東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第二十五話 立ちはだかる難敵

地獄

 

話し声が聞こえる

 

「……早くしないと間に合わない……まだですか?」

 

「もう少しです……これが終われば後は貴方の持つそれを使うだけ……もう少し辛抱してください」

 

「……怒らないかしら?こんな事をして……」

 

「……責めは覚悟の上です、責任は全て私が取る……例えこの身を八つ裂きにされようとも本望です」

 

「……わかりました」

 

何かを囲みながら話される会話

 

遥か遠い外の猛りの中、静かに……確実に事は成されていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・左翼内

 

(ここからレティの魔力を感じた……)

 

罠を注意しながら進むパチュリー

 

内部には罠が幾つもあった

 

普通に飛べる幻想郷の者に合わせ罠は主に宙に浮いて設置されている、物理的な罠から魔術系統の罠を多種多様に

 

しかしパチュリーには全て見抜かれ回避または破壊されていた

 

だが時間が掛かる為に罠が比較的少ない床に降り立ち先程感じたレティの魔力の方へ歩いていく

 

 

……ャアアッ!?

 

 

高い声が聞こえた、すぐ近くの様だ

 

「……レティ?」

 

聞こえた方へ向かい扉を開ける

 

 

「ヒャーハッハッハァ!!」

 

 

開けた瞬間、耳に入ったのは下卑た笑い声と

 

「アゥゥ……」

 

燃え盛る左手で顔を掴まれ持ち上げられるレティの姿

 

「おっ?来たのはパチュリー・ノーレッジか!」

 

パチェリーが来たのを知ったフレイザードは体を向ける

 

「……レティを放しなさい」

 

睨みつけるパチュリー

 

「……いいぜ!放してやるよ!……その前に!」

 

フレイザードは左腕に力を込める

 

 

ジュウウウウ……

 

 

「きゃあああああっ……!?」

 

炎が更に燃え盛り、レティの顔を焼いた

 

「ヒャハハ!!そらよ!!」

 

レティをパチュリーに投げつける

 

「……ッ!?」

 

受け止めたパチュリーは抱き抱えたまま腰を落とし、痛がるレティを見てフレイザードへ向く

 

「……女の子よ?」

 

強く睨みつける

 

「女の子だぁ?」

 

笑みを浮かべていたフレイザードの顔が変わる

 

「笑わせるなッ!!」

 

床を踏み砕き叫ぶ

 

「ここは戦場だ!殺し合いをするところだぜ!男も女も関係ねぇ!強い奴が生きて弱い奴が死ぬんだよ!!」

 

パチュリーに指を差し

 

「そうだろうが!温い事言ってんじゃねぇよ魔女の二天さんよぉ!!」

 

違うのかと問う

 

戦いに性別は関係無い、女だからと手加減などしてたら戦いにならない、この場に居る以上、女だろうと何をされても仕方ないのだとフレイザードは言う

 

例え大事な女の顔を焼かれようとも……

 

「……」

 

返さないパチュリーはレティに応急と更にもう1つの魔法を掛ける

 

「うぅ……ごめんなさい先生……」

 

「もう大丈夫よレティ……後は私に任せて休んでなさい」

 

謝るレティに魔力の結界を施す

 

「久し振りに講義してあげる、よく見ときなさい……」

 

寝かせたレティに微笑んで見せたパチュリーは立ち上がる

 

「あいつが死体になる前に……ね」

 

怒りの魔力をたぎらせて睨みつけた

 

先のフレイザードの問いパチュリーは雄弁に答えた

 

なら弱いお前が死ぬ事になる……と

 

「……ヒャハッ!」

 

頂点の魔力に一瞬フレイザードは顔をしかめるが笑った

 

「死ぬのはてめぇだパチュリー・ノーレッジ!!」

 

左手を前に突き出す

 

「メ・ラ・ゾー・マ……!!」

 

指先に炎が1つずつ点る

 

「フィンガー・フレア・ボムズ!!」

 

最後に親指に点った炎と共に5つの火球がパチュリーに撃たれた

 

「……」

 

迫る火球にパチュリーはゆっくりと片手をかざす

 

「火符「五指爆炎弾」」

 

放たれた5つの火球がフレイザードの火球を相殺した

 

「パクってんじゃねぇ!」

 

「……パクってるのは貴方でしょ?」

 

フレイザードに返したパチュリーは更にもう片手をかざす

 

「劣化して……ね」

 

炎が両の指先に点る

 

「炎符「十指爆炎弾」!!」

 

10の火球が放たれた

 

「うおおおおっ!?」

 

驚いたフレイザードは対処出来ずに炎に焼かれる

 

「……うおらぁ!!」

 

左側の炎を激しく燃え上がらせ1回転し炎を吹き飛ばす

 

「……チィ!」

 

パチュリーの「パクってるのは貴方だったでしょ?」と言いたげな微笑みにフレイザードは舌打ちする

 

(ケッ!化物が……!だが俺も運が良い!当たったのがパチュリー・ノーレッジなら俺にも勝機は……ある!)

