人間の里
「……!」
(なんだ……?)
少女は気付く
(呼ばれてる?)
誰かが自分を呼んでいる
(ルーミアを助ける為に力を貸して?……ルーミアだって?)
魔物を攻撃しながら他の皆の様子を見る
(皆には聞こえてないのか……前にもこんな事があったな、あのダイって奴がエスタークに狙われてた時だ……)
考えてる間にも呼び掛けは続く
(場所は……神殿!?)
聞かされた場所に驚く
そこには4人が向かい、更に魔理沙も紅魔館の方へ向かった、なら夜の原因はおそらく神殿にあるのだろう
(神殿……ルーミア……エスターク……)
エスタークの仲間に幻想郷を夜に出来る程の力を持つ者は居ないしエスターク自身もそんな力は無い、バーンの力と言っても魔力だけの筈だからそれも多分違う
なら残るのはルーミア、もしやルーミアはエスタークに何かをされてこの夜の原因になっているのではないか?もしそうなら助けてとは止めてくれではないのか?
(私だけに聞こえる声……)
そして自分だけを呼ぶ声
推測が当たっているならルーミアは今非常に危険な状態にあり、それを救うのに自分の力が必要だから呼び掛けてきた
(よし……わかった……!!)
そう決めた少女の動きは早かった
すぐに魔物との戦闘を止め飛んでいく
「行かなきゃならない!後は任せた!」
「どうしたんですか急に!?」
文が慌てて叫ぶ
「悪いけど説明出来ない!里は頼んだ!」
「なんだいあいつ急に……逃げた訳ではなさそうだけど……」
萃香が首を傾げながら魔物の顔を吹き飛ばす
「構わないわ天邪鬼の一人くらい……なんなら貴方達も休んでて良いわ、私一人で充分よ」
「抜かせいじめッ子!あんたこそ休んでな、息が上がってる癖に無理はいけないねぇ」
軽口を叩き合いながらも魔物を倒していく
(そんな軽い傷ではないのに……貴方達は……)
結界を維持するさとりが皆を見て顔を下げる
ダメージが無いわけがないのだ
皆戦いでかなりのダメージと疲労がある、明らかに最初の勢いは無くなっている
魔物の数はかなり減らしたがまだまだ現れる敵
主力を倒しても多少返した程度にしかならない圧倒的な数の暴力
終わりの見えない数に精神的にもキツイ筈だ、それこそ誰かに任せて休んでいたいくらいに
だが戦う
今を懸命に生き、全て終わった後で胸を張って笑える様に
(八意永琳が来てくれましたが霧雨魔理沙が抜け、この状況で更に一人抜けるのはやはり厳しい……)
さっきの魔理沙の攻撃と幽香との攻撃で持ち直した戦況はまた押され始めていた、他の妖怪達も頑張ってくれているが分が悪い、今は一人でも強い者が居て欲しい状況だった
(頑張ってください……敵も、この夜も必ず終わりが来ます、敵は無限でなければ夜も明けるもの……だから……頑張ってください!)
さとりの口に出さない鼓舞の中、戦場は熱を帯びていく
(悪い皆……)
少女は申し訳なく思う
さっき考えた事なんてなんの確証も無い事、徒労に終わる可能性も下手すれば罠の可能性だってある
なのに行ってしまったから謝った
「頼むよ……」
紅魔館を目指す少女が声に出した直後
「任せといて!」
少女の横を一人の仙人が擦れ違った
「青娥!……頼む!」
戦線に戻る青娥に自分の後を任せると少女は一心に紅魔館を目指す
エスタークパレス・左翼内
「大丈夫レティ?」
「はい、ごめんなさい私の為に……」
敵の居なくなった部屋でパチュリーとレティは傷を確認し合う
「別に構わないわ、あいつに腹が立ったからそのついでよ」
素っ気なく告げるパチュリーにレティは笑う
本当は自分の為に来てくれた事がわかっているからだ
「……何よ」
「いえ、何も!」
笑うレティに見透かされた様な気がしてパチュリーは若干不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた
それと同時にパチュリーは感じた
(!!……要塞を覆う魔力防壁が無くなった……辿り着いたのね妹紅!)
