エスタークパレス
「こうなりましたか……」
映像を眺めるエスタークはワインを一口含む
(ゴーガンダンテスは当然として……まさか伊吹萃香と因縁あるバルバトスの相手が風見幽香になるとは……)
映像から目を逸らしワインを眺める
(それにしてもミスト……)
考えていたのはミストの事
(ミストは異界の神が作った魂の牢獄で見つけた……)
出会った時を思い出す
(牢獄は復活出来ない魔族の魂を転生させない様に作られていた、普通なら無の空間に居る魂は朽ち果てて消える筈……)
魂の牢獄とはそういう場所、囚われた魂は朽ち果て、消える
例外は無い、エスタークは知る筈も無いがバーンも例外ではない
(しかし……ミストは消えなかった)
だがその事実を塗り替えたのがミストだった
(強靭な意思でずっと耐えていた……バーン様を守る為に、その一念のみで……何年、何十年以上もの途方もない時間を……)
「……!」
そこでエスタークはようやく気付いた
何故か今まで気付かなかった、ミストの守りたかった者が同一人物だと考えていなかったからか、名前だけ一緒で別人だと思ったのか、何にせよ今繋がった
(ミストが守りたかったバーンとはこの力の持ち主と同一の……)
ミストの主と自らが得た力の元が一緒なのだと
「フフ……ハハハ……」
それを知ったエスタークは愉快に笑った
(なんて滑稽な……その想いに私の能力が干渉出来て牢から蘇ったと言うのに……それが何の因果かバーンが守った幻想郷を滅ぼす為に動くとは……)
「ククッ……ハハハ……!」
笑いは一層強くなる
(感謝しますよバーン……貴方への想いを弄り私だけに忠誠を誓わせました、悔しいでしょうねぇ……フフフ……)
予期せぬ余興に表情はつり上がる
(進化した他の者も一筋縄ではいきません、幻想郷の強者の底が知れないのだけ気になりますが為す術無く敗北はあり得ない、それに魔物はまだまだ居ます……スキマの制限解除で集めた魔界深部の魔物、正確な数は把握してませんが……まだ1万以上は居るでしょう)
「フフ……」
またワインを一口飲むと映像を切り替える
「さぁ踊りなさい藤原妹紅……魔王との死の踊りを……」
最も気になる相手の様子を楽しげに見守る
エスターク神殿・闘技の間
拳脚の応酬が続く
「ヌゥリァア!!」
「セァアア!!」
鍛えぬいた四肢に培った武を乗せ二人の攻防は苛烈を極める
「ヌンッ!」
みぞおちを目掛けた中段突き
「ハアッ!」
右手で流しつつ回転の勢いを乗せた左の裏拳
チッ
しゃがんだ豪鬼の髪を掠り頭髪が数本舞う
「ヌゥン!」
地に着いた足と右腕に力を込め、踏み上がりにアッパーを繰り出す
「くっ!?」
上体を後ろに反らし回避する
反らした勢いのまま足を跳ね上げ空中で1回転し距離を離す
(鋭い……やはりとんでもない達人……アッパーがまるで昇る龍の如き威力……)
視線を逸らさず胸に指を当てる
服は縦に破れていた
豪鬼の拳は掠っただけでも脅威だとわかるには充分だった
(まぁこれは私の発育が良過ぎるのが原因ですが……)
胸に溜まった脂肪の分だけ余計な判定を作っている、だから掠っていた
(これはお嬢様や咲夜さんには言えませんね~)
クスッと笑うと構える
「次は私の番です!」
一足に飛び掛かりながら蹴りを放った
「フン!」
受けるは不利と避けた豪鬼の背後への手刀
「……フッ!」
読んでいた美鈴は振り向き様に腕で受け、そこから拳の応酬が始まる
スゥ……
豪鬼の拳を流れる様に流した美鈴の拳が豪鬼の胸に触り、止まる
「……ハッ!」
寸勁を使った一拍子突きを放つ
スゥゥ……
だがそこに豪鬼は居なかった
阿修羅と呼ばれる歩術で避け、背後に回っていた
「ムン!」
先程のアッパーを食らわそうと身を屈める
ドッ!