 

内心笑うと胸に付けられている球体をそっと撫でた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・主城

 

「上がる階段はどこだ?」

 

1階を進む妹紅達は階段を探し急ぐ

 

「妹紅!アレだ!」

 

慧音が見つけすぐに向かう3人

 

「……!!待て慧音!!」

 

階段を目の前に妹紅が足を止める

 

「どうし……!?」

 

慧音も感じた

 

「気を付けろ……ヤバイのがこの上に居る……」

 

妹紅達が感じたのは魔力

 

高めていないのに2階からここまで届く邪悪な魔力だった

 

エスタークとは違う、明らかに強い力だと

 

「……行くぞ!」

 

意を決して上がっていく

 

後退は無い妹紅はただ覚悟だけ決めて向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・尾翼内

 

「ここどこー?」

 

内部を飛び回り出口を探すフラン

 

「とりあえず外に出ないと……」

 

ここが主城かもわからないフランはとにかく場所の確認の為に外を目指す

 

 

ヒュン……ヒュン!!

 

 

 

「わっ!?」

 

突如フランを鋼線が襲った

 

「イッター……」

 

避けたがバランスを崩したフランは尻餅を付く

 

 

……コツッ……コツッ……

 

 

足音が聞こえたフランは顔を向ける

 

「……誰?」

 

「逃がしませんよフランドール・スカーレット……」

 

柱の陰から姿を現したのはウォルター

 

「……お兄さんってエスタークに何かされたの?」

 

問うフラン

 

「エスターク様に何かを?……捕らえられ、洗脳させられて……哀れにも無理矢理に戦わせられているのですよ……とでも私が答えれば満足かねフランドール?私はエスターク様に命を受けたが私は私の意思で相手にお前を選び、ここに立っている」

 

「……そっか、よっぽど吸血鬼が嫌いなんだねお兄さん」

 

「……私は私として立っている……ウォルター・C・ドルネーズとして、ここに立っている……私は私の殺意を以って、この夜明けに貴方を切断しようと思う……」

 

そして鋼線を構えたウォルターは叫んだ

 

「立てい!立って戦え!!吸血鬼!フランドール!!」

 

戦えと

 

「……うん、わかった」

 

跳ね上がり、立ったフランはウォルターと対峙する

 

「いいよ!」

 

「……!!」

 

ズバアッ!

 

了承と同時にフランの体を鋼線が裂いた

 

「うりゃあー!」

 

「!?」

 

体に鋼線を巻き付けたまま飛び出して来たフランをウォルターは避ける

 

「……フッ!」

 

腕を引き鋼線を引っ張る

 

「イテテテテ……このっ!」

 

身に鋼線が食い込みながら弾幕を放つ

 

スパッ……

 

フランに巻き付けていた鋼線を戻し弾幕を切り捨てる

 

「……お姉様とやった時より強いね!」

 

「……お前も肉体に関しては姉より強い様だ」

 

互いに実力を確認し構える

 

「不死身の吸血鬼など存在しない!!その言葉の通りだ!くたばるまで殺してやる!!」

 

頂点の吸血鬼と憎悪の死神の戦いは激化する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、これは面白い」

 

映像を見るエスターク

 

「まさかここまで上手く対峙するとは思いませんでした……」

 

ワインを飲みながら映像を見続ける

 

(パチュリー・ノーレッジにフレイザード、フランドール・スカーレットにはウォルター……フレイザードは偶然にしてもフランドールはウォルターの殺意が呼び寄せたのでしょうね……)

 

「神殿へは二人と頂点の為に集めた……」

 

ワインを回しながら呟かれる

 

「もし敗れてもあそこには……」

 

切り札の存在

 

(あれは今回出すつもりはなかったのですがね……まだ完全な洗脳は出来ていませんし……まぁいいでしょう、それで幻想郷が滅ぶのもまた面白い趣向です……)

 

考えると楽しみが止まらない

 

(その前に粗方は終わるでしょうがね……神社も里も……)

 

 

「……では見せて貰いましょうか藤原妹紅」

 

映像へ目を向けたエスタークは妖しく笑う

 

「魔王の骸に勝てるかどうかを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・主城、2階

 

その部屋に入った妹紅は気を張り巡らせていた

 

(この魔力は……)

 

暗い部屋に充満する邪悪な魔力に危険を感じて

 

(強さの底はわからないけど質が……この邪悪さはムンドゥス?いやむしろバーンに近い……魔族なのか?)

 

慧音を庇う様にゆっくりと進む

 

「何者だ……」

 

声が聞こえ妹紅が見ると暗い空間にうっすらと見えた

 

ドンッ

 

動いた大きな足

 

「……!!」

 

目線を上に上げていき全体を視認した妹紅達は目を見開いた

 

「エスタークでもその配下でもない……この地の者か」

 

巨大な姿を見たから

 

「……お前もエスタークの仲間か」

 

衣服を纏うその巨大な者に妹紅が問い掛けると

 

「仲間……だと?」

 

巨人から嫌悪が感じられた

 

「ふざけた事を抜かすな人の娘よ……」

 

巨人は妹紅に続ける

 

「あのような若造に忠誠を誓う筈がなかろう……」

 

その言葉からは誇り高さが感じられた

 

「この魔王バラモスが絶対の忠誠を誓ったのはただ一人よ……」

 

宣言された自らの名

 

「魔王……バラモス!?」

 

聞かされた異名と名に妹紅は驚いた

 

(魔王って……エスタークはなんて奴を……)

 

エスタークが魔王と呼ばれる者を仲間にしているのが驚愕だった

 

(でもこのバラモスって奴はエスタークに忠誠を誓ってないのか?)

