東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第二十四話 雄叫びをあげて

 

明朝前

 

 

人間の里

 

「いよいよだな」

 

エスタークパレスを見上げて妹紅は呟いた

 

「そうね……」

 

里を守るメンバーに加えエスタークパレス突入組の6人と穴を空ける青娥を加えた皆は妹紅と同じくパレスを見上げる

 

「開戦と同時に救出組はエスターク神殿に向かうんだったよな?」

 

「そうよ、にとりがもう準備を終わらせてくれてるわ、いつでも行ける」

 

「……昨日こっそり行くのはダメだったのか?」

 

妹紅の質問にパチュリーはやれやれと言った顔で返した

 

「もしそれでエスタークにバレたら攻撃が早まる可能性もあったのよ?そうなったら準備も出来てない私達は混乱の中戦う事になる……」

 

わかるかしら脳筋さん?と言う様にパチュリーは笑みを向ける

 

「でもエスタークが時間を守らず攻撃してくる可能性もあったろ?」

 

ムッとした妹紅が言い返す

 

「確かにその可能性はあったわ、でも無かったでしょ?正邪が言うにはエスタークは私達を自らの軍の試金石として真っ向から捩じ伏せたいらしいじゃない、ならそれは無いと踏んで私は行かせなかったのよ」

 

「……やっぱり凄いなパチュリーは」

 

考えを聞いた妹紅は素直に言った

 

「流石賢者なんて呼ばれるだけあるよ、私じゃ絶対こうはいかないからな」

 

パチュリーのその身に蓄えられた知識、経験、状況を判断する力、与えられた情報から最善手を出せる手腕

 

それは自分では決して出来ない、敵わない才能なんだと改めて思ったから妹紅は感嘆の意を言葉を出したのだ

 

「褒めてもメドローアくらいしか出ないわよ?」

 

「それはやめてくれ」

 

微笑み合った二人は紅魔館の方角へ向く

 

「開戦してエスタークがこっちに気を取られている間にあの4人を行かせる……」

 

「……大丈夫だよな?」

 

妹紅には不安があった

 

チルノと大妖精に

 

いくら自分達と同じ頂点とは言えまだまだ幼い二人、幼いから不安が出るのだ

 

「大丈夫よ」

 

そんな妹紅にパチュリーは不安を感じさせない口調で言った

 

「ちょっと貴方は過保護過ぎるのよ……あの二人は心配無い、美鈴とにとりだって居る……あまり心配し過ぎるとハゲるわよお姉さん?」

 

「でもさ……」

 

それでも心配を拭えない妹紅

 

「もう!妹紅はそれがダメなんだよー!心配し過ぎ!」

 

傍のフランがプンスカ怒るも

 

「だって……心配だろ?特に親分なんかさ……」

 

まだ食い下がらない妹紅に

 

「なんだいなんだい、お前さん勇儀に言われなかったのかい?」

 

飄々と歩いてきた萃香が二人に並ぶ

 

「今一度己の限度を知りな皇帝不死鳥、あんたの持つ翼は全てを守れる翼なのか、他を気にして充分に羽ばたける翼なのか……をね?」

 

見てられないと萃香が諭す

 

「情けないわね妹紅、そんなに心配なら貴方も行けば良いじゃない、せっかくお膳立てしてくれた作戦も捨てて……貴方達の持つ絆がそんなに安い物なら……ね」

 

次いで現れた幽香が厳しく睨む

 

「そんなに虐めてやるなってお二人さん、戦う前に泣いちゃうだろ?」

 

「そうですよ!もっとやっちゃってください!そして泣き顔を写真で取って新聞に……見出しは「皇帝不死鳥!泣かされる!」これで決まりです!」

 

正邪と文が笑いながらやってくる

 

「まぁそれでこそ妹紅と言うべきか……なぁダイ!」

 

「ピィ!」

 

慧音にそうだねと跳ねながらダイが来る

 

「皆……」

 

自分の心配は杞憂だと言う皆に妹紅の表情は変わる

 

「そうだった……私が心配しなくても皆は……幻想郷は強い!」

 

皆に見せた顔

 

「なら私のやる事は1つだ!」

 

ただ目的の為に脇目も振らず進むと決めた顔

 

「エスタークを倒す!」

 

もう妹紅に心配は無かった

 