力を溜める腕を肘が打った
「ヌゥ!?」
背を向けたまま打ってきた美鈴に豪鬼の表情が変わりまた阿修羅で距離を取る
「!?」
阿修羅の終わり際に豪鬼は目を見開く
「ハアアッ!」
目前に美鈴が居たから
「グゥ!?」
飛び蹴りを両腕で受けた豪鬼は地を滑りながら後退し美鈴を睨む
「足捌きは見えなくてもその殺意は見えずとも感じます」
着地した美鈴は構えを崩さず微笑む
阿修羅で距離を取ると読んでいた美鈴は豪鬼が阿修羅で逃げた瞬間、地を蹴り上げその勢いのまま飛び蹴りを放った
殺意の逃げる先を感じて
「それにその歩術はもう見切りました」
例え足捌きが見えずとも豪鬼自体が見えない訳ではない、スピードも捉えられないものでもない
以前、門前で見た時に既に見切っていたのだ
「流石だ紅美鈴!その実力!やはり死合うに足る!」
豪鬼の言葉には喜びが溢れていた
強き者に出会え、死合う事が出来る喜びに
「だが……真の力を見せておらんな……」
豪鬼は知っている、美鈴はまだ実力を隠していると
「どうすればうぬは力を見せる?」
問う豪鬼は一瞬考え美鈴が返すより早く口にした
「……我が真の力を見せればよいのか」
呟かれたと同時に美鈴を更に強く睨む
「ッ!?」
危険を感じた美鈴は一歩下がる
豪鬼の体から溢れだす波動が美鈴を下がらせた
「ヌゥゥゥゥ……!!」
更に体に力を込めると波動は狂った様に豪鬼の周囲を暴れ回る
「リャアアアアア!!」
咆哮が叫ばれると波動が全て豪鬼の体内に吸収され一瞬光を放った
「~~ッ!?」
目も眩む光に目を閉じた美鈴は開いた次の瞬間驚愕した
「な……何を……」
豪鬼の容姿が変わっていたから
赤だった髪は白く染まり肌も若干濃くなっている
そして何よりも驚愕したのは感じる強さ
(この……強さは!?)
美鈴が動揺している最中、豪鬼は告げた
「行くぞ……」
構えた豪鬼が阿修羅を使う
「!?」
その動きに反応が遅れた
(早くなっ……!?)
ドズッ!
腹を打たれていた
「グッ……ツアッ!!」
反撃するもまた阿修羅で逃げられる
「……ハッ!」
読んだ美鈴が追い付き拳を放つ
「ウグッ……!?」
先に肘がまた腹を打っていた
(隙も……減ってる……!?)
だが呆けて追撃を食らう訳にはいかない美鈴は垂直蹴りを放つ
それを交差させた腕で受けた豪鬼は1回転し、少し離れた所へ着地と同時に構えていた
「ムン!」
重ね、開かれた手から目に見える弾が撃たれる
「グッ……ウッ……」
防御した上から削られる
(波動を放った……この……威力は!?)