それはエスタークが妹紅と対峙した為に防壁に力を回す余裕が無くなった事なのだと推測する
(なら私も加勢に……でも幻想郷全域を覆う異様な力も放っては……)
勿論闇の力にも気付いていた
幻想郷全域に及ばせれる力にエスタークと同じ脅威を感じていたのだ
(……やはり元凶であるエスタークを倒すのが終わらせる近道?)
エスタークを倒せば幻想郷を覆う力の解決になるかもしれない、なら倒すのはエスターク
だが確証は無い、これはただの希望
闇の力の原因がわからない以上、今はこの程度の考えしか出せないのだ
「……レティ」
「はい?」
「貴方は下に戻りなさい」
「な、何でですか?」
理由を察するレティだが一応聞いてみる
「……貴方を守りきれる自信が無いのよ」
パチュリーは濁さず答えた
「これから私はエスタークの元に向かう、罠もあるだろうし激しい戦闘が予想される……わかるでしょう?」
実力不足だと
「……わかりました」
レティは素直に承諾した
現に罠に掛かってパチュリーの足を引っ張っていた事実が彼女を素直に承諾させた
「さっき応急治療と一緒にトラマナを掛けておいたわ……あいつは罠を使わなかったけどね」
レティに掛けていた魔法はトラマナ、フレイザードが罠を使いレティに何らかの事をしようとした際の保険
「それと……」
また魔法を掛ける
「トヘロスを掛けた、私のレベルなら下に降りるまで魔物は手を出せない筈よ、この2つがあれば安全に降りられる」
説明をしている最中にパチュリーはある事に気付いた
(あ……青娥に掛けていれば……)
そう、青娥に掛けていれば青娥達は安全に戻れた、それを思い出したのだ
(……青娥は気付いてたかも、黙ってたのは……)
考えた末に出た結論
(意思を託されたのね)
僅かな魔力も無駄にせず、真っ直ぐエスタークまで進めと言う事なんだと考えた
「……行きなさい、下に行ったら皆も居る、ここよりは安全だと信じてる、下に行って何をするかは貴方に任せるわ」
「……はい!お気をつけて!」
レティが進もうとしたその時
部屋の扉が勢い良く弾け飛んだ
「……遅かったわね」
パチュリーが扉から入ってくる者達を睨む
入って来たのは魔物、足止め様に差し向けられた魔物達だった
「行きなさい!」
「はい!」
弾ける様に飛び出したパチュリーが魔物を倒し後ろからレティがついていく
「……!……チッ……!」
通路に出たパチュリーが見たのは出口まで続く道全てに犇めく魔物
「レティ!」
壁に向けて火球を放ち外に繋がる穴を空ける
「先生!」
穴へ飛び込む間際レティはパチュリーへ向いた
「絶対に帰ってきてください!」
「……約束するわ」
保証など出来ない、相手はあのバーンの魔力を得たエスタークなのだから……
だが口にする、必ず生きて帰ってくると……
約束に満足したレティが出ていった後、犇めく魔物の大群を見てパチュリーは呟いた
「温存しとかないといけないけど……これは無駄じゃないわよね?……青娥」
数を減らす事が下の負担を減らせられるのなら決して無駄ではない
そう確信するからパチュリーは撃った
「メドローア!!」
消滅の呪文が通路を居抜き、全てを消し去る
「今……行くわ!レミィ!フラン!……妹紅!!」
また通路を埋め尽くそうとする魔物を相手にパチュリーは飛んだ
エスターク神殿・通路
美鈴は震えていた
「さ、寒い……」
神殿の凍える様な寒さに
「ギィィ!!」
その時、鋭利な爪が背後から襲った
ヒュ……
流れる様に爪を避け
「ハッ!」
魔物を床に殴りつけた
(この寒さは十中八九チルノのものですね……あのチルノが本気を出さねばならない相手……ただならぬ者なのは確かでしょう)
ならば早く加勢に行かなければと思う美鈴の前に魔物の大群が現れ道を塞いだ
「くっ……足止めか!」
迫る魔物を迎撃しようと構えた瞬間
「ギエッ!?」
魔物が両断され生き絶えた
「おっ!美鈴見っけ!」
「にとり!」
来たのはにとり、ロビンの中に入っていた
「暖かそうですね……私も入れてください!」
「悪いね美鈴、このロビンは一人用なんだ!」
「そんなぁ……」
ガックリ肩を落とした美鈴だがすぐに表情を引き締め魔物を睨む
「仕方ありませんね、では……押し通る!」
「了解!行くよロビン!」
二人は魔物の大群へ突撃した
エスターク神殿・分岐の間
「うらああああ!!」
冷気の塊を撃ち込む
「フン……」
闇の力が籠る手で払い一気に前進する
「この……!!」
距離を離しながら弾幕を放つ
ズゥゥゥ……ドウッ!
