彼の王は友をこう表現した
太陽と
自らに与えられた太陽と、そう表現した
それは王にとって何者にも代えられない心の拠り所
その中でも一際輝く太陽
レミリア・スカーレット
種族を越え互いを想う愛は陽の輝きを一層強くさせ
決して消えない筈だった
そう……
その筈だった……
その太陽が……
今宵……
正邪が敗北した日の夕方
紅魔館
「ピィ!」
「うおっ!?どうしたダイ?」
突然鳴いたダイに妹紅は驚いた
「ピィピピィ!」
「何?エスタークが許せない?」
「ピィ!ピピピピピィピィ!」
「友達を傷つけるなんて許せない……か」
ダイは怒っていた
エスタークの所業に対して
出会った友達を傷つけるエスタークに我慢ならないのだ
「そうだな……許せないよなダイ、わかるよ」
同調した妹紅は写真を見る
「バーンもな、そうだったんだ……」
ダイに妹紅は語る
聞いてもらいたかった、知ってほしかったから
「あいつはとんでもない力を持ってた、それこそ幻想郷を楽に滅ぼせるくらいのな……だけどバーンはその力を破壊に使わなかった」
「ピィ?」
ダイは問う、何に使ったの?と
「幻想郷の為に使ったんだ、いや……バーンからすればそれは結果か……バーンはな、私達の為に使ったんだ」
想いを語る表情は穏やかに微笑む
「殺されそうだった私達をバーンは助けてくれたんだ、そして戦った、許せないからって……」
思い出した妹紅は嬉しくてはにかむ
「嬉しかったよ……友達の為に戦ったんだ、見返りを求めずに、ただ友の為にって……」
写真へ笑顔で言った
「大事な友達だよ……いつまでも……」
バーンとの間にある友愛、絆を知ってほしくて妹紅は語った
「ピィ……」
ダイは写真を見つめる、聞こえてはいるが返事をしない程集中して見ていた
何かを思い出そうとする様に
「たまにバーンの写真を見てるよなダイって……知ってるのか?」
「ピィ……」
妹紅の問いにもわからないと言うダイ
いくら見ても知ってる様な感じがするだけでそれ以上はわからない
「もしダイが知ってるなら私達が出会う前か……大魔王の頃の……」
「ピィ……」
かもしれないと言うダイ
二人がそんな答えの出ない会話をしているのを聞いていた者が一人
「……」
それはレミリア
不意に気になった彼女は考えていた
(ダイ……そういえば昔聞いた様な……)
過去に聞いた事があるのを朧気に思い出し記憶を辿る
(どこで……誰にだったかしら……確かバーンの居た頃だった……)
もう少しで思い出せそうだったのだが
その思考は突然現れた咲夜によって遮られる事になる
「お嬢様!!」
時を止めて来た咲夜、止まった時の中を急いだのか息が上がっている
「どうしたの咲夜?またエスターク?」
「違い、はぁ……ます……見つかりました……」
「……何が?」
エスタークではないことに若干興味が薄れるも
「鬼人……正邪です!」
「正邪が……?」
それには反応した
「どこで!?」
妹紅が問いただす
「永遠亭よ」
「永遠亭?まさか……!?」
その場所に居る意味を察した
「ええ、貴方の想像通り……鬼人正邪は瀕死の重傷で意識不明よ」
「ッ!?……クソォ!!」
怒りが収まらない
行き場を失った怒りは拳を通して机に向かい叩き壊す
正邪が何をしていたのかはわからない、でも必ず幻想郷の為に動いていたのだと信じていた妹紅はエスタークが重傷を負わせたのだと確信し怒ったのだ
「……ありがと咲夜、下がって良いわ」
平静を装うレミリア
だがその実は憤怒で煮えたぎっていた
「……正邪を見てくる」
ダイを連れて妹紅は言う
「頼んだわ……もし意識が戻ったら何があったか聞いといて」
「わかった……」
パチュリーの頼みに頷きダイと出ていく妹紅に大妖精が叫ぶ
「ダイちゃんも行くなら私も行きます!」
ダイが狙われていると思っている大妖精は護衛を兼ねて同行を申し出る
「頼むよ大妖精」
苦くも微笑んだ妹紅等3人は永遠亭へと向かった
神殿・地下牢
「八雲紫」
紫へ立つエスターク
「これより私は紅魔館を攻めます……その前に」
紫へ手をかざす
「……何をする気?」
