東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第二十一話 決戦の予兆

「妃……ですって?」

 

エスタークの目的を告げられたレミリアは顔をしかめる

 

「ええ、貴方を気に入りました、強き力に恐れを知らぬ意思、それに気品さも併せ持つ……私の妃に相応しい」

 

妖しく唇を吊り上げレミリアへ更に顔を近付けていく

 

「離せ!」

 

払い除けられたエスターク、拒否を受けても笑みは消えない

 

「バーン……ですか?」

 

拒否の理由を聞いた

 

「……」

 

レミリアは答えず睨むのみ

 

「もう居ないのですよ?」

 

「……」

 

「100年も経ったのです、もう忘れてしまっても良いのでは?」

 

「……」

 

「……大魔王の力を得た私が今バーンとも言えます、それで納得出来ませんか?」

 

「黙れ……囀ずるな……」

 

最後にレミリアは反応を返した

 

「バーンは消えた……消えたのよ……」

 

目の前の者がそれを言うのが我慢ならないから

 

「いくらバーンの魔力を持とうとも……貴様は……」

 

方法はわからない、しかし何があったとしても、例えバーン本人がそう言ったとしても認めない

 

 

「バーンじゃない……」

 

 

エスタークをバーンと思う事など決して

 

「その姿勢は立派ですが……無意味と思いませんか?死んだ者にいつまでもいつまでも……」

 

「黙れッ!!」

 

怒声がエスタークを黙らせる

 

何を言われても考えが、想いが変わる事は無いと言葉に込めて浴びせた

 

「……なら仕方ありません」

 

怪しき魔力を手に込める

 

洗脳の魔術

 

レミリアを支配しバーンを忘れさせようとしていた

 

「……ッ!?」

 

何をされるか理解したレミリアは顔を伏せる

 

「……」

 

手をレミリアにかざし使用する間際

 

「無駄よ……何をされようとも私は屈しない……忘れない……」

 

レミリアは呟いた

 

 

「容易く忘れるくらいなら……愛したりしない……」

 

 

深い愛を

 

例え100年、いや、この先幾千幾万の時が流れようとも、例え全てを忘れさせる術を掛けられようとも

 

この想いだけは消えない、消させない

 

それだけの決意と覚悟があった

 

 

「……良いでしょう」

 

魔力を消したエスタークは身を翻し部屋の出口に向かう

 

「今は諦めます……ではごゆっくり……」

 

部屋から出ていった

 

 

「よろしいのですかあのままで?」

 

部屋の外に居たウォルターの問い掛け

 

「良い訳ではありませんが……洗脳するのは簡単です、ですがそれでは面白くありません、地獄を見せればわかりませんがね……」

 

ウォルターと共に歩いていく

 

「まぁ吸血鬼の人生は長い……気が変わるかもしれません」

 

王の間へと向かって行った

 

 

 

 

「……」

 

部屋を眺めながらレミリアはシーツを握り締める

 

(皆……)

 

友と幻想郷の先を強く案じながら

 

(バーン……)

 

涙が流れた

 

誰も見られない場所だからか自然と涙が溢れる、今は吸血鬼の誇りなど意味の無い時だから

 

「うー……」

 

悔しく、そして悲しく泣く

 

無力な自分に、味方の居ない心細さに、そして何よりも

 

 

「助けてよぉ……」

 

 

居ない事に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「……」

 

誰も喋らない

 

何も出来ない無力感から誰も話さない

 

「邪魔するよ」

 

静寂を破り図書館に入ってきたのは萃香

 

フレイザードを後一歩で捕まえられたのだがエスタークに逃がされた為魔物の残党を倒して紅魔館にやってきたのだ

 

変わらず飄々とした態度は崩れていない

 

「しみったれた顔してんねぇお前等」

 

ケラケラと笑いながら皆の中へ入る

 

「まっ1杯やんなよ」

 

盃に大魔王を注ぐ

 

「……いい」

 

「そうかい……他も?……じゃ私が飲もうかね」

 

誰も飲もうともしない酒を萃香は美味しく飲み干す

 

「あ~美味い!やっぱりバーンの酒は最高だね!」

 

