エスタークパレス左翼内
「ハァ……グ……ウウ……ハァ……」
息が荒いフレイザード、体を刻まれている
「今のはバギクロス、風の呪文よ」
苦しむフレイザードを横目にレティに話すパチュリー
「次は……」
両手に魔力を溜めると手から高熱のエネルギーがアーチを描きパチュリーの頭上に架かり
「ベギラゴン!」
指を独特の型に合わせると高熱のエネルギーがビームの様に撃たれフレイザードを襲った
「ウオオッ!?」
ビームに飲み込まれたフレイザード、右半身の氷の体が溶け始める
「メラ……ゾーマァ!!」
左手から放ったメラゾーマを防御壁にして辛くも脱出する
「ヌグググ……!?」
パチュリーを睨みながら溶かされた半身を再生させる
「良い教材ね、助かるわ……ちゃんと見てるレティ?」
フレイザードの耐久力に関心しながらレティへ問う
「み、見てます……」
そんなパチュリーを見ていたレティは驚きで唖然としていた
(あのモンスターは決して弱くないのに……私じゃ勝てなかった、なのに先生は当たり前の様に優勢……やっぱり凄い……)
頂点の力は凄まじく、フレイザードを寄せ付けていなかった
(なんて強さだコノヤロウ……エスターク様から更に進化の力を貰ってるのにそれでもこいつは尚もオレの上に……)
フレイザードも焦っていた
相手になっていない事に
既に新たに授かった進化の力を使っても尚……
「ではレティ……次はいよいよ深淵を見せてあげる」
パチュリーは両手に魔力を集める
「今からするのは融合ではなく……合体……!」
説明をしながら両の手に異なる属性の魔力が生まれる
「右手にベギラゴン……左手にメラゾーマ……」
熱と炎の魔力
「閃熱大炎……」
それを手を合わせ新しき魔法を構築する
「メゾラゴン!!」
両手から放たれたのは広範囲の熱火炎
メラゾーマの威力にベギラゴンの範囲を組み合わせた深淵の熱炎魔法
「なんだとぉぉぉぉ!!?」
逃げ場の無い超火炎に身構えていたフレイザードは逃げれず炎に飲まれる
「ぐああああっ!?」
飲まれたフレイザードの右半身を一気に溶かし始め炎の左半身すら焼き始める
「これは深淵の中でも比較的簡単な部類よ、わかってると思うけどそれでも深淵には変わりない、センスと努力が途方なく要るわ」
レティへ向いたパチュリーは微笑む、感想を聞く様に
「……凄い」
レティはそれしか口に出なかった
あまりにも凄過ぎるレベルに、魔力に、技量に
魔の深淵に挑み続けていたパチュリーの強さ
それは賢者にしか成せない、しかもその賢者の中でも限られた者にしか出来ない合体魔法すら成していた
それは同時に力量を高め、同時に格を上げる事に繋がる
(そうだった……魔理沙さんが亡くなった後、二天ではなくなった先生は一時だけ別の異名で呼ばれていたんだった……)
レティは思い出す、パチュリーが僅かな一時だけ呼ばれていた異名を
(先生が魔理沙さんとの絆を大事にしたいって呼ばれるのを拒否してからは呼ばれなくなったけど……)
亡くなった魔理沙の為に呼ばれなくなった異名
(賢き者と書いて賢者、その中でも抜きん出た力を持つ至高の賢者……魔理沙さんの大魔導士と対になる様にと呼ばれた異名……)
幻想郷の皆が呼んだ名
(賢王……!!)
パチュリーが一時だけ呼ばれていた異名
賢き者である賢者の中でも更に賢く、強い賢者に相応しいと幻想郷が呼んだ賢者を格上げた異名
賢者の王……賢王!
(ヤベェヤベェヤベェ!?このままじゃ死んじまう!?)
焼かれるフレイザードは決意する
(死ぬよりかマシだ!)
体に力を込めて叫ぶ
「弾岩爆花散!!」
体を構成する岩を弾けさせメゾラゴンから辛くも脱出する
「……」
それを見ていたパチュリー
(あの胸飾りだけ……ふむ……)
驕る事の無い目はしっかりと捉えていた
「ハァ……ハァ……」
集まり体を再構築したフレイザード
(オレの最終闘法を使って……脱出がやっとだと……チクショウがぁ!)
怒りが溜まりパチュリーを睨み付ける
(こうなりゃ使うしかねぇ……メドローアを使わせて消し飛ばすつもりだったがそこまで行けねぇんじゃあしょうがねぇ!)
