紅魔館
「さて……どうする?」
集まっている5人
「どうするもこうするもやるしかないだろ!」
パチュリーに何言ってんだと妹紅は返す
「妹紅はわかってるわよ、私が聞きたいのは貴方以外よ」
チルノ等に顔を向ける
「もちろんあたいもやるわよ!」
「私もやります!」
「あたしも!」
3人は意気良く答える
「そう、やるのね」
咲夜に出された紅茶を飲みながら気の無い返事を返すパチュリー
「まさかパチュリー……」
その様子に妹紅が不安に問う、戦う気が無いのではと
「何?勿論やるわよ?当然でしょ?」
それを察して答えるパチュリーに妹紅は安堵する
「今のは意思確認よ、皆の意識を統一しとく為のね」
そう言うとカップを下ろす
「良い啖呵だったわ妹紅、流石野蛮な皇帝不死鳥ね、学の無さが表れていたわ」
「そりゃ知性豊かな紫もやしさんには学じゃ敵わないけど、力なら私が上だぜ?魔女の二天さん?」
ジョークに二人は笑い合うと窓から見えるエスタークパレスを見る
1時間前
「どうするか……だって?」
妹紅は止められていた
「なんで……私に……」
今まさに飛び出さんとしていた妹紅を止めたのはエスタークの出した選択肢
その選択権を自分に委ねたのが解せず止まったのだ
「それは恐れていたからよ、妹紅……貴方をね」
傍らのパチュリーが口を出した
「おそらくだけど……エスタークは貴方を恐れていた、あの輝夜が来た日にそう感じた……何かしたんでしょ妹紅?エスタークに?」
そう言われて妹紅は思い当たる節を考える
「……殺しかけたくらいしか思い付かないけどな……」
「多分それね、殺されかけた恐怖が憎しみになったのね、だからエスタークは貴方に与えたのよ、幻想郷の運命を決める2択を選ばせる為に」
エスタークパレスを睨む
「妹紅を苦悩させる為に……」
パチュリーはわかっていた
幻想郷の運命を決める選択を妹紅に決めさせる事の意味
それは単なる嫌がらせだと
憎む妹紅が苦悩する様を見たいのだと
「悪魔かあの野郎……」
「まぁ魔族だしあながち間違いではないわね」
実際妹紅は苦悩していた
幻想郷なんて大事な事を自分が決める重圧に
頂点と呼ばれる力はあれど住民の一人である妹紅にこの選択は難しいものがあった
自分では決めかねれない問題だからだ
幻想郷に住む者の総意を決める事柄を勝手に決めれないから悩む
『決まりましたか藤原妹紅?』
そこへパレスから声が飛ぶ
『もう待ちません、決まらないなら根絶やしになりますよ?』
催促の声、答えないなら自動的に殲滅になると
「……ッ!?」
悩む妹紅は顔を歪ませるだけで答えない、決めかねている
「何を悩んでるの妹紅?」
そんな妹紅へパチュリーが不思議そうに尋ねる
「だってさ……私の一存じゃ……」
決めかねる妹紅へパチュリーは溜め息を吐いて言った
「バカねぇ……それがエスタークの狙いよ」
妹紅を指差して語る
「貴方のその顔が見たかっただけよエスタークは……今頃あいつは貴方の顔見て笑ってるわ」
「けどさ……」
自分の苦悩は無駄とばかりに言うパチュリーに納得がいかない妹紅
「考えてみなさいよ、あの選択肢ってどちらか選ばないといけないの?」
「どういう事だ?」
意味がわかっていない妹紅に続ける
「テンパってるわねぇ……あの2択はどちらも選べないから悩んでるんでしょ?」
「……そうだな」
「それが間違いなの、なんでその2択で考えるのよ」
「……ん?」
まだわかっていない
