東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第三十六話 終着へ至る運命糸

エスターク神殿・地下牢

 

「……」

 

閉じたスキマを見つめるのは紫

 

「……行っちゃったね」

 

にとり

 

「違う……行かせてしまったのよ」

 

憔悴の表情を見せながら紫は答えた

 

「本当なら原因を作った私が倒さねばならなかった……」

 

ここまでの事態を招いたのは全て自分に有る

 

敗北し利用された事に疑いの余地は無いし言い訳する気も無い

 

だから自分がけりをつけなければならなかった

 

「仕方ないよ、あんたは弱ってた……私や美鈴を送れないくらいにね、そんなあんたをあいつらが行かせる訳ないだろう?」

 

「わかってる……私が行っても返り討ちにあってまた利用されるだけなんて事……」

 

半年にも及ぶ監禁は紫を大きく衰弱させていた、スキマの強制使用の負荷が無くなったとはいえ殆ど何も知れない半年の期間は大妖怪の紫でさえ健常はあり得ない

 

「後はあいつらに任せときなって、勝つさ……なんたって幻想郷が誇る最強の7人なんだ!負けるか!」

 

「……そうね」

 

正邪に頷くと紫の牢に入ってくる者が居た

 

「早苗さん無事保護しました!」

 

「神様も無事なのだー!」

 

美鈴が早苗を抱き、ルーミアが諏訪子を背負っていた

 

「……」

 

「ごめん……ありがとう……」

 

早苗は衰弱が激しく目こそ開いているが喋らない、代わりに諏訪子が謝罪と礼を言った

 

「もう大丈夫ですよ!」

 

美鈴が早苗に微笑む

 

「……ぐすっ……」

 

早苗は急に鼻声で美鈴にしがみつき

 

「うあぁぁぁぁぁん……!」

 

大声で泣いた

 

「怖かったぁ……寂しかったよぉ……」

 

いくら神の力を持っているとは言っても人間

 

神の領域に至らない肉体と人間同様の精神に半年の監禁は辛過ぎるものがあった

 

しかも監禁者が自分の爪を剥いだエスターク、そして命令無視の魔物の拷問

 

寧ろよく耐えた方とも言える

 

普通の人間なら発狂するか衰弱死している程の地獄だったのだから……

 

「よしよし……もう大丈夫ですよ~もう安心ですよ~」

 

赤ん坊の様に泣きじゃくる早苗を母親の様にあやす美鈴

 

「うぅ……うー……」

 

少し落ち着いたが美鈴の胸に顔を埋めて離れない

 

「神奈子は?」  

 

二人に問うにとり

 

「いえまだ……先に早苗さんと諏訪子さんを見つけたので優先しただけです、違う牢でしょう……」

 

「神奈子は一番奥の牢だよ、案内するよ」

 

正邪が代わりに答えて案内しようとする

 

「あ、いいよ、私が行くから」

 

ロビンの肩に乗る

 

「私が神奈子の所に行くよ、ちょうど用も有ったしね」

 

「……用?貴方が……神奈子に?」

 

今まで幽閉されていた神奈子に用があると言うにとりが紫には解せない

 

今この状況で用がある、必要な事なのは確かなのだろうが聡明な紫にも予想もつかないから問う

 

「私が……って訳じゃないんだけどね……私が行かないとダメなんだ」

 

「……?」

 

用はにとりがではない、だがにとりが行かなければならない

 

それが余計に紫を混乱させる

 

「私もよくわからないけどなんでも幻想郷を救うのに必要な事らしい……だから心配は要らない」

 

「……そう」

 

にとりの言動から誰か他の者が居ると知った紫だがにとりすら知らない事を自分が聞けるとは思えないし幻想郷を救う為だと言う事にそれ以上は聞かなかった

 

「じゃあ私が神奈子を連れて帰るから先に紅魔館に戻っててよ」

 

「一人では……ロビンが居るなら大丈夫ですか、わかりました!」

 