手に闇の力を圧縮した大玉を作り撃ち込む
……キンッ
弾幕を貫通した大玉が目標の目前で凍りつき砕け散った
「やるやる……」
高い実力に皇は戦いが楽しくなってきた
「夜符「ナイトバード」!!」
大玉を繋ぎ合わせ鳥を模した弾幕を放つ
「雪符「ダイヤモンドブリザード」!!」
雪嵐のごとき弾幕が迎え撃つ
「軽い……闇の鳥にその程度の嵐なんてそよ風……」
弾幕はまたも貫かれる
「命中……」
闇鳥が触れる
キィィ……
触れた闇鳥は炸裂しなかった、代わりに闇鳥の内部から炸裂音の代わりに耳鳴りの様な音が聞こえ
パァン!
氷を撒き散らしながら闇鳥は破裂した
「凍符……「マイナスK」!!」
闇鳥が体に触れるより先に手で触れ、炸裂するより先に冷気を直に送り急激に凍らす事で弾幕内部の密度の差で亀裂を生じさせ勢いよく破裂させたのだ
「……」
皇は無表情で見つめていた、感情は見せてはいないが実は戸惑っていた
(総合で言えば私の方が遥か上……体術は出来ないみたいだし身体能力も並以上だけど見張るものでもなければ弾幕もあまり大した事は無い……なのに……)
いまだダメージを与えられない状況に
(冷気……能力のレベルが高過ぎる、冷気を操る能力だけが桁外れに高い、それだけを極め続けたみたいに……)
(その尖り過ぎた力のお陰で私に対抗出来ている……私が凍らない様に力を割かなければならない程強い冷気を出しながら私の攻撃を防げるなんてね……)
異常なまでに高い冷気の力が総合で勝る皇を押さえていた
鍛えに鍛え抜いた冷気の能力
意思1つで瞬時に好きな場所、物を凍らせ、妹紅すら凍らせる高過ぎる力
凍らせようとする冷気を防ぐ為に闇の力が大きく割かれ、それでも死に至る力を込めた弾幕を撃てるがそれすらも自分を凍らせようとしながら防げる力量
それに戸惑っていた
(一芸特化が結果的に私と互角なんてね……)
許しがたいのは確かだが今はそれ以上に感心していた
食糧としか見てこなかった矮小な妖精が身の丈を越え、ここまで強くなれるのかと、こんな事も有り得るのかと……
「どうだ!降参して戻るなら許してやるわ!」
最強の宣告
いや、それは宣告ではなく願いに近かった
それは最強の中にある想いが関係している
「誰に向かって言ってる……の?」
皇の様子が変わる
「あんた以外に誰が居んのよ!」
最強は止めない
「降参……?許す……?僅かな殺意も込めないで私を……?舐めてるのか……私を……?」
侮辱に次ぐ侮辱
最初から知らぬとは言え礼を欠く奴だとは思っていたが力を見せても態度は変わらず、殺意を欠いた手加減とも言える攻撃
ズズズズズ……ズオッ!!