一人楽しく酒盛りする萃香、明らかに場違いだった

 

「……他でやってくれないか萃香」

 

堪らず妹紅が言った、今の気分に萃香の陽気さは要らないから

 

「なんでさ、別に良いだろ私がここで飲んでても」

 

「ッ!!」

 

我慢の限界が来た妹紅が立ち上がる

 

「なんでお前はそんなに陽気に居られるんだ!」

 

こんな状況で普通に酒を飲んで笑える神経が理解出来ない、レミリアが拐われたのに、いやまだ知らないのかもしれない

 

知っていてその態度は有り得ないと思った妹紅は口に出す

 

「レミリアが……!」

 

「拐われたんだろ?知ってるよ」

 

表情変わらず萃香は答える

 

「……ならわかるだろ、今はそんな気分じゃないって……」

 

「そうかい、じゃ気にせず落ち込んでな、私は勝手に飲んでるからさ」

 

「……ここはレミリアの家だ、勝手はするな」

 

「アッハッハ……これはおかしな事言うね妹紅……そこの妹さんに言われるならともかく家族でもないお前に言われる筋合いは無いと思うんだがそこんとこどう思うね?皇帝不死鳥?」

 

「ッ!?萃香……!!」

 

「言い返せないなら黙っときな、飲むのを邪魔されちゃかなわないからね」

 

「……出ていけ!」

 

「うるさいねぇ……そんな事ぁ知ったこっちゃないよ」

 

「萃香ァ!!」

 

怒った妹紅が声を張り上げたと同時

 

 

「喧しい!!」

 

 

同じく萃香も張り上げる

 

「いつまでメソメソしてんだい!あぁ!?お前等もだよ!!」

 

怒声が妹紅を怯ませ図書館に響く

 

「ちょっとやられたからっていつまでも辛気臭いんだよ!」

 

感情が昂る

 

「お前等はそんなに弱くないだろうが!」

 

まだ止まらない

 

「信じてやれないのかい!レミリアは無事だって!思わないのかい!必ず助けてやるって!」

 

「わかってるわよ言われなくてもそんな事!」

 

パチュリーが叫ぶ

 

「なら意気を上げな!!」

 

その言葉に全員が気付いた

 

「お前等がそんなツラで居られたら幻想郷全体の士気に影響する、わかるかい?支配するつもりが無いのは知ってるけどお前等はこの幻想郷の頂に居る者達なんだ、そのお前等がそんな情けないツラしてたら皆に波及する……勝てるもんも勝てなくなる」

 

「「……」」

 

もう誰もさっきまでの落ち込みはなかった

 

(萃香……)

 

これが萃香なりの励まし方だと知ったから

 

「今回の敗因は私達にある……」

 

マシになった皆を見て萃香は満足気に話し出す

 

「上手く戦力を分断した敵さんが上手だったってのもあるけどそれ以前に私達が1つになっていなかった、理由はわかるね?」

 

「ああ……エスタークが弱いからって油断してたから負けた」

 

「楽しんでた私があんまし言えた訳じゃないけどわかってるならいい」

 

そう、萃香の指摘通り敗因は油断

 

今までエスタークの弱さを知っていたから何とかなると思い込んでいた

 

それが文や白蓮、そして正邪の敗北により認識を完全に改める前に今回の攻撃

 

エスタークもそれを狙い正邪を倒したその日に行動した

 

上手だったのは確かだったがハッキリ言って甘かった

 

エスタークがバーンの魔力を得たのを知らなかったとしても甘かった

 

弱くとも敵には変わり無いのに弱さ故に心の何処かで舐めていた

 

その結果が今回の悲劇を生んだのだ

 

 

「よし!わかってるなら誓いだ!」

 

萃香は少々興奮しながら声を荒げた

 

「絶対にレミリアや紫達を救いだし、幻想郷を守る誓いをね!」

 

誓いを、覚悟を言えと、それを必ず果たすと、そう言えと促す

 

「わかった!」

 

元気なチルノを筆頭にまず幼い3人

 

「いいでしょう」

 

「よし!」

 

「ピィ!」

 

パチュリーと妹紅がダイを連れ萃香の前に立ち誓いを口に出そうとする

 

