東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第三十一話 生き方

幻想郷に闇が広がる数分前

 

 

人間の里

 

「オラオラオラー!」

 

里の周囲を飛び回り弾幕をバラ撒いている

 

「どうしたどうしたー!」

 

強い魔力を込められた弾は魔物を次々に倒していく

 

外れている弾がいくつもあるがそれでも劣勢を多少返すには充分過ぎた

 

「うわっ!?」

 

飛んできた弾を正邪は間一髪で避ける

 

「止めろ魔理沙ー!!味方まで倒す気かー!!」

 

正確に敵だけを倒さない弾幕に危機感を感じて止める様叫ぶ

 

「悪い!久し振りで楽しくてつい!」

 

正邪と文の元に降りてきた魔理沙は悪戯っぽく笑って見せる

 

「……それで?なんでお前が居るんだよ?それも若返って……まさかエスタークか?」

 

「いんや、エスタークじゃないぜ!地獄でちょっと……あーなんて言うべきか……とにかく私と霊夢は生き返ったんだぜ!」

 

「霊夢もか……つかその訳が知りたいんだよ……」

 

呆れる正邪に声が割って入った

 

「それは私が説明しましょう」

 

現れたのは永琳

 

「永琳さんの仕業ですか?」

 

「私は最後のピースを嵌めただけ、ほとんどの事は閻魔様と死神がやっていたわ……」

 

文の問いに永琳は地獄で何があったかを話し始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻前・地獄

 

映姫と小町が作業を続けている最中だった

 

「やはり死者を連れ去った犯人は貴方方だったのですね……」

 

掛けられた声に振り向く

 

「あれ?早過ぎません?」

 

「確かに……手紙を見てからにしては早過ぎますね」

 

二人に驚きは少なかった

 

「……その様子では私に用があって手紙を出していた様ですね」

 

永琳もすぐに察する

 

「何故ここに?」

 

手紙を見た訳ではない永琳の来訪の理由を尋ねる

 

「死者の行方を追っていました、そこでそこの死神が行った仕事の痕跡を見つけてやって来たのです」

 

「……小町、貴方は少し雑過ぎる……」

 

「す、すいません……」

 

小町に呆れた映姫はすぐに気を直し永琳へ向く

 

「永遠亭に出した手紙は貴方をここに招く手紙でした、擦れ違いでしたが結果は会えたので良しとしましょう」

 

「……私に用とはこの二人についてですか?」

 

永琳は二人の前に展開された術式に横たわる二人の少女に視線を向ける

 

「魔理沙と霊夢をどうするおつもりですか?まさか甦らせるつもりだなど言いませんよね?」

 

「……そのまさかです」

 

「……閻魔がそれを行う意味はお分かりでしょう」

 

永琳の鋭い睨みに映姫は目を閉じる

 

「死者を扱う閻魔がその様な事をすれば既に死んだ者、これから死ぬ者達に同様の権利が発生する事になります」

 

永琳の指摘は死者の扱い

 

死者を統括する閻魔の仕事は魂を天国か地獄に分けるだけ、それ以上の仕事は存在しない

 

その閻魔が死者を生き返らせるなど本来の責務から逸脱した行為

 

そんな事が出来るなら今までの死者もこれからの死者全てに生き返る権利が発生する

 

そこまでの事を考えての行為なのかと永琳は言ったのだ

 

「……私が生き返らせるのは霧雨魔理沙と博麗霊夢のみです、これまでとこれからの死者に権利は与えません」

 

だが映姫はそれは無いと言った

 

「……理由をお聞かせください」

 

「……地獄の帝王に幻想郷が勝利する為です」

 

「だからと言って死者を弄ぶ真似は許されない筈です!」

 

「わかっています!」

 

二人の声が強くなり傍の小町がオロオロと手を上げる

 

「どうしても勝たねばならないのです!」

 

映姫が振り絞る様に言う

 

「幻想郷は守らねばならないのです……その為にはこの二人の力が必要なのです……」

 

「……確かに現状では厳しいかもしれません、ですが幻想郷の者達なら必ず乗り越えれる筈です」

 

「……乗り越えられるでしょう、帝王があのままなら……」

 

「……どういう事です?」

 

「帝王が大魔王バーンの力を得たのは知っています、しかし帝王にはまだ何かが有り、それが私のこの行為を止めさせないのです……」

 