反撃に弾幕を放つ
「ムゥン!」
だが放たれた波動の弾に弾幕は撃ち消される
「グゥ……」
顔を歪ませまた防御した美鈴に波動は撃たれ続ける
「……ッアア!」
堪らず飛び出した美鈴に呼応し豪鬼も飛び上がる
拳を打ち込もうと腕を引きタイミングを計る
「!?」
腕は伸びなかった
豪鬼が空中で回転した動きを警戒して
「ヌゥン!」
空中で回転した豪鬼の足が美鈴の顔を目掛け伸ばされる
「あぐっ!?アアッ!?」
伸ばさなかった腕で受けたが威力と付加された電気にも似た衝撃に苦しみながら飛ばされる
「くっ……そっ……」
壁に叩きつけられた美鈴が目を向けると豪鬼が空中で腕を向けていた
「なっ!?」
空中で撃たれた波動が2発迫る
「くぅ!?」
体勢も整わないまま撃たれた波動に回避を余儀無くされた美鈴は地を転がり避ける
すかさず顔を上げると着地していた豪鬼がまた波動を放っていた
「……!」
右手首を掴み下段に居合いの様に構え力を込める
「ハアアッ!!」
振り抜いた右拳が波動を弾き飛ばす
「はぁ……はぁ……」
息を荒げる美鈴に豪鬼は攻撃しなかった
「まだ出さぬか?」
代わりに問う
「……」
痛みに苦く豪鬼を見ながら美鈴は答えた
(真の力……メイリンフィンガーじゃ怒るだろうなぁ……)
聞こえない様に……
永遠亭・輝夜の部屋
「これで大丈夫なはず……」
寝ている輝夜に鈴仙が粉を振りかける
(目覚めの粉……エルフに伝わる秘伝の薬、眠りの呪いに対する最高の薬だけど……)
鈴仙が振りかけたのは目覚めの粉
眠りの呪いに対する薬
ある異世界で呪いにより眠ったままの村を解呪する為に使われた秘薬
永琳は輝夜の症状が呪いに近いと知り最後の望みにエルフの知恵を借りたのだ
(本当に効くのかな?)
鈴仙はまだ効果に疑問を持っていた
師である永琳が何をやっても起きなかったのにこんな薬で起きるのかと
「!!」
粉が光を放ち輝夜を包む
……パチッ
輝夜は目を覚ました
「姫様!良かったぁ……」
無事起きた事に安堵する鈴仙を一瞬横目で見た輝夜はボーッと虚空を見る
「夢を見ていたわ、ずっと……」
ポツリと輝夜は呟いた
「夢……ですか?」
「ええ……」
「何の夢だったんですか?」
鈴仙が問うと輝夜の顔が歪む
「破壊と殺戮の夢……」
苦く答えた輝夜は続ける
「何もかも壊した……建物も大地も何もかも……何もかも殺した……人も魔物も何もかも……」
「ずっと……見せられてた……」
頭を下げたままの輝夜に鈴仙は何を言って良いかわからず戸惑う
「……永琳は?」
そんな空気を察して輝夜は聞いた
「師匠は今出掛けてます……って言うか今幻想郷が危ないんです!」
「どういう事?」
事情を知らない輝夜に鈴仙は話した
長い間眠り続けていた事、今幻想郷がエスタークに攻撃されている事を
「……鈴仙、行くわよ」
布団から出た輝夜は支度を始める
「大丈夫なんですか!?」
ついさっき起きたばかりの輝夜が心配で問う
「心配ないわ元気だから、さっ早く加勢に行かないと!」
身支度を終えた輝夜はすぐに永遠亭を出ていく
「あっ!姫様!?待ってくださいよ~!」
慌てて鈴仙も後を追っていった
人間の里周囲の森
ザザ……ザザザザザ!
木々を抜けながら走るのは幽香とバルバトス
「……」
「ルアァッ!!」
互いに弾幕と晶術を撃ち合いながら森を駆け巡る
「!?」
バルバトスが何かに躓きバランスを崩す
(花の……蔦だと?)
確認したバルバトスが引き千切ろうと足を動かそうとすると蔦は足から離れた
ドドッ!
直後弾幕が襲う
「ぬっ!?」
痛みに片目を閉じながら弾幕の来た方向へ向く
「グアッ!?」
傘で殴り飛ばされたバルバトスは木に当たり止まる
「余所見なんて余裕じゃない」
歩いて来ながら幽香は笑みを向ける
「チッ……」
笑みに舌打ちしながら立ち上がる
「あの蔦はお前の仕業だろうが……花を支配する風見幽香!」
斧を上段に構え指摘する
「支配なんて人聞きの悪い……私は頼んだだけ、そしたら応えてくれただけの話」
余裕を見せながら優雅に歩く幽香
「そうか……ならばぁ!」
思い付いたバルバトスは蔦のあった場所へ走る
「この蔦を引き裂く!邪魔された礼をしなければならん!」
斧を振り上げ力を込める
「!?」
同時に写った、幽香が目の前に
ドッ!