「相当テンパってるのね……大事に関わる事に慣れてないからかしら……」
普段ただの妖怪ハンターの妹紅に幻想郷を左右する大事は荷が重いのだと知り悟らせるのを諦めた
「要はそんな選択をせずに戦うって第3の選択肢を取れば良いの、わかった?」
「……あ、そうか」
ようやく理解した妹紅
エスタークの掲示した選択肢は支配か死か
別にそれを選ぶ必要は無いのだ、仮に選んだとしても当然抵抗する
ならば最初から選択肢に意味は無かった、どちらにしろ戦うから
これはエスタークがただ妹紅一人だけを苦しめる為の嫌がらせだったのだから
「なんだ……こんな簡単な事だったのになんで気付かなかったんだろう私は……」
恥ずかしく頬を掻く妹紅にパチュリーはパレスをまた指差す
「じゃあ言ってやりなさい、幻想郷の返事を」
「任せとけ!」
1歩前に出た妹紅はパレスに向かい叫んだ
「エスターク!!」
『……決まりましたか藤原妹紅?』
「ああ決まった!」
『どちらにしますか?』
「どっちも願い下げだ!!」
『……なら死ぬしかありませんがよろしいですか?』
「やってみろよ!幻想郷は……」
力強く、ハッキリと告げた
「負けない!!」
何があっても勝つと、だからかかってこいと
『よろしい、ならば戦争です』
エスタークは即座に宣言した、そう言われるのはわかっていたから
『1日だけ待ってあげます、明日の明朝……それが開始であり、幻想郷が隔絶された歴史から消える時です……』
『博麗神社、そして上白沢慧音……意味はわかるでしょう?』
『では皆さん最後の時を堪能してください……』
それを最後にパレスは沈黙し、浮かんだまま動かなくなった
「ねぇ……行っても良いの?」
チルノがパレスを指差す、パレスはあのままあるのだから待たずとも良いと思ったから聞いた
「やめときなさい、あれは強力な魔力で覆われている、あれを突破するのは力ずくでは労力が掛かり過ぎるわ」
「メドローアでもダメなのか?」
「ダメどころか最悪よ、マホカンタが混ざってるもの……私対策ね、よく勉強してるみたい」
「じゃあどうするんですか?」
「一旦中へ戻って作戦会議といきましょう」
そうして今へ至るのだ
「と言っても私達が取れるのは2つ、エスタークパレスの防壁を無理矢理突破するか攻めてきた敵を全て倒してエスタークを引き摺り出すか」
「突破するにしても難しいんですよね?」
「そうね、抉じ開けるのは出来るには出来るでしょうけどかなり力を使うし……後々を考えたら得策とは言い難いわ」
「なら敵を全部倒すのが現実的でしょうか?」
「そうねぇ……」
大妖精と話すパチュリー
「それよりまず幻想郷の皆でどうするか話し合わないと……」
そう言いかけた時
「あの……妹紅さんに客……です……」
美鈴が入ってきて告げる
「私に?誰なんだ美鈴?」
こんな時に自分に客とは変だなと首を傾げる妹紅
「……人間です」
美鈴は困った様に言った
「人間?なんで?」
「それが……妹紅さんを出せって言って聞かなくて……」
人間が訪問して来た事に不思議がる妹紅は美鈴の言葉に更に不思議になる
「よくわからないけど……ちょっと行ってくる」
とりあえず行こうと妹紅は席を立ち出口へ向かう
「……妹紅」
それをパチュリーが止める
「耐えてね……」
自分を見ずに言われた言葉に
「?……ああ、わかった」
わからないまま門前へ向かった
紅魔館・門前
「おおっ!?」
妹紅は門前へ出ると驚いた
(これ……人里の奴等全員か?)