秘策の使用を決めたフレイザードにパチュリーの声が聞こえる
「……次も深淵を見せてあげる」
(しめた!次も強力な魔法ならあの調子に乗った魔女に一泡吹かせてやれる!)
内心策士面のフレイザードはすぐ行動に出る
「ぐっ……クソォ!!」
演技を
「次は深淵の雷……まだ手軽な方なジゴスパークより詠唱に時間が取られるけど威力は折り紙つき……」
詠唱は開始された
「天候満る所に我は在り……」
同時にフレイザードの周囲に魔法陣の檻が展開される
「黄泉の門開く所に汝在り、出でよ……神の雷……!」
頭上に一際大きく展開されている魔法陣に魔力が溜まる
(おおスゲェスゲェ……)
焦燥の表情を作るフレイザードは内心ほくそ笑んだ
(マヌケは自分が嵌められてる事にも気付きやし
ねぇ!)
撃たれる刹那、フレイザードは笑った
だが見ていなかった
嵌めたと確信していたから見ていなかった
「インディグネイション!!」
深淵の呪文を撃った直後に
間抜けはそっち……
パチュリーの口元だけが笑っていたのを……
ズガァ!
深淵の雷が落ちる
轟音を上げ、落ちた雷は見た目の派手さも相まり凄まじい威力を持つと思われた
「なんだこれはぁぁぁぁ!?」
フレイザードが叫んだ
バチィ!
同時にパチュリーを雷が襲う
「何って……深淵の魔法よ」
雷を軽く防いだパチュリーが言った
「一般レベルの魔法使いが使うメラくらいの魔力のだけどね……間抜けな大根役者さん?」
フレイザードの胸を指差し告げる
「嵌めやがったなパチュリー・ノーレッジ!?」
胸に着いている鏡を押さえながらフレイザードは怒る
球体は開かれており、中には盾にも似た鏡が隠されていた
「シャハルの鏡……」
それは霖之助の遺産、シャハルの鏡
フレイザードはパチュリーの魔法を反射させ大ダメージを与えようとしていたのだ
だがパチュリーは宙に浮かぶ自分の魔法にも破壊されない強固な球体に違和感を覚え悟られない様に講義を再開した
そして魔法を止めようともせず焦るだけのフレイザードに芝居を感じ確かめる為にあえて乗り、見事企みを潰したのだ
「クソガァ……!!」
逆に嵌められた事が腹立たしいフレイザードだったが
「だが!!意味はわかるだろぉ?オレがシャハルの鏡を持っている意味がぁ!」
それを自分が持つ意味に喜ぶ
「……そうね」
平静に返すパチュリー
(可能性の1つとして考えていたけど……よりによって最悪の方なんてね……)
しかし内心は苦く曇っていた
それはフレイザードの持つシャハルの鏡が原因だった
「もうお前の魔法は効かねぇ!何でも撃って来やがれ!全部跳ね返してやらぁ!ヒャハハハ!!」
愉悦のフレイザードが構える
「先生!!」
魔法が封じられたパチュリーが心配でレティが叫ぶ
意味はおそらく逃げよう、だろう
「……大丈夫よ」
一言そう言うと
「勝つから……」
パチュリーも構える
(逃げるなんて格好悪い所……見せられないもの……)
絶対に負けられない戦いなのに加え師である面子も相まり逃げる事は無いと決めたパチュリーは最悪の相性の敵へ挑む
エスターク神殿・王の間
ズバアッ!
ロビンのサーベルがデスタムーアを切る
ドゴォ!
デスタムーアの肩を怒らせた突進がロビンを打ちのめす
2体の魔物は激しくぶつかり合っていた
「イケー!デスタムーア!」
応援するカメハ
「……」
ぶつかる2体を見ながら無言のにとり
(まさかロビンと互角とはね……大した魔物をこさえたもんだよ本当に……)
デスタムーアを必死に応援するカメハへ視線を向ける
(邪配合……思い出したよ、役立たずが昔教えてくれたんだった……私が消えた後に精霊に連れてこられて有名になったマスターが闇に囚われて編み出した邪法……)
にとりは邪配合について知っていた、今まで思い出せなかったのはもうそこに用は無かったからだった
(堕ちちゃったんだねクソガキ……楽で簡単な邪の道へ……モンスターマスターの本質も忘れて……)
邪法に歓喜するカメハが酷く哀れに見えた
(なんとか出来ないもんかな……)
どうにか出来ないかと思案するにとりにある者が見えた
(マルタの精霊……あの精霊居たのか……)
カメハの後方で佇むワルぼうと呼ばれる精霊が居た
にとりはワルぼうをよく観察する
(……アレ?あの精霊……)
気付いたにとりが戦うロビンに命令を下す
「ロビン、戦いながらで悪いけどあの精霊が状態異常起こしてないか見て」
命令を受けたロビンはデスタムーアを押さえつつワルぼうを見て調べた
「……やっぱり」
手元の端末に来たメッセージににとりはまたワルぼうへ視線を向ける
(洗脳されてる……特に何かをしてる訳じゃないから口封じが目的だろうね、エスタークの仲間なんて止めるだろうし……って事はあのクソガキは洗脳じゃなくて騙されてるのか、モンスターマスターの力を最大に発揮出来る様に……)
少し二人を見ると気取られない様にステルスを使い身を隠す
「クッソー!まだ勝てないのか!!」
隠れたにとりに気付かないカメハは一人叫ぶ
(これ以上次に行くのは危ない……でも……!でも!)