「なに……貴方の負担を無くすだけです、感謝してください」
魔力が紫と式に送られる
「流石大魔王の叡知、完璧と思っていた術式を更に精錬させるとは……」
ニヤリと見下すエスターク
「これで気兼ね無くスキマを使用出来ます」
「~ッ!?」
紫は睨むしか出来ない
ここまで良い様に使われる屈辱が、それが幻想郷を危険に晒す事になる事が耐えられない
「フフフ……」
その様を見て笑う
エスタークからすれば懸念だったスキマの使用
使用し過ぎれば甚大な負荷により紫を殺してしまう
それを解決したのがバーンの記憶
魔力に混在した記憶には術の叡知もあった、それを用いて術式をより強固に、より完全にしたのだ
「さぁ今こそ紅魔の館を落とす時……」
ブゥン……
開いたスキマへ入って行った
永遠亭
「……正邪」
正邪は寝ていた
全身を包帯で巻かれ一見では誰かわからない
それだけ酷い傷を負っていた
「正邪さん……」
「ピィ……」
大妖精とダイも酷い有り様に言葉が出ない
「……酷いだろう?」
必死に看病をするてゐが言った
「戦いの傷だけじゃない……見なよこれ……」
包帯を取り痛々しい傷を見せつける
「ッ!?」
見かねて大妖精が顔を逸らす
「わかるだろ?これは嬲られた傷さ……」
ギュッっと包帯を握り締め、てゐは語る
「戦いの傷なんて僅かなもんさ……」
その先は言えなかった
散々嬲られた後に殺されかけたとはとても口には出せなかった……
悔しくて……
「……!!」
妹紅も意味を察し怒りに震える
「悔しいよあたしゃ……なんで助けてやれなかったんだって……居たって何の役に立たないのはわかってる……けど!!」
てゐの瞳から涙が溢れる
「盾くらいにはなれた……!痛みを分かち合う事は出来た……!なんでだい……なんで正邪が……」
流れる涙は止まらない
「正邪は真っ当に生きようとしてた!昔の自分を変えようとしてた!出来てた!お前達を越えようと頑張ってた!バーンが喜ぶ筈だと……信じて……!!」
「……わかってるよ」
正邪の想いは妹紅も知っている
もう悪事をせず、自分達を越える為に必死に努力していた事を
「こいつが何をしていたのかはわからない、けど正邪は幻想郷の為に動いて……いや!お前達の為に動いていた筈なんだよ!」
涙を隠そうとせず二人へ向く
「バーンへの恩返しがお前達を手助けする事だと思ってた筈だよ!そうだろう!!」
二人へ同意を求めた
そうあって欲しいと信じていたから
「……そうだな、そうに……決まってる!」
力強く妹紅は答える
「正邪は私達を助ける為に動いてた……絶対に!」
「そうですよ!私も正邪さんを信じてます!」
大妖精も力強く同意した
「……感謝するよ」
二人の答えに落ち着いたてゐ
「こんな事を弱いただの足手まといが頼むのは笑われるってわかってる……」
涙を拭きながらてゐは頼んだ
「仇を取ってくれよ!頼むよ!幻想郷を守ってくれ!正邪の想いを……」
「汲み取ってくれよ……」
正邪の想いを無下にしないでくれと
自分では出来ない事を恥を忍んで頼んだのだ
「ああ……任せてくれ!」
「約束します!」
二人は想いを受け取った
仲間の想いを
「ありがとう……やっぱりあんた達が一番だよ」
快く受けてくれた二人に笑顔を見せた
「当然だろ?それにさ……少し嬉しいんだ」
妹紅は更に受け取っていた
「何が?」
わからないてゐが問う
「お前の素顔を見れたからな」
「ピョン!?」
てゐは驚き椅子を跳ねる
「いつも悪戯の仮面を被ったお前の素顔が見れた……本当は優しいんだなお前って」
「あぅあぅぅ……」
我に帰ったてゐが慌てている
「友達と思ってるなんて正邪が聞いたら喜ぶと思うぞ?」
「それ以上言わないでくれよぅ……」
恥ずかしさの余りウサ耳まで真っ赤にしたてゐは正邪の包帯をいそいそと交換しだした
「アハハ……」
「えへへ……」
「ピピピ……」
3人の微笑が少しだけ場を明るくさせる
その場はやって来た白狼天狗の伝令で終わりを告げられた
「ここに居たか藤原妹紅!大妖精!」
伝えに来たのは椛
「どうした!?何かあったのか!?」
慌て様に異常事態だと感じた妹紅が問いただす