闇の力が濃く、より禍々しく深くなっていく
「妖精ごときが!!」
最強の力は皇の怒りを買うには充分過ぎた
「見せてやる……妖怪を統べる皇の本領を……」
闇の力を球体状に纏い、皇は最強へ自らの真価を見せた
百鬼夜行を潰し、太陽を闇に葬り、空を亡くす力
常闇ノ皇の全てを
「それが……」
最強は怯まない
「どうしたー!」
冷気を操り皇を凍らせんと能力を使う
「!!?」
結果に最強は驚き目を見開く
効いていなかった、全く
「無駄……次元を違えた今……お前の力を持ってしても私にはもう……効かない」
ゆっくり浮かび上がると
球状の闇を纏い突進した
「ッ!!」
迫る皇に弾幕を放つが纏う闇に弾幕は全て飲み込まれ皇には届かない
「それならー!!」
勢いが止められない事に回避は無理だと考え目の前に巨大な氷塊を盾代わりに作った
ドッ!
氷塊は砕かれ最強は吹き飛んだ
「うー……痛ぁ……!」
体当たりを食らわされ氷柱にぶつかった最強は立ち上がって見せるもダメージは決して軽いものではなかった
痛がる最強、攻撃が通った
普段の皇なら喜び笑っている所だろう
「……」
だが皇は笑っていなかった
感触と最強の様子を見ながら結果について考えていた
(……消し去るつもりで行ったのに威力を大幅に削がれた、氷塊に込めた力が勢いを大きく殺し、触れた瞬間に私の力を直接冷気で一瞬減衰させた……)
望む結果ではなかったから考える、やもすれば自身の喉元に届く刃を持っているのではないかと
「うぅ……クソォ……」
(……いや、あれが限界か)
皇は見極めた
(減衰で下等種族並みの威力しかなかったのにあの痛がり様……演技が出来る様な奴ではない、最下等の妖精の体の脆さか)
最強の精一杯の様子がそれは無いと確信させた
妖精とは本来とても弱い種族、人間にさえ恐怖を抱き勝てない者も多い種族なのだ
頂点の二妖精は中でも強い力を持っていたがあくまで力の話、体の強さは実はあまり変わらない、鍛えても大した成果は出なかった、だから不意を突かれたとはいえ簡単に気絶し、大した威力もない攻撃に酷く痛がるのだ
(だから限界……その脆さを能力で補っていたから)
体の脆さを能力で補っていたのならさっきの攻撃は無効化にしなければならない、それが出来ずに被弾したということは能力の限界で相殺出来なかった事を意味する
「なら……クフフ……」
思わず声に出てしまう、だが警戒されようともう構わない
「ワハハハハ!!」
勝利を確信したから
全力なら上回れる、威力の無い攻撃でも相手には甚大
勝利への道がハッキリと見えた今、後は詰めるのみ
対象が餌に変わるまで……
「……」
最強は笑う皇に限界を悟られたのを知った
(昔なら怒って構わず突っ込んでたわね……)
意外にも冷静だった
バーンとの修行で考えて戦えと言われたからだ
考えていたのは3つ
攻守退却の選択
攻勢に転じ倒すか守勢に回り機を待つか友と仲間を連れて逃げるか
(無理ね……わからない事ばっかりだ……)
選択の内容には不確定要素が多過ぎた
守勢に回り機を待つと言っても決定的な隙が出る保証も力の消耗があるにしてもそれまで持つかもわからない、逃げるにしても視界に写る友は連れて行けるが仲間は無理、どこに居るかわからないからだ、探す時間をくれる相手でもないし先に幻想郷に向かい蹂躙する可能性だってある
なら残されたのは攻撃だけ
自分が皇を倒すのが一番不確定要素が少なかった
(やるしかない……)
決めた
それしか方法が無いのならそれに全力を尽くすと
「最後まで足掻くのね……楽しませてよぉ……!!」
だが、その狂喜の皇に……
(……ルーミア……!!)