互角な事が納得いかないカメハ、マスターの力がこれ以上は危険だと予感させるが
(オレは勝ちたいんだ!!)
にとりに勝ちたい欲求が止めさせなかった
「ダークマター!」
新たにモンスターを呼び出し
「吸収しろデスタムーア!」
邪配合で先へ進む様に命令した
「オオ……オオオオオッ!!」
ダークマターを吸収したデスタムーアは咆哮し体を崩壊させ、残った顔と両手を変化させ始める
「!?」
見えないにとりが意味を悟り目を見開き驚く
(バカ!これ以上進んだら戻れなく……!?)
邪法の魅力に囚われだと、もう引き戻せない深みへ進んで行ったのだと
「勝つ……!勝つんだ……!!」
(違う……あいつは私に勝ちたいから……勝ちたいから先へ……)
同時に勝利を渇望する心をカメハに見た
(ならまだ……)
それに可能性を見たにとりはロビンに命令を下す
「私が終わるまで負けちゃ許さないからな」
「……ギッ!」
コクリと頷くロビンは変化が完了する間際のデスタムーアに構える
「グギギ……ギアアアアアッ!!」
残った顔と腕が肥大化し、デスタムーアは成った
巨顔と両手の最終形態に
「やれ!デスタムー……」
ゴオオッ!!
カメハが命令を下すより先にデスタムーアはロビンに攻撃していた
「……!?」
掴み掛かって来た右手を受け止めたロビンだが余りの力に弾かれる
「ギッ!?」
弾かれよろけたロビンを左手が殴り飛ばす
「カァァッ!!」
飛ぶロビンに凍てつく冷気の追撃
「ギ……ギギ……!!」
冷気と共に壁に衝突したロビンは身を凍らす氷を砕きながら立ち上がる
最強のキラーマシンが戦うは大魔王デスタムーア
起源より強いマシンと元より弱い大魔王
(頼むロビン……我慢してよ……)
にとりの願いの中、絆の機械は偽の王へ挑む
エスタークパレス・尾翼内
ヒュパ
鋼線が舞う
ヒュンヒュン
幾多も舞う
ズバアッ!
肌を切り裂く
「まだまだー!」
だが倒せない
(なんという体の強度だ!?)
攻撃し続けるウォルターは驚きながらも平静に攻撃を続ける
「うりゃあー!」
弱る気配が無いフランに
(レミリア・スカーレットより強いのは知っていたが……身体能力だけなら奴よりも遥かに上……)
鋼線は幾度もフランを攻撃した
だが並みの吸血鬼なら容易く切断出来るウォルターの鋼線、更に進化し、封印すら解いた力でさえフランの肉体を切断する事は出来ず裂くに留まっていた
「うぎぎぎぎぃ……!!」
裂いた傷はすぐに治る
高い防御力に再生能力、確かに厄介だが有限はある筈だ、限界が来るまで攻撃し続ければいつかは勝てる
しかしウォルターにはそれが出来ない理由があった
「りゃあ!」
巻き付いた鋼線を魔力を放出し体から離す
「それ!」
空いた隙間を文より速いスピードで抜け殴り掛かる
ドガァ!
避けられたフランは柱へ衝突し止まる
「……このッ!」
すぐさまフランは振り向き右手を構えて目を作り出す
ヒュパッ!
右手に鋼線が瞬時に巻き付く
「それだけはさせん!」
グローブを力強く握り、引っ張りながらウォルターは告げる
「……やっぱりこれだけは無理かぁ」
特に指に強く巻き付けられて動かせない手を見ながらフランは能力の使用を諦める
ギシッ……
ウォルターの体が突如軋む
(持たん!体が……!もうか!?)
体の不調
(否!!納得したはずだ!納得して解いた筈だ!納得してこのざまになったはずだ!!)