元々優し過ぎるのが妹紅の欠点でもあった、だから他を気にする余り力を出しきれない事が過去何度かあった

 

それが友や仲間によって解消された今、妹紅は真に頂点の1人となる

 

数多迫る敵を焼き払う不尽の炎

 

皇帝の名を冠する伝説の火の鳥

 

 

皇帝不死鳥に……

 

 

「良いねぇ妹紅!流石バーンの不死鳥を名乗るだけある!それでこそ皇帝不死鳥だよ!」

 

その妹紅に皆の士気は高まる

 

(そうよ妹紅……貴方の優しさに皆が着いてくるのよ、優しくて強い貴方だから皆は貴方に貰うの……)

 

パチュリーは眺めながら思う

 

(勇気を……)

 

自分では決して出来ない事なんだと知るパチュリーはそれを羨ましくも思いながら微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐだ……!」

 

日の光がうっすらと見え始めたのを見て皆は体に力を入れる

 

「おーい!みんなー!」

 

そこへ掛け声が遠くから聞こえてくる

 

「あれは……チルノと大妖精?」

 

遠目に見える容姿、来たのはチルノと大妖精

 

「間に合った!あたい参上!」

 

「間に合ってよかったぁ……」

 

皆の前に降り立った二人は急いだらしく少し息が荒い

 

「何しに来た!お前達は紅魔館で待機だっただろ!」

 

勝手に持ち場を離れる二人に妹紅が怒る、それに皆はお前が言うか?と思ったが誰も言わない

 

「すぐ戻るわよ!ちょっとだけ手伝いに来ただけよ!怒るより泣いて喜べ子分のくせに!」

 

ギャーギャー言い合う二人を他所にパチュリーが大妖精に理由を聞いていた

 

「チルノちゃんと話し合ったんです、正邪さんが言うにはエスタークは万を越える数の敵を持ってるんですよね?だから私とチルノちゃんで最初だけ手伝おうって決めて来たんです」

 

「なるほどね……それはわかったけど……」

 

理由を聞いてパチュリーは少し考える

 

加勢は嬉しいがあまり勝手な事をされるのも困るからだ、これがどう影響するかを少ない時間で考えなければならないから

 

「それに私とチルノちゃんが最初だけでも手伝えばエスタークに私とチルノちゃんは幻想郷に居るぞ!って思わせれるかもしれません、そうなったら救出も上手くいきやすいかもしれないと思ったんですけど……」

 

難しい顔をしているパチュリーに言い訳する様に上目遣いで語る大妖精

 

「そうね……」

 

大妖精の意見を聞いたパチュリーは可能性を考えていた

 

確かにチルノと大妖精が最初に居なければすぐにエスタークは気付くだろう、頂点の二人なのだから

 

だが仮に最初に居て存在を印象付けても居なくなればすぐに気付く、特にチルノの様に目立つ圧倒的な力なら尚更に

 

それにエスターク神殿への侵入が気付かれない保証も無い、神殿に侵入者を知らせる術や機構が無いとは言い切れないから

 

ならばどちらが良いかを考えていたのだ

 

「……わかった、良いわ」

 

パチュリーは二人の参加を了承した

 

どちらにしろ神殿次第になるのだから存在の印象に余り意味は無いと考えたのだ

 

意味が余り無いならすぐに救出に向かわすよりは1体でも多く敵を倒してくれる方が守護する者達の負担を減らせる事に繋がる、つまり被害が減らせると考えた

 

人間の里から紅魔館までの移動時間のリスクを考えても余りあるリターンをもたらすと考えたから了承した

 

それに……

 

「助かるわ二人共……ありがと」

 

二人の頭を撫でる

 

「えへへ……」

 

「へっへーん!」

 

助けになれた事を喜ぶ二人

 

「ふふっ……」

 

二人が皆の為、幻想郷の為に一生懸命になってくれているのが嬉しくて堪らなかったから

 

 

「決まったね!じゃあお前らには狼煙を上げて貰うとしようか!」

 

見ていた萃香が気を良くして提案を出した

 

「狼煙?」

 

首を傾げる5人に萃香は続ける

 

「開戦の狼煙さ!派手にかましてやりな!幻想郷に頂点有り!ってね!」

 

意図を理解した5人はわかったと頷き並ぶ

 

「なぁパチュリー?ちょっと良いか?」

 

「なに?」

 