友の面影を見てしまったのは悪い事なのだろうか……
エスタークパレス・王室
炎と魔力が舞い上がる
「ラアッ!!」
大きく振りかぶり右腕を打ち込む
ガガァッ!
腕は障壁に防がれ止まる
「ウラアアアアッ!!」
障壁を滅多打ちにしヒビを入れる
「オラァ!」
突き破った勢いのままエスタークへ殴りかかる
バチィ……!
腕はエスタークの右手に止められた、正確には手の前に張られた障壁に
「……」
無言で妹紅を見つめるエスターク
「余裕だな……!!」
妹紅が力を込めるとエスタークの腕を徐々に押していく
「なに……確かめているだけです」
魔力を放ち妹紅を押し退けると指を突き出した
「メラ」
火球が妹紅に迫る
バチッ
軽く振った手が火球を払い飛ばした
「舐めてんのかエスターク!効くかそんなもん!」
怒鳴る妹紅
この程度で攻撃してるつもりなのかと
「……」
エスタークは静かに妹紅を見ていた
死の恐怖を抱いた相手を改めて見る表情は些かの変化も無い
「フッ……」
いや、あった
微笑するエスタークは手をかざす
「イオナズン」
極大の爆発呪文を妹紅へ向け撃った
「!!」
爆発球が命中する刹那、妹紅は炎を前面に展開する
ドバァ!
イオナズンが触れた瞬間、大爆発が起き王室の窓を全て吹き飛ばし爆煙が充満する
ヒュバァッ!
爆煙から妹紅が飛び出し
「ラアッ!!」
炎纏う腕を打ち込む
「……」
また手をかざし障壁を展開し拳がぶつかる
バキャア!
障壁を貫いて拳がエスタークを打った
「……」
後退し、受けた手を見て感触を感じ
また指を突き出す
「メラ……メラミ……イオ……イオラ……イオナズン……」
呪文をやたら滅多に連射する
ゴオッ!
更に口から灼熱の炎を吐き全てを妹紅へ放った
「……いい加減にしろ!」
ドン!!
叫びと共に妹紅から火柱が上がり呪文と炎を全て焼き、王室を吹き飛ばした
「舐めてるのかエスターク!!」
妹紅の声が聞こえると火柱の左右から翼が伸びた
「私を……!!」
火柱が収まるとそこには背から翼を生やした妹紅が居た
炎翼
妹紅が本気を出した時に自然と炎が形を成す戦闘形態、妹紅を皇帝不死鳥足らしめる由縁
出し惜しみなく戦い、倒す決意の表れ
「……」
本気を出した妹紅を見てもエスタークに変化は無かった、数秒だけ見つめると不意に微笑し言葉を出す
「舐めてますよ」
「なにッ……!?」
肯定に今すぐ突っ込もうとする妹紅にエスタークは続けて話し、行動を止めた
「確かめていたのですよ……今の私が貴方に何を感じるのか……」
「……何か感じたか?」
「何も感じませんでしたよ……道端の小石と同じくらいに」
妹紅から今は何も感じない
恐怖を感じた相手をそう見える事が楽しくて笑みを隠しきれないのだ
「……そうか」
妹紅は挑発を気にしていなかった
「てっきり怒ると思いましたが……ショックでしたか?」
「いや……怒って思い出させてやろうかと思ったけどよく考えたら無駄だからさ、だから気にしてない」
「無駄……とは?」
エスタークが聞いた瞬間、妹紅の炎の温度が上がり石を融解させた
「その時はお前が倒される時だからだよ!」
思い出したその時がお前の死だから無駄だと告げる
救出も何もかも友と仲間を信じて任せ、自分が信じ任されたのがエスタークの退治、何も気負う事も考えずにエスタークにだけ集中出来るから心にゆとりのあった妹紅に挑発は効かなかった
「よろしい……わかっていると思いますが先程までは舐めていたので大魔王の魔力はほとんど使っていません、ほぼ私の魔力です」
コゴ……ゴ……
魔力が高まる、今度こそ本当にバーンの魔力を使う気だ
スゥ……
携えていた2本の剣を抜き、構える
ブゥン……
そして数ヶ所に開いたスキマ
「次に恐怖を感じるのは貴方です……藤原妹紅……」
得た力を使い帝王は憎む相手に笑みを見せた……
エスターク神殿・分岐の間
ドッ……
「あうっ!?」
「ほらほらーどうしたのー?」
バチッ……
「うぅ……うっ……」
「さっきまでの威勢はどうしたのー?」
ドガッ……
「いぎぃ!?」
「倒すんじゃなかったのー?」
ドズッ……
「げふっ!?ふぐぅ!?」
「やってみなさいよー」
ドゴッ!