映姫の考えに永琳は黙し考える

 

自分達とは次元の違う閻魔がそこまで不安を感じ禁忌の所業を行おうとしている事に相当の覚悟を感じたからだ

 

「……わかりました、協力しましょう」

 

その覚悟に永琳も覚悟し協力を容認する

 

「ありがとうございます」

 

「それで私は何をすればよろしいのでしょう?」

 

「その前に聞きたい事があります、世界樹の葉はお持ちですか?」

 

「ええ持っています、普段は永遠亭に置いていますが今は有事の時なので今まで作った10枚の葉、全てを持っております」

 

「良かった……それが必要なので手紙には書いていたのですが持っていてくれて助かりました」

 

「つまり生き返らせるのに世界樹の葉を使う訳ですね?」

 

「そうです、エスタークの様に力を落として生き返らせるのは私にもあの邪仙にも出来ますがそれではダメなのです、完全な状態でなければなりません」

 

「では今は何を?」

 

「死体を生体に生き返らせる力は私にありません……今行っているのは二人の肉体に反魂の術で魂を再び定着させている状態です、時の流れで乱れた魂と肉体の誤差の修正に加え力を戻す力が強大な為に予定より時間が掛かっていますが……」

 

「……なるほど、それはわかりましたが……老いはどうするつもりですか?生き返っても死んだ直後の体ではまたすぐに……」

 

「それについては用意があります」

 

映姫が小町に指示し厳重に封がなされた大瓶を持ってこさせる

 

「これは時の砂、ある異界の神々が遺した遺産です、時を戻す効果があります……これだけの量を手に入れるのは苦労しました」

 

「聞いた事があります……しかしそれは僅かな時間だけだった筈ですが……」

 

「その通り……ですからそれに私と小町の力を加えて二人を出来る限り戻します、そして貴方の持つ世界樹の葉で肉体を生き返らせるのです」

 

「……わかりました、では一刻も早く……」

 

「まだ力の復活が終わっていません、もう少しお待ちください」

 

 

そうして待ったその時は戦争が始まった時に終わった

 

 

「ではまず肉体の状態から……」

 

時の砂を二人に振り掛ける

 

「小町!」

 

「はい!」

 

二人が力を加え時の砂の効力を上げる

 

みるみる若返っていく二人

 

「!?」

 

映姫と小町の顔が歪んだ

 

(力が足りない!?このままでは良くて30年程度しか……)

 

二人の力を加えても全盛の頃には程遠かった

 

(どうにか……どうにか……!!)

 

目一杯力を込めるが予想される結果は変わらない

 

(御願いします……力を貸してください神よ……)

 

その時だった

 

『ピィ!』

 

映姫に声が聞こえると 

 

どこからか力が与えられ

 

「ッ!?」

 

終わっていた

 

(今のは……?)

 

謎の助力に考える

 

(幻想郷から……?)

 

出所は幻想郷の空から

 

考える映姫だが

 

「では世界樹の葉を使います」

 

永琳の言葉に遮られ考えるのを止めた

 

 

若返った二人に世界樹の葉が置かれる

 

スゥゥ……

 

葉から生命の力が与えられ枯れていく

 

同時に二人の体が淡い光に包まれ吸収されていく

 

 

「……なんで私は目覚めたんだぜ?」

 

「……そんな事私が知る訳……って魔理沙!?」

 

「おわっ!?霊夢!?」

 

 

目覚めた二人は有り得ない事にお互い驚き合う

 

「……おはようございます」

 

そんな二人に映姫の申し訳なさそうな声が掛けられた

 

「映姫……?……あんた達の仕業ね?」

 

3人を見て納得した霊夢は事情を聞いた

 

 

「なるほど……そんな事が起きたから私達を生き返らせたのね」

 

「はい……勝手なのは重々承知の上です、如何なる責めも受ける覚悟はあります、ですからどうか力を貸してください」

 

「って言われてもこんな事して……」

 

渋い霊夢が困っていると魔理沙が言った

 

「いいぜ!」

 

二人が驚いて見るが魔理沙は笑っていた

 

「私の服と箒!それぐらい用意してあるんだろ?早く持ってきてくれ!」

 

「あ……ええ、あります……八卦炉は森近霖之助が持っていてここにはありませんが……」

 

