常闇ノ皇が封印されたと同じ頃
幻想郷にいつもと変わらない青空と陽の光が射した
皇が封印された事で幻想郷を包む闇の力が無くなったのだ
人間の里
「晴れた……やってくれたね魔理沙!」
「ふん……」
魔物にアイアンクローを掛けて持ち上げる萃香は笑い魔物を踏みつけながら幽香は口元を緩ませる
「と言う事は敵の大将クラスを倒したんですね!」
「多分そうだろうね、幻想郷を闇に包むなんて芸当が出来る相手だ、大将クラスだろうねぇ」
喜ぶ文に萃香は殴り掛かった
「ヒィッ!?」
突然の攻撃に頭を押さえる
「ギュイィ!?」
文は死ん……
「油断すんな射命丸……死ぬよ?」
でいなかった
背後から迫る魔物を殴り飛ばしたのだ
「すすっ……スイマセン……」
平謝りする文
内心、ならもっとわかりやすくしてよ、と思ったがかつての上司には口が裂けても言えない
「しっかし……相変わらず厳しいねぇ……」
「そうね、さとりは守れてるけど結界に攻撃がかなり行ってる……どう?」
幽香が結界を張るさとりに問う
「……大丈夫です」
さとりはそう答えるが汗が滴っている
「どれくらい持つのかを聞きたいのよ、正確に把握してなければ行動に支障が……」
幽香が問い返すのを遮りさとりは叫んだ
「大丈夫です!!」
強い意思を込めて
「いつまでも持たせます!持たせて見せます!だから貴方達は敵の迎撃に集中してください!」
苦しそうに顔を歪ませながらも言い切って見せた
里を守る結界を張るという大事な事を担いながらも戦えない申し訳なさからさとりは決めていた
何があろうと結界は絶対に保って見せると、それに命を賭けると
だから宣言した、言ってしまえば後には退けない事を言って覚悟を決める為に
「……わかった」
幽香は了承しさとりが視界に入る様にして広範囲に敵を見据える
「そこまで言うんなら信じてあげる……私達は迎撃と殲滅に力を注ぐだけよ」
空から来る魔物の群れにレーザーを放ち地上の魔物の息の根を止める
「よしきた!あっちで頑張ってる奴も居るし気張るとするよ射命丸!永琳!」
「了解であります!」
「わかったわ!」
萃香も怪我をしている文を労りながら敵を倒していく
「邪符「ヤンシャオグイ」!!」
敵のみを追尾する弾幕を撃ちまくる青娥
「このっ!このー!!」
撃つ、とにかく撃ちまくる
「そことそこ!それとそこ!お願い!」
味方の妖怪に指示を飛ばしトドメを刺してもらう
青娥に魔界深部の魔物を多数相手に勝てる実力は無い、確実に勝てる数は数体が良いところ、だから外の妖怪と連繋し少しずつでも確実に倒していく方法を取っていた
(1体でも多く!芳香の分まで!)
決意した弾幕はいつも以上に威力を増し敵を次々と弱らせる
しかし青娥が頑張ったところで依然劣勢なのは変わらない
変わるとすれば元凶を討たなければならないかもしれない
つまり地獄の帝王を……
エスタークパレス・王室
吹き飛んだ王室
「イオナズン!」
「蓬莱人形!!」
夜天の中激しい攻防を繰り広げる二人
「人形……蓬莱の人の形……まさに貴方は人ならざる者!」
「黙れ!」
また二人が攻撃をしようと構えた時だった
フッ……
一瞬だけ辺りが更に暗くなると闇が消えた
「やったぞ妹紅!」
同時に慧音が声をあげた
「ルーミアは魔理沙達が元に戻した!もう大丈夫だ!」
映像を見て結末を知っていた慧音は妹紅を安心させエスタークに知らしめる為に声を張り上げた
「そうか!よしっ!」
友がやってくれた事を知り、嬉しく広がる青空を見た妹紅はエスタークを不敵に見る
「……」
映像に顔を向け確認していたエスタークはとてもつまらなそうに妹紅を見返した
「まさか妖怪の王が破れるとは……」
つまらなそうなだけで焦りは無い
(皆やってくれた……私が失敗する訳にはいかないな!!)