傘の先端が腹にめり込む
「グフッ!?」
「やってみなさい……」
痛みに引き吊るバルバトスに幽香は告げる
「私の前で花を千切れるなら……」
ガンッ!
左拳で防いだ斧ごと殴り飛ばす
「グヌゥ……!?」
耐えたバルバトスが前を見ると幽香は大量の弾幕を放ちながら迫っていた
「チィ!!」
斧を振り抜き衝撃波で弾幕を防ぐ
ズアッ!
衝撃波をものともせず突っ切って来た幽香が渾身の右拳を打ち込む
「!……やるじゃない」
幽香の拳は受け止められていた
「俺を舐めるなよ……風見幽香ァ!!」
咆哮と同時に進化した力を解放する
「ブルァ!!」
斧を振るう
バキャア!
防いだ幽香が飛んでいく
あまりの威力に踏み止まれず飛ばされた
その威力は木々を数本薙ぎ倒しようやく止まる程
「ククク……どうだ風見幽香……気は変わっただろう?」
満足な威力を感じながら幽香へ歩む
ドウッ!
妖力が爆発的に高まり幽香の周囲の木々を花だけを避けて根ごと吹き飛ばした
「遊びは終わり……すぐ楽にしてあげる……」
告げた瞬間傘で殴り掛かった
「チッ……」
幽香はバルバトスを忌々しく睨む
傘は斧に防がれていた、バルバトスを殴り飛ばせずに
「まだ……終わらんぞ……風見幽香……!」
斧で傘を押しながらバルバトスは笑う
「後悔なさい……!」
傘で斧を押し返しながら幽香も微笑む
「私を本気にさせた事を……!」
拮抗していた力に二人の戦いはまだ終わらない
博麗神社周辺の岩場
「やはり拙者の見込んだ通りです!」
キンッ
「……どうも」
キキンッ
「……もう少し楽しく戦えませんか?」
ギャリッ……
「お断りします」
ギンッ……
二人は距離を取った
「さっきまでの勢いはどうしました?拙者を恐れている訳ではないでしょう?」
指を差しながらゴーガンダンテス
「恐れている訳ではありません」
構えたまま妖夢
妖夢は既に冷静だった
勢いに任せた接触だったが2、3太刀交えた瞬間に油断出来ない力量と感じ、瞬時に熱を下げ集中していた
(見慣れない剣技……攻撃に比重を置いた剣術ですね)
妖夢は数度の攻防の内に分析していた
(攻撃は上手いですが防御は余り上手くない……突くならそこですね、誘いの可能性もありますが……)
そこから有効な攻め方を考える
(……揺さぶってみますか)
確かめる為に妖夢は両手で握っていた楼観剣を右手に移し差してあった白楼剣を抜き二刀流で構える
「おおっ!二刀流!小さいのに持てますか?」
小馬鹿にしたゴーガンダンテスの言葉を妖夢は気にせず更に集中していた
「フゥー……」
呼吸を整えながら力を上げ刀に行き渡らせていく
「ムッ……」
ゴーガンダンテスの笑みが消えた、その力と集中力に気を入れる
「……ハッ!」
二刀で上段に切りつける
「……!」
横にされて防がれた剣を押さえながら一刀を引く
「フッ!」
引いた一刀を逆袈裟で切り上げ同時に押さえていた一刀を持つ力を緩める
「ムゥ!?」
上へ押し上げていた所を緩められ下から打ち上げられた剣は腕ごと背に回る
(今……!)
空いた一刀を脇腹目掛けて切りつけた
ギンッ
「!?」
目を見開いた妖夢
(今の感触……!?)