「八卦炉は別にいい!霊夢!急ぐぞ!」

 

「ちょっと魔理沙!なんでそんな簡単に請け負ってんのよ!私達を勝手に生き返らせて働けって言ってんのよ!?」

 

忙しく服を着替える魔理沙に霊夢は抗議する

 

摂理に反し、勝手な都合で生き返らせられ力を貸せと言われるのだ

 

納得していた自分の人生を無意味にされた気がして霊夢は決めかねていた

 

「なら霊夢はまた死んだら良いんじゃないか?」

 

「……は?」

 

魔理沙の答えに僅かに怒りが溜まる

 

「もう私達は生き返ってしまったんだぜ?結果にグダクダ言ってもしょうがない、違うか?」

 

「でもこれは許されない事よ……」

 

「見ろよ映姫達の顔……何もかも覚悟してるって顔してる、許されない事なんて全部承知の上さ」

 

「……でもねぇ」

 

尚も納得しない霊夢に魔理沙は

 

「それにさ、幻想郷が……皆がピンチなんだろ?だったら……」

 

着替え終わり愛用の箒を肩に構えて言った

 

「助けるのが仲間だろ!」

 

魔理沙にとって死者の冒涜や自分の人生の否定などそんな事はどうでも良かった

 

「あいつらが危ないなら私は仲間として、友達として助けに行く!むしろ感謝してるくらいさ!ダチのピンチを救えるんだからな!」

 

迷い無き意思を霊夢へ向ける

 

「私の人生の価値なんかより……」

 

それこそが一番の理由

 

 

「友達の方が大事だ!!」

 

 

自分の終わった人生よりも共に人生を歩んだ今を生きる友が大事なんだと

 

それに比べたら生き返ったなんて喜ぶべきだと、そう霊夢へ言った

 

「難しく考えるなよ霊夢、理由はそれで充分だろ?」

 

明るく笑う魔理沙

 

もしここで霊夢が行かないと言っても魔理沙は責めるつもりは無かった、そうなれば一人でだって行くつもりだったから

 

この選択に道を示しても決めるのは霊夢だから強制はしない

 

「……」

 

少しだけ考えた霊夢

 

「……私の服は?」

 

用意された服に着替え始める

 

「わかったわよ……」

 

途中、不意に呟いた

 

「そりゃあ私だって皆が心配だし……博麗神社……不出来な弟子も気になる……」

 

さらしを丹念に巻きながら呟かれるその言葉

 

「だから私も行くわ!生き返っちゃったものはしょうがない!エスタークって奴をブッ飛ばして金持ちの男捕まえて二度目の人生を謳歌してやるわ!」

 

幻想郷の為に力を貸す意思を

 

二人が準備を終え行く前に体の調子を確かめている時、映姫と小町が急に膝を着いた

 

「申し訳ありません……もう私達には戦う力は残されていません」

 

ずっと二人に付きっきりで術を掛け、若返らせる為に力を極限まで使った二人にはもう力が残っていなかった

 

「いやいや……私を誰だと思ってんだ?知ってるってそんな事、来る気ならラリホー食らわせるつもりだったんだぜ?……閻魔に効くかは知らんけど」

 

特に気にしていない魔理沙に映姫は目を閉じ微笑むと

 

「頼みます……」

 

後を任せた

 

「任せろ!この頂点様、魔女の二天様!大魔導士魔理沙様にな!」

 

「いいから行くわよ……」

 

呆れる霊夢と苦笑する永琳と共に浮かび上がる

 

「私は幽々子に会って戦況を聞いてから神社か里、どちらかに向かうわ、貴方達は好きに動いて、フォローするわ」

 

永琳がそう言うと先に全速力で飛び始めた

 

ヒュン!