焦燥を押し殺し、気取られない様に無表情で鋼線を戻す
吸血鬼化の代償
ウォルターに封印されていたのは生前、息絶える僅か前に得た吸血鬼の力
吸血鬼の力は当時老齢だったウォルターを若返らせ、力こそ得たが不完全で急な施術だった為にウォルターを死に向かわせる
それをエスタークは封じていたのだがウォルター本人の希望で解いた
(だめだ!まだだめだ!まだ死ねん!!まだだ!まだフランドールを倒していない!!)
軋む体を動かすのは意志
(アーカード……!!)
倒したかった相手と強さの種類は違うが同じ種族
宿敵と決めた者にフランが重なっているのかただ倒す為に常人なら狂う痛みを押さえて攻撃し続ける
完全な私怨のままに……
ドッ!
痛みに一瞬鈍ったのを見逃さなかったフランが鋼線を抜け顔を殴り飛ばす
「……ねぇお兄さん?」
壁に叩きつけられたウォルターに向かいゆっくりと歩いていく
「いや……ウォルター」
いつもの高い声ではなかった
「どうした?立てよ……一発殴られてハイお終いって訳にはいかないんだよ小僧……」
「!?」
それにウォルターの目が見開かれる
「ろくでもない外法で吸血鬼になんぞなってしまうから再生にも回復にもおっつかなくて体を磨り潰している、さあて……どうなるのかな?もうその姿を保ってもいられんのだろう?……全盛の頃にはな!!」
それはフランの口調ではなく雰囲気も違う、まるで別人
「じゃあどうなる?元のジィさんかな?いや、それとも……」
同時にウォルターが酷く苦しむ
「ガキに戻る」
様子の変わったフランの前でウォルターの容姿が変わっていた
20代だった外見が10代相応の顔になっていた
「フランドォォォォォル!!」
憎悪の叫びが部屋に響く
「貴様……何のつもりだ、何のつもりだ!それは!!」
若返ったウォルターが怒り露に怒鳴る
「何故貴様がアーカードを真似る……いや、真似れる!!」
それは生前に宿敵に言われた事と同じだったから……
「答えろ!!」
「……知りたいかウォルター?」
変わったままフランは話し出す
「お前の血だウォルター……」
「私の……血?」
「そう……お前の血だ、お前の血を飲んで私はお前の過去をしった」
それを聞いたウォルターが怒鳴る
「嘘を言うな!!いつ摂取した!?貴様に私は血を吸われてなどいない!」
対峙してから一目も離していない、血を飲む間など無かった、それ以前に攻撃は今の殴られたのを除けば避け続けていたから攻撃は受けていない
「ところが私は血を得る機会があったんだよ……わかるかウォルター?」
「機会だと!そんな機会は無かった筈だ!」
「がなるな喧しい……有ったんだよ小僧、お前が紅魔館に来た時だ」
(紅魔館……まさか!?)
「気付いた様だな……そうだ、レミリアだよ」
気付いたウォルターにフランは悪どく笑った
「お前達が紅魔館を攻めたあの日……お前はレミリアに敗北し血を飲まれかけたんだろう?その時レミリアの能力に触れた血が床に落ちていたんだよ、それを飲んだらお前のだったってだけの話だ」
「レミリア・スカーレットの能力?」
「……我が姉の能力は運命を操る程度の能力、全てを扱いきれている訳ではないが大雑把な未来や過去を見れるのはその一端だ」
「……貴様が私の血を得たのはわかった、だが能力者本人ではない貴様が何故知れた?」
「それは私達が姉妹だからだ、私の能力も今にして思えば運命に関係するもの、だから姉の能力を読み取れた……言い換えれば「運命を決める程度の能力」と言った所か」
フランの持つ、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力
それは見方を変えれば物の運命を決める事に他ならない
破壊……つまり死への運命決定
その運命の力を持つ姉妹だからこそフランはレミリアの能力に触れた血から過去を読み取れたのだ
「……アーカードを真似たのはどうしてだ?当て付けか?」
過去を知ったとしても自分とフランには関係無いしわざわざ宿敵を真似る必要は無い、それをわざわざしたフランの真意を知りたかった
「違うよお兄さん……」
口調の戻ったフラン
「お兄さん強いもん……だからお兄さんの中にとっても強く有った想いを使って隙を作ろうと思ったの」
「……やらしい餓鬼め」
一瞬だけ微笑んだウォルターは立ち上がりグローブを構える
「ではもう少し児戯に付き合ってくれよ?」
鋼線を周囲に滞空させながら問うた
「良いよ!」
フランは了承した
一刻も早くエスタークに向かわなければならないのに付き合う理由
(妹紅とパチュリーが居るもん!大丈夫!)