また意気を高めて表情を引き締める
「ふむ……まぁいい」
そんな妹紅にエスタークはあっさり言った
「自慢の鬼札が破れたのにどうした?逃げる決心がついたのか?」
「まさか……ただ私は少し面倒な事になったと思っただけですよ」
エスタークは軽く言い放つ
「私が皆殺しにするのがね」
皇に任せていた民の殺戮、それが不可能になった今、自分がなさねばならない
「手始めは貴方です藤原妹紅」
軽く言いのけるのは自信があったから
「幻想郷の希望たる頂点を倒す……そして流される血と涙と悲鳴は更なる殺戮の狼煙となる!」
それが出来ると
「次は強者!そして全ての障害を除いた後……残るは人間……」
最早そこに支配の概念は存在していなかった、ただ思うままに殺戮を行い、憎む人間を殺す為だけになっていた
「粋がるのは結構……だがそれは無理だエスターク!」
そうはさせない妹紅は立ち塞がる
「お前は私に躓くんだからな!」
構える妹紅
「……その自信は何処から来るのですか?」
その妹紅にエスタークは問う
「不死故に?例え何度殺されようとも甦れるからそこまでの自信が?勝つまで挑めるから?」
呆れた様に笑った後、自ら答えを出した
「不死をアテにしているのなら残念ながら無駄です、貴方が死んだ際には魂を捕らえ地獄の牢へ閉じ込めます」
それぐらい考えていないわけがないだろう?と
「それがどうした!」
妹紅は答えた
「私はあの日から不死を武器にしようとした事なんて一度も無い!」
あの日とはバーンとの別れの日
死ぬ事は許さないと言われたあの日から妹紅は不死を利用する考えや行為をしていない、だからエスタークの的外れな答えを訂正した
「……なら?」
ならば何故だと問うエスタークに妹紅は言う
「約束したからだ!」
「……約束?」
「そう……幻想郷の皆に!私の魂に!」
妹紅は一層力を込めて言った
「バーンに!!」
交わした約束ではない
でもバーンと親しかった7人で決めたバーンとの約束
「だから……負けられない!」
約束は守るから約束なのだ
出来ないなら約束などしない
出来る、守ると決めていたから根拠も何も無くとも言い切るのだ
「……バーンバーンバーン……くだらない」
誰も彼もがバーンと言う
もう居ないのに
そんな妹紅が愚かに見えたエスタークは問答を止めスキマを使う
(神殿と各翼に増援を……時間が稼げればそれで良い、私が藤原妹紅を殺すまでの……)
増援を送り終えたエスタークは微笑を妹紅へ向け構える
「見えますよ藤原妹紅……死体の貴方に滅んだ幻想郷……滅んだ幻想郷の中心に貴方の墓を立ててあげましょう……お友達も一緒に……」
「幻想郷は滅ばないし私達は負けない!例え幻でもお前にその景色を見させる訳にはいかないんだよ!」
存亡を賭けた戦いは続く
エスターク神殿・分岐の間
「どうした霊夢?」
抱き合う3人を険しい表情で見ている霊夢に魔理沙は聞いた
「……いえね、常闇ノ皇もただ生きる為に必死だったんだって思ってね……そう考えたら可哀想な事をしたんだなって」
「……そうだな、でも私達が負けてたら幻想郷の皆は全て食われてた」
「わかってるわよ……幻想郷は全てを受け入れるなんて紫は言うけど無理な事だってあるわよね、だから拒絶した」
「何もかも綺麗にはいかないさ、綺麗事はそりゃあ素敵だけど必ずしも綺麗事じゃ終わらない、何か、誰かの犠牲の上に……なんてよく有る話だ」
「それもわかってるわよ、ただ……封印じゃなくて共存出来る方法があったんじゃないかって思っただけよ」
「手遅れさ……もうな……ルーミアが無事だったんだからそれで良しとしようぜ霊夢……今は素直に喜ぶ時だ」
「そうね……」
会話が終わると魔理沙は元気良く皆に言った
「よし!喜ぶのは一先ず終わりだ!お前達はここに何しに来たんだ?そっちは終わったのか?」
4人が神殿に居る理由を知らない魔理沙の問いに4人はハッとして立ち上がった
「そうでした!紫さん達の救出でした!」
「危ない危ない……ルーミアを助けたのでやりきった感があって忘れてた……」
美鈴とにとり、そして大妖精と正邪、チルノが続く
「3人はこの先の地下牢に囚われています!」