思い付いた妹紅がパチュリーに小声で相談する

 

「……良いわよ、それなら魔力を使う価値は大いにあるわ」

 

パチュリーの承諾を得ると妹紅は萃香の前に出た

 

「なぁ萃香……鼓舞激励を頼んでも良いか?」

 

「あん?鼓舞激励?なんで私が?」

 

いきなりの頼みに訳を尋ねる萃香

 

「いやな……お前のその豪快な啖呵で1つになった幻想郷に激を入れて欲しいんだ……頼むよ」

 

訳を聞いた萃香は一瞬呆けた後

 

 

「よっしゃあ!任せときなぁ!!」

 

 

素晴らしい笑顔で承諾した

 

そしてそれと同時

 

 

『覚悟は出来ましたか?愚かな幻想郷の民よ……』

 

 

パレスからエスタークの声が響いた

 

「来たわね……萃香!私の魔力に乗せて貴方の言葉を幻想郷に届けるわ!」

 

「あいよ!」

 

 

『最早何も語る事はありません、消えなさい幻想郷……歴史から何もかも……』

 

 

スキマが大量に開かれ中から100以上の数の球が投下される

 

『……デルパ』

 

エスタークが号令を唱えると球は全て開閉し中から魔物が飛び出した

 

1個につき20から30体、一気に幻想郷の空を魔物で覆い尽くし尚もスキマとパレスから魔物が溢れてくる

 

 

『死ね……幻想郷!!』

 

 

エスタークの宣告と同時に攻撃は始まった

 

 

「こっちは準備出来てる!萃香……やってくれ!」

 

妹紅が叫ぶと萃香は息を大きく吸って言葉を魔力に乗せた

 

 

 

「これより我ら修羅に入る!!仏と会えば仏を撃ち!!鬼と会えば鬼を斬る!!情を捨てな!!ただ一心に目前の敵を討て!!」

 

 

強く、大きく!

 

 

「愛する幻想郷を守る為に!!」

 

 

意思を乗せ!

 

 

「気合い入れなお前らァッ!!」

 

 

雄々しく!

 

 

オオォォォォォーーーーー!!

 

 

言葉が魔力に乗せられ幻想郷に轟き、幻想郷は一丸となる

 

 

雄叫びをあげて!!

 

 

「よぉし……やるか!」

 

「ええ……やってやりましょう」

 

「よーし!いっくよー!」

 

「いくよ!チルノちゃん!」

 

「まっかせときなさい!!」

 

 

萃香の激に呼応して5人は高めていた力を降り注ぐ魔物達に向けて撃った

 

 

「蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」!!」

 

「雷符「ジゴスパーク」!!」

 

「禁忌「クランベリートラップ」!!」

 

「疾風「妖精少女」!!」

 

「凍符「エターナルフォースブリザード」!!」

 

 

頂点5人の力の弾幕が大量の魔物達へ炸裂する

 

「おお~!良い狼煙だ!ヤル気にさせてくれるねぇ!」

 

余りの数に魔物の壁とも言える大群

 

それに大きな空間を作り、空がハッキリと視認出来る程の威力に萃香を始め人間の里を守護する面子、博麗神社を守護する面子、幽々子率いる妖怪達は萃香の鼓舞激励も相まり士気は最高潮になっていた

 

 

「私は600ってとこかな?」

 

「私も600……同じくらいね」

 

「あたしは400ぐらい!あたしは弾幕より体だもん!」

 

「私は700くらいだと思います」

 

「みんなまだまだね!あたい1000以上よ!」

 

 

5人は倒した数を一言ずつ言うと

 

「じゃあ……行ってくる!」

 

妹紅とパチュリーとフランが空いた空間に見えるパレスに向かい青娥とレティ、そしてダイを連れた慧音がそれに合わせ着いていく

 

「負けたら承知しないわよ!」

 

チルノと大妖精は紅魔館へ急ぎ戻っていった

 

 

 

「では結界を張ります、よろしくお願いしますね」

 

9人を見送ったさとりが結界を張り二人を見る

 

「さてさてさぁて……これからが本番さね」

 

「そうね、これからが本番ね……」

 

並び合う萃香と幽香は空に空いた空間が新たに現れる魔物に狭められ、2方向へ向かうのを見て呟き合う

 

「死にたい奴からかかってきな!」

 

「全部駆逐してあげる……!」

 