「敵が現れた!」
事態は風雲急を告げる
紅魔館
「……妹紅と大妖精にも伝えて頂戴」
表情険しきレミリアは伝えに来た鴉天狗へ頼む
「お二方には犬走椛が向かっています、もう伝わっている頃でしょう」
「そう……」
「では私も迎撃に向かいますのでこれで……」
伝令の鴉天狗は直ぐ様出ていった
「来たわね……」
「そうね……」
レミリアとパチュリーと頷き合うとチルノとフランが声を出す
「じゃ行ってくるわ!」
「あたしも!」
飛び出して行こうとする二人を
「待ちなさい二人共」
パチュリーが止める
「なんで止めるのー!」
「そうよ!あたいが全部ブッ飛ばせば終わりなのに!」
抗議を受けるパチュリーはやれやれと首を振り止める理由を話そうとする
「まずは状況の整理が先よ」
先にレミリアが話した
「闇雲に動くと状況が悪くなる可能性だってある、だからまず状況を整理して的確に動かないと混乱しちゃうわ」
その場の勢いだけで行かず一旦冷静になって考えてからだと諭す
「む~……わかったお姉様」
「早くしなさいよ!」
理に叶った考えに渋々納得したフランと取りあえず合わせたチルノはパチュリーの解説の元皆で整理を始める
「鴉天狗からの伝令によると現在幻想郷の各所に魔物が出現し暴れまわっているわ」
「どこも大量の魔物が襲っているみたい、各所は今も交戦中……例外はここ紅魔館と博麗神社のみ」
「そして至る場所に術式が展開されているわ、今はまだ何もないみたいだけどね」
「最後に肝心のエスタークはまだ見つかっていない、でもエスタークの仲間であろう魔物とは明らかに異なる者が所々で目撃されている」
状況の確認を終えるとレミリアが指示を飛ばす
「チルノとフランはそれぞれ命蓮寺、魔法の森周辺の敵を優先しなさい、理由はわかるわね?」
「うん!戦力的に低い所を先に叩くんでしょ!」
「そうよフラン」
二人を向かわせる訳は命蓮寺の白蓮不在と魔法の森の戦力の少なさから
白蓮の居ない命蓮寺は弱い妖怪を守りながらの戦いになり指示を出せる者が居ない為早めに安全を確保する事が不可欠、魔法の森は単純に戦える者が少ない、アリスと霖之助のみ、数で来られると危険なのでこちらも早めの対処が必要
「それと分身を一人博麗神社へ向かわせて、念の為にね」
「オーダーはそれだけ?お姉様?」
了承したフランは注文を聞く
「そうね……後は見敵必殺、サーチアンドデストロイよフラン……チルノも」
不適に笑いながらレミリアはオーダーを告げる
「りょーかいお姉様!」
「まっかせときなさい!」
注文を受けた二人は飛び出して行く
「じゃあ……私は術式ね?」
パチュリーが立ち上がりレミリアを見る
「ええお願い、破壊してマズイ物だと危ないから詳しいパチェに行ってもらうのが一番だからね、式に手は出さない様に鴉天狗に伝令を頼んでるけど何が起きるかわからないから早めにね」
「任せてレミィ」
術式の担当はパチュリー
「人間の里……慧音はどうするの?それと怪我人の居る永遠亭……幻想郷の要である博麗神社が襲われていないのも気になる」
他にも危ない場所はある、現在里は慧音が隠しているがその隠す慧音がやられれば里自体が危ない、永遠亭も怪我人が居る為命蓮寺同様守りながらになる
パチュリーは行く前にそれが気になった
「慧音へは妹紅が向かうでしょう、そうなれば永遠亭は大妖精が守るでしょうし心配は無いわ、それを考慮してフランとチルノを向かわせなかったのだから」
レミリアはすぐには連絡の取れない二人の行動を予測していた
直情型の妹紅の向かう先が人間の里、つまり慧音だと考え、そうなれば大妖精が怪我人の居る永遠亭を放っておく訳がないと考えてフランとチルノを他へ向かわせたのだ
「後は狙われていない博麗神社だけど妖精とゴブリンを向かわせるわ、心配は無いでしょ……フランの分身も居るし何かあれば私が向かうわ、分身体に妖精とゴブリンが居れば充分間に合うでしょう」
「充分でしょうね、わかったわ」
出ていく間際、パチュリーは最後に一応聞いた
「エスタークはどうする?」
「出てきたら半殺しにして捕まえる、以上よ」