「幻想郷も気になるけどここまで来たんだ、私も行くよ!」
「行くわよ皆!後に続け!」
「わかったのだー!」
ルーミアも加わり地下へ向かう
「イテテテ……」
だが足取りは重い
疲れとダメージが酷く満足な者は誰も居ない
「もうちょっとだ……頑張れ……!」
正邪の先導の元、もう少しで達成出来る事に元気が出た8人は重いながらも急ぐ
……ブゥン
「「!!?」」
空間を裂いたスキマが足を止めた
「グルルルル……!」
「ピキャァァァ!」
「ヴゥゥ……!」
「エフッエフッ!」
現れる魔物の大群
「チッ!簡単には行かせないってか!見てやがるなエスターク!」
舌打ちし構える正邪
「ですが足止めかトドメにせよ魔物しか出さないのなら皇以上、もしくはそれに近い手駒がもう居ないのでしょう!」
「だろうね!でも油断禁物だよ!安心させてズドン!なんてエスタークならやりかねない!」
同じく構える美鈴とロビンに乗るにとり
「チルノちゃん大丈夫?」
「正直辛いかな……でも大丈夫!」
「私もやるのだー!」
3人も退くつもりは無い
「魔理沙……休んでても良いのよ?」
「冗談抜かせ!皆が!パチュリーが!フランが!妹紅が頑張ってるのに私だけ休んでられるか!」
霊夢の気遣いに一番ダメージが酷い魔理沙は微笑み八卦炉をかざす
「やああああああってやるぜ!!」
塞ぐ敵へ駆ける
エスタークパレス・前部ドーム内
ズオオオッ……
魔物を一掃したパチュリーはドーム内を見渡す
(ここも違う……やはり主城のどこかの部屋?)
パチュリーはエスタークの元に向かわず誰かを探していた
(妹紅なら有り得るわね、きっと脇目も振らずエスタークに向かったんでしょう、元凶を倒せば終わらせられると信じて……)
倒すべき相手だけを見据えた行動を予想し納得した
(なら私は手を打たれるより先に救うのが妹紅の援護に繋がる)
戻る為に身を翻す
(待っててレミィ……!)
パチュリーが探していたのはレミリア
レティを逃がし主城に向かおうとしたパチュリーを思い止まらせたのは囚われのレミリアの存在
救出に向かわれる紫達とは違いレミリアはどこに居るかの保証が無い為にエスターク打倒と同時進行、もしくはエスターク打倒後に救出になっていた
しかし今現在、可能性として考えられる事はいくつかあった
レミリアは主城以外のどこか、パレスの施設かもしかすれば神殿に居る
妹紅がエスタークと対峙したなら既に救出済みか主城の部屋の見逃し、もしくは魔術的な工作で探したが妹紅にはわからなかった
そして既に人質として利用されているか
これらが浮かんだからパチュリーはまずレミリアの安全の確保を優先した、レミリアを救出出来たなら少なくとも人質が減って妹紅の気兼ねが無くなるから
(……!来たわね)
通路へ繋がる出口を前にパチュリーは感じ取り、立ち止まる
「わっ!?パチュリーかぁ……ビックリしたぁ……」
来たのはフラン
攻撃しようとしてパチュリーだと気付いたフランは慌てて攻撃を止め近付いた
「無事で良かったわ……フラン、その様子じゃ3つに別れた尾翼と右翼にはレミィは居なかったようね」
「パチュリーも無事で良かった!……あ、レティは?」
「レティも無事よ、今は下に向かわせたの、それよりレミィは居なかったのね?」
「え……うんそうだよ……あ、そっか!私の魔力を感じて私もお姉様を探しているのを知ったからパチュリーは左翼とここを調べてたんだね!」
「そうよ……そう、居ないのね……残るは主城のみか」
「お姉様の魔力は感じないの?」
「ええ全く……おそらく力を押さえられているか遮断する部屋に居るのでしょう」
「わかった!じゃあ早く行こ!夜はなくなったけど妹紅も心配だし!」
「そうね、行きましょう」
外の通路に出ると二人は思わず止まった
「やられたわね……」
「みたいだね……」
苦い二人の視界に広がるのは魔物
夥しい数の魔物がパレス全体に充満していたのだ
「まだまだイケるわね?」
「もちろんだよ!」
二人を視認した魔物達が襲って来る中
「そこを……退きなさい!」
「邪魔だー!」
群れへ突入して行った
エスタークパレス・王室
「ラアッ!」
ドオッ!