 

だが先程の言動にバラモスとエスタークの関係を考えていた

 

「……人の娘よ、いや……朽ちぬ魂を持つ不死人よ」

 

そこへバラモスは言った

 

「この先へ進みたいか?」

 

先へ進む事を示唆する言葉を

 

「……」

 

妹紅は答えない、何か意図があるのだと警戒しているからだ

 

「行くがいい不死人よ……行ってエスタークを殺すがいい」

 

バラモスは道をあけた

 

「……フッ……」

 

殺意も騙す気配すら微塵も感じない事が不思議で見てくる妹紅にバラモスは答えた

 

「言った筈だぞ不死人よ……我が主は帝王ではない、力を貸す気は毛頭無い」

 

バラモスはエスタークに何かをしてやるつもりは一切無かった、無理矢理甦らされた上に言う事を聞けなど魔王であるバラモスには耐え難い屈辱

 

誇りが許さなかったのだ、主以外に仕えるのが

 

誇る主を裏切る事が!

 

「……わかった」

 

嘘偽り無いと知った妹紅達は進もうとする

 

 

『困りますねバラモス……』

 

 

突如エスタークの声が響くとバラモスを黒い力が覆う

 

「ぬぅぅ!?この力……我を縛り操るかエスターク!」

 

力がバラモスの体に入っていく

 

『さぁその力で藤原妹紅を倒しなさい』

 

声が途絶えるとバラモスの目の色が変わった

 

「カゴォォォォォ!!」

 

操られた目に

 

「慧音!下がってろ!!」

 

戦いが不可避だと知った妹紅は慧音を下がらせ構える

 

「バラモス……悪い!行くぞ!」

 

魔王との戦いが開始された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿

 

「止ま……グアッ!?」

 

侵入を阻もうとする魔物は倒される

 

「順調ですね……」

 

駆ける美鈴

 

「今のところはね、でも今だけかもしれないのはわかってるよね?」

 

ロビンに乗るにとり

 

「勿論です!」

 

飛ぶ大妖精

 

「地下だったよね?早く行くわよ!」

 

急かすチルノ

 

「正邪さんがくれた見取り図によるとこの先の部屋から地下牢に行ける筈です!」

 

部屋に入った4人はすぐに地下に繋がる道を探す

 

「ありました!あそ……!?」

 

美鈴は見つけたと同時に気配を感じ振り向く

 

「ヌン!!」

 

「河童ァ!!」

 

飛び出して来た二人の影が美鈴とにとりに向かう

 

「お前は!?」

 

「クソガキ!?」

 

奇襲に対応が遅れた二人は豪鬼とカメハ率いる魔物に掴まれる

 

バシュ……

 

光に包まれた二人は豪鬼とカメハと共に消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿・上階、王の間

 

「……」

 

ロビンと共に飛ばされたにとりはまず周囲を確認した

 

(ここは神殿の上階?少なくとも地下ではないね)

 

目的の場所から離されたと知ったにとりは次に連れてきた者を睨む

 

「河童ァ!」

 

カメハがにとりに指を差す

 

「勝負だ!今日こそ俺が勝つ!」

 

申し出と同時にカメハの背後の魔物が1歩前に出た

 

「……」

 

魔物を見る

 

(これまた凄いの作ったね……)

 

ロビンに引けを取らぬ大きさのピンクの体、筋骨隆々で至るところにトゲが生え、角を持つ魔物

 

だが凄いと思ったのはそれだけではない

 

(ロビンが警告するほど強い魔力に邪気……邪配合で作ったね……これも魔王の系譜?)

 

魔物から感じる強さを感じたのが最大の理由

 

「聞いてるのか河童!」

 

分析を続けていたにとりにカメハが叫ぶ

 

「……私は河童だけど名前は河童じゃないよクソガキ」

 

「なら俺もクソガキじゃない!カメハだ!お前の名前は!?」

 

「……河城にとりだ」

 

互いに名乗り合う

 

カメハはにとりの事は知っていたが名前までは覚えていない、エスタークから伝えられた情報をほとんど聞いていなかった

 

「河城にとり……?」

 

名前に違和感を覚えた

 

(どこかで……)

 

聞き覚えがあった名前に考えるが

 

「まぁいいか……とにかく勝負だ!行くぞデスタムーア!」

 

デスタムーアと呼ばれる魔物に指示を飛ばす

 

「やれやれ……2回も負かしたのにまだ格の違いがわからないのか」

 

呆れたにとりは指を鳴らしロビンを前に出す

 

「なら今度こそ思い知らせてやるよクソガキ……腐った邪法なんかじゃ私には……絶対に勝てないって事をね!」

 

王の間で二人のマスターは3度激突する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿・闘技の間

 

 

バシュ……バッ!

 

 

転移した二人は瞬間的に距離を離す

 

「……!」

 

目を動かし瞬時に移動させられた事を悟る美鈴、目だけを動かすのは連れてきた相手が油断ならない相手だから

 

「うぬを連れてきた理由……わかっておるな?」

 

問う豪鬼、些かも友好的な目ではない

 

「……あの日の続きですね?」

 

答える美鈴、あの日とは初めて対峙した日、レミリアが連れ去られた日

 

「わかっておるならよい……」

 

あの日の勝負は決着がついていない、エスタークが豪鬼を連れ戻したのもあるが更にある

 

「今ならば死力を出せよう……出せぬとは言わせん」

 

あの時の美鈴はレミリアに気を取られ真の実力を出せていなかったのを知っていたから

 

「我と死合えい……!紅美鈴!」

 

だが今なら本気の美鈴と戦えると豪鬼は構える

 

殺意の修羅となって

 

「……わかりました」

 

決意した美鈴はゆっくりと構える

 

「貴方を倒さないと進めないのなら……」

 

豪鬼にだけ神経を向ける

 

「相手をしましょう」

 

倒す、と

 

