魔の手が迫る……
正邪敗北……
次なる帝王の一手は紅魔館、幻想郷に災厄が降り注ぐ……
仕事で疲れてますけど失踪はしません!多分!
次回も頑張ります!