 

一瞬で抜かれる永琳

 

「わかったぜ~先に行ってる~!」

 

二人は永琳を抜き去り先に行ってしまった

 

「頂点と歴代最強……流石ね」

 

容易く抜かれた事にもう自分など軽く越えていたのだと改めて痛感し同時に頼もしく思った

 

 

そうして復活した二人は幻想郷に来たのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が終わり皆なんと言うべきか考えていた

 

「なるほどねぇ」

 

「チッ……面白くないわね」

 

そこへ掛けられる2つの声

 

「おー!萃香!幽香!久し振り!」

 

掛けたのは萃香と幽香の二人、事を済ませた二人は戻って来て魔理沙を見つけて話を聞いていた

 

「何が面白くないんだぜ幽香?」

 

「お前がエスタークが甦らせた死者じゃないからよ」

 

意訳すればそうなら私が倒していた

 

「面白ぇ!やってみるか?パチュリーの前にいっちょ揉んでやるよ」

 

「……皆退いてなさい、私が送り返してやるわ……」

 

「おい止めろって……」

 

正邪が止めるが二人はバチバチ火花を散らし魔力と妖力を高める

 

「殺せー!!」

 

そんな事を構わない魔物の群れは列を作り空から迫ってくる

 

「うるさいわねぇ……」

 

魔物へ傘をかざす幽香

 

「気が合うな幽香」

 

魔理沙も手をかざしていた

 

「来い!私の八卦炉!」

 

念じると香霖堂の方向から八卦炉が飛来し魔理沙の手に納まる

 

「……技名、勿論覚えてるよな?」

 

「……フン」

 

素っ気なく返した幽香に苦笑すると

 

二人は叫んだ

 

 

「「マスタァァァスパァァァク」!!」

 

 

2本のレーザーが魔物の列を貫いた

 

「……1000以上いったかな?さって!まだまだ居るみたいだし気張るとしようぜ皆!」

 

魔理沙の言葉に皆が頷いた瞬間

 

……フッ

 

空が暗くなった

 

「あやや!?何が起きたんですか!?」

 

突然の現象に戸惑う皆の中、魔理沙だけが気付く

 

(闇の力が向こうから溢れてる……なんて強い力……出所は……紅魔館か!)

 

鍛えられた優れた知覚ですぐに知った魔理沙は箒へ跨がった

 

「私はこの夜の元凶に行く!ここは任せた!」

 

それだけ言うと紅魔館へ向け飛び立って行った

 

「しょうがない……魔理沙に花を持たせてやるかね、なぁ皆の衆?」

 

「今回くらいは許してやろうかしら……」

 

「前も言ってた様な……あやや、なんでもありません」

 

「とにかくやるぞ!」

 

「頼みます!」

 

里を守る戦いに戻り、また里は危険の渦中に飲まれていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃・博麗神社

 

「霊夢様……」

 

落ち着いた靈夢は聞いた

 

「師匠は最後私に何を伝えたかったんでしょうか……?」

 

師が伝えたかった事、博麗の巫女が持ってなければならないモノ

 

それだけが時間が足らず聞けなかった、だから師の更に師である霊夢なら知っていると思い聞いてみた

 

「……今のあんたに言ってもわからないわよ」

 

霊夢は知っている、だが言わない

 

言ったところで理解出来るモノではないから、これは自分で答えを出すモノなのだから

 

「……いつかわかる時が来ますかね?」

 

「それはあんた次第、今すぐかもしれないし一生無いかもしれない、ただあんたが亡くしたじゃなくて落としただけなら……また拾えるかもね」

 

「……頑張ります」

 

その時

 

佇む二人に威勢良い声が聞こえた

 

「……ハオー!」

 

階段の下から魔物が打ち上がっている

 

「デンエーダーン!!」

 

二人が声の方に向くと体を回転させ何故か顔だけ回らない鈴仙が魔物を蹴散らして境内へ降り立った

 

「私の奥義は……私自身が弾になることだ!」

 

ドヤ顔を決める鈴仙に二人と霖之助が思った事

 

(なんだこいつ……)

 

珍獣を見る様な目で見る3人の前にもう一人降り立った

 

「遅くなったわ!」

 

それは輝夜

 

「すいません離れてしまって!大丈夫ですか!」

 

そして妖夢

 

「うるせぇー!!……ってあれ?」

 

てゐも目を覚ました

 

永遠亭の二人は当初人間の里に行く予定の筈だったが戦線に行くのが遅れた為、先に幽々子に会っていた、そして師が向かったのを重く見た幽々子の頼みで博麗神社に救援に来たのだ

 

「!?姫様!博麗霊夢まで居ます!」

 

身構える鈴仙

 

「出たなエスタークの再生人間!」

 

「おのれエスターク!!」

 

「甦ってまで賽銭を求めて来るなんて……!恥を知れ貧乏巫女!」

 

霊夢が生き返ったなど知らない4人は霊夢をエスタークが甦らせた敵だと思っていた

 