「死合う前の習わし……聞かせい!」

 

震脚で地を踏み豪鬼は告げる

 

 

「我、拳を極めし者……豪鬼!」

 

 

名乗れと

 

「……フッ!」

 

流麗に舞う手をビシッと突き出した美鈴は告げる

 

 

「流派東方不敗……紅美鈴!」

 

 

信じる拳と名を

 

 

「滅殺!」

 

「参る!」

 

 

拳極めし殺意の格闘家、不敗の紅魔の武道家

 

 

今、雌雄決する時!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チルノちゃん!」

 

大妖精が二人の危機に叫ぶ

 

「……行くよ大ちゃん」

 

チルノは助けに行こうとしなかった

 

「あの二人があんなのに負けるはずないじゃん!だからあたい達は先に助けてから二人を探したらいいでしょ!」

 

先に紫達を助けると言った

 

チルノにもわかっている、今は何を優先すべきかを

 

まずエスタークのスキマ使用の原因を断たねばならない、そして人質である神奈子等3人の救出

 

これを今成さねばならない、これを逃せばもうチャンスは無いかもしれないから

 

だから二人は見捨てる、勝つ為に

 

それに見捨てると言ってもチルノが言った通りあの二人が負ける筈がないとの信頼もあっての事

 

それだけ皆を信じ、死なせたくない為にもそれに繋がる第1の目的に進む

 

 

……ブゥン

 

 

進もうとした二人の前にスキマが出現する

 

それは2体居た

 

ドンッ!

 

出てきた足、大きく強靭な足、並みの魔物など踏みつけるだけで殺せるだろう足

 

次いで体躯、その体を覆う鱗、生半可な攻撃ではキズすら付かないであろう強固な鱗

 

顔、長い首の先にある顔、口には牙、頭には角、鋭い目

 

 

「「ヴォオオオオオッ!!」」

 

 

2体はそれぞれ氷と風を撒き散らしながら吼えるその咆哮は生物の頂きに居るかの様な圧倒的な威圧感を出す

 

「ここ……これって……」

 

それを見た大妖精が呟いた、彼女は知っていた、昔パチュリーが持っていた本にあったのを見て覚えていたから

 

白銀と深緑

 

本に載っていた個体とは異なるが属されるのは同じ種族

 

 

「ドラゴン……」

 

 

二人の妖精の前に2頭の竜が立ちはだかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

攻防が始まってから幻想郷は終始有利だった

 

数を前に持ち前の力と連携で次々と敵を倒す

 

妖怪達も存分に戦っていたが特に守護を任された面々の活躍は目覚ましいものがあった

 

「次ぃ!!」

 

一挙で数体を葬る勇儀の鬼の力

 

「少し疲れてきたわね……でもまだまだ!」

 

攻撃力の無さを手数とバーンのナイフで補う咲夜

 

「勢いが落ちています!引き締めなさい!」

 

仲間の頼もしさに自分も負けてられないとまだ傷癒えぬ体で戦い、命蓮寺の皆に渇を入れる

 

 

迫る敵を次々と倒す更にその中に頭1つ抜けた者が居た

 

 

「キシャアアア!!」

 

「……」

 

襲い掛かる数十の魔物

 

スッ……

 

彼女が一瞬揺れるとその場から消えた

 

「……」

 

彼女はかなり離れた場所にいつのまにか居た、魔物達との直線上の前方に

 

「ふっ!」

 

既に次の攻撃に入っていた剣を振ると斬撃が魔物を両断しながら飛ぶ

 

同時に先程彼女に向かった魔物達が十字に分かれ、崩れる

 

「……ハッ!」

 

剣を高速で幾度も振り切ると斬撃の幕が発生し襲い来る魔物を抵抗無く両断していく

 

「まだまだ……!」

 

彼女、妖夢の強さは一際目立っていた

 

体の動き、剣の動き全てに意味を持たせ無駄は一切無い、鍛えた力を経験が更に高め剣のみという斬撃こそ飛ばせるが攻撃範囲的に不利な条件で博麗神社を守る強者の誰よりも敵を倒していた

 

「……!」

 

気付いた妖夢は来る魔物達の後方を睨む

 

(気配が変わった……今までより遥かに強い魔物の気配……)

 

質が変わった事を知った妖夢は魔物を倒しながらも動じない

 

(望むところです……私は幻想郷を守る剣!仏だろうと鬼が来ようと全て切る!)

 

更に意気は高まる

 

(例え神が相手でも!)

 

変わらぬ意志を胸に妖夢は戦う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

「強くなったわね」

 

魔物を事も無げに傘で貫きながらレーザーを撃ち、薙ぎ払いながら幽香

 

「そうさね」

 

同じく魔物をデコピンで粉砕し肉片を弾にして魔物を倒す萃香

 

「新しく来たこいつらは魔界の魔物……それも奥の方だ、今までのとは一味どころか三味くらい違う、私らはともかく他がキツイだろうねぇ……」

 

魔物の質が大きく変わったのを感じた二人は背を合わせる

 

「妖怪もそうだけど……怪我してる天狗と天邪鬼では辛いでしょうね……」

 

「ブン屋に至っちゃマントすら無いときた……でもあいつらなら怪我を押してでもやるだろうねぇ」

 

「それにキョンシーは消えて邪仙も戻ってこない……どうする?」

 

「どうするって……私達は里の要だろうに……」

 

わかりきった質問に萃香は口元を妖しく上げると

 

「やるよ幽香!」

 

能力を使う

 

「妖鬼―疎―」

 

萃香の密度が下がる

 

「久方振りだねぇこれを使うのは……」

 

気付くと萃香は増えていた、元々小柄な萃香よりも更に小柄な萃香が大きな本体の萃香を中心に増えていた

 

その数、百

 

「もう呼ばれなくなっちまってた……」

 

かつてを思い出し少し感慨に耽る

 

「ああ……そういえば呼ばれてたわね」

 

幽香も思い出す、かつて萃香が何と呼ばれていたかを

 

「萃まる夢……幻……」

 

バーンから名を貰う以前の異名

 

「そして……」

 

強きを表す異名

 

「百鬼夜行……」

 

萃香なる鬼の異名!