「何やってんだいあんた達……私に誓うって……阿呆なのかい?」

 

呆れた萃香に意味のわからない5人とダイ

 

「いや、お前が誓えって言ったんだろ?お前以外に誰に誓うんだよ?」

 

代表して妹紅が聞くと萃香は深い溜め息を吐いて指差した

 

「誓うのはアレにだろうに……」

 

「あ……」

 

指差されたそれを見て皆は納得した

 

「バーンに誓わずに誰に誓うんだいお馬鹿さん達さ」

 

「そ、そうだな……確かにそうだ、悪い萃香」

 

それを見た妹紅はなんでわからなかったのかが恥ずかしく顔を赤く染める

 

他の4人も苦笑いしながらそれの前に立つ

 

「私達はここに誓う」

 

今は亡き友の前で皆は並び

 

「必ず皆を助ける、そして幻想郷を守る!絶対にだ!」

 

一切のブレ無く

 

「だから見守ってくれよ……バーン」

 

誓って見せた

 

バーンの墓の前で

 

 

「うんうん!さぁ飲もうか!」

 

誓いが終わったのを見届けた萃香が笑顔で酒を出した

 

「いやいや!飲もうか!じゃないだろ!」

 

「何もする事無いんだろう?なら飲むしかないだろ!飲め!」

 

「そりゃそうだけどさ……」

 

妹紅は少し困った後

 

「ちょっとだけだぞ?エスタークがいつ来るかわからないんだしさ」

 

「よっしゃあぁ!樽持ってきなぁ!」

 

「おいやめろ」

 

元気を取り戻した皆は機を待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿

 

……クソォ……

 

「……!」

 

王の間へ戻るエスタークは道中啜り泣く声を聞き見に行った

 

「……どうしましたカメハ?」

 

泣いていたのはカメハ

 

倒れている魔物達を手当てしている

 

「クソォ……クソォ!なんで勝てないんだ!」

 

悔しく涙を流している

 

(グランエスタークに続いて……邪配合を得たカメハも河城にとりに敗北……)

 

カメハはまたも勝てていなかった

 

力の片鱗を解放したロビンに再び叩きのめされていた

 

それが悔しくて涙を流している

 

(カメハはともかくグランエスタークが敗北したのは予想外……たかがメイドと舐め過ぎていましたか、まぁいいでしょう)

 

エスタークにとっても今回の攻撃が完璧だったとは言い難い

 

予定では被害無くレミリアを得るつもりだった、だが実際は紙一重

 

進化させた配下で悠々と時間稼ぎを出来ていた訳ではなかった、誰もが倒される可能性があった

 

そして結果としてグランエスタークは倒され下手をすればカメハまで倒され捕獲されていたのだ

 

(それでこそ支配……いや、越える価値があります)

 

幻想郷が越えるべき試練と捉えたエスタークはカメハへ助言を与える

 

「カメハ、河城にとりを越えたいのならば更に邪の深淵に向かいなさい、そうすれば貴方は何者にも負けないマスターになれる筈です」

 

言葉巧みに、妖しく、甘美に誘う

 

「わかってる……わかってるよ!」

 

引き返せない邪道の深みへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パレスの建造状況は?」

 

王座へ戻ったエスタークは魔物へ問う

 

「はっ……完成度は2割と言った所です」

 

報告を聞いたエスタークは少々驚いた

 

「流石に万の魔物達に造らせると早いですね」

 

エスタークは何かを造らせていた、魔界より集めた魔物達を使って

 

「完成予定はいつに?」

 

「このペースなら1週間程かと」

 

「よろしい……」

 

立ち上がったエスタークは魔物へ宣言する

 

「伝えなさい、パレス完成と同時に幻想郷を侵略すると!各自に戦いの用意を!」

 

「はっ!」

 

命令を受けた魔物はすぐに伝達しに走っていく

 

「フフフ……」

 

王座へ座り直し妖しく笑う

 

(選ばせてあげます……支配か死か……フフフ……)

 

狂喜混じる笑い声が響く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭

 

「……」

 

黙々と薬を作る永琳

 