「わかったわ……じゃあ行ってくるわね」
パチュリーも紅魔館を出ていった
(ふん……来るなら来なさい、捻り潰してあげるわ)
自信ある表情でレミリアは紅魔館で報を待つ
神殿
「概ね予定通りですね」
映像を見ながらエスタークは策の成功を見た
(藤原妹紅と大妖精の外出が予定外でしたが紅魔館に戻らず囮の相手へ、これで準備は全て整いました)
スキマを広げたエスタークは背後の二人へ告げる
「会いに行きましょうか……」
3人と魔物はスキマへ入り神殿から消えた
隠された人間の里
「慧音!」
「妹紅!ダイも一緒か!」
魔物と交戦する慧音に妹紅が駆けつけた
「任せろ!」
周囲を炎で薙ぎ払う
「大丈夫か慧音?」
「ああ平気だ、お前が来なくても大丈夫なくらいだったぞ」
「大丈夫……?」
自信有り気に語る慧音と違和感を持つ妹紅
(この数が大丈夫?満月でもないのに慧音じゃこの数は厳しいと思うんだけど……)
違和感は慧音の善戦
言っては悪いが慧音は妹紅より遥かに実力が劣る
その慧音が大量に迫る魔物に優位を保てるのに疑問を抱いたのだ
「強くなかったのか?」
「そうだ、弱い魔物ばかりだったな」
(やっぱり……)
疑問は憶測を呼ぶ
(私が道中倒して来たのも明らかに弱かった……まるで冒険初心者の相手みたいな……でも前みたいな無差別じゃない、局所的な攻め方……)
(まるで囮みたいな……)
結論を確証に変えようとした考えは慧音によって遮られる
「皆はどうしてるんだ?」
「ん?ああ……大妖精は永遠亭を守ってる、他の皆は多分レミリアの指示で動いてるだろうさ、パチュリーは術式だろうな」
レミリアの予想は当たっており妹紅もまた大体を理解していた
「そうか、風見幽香も動いてるしあの伊吹萃香も動いてるらしい、この調子なら日付が変わるまでに片が着きそうだな」
そう言われて空を見上げると空は太陽が沈み、暗味を帯びており十六夜の月がうっすらと見えていた
「……慧音」
表情を引き締めた妹紅、空を見上げる時に見えていた、視線の端に
「わかってる妹紅、私宛の客だ」
慧音も引き締め見た
遠くに迫る魔物の二陣を
「ダイ!離れるなよ!慧音も!」
「ピィ!」
「ああ!行くぞ!」
妹紅は魔物を迎え撃つ
疑問は休む間も無い戦いの喧騒に流されて行った……
紅魔館・門前
「門番してても良いのかな?」
敵の現れない紅魔館の門前で美鈴は佇んでいた
「私も戦いに行った方が良いと思うんだけどな~……」
美鈴は戦いに行っていなかった、変わらず門番
「でもお嬢様から何も言われてないからなぁ……」
美鈴とて行きたい、敵を倒して幻想郷の安全を確保したい
だが行けない、主の命が無いから
主従関係にある美鈴は勝手な真似は出来ない、だから大人しく門番をするしかないのだ
「お嬢様に黙って行こうかな……」
そう考えた矢先だった
ブゥン……
「……!!」
直ぐ様目前の敵へ構える
「こんばんわ紅美鈴」
敵はエスターク、微笑みを美鈴へ向ける
「……何用でしょう?」
既に臨戦態勢の美鈴は尋ねる、余裕のある笑みが気になったからだ、何かあると思わせたのだ
「用ですか……」
威圧する美鈴にも怯まないエスタークは告げる
「レミリア・スカーレットに会いに来ました」
目的を、好奇の表情で
「取り次ぎを頼んでも?」
続けて言った言葉に美鈴の気が高まる
「生憎ですがお断りします、貴方を通す訳にはいきません、お嬢様の為にも……」
その拳を突き立て告げる
「バーンさんの為にも!!」
美鈴も二人が愛し合っていた事は知っている
そのレミリアを狙うエスタークを通さないのは至極当然と言えた
何故ならエスタークは主であるレミリアにとって害であり、尊敬するバーンの敵でもあるから
この応対に間違いは無いと確信しているからこそ拳を突き立てたのだ
「困りましたね……私はどうしてもレミリア・スカーレットに会いたい、なのに貴方は邪魔をする」
笑みを崩さずエスタークは指を鳴らした
「貴方に頼みましょう、貴方におあつらえの相手ですよ……豪鬼」
「……」
スキマから男が現れエスタークの前に立つ
「……!」
美鈴はすぐに察知した
(武道家……強い!)