「落ち着きなさいよ、話せば長くなるけど……」

 

説明しようとする霊夢

 

「最早問答無用!」

 

4人は聞かない

 

「上等……今夜は兎鍋と半霊の天婦羅じゃー!!」

 

霊夢が叩きのめそうとゆらりと前進し始めた

 

「落ち着いてくれ!」

 

霖之助の必死の言葉を受けてようやく話は終わり誤解は解けた

 

 

「じゃあ私は霖之助とこの頼りない孫弟子と結界を見ながら応戦するわ、他は頼むわね、勇儀とアリス、白蓮達にも伝えて……私を攻撃したら命は無いぞ、ってね」

 

成す事を決め散る刹那

 

 

……フッ

 

 

ルーミアの力が幻想郷に伝わった

 

「急に夜に……!!?」

 

感じた霊夢はすぐに宙に浮き

 

「私は行くわ!後はお願い!」

 

それだけ告げると急いで紅魔館の方角へ飛んでいった

 

「あの慌て様……相当な事態なんだろう」

 

「みたいですね、博麗の巫女だからわかったのでしょうか?……靈夢はどうですか?」

 

「いえ……私には何も……」

 

「兎にも角にも私達は神社を守りましょう!」

 

「そうね!」

 

神社もまた防衛に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

ズルッ……

 

「ピ!?」

 

ズルル……

 

「ピピピッ!?」 

 

ボテッ……

 

ダイは服の中から落ちた

 

「ピィ?」

 

何故落ちたのかわからないダイは考える

 

ピッタリ慧音の服の中で挟まっていた筈なのに何故かズリ落ちた

 

原因はわからない、少し前に願い事が聞こえて叶う様にと祈った後からほんの少しだけ体に違和感があるが多分違うと思う

 

「ピ?ピ?」

 

考えるダイに慧音が気付いて話し掛ける

 

「こらダイ!危ないから隠れてい……」

 

ダイを見た慧音は違和感に気付く

 

(縮んだ……?)

 

それは良く知る者にしかわからないくらい僅かな差だったがダイを溺愛する慧音は気付いた

 

「ダイ、お前縮んだか?」

 

「ピィ?」

 

問いに振り返ろうとしたダイだったが視界に写った物を見て止まった

 

「ピィ!?」

 

それは分岐の間の映像

 

その映像に映るある人物を見てダイは驚いた

 

「ピィ!?ピピィ!?」

 

何でルーミアがあんな姿に?どうして?

 

明らかに姿は変わっていたがダイにはわかった、あれは友達のルーミアだと

 

その友達のルーミアが異常な状態だと見てわかったから慌てた

 

「ピィ……ピィ!」

 

どうしよう……助けないと!

 

想いだけが空回りあたふたするだけで何も出来ない

 

「どうしたダイ?……とにかく危ないから隠れていろ」

 

慧音に掴まれて胸に納められる

 

(……ピィ!!)

 

服の中でダイは助けてと願い

 

呼び掛けた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿・分岐の間

 

「死ぬのと食われるの、どちらが良いか決めさせてあげるわ」

 

「氷付けと土下座、どっちか良いか決めさせてあげるわ!」

 

優しく告げるルーミアと自信有り気に告げるチルノ

 

 

「……!!」

 

「……!!」

 

 

力の衝突は闇と氷を嵐の様に撒き散らし間を荒れ狂う

 

 

「「ハアアアアアアアアッ!!」」

 

 

同時に二人は動いた

 

ルーミアは片手を、チルノは両手をかざし

 

持つ力を相手に向けて放つ

 

力の激突は嵐が吹き荒れる間を更により一層激しく鳴動させる

 

「中々……」

 

力を中央で破裂させると弾幕を形成する

 

「闇符「ジェニュイン・ディマーケイション」!!」

 

防いでみろ、と言う様に闇の力を凝縮した弾を撃ち込む

 

「舐めんな!氷符「アイシクル……!?」」

 

迎撃しようと技を繰り出そうとしたが気付いた

 

「雹符「ヘイルストーム」!!」

 

上の技を繰り出し相殺する

 

「うっ……!?……ツウッ!?」

 

相殺仕切れなかった弾が肩に被弾した

 

「へぇ……やるじゃない」

 

ルーミアが楽しそうに微笑んでいる

 

(こいつ……)

 

痛みに若干歪むチルノ

 

(思ってたより……ずっと強い……!)