やってくる片方の魔物の群を里を守る者達は迎え撃つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「来ます!行きますよ皆さん!」

 

先陣に立つ妖夢が刀を抜き、鋭く構える

 

「行くよ野郎ども!」

 

雄々しく構える勇儀

 

「野郎って……まぁ良いわ、全部冥土へ送ってあげる」

 

バーンのナイフを片手に持ち、もう片手に数本のナイフを握り瀟洒に構える咲夜

 

「博麗神社を第一に連携を密に!行きますよ!」

 

白蓮と共に命蓮寺のメンバーも構える

 

「靈夢!僕達は神社の聖気を高めて作った破邪の結界の維持だ!魔物を弾き、入れた強い魔物は弱らせる事が出来る大事な役目だ!やれるね?」

 

「は、はいっ!」

 

神器である草薙の剣を媒介に霖之助が聖気を高め、靈夢が結界に形を作り待ち構える

 

「入ってきた敵の掃除は任せなよ!」

 

二人を守る様にてゐが身構える

 

「……今がバーンとの約束を果たす時ね」

 

これがその時だと認識したアリスは本気を出す事を誓い、糸を人形に付け、構える

 

 

「ハアアッ!!」

 

 

妖夢の突撃に呼応し飛び出す強者達と妖怪達

 

 

博麗神社の攻防が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里と博麗神社の中間地点

 

「……」

 

幽々子は2ヶ所に向かう魔物達を見ている

 

だが動こうとはしない

 

「早く行きましょう!」

 

もう攻撃は始まっているのに動こうとしない幽々子に妖怪ハンターの一人が急かす

 

「まぁ待ちなさい、あの鼓舞激励に任せて行きたいのはわかるけどパチュリーが居ない今……誰かは冷静に状況を判断しないといけないの」

 

無闇に行くべきではないとハンターに諭す

 

この様な大きな戦いでは誰かは冷静に状況を見なければならない、状況を把握出来ずにただ戦うだけでは変化する状況に対応出来ず窮地に陥る事は珍しくない

 

だからパチュリーはそれが出来る幽々子にハンターや妖怪達の指揮を任せた

 

戦場の熱気にあてられないマイペースかつ自身も力を持ち、尚且つ状況を見て指示を出せる幽々子に

 

「……!」

 

魔物を見続ける幽々子は気付き、皆に指示を飛ばす

 

「各ハンターと妖怪の半数は幻想郷に散って魔物の撃退に行って!」

 

指示を飛ばされたハンターと妖怪達はすぐに従い幻想郷に散った

 

「睨んだ通りでしたね」

 

傍に来た椛が幽々子に話し掛ける

 

「そうね、予想通りだったわぁ」

 

魔物の群を見ながら予想が的中した幽々子は微笑む

 

空には人間の里に向かう魔物、博麗神社へ向かう魔物の2つの群れの道が出来ていた

 

幽々子が見つけたのはその道からはぐれて他の場所に向かう魔物達

 

「あれだけ居るんですもの、統率が取りきれてないなんて充分あり得るわよねぇ」

 

はぐれた魔物達は2ヶ所に向かわず幻想郷に散った、つまり好きに暴れるのだと考え、それは多過ぎる為に起きる事だと考え、予想していた

 

(あれがエスタークの指示なのかもしれないけどねぇ……)

 

無論そこも考えていた

 

人間の里と博麗神社を攻めると言いながら幻想郷に魔物をバラ撒く可能性を

 

(……まぁあの数のバラつきを見る限り指示ではなさそうね……単純に統率不足と知能が拙い魔物が居るんでしょう)

 

はぐれる魔物の不規則さ、数の少なさからそれは無いと確信する、もし本気で全体を攻めるなら最初から攻めれば良いのだから、2ヶ所で待ち構える者を笑いながら

 

(でも……だからこそエスタークが本気なんだという事になる)

 

それをしないのならエスタークは本気で人間を皆殺しにし、博麗大結界を破壊しようとしている事に他ならない

 

(気を引き締めないとね……)

 

エスタークの本気に決して簡単にはいかないと感じ気の緩みを許さない

 

「椛、伝令の天狗達に今一度伝えてちょうだい……戦況からどんな些細な事でも伝えるようにと、そして白狼天狗も鴉天狗も連携を取り合って私の指示が確実に伝わる様にしてと」

 