男が武術を扱い尚且つ只者ではない事を
「では行きますよウォルター」
その横をエスタークとスキマから出たウォルターと謎の魔物が門へ歩いていく
「待て!」
そうはさせまいと美鈴が駆ける
「……うぬの相手は我だ」
ゴッ!
美鈴の駆ける初動を拳が抑えた
「……退け!」
防いだ美鈴が豪鬼を睨みつける
その様子を横目にエスターク等は門を開く
(くっ……!?お嬢様!)
「追いたくば我を倒してみせい紅美鈴」
門番は殺意を惜し気もなく出す男、豪鬼に抑えられエスタークの紅魔館への侵入を許してしまった
永遠亭
「えーい!」
巻き上げた風が敵を切り刻む
「どんどん来ーい!皆には指1本触れさせません!」
敵を倒すのは大妖精、永琳と鈴仙は大妖精の援護に回りてゐは怪我人の直衛
「!また来たな~!」
竹林を抜けて来た魔物達に構える大妖精
「ギャアアアア!?」
魔物が引き裂かれ絶命する
「弱っちいねぇ……どこも一緒かい」
死体の血を浴びながら足取りのおぼつかない幼女が現れる
「萃香さん!」
「おや?大妖精じゃないか!なんだいあんたがここに来てたのかい、心配して損したよ」
来たのは萃香、永遠亭に怪我人が居るのを聞いて一応見に来たのだ
「まぁ良いか、万が一があったら寝覚めが悪い、手伝うよ大妖精」
「お願いします!」
加勢に喜ぶ大妖精に萃香は一瞬目を鋭くさせ近付いていく
パァン!
「危なかったねぇ大妖精」
大妖精に撃たれた氷弾を打ち消した
「誰だい?出ておいで」
その言葉に返す様に竹林が燃え上がる
「ククク……ハハハ……」
燃え上がる竹林の中からフレイザードが姿を現す
「こらまた面妖な奴が来たねぇ……」
酒を飲みながら萃香は人差し指でチョイチョイと話した
かかって来いと
「ヒャハハハ!!」
狂気の叫びに戦いは始まった
命蓮寺
「あたいが来たからにはもう心配……あれ?」
駆けつけたチルノは目前に広がる光景に首を傾げた
「あ、チルノ……こっちは大丈夫だよ」
命蓮寺は何とかなっていた
弱い魔物ばかりだからか被害は全く無い
「何やってんのよ!あたいがせっかく来てやったのに!」
「イヤイヤ、それは知らんて……にしてもキリが無いな」
次々現れる魔物達に水蜜が溜め息を吐いた
「じゃあたいが……」
攻撃しようと指を掲げた瞬間
ズオッ!