 

正直舐めていた

 

こんな軽そうな態度の奴など大した事ないと、最強の自分の敵ではないと思っていたから下の技で迎撃しようとした

 

だが最強の驕りの中にあった経験、バーンと行われた幾多の敗北の経験と負けられない想いが驕りを消し去り寸前で対応させた

 

「……」

 

痛めた肩を触る

 

見立ては完璧だった筈だ、あの技で相殺出来た筈だった

 

なのに予想を上回られた被弾

 

底知れぬ力をルーミアから感じたチルノは

 

「……本気で行くわよ!!」 

 

出し惜しむ余裕が無い相手だと認識し

 

今までで最強、もしかするとムンドゥスに匹敵するかもしれない相手だと感じ

 

それを認識したから本気を出す事を決意する

 

「……本気……ね」

 

宣言を聞いたルーミア

 

「想像以上に強い……お前は……妖精とは思えないくらいに……」

 

決意したチルノに困った顔をした後

 

「空腹じゃ無理そうね……」

 

ポツリと呟くと

 

「ちょっと待ってなさい」

 

あらぬ方へ歩いて行く

 

「……なに?」

 

奇怪な行動を警戒し様子を窺うチルノ

 

(この妖精も美味しそうだけど……)

 

離れて気絶している大妖精は視線だけ一瞬だけ見て見過ごす

 

ポタ……ポタ……

 

(涎……?)

 

ルーミアの足元に滴る液体、口から垂れている様だ

 

「ああ……お腹減ったぁ……」

 

行き着いたのは大妖精が倒した深緑の竜

 

……クンッ

 

手を伸ばし指を曲げると白銀の竜を覆う氷が砕け散り引き寄せる

 

グシャ……

 

凄まじい勢いでぶつけられた2頭の竜は全身の骨を折られ横たわる

 

「おっと、やり過ぎ……はぁ?」

 

ルーミアの目の前で竜が煙を吹き出し仔竜になってしまう

 

この2頭の竜はエスタークが鬼眼の力を使い二人用に進化させた仔竜だったが著しいダメージに元に戻ってしまったのだ

 

「……腹立つわねぇ、まぁしょうがない、背に腹は変えられないものね」

 

口から滴る涎を更に溢れさせ

 

その行為は行われた

 

 

グチャ……!

 

 

歯が肉に食い込む

 

 

ブチッ……クチャ……クチャ……

 

 

勢い良く千切った肉を口に頬張り咀嚼する

 

「ん~!美味しい!!」

 

恍惚の表情で叫ばれる歓喜の声

 

ビクッ……ビクンッ……

 

肉を抉られた仔竜は痙攣していた

 

そう、まだ生きているのだ

 

抗えない力に押さえられ生きたまま食われているのだ

 

「あ、あんた……」

 

その行為に戦慄を覚えるチルノ

 

元のルーミアが人間の他にも悪魔でも何でも食べるのは知っている

 

そういう妖怪だしそこは気にしていない

 

ここ数十年は妹紅の尽力で人間の食生活で暮らす様になった、だからルーミアと同一人物という意味では本来の食事を見るのは久し振りだった

 

だが知っているルーミアとは決定的に違うものがある

 

それはいかに能天気なルーミアと言えど礼は重んじていたからだ

 

食べる者はちゃんと殺してから食べる、食べる者に最低限の敬意はあった

 

それだけは守っていた

 

「竜は初めてだし量も少ないけど……美味しい!……子どもだから?人間も子どもの方が美味しいし……あの泣き叫びながら食べるのが良いのよねぇ」

 

だけどこのルーミアは違う

 

食べる事に快楽を感じ、食べる者に一切の礼すら無い、それが当然の権利だと思っているから

 

だから生きたまま食べる

 

生きたまま食われる恐怖すらも香辛料にして食事を楽しんでいるのだ

 

その光景にチルノは怯んでしまった

 

「……わはっ!美味しい……!美味しいよぉ!わはっ……ははは……」

 

大妖精に手を出さなかったのはチルノと関係が深そうに見えたから

 

妨害は目に見えていたから既に死に体の竜を選んだ

 

 

「ワハハハハハハハハハハ!!」

 

 