(姫様の症状は呪いに近い、夢を見せられ続けている……でも既存の薬や私の知識では目覚めさせれなかった……何故姫様だけが……)

 

考え事をしながら薬は作られていく

 

(もう可能性はこれしか……エルフに伝わる秘伝の薬、これが効かなければもう頼れるのは神奈子達しか……)

 

効くかもわからない事に不安が募る

 

それが効かなかった時は神である神奈子に頼るしかないのだが今はその神奈子達も居ない

 

だから尚更不安

 

(神奈子を頼るにもエスタークを倒さないといけない、でもあの聖白蓮や射命丸文、鬼人正邪すら倒されてレミリアまでもが拐われた……もう以前のエスタークではない?)

 

(聞けば軽くあしらえていたエスタークの仲間でさえ一筋縄ではいかない強さになっていたと聞いた……それに率いる魔物の数が不明……)

 

聡明な頭は考えれる可能性と危険さを浮かばせる

 

(それを迎え撃つ戦力を考えると……厳しいかもしれないわね)

 

永琳が厳しいと考える理由はエスタークの持つ魔物にあった

 

魔物の数が不明だから希望的な事は考えれない、数千、あるいは万を越えるかもしれないから

 

仮に万だとしても幻想郷の強者達なら多少苦戦はするが問題は無いだろう、ただし敵が魔物だけならばだ

 

問題は敵の中に強者を抑えれる者が居る事、最終的に勝つにしろ時間が取られる、その間に幻想郷が滅茶苦茶にされる可能性を永琳は危惧していた

 

(なら戦力は多いに越した事はないけど……)

 

顔が歪む

 

宛が無いからだ

 

現在幻想郷の状況は悪い、紫や神奈子の不在に加え白蓮、文、正邪を欠き、輝夜は目覚めず、最も居て欲しい頂点の一人レミリアが居ない

 

最悪の状況を考えれば明らかに不安があった

 

(せめて魔理沙や霊夢が居てくれれば……)

 

不安にそんな無意味な考えをしてしまう

 

「……そういえば」

 

そこで永琳は思い出した

 

(結局死者の行方はわからなかった……けど……死神……)

 

以前、甦った妖怪を相手にしていた時に見た死神の事を

 

(あの時は深くは考えていなかったけど……やはり説教以外基本的に幻想郷に干渉しない閻魔の死神が居たのはおかしい……何かをしていた?若しくは……探していた?)

 

「……」

 

暫し手を止め考える永琳

 

(もう一度見てみましょうか……薬も後少しで出来るしね)

 

するべき事を決め再び薬の作成に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼

 

「妖夢~ちょっと来なさ~い」

 

「はーい幽々子様ー」

 

主に呼ばれた妖夢

 

「失礼します、なんですか?おやつですか?」

 

礼儀正しく部屋へ入る妖夢

 

「そこに座りなさい」

 

幽々子は座る様に促す

 

「……」

 

妖夢の顔は真剣だった、何故ならいつものやわらかな幽々子と違い今の幽々子の表情は引き締まっていたから

 

「なんでしょう?」

 

だから大事な事なのだと察しふざけず用件を尋ねる

 

「先の戦いご苦労様、レミリアが拐われてしまったけど貴方はよくやってくれたわ」

 

「……1体仕留めきれませんでしたが……妙な炎と氷の半分を……」

 

妖夢は妖怪の山を殲滅した後に永遠亭に向かっていた、萃香と同じく怪我人を案じて

 

そこで萃香の追うフレイザードを見つけ倒そうとしたが萃香と同じく取り逃がしていた

 

「済んでしまった事はいいの……それより」

 

幽々子は今最も優先すべき事を話す

 

「妖夢、もし幻想郷に危機が訪れた時には……わかってるでしょ?」

 

「……はい、魔帝異変と同じく……ですね?」

 

「そう、もし幻想郷を揺るがす事態になった時、そうなった時は優先すべきは幻想郷、守るのは幻想郷であって白玉楼なんて家でも私でもない」

 

「しかし……」

 

わかってはいるが妖夢には些か容認し難い事、何故かと言うと妖夢は幽々子に仕えている、いくら主がそう言っても素直にハイとは言えない、そういう立場だから

 