 

 

「萃夢幻百鬼夜行……さぁ暴れようか!!」

 

 

言わば小さな萃香の大群

 

フランの分裂とはまた違う、萃香しか出来ない密度の分身

 

「そぉれぃ!!」

 

迫った魔物を殴り殺すと同時に萃香の群は飛び出していった

 

魔物を容易く蹴散らしながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?怪我さえなかったらこのぐらい……!」

 

強さを増した魔物の数に苦戦する正邪

 

「痛ッ!?……セイッ!」

 

文も苦戦している

 

本来ならここまで苦戦はしない、怪我さえなければこの強く数が居る魔物相手でも互角以上に戦える強さが正邪にはあり、文には戦える道具がある

 

怪我を押して戦うもののここまでの魔物を大量に持っていたのは正邪にも幻想郷にも誤算だった

 

(魔界深部の魔物をこんなに増やしてるなんて……私が寝てた間に集めたな……)

 

回避に重きを置きながら1体ずつ確実に仕留めていく

 

(マズイ……このままじゃジリ貧だ……)

 

ヒュン!

 

1体が正邪を抜け結界を張るさとりへ向かう

 

「くっ……!?」

 

能力を使い1体の動きをひっくり返し止める

 

「あやややや!?」

 

次は文も止め切れず2体が向かう

 

「ギャヒ!?」

 

2体の内1体が味方の妖怪に倒されるが残る1体が妖怪達を押し飛ばしながら進む

 

「そいつを止めろ!」

 

能力を使いながら囲まれている正邪は行けず叫ぶしかない

 

だがその1体は止まらない

 

「止めろぉ!」

 

正邪が強く叫ぶ

 

「はいよ」

 

返事が返ると1体は止まり、息絶えた

 

「助かった伊吹萃……」

 

礼を言おうとした正邪の言葉は止まった

 

「ん?なんだいそのツラ?ああ、あんたこれ見るの初めてだったのかい……可愛いだろう?」

 

したり顔の小さな萃香に絶句していた

 

「あいや~小さな萃香さん久しぶりに見ましたけど……やっぱり可愛い……写真撮ろっと!」

 

カメラを構えようとした文の背後から魔物が襲う

 

「勝手に鬼の写真撮ろうたぁ偉くなったもんだねぇ射命丸……」

 

違う小さな萃香が魔物の首をへし折りながら文に微笑む

 

「あやや!?滅相もありません!私が萃香さん……いや萃香様の写真を撮ろうなどと……その様な事があろう筈がございません!」

 

慌てふためく文、脳髄に刻まれたトラウマが甦り口調がおかしくなる

 

「嘘つきの鴉天狗だ……まぁ良いさ、全員少しその場で見てな!」

 

小さな萃香は勢い良く魔物の大群に突撃する

 

「うらぁ!!」

 

そのまま魔物にぶつかり風穴を空け次へ次へと穴を空けていく

 

「ハハ……あいつらを越える前にまだ居たんだった……」

 

正邪が感嘆を呟く

 

「霧の鬼……それと……」

 

次々と穴を空けられていく魔物達と次々と穴を空けていく萃香

 

百の鬼が戦場を駆け巡る時、そこに五体満足な者は誰も居ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!圧倒的じゃないか我が群は!!」

 

高揚した萃香は高らかに叫ぶ

 

 

「我が群隊は百鬼夜行!鬼の萃まる所に人間も妖怪も居れる物か!!」

 

 

少しばかり昔を思い出した萃香を見ながら幽香は苦く笑う

 

「何が圧倒的な群隊よ……中途半端に息があるのばっかりじゃない」

 

浮かび上がると上空から息のある魔物を視認する

 

「花符「幻想郷の開花」!!」

 

空中に幾輪もの花を咲かせ弾幕を放ち、まだ息のある魔物からまだ傷の無い魔物まで全方位攻撃で撃ち落としていく

 

この二人の連携を前に大量の魔界深部の魔物といえど分が悪過ぎた

 

里周辺をあっという間に殲滅し徐々に押し返していく

 

「このまま全滅させてやるよ!」

 

確かに全滅出来るだろう、里のみならず神社の方も

 

全滅出来るだろう……邪魔さえなければ

 

 

スゥー……

 

 

里全体を霧が覆う

 

グチャ!