能天気な愚者ではない皇の高笑いが響き渡る

 

 

「あーん……」

 

最後に残った目玉を口に放り込み噛み砕き

 

「美味しかったぁ……全然満足じゃないけど、久し振りの食事はやっぱり良いものね」

 

食事を終えたルーミアが血塗れの床の上で呟いた

 

「まだ……子どもだったでしょ……!」

 

「止めもしなかった奴がよくほざけたものね……」

 

チルノの言葉に余韻に浸るルーミアは座り込んだまま天井を見上げて答える

 

「所詮この世は弱肉強食……強ければ生き、弱ければ死ぬ……寧ろ光栄に思うべきでしょ?私の血肉になれたのだから……」

 

「~~ッ!?」

 

妖怪の本来の有り方、そして世の常に言い返せれなかった

 

止めなかった事実も重なりチルノは歯軋り睨むだけしか出来ない

 

 

「……さて」

 

ギョロ

 

天井を見上げていた目がチルノに向いた

 

ズズズズズッ……!!

 

同時に強さを増した闇の力が溢れ出す

 

「……!!」

 

さっきとは比べられない強さ 

 

思わず半歩下がってしまう威圧感を兼ねる力にチルノは気圧されない様に強く心を持つ

 

「次はお前……その次はそこの妖精……」

 

立ち上がり、宙に浮く

 

「休みで済むと思うな……私は魂をも食らい闇に囚える、二度と抜け出る事は叶わない常闇の檻へ……妖精も例外ではない……」

 

赤い瞳が発光し周囲に纏う闇の中で皇は自らの力を見せた

 

有象無象の区別なく、全てを闇に葬る力を

 

 

「負けるかーーーーー!!」

 

 

雄叫び一閃

 

……キィン

 

空間に乾いた音が響き周囲に霜が発生する

 

最大まで高めた力が広い神殿の温度を一気に氷点下に下げたのだ

 

ギャギギギギ……!!

 

チルノを中心に氷柱が生え茂り間の半分を氷の世界に変える

 

最強の氷精の名に恥じないその力は己の内に留まる事が出来ず周囲に影響を与える

 

「あたいが倒す!!」

 

残る間の半分を氷に侵入させないルーミアに最強は構える

 

「ハァァァ……」

 

「……!!」

 

白い吐息を口から吐きながら二人はゆるりと前進する

 

「ハアッ!!」

 

「ルーミアッ!!」

 

妖怪の頂点がまたぶつかり合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

「行くぞエスターク!」

 

妹紅が構える

 

「……」

 

だが何故かエスタークは動かない

 

「……藤原妹紅」

 

妹紅を呼ぶと懐から物を取り出して投げた

 

「……気でも触れたのか?」

 

受け取った妹紅はそれを見て問う

 

それは御守り、妹紅の持つ遺産、バーンの守り

 

「必要無いので……代わりと言ってはなんですが一応聞いてみときたい事があります、よろしいですか?」

 

「……言ってみろよ」

 

そこに悪意を感じなかった妹紅は一応聞いてみる気になった

 

「私の仲間になりませんか?」

 

エスタークから出たのは勧誘、再び妹紅を仲間にしようと考えていた

 

「……なると思うか?」

 

「ハハ……でしょうね」

 

いつかと同じ会話を繰り返す

 

「愚かな人間や弱い妖怪など見捨てればいいではないですか、高い力を持ち、更に不死の貴方になら私と同等の立場で迎えて差し上げるのに」

 

「……見捨てるなんて出来ない」

 

妹紅の答えに不思議な顔のエスタークは問う

 

「何故です?足手まといの妖怪なんて助ける意味が無いでしょう?」

 

「それに守るのですか?人間を?危機が迫れば簡単に掌を返し貴方に刺し違えろとまで言った最低の人間を?」

 

「そこが理解出来ない……何故貴方はそこまで頑なに守ろうとするのです?私と同じ化物の癖に……」

 

妹紅の守ろうとする気が不思議だった

 

遥かに弱い人間や力は有りながらも妹紅には遠く及ばない妖怪を守りながらも不死の化物と蔑まれ、都合が悪くなればその力を臆面もなく利用してくる人間の醜い部分に責められて

 

それでも守ると言う妹紅の動機が知りたかった

 

「……」

 

その答えは口に出し辛い

 