「うふふ……大丈夫よ妖夢」

 

そんな妖夢に幽々子は懐から玉を取りだし見せた

 

「これは昔に紫に頼んで作って貰ったスキマの力を込めた玉、2回だけ使える様にしてもらってる」

 

「スキマを……?」

 

「そっ……場所がわからないから救出には使えないけどね、だからこれの使い道は決まってるの」

 

「何にですか?」

 

「うふふ……用心棒の契約を結んでる人が居るのよ、貴方に内緒で一回だけね」

 

「用心棒……?誰ですかその人は?」

 

悪戯っぽく笑みを見せる幽々子に妖夢は問うが

 

「な~いしょ!」

 

幽々子は答えなかった

 

「すぐに来れるんですか?」

 

「ええ、その人にはマーキングしてあるからね、この2回って言うのもその人の行き帰りの分で2回なの」

 

「……わかりました、では幽々子様を心配しなくても大丈夫なんですね?」

 

「勿論!だから貴方は存分に刀を振るいなさい、一人の剣士として、幻想郷に仇なす者を切る剣に……悪を絶つ剣に!」

 

「わかりました!」

 

唯一の懸念が解消された妖夢は凛々しく応え部屋を出ていく

 

(もはや後顧の憂い……無し!!)

 

来る戦いの前に意気を高めて

 

 

 

「うふふ……張り切っちゃってまぁ……」

 

妖夢が出た後、嬉しそうに菓子を頬張る

 

(もう私じゃ逆立ちしたって勝てないものねぇ、妖夢にも……あの子達にも……)

 

菓子を全て平らげた後にお茶を啜る

 

(なら私に出来るのは邪魔しないって事だけ、私が気張るよりもあの子達を動きやすくする方がずっと有益だもの)

 

お茶を飲み終えると空いている戸から外を見上げる

 

(ごめんなさいね紫……多分これが貴方を助けるには一番の方法だと思うの、だから……待ってて、必ず救うから……)

 

友の身を案じ幽々子はまた新しい菓子を食べる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑・風見幽香の家

 

「どうしたのよそんなに怒って……」

 

幽香は困惑していた

 

「……だって癪じゃない、あんなバカが私を差し置いて最強だなんて……」

 

「それは……確かにあいつと協力してたらあんな雑魚軽く倒せてたけど……」

 

「でも……わかるでしょ?私があいつ等に素直になれないって……」

 

「うっ……わかってるわよ、そのせいでレミリアが拐われたって……あの時協力して早急に始末するかチルノだけでも紅魔館に行かせてればこうはならなかったって……」

 

「だからわかってるわよ、怒らないでよ……もう……」

 

一人話続ける幽香

 

いつもの彼女らしくなくいつもより弱気

 

「わかってる……絆は大事にするわ、ええ……繋がりがあったから私は強くなれたから……」

 

幽香の話し相手

 

「私が死んであいつに地獄で会うまでは……ね」

 

花を突っつく

 

幽香の話し相手は花だった

 

バーンの贈った絆の花、ヒルガオ

 

幽香にしか聞こえない花の声と会話していたのだ

 

花には怒られた様だ

 

「じゃあ手入れするわね」

 

優しく手入れしていく

 

幽香は絆の花をとても大事にしているからか、バーンに重ねているからか頭が上がらない

 

今の様に諌められたり他人には言えない本音を聞いて貰ったりしている

 

彼女にとってこの花は何よりも大事な花なのだ

 

「え?」

 

手入れの途中、花に話し掛けられる幽香

 

「もしバーンが助けに来てくれたらどうするって?」

 

それを受けて幽香は即答した

 

「殺すわね、なに約束を違えてるのよ!帰れ!ってね」

 

幽香はいつか地獄で再会すると約束している、だから今再会するのは約束を違える事になる、だから殺す

 

「うっ……そうよ……嘘よ……」

 

それは花の指摘で覆った

 

「嬉しいわよ……もう、何言わせるのよ」

 

恥ずかしく頬を染めながら手入れを終える

 

「でもね……それは無い」

 

花へ告げる

 

「バーンは幻想になった、幻に……もう何処にも居ないの」

 