「わかりました!」

 

椛はすぐさま飛び立って行き、幽々子は一刻と変化する戦況に神経を集中させる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス

 

「やはり……手強い」

 

映像を見ながらエスタークが呟く

 

(まぁわかってはいましたよ、強い事など……私が一番身に染みて知っています)

 

焦りも驚きも全く無い

 

この程度強い事などわかりきっていたからだ

 

幾度も邪魔され、死にかけたのだから

 

「エスターク様……参ります」

 

共に見ている配下達からミストが進言し向かおうとする

 

「……待ちなさいミスト」

 

出ていこうとしたミストを止める

 

「もう少し待ちなさい、まだ幻想郷からは何の動きも無い……あの幻想郷の者達がただ受けるだけとは考えられません」

 

何かをしてくる筈だと考えるエスタークは配下を抑え映像を見続ける

 

「!!……やはり来ましたか」

 

幾つかある映像の1つに映った者達、特に一人の者を睨みつける

 

「藤原……妹紅……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス前

 

「着いた……青娥!」

 

パレスを覆う防壁の前に来た6人

 

「はいはいこれね」

 

青娥が防壁に指を当て縦になぞる

 

「出来そうか?」

 

「えっ?」

 

妹紅の問いに青娥が聞き返した瞬間

 

スゥー……

 

防壁が割れ穴が空いた

 

「早いな!?」

 

あまりの早さに驚く妹紅

 

「そりゃそうよ~壁と認識した私に空けられない、抜けられない壁は無いわよぉ、私の能力に壁の強さは関係ないの、柔らかい壁じゃないかぎり何でも大丈夫なの!」

 

青娥が指を見せるとかんざしの先があった、最初からかんざしを握って指を当てた時点で既に能力を使っていたのだ

 

「早く行かないと閉じちゃうわよ?」

 

チョイチョイと指を差して突入を促す、それと同時に後方から声が聞こえる

 

「せーがーー!!」

 

芳香が魔物を突っ切って現れた

 

「里は私達に任せて……頼んだわね」

 

横に並んだ芳香と共に笑顔で青娥は見送る

 

「ありがとう青娥!行ってくる!」

 

ヒラヒラと手を振る青娥に力強く頷いた妹紅を筆頭にパレスへ突入する6人

 

「……」

 

6人がパレスに突入し見えなくなった後、穴を閉じ青娥は数秒固まっていた

 

「ごめんね芳香……付き合わせちゃって……」

 

一言、顔を下げ謝る

 

「せーがは大丈夫!私が守ーる!」

 

状況が読めないからか能天気さか……芳香の笑顔が青娥を救い、微笑ませる

 

「こうなる事はわかってたのにねぇ……」

 

振り向いた青娥は苦笑した

 

妹紅達が空けたパレスへの道はもう塞がっていた

 

そして迫り来る魔物の大群

 

死力を振り絞っても勝ちの目すら見え無い数

 

(なんで一緒に行かなかったのかしら私は……)

 

自分の行動が疑問で考えた

 

一緒に行けば良かった、そうすれば少なくとも今よりは安全

 

こうなる事がわかっていればそうすれば良かったのだ、人間の里に戻るなど……こんな予想しきれていた事も考慮に入れていないふざけた作戦など気にせずに……

 

でも青娥はしなかった

 

妹紅の優しさに触れたから?パチュリーのミスを本当にしたかったから?パレスに着いていけば妹紅達の負担になるから?

 

……わからない

 

いくら考えても答えは出ない

 

ただ言えるのは……

 

 

(貴方の助けになりたかった……それだけは嘘じゃない……)

 

 

最後に微笑むと青娥と芳香は魔物の大群に飲み込まれていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス

 

「来ましたね……」

 

楽しげに笑うとエスタークは指示を飛ばす

 

「二陣を幻想郷に放ちなさい、そして一時間後に魔界の魔物を全て放ちなさい、一部は侵入者に向かわせて……」

 

指示を飛ばし終えたエスタークにバルバトスが尋ねた

 

「さっき放ったのは雑魚ばかり、二陣は多少マシな雑魚……何故一気に強い魔物で潰さない?その方が早いだろう?」

 

「それはバルバトス……苦しませる為です、途方も無い数の魔物が徐々に強くなっていく……体力的にも精神的に弱らせるのですよ」  

 

「……陰険な奴だ」

 