門前には多くの人間で溢れていたから
誰もが悲しい顔や怒りの顔をしていた
「どうしたんだ皆?」
それはエスタークのせいなんだと思いながら妹紅が心配させない様に陽気に尋ねる
「お前……責任取れるのか!!」
瞬間、浴びせられたのは罵声
「なっ!?どうしたんだよ皆!?」
突然の罵声に焦る妹紅に
「責任取れるのかって聞いてんだよ!!」
「何勝手にお前が決めてんだ!勝算あんのか!!」
「私達を巻き込まないで!!」
次々と浴びせられる罵声
「な……な……」
向けられた憎悪に言葉が出ない
「お前達だけでやれよ!!」
「あれだけ言ったんだ!当然守ってくれるんだろうな!!」
「何様だお前!!」
止まない罵声
「……始まったわね」
窓から眺めるパチュリー
彼女にはこうなるとわかっていた
「あいつら~!!あたいの子分によくも!!」
「妹紅さん!!」
「行くよ二人共!!」
「ピィ~!!」
4人が向かっていく
「……」
パチュリーだけは行かなかった
窓から様子を見ながら忌まわしく唇を噛む
(人間の平和は強大な力によって支えられていた……そう、私達頂点と呼ばれる者達や八雲紫、八坂神奈子等の賢者や神に……)
(それが長く続いていたから人間はそれが当たり前になっていた、それが犠牲の上に成り立っているのを忘れて……)
(いえ……もう当時を知る人間は誰も居ない……バーンが守った事実はただの歴史として半ば空虚になっていた、だから臆面も無く言える……自分達は守られるのが当然なんだと……)
今、妹紅が受けているのは人間の欲
最も醜い部分をさらけ出し、責めていた
自らが弱く可愛いが故に、一番人間に歩み寄っている妹紅に増長した欲をぶつけていた
(……今ならバーンが人間を好まなかった理由がよくわかる)
昔聞いた事を思い出し顔を伏せる
(人間が泣いてすがるのは自分が苦しい時だけ……これも同じ、平和の反動が怒りと悲しみになっただけ……)
だが決して助けに行こうとはしなかった
「それで折れる訳ないわよね?ねぇ……妹紅?」
友の強さを信じるパチュリーは席に座り待つ事にする、魔導書を読みながら、いつも通りに
「何とか言え!責任取れるのか!!」
「そうだそうだ!!」
「いい加減にしなさいよあんた達!!」
チルノ等が来ても止まらない
「うるせぇ!バカは黙ってろ!!」
「言ったわねぇ!!」
チルノが凍らそうと冷気を出そうとする
「やめろ親分」
それを妹紅が止める
「大妖精もフランもダイも何もしないでくれ」
そう言うと人間の前に歩いて行く
「責任は取るよ」
一言そう言った
「どうやって取るんだ!!」
「あんなのから守れるって断言出来るのか!!」
「いい加減な事言ってんじゃねぇぞ!!」
すぐさま罵声が飛んでくる
「守ってやるよ!!」
叫びが一瞬皆を黙らせた
「勝手な事して悪かった、今はそれしか言えない、だから……任せてくれないか?」
頭を下げて言った
守ってやると、約束だと
「……口だけならなんとでも言えるんだよ!!」
しかし止まらなかった
「守るって言うんなら刺し違えても守れ!化物なんだからよ!!」
「ッ!?」
その言葉は深く妹紅を刺す
「コラァ!!あんた達ぃ!!」
チルノが我慢できず飛び出そうとするのを3人が抑える
「……わかってるよ」
妹紅は苦笑しながら言った
「私は化物だからね……それくらいしか出来そうもない……」
顔を伏せる妹紅に罵声は止まらない
ただ妹紅は耐えるだけだった
そう、妹紅が孤独だったなら
「何をやってるんだお前達!!」
声が人混みを掻き分けながら聞こえる
「妹紅!大丈夫か!!」
「慧音……」
現れたのは慧音
「慧音先生!先生は藤原妹紅と知り合いなんでしょう?なら先生からも言ってやってください!」
これ幸いと慧音に頼む人間達
「……お前達!!大概にしろ!!」
慧音の怒声が響く