幽香は知っていた

 

バーンはもう何処にも存在していないと

 

魂が消滅していると知っているから

 

消滅しているのだから何処にも居ない

 

幻想郷はおろか異世界にも何処にも

 

地獄にも……

 

「でも……それでも私は強くなる、約束だから……」

 

知っていても止めない

 

約束だから

 

もう叶わぬ約束と知りつつも約束を果たす為に強くなる

 

それが決めた生き方だから

 

 

「だからあの帝王には供物になって貰いましょうか……」

 

先程と豹変し好戦的な笑みで幽香は笑った

 

「私が強くなる糧に……ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄

 

「もう少しです」

 

「ようやくですね」

 

映姫の言葉に小町が微笑む

 

「あっちは大変みたいですね」

 

「そうですね、まさかレミリア・スカーレットが敗北するとは思いませんでした」

 

「エスタークは映姫様が言ってた真の王になったんですかね?」

 

「かもしれません……」

 

「大丈夫なんですかね?幻想郷?」

 

「それを大丈夫にする為の手伝いをしているのですよ?」

 

「それはわかってますけど……」

 

小町は聞いた

 

「なんで映姫様は幻想郷に肩入れするんですか?本来は干渉してはいけない決まりだったんじゃ……」

 

気になっていた事を

 

「……そうですね、貴方には話しておきましょうか」

 

閻魔の立場上不干渉の筈が干渉し、幻想郷に肩入れする理由

 

「それは大魔王バーンが幻想郷を救ったから……」

 

それはバーンが関係していた

 

「大魔王バーンが?どういう事ですか?」

 

「魔帝異変の際、幻想郷は滅びの危機に瀕していました、滅んでいれば生き物は全て居なくなります、人間も妖怪も何もかも……」

 

「……そうなったら私は大忙しでしたね」

 

軽口を叩く小町に

 

「その後に待つのは永久の休暇だとしてもですか?」

 

映姫は告げる

 

「え?どういう事ですか?」

 

「わかりませんか?生命が全て滅び、魂を送った後、もう私達の仕事が無い事に……」

 

「あ……」

 

小町は気付いた、映姫の言葉の意味を

 

「そう、滅びの後に生命は生まれません、私達が幻想郷の閻魔と死神である以上、私達は幻想郷が存在し続ける限り見守らねばならないのです」

 

「それが永遠に等しき時間でも……ですか……」

 

閻魔とは次元の違う存在

 

管理する地の地獄の管理者

 

言わば一心同体

 

だから何があろうと居続けなければならない、使命でもありそれが存在理由だから

 

もし魔帝異変の際に幻想郷が滅んでいれば無人の荒野、悪魔は蔓延れどそこに幻想郷の者は居ない

 

死んだ者に新しい生命は創れない

 

滅んでいれば新しい生命が生まれない幻想郷は永遠にそのまま

 

そうなれば地獄に魂は来ない

 

ずっと地獄で居るだけになる

 

何も変わらない場所で永遠に居続けるのだ

 

「大魔王バーンが救ってくれなければそうなっていました、だから私は面識は無くとも感謝しているのです、私を救ってくれた彼に……」

 

だからそれを回避してくれたバーンに感謝しているのだ

 

バーンにそこまでの考えは無かったとしても結果的に映姫を救っていた

 

「ですから私は助力するのです、閻魔の掟に背いても……恩を返す為に……」

 

映姫自身もそれが禁忌の所業だと理解している、それでもやるのだ

 

「私は……たまに幻想郷に行って皆に説教する時間が楽しかった……皆には迷惑がられてたみたいですけどね」

 

表情を変えず目を閉じ小町に語る

 

「いつの間にか……幻想郷が好きになっていたのでしょう、高次の存在である私が……有り得ない事なのですが……」

 

それが恥ずべきだと言う様に苦く顔は歪む

 

「……良いんじゃないですか?」

 

小町は言った

 

「そんな閻魔が居ても私は良いと思いますよ、私も幻想郷は好きだし滅んで欲しくないので……俗物的ですかね?」

 

笑顔で

 

「ふっ……そう、貴方は少し俗物的過ぎます、だから仕事をサボるのです」

 