ビームが魔物を薙ぎ払った
「あらチルノ居たの……邪魔だから寝てて良いわよ」
幽香が現れ辛辣な言葉を投げつける
「なんですってー!!」
怒るチルノの冷気が魔物を凍らす
「お嬢さん方……」
いつの間にか居た剣士が話し掛ける
「私一人で充分だって言ってるのがわからないのね……バカな子」
「ぬぁんですってー!!」
言い合う二人には聞こえない
「足止めが目的ですし……まぁ良いでしょう」
気付いたらで良いと考えた剣士は喧嘩を暖かく見守る事にする
魔法の森
「……行って!」
アリスの人形が魔物を倒す
「ピキィィ!!」
「ッ!?」
スライムの体当たりを受けよろける
「大丈夫かい?」
スライムを切った霖之助がアリスと背を合わせる
「ええ……全く大した事無いけどこの数は二人じゃ厳しいわね」
「同感だ……こんな状況になってから思うよ、魔理沙みたいに鍛えてればってね」
「そうね……その時は付き合ってあげても良いわよ?」
「その時はよろしく頼むよ」
夥しい数に囲まれながらも二人は余裕があった
それは諦めからではない
絶対に大丈夫だと思う心の余裕
ズガガガガガガガ!!
破壊の風が二人を包む
「遅くなってゴメン!」
魔物を体当たりで突き抜けたフランが二人へ降り立つ
「いやいや……こちらこそ不甲斐なくて申し訳無い」
「全くね……」
呆れ返る強さに二人は苦笑する
二人に余裕があったのはフランが来るのを感じたから
「もう大丈夫だよー!」
フランが二人へ話した瞬間
「ぶるあああああッ!!」
斧がフランを襲った
ドンッ!
「ビックリしたぁ……」
斧はフランを切ることはなかった、受け止められた斧の衝撃が地面に伝わりクレーターを作り出していた
「……チッ」
襲撃者、バルバトスは舌打ちすると距離を空ける
(隙有らば仕留めてやろうと思ったがやはり甘くはない様だな)
更に距離を取る
(フランドールは特に気を付けろと言われている……能力を使われる前に……)
「破滅のぉ……」
エネルギーを溜める
「グランヴァニッシュ!!」
晶術で大地の隆起を起こしフランを襲う
「わわわ……!?」
避けた二人とは裏腹にフランは驚いて飛び上がる
「凄いねお兄さん!……あれ?」
フランが見た時にはバルバトスは消えていた
「逃げたよ」
霖之助が教える
「あいつ危ないね……行ってくる!」
フランはバルバトスを探しに飛んでいった
「……さぁもう一踏ん張りだよ」
「……嫌になるわね」
遠くから聞こえる魔物の雄叫びに二人は苦笑し合った
妖怪の山
「ロビン、左前方から数20」
ピュン!
レーザーが敵を撃つ
「次、正面から30」
サーベルが切り払う
「次、左後方からまた2……」
ザンッ!
ロビンが倒す前に魔物が切られた
「にとり!無事ですか!」
納刀しながら妖夢がにとりに寄る
「これが危なく見える?」
無傷の自分とロビンを指しながらにとりが目付いてんのか?と言いたげに妖夢を睨む
「……すいません」
取り合えず謝った
「白玉楼は良いの?」
「はい、幽々子様が私だけで充分と私を救援に向かわせました」
「ふーん、弱いからねぇ」
にとりも魔物の弱さに納得し
「ロビン、右後方」
迎撃に戻った
「おい河童ァ!!」
聞き覚えのある声がにとりを呼んだ
「……またお前かクソガキ」
もううんざりだよとカメハを睨む
「勝負だ河童!今日は俺が勝つ!」
同時に3体の魔物が背後に並ぶ
「……?」
その魔物を見てにとりは気付く
(前とは違う魔物……それ自体はモンスターマスターなら珍しい事じゃない、問題はあの魔物達から感じる邪気……普通の配合じゃ絶対有り得ない、何をしたあのクソガキ……?)
分析を続けるにとりは更に気付く、カメハの魔物の更に後ろに居る者に
(あれは……タイジュの精霊?いや少し違う……マルタにも精霊が居るって聞いた、そっち?)