 

「!?」

 

萃香は知った、一斉に分身が倒されたのを

 

「あの時の霧の奴かい……」

 

見覚えのある霧を見て顔をしかめる萃香に

 

「伊吹萃香ァ!!」

 

斧が振り落とされる

 

「なんだなんだ……お前も来たのかい坊主」

 

受け止めた萃香は襲撃者がバルバトスだと知る

 

「会いたかったぜ伊吹萃香ァ!」

 

斧を弾かれ距離を離したバルバトスが叫ぶ

 

「貴様を忘れた事は無い……!痛みが襲う度に貴様を更に憎んだ……殺すと!」

 

握る力を更に込める

 

「ブチ殺す!!」

 

殺意を露に睨み付ける

 

「……誰?この狂った様な人間……知り合い?彼氏かしら?良い趣味ね」

 

分身が倒されたのを見た幽香が降り立つ

 

「ならあんたにやるよ」

 

馬鹿言うなと苦笑する萃香

 

「随分と余裕だな伊吹萃香!」

 

二人の様子に怒るバルバトス

 

「そら余裕だろう?少々強くなった程度の坊主相手に気張る必要なんてありゃしないからね」

 

「貴様ァ……!!」

 

怒り煮えたぎるバルバトスが構えた瞬間

 

「少し抑えろバルバトス……怒るのはわかるがな」

 

霧が集まりバルバトスの横にミストが現れる

 

「……!」

 

ミストを見た萃香の動きが止まった、誰にも目もくれずミストだけを見ている

 

「うるさいぞ……お前は風見幽香を相手していろ!」

 

ミストに幽香を抑えるように言うバルバトスを前に、幽香が面白そうに笑い傘を構える

 

戦う相手が決まったと空気が教える中

 

「……」

 

萃香は歩いた、無言で、ただ1人だけを見つめて

 

「お前の相手は俺だ伊吹萃香ァ!」

 

バルバトスが叫ぶも萃香には聞こえない

 

「……」

 

萃香がその者の前に立つ

 

「ミスト……だね?」

 

問うた

 

「そうだが……それがどうした?」

 

今さらわざわざ問う萃香の行動にミストが問い返すが

 

「バーン……知ってるだろ?」 

 

萃香は返さず問うた

 

「バーン?エスターク様が得た魔力の元がバー……ッ!?」 

 

想いが籠った名を聞かされたミストに痛みが走る

 

「……やっぱりかい……私があんたの霧に感じた因果はこれだった……」

 

納得した萃香は幽香へ向く

 

「悪いね幽香、こいつとは私がやる……そいつで我慢しとくれ」

 

「なにぃ……!!?ふざけるな伊吹萃香ァ!!」

 

返したのはバルバトスだった

 

「お前は俺が殺すんだよぉ!」

 

構えた斧が振り落とされる

 

 

ギィン!

 

 

「しょうがないからこの雑魚で我慢してあげる……」 

 

傘で防いだ幽香が応えた

 

「悪いね幽香……」

 

それだけ言うと萃香は霧になる

 

「ついてきなミスト……」

 

「……いいだろう」

 

同じく霧になったミストは萃香へ続いて消える

 

 

 

「ふん……まぁいい……」

 

消えた二人を見た後バルバトスは斧と傘で押し合う幽香を見る

 

「貴様を先に殺して伊吹萃香を殺せばいいだけよ……覚悟はいいな……風見幽香ァ!」

 

どの道、幻想郷の者は皆殺し、なら順序が変わっただけ、恨みはあるが生粋の戦闘狂の血が目前の敵を殺す事に決めた

 

「御託はいいからさっさとかかってきなさいよ坊や……坊主だったかしら?」

 

「なんだとぉ……!!」

 

威圧を全く意に介さない幽香

 

「許さんぞ風見幽香……一息には殺さん……苦しんで死ねぃ!」

 

「お喋りな雑魚ねお前……あぁ、弱い者ほど良くって言うけど雑魚だから当然か……」

 

「!?」

 

更なる威圧に怯むどころか楽しげに挑発してくる幽香にバルバトスの気が変わる

 

「……!」

 

弾き合い離れた二人

 

傘を下ろし静かにバルバトスを見る幽香

 

「……風見幽香」

 

その強い心にか、それとも容姿か、戦いを好む性格故か

 

怒りしかなかったバルバトスを冷静にさせ

 

その言葉は出された

 

 

「俺の女になれ」

 

 

幽香を自らの物にすると

 

「……そういう直接的な口説き方、嫌いじゃないわ」

 

一瞬驚いた幽香だがすぐに嘘や罠の類いではないと感じ期待を持たせる言葉を返す

 

「でもダメね」

 

だが断った

 

「私は強い人が好きなの……」

 

次いで理由

 

「私より強い人が……ね」

 

幽香が好きなのは花、その気持ちは嘘ではないが家族愛に近い、真の意味で好意を寄せる相手が居るとしたらそれは己より強き者、そう決めていた

 

(そんな奴はもう居ないけどね……)

 

幽香は同性愛者ではない

 

だから自分より強いと言われる頂点達に好意は抱かない

 

幽香を負かせる人、そんな人はかつてただ一人だけ……

 

 

「なら俺がお前に勝てば俺の女になるんだな?」

 

その理屈で言えばそうなる

 

「……そうね、良いわよ、お前が勝てば私は喜んで愛を誓ってあげる……」

 

妖しく笑った幽香は妖気を高める

 

「決して叶わない絶望の夢だけどね……」

 

幻想に咲く妖花、猛る狂戦士

 

今、狂い咲く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚

 

「悪いね付き合ってもらって……」

 

霧を集め姿を出した萃香

 

「構わん、私にとっても望むところだった」

 

同じく霧を集め姿を現すミスト

 

「伊吹萃香、霧の異名を持つ鬼が私の相手とは……私を前に霧……名付けたのは自分でか?」

 

「……違う」

 

その質問は萃香を締め付ける

 

「名付けたのはバーンさ……」

 

「またバーンか……幻想郷で最上位種族と呼ばれ、百鬼夜行の異名を持つお前に何故バーンはお前にわざわざ名を贈ったのか……友好の証か?理解に苦しむ……」

 

それは萃香を強く締め付ける

 

「それ以上喋るな!」

 

堪らず萃香は叫んだ

 

これ以上聞きたくなかったのだ

 

(あいつが……!初めての仲間だと言ったあいつが!その……本人が……!バーンを……!!)