「ラアアアア……!!」
ドッドッドオッ!
「セアッ!」
バキャア!
「……!!」
ドウッ!
「~ッ!?クソッ!」
妹紅は攻めあぐねていた
障壁は砕けてもエスタークに攻撃が届かない
避けられるか今の様に直前で魔力に弾かれていた
ブゥン……
そしてスキマによる全方位からの攻撃
「ハアッ!」
ゴウッ!
炎で焼き払い同じく攻撃は通さない
シュ!
首を刈る剣の一閃
「……!!」
避けようとせずカウンターの構え
ピタッ
剣は妹紅を覆う炎を前に寸前で止まった
「そうでした……貴方は鋼すら瞬時に溶かす炎の持ち主、このまま切りかかっていれば一撃を受けていたでしょうね」
「経験が活きて良かったじゃないか」
睨み合う二人
「まぁ受けた所で……ではありますがね」
先に表情を緩ませ言葉を出したのはエスターク
「……受けてみるか?」
表情を変えない妹紅は腕に力を込める
「嫌に決まってるでしょう?私は伊吹萃香の様な酔狂で愚かな真似は好みません……それにね」
剣が動く
「今なら切れます」
ザンッ!
「うぐっ!?」
止まっていた剣が腕を切った
「くっ……」
すぐに距離を取り傷を確認する、皮膚を軽く切っただけの様だ
「貴方を相手にするのにあの時と同じ剣だと思いますか?」
剣に付着した血を払い、見せつける
「この双剣は名を魔界の剣……魔界深部の魔物を集めていた時に見つけた剣です、材質は神の金属オリハルコンに次ぐと言われる魔界の金属!」
「その金属は高い硬度を持ちながら高熱や冷気を全く受け付けない素晴らしい耐性を持っています!」
「フフフ……その昔に魔界随一の刀匠が作り上げた物だそうです」
2本の剣は刀身に陽の光を浴び妖しい輝きを見せる……
幻想郷・焼き払われた森の跡地
「迷いの竹林に数十体!08小隊が向かって!」
「地底にも向かってる!レッドソルジャー部隊!任せたわ!」
「白玉楼と紅魔館にも!?……白玉楼はいいわ!紅魔館は死守して!必ずよ!あの場所だけは必ず守り抜いて!!」
幽々子の絶え間無い指示が飛ぶ
「西行寺様!博麗神社劣勢!持ちこたえていますがかなりの数の侵入を許しています!」
「人間の里も同様です!結界の種類が違うため博麗神社程ではありませんが軽視は出来ません!」
次々と来る戦況報告
「……!!」
考えて早急に指示を出さねばならない
ドシュ!
「キェェェ……」
戦いながら
余りにも多く、そして強い数に幽々子自身も戦いながら指示を出さなければならない切迫した状況
(博麗神社は破邪の結界を張ってる……規模は大きくはないけど侵入出来た魔物は弱体化するしあの蓬莱山輝夜も居る、まだ持つ筈……それよりも里が危険……でも最悪人間が死ぬだけの里よりも博麗大結界の要である博麗神社の方が……)
何を優先すべきか、何が幻想郷にとって大事なのか
それを秤にかけて考える
「あっ!危ない!」
伝令の鴉天狗が叫ぶ
動きの止まった幽々子を魔物が襲いかかっていた
ズバアッ!