話した事は誰にも無かったから

 

「私が……」

 

今まで聞かれなかったし自分から話す気も無かった

 

バーンとの約束とは別のずっと秘めていた想い

 

聞かれた今……言うべきなんだろう

 

だから妹紅はそれを口にした

 

 

「私が人間で居られなくなった大馬鹿野郎だから……」

 

 

寂しげに儚げに

 

悲壮を滲ませる表情で妹紅は語る

 

 

「私は人間で居られなかった弱い化物だから……!」

 

「妖怪の中からもはぐれた……妖怪ですら居られない弱い化物だったから……!」

 

 

出してしまった想いは止まらない

 

 

「だからッ!!」

 

 

いつからそう決めていたのかも忘れた、いつの間にか心に決めた想い

 

 

「人間も妖怪も経験した私は……」

 

 

「どっちの気持ちもわかるのは私だけだったから……!」

 

 

魂が決めた在り方

 

 

「だからこそ私は!人の領分に立って!人を守り!妖怪を越えた私が!妖怪を守るんだ!!」

 

 

それは妹紅だけが行き着いた生き方

 

 

優しい妹紅が人間と妖怪、異なる2つの種族を経験した妹紅だからこそ行き着いた生き方

 

弱きを守り、強きも更に化物の自分が守る

 

それが蓬莱と言う化物の自分が出来る唯一の事なのだと……

 

 

「妹紅……」

 

慧音は初めて聞いた本音に固まっていた

 

(そこまで……そこまでお前は……)

 

ただでさえ不老不死の重荷を背負っている妹紅

 

死の理から外れたその生き方がどれだけ過酷なものかを想像したのだ

 

何もかもを置き去りにその道を生きる地獄を……

 

 

 

「……貴方は人間の闇を知らない、知れば貴方も私の様になる」

 

苦く語るエスターク

 

妹紅と近い立場にあった彼はより深い人間の闇に触れたからこうなった

 

だから言う

 

「ならないよ……」

 

妹紅は微笑んだ

 

「なりますよ……正義と信じ、わからぬと逃げ、私達の事など知らず!聞かず!その果てが生んだ結果なのです!私は!」

 

怒りと絶望を露に妹紅へ怒鳴る

 

歪に変えられた精神はもう戻らない、更に酷くは有り得るが直る事は決して有り得ないと思わせる狂変した性

 

「確かに人間がたまにそういう酷い事をするのなんて百も承知さ……お前の言う通りもっと酷い部分もあるんだろ、妖怪だってな……でもいいんだ!それでも私は人間が!妖怪が好きだ!!」

 

強く語られるそれは変わらない想い

 

「それに……」

 

そしてこれは大事な事

 

「私には仲間や友達が居るから……」

 

それに支えられてるから大丈夫だと……

 

「不老不死が何を……」

 

人や妖怪と生きる事を放棄した化物が何を言っている

 

その目が語っていた

 

「うるせぇよ……!」

 

妹紅の強い瞳が一蹴する

 

「もう決めたんだ!私の魂に!その魂が言ってる……!」

 

炎を更に熱く燃え上がらせて叫んだ

 

 

「お前を倒せってさぁ!!」

 

 

過去が何だろうと関係無い、幻想郷を攻めるのは許さない

 

そう改めて宣言した

 

「そうですか……」

 

絶対に相容れない、絶対に交わる事の無い拒絶された道だと知ったエスタークは

 

「決着を着けましょう藤原妹紅」

 

魔力を更に高め、不敵に笑った

 

「オオオオッ!」

 

飛び掛かった燃え盛る炎を纏う右腕がエスタークを目掛ける

 

ガウンッ!

 

魔力の障壁で防ぐ

 

障壁に防がれた炎と魔力が混じり合い赤と黒を王室に飛び散らさせ

 

 

帝王と皇帝不死鳥の戦いは開始された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




復活の経緯が思いの外長くなった……

今回どうでしたか?
少し今話はグロイ話ともこたんの少し重い話でした。

もこたんのアレは書きたい事の1つだったので達成出来て満足です、もこたんだけ充実してるな……うん、主人公だもん。

ちょっとだけ補足

ルーミアのスペルのジェニュインは正真正銘の、本物の、と言った意味があります、真のスペルという意味合いで、付けました。

もうすぐ年末ですが……次回も頑張ります!
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