「あいた……これは手厳しい」

 

「ふふっ……」

 

「あはは……」

 

二人は笑い合った

 

 

「……小町、完成する間際に手紙を出してください、ここへ来る様に」

 

「誰にですか?」

 

「八意永琳です」

 

「わかりましたけど……何の為にですか?」

 

「彼女の持つ物が必要になるからです」

 

「持つ……物……ですか」

 

「ええ……精霊の命の核が生やした大樹、その大樹の欠片、それが必要になるのです」

 

「よくわかりませんがとにかく手紙を出せば良いんですね?」

 

「そうです、頼みましたよ」

 

それを最後に二人はまた成すべき事に集中する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから幻想郷は驚く程静かだった

 

待ち構える幻想郷にエスタークは姿を現さなかったからだ

 

まるで嵐前の静けさの様に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして1週間後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ブゥン……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷の空を巨大なスキマが割った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お久し振りです幻想郷の皆様』

 

 

幻想郷全域に轟く声、エスタークの声だった

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

その声に幻想郷中が空を見上げる

 

「なんだ……あれ……」

 

空に出現した物に民は口々に声を出す

 

幻想郷の空を浮かぶ巨大なそれに向かって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・バルコニー

 

「何……あれ?」

 

バルコニーに出た皆は浮かぶそれを見て驚愕していた

 

「飛行要塞?」

 

パチュリーがそれを形容する

 

空に浮かんでいたのは巨大な建造物

 

「槍みたいですね」

 

大妖精が形を見て思った、建造物の正面であろう所には長く鋭く尖った先があったから武器にも見えた

 

「あーそれっぽい!」

 

「あたいもそうだと思った!」

 

フランとチルノ

 

皆現れたそれに口々に意見を飛ばしていた

 

「……違う」

 

ただ一人妹紅を除いて

 

「違うって何がですか?」

 

大妖精が振り向くと体を跳ねさせた

 

妹紅から怒りを感じたから

 

「あれは……」

 

拳を握り締めながら妹紅は言う

 

「あれは……不死鳥だ」

 

妹紅はそれを見て瞬時に悟った

 

あの建造物の意匠は不死鳥なのだと

 

長い先端は鳥の頭、中央が胴体でそこから羽の様に通路が伸び、後方は尾に当たる部分だと

 

「あの野郎……」

 

鳥と言っても通じるがわざわざ不死鳥と言ったのは直感だった

 

そう感じたから、あれはバーンの不死鳥を象った物なんだと

 

一目で思ったから怒る

 

バーンとの共通の象徴を汚された様な気がして

 

 

『今から幻想郷に選択肢を与えます、良く聞きなさい』

 

怒る妹紅を前にエスタークは用件を語り出す

 

『1つ、降伏し私の支配下に入るか、降伏するなら人間以外の安全は保証しましょう』

 

『2つ、死か、支配が嫌と言うならこのエスタークパレス全戦力を持って幻想郷を全て根絶やしにします』

 

 

『支配か死か……選びなさい』

 

 

そこで言葉は終わる

 

「ふざけやがって……!!」

 

妹紅が浮かぶ建造物、エスタークパレスを睨む

 

どちらも承諾出来るものではない

 

支配も死も

 

「……!!」

 

飛び出そうと身構えた瞬間、またエスタークパレスから声が響いた

 

 

『さぁ答えなさい……藤原妹紅……』

 

 

 

 

 

 

 

 

今幻想郷は夢の岐路に立つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うん、怪我して仕事休みだと捗りますね。

まぁ今更ですが正直人気が無いのは理解してます、続編を望まれて書きましたが皆さんが納得出来る物じゃなかった訳ですね、東方主体でバーン様要素全然無いですしね、一応前作で終わりにしていたのでこの作品は頑張りましたが蛇足だって理解してます。

でも、それでもこの作品を見てくれる、続きを待ってくれる人が居るから書きます、この作品を面白いと思ってくれる方の為に書きます!失踪しません、安心してください!

そんなこんな思いながら20話越えちゃいました、予定では20話前後の筈だったんですが……何故だ……

次回も頑張ります!
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