罠に掛からなかった二人が居るから
二人が居るからフランは安心してエスタークは任せてウォルターに付き合う
「お兄さんの落ちた攻撃力とあたしの防御力と再生能力を考えると……」
少し考えた後
「一万回くらいかな?」
攻撃回数を、それぐらいしなければ殺せないぞと
そしてそれ言った後フランの雰囲気がまた変わる
「気張れよ……あとたった一万回くらいだ!」
宿敵を真似て告げる
「言った筈だぞフランドール……くたばるまで殺してやると!」
二人の児戯は再開された
終わりを感じながら……
エスターク神殿・分岐の間
「ドラゴン……?」
チルノは大妖精に問う
「って何?妖怪でしょあれ?」
知らないから、知らないから2頭の竜を妖怪だと思っていた
「えーと……ドラゴンって言うのは妖怪じゃなくて、蛇の体と、鳥の翼と魚の鱗を持ってる伝説上の生き物だよ」
「……?妖怪でしょ?」
「広義で言ったら確かに妖怪とも言えるけど……もぉいいや、チルノちゃんには難しいだろうし」
理解を諦めた大妖精はとりあえずわかりやすい事だけ伝える
「とにかくチルノちゃん!ドラゴンはね!」
「ヴォォォォォオッ!!」
2頭の竜がブレスを吐いた
氷と風のブレスを
「とっても強いんだよ!」
向けられた風のブレスを同じく風のバリアで防いだ大妖精
「へー強いんだ、ふーん……」
氷のブレスを受けて涼しげなチルノ
「じゃ倒すよ大ちゃん!」
「うん!」
二人の妖精は竜を前に飛んだ
無縁塚
「そらぁ!」
一足に飛び掛かり萃香は妖力を込めてミストに殴り掛かる
「……」
無言のままに軽く体を逸らし避ける
「らぁ!」
地にクレーターを作り出した萃香がすぐさまミストに向かう
「……」
また避ける
「……」
大振りの拳を避け、萃香の背に伸ばした指で攻撃する
バキキッ……メキッ……メキッ……
背を向けたまま掴まれた指が握り潰され折られた
「なんだいこりゃ?ヤル気あんのかいミスト?」
拍子抜けする攻撃に指を放した萃香が問う
「……」
答えないミストは暗黒闘気を更に高める
ミストを中心に暗黒闘気が網の様に張り巡らされる
「闘魔滅砕陣!!」
萃香まで張った暗黒闘気の網に力を伝わらせる
絡め取った獲物を逃がさず捻り切る為に
「……チッ」
萃香がイラついた様に舌を打つ
「トロくさい事やってんじゃないよ!」
大地を踏み鳴らし妖力を拡散させる
「!?」
暗黒闘気は弾け消える
「本気で来な!その程度で霧の名を取り返そうなんざ一万と二千年早いんだよ!」
飛び掛かった萃香の拳がミストを打った
スゥゥ……
当たりはしなかった、当たる直前にミストが霧になり避けられた
「……!!」
萃香も霧になりミストを追いかける
ズガガガガガガガ……!!
何も見えない無縁塚に音だけが響く
その身の密度を下げた二人の数百、数千万の霧が無縁塚でぶつかっていた
「今のはまぁまぁさね、まっ霧の名を奪うつもりなんだからこれぐらいは出来て当然かねぇ」
萃まった萃香が得意に鼻を鳴らす
「まだまだ話にならないけどね!」
萃香にしか見えない相手に告げる
「……」
離れた場所に姿を現したミスト
「ならば見せてやろう伊吹萃香……」
その手が闇の衣に掛けられる
「私の……真の姿を!」
ミストが衣を脱ぎ去る
いや、脱ぎ去ると言うよりは霧散させた
「!!?」
その姿に萃香は止まった
止まらざるを得なかった
「その顔は……」
衣を消したミストの姿に見覚えがあったから
萃香が決して忘れられない者
「バーン……」
仲間の顔
服装こそ違うが間違いなくバーンの顔
幻想の彼方に消えた仲間の顔
「バーン……?この顔がか?」
萃香の反応と言葉がミストに問わせる
「……本当か?」
僅かに戸惑いながら
「……そうさ」
複雑な表情の萃香は肯定する
「それはバーンの姿さ……」
悲しくて
「……私は暗黒闘気の集合体、暗黒闘気の密度を操り凝固や霧になる事が出来る、エスターク……様に仕えた時から私はこの姿だ」
バーンを知らない自分がバーンを象るなどありえないと言う
だがそれは本当
エスタークはミストを甦らせた時に記憶を弄った
ミストの中のバーンを自分に書き換えて
だからミストは知らない
「……消えなかったんだろうさ、バーンへの想いが……」
そんな事知る筈も無い萃香だがおおよそ予想はついていた
洗脳や記憶消去、そんな所だろうと
暗黒闘気の密度を操るのも甦らされた時に目覚めた力だったがエスタークが何かをしたんだろうと
そしてミストがバーンの姿を象るのはいくら洗脳や消去を行おうと消えない想いがあったのだと
不変の忠誠心の表れなんだろうと
「バーン……」
ミストが名を呟く
「エスターク……様……」
二人の名を
「バー……ン……エスター……ク……様……」
震える声で
「……ミスト?」
萃香が尋ねるもミストは呟き続ける
「バーン……エスターク……バーンエスタークバーンエスターク……バーンバーンエスタークエスターク……!」
一瞬強くなった瞬間
(バーン……様……)
「アアアアアアアアアアアッ!!」
ミストの叫びが無縁塚に木霊する
「ッ!?」
慟哭にも似た叫びに萃香が怯んだ後
ズッ……ズズズ……ズオッ!