魔物は両断され生き絶える
「……」
切ったのは用心棒のロン、思考する幽々子の邪魔をしない為に言葉も掛けず無言で迫る魔物を切り伏せる
「椛!!」
幽々子は椛を呼んだ
「ハイ!」
すぐに参じた椛に幽々子は指示を下した
「はぐれた魔物を掃討する一部の部隊を残して残りは博麗神社!人間の里!両方に加勢に向かって!」
「幽々子様は!?」
「私はロンと共に全てのフォローを行うわ!ここまでくれば総力戦よ!」
「わかりました!」
指示を受けて妖怪やハンター達は二手に別れていく
「……ふぅ」
秤は揺れなかった
幻想郷とそこに住まう人間
それに優劣をつける事は出来なかった
守ると決めた事でもあったし自分が人間だった事もあったのだろう
(あの子が帰って来た時に人間は皆殺しにされましたじゃ……あの子の生きる意味が……)
それに妹紅の想いを知っていたから
元人間の妹紅の想いは元は人間だった幽々子にはなんとなくわかっていた
だから誰より人間の側に立ち、人間の為に戦う妹紅の想いを無下には出来なかった
「さぁここからは耐え忍ぶ戦い……エスタークを討つまで耐えれば私達の勝利よ」
覚悟を決める幽々子
「!!……そう簡単にはいかんみたいだぞ幽々子」
そこへ感じ取ったロンが言葉を掛ける
「何かあったの?」
「ああ……俺が昔作った剣の気配を感じたんでな、使っているのはエスタークだ」
「剣?貴方エスタークに作ってたの?この裏切り者!!」
「がなるな、そんなわけがあるか……アレは俺が昔に作った鎧の魔剣や鎧の魔槍の原型になった剣、剣としての完成に手を加えたのが魔装具の類い、だからアレは言わばただの剣なんだがな……バーンに献上するつもりだった武器の1つだ」
「だった?」
「そうだ、あの剣は献上しようとして止めた剣なのさ……理由は既に鎧の魔剣を作っていたから言ってしまえば失敗作になった剣……だから止めたのさ」
「エスタークが持っている訳は?」
「ここまで言えばお前なら察しがつくんじゃないのか?」
「……スキマね」
「大方魔物集めの時に偶然俺の世界の魔界に行って見つけたんだろうな……この星皇剣と違って特に封印はしていなかったし俺の昔使っていた工房に野晒しのままだったからな」
「……」
「睨むな……そんな事まで予測がつく訳がないし俺に責任を求められても知らん」
「……妖夢の婿になるなら許してあげる」
「……考えておいてやる」
ロンの無愛想な返事を聞いて幽々子はプイッと顔を逸らすと死蝶を大量に展開する
(大丈夫!強い剣くらいで負ける程弱くなんてないでしょう!)
態度とは裏腹に全く気にしていなかった
(そうでしょう……?)
そして何故か今エスタークと戦っているのが誰かわかった
(妹紅……)
誰よりも優しく、人間よりも人間らしい蓬莱人の勝利を信じる……
ズバッ……
「うっく!?」
ザンッ……
「くあっ!?」
ブゥン……ドウッ!
「うがっ!?」
シュザザザザ……!
「あぁぐっ!?」
ヒュザッ……!
「ウグアアッ!?」
ドシャ……
「ッ……クッ……!?」
全身を刻まれ吹き飛んだ妹紅が床に倒れる
「意外に呆気ない……剣だけでここまで差が生まれるとは……魔力とスキマも使えばここまで手も足も出ないものか」
その顔は明らかに拍子抜けだと言う様につまらなそうにしていた
「まぁいい……潔く敗北を認め私の軍門に下るなら……そうですね、お友達くらいなら生かしても良いですがどうです?」
面白い事を思い付いたとエスタークは問う
この問いに意味など無い
期待しているのは悩み、それでも戦おうとする必死の姿
勝てない敵に必死に挑もうとする愚かな姿が見たかった
「……」
しかし……
「笑わせるなっ!!」
その目論みは潰える事になる
ゴオオオッ!!
立ち上がる妹紅を更に激しい炎が纏う
「お前が私を切れる剣を持ってる!?」
傷口から流れる血は熱で蒸発し傷口を塞ぐ
「スキマがある!?」
燃え上がる炎は更に形を追加していく
「バーンの魔力がある!?」
ゴゴ……ゴゴゴ……!
炎は翼と胴体に続き尾を形成する
「それがどうしたァ!!」
ゴオオオウッ!!
「それは私に勝てる理由にならないんだよ!!」
炎が一瞬、大炎に燃え上がると妹紅は姿を見せた
「証明してやるよエスターク……お前を倒して!!」
首無しの不死鳥
不吉の象徴とされる首の無い不死鳥
相手に良くない事が起きる妹紅の全てを出した姿
「行くぞ!!」
呆気に取られているエスタークに妹紅は駆ける
「!!」
繰り出される拳を見て障壁を作り出すエスターク
ズドォ!