「お前達を今まで守ってくれてたのは誰だ!妹紅だろう!こいつはお前達人間の立場が弱いからっていつも助けてくれただろう!何故そんな酷い事を言える!!」
「で、でも……それが当たり前だったから……」
「何が当たり前だ!妹紅は善意でやってたんだ!お前達が平和に暮らせる様にと!それに甘えていたお前達が何故そんな口がきける!!」
慧音は怒っていた、与えられていた平和を当然と言う厚顔無恥に、そして何より
「その妹紅を化物だと……全員そこへ直れ!修正してやる!!」
友を化物呼ばわりするのが許せないから
「慧音……もういい」
妹紅が許すも
「よくないだろう!さぁ早く直れ!!」
慧音の怒りは収まらない
「な、なんだよ慧音先生まで……先生もその化物の味方かよ……」
「お前等……!!」
反省の色が見えない人間達に怒りが頂点に達する
「おうおう……構う事ぁない、殺っちまいな」
酔いどれ声が皆に響いた
「鬼!?」
気付いた人間が驚きと恐怖で竦み上がる
「萃香さん!」
現れた萃香に大妖精が手を振る
「どうした先生?殺っちまわないのかい?」
大妖精に軽く手を振ると慧音へ歩み寄る
「……殺すのはダメだ」
慧音がそう答えると萃香は酒を飲みながらニコニコ笑う
「なんでさ、こんな腐った奴等居てもしょうがないだろ?いやいや、しょうがないどころか毒になってるときた、解毒が無理なら消毒しかない!あんたが出来ないなら私がやってやるよ、なぁに1分も掛からんよ、楽なもんさ!」
「ダメだ!こいつらには私が言い聞かせる!収めてくれ……」
その様子に人間達は慌てふためく
世にも恐ろしい鬼が自分達を笑顔で皆殺しにしようとしているのだ
酒のツマミを得る様に、軽い遊びの様に
慧音の必死な様子が冗談ではないと皆にわからせたのだ
「無理だね、残念だけどもう決めちまったんだ」
「待てっ!!」
止める慧音を引き剥がすと萃香は人間達の前に立つ
「さて皆の集、黄泉へ向かう支度は出来たかい?」
満面の笑みで告げる萃香に
「あ……あぁ……ぁ……」
人間達は動けなかった
恐怖で
圧倒的な殺意を向けられてすくんで動けない
「あの世で悔いな……」
動き出す足
「……なんのつもりだい?」
それは遮る者に止められた
「妹紅……」
止めたのは妹紅
「殺らせる訳ないだろ」
萃香を行かせまいと睨む
「……私の前に立つその意味、知らんとは言わせないよ?」
「承知の上に決まってるだろ!」
妖力を徐々に高め合いながら二人は威圧し合う
「……なんでそんなに人間を庇うんだい?」
萃香は疑問をぶつける
あれだけ罵声を浴びせられて尚人間を庇う妹紅に対する率直な疑問
「……私が人間でいられなくなった者だから」
その答えには籠っていた、妹紅を知る者ならわかる想いが
「……なるほどね」
納得した萃香は同時に妖力を消した
「見たかいお前等!!」
そして人間達に叫んだ
「こいつは甘い!とんでもなく甘い奴なんだ!あれだけお前等に貶されても!それでも元人間だからってお前等を守ろうとする!こんな優しい騎士様をお前等は虐めてたんだ!恥を知りな!」
萃香の言葉に誰も返さない、皆思うところがあり沈黙していた
「わかったんなら帰んな!お前等は里で祝宴の準備でもして待ってたら良いのさ!」
とびきりの笑顔で萃香は言った
「私達が勝つのをねぇ!!」
それを最後に人間達は里へ帰って行った
皆妹紅に謝り、想いを託して行った
勝ってくれと
「慧音……萃香……ありがとう」
紅魔館へ戻りながら妹紅が礼を言う
「何……気にするな妹紅!」
「そうさ!私が気に入らなかっただけさ、礼を言われるいわれは無いよ」
「そっか……慧音は良いとして……助かったよ萃香」
「……あん?」
「だってそうだろ?あんな事までして私を助けてくれたじゃないか」
「確かにあれは狙った様に見えたな」