ミストから凄まじい暗黒闘気が吹き出した
「グゥ……アア……ウオアアア……」
かざされた右手に全て収束していく
全ての暗黒闘気が集まった右手は暗黒の輝きを放っていた
「闘魔……最終掌……!!」
苦しみを見せながら萃香を閉じた目で睨みつける
「……」
萃香も開かれていないその目を真っ直ぐ見つめる
「……わかった」
妖力を上げていく
「萃め……萃め……更に……更に……萃める……」
同じく右手に力を萃める
「夢……幻……百鬼を一に……一鬼に萃める……!」
己の持てる全てを
妖術、呪術、持てる限りを萃め、密度を上げる
「鬼神「萃霧想」!!」
右手が消えていた
萃めた力の密度を上げたせいで手が見えない程になっていた
まるで手だけ濃霧に覆われている様
「……」
「……」
暗黒の輝きを見せるミスト、濃霧により見えない萃香
「行くぞ……!」
「行くよ……!」
ミストはかざし、萃香は振りかぶり
その手をぶつけ合った
「「アアアアアアアアアッ!!」」
咆哮と共に手を伸ばす
バチィ!!
ミストの手が萃香の手を弾いた
「ッグアアッ!!?」
ミストの手が胸に当たり凄まじい圧に体を破壊され血を吐く
「終わりだ、伊吹……萃香……!!」
勝利を確信したミストが叫ぶ
グアッ!
萃香の手がミストの顔を掴んだ
「ウグッ!?オオオッ!グアアアアアッ!?」
苦悶の声を上げる
「終わっちゃいないよミスト……」
掌圧を食らいながら萃香は手に力を更に込める
「今から始まるのさ……」
だが顔にダメージは無い
「グ……アアアッ!?ウ……オオオオッ!!」
なのに苦しむ
「……!!」
一瞬ミストは止まった
「伊吹萃香ァァァ!!」
体を霧にし
萃香を包んだ……
博麗神社
「師匠……」
靈夢は震えていた
「師匠……!!」
嬉しくて
もう会えないと思っていた者に会えたのが堪らなく嬉しい
「会いたかったんですよぉ……!!」
涙を浮かべ近付いていく
師が何をしたかも忘れて
「離れるんだ靈夢!」
気絶したてゐを抱き抱えながら霖之助が叫ぶも聞こえていない靈夢は夢中で歩いていく
「靈夢!!」
靈夢が師に触れる
バチッ
霊力が靈夢を弾いた
「え……?」
拒絶された事が信じられないと師を見つめる
「情けない……こんな弱い子になって……貴方を弟子にしたのは間違いだった……」
師は蔑む目で、呆れた様に告げた
「し、師匠……?」
信じられない靈夢は問う
師がそんな事を言う筈がないと
「そんな体たらくで博麗の巫女なんて……偉大な先人達に申し訳が立たないわね」
だが出る言葉は変わらない
「靈夢……貴方……」
決めた師はまるで興味の無くなった玩具を見るように言った
「もう要らない」
不要と
「え……?師……匠?要らない?私……が?」
動転している靈夢に師は近付いていく
「そう……もう苦しむ必要は無いの……」
祓い棒を額に突き立て
「死んで楽になりなさい」
祓い棒に霊力が溜められた
カァン
祓い棒は上へ弾かれ、溜められた霊力は空へ撃たれ魔物を1体倒した
「靈夢!気を戻すんだ!」
霖之助が草薙の剣を構え靈夢の前に立ち塞がっていた
「霖之助さん……」
僅かに気を戻した靈夢だが何を考えれば、何を言えば良いかわからない
「認めたくないのはわかる!でも受け入れるんだ!彼女は君を殺そうとしているんだと!」
「嘘……嘘……ですよね?師匠……」
「まだそんな事を言っているのかい!?気をしっかり持つんだ!おそらくエス……」
まだ戸惑う靈夢に霖之助がエスタークの仕業だと告げようとした時
キンッ
霖之助を結界が覆った
「霖之助さん……少し黙っててください」
結界を張ったのは師
(これは……強い結界だ……それに内から外に声が届かない……)
結界の破り難さと効力を知った霖之助は草薙の剣を使い脱出しようと試みる
「……これは」
破壊出来なかったがある事を知る
(神器の力は通せる……聖気を高めるのは可能な様だ、なら結界の維持も僕がするしかない!)