 

聞いた限りではあった

 

それもバーン本人から二、三言だけ

 

それでもわかった、バーンがどれだけ信頼し、バーンが絶対の忠誠を誓われた、幻想郷に来る以前のバーン唯一の仲間だと

 

「この名は!!」

 

だから叫ぶ

 

「あんたを心の底から信頼したバーンから貰った……あんたの……」

 

思い出して欲しくて

 

 

「ミストの名だ!!」

 

 

この名の由来はお前だと、お前を信頼していた者がくれた名だと

 

「……」

 

ミストは返さない、暫し萃香を見つめるだけ

 

「私がその名の由来だと言うなら……」

 

ようやく言葉を発したミスト

 

ズズ……ズゥー……

 

同時に暗黒闘気が溢れ出し

 

「返してもらおうか……貴様には過ぎた名だ……」

 

臨戦態勢に入る

 

「そうかい……やる気なんだねミスト……」

 

目線を下げていた萃香の妖力が上がっていく

 

「悪いがこの名は返さない……」

 

ドンッ!

 

力を解放した余波が辺りの大地を削り、吹き飛ばす

 

「私の誇りなのさ……返さないよ、例え本人が相手でもね」

 

「……ならばこの私が、ミストが引導を渡してやろう」

 

高まり続ける力

 

「姓は伊吹……名は萃香……霧の名を持つ鬼……」

 

二人しか居ない無縁塚を妖力と暗黒闘気が混じり合い不可侵のフィールドを作り出す

 

 

「目ぇ覚ましてやるよミスト!!」

 

 

名を賭けた戦いが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「ッチィ!?」

 

神社を守る者達は苦戦していた

 

魔界深部の魔物は楽には倒せない

 

鬼の勇義、バーンのナイフを持つ咲夜、怪我をしている白蓮

 

いずれも倒せてこそいるが明らかに倒す数が減っていた

 

「……さっきまでなら使わなくても充分と思ってたけど……使うなら今をおいて他はなさそうね」

 

同じく苦戦するアリスは異空間から封じた人形を召喚する、その数12体

 

「……!」

 

それを見た白蓮が気付く

 

(おそらくアレがアリスの……見れるのですね、本気を……)

 

他の人形とは明らかに違うその人形を見て思い出す

 

(昔、魔理沙が言っていました……一度だけ見たと……)

 

アリスは12体全ての人形に魔糸を付け、張り巡らせる

 

(アリス極意の指の数……一糸で2体分操る機構など自らの技術を全て使った12の傑作人形集を用いる真の力を見せた時だけの秘技……)

 

魔力を通された人形は人間と寸分違わぬ動きをしながらアリスの周囲に停滞する

 

 

「秘操符「総演―円卓の騎士―」!!」

 

 

12の人形が魔物を一挙に倒していく

 

切り、撃ち、捩り、潰し、魔法すら使うアリス操る人形に魔界深部の魔物は為す術無く蹴散らされていく

 

アリスの奮闘により持ち直すかと思われたが……

 

 

スパッ……

 

 

糸が切断された

 

「!?」

 

驚くアリスは切った者を睨む

 

「また会いましたねお嬢さん」

 

剣士が立っていた

 

「また貴方……くっ!?」

 

剣士の登場にアリスの顔が歪んだ

 

(最悪……私では勝てない……)

 

相性の悪さを知っていたからだ

 

糸を容易く切れる剣士相手に自分の人形魔法は相性が悪過ぎる

 

戦えば決して勝てないから動揺が隠せない

 

「本当は戦いたい人が居るのですが……」

 

剣をクルクル回しながら剣士は言う

 

「見つける前に貴方が目に入りましてね……私に勝てないのに何を調子に……と感じまして、前に殺すと言いましたしついでに済まそうかと思い来ました」

 

剣を握り、アリスに向ける

 

「さぁ……覚悟を!」

 

「くうっ……!?」

 

焦るアリスに剣士が向かう

 

 

「待ていッ!!」

 

 

二人の動きを声が止めた

 

「力と己の欲のみで幻想郷を滅ぼせると思うなッ!固く握り合った手は暴力では離れない……!人、それを……「絆」と呼ぶ!」 

 

轟く声、二人が向くと一際高い木の上に一人の少女が居た

 

「何者だ!」

 

ノリの良い剣士が問う

 

「白玉楼、剣術指南役兼庭師!魂魄妖夢!またの名を魔剣の妖夢!」

 

華麗にアリスの前に降り立った妖夢は鞘に納めた剣に手を掛ける

 

「幻想郷の為に……貴方を成敗します!」

 

口上を決めた妖夢は呆けている剣士に注意しながらアリスを横目で見る

 

「ここは私が引き受けます……行ってください」

 

「また助けられたわね妖夢……ごめんなさい……任せるわ」

 

任せなければならない無力に歯噛みしながらアリスは離れる

 

博麗神社を守る

 

今自分に出来る事をする為に

 

 

 

「覚悟はよろしいですね?正邪さんから聞いた名は確かゴー……」

 

呆けたままの剣士に聞いた瞬間

 

「待て!魂魄妖夢!」

 

凄まじい勢いで止められる

 

「次は私の番です!」

 

剣士は剣を向ける

 

「あの時は名乗り損ねたのでね…他の方々の口調に合わせてきましたが今くらい良いでしょう……」

 

キザに礼をすると始まった

 

「拙者の名前は!ゴーガンダンテス!」

 

ポーズを次々しながら声高に!