「ぐうぅ!!?」
障壁を貫いた拳がエスタークを殴り飛ばした
「……」
倒れるエスタークを見下ろす妹紅、何も言わないのはまだエスタークは終わっていなくて油断ならない相手だから様子を見ている
「……まったく……貴方には呆れますよ……」
倒れるエスタークが呟く
「妹紅……」
立ち上がったエスタークは口から垂れる血を拭うと妹紅を見て微笑んだ
「どれだけ力の差を見せても折れない……」
ダメージはあるにはあるが障壁に緩和され軽傷
「人間を守るなど馬鹿な事を言って聞かないし……」
その思考は変わろうとしていた
「どうすれば貴方は折れるのですか?」
無意味な問い、嫌味に近い
「……」
妹紅は返さない、自分の全てを見せてあの様子なのを警戒している
「……そうですね、良い事を思い付きました」
考えを変えたエスターク、楽しそうに妹紅を見た
「これで心を折ってあげましょう……貴方と同じ頂点のレミリアすら敗北を喫したこれで……」
剣を納刀し手をかざす
「……やってみろよ」
迎え撃つべく構える妹紅にエスタークは言った
「これが……」
「!?」
妹紅は驚愕し目を見開く
たったそれだけの言葉と動作でわかってしまったのはそれが妹紅の中でとても大事な事だったから
だから次に出る言葉もわかっていた
私のメラゾーマです……
「その想像を絶する威力と……」
「……やめろ」
何をするのか理解したから体を震わせやめろと口に出る
「優雅なる姿から……」
「……やめろ!!」
一番良く知っている技だから
「太古より魔界ではこう呼ばれます……」
「やめろォォォ!!」
妹紅の叫びが木霊するとそれは撃たれた
「カイザーフェニックス!!」
それは妹紅と同じ炎の不死鳥
炎の魔力が自然とフェニックスに形を成す至高のメラゾーマ
バーンの不死鳥
ズガァ!!
フェニックスと妹紅が激突する
「ぐうううぅ……!!」
二体の不死鳥は炎を撒き散らし強く押し合う
「……アアアッ……!!」
激突の最中妹紅が吼えると拳に力を込めた
「アアアアアアッ!!」
猛る咆哮と共に拳を打ち込み
バオッ!!
フェニックスを打ち消した
「ハァ……ハァ……」
拳と頭を下げ息を荒げる妹紅
「素晴らしい!流石は皇帝不死鳥です!」
エスタークの賛辞が贈られる
「……お前がァ!!」
返されたのは怒り
「その技を使うなッ!!」
それも凄まじいまでの怒り
「それは……」
何故ここまで怒るのか?それは決まっている
「それはバーンの技だ!!」
その技は亡き友の象徴とする技だったから
「お前が使うなァ!!」
それを使うエスタークに妹紅は激昂したのだ
バーンとの繋がりを汚されたから
「フフフ……おやおや、何故怒るのです?おかしな方だ……」
エスタークは邪悪な笑みを浮かべていた
「貴方は怒るべきではなく寧ろ喜ぶべきです、だってそうでしょう?何故なら貴方は……」
悪意しか無いそれは簡単に心を抉る言葉を紡ぎ出す
「あの大魔王バーンを越えられたのですから……」
想いを嘲笑う言葉を
「違うッ!!」
妹紅は声を荒げ否定する
「お前はバーンじゃない!!」
自分が越えたいのはバーンの使うカイザーフェニックスであってエスタークの使うカイザーフェニックスではない
「違いませんよ、大魔王の魔力を持つ今の私はバーンとも言えます……越えられたのですから素直に喜べばよろしいのに」
「違うッ!!お前がバーンを語るな!!違うんだよッ!!」
いくらバーンの魔力を得て、バーンの技を使おうとも決してバーンではない
だから妹紅は否定し怒る
「クク……ハーハッハッハッ!!」
「エスタァァァァァァァク!!」
不死鳥は舞う
強く舞う
友の誇りの為に……
許せない敵を討つ為に……
明けましておめでとうございます。
新年最初は帝王との本格的な決闘になりました。
この最後のエスタークがカイザーフェニックスを撃って妹紅が怒る!これがかなり書きたかったシーンの1つだったので満足です!原作してる人はニヤッとしそうなちょっとした小ネタ入れたり楽しかったです。
今年もよろしくお願いします。
次回も頑張ります!