効力が声の遮断のみと知った霖之助は神器を媒介に聖気を高め、今はそれどころではない靈夢の代わりに結界を維持する
(……彼女がこんな間抜けな真似をする訳ない)
攻めに来たのなら聖気を高める自分を完全に封じるか殺せば良い、なのにそれをしなかった、それに違和感を覚えたのだ
それに師を知っていたから焦り無く結界の維持に集中する事にした
(わかったよ……邪魔はしないしさせないよ)
気の抜けない状況に険しく二人の巫女の行く末を見守る
「さぁ靈夢、死にたいならそのままで居なさい、死にたくなないならかかって来なさい」
「い、嫌です……師匠と戦うなんて……出来ません……!」
拒否する靈夢
「だって師匠を……」
秘めていた想い、ずっと感じていた想い
「お母さんと思ってた人を攻撃出来る訳ない……!!」
靈夢がずっと秘めていた想い
血の繋がりが無い靈夢がいつの間にか感じていた感情
母……
師と慕うと同時に靈夢は師に母を感じていた
歴代の博麗の巫女に血の繋がりはほとんど無い、皆捨て子か親を失った者ばかり
例に漏れず捨て子だった靈夢が師を母の様に思うのは当然だったのかもしれない
「……ふぅ」
それを聞いた師は溜め息を吐いた
「聞き分けの無い子……」
ドドドッ!
弾幕が靈夢を襲った
「イッ……た……やめて……やめてください師匠……!?」
被弾した箇所を押さえながら靈夢は懇願する
「……」
ズドドッ!
「あうっ!?」
また弾幕を浴びせられる
「攻撃しなさい、靈夢……」
ドドッ!
「早く……」
ドッ!
「靈夢!!」
撃たれた大玉の弾幕
「……ッアアッ!!」
靈夢がついに反撃し弾幕を放った
「うー……!くう……ぅ……!!」
弾幕を押し合う
「どうしたの靈夢?その程度?貴方の力はその程度のものに過ぎなかったの?」
靈夢の弾幕が押され始め膝を着く
「足を踏ん張り!気を入れなさい!そんな事では異変どころか操られた私すら倒せないわよ!この馬鹿弟子ッ!」
「~~ッ!?」
「何をしているの!自ら膝を着くなんて勇気を捨てた者のする事よ!!」
一見罵声に聞こえるその言葉
だがその実は鼓舞だった
博麗の巫女の在り方を厳しく教える為の
「立つのよ!立って見せなさい!」
想いを込めて
……プツン
突如、師の中で何かが切れた
「靈……夢……!!」
力が更に増す
「あううっ!?……あ、ああっ……!!?」
靈夢の弾幕を押す勢いが一気に増し、迫る
(時間切れ、間に合わなかった……誰か!)
師は助けを求める
(靈夢を助けて!!)
愛する我が子を救ってくれと
(……霊夢様!!)
靈夢に死の弾幕が当たる……
バシュ!