過去の経験から推測の根を伸ばす
「倒しますか?」
そこへ得物へ手を掛けた妖夢が問い掛ける
「……いい、あれは私が引き受けるから山を守って欲しい」
「……わかりました」
妖夢はすぐに了承し去っていった
加勢しなかったのはにとりの目が語っていたから
心配は要らない、任せて欲しいと
一切の心配の無い目に妖夢は信用に足ると思ったから山の防衛に回ったのだ
「来なよクソガキ……何度でも教えてやる……小細工じゃ到底埋められない……」
ロビンが魔物を捕捉する
「格の違いをね!」
再び二人のマスターはぶつかり合う
博麗神社
「どうしようかな……」
靈夢は悩んでいた
(行くべきなのか行かないべきなのか……)
それは戦いへの参加、だが悩む、行きたくない訳ではない
(ここに来ないのも気になるし行かなくても終わりそうな気もするからなぁ……)
悩むのは敵が博麗神社へ来ないこと、一応結界は張ったが誰も来ない、他はここから見えるだけでも大量なのに誰一人として来ない
重要な場所なのに来ないのが気になったのと頂点達の存在
前の甦った妖怪達を楽に倒せる頂点達とそれに次ぐ強者達が戦いを終わらせるのではないかと言う期待
自分に自信が無い靈夢はそれで迷っていたのだ
バチィ!
「!?」
靈夢は感じる
(結界を突き破って来た!?一人……二人……)
二人の侵入者が来たのを
(……戦ってる?)
戦闘音が近付いて来る
ドウッ!
階段から大きな衝撃音が聞こえると一人の妖怪が飛ばされ靈夢の前に落ちる
「痛いのだー……」
「えーと……ルーミア、だったわね確か」
頭を押さえる幼女、それはルーミアだった
「手間を取らせるな……殺す訳にはいかんと言うのに……」
そして次に現れたのはミスト
ミストはルーミアを追い、戦闘の最中ここ博麗神社へ来たのだ
「……何ですか貴方、この子に何か用ですか?」
ミストを睨みながら自然とルーミアの前に立つ靈夢
「博麗の巫女か……今はお前にもここにも用は無い、消えろ」
衣に隠れた顔から眼光が靈夢を威圧する
「……嫌です」
祓い棒を構えて立ち塞がった
無気力に見える彼女にもまだあるのだ
守る意思が
自覚はしていないが見過ごす事が出来る程彼女の心は腐っていない
だから以前も人間の里へ赴いたのだ
「……震えているぞ?」
だが怖い
明らかに格上の相手だったから
幻想郷の者を相手にしていた時とは違う
殺す事に躊躇いは無い敵
本物の敵意を向けられた靈夢は恐怖が体から滲んでいたのだ
「無理しちゃダメなのだー……」
背のルーミアが心配に声を掛ける
「大丈夫……ですよ!私だって……」
声すら震えながらも口に出した
「は、博麗の……巫女……だから……!」
意思を口に出しミストへ敵意を向け返した
「……寝ていろ」
技を食らわそうと手刀を前に構える
「よく言ったね……靈夢!!」
声と共に弾幕がミストを襲った
「ぬぅ……」
弾幕を払ったミストの視線が靈夢とルーミアに寄る邪魔者を追う
「フランドール……さん……」
「わはー!フランなのだー!」
救ったのはフランの分裂体
「邪魔を……」
ミストの怒りを向けられたフランは横目で靈夢を見る
「怖かったよね靈夢……でも逃げなかった、偉いよ靈夢!」
ニコッと笑ったフランは体に力を込める
「頑張った靈夢の代わりにあたしが引き受ける!」
力強く応えた
「……はぁ~……」
その場に崩れ落ちる靈夢
「ごめんなさい……頼みます……」
安堵で緊張が解けた靈夢は悔しくも頼んだ
嫉妬するくらい強い吸血鬼に
「いっくよー!!」
「エスターク様の敵が……!!」
2体の人外は衝突する
紅魔館
ヒュカッ!!
館内を進むエスターク達をナイフが止めた
「そこで止まりなさい……」
エスターク達がナイフが来た方向を見上げる
「ここから先へは行かせない……」
ドドドドドドド
階段の上に咲夜が立ち塞がっていた
「これはこれは……出迎え感謝します」
皮肉りながら笑うエスターク、お前程度では障害にもならないと言う様に
「排除させてもらうわ侵入者!」
ナイフを構える咲夜
「エスターク様……」
傍らのウォルターが願い出る
「構いませんよウォルター、ですが殺すのは許しませんよ?」
「わかっております……では」
そう言うとウォルターはいきなり咲夜へ駆け出して行く
「……ハッ!」
ウォルター目掛けナイフを投げる
キンキンッ!