「ありがとうございます……」

 

笑みを絶やさず立ち上がったエスタークは名を呼ぶ

 

「ウォルター、フレイザード……」

 

二人を呼ぶとスキマを開きながら告げる

 

「ただのもてなしという訳にはいきません……私の誇る大魔宮への初めての来客……丁重にもてなしてください……」

 

それだけ言うとスキマを閉じてどこかへ向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・外周

 

「邪魔だ!」

 

襲ってくる魔物を焼き払いながら外周で全形を見定める

 

「あの中央が居城でしょうね」

 

中央に位置する一際目立つ建物がエスタークの居城であると予想する

 

「だろうな……よし!行くぞ!」

 

居城へ向かおうとした妹紅をレティが止めた

 

「アレ……なんですか?」

 

レティが指したのは外周部分に書かれた不思議な模様

 

「……気になります」

 

惹き付けられる様に紋様に近付いていく

 

「!?」

 

パチュリーは紋様を見てすぐにわかった、アレがなんであるか

 

(アレは罠!惹術を掛けて誘い込んだ所を!?)

 

 

「やめなさい!!」

 

 

止まる様に促すも

 

「なんでですか~?」

 

レティは止まらない

 

「レティ!!」

 

叫ぶパチュリー

 

「!!」

 

瞬間フランが飛び出した、レティを止める為に

 

(間に合わない……!!)

 

フランの手は触れる事なくレティは紋様に降り立った

 

 

キンッ

 

 

紋様に触れた瞬間、作動した罠から光が放たれる

 

 

バシュ……

 

 

レティは消えた、傍に居たフランと共に

 

 

「フラン!レティ!」

 

 

慌てて妹紅が紋様に向かうも発動し終えた罠は何も起こさず沈黙していた

 

「パチュリー!」

 

振り向いた妹紅が叫ぶ、二人に何が起きたかを知る為に

 

「……あの光は転移の罠よ、バシルーラの応用で罠に掛かった者を強制転移させる罠……私達を拒む防壁に阻まれた様子は無いから多分パレス内のどこかに……」

 

「クソッ!……どうするパチュリー!?」

 

指示をあおぐ妹紅にパチュリーは即答した

 

「行って……」

 

居城へ向かえと

 

「二人を見殺しにしろって言うのか!?」

 

二人を助けないのかと怒る妹紅にパチュリーは冷静に返した

 

「フランは大丈夫よ……問題はレティ……」

 

力量的に心配ないフランなら何があろうと自力で突破出来る、そう信頼し考えたパチュリーは残るレティが問題だと言う

 

「……私が行くわ」

 

レティを連れて来るのを許可したのは自分、ならその責任は自分が取るべきだと言ったのだ

 

「……ッ!?」

 

妹紅は一瞬身を強張らせる

 

自分も助けに行きたい!

 

だが誓った、エスタークを倒すと

 

目的の為に脇目も振らずに行くと決めていたから一瞬出かけた私も行く!の言葉を飲み込んだのだ

 

しかし理由はそれだけではない

 

「……わかった!頼む!」

 

了承した妹紅はパレスへ向かい飛んでいく

 

「……」

 

妹紅を見送ったパチュリーは無言で捜索を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのか妹紅?」

 

慧音が問う

 

「……良いに決まってる」

 

苦い顔の妹紅は返した

 

「パチュリーが行くなら大丈夫だ……」

 

苦いのはパチュリーが心配だからではない

 

「久し振りに見た……」

 

呟いた妹紅の言葉に慧音が首を傾げる

 

「あんなに怒ったパチュリーを見るの……」

 

妹紅が言葉を飲み込んだ一番の理由はパチュリーの怒り

 

 

私の弟子に手を出したらタダでは済まさない……

 

 

そんな静かに燃える怒りの業火をパチュリーの表情に見たから

 

妹紅すら怯む怒りに手出しは無用と思ったから任せて行ったのだ

 

「……気を抜くなよ慧音!」

 

3人はエスタークの待つ居城へ突入して行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿・地下牢

 

ブゥン……

 

「体調はよろしいですか八雲紫?」

 

紫の囚われる牢にエスタークは来た

 

「……お陰様でね」

 

負荷が消えた事で多少回復していた紫は睨みつつ皮肉る

 

「私のスキマで何をしているの……?」

 