考えるより先に体が動いた
弾かれたゴーガンダンテスの剣が振り落とされていたのだ
「……速いですね」
切りつけた大地を見ながらゴーガンダンテスは呟く
「……」
切られるより速く距離を離していた妖夢はゴーガンダンテスを見つめていた
(あの鎧……?でもあの鎧にそこまでの防御力は感じられない……)
先程触れた不可思議な感触を考えていた
(いや……それ以前に届いてなかった……)
自らが放った一閃は届いていなかったと体の感覚が教えた
剣を手足の様に扱う妖夢が間合いを間違える筈がない、当たる間合いが僅かに手前だったと感覚が思い出した
(見えない剣?違う……そんな鋭利な感触ではなかった)
攻撃か防御かもわからない謎の感触を思案する妖夢にゴーガンダンテスは切りかかった
「……」
剣の応酬が続く
(今は何も感じない……)
剣撃を交えながらも無視できないそれを探る
「慎重になりましたね、間合いが遠くなりました」
ゴーガンダンテスも気付かれ警戒されていると知る
「良い感覚を持ってます……まぁ拙者が見初めた剣士、これぐらいわかって当然ですか」
妖夢の剣を避けたゴーガンダンテスは抜き胴を放つ
「……ッ!?」
二刀で受けた妖夢は突然前のめりにバランスを崩す
受けた剣を持つ手が放されていた
放された剣が妖夢の刀に押され頭上を1回転する
「ハッ!」
回転した柄を掴むと首目掛け振り落とす
「くっ!?」
上体を起こしながら首を上げる妖夢の目の前を剣が通り過ぎる
「ッグ!?」
蹴りが襲い剣の腹で受けた妖夢は数メートル地を擦る
(これで確かめる!)
構えた妖夢は体と剣に力を込める
「人符「現世斬」!!」
高速で近付き怒涛の斬撃を放った
ギギギギンッ!
「!!?」
斬撃は全て防がれた
上段に構えたまま何もしなかったゴーガンダンテスに
ザンッ!
「あぐうっ!?」
切られた
「……くああっ!!」
剣を振るい飛び下がる
「くっ……ツウッ!?」
左肩を押さえる
切られた肩から血が滲んでいた
「咄嗟に体を引きあの状態から致命を避けるとは……流石!」
切った本人のゴーガンダンテスが嬉しく笑う
(切られはしましたが……謎は解けました……)
痛みに耐えながらゴーガンダンテスを見つめる
(障壁……攻撃が当たる瞬間に出現し防ぐ防御障壁)
妖夢は肩の傷と引き換えに謎の感覚の正体を知った
(あの視線……気付きましたね)
ゴーガンダンテスも気付かれた事を悟る
(知った所でどうにもなりません!拙者の絶対防御はね!)