ナイフは防がれた
エスタークに付くもう一人の者に
「……チッ!」
目前に迫ったウォルターをかわす為にバックステップを行う
「!?」
目を見開いた
ウォルターは自分を構いもせずに上階へ抜けていったから
「くっ!?」
弾幕を放つ
「……させん」
またもう一人が止め、咲夜に立ち塞がる
「あいつは何を?」
すぐに突破出来ないと知った咲夜はウォルターの目的を問う
「きっと抑えられなかったのでしょう……彼にとって吸血鬼は因縁ある相手ですから」
そう言いながら咲夜を止める者の後ろをゆっくり歩き進んでいく
「待ちなさい!!」
追いかけようと時を止めようとするが
「追いかけても良いがそうすれば俺はこの館を破壊し尽くす事になるぞ?」
それは咲夜を考えさせるには充分だった
主であるレミリアは勿論大事
しかし紅魔館も大事、何故ならここは皆の居場所でありレミリアの愛したバーンが居た場所だから
それを壊されるのをレミリアが黙っている訳が無い
大事な2択を迫られたから考えたのだ
「……妙な体してる割に駆け引きが上手いじゃない」
咲夜の考えは決まった
「お前を倒してお嬢様も守る……両方やらないといけないのがメイド長の辛い所ね……」
ナイフ突き立て告げる
「覚悟は良い?私は出来てる!」
紅魔館・レミリアの私室
「……あ」
宝石を眺めていたレミリアはハッとする
(思い出した……)
気になっていた事を思い出したから
(ダイ……どこかで聞いたと思ったら、そうよ……ポップよ!)
名
昔に聞いていた、ダイの名を
バーンを救おうとしたあの時に聞いていた
それを今思い出した
(確か……バーンを倒した者の名だったわね)
鮮明に思い出していく
(でも同一とは限らない……)
しかしそう考えてしまう
レミリアにはそれを知らなかったから、聞いていなかったから
関係さえも曖昧に捉えるしか出来ない
有るかもしれないし無いかもしれない
(一応妹紅に伝えとこうかしらね)
なので不確かだがダイの情報を教える事に決める
友の助けになると思って
コンコン……
同時にノックの音が響く
「……入りなさい」
許可にドアが開く
「失礼しますお嬢様……」
開いたドアからウォルターが入ってくる
静かに、丁寧に
「執事なんて雇ってたかしら?」
ウォルターを値踏みする様に見つめるレミリア
「いえ……私は執事ではありません、死神です」
グローブの着いた腕をゆるりと口元に上げる
「妖精のお友達に聞かれませんでしたか?挨拶に向かうと……」
鋭い眼光がレミリアを刺す
「ああ……そんな事言ってたわね、では貴方がウォルターね?」
フフッと微笑したレミリアは続ける
「どんな奴かと思えば死神を名乗るイカれた人間とはねぇ……」
人間が死を司る神を自称するのが笑えた
「イカれは否定しません、確かに神は言い過ぎでしょう、幻想郷では特に……」
そう返すと腕を下ろす
いつの間にか口にはタバコをくわえていた
「ですが貴方へ死を与えるのは事実です」
タバコへ火を点けながら微笑む
「言うじゃないか人間風情が……」
挑戦的な笑みにレミリアは立ち上がる
「思い知らせてあげる……」
ウォルターの半分程しかない今だ幼い体を浮かせる
「夜の闇に怯え……畏れ…… 慄け……」
紅き魔力が高まっていく
「さぁ始めましょう」
口元を緩め牙が露出する
「豚の様な悲鳴をあげなさい……」
紅魔の戦いが始まる
長い……
1話で終わらせようとしたら2万字くらいになるから切りました。
詰め込み過ぎですかねぇ……でも良い所で切ってたら更新は早いけど200話越えそうだからなぁ……難しい。
豪鬼はご存じストリートファイターからです、美鈴に相応しいかなと思いますがどうですかね?
次は咲夜さんの戦いがありますね、前作1話以降戦ってない咲夜さん……頑張れ!
次回も頑張ります!