「……あぁん?」
「嬉しかったよ……お前にあんな一面があるなんてな」
「あ"ぁ"ん"!?」
「……優しいんだな萃香」
「!?!?」
萃香がビクッと跳ねると
「……阿呆な事言ってないでさっさと行くよ」
早足で歩いて行った
「……耳まで真っ赤だったな」
「うむ、確かに見た」
二人は笑ってパチュリーの待つ部屋へ向かった
「そんでどうするつもりなんだい?むきゅむきゅ総司令官殿?」
「変な名前付けないで、やめてよ」
萃香の軽口に返すとパチュリーは魔導書を下ろし語り始める
「そうね、考えたけどあそこに紫達が居る確証は無いからやはり攻める者と守る者で分かれるべきだと思うわ」
「それが最善手かねぇ……」
他に手は無いものかと思案を巡らせる8人
「異世界に渡る術はあるんだけど……必要なかったかな?」
機械音と共に声が部屋に入った
「にとり!」
「やっ!手伝いに来たよ!」
にとりは笑顔で手を上げる
「来てくれたのか!」
嬉しく立ち上がる妹紅に
「当たり前だろ?幻想郷が本当に危ないのに勝手する程私は馬鹿じゃない」
親指を立てた
「私だけじゃないよ?」
そのまま親指を後ろへ向ける
「妖夢!!」
ロビンの後ろで隠れていた妖夢が姿を見せるとフランが跳ね上がった
「幽々子の命により、更には義により助太刀します!」
刀を携え、凛々しく妖夢は挨拶を交わす
「私も構いませんか?明日も門番なんて言われたら辞めます!」
「貴方に有給なんて残ってないけど……良いわ、明日は特別に許可してあげる」
その後に続く二人
「美鈴!咲夜!」
「お嬢様を救うのは当然の務めよ、ねぇ美鈴?」
「勿論です!」
二人はレミリアを救う為立ち上がり、力を合わせると決めていた
「先生!私もやります!」
「レティ……貴方の力じゃ……まぁ良いでしょう」
「祭と聞いたから来てやったよ!」
「お久し振りです皆さん」
「勇儀!さとり!助かる!」
レティ、勇儀、さとりも加え
「やっぱりここだったわね」
「僕も微力ながら手伝うよ」
アリス、霖之助も加わり話は進む
「にとり、異世界に渡る術って言ってたけど……どういう事?」
皆が喜ぶ中、冷静なパチュリーが先程にとりが溢した言葉を問いただす
「あぁ……必要になるかと思って異世界に渡る魔法機械を作ってたんだよ、エスタークがあそこに居るから無意味になったみたいだけどね」
「そうね、多分あそこに紫達も囚われているでしょうし」
「まっ、それ以前に場所がわからなかったから作る意味無かった訳だけどね」
意味の無い事なんだと結論した二人に
「二人が囚われてるのはエスターク神殿……場所もわかるよ!」
また新たな声が掛かる
「正邪!?」
現れた者に驚きを隠せない皆
瀕死だった正邪がここに来たからだ
「大丈夫なのか正邪!」
心配に声を掛ける
「そりゃ完治とはいかないよ、目覚めたのもさっきだしね」
よく見ると体には傷痕がまだ残っている
「てゐから聞いたよ、明日エスタークが攻めて来るんだろ?なのにグースカ寝てる訳にはいかないよ!」
まだ万全でない体を奮い立たせ力強く微笑んでみせる
「なっ!お二人さん!」
そして後ろの二人に声を掛けた
「ええ、今こそ幻想郷は一丸となり立ち向かわなければなりません」
「例え相手がバーンさんの魔力を持っていても!ですね!」
正邪と同じく傷痕残る二人が現れた
白蓮と文
「あたしもやるよ!」
そしててゐ
「今……なんて言った?」
妹紅が聞き直す、他の者も目を見開き3人を見ていた
「バーンの……魔力?」
聞き捨てならない事が聞こえたから
「……話すよ、私が何をしていたか……私達がなんで倒されたか……」
正邪は複雑な表情で言う
「なんでエスタークがバーンの魔力を持っているのかを……」
「神奈子の持ってた遺産、黒のコアに込められていたバーンの魔力……それをエスタークが……」