「ぶえっ……!?ゲホッ……ゲホッ……」
「わはっ……!わはは!!」
胃液を吐くチルノを見ながらルーミアは楽しそうに降り立った
「弱ってくのに頑張ったわねぇ……わはぁ……!!」
チルノは嬲られていた
相殺しきれない攻撃が当たりダメージが嵩む
嵩んだダメージが力を弱らせるがそれに合わせてギリギリに調節した力で突破されまた攻撃される
「うぅ……ルー……ミア……!」
既に勝敗が決しているのにこんな事をするのは楽しいから
徐々に弱っていく強い獲物が餌に変わる瞬間が楽しみだから簡単に戦闘不能にはしない
「く……そぉ……」
痛みに満足に起き上がれないチルノは無傷のルーミアを睨む
攻勢に出た筈なのにルーミアにダメージは無くチルノだけがダメージを負っているのは何故か?
実はチルノは攻勢に出ていなかった
だからチルノだけがボロボロになっている
決めたのに攻撃しなかったのは心の内にある本能とも言える想いが関係していた
「ん~……どうしようかな?」
ルーミアはチルノを見ながら思案する、間違いなくチルノにとって良い事ではないだろう
「そこの妖精から先に食べようかな……」
気絶している大妖精に目線だけを向けチルノに妖しい笑みを向ける
(大ちゃん!?)
ドクン……!
心臓が高鳴る
(このままじゃ大ちゃんが食べられちゃう……)
焦りが顔に出る
(でも……ルーミア……!)
今決めなければならない
(大ちゃんを守るにはルーミアを……ルーミアを倒すには殺すしか……)
何をすべきかを……
「決ーめたっ!」
先に食べる方を決めたルーミアの向かう先は
「……」
大妖精
目の前で親密な者を食われ絶望する様が見たくて大妖精を先に食べる事にした
「~♪」
鼻唄を交じらせ機嫌良く迫る無邪気かつ無慈悲な妖怪の王
「待ちな……さいよ……」
声が皇を立ち止まらせた
「どうしたの?先が良いの?」
笑みを崩さずルーミアは問う
「……違う」
「じゃあ何?もしかして人間は食べて良いからこいつは止めて?」
「違う!!」
予想が違い少しだけ不機嫌になるルーミア
「……じゃあ何よ」
問う理由にチルノは告げた
「あんたを……」
能力を一点に集中し、更に込め、高め続ける
その力は氷の妖精である自分すら霜が出来る寒さの冷気
「殺すのよ!!」
鍛え続けた
あの魔帝異変の時に言われた
それからずっと忘れず鍛え続けた自分の出せる最強、最高の冷気
「氷神「凍れる秘法」!!」
ビシッ……
「!?」
ルーミアの周囲に音が鳴る
ビシビシビシッ!!
ルーミアを中心に円を描いて氷が発生し中心に向かう
「こ……これは!!?」
闇の力で対抗するルーミアはその冷気に驚愕した
(こいつ……私を殺す気!?)