妖夢の斬撃を防いだ障壁はゴーガンダンテスの幻魔の力を使って作り出した防御の壁、絶対防御と自ら謳う通り恐ろしい防御力を秘めている、妖夢の斬撃を容易く防げる程の
「……貴方は!」
妖夢は目線を下げ問う
「貴様は!」
怒りを露に
「それでも剣士なんですか!!」
ふざけるなと
「……仰る意味がわかりませんが?」
突然の妖夢の怒りにゴーガンダンテスが不思議に問い返す
「剣士なのかと聞いてるんです!」
妖夢は激情を抑えられない
「そんな物に頼って!剣士だなんてふざけるな!」
今は見えない障壁を指して叫ぶ
「剣士とは己の剣に魂を乗せ!剣に全てを懸け!剣のみで戦う者を剣士と言うんです!」
妖夢は許せなかった、剣士と名乗るゴーガンダンテスの絶対防御に
戦闘を剣でこなす者が剣士、攻撃も防御も、なのに防御を障壁に任せ攻撃のみの剣技
それで剣士を名乗るのだ
それが妖夢は許せなかったのだ
「貴様の様な者は剣士ではない!卑怯者と言うんです!」
嫌悪の目で睨みつける
「……これが拙者の剣術です魂魄妖夢」
ゴーガンダンテスが答える
「それは剣術じゃない!」
「……剣術です」
怒鳴る妖夢に冷静に返すゴーガンダンテス
「……見解の相違ですね、貴方には拙者の剣術が卑怯に見えるのでしょうがこれは剣術です!拙者の!」
これ以上の論争は無意味だと結論を出したゴーガンダンテス
「違う!」
それでも妖夢は否定する
剣士を侮辱されていると感じるから
「……我が名は妖夢!魂魄妖夢!」
決意した妖夢は肩の痛みなど気にせず構え妖力を解放する
「……ではどちらが本物の剣士か決めましょう!」
ゴーガンダンテスも進化した力を体に行き渡らせる
「偽剣を断つ剣……!!」
互いに本物を賭け、信じる剣に意志を込める
博麗神社と人間の里の中間地点
「ギャアアアアッ!?」
魔物の断末魔が響く
「流石ねぇ……頼りになるわぁ」
魔物を両断した男を見て笑顔の幽々子
「契約したからには果たさんとな……」
「ギュア!?」
また迫る魔物を切る
「それにあいつの成長を見るのも楽しみなんでな」
男は疲れも見せず幽々子に迫る魔物を次々と切っていく
「……!」
切った男が何かに反応し動きを止めた
「どうしたの?」
気付いた幽々子が問い掛ける
「……少し用事が出来た、すまんが俺は行く」
「ほえっ!?」
驚く幽々子を前に男は剣を2本構え
「すぐに戻る」
飛び出して行った
「ちょっとぉ!用心棒の約束はどうしたのよ~!」
迫る魔物を倒しながら幽々子は叫んだが男は既に行った後だった
エスタークパレス・主城2階
「ゴア……ァ……!」
呻くバラモスは手に魔力の塊を作る
「イオ……ナ……ズン!!」
それを妹紅へ投げつける
着弾した魔球が弾け大爆発を起こす
「ッラア!」
炎を纏い爆風を突き抜けた妹紅が殴りかかる
「グゴアッ!?」
防ごうとした腕を貫かれ怯む
「うっ……!?」
妹紅は突如感じた異臭に鼻を押さえ千切れた腕を見る
(腐ってる……)
異臭は千切れた腕から、更に妹紅の炎により焼かれた為に凄まじい異臭を放っている
「カカ……ゴォオオ……」
痛がっている様なバラモスを見ながら顔が歪む
(多分バラモスも無理矢理甦らされたに違いない……でもそれにしたって……腐ったままでなんて……)
縛られる前のバラモスを見ていたからか
「……」
妹紅は攻撃する意思がもう無かった
「……悔しいよな」
小さく呟いた
「カアアアアアッ……!!」
口から吐いた灼熱の炎が襲う
「……」
自らの炎で払った妹紅は佇む
「なぁバラモス……」
聞こえているかわからないが話掛けた
「ガゥ……ゴォオウ!!」
反応を示さないバラモスが襲い掛かる
「バラモス!」
避けながら語り掛ける
「お前はそれでいいのか!」
撃たれたメラゾーマを受け止める
「あんな奴に操られたままで!」
メラゾーマを打ち消した妹紅に迫る腕
「ぐっ!?」
防いだまま叫び続ける
「お前が慕うのはあんな奴じゃないんだろ!」
腕を弾いた妹紅はバラモスの顔に飛び
「なら……負けるなよ!!」
叫んだ
エスタークなんかに負けるなと
「カ……ゴォ……オ……」
バラモスの動きが止まる
「オオオオオッ!!」
咆哮すると妹紅に鉄槌を食らわせ叩きつける
「ガッ!?」
叩きつけられた妹紅は顔を上げる
(ダメか……)
止まらない攻撃に失敗を感じる
「カゴォオオオオッ!!」
口を広げ妹紅にバラモスは食いつこうとする
(やるしか……ないのか……)
もはや倒すしかないと思った妹紅は炎を纏う
ピタッ……
妹紅を目前にバラモスの動きが止まった
「ガガ……ゴ……アァ……」
体が痙攣し呻き声を上げ始める
「わ……我は……バラモス……!!」
更に痙攣を強くさせながらゆっくりと妹紅から離れる
「我が……主……は……!!」
バラモスの体から黒い力が漏れ始め目の色が戻ってくる
「大魔王……ゾーマ様……のみ!!」
同時にエスタークの力をはね除けた
「なにッ!?」
支配から脱した事に驚いたエスタークが映像を注視する
(魔に属する者に私の能力は効きにくい……ですが大魔王の力で強化された私の能力に抗える筈が……)
それは無いと思っていた事が起きたから
(……魔王の誇り?忠誠を誓った者以外に操られるのは誇りが許さないとでも?それに藤原妹紅の叫びが引き金に破ったと?)