弾幕は撃ち消された
「危ないから止めてみたけど……どんな状況よこれ……」
消された弾幕のあった場所にその者は居た
紅白の巫女服を来た少女
「き、君は……!?」
霖之助は信じられないものを見る目で見た
「あ……貴方は?」
靈夢が問うと少女は靈夢に向く
「あんたは……巫女見習い?」
靈夢の服装と力に予想した少女が問い返す
「あ、い、いえ、私は当代の博麗の巫女です……」
「あんたが当代?嘘おっしゃい……」
そんな馬鹿なと思った少女はハッとし理解した
「なるほどね、そういう事……」
師を見ながら
「あの……貴方は……」
まだ聞いていない少女の事を聞き直す靈夢
「私も巫女……博麗の巫女よ」
その靈夢に少女は言った
「あんたも博麗の巫女なら知ってるんじゃない?歴代最強なんて言われてた巫女の事?」
「え!?ま、まさか……貴方は!?」
気付いて驚愕する靈夢に少女は名乗った
「私は霊夢!楽園の素敵な巫女よ!!」
幻想郷に向かった2つの光
光の名は博麗霊夢
歴代最強の博麗の巫女
人間の里
「クソッ……もう持たない……」
満身創痍の正邪
「まだまだ居ますよ……」
同じく満身創痍の文
里は窮地だった
守りの要を抑えられた上に青娥、芳香の不在、更には終わりの見えない敵の数
戦況は巻き返され徐々に押され始め
遂には結界を張るさとりの居る箇所まで押されていた
「皆さん!頑張ってください!」
結界に力を使い戦えないさとりが鼓舞するも状況は変わらない
「お前達は終わりなんだよ!諦めろ!」
魔物が告げる
「諦めるか!」
正邪が攻撃をするが消耗し怪我もしていた攻撃に威力は無く、魔界深部の魔物を倒すには至らない
「さっさと死ねぇ!」
魔物が飛び掛かる
(ここまでか……!?)
正邪が死を感じた瞬間……だった!
ズオオオッ!!
ビームが一瞬で結界の周囲の敵を薙ぎ払った
「なっ……!?こ、これは!?」
薙ぎ払ったビームから感じた魔力
(この……魔力は!!)
思い描いたと同時に声が聞こえた
「待たせたぜ!」
そこには白黒の服を来た少女が居た
「お、お前……なんで……どうして……」
正邪は信じられない
死んだ筈だから
「アヤヤ!?ナンデ!?ナンデイキテルンデスカ!?」
文も信じられない
生きてる訳がないから
(そういう事でしたか……助かります閻魔様、八意永琳……)
心を読んださとりは事情を知った
「魔理……!!」
名を呼ぼうとした正邪を少女が止める
「私に会えて泣きそうなのはわかるがまぁ待て、後で話してやるからさ……先にこいつらだろ?」
また現れた魔物に背を向けたまま親指で差す
「なんだお前は?そのナリは魔法使いか?」
問われた少女はにやけながら返した
「魔法使い?違うなぁ……」
魔物からは見えないが確かに笑っている
「そんな貧相なもんと一緒にするなよ……」
顔だけ向け、横目で見ながら
「私は……」
魔理沙は告げた!
「大魔導士……!!」
窮地を救ったのは居る筈のない最後の頂点
魔女の二天
霧雨魔理沙
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驚く程何も無かった
敵も罠も……何も無かった
バラモスを最後の壁にしていたのかその後は何事も無く進めた
「エスタァァァク!!」
地獄の帝王の居る主城の最上階へ
「やはり最初に来たのは貴方でしたか藤原妹紅」
王座に座すエスタークが迎える
「酒も切れたところです……ちょうど良かった」
笑みを浮かべて
「今度こそ終わりだエスターク!お前は私が倒す!」
すぐに臨戦態勢に入った妹紅と柱に隠れる慧音
「まぁ待ちなさい藤原妹紅……」
それをエスタークが止めた
「待てるか!行くぞ!」
飛び出さんとした妹紅の前に何も映っていないモニターが複数現れた
「お友達が気になりませんか?」
「なにっ!?」
止まった妹紅に指を鳴らすとモニターに映像が映される
「!!?……皆ッ!!」
映った映像に顔が歪む
衝撃的な映像に……
「案外……幻想郷の底は浅かったのかもしれませんね」
妹紅の表情に満足気に告げる
「貴方の処刑はお友達の死ぬところを見てからにしましょう……」
映っていたのは仲間達の姿
元気な姿ではなく
倒された姿……
なんかもう……大丈夫なのかコレ?
自分でも良いのが書けたかもわからんです、これヤバイヤツだ……
一応補足的な事を少々
パチュリーの合体魔法は前作ボツ案からです、バーン様にさせようかと思ったんですがイメージ的に合わないと判断してやめて今作でパチュリーに採用となりました、成長がわかりやすいかなと。
カメハのデスタムーアは大魔王なのですが邪配合の性質なのかオリジナルよりかなり弱く、小者感溢れています。
フランのアーカード化は……ヤリタカッタダケーってヤツです。
2頭の巨竜は明言してませんがドラクエⅧの裏ボス、白銀の巨竜と深緑の巨竜です、深緑の巨竜のみ風属性を付加してます。
ミストの力が暗黒闘気の密度を操るのはオリジナルです、霧を扱う様にしたかったのもありますが他人に寄生する事でしか戦えないミストに生身で戦わせたかったのもあります。
魔理沙と霊夢、この二人の復活でどうなるのか……
そしてもこたん遂に帝王へ辿り着く!
次回も頑張ります!