正邪によって聞かされた事実に皆驚きを隠せない
それも当然
持っていないと思っていた神奈子が遺産を持っていて、それにはバーンの魔力が込められており、更にそれをエスタークが奪い己の物にした
いきなりの事にどんな反応を示して良いかわからなかった
「……それでレミィがやられたのね」
「……レミリアを拐った理由はわからないけど、もしかしたらバーンの記憶が関係しているかもしれない」
「記憶……?」
「……エスタークが言うには黒のコアに込められていた魔力にはバーンの記憶が混在してるらしい、あのパレスも多分バーンの記憶にあったんだと思う、あんなの作るなんて聞いてなかったしね」
「……バーンの記憶が混在してるならレミィを拐った理由もわかるわね……ねぇ皆?」
パチュリーは妹紅、チルノ、大妖精、フランを見る
「愛……ですね」
大妖精が答え
「その黒のコアはバーンが消える前、あの1日部屋に籠っていた日に作られた筈だ、ならその時の曖昧な想いが込められても不思議じゃないな」
妹紅が付け足した
バーンがレミリアへの愛に気付いたのは消える前日、それまではレミリアに特別な感情を抱いてはいたがそれが何かはわかっていなかったが確かに特別だった
その状態で黒のコアを作ったのならその曖昧な感情が魔力に籠ったのだと考え、それがエスタークがレミリアを狙った理由になるのだと結論付けた
バーンの強い想いに感化されてレミリアを求めたのだと
「ならレミィはパレスの方でしょうね、手厚い待遇で」
そうならばレミリアは少なくとも無事だと判断し一先ずは安心するパチュリー
「なるほどね、それであいつらも強くなったり妙な邪法を使うのか……」
にとりが感心した様に呟き正邪を見る
「それはそうと……あんたさっき場所がわかるって言ってたよね?そのエスターク神殿だっけ?」
「あ、まだ話してなかったな……わかるよ、私がそこに標を作ってきたからね」
そう返すと正邪は自分が何をしていたかを話し出す
「私はエスタークに取り入ってしようとした事が2つあった……その過程で遺産が奪われてしまったのは謝るよ、悪かった」
チルノと大妖精に頭を下げ、二人が許すと正邪は続ける
「1つは八雲紫の救出、これが本命だったんだけど八雲紫が囚われている地下牢は監視も厳しくて難しかった……」
「そこで私は2つ目を優先した、それがエスターク神殿に標を作る事、本当は保険だったんだけどね」
これが正邪の成そうとした目的
スキマを使う紫を救出する事を第一にしてもしもの時の為に攻めいれる様に標を残す事
「私が八雲紫を助けれてたら良かったんだけど……悪い」
謝る正邪、しかし誰も責めない
わかっているからだ、幻想郷の為に動いていたのを、あんな重傷を負ってまで
「……その標は私の為に作ったんだろ?」
「そうだよ、お前なら異世界に渡る機械を作れると信じてね」
「……でかした!!」
喜ぶにとりだがすぐ疑問が浮かび正邪に尋ねる
「八雲紫達がそのエスターク神殿に居る保証は?行って誰も居なかったは無駄足だからしたくないよ?」
「それは多分無いよ、八雲紫は特殊な術式を掛けられてる、動かす事が出来ない固定式の凄いのがね、スキマは遠隔で使用出来るしわざわざパレスの方に作り直して奪還される可能性を作る面倒をするよりは残してる公算の方が高いよ、それと人質の意味で神奈子達もね」
「よしよし……ロビン!私の研究室から持ってきて!」
にとりがロビンに命令するとパチュリーが口を開いた
「これで私達のする事は決まったわね」
皆がパチュリーに向く
「エスタークの退治と幻想郷の防衛、そして紫達の救出の3つね」
「結局あのパレスの魔力防壁は放置かい?」
萃香が問う
「それなのよね……良い方法無いかしら……あの壁を楽に突破出来る方法……」
防壁に悩むパチュリー
(防壁……壁……あ!!)