考えるも答えは出ない、答えてくれる者はいないから
(まぁいい……私の思い通りにならないのなら……)
エスタークは力を飛ばした
「バラモス……」
打ち勝てたのだと感じた妹紅は傍に来た慧音達と共に確認の意味で名を呼ぶ
「……迷惑を掛けたな不死人よ」
バラモスは返した、支配は完全に解けていた
「気にするなよ、私はただお前が不憫に思っただけさ……」
妹紅はバラモスの境遇に同情していた
無理矢理甦らされた、それも完全ではなく腐った体で
更には協力の強制、忠誠を誓う主が居るにも関わらずそれを強制させられるバラモスを不憫に思ったのだ
「お前だけ……ってのもあるんだけどな」
エスタークの配下は他に居る、その配下も支配されているかもしれない
でも本当に支配されているのかはわからない
見ていないのもあるが明確に拒絶していたのを見たのはバラモスだけだった、それも理由の1つでもあった
「不死人よ……名を教えて貰えるか?」
支配から脱するきっかけになったからか、それとも己に同情してくれたからか
無意味と知りつつも名を聞いた
「藤原妹紅だよ」
妹紅は笑って答えた、この先に起こる事をなるべく考えない様にして
「私も1つ教えてくれないか?」
「……何だ?」
「さっき……大魔王って言ってたよな?」
妹紅が聞きたかったのは支配を破る直前にバラモスが言った大魔王ゾーマの事
「知りたいのならば教えてやろう」
バラモスは少し誇らしげに話し出す
「我が主……大魔王ゾーマ様は偉大な御方、その偉大なる力でアレフガルドを征服した王の中の王……絶望をすすり、憎しみを食らい、悲しみの涙で喉を潤す……我ら魔族の絶対の王だ」
「……そうか」
想像通りだな、と苦笑する妹紅
「フッ……お前達の認識で言えば悪、だが我らにとってはそれが正義、そこを議論する気は無い……それよりも藤原妹紅」
バラモスは問う
「その口振り……お前も知っているのか?我が主とは別の大魔王を?」
妹紅が大魔王なる者を知っているのかを
「知ってる、私の知る大魔王はバーンって言うんだ」
「……どんな者か教えて貰えるか?そのバーンなる大魔王の事を」
聞かれた妹紅はまるで子どもの様に話し出す
「強い!とにかく強い!私なんかよりずっと!それでいて友達想いなんだよ!凄いだろ!……そりゃ昔はお前の大魔王と似た様な事してたらしいけどさ……」
それでも胸を張って言える
「私の……友達なんだ!」
その大魔王は友なんだと
「今はもう……居ないんだけどな……」
儚げに苦笑する妹紅に
「そうか……」
顔を上げるバラモス
「魔族の王が友とは……にわかには信じられんが……」
顔を下げ妹紅を見る
「お前が言うなら嘘ではないのだろう……大魔王が友……我が成すには畏れ多き難題よ……」
「そりゃそうさ、私だって凄く苦労したんだぞ?」
はにかむ妹紅
「そうか……フッフッフ……」
「そうさ……アハハ……」
何故か可笑しくて二人は笑った
「……行くがいい藤原妹紅」
バラモスが道を空ける
「決して振り向いてはならん……倒すべき敵だけを見据えよ、わかったな?」
「わかった……ありがとうバラモス」
先へ進み始めた妹紅達
「……来たかエスターク」
見送るバラモスに声が届いた