殺意が入った極冷、全てを殺す事に向けた力は皇の喉元に届いたのだ
「オ……ノレ……!?」
(油断した!?くっ……まさか妖精ごときにこの私が!?)
徐々に氷が闇を侵食していく
「うぎぎぎぎぎぃ……!!」
「舐めるなああぁ……!!」
押すチルノと耐えるルーミア
「だ……ああああっ……!!」
(と、止まらない……!?)
氷の侵食は止まらなかった
少女が約束を果たす為に鍛え、高めた力
殺すと決めた覚悟を乗せた力
それは時の秘法に似た冷気を作り出す
「だああああっ!!」
ただ……本来の秘法と違うのは結果
時を止める本来の秘法に対しチルノのこれは死
氷が飲み込んだ瞬間、相手に死が与えられる
「クッ……や、やめろ!」
「やめるかぁ……!!」
侵食は更に進む
「い……嫌……」
「もう……ちょっと……!!」
後一息で氷が包む
「た……」
「!?」
その時チルノは見てしまった、重ねてしまった
「助けて……」
皇の助けを求める姿に
ルーミアの姿を見てしまった
「……ッ!?」
動揺して一瞬力が緩む
ズギャア!
氷が闇に押し返され、全て砕けた
ガッ
「……何故手を抜いたの?」
チルノの首を掴んだルーミアは不思議で問う
緩めさえしなければ殺されていたからだ
緩みが限界を越えたからではないと知るから問う
「うー……うぅー……!!」
チルノは答えない、悲痛な顔で呻いていた
「バカな奴……あのまま行けば私を殺せたのに……」
返事はなかったがもうどうでも良かった
「私を追い詰めた褒美をあげる……」
チルノを両手で掴むと首筋に舌を這わせ、下へなぞって行く
「食ってやるわ……」
ブチッ……
「いぎゃあああぁぁああッ!?」
食い込んだ歯が肩の肉を抉った
「わはぁ……良い声で鳴くじゃない……」
悲鳴に満足するルーミアは笑顔で肉を噛み始める
「うぅー……ううー……!!」
涙を浮かべ呻くチルノ
泣くのは痛いからではない
(ごめん皆……あたいには……出来なかった……)
それはルーミアを殺せなかったから
確かにあの時緩めなければルーミアは殺せた
だが出来なかった
あのルーミアが友達のルーミアに見えてしまったから……
助けてと懇願する友達のルーミアにトドメは刺せなかった……
(ごめん……ごめん……なさい……!!)
出来る筈がなかったのだ
誰よりも友達想いだったチルノ
魔理沙を隠してまで別れたくなかったチルノが
友達を殺せる筈がなかったのだ
「うー……ぐすっ……うえぇぇん……」
自分の脆い心のせいで皆が危なくなった
それが悔しくて悔しくて泣くしかなかった
「至福の悲鳴を上げなさい……」
食事が進む……
「泣くなチルノ!!」
飛来した影がルーミアの前を通り過ぎた
「……食事の邪魔して……死にたいの……?誰……?」
餌を取られたルーミアは現れた者を睨み付ける
「うぅ……ぐすっ……魔理沙ぁ……!!」
堪らず少女の胸に顔を埋めるチルノ
「私は……」
チルノを抱き抱えた少女は告げる
「こいつの友達だ!!」
闇に食われる刹那に現れたのは最強の友
窮地を救ったのは同じ頂点、二天の一人
チルノがずっと一緒に居たくて別れたくなかった友達
霧雨魔理沙!!
書けましたがクリスマスです、仕事です、一人です。
今話はどうでしたか?これもルーミアを敵にすると決めた時に書きたかった事なので頑張りました。
ちなみにルーミアの強さはムンドゥスより少し下くらいに思ってください、でもとっても強いです。
色々と煮詰まって来ました、今年は後1回くらい投稿出来そうです。
次回も頑張ります!