妹紅が思い付いて立ち上がる
「あいつが居た!」
そう言うとバルコニーへ走っていく
「よし……!」
懐から取り出した道具を口に当て、吹いた
邪仙の笛を
「はいは~い、呼んだ~?」
「久しぶりー!」
すぐ二人は来た
「力を貸してくれ!」
青娥と芳香、邪仙とキョンシーが
「ふんふん、つまり私にあのパレスを覆う防壁に穴を作って欲しいって訳なのね」
「そうだ、出来るか?」
「出来るわよぉ、あれを壁と認識した私なら可能ね」
「よし!頼む!」
「わかったわ、約束だものね」
「ありがとう青娥!」
喜ぶ妹紅に比べ青娥の顔は苦い
「ねぇ……それだけで良いの?」
「ん?何が?」
妹紅には質問の意味がわからない
「私に戦えって言わないの?」
青娥にはそれが不思議だった、自分には壁を空けるだけで良いと言う妹紅に
戦えと言われたら戦うのに言われない事が
「お前にそこまでしてもらう必要はないよ、危険だしさ、防壁をどうにかしてくれるだけで充分だ、その後は私達に任せて隠れててくれ」
「……」
青娥は言葉が出なかった
酷い事をした自分を心配してくれる優しさに
「……もぉ!」
それが逆に火を着けた
「私も戦うわよっ!除け者にしないでっ!」
彼女の心に
「……覚悟は出来てるのか?」
「勿論よ!そうよね芳香!」
「出来てるぜー!」
二人の参戦に妹紅は嬉しくパチュリーを見る
「これで大方の問題は解消された……残る問題はエスタークの言った博麗神社と慧音ね」
「言葉通りでしょうね、手っ取り早く幻想郷を滅ぼす為に博麗神社を狙い大結界を破壊する、理にかないます、上白沢さんの方はわかりませんが……」
妖夢の見識を正邪が付け足す
「あいつが慧音を狙うのは慧音が人間の里を隠すからさ、あいつは人間を酷く憎んでる、だからその人間を隠す慧音を殺して人間を皆殺しにするつもりなんだろうさ」
「……全体ではなく戦力を2ヵ所に集中して攻めてくるつもりなのね」
対応を考えるパチュリーに慧音は言った
「その事だが……私は里を隠さない」
「……何故?」
「もし私がやられたらその瞬間に里が暴かれる、そして皆殺しだ、なら集中攻撃の乱戦でやられる可能性がある私を守るよりは最初から里を守る方がこの面子では確かかと思ってな」
「一理あるわね」
そこへさとりが口を出した
「では私の結界で里を守りましょう、任せてください、私も少しは強くなりました、今なら枷があったバーンさんでも縛りきれる自信がありますので」
「……枷があった、が気になったけどよくよく考えたらそれでも充分強いわね、頼むわさとり」
慧音、つまり人間の里の問題を解消した所でチルノが呟いた
「そういえば靈夢は来てないんだ」
博麗神社の巫女が来ていない事を
「……怖くて震えてるんじゃないかい?」
勇儀が冗談気に言う
「多分な……」
妹紅は立ち上がると
「行ってくるよ、あいつも無関係じゃないしさ、こっちは任せるパチュリー」
博麗神社へ向かうと告げた
「あたしも行く!」
それにフランが付いていき
「私もここに居ても意味なさそうなんで行ってきます」
レティも付いていった
「頼むわね妹紅」
そう言って溜め息を吐くと
「どうしましょうか……」
集まった者達の扱いに頭を悩ませるのだった……
ヤバイ……多過ぎる……
人間の醜さや集う強者達を書いてやるぜ!と意気込んでみたものの……数が多過ぎる!
伏線回収も相まって長いし……なので本当は1話で終わらすつもりだった決戦前日の話は1回切ります、頭がおかしくなりそうなので……
また見直して修正したり追加もあるかもしれません、その時はすいません。
次回も頑張ります!