『使えない駒に用はありません……消えなさいバラモス……』
バァン!……グチャ!ビチャ……!バチャ……
バラモスの体は弾けた
能力を使い甦らせたバラモスを死に戻したのだ
「……これでいい……」
顔だけになり床に倒れるバラモスは呟く
(無様に操られたまま死ぬよりは……)
ゆっくりと来る死を受け入れる
(ただ……最期をエスタークに飾られるのだけが気に入らんがな……)
少し、ほんの少しだけの無念を感じ目を閉じた
「バラモス!!」
声がすぐ傍で聞こえた
「藤原妹紅……何故戻ってきた?」
目を開けたバラモスの前に居たのは妹紅
「悪い……なんでかわからないけど戻ってた」
妹紅も何故戻ってきたのかわからない、だけど戻らないといけない気がして戻ってきた
「……ならついでに頼まれてくれ藤原妹紅」
そんな妹紅を察したバラモスが頼みでた
「止めを刺してくれ」
自らの死を願う事を
「お前の手で再び永遠の眠りを与えてくれ……エスタークではなくお前の手で……かつて勇者アレルとアルスがそうした様に……」
そう言うと再び目を閉じた
「……わかった」
了承した妹紅は力を高め炎を最大にする
「これで送ってやるよ……これが私が出来るせめてもの手向け……」
炎が翼に形を作り、妹紅は飛び上がった
「不死「火の鳥-鳳翼天翔-」!!」
不死鳥に形を成した妹紅はバラモスを包み、焼いた
出来るだけ苦しまない様に……
「おぉ……」
焼けていくバラモスが微笑んだ
(なんと優しき炎……そして……そうか……)
妹紅の優しさに
熱ではなく心に
そして
(お前が友と呼ぶ王は不死鳥の如き者か……)
炎に宿る想いを
(会えると……いや、再び会える筈だ藤原妹紅……)
燃え尽きる寸前、バラモスは最後に妹紅へ話した
(その者が不死鳥ならば……)
バラモスは焼き消えた
「……」
舞い上がる灰を見る妹紅
(じゃあな……バラモス……)
親交を深めた知人に別れを告げると振り向かず走って行った
「こんな結果になるとは……」
進む妹紅を見るエスタークの表情は不満気
(バラモスに削らせるつもりがほぼ無傷……)
この結果はエスタークにとって不本意
倒せないまでも消耗を狙っていたのに結果は軽傷、流石にこれは予想外
(因縁がそうさせるのか……藤原妹紅が幻想郷に残らず、神殿にも行かずにパレスに来たのも……罠に掛からず一番に主城に来たのも……バラモスが支配を破ったのも……)
結果がそう感じさせる
(いや、運命か……)
懐から御守りを取りだし眺める
『殺せ……』
「ッウ!?」
聞こえた声に頭を押さえる
「……わかっていますよ」
一言呟き、御守りを戻すとスキマを開いたエスタークは中へ入って行った……
対決編、まずは美鈴、幽香、妖夢、妹紅の4人、そして妹紅の決着!
もこたんの早期決着は予想外かもしれません、この終わりは一応意味はあります、多分……
書いてて一番楽しかったのは実は美鈴、動きを想像しながら書く肉弾戦は楽しいです、妖夢は剣なんで殺傷能力の高さ故に難しい……
そういえばふと思ったのが今作のみんな殺すやら過激な発言が前作より目立ちますね、うーん……映画みたいな扱いなんでちょっとアダルトな表現だと思ってください。
次回も頑張ります!