 

「幻魔界最高の剣士!」

 

最後に一番の決めポーズで名乗りの口上は終わった

 

「……よく恥ずかしくありませんね、そんな真似して……」

 

見終わった妖夢が率直な感想を述べる

 

「全然!……と言うか貴方の方が低レベルでは?」

 

「なっ!?ナニイテルンディスカ!?」

 

ゴーガンダンテスの指摘を必死に否定する妖夢

 

「これでもフランには好評なんですよ!」

 

「そのお子様だけでは?」

 

「ち、違います!他には……他……には……」

 

「やはり……」

 

ニヤニヤと笑うゴーガンダンテスに

 

「せいっ!」

 

妖夢は切りつけた

 

「成敗してやる!成敗!成敗!成敗ぃぃ!!」

 

怒る妖夢の剣撃を受けたゴーガンダンテスは昂る

 

「久し振りに強そうな剣士に出会えて拙者の剣も涙と興奮に震えています……」

 

弾いた後、剣を突き立て告げる

 

 

「では……行きますよ!!」

 

 

幻魔最高の剣士、対するは幻想最高の剣士

 

最も高き剣が火花を散らす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社・境内

 

「こっちは気にせず集中しなよ!」

 

境内に侵入し、弱った魔物を倒しながらてゐ

 

「は、はいっ!」

 

言われるがまま結界を維持する靈夢

 

「むっ……また入って来た……ね」

 

聖気を高める霖之助が気付き少し顔を曇らせてゐへ知らせる

 

「わかった!任せなよ!」

 

待ち構えるてゐを見ながら霖之助は侵入者に違和感を感じた事を考えていた

 

(今来たのは結界を無理矢理突破した感じじゃなかった……抜けて来た様な……まるで博麗神社の聖気を知っていたみたいに……)

 

侵入者が登って来る

 

「……」

 

構えるてゐを霖之助と靈夢が見守る

 

侵入者の姿が見えた瞬間

 

 

ドウッ!

 

 

てゐが弾け飛び二人の前で倒れる

 

「てゐ!?大丈夫かい!?……靈夢!」

 

てゐが気絶している事を確認し靈夢へ向く

 

「あ……あ……」

 

靈夢は信じられないものを見る目で驚愕していた

 

「し……」

 

靈夢の震える呟きと同時に二人は見た

 

 

「師匠……」

 

 

エスタークの悪意を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神社と里の中間地点

 

「……死になさい」

 

死蝶を放ち魔物を殺す幽々子

 

表情は優れない

 

(とても良くない状況……守りの要を抑えられてこの魔物の強さに数……さっき博麗神社に向かったアレは私の見間違いじゃなければ……)

 

状況は芳しくなかった

 

強い魔物の大軍に最高戦力を抑えられたこの状況、自らも応戦しなければならない事態に加え更には重要地点への刺客

 

明らかに窮地だった

 

(この先どうなるかはわからない、良くなるかも悪くなるかもしれない……どちらにしろ指揮の要である私がやられる訳にはいかないわねぇ)

 

そう決めた幽々子は懐から玉を取りだす

 

「用心棒に御登場してもらいましょうか!」

 

玉に念じるとスキマが広がった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

混迷する戦場

 

 

敵の主力を討ち取る好機でもあり討たれる可能性も充分に混濁した無法地帯

 

 

しかしその実、劣勢なのは幻想郷だった

 

 

余りの数を前にして守勢に力を割く事を余儀無くされた幻想郷に敵は悪意の手を打ってくるからだ

 

 

幻想郷は魔帝異変、白者異変に匹敵する危機に瀕していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな頃だった

 

 

 

 

 

 

 

外へ続く長い長い道を飛ぶ者が居た

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりシャバの空気は美味いぜ!」

 

「バカ言ってないで急ぐわよ!」

 

飛ぶ二人は会話しながら長い道を急ぐ

 

「待ってろよ皆!久し振りに暴れてやるぜ~!」

 

「私は先に神社に向かうわね」

 

嬉しそうな白黒と気を引き締めている紅白

 

二人は少女だった

 

 

「やあぁぁぁぁってやるぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

滅びの危機に2つの光が向かう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




帝王編・対峙の章になります、前話は開戦の章ですかね、サブタイは得意のドラクエ戦闘曲からです。

……1話に纏めたら長くなり過ぎた。

そして色々と補足

バラモスは動く骸の通りロトの紋章から出演、体はゴルゴナの時よりはマシです。

2頭の竜は本人ではありません、ドラクエなんだから竜を出さないとな……って強迫観念に捕らわれました。

ミストに関しては以前とある方からの感想に別人と答えましたがまた違う方の感想に「これ良いじゃん!頂きます!」となり、設定を本人にして名を賭けた戦いにしました。

ゴーガンダンテスはゲーム・鬼武者2からの出演、好きなキャラでした。

後、忘れてましたがカメハはゲーム・ドラクエモンスターズ2から出演、原作に加えて漫画のモンスターズ+要素を加えています。

補足はこれくらいですかね。
ちなみにアリスの本気の元ネタはナルトのチヨバアからですがアレンジ加えてます。


最後の白黒と紅白……一体なんの弾幕シューティングの主人公達なんでしょう……

次回も頑張ります!
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