痛みは無いが感覚で強制使用されているのがわかる紫は問う

 

「それを伝えに参りました……」

 

エスタークは笑みをより一層強くさせ紫の耳元に近付く

 

「今……幻想郷を滅ぼしています」

 

「!?」

 

告げられた紫は驚きの余り目を見開きエスタークを見る

 

「ハハハ!良い顔です!ククク……」

 

紫の驚く顔に満足したエスタークはまたスキマを広げ去っていく

 

(今のは嘘……?いや……バーンの魔力を得たのならまさかも……)

 

去った後も紫は考え苦悩する

 

エスタークの嘘の様な本当に

 

それを笑いに来ただけとも知らず……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えなさい奴隷……奴隷の八坂神奈子よ……」

 

次に来たのは神奈子の牢

 

「何を企んでいるのですか?」

 

「!?」

 

問いに神奈子は反応してしまった、バレたのだと

 

「この身に宿す魔力が教えてくれました……貴方達神とあの娘が力を溜めている事を……」

 

「……」

 

押し黙る神奈子、賭けは失敗だと悟った

 

殺されるから

 

「……フフフ」

 

答えない神奈子を見てエスタークは魔力を牢に放つ

 

「完全に遮断しました、もう貴方は密談も出来ない……そこで幻想郷が滅ぶまで絶望に苦しみなさい」

 

スキマを広げ残る二人の牢へ向かっていった

 

(……まだ……!死んでいないのならまだ……!)

 

殺されなかった事がまだ希望があると考え神奈子は絶望せずに耐える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・レミリアの部屋

 

(さっきから外が騒がしい……何か起きてるの?)

 

窓の無い部屋でレミリアは先程から聞こえる音に耳を澄ませていた

 

「それは幻想郷の滅ぶ音ですレミリア」

 

背後から現れたエスタークが耳打ちする

 

「ッ!?離れなさい!」

 

エスタークを押し飛ばそうとするも力が封じられている為逆に押した反動で自分が下がる

 

「今日、幻想郷は滅びます……貴方の友人もろとも」

 

「……攻撃してるのね?」

 

物言いに外の音は戦闘の音だと知ったレミリアはエスタークを睨む

 

「……フッ……アハハ!」

 

レミリアは急に笑い出す

 

「そんなにおかしいですか?幻想郷が滅ぶのが?」

 

笑う理由がわからないエスタークは不思議にレミリアを見ている

 

「随分と余裕じゃない……そんなに悠長に構えてて良いのかしら?」

 

「……どういう意味ですか?」

 

「戻ればわかる……早く戻るのを勧めるわ」

 

「……」

 

自信ある目にエスタークは無言でスキマを開き部屋から去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦況はどうなっていますか?」

 

戻ってきたエスタークがミストに問う

 

「エスターク様!いったいどこへ行っておられたのですか!」

 

「……戦況はどうなっていますか?」

 

ミストの様子に異常が起きたのだと察する

 

「現在…一陣はほぼ壊滅状態、二陣が既に4割やられています」 

 

「……!」

 

「更にこれを!」

 

驚くエスタークに映像を見せる

 

「藤原妹紅が一階に進入……そして神殿に……」

 

「……神殿?」

 

出る筈の無い単語に疑問を浮かべるエスタークに映像は映された

 

「これは……どうやって……」

 

映る者を信じられない目で見ていた

 

「侵入者……賊は4名……どうされますか?」

 

ミストの問いにエスタークは黙った

 

(あの僅かの間にここまで……)

 

時間にして20分にも満たない間にここまでの被害が出た事が驚きであり、更には神殿に侵入者

 

(八雲紫と奴隷達の奪還に来たのですね……正邪の仕業ですか)

 

神殿への侵入の手引きは正邪にあったと考えた後、すぐにエスタークは指示を出した

 

「全ての戦力を解き放ちなさい、神殿にも……そして……」

 

背後に並ぶ者達に告げた

 

「出番ですよ皆さん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ戦いは始まったばかり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




開戦!

遂に始まりました決戦!そしていきなり被害者も出ました……

私の小説のネタを使ってくれた小説を見てテンション上がって書きまくってやるぜ!って気合い入れるも怪我が治って仕事に復帰になったんで次回から週1くらいに戻ります。

不意に絵を書いてくれたら凄く嬉しいな~とか思って最近書いてます。

次回も頑張ります!
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