単独行動が不安になった美鈴だが敵を全滅させた神殿内に加えて紫の奪還によるスキマによる増援の可能性の排除、ロビンの強さ、それらを踏まえて問題は無いと判断し3人を連れて紅魔館に繋がる出口へ向かう

 

「さて……行くよロビン!」

 

紫の牢で皆を見送ったにとりはロビンを進ませる

 

「もし嘘だったら……その時はわかってるよね……?」

 

一人呟く

 

「役立たずの神様さんさ……」

 

『……わかっている』

 

にとりにしか聞こえない言葉と共に神奈子が囚われる牢を探しに奥へ進んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり無理をしてでも美鈴とにとりも送れば良かったかしら……)

 

戻りながら紫は神妙な表情で考え込んでいた

 

(送ろうと思えば出来た、弱ってても二人と1体追加するくらい僅かなもの……)

 

いくら弱っていようが3人と共に美鈴とにとりとロビンを送るぐらいの事は容易に出来た

 

(でも神奈子にもし策を使うその時にスキマの力が使えるならなるべく温存しといてくれと言われた……何を送るのかは知らないけどかなりの力を使うみたいね)

 

それをやめさせたのは神奈子の策にあった

 

スキマを使えるなら何かを送りたいから出来るだけ使用して消耗は抑えてくれと伝えられていた

 

だから美鈴達も送るその僅かをやめた

 

だが紫は3人を送っている、エスタークをその策を使わずに倒せる可能性が有る3人が来たからだ

 

どちらもエスタークを倒せるのならと考えた紫は熟考した上で目前の可能性と策の可能性の合間を取った

 

(大丈夫よ……3人を送ったから無理なんて言わない……いつでも良いわ……神奈子!)

 

無論それは紫の勝手な行動、紫は紫でそれが良いと思って行ったのだ、それを言い訳にする気は微塵も無い

 

(死を覚悟していたもの……例え死んでも約束は果たす……!!)

 

捕まった時に死のうとしていた

 

ならその時既に自分は死人

 

ならば今死のうが変わりは無い

 

(全てはバーンの……幻想郷の為に……)

 

バーンとの約束を果たす為に、愛する幻想郷を守る為に

 

己を擲つ覚悟は出来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

「行くぞ!」

 

構えた6人が飛び出そうとする

 

「いつでもどうぞ……」

 

黒い衣を纏うエスタークは微笑みながら7人を見ている

 

「……舐められてるな」

 

「ああ……気に入らねぇぜ!」

 

妹紅と魔理沙が先に行こうと足に力を込める

 

「まぁ待ちなさい」

 

逸る二人と一緒に全員を前に出たレミリアが止めた

 

「私が行くわ」

 

「なんだよレミリア!抜け駆けかよ!」

 

抗議する魔理沙にレミリアは横目を向け微笑む

 

「そんなボロで粋がらないの……それにあいつには借りがある……私を妃にするなんて舐めた事抜かしたあいつに……」

 

微笑みは殺気満ちる顔に変わる

 

「だから……」

 

魔力を荒ぶらせレミリアは叫んだ

 

 

「私が殺す!!」

 

 

その吸血鬼の羽を強く羽ばたかせ有無を言わせず突撃していった

 

ガガアッ!

 

「貴方からですかレミリア……貴方は殺したくはないのですが……」

 

「勘違い甚だしいぞ!私で終わりだ小僧……!殺したくないなら結構!そのまま死ね!」

 

剣と魔力で覆った腕を押し合う

 

「貴方には無理です」

 

「変わった辞世の句を読むんだなお前……」

 

弾き合い距離を離す二人

 

すぐさまレミリアが高速でエスタークの周囲を動き攻撃を行いエスタークがそれを受ける

 

 

「張り切ってんなぁレミリア」

 

「囚われて妃になれなんて言われたらそりゃ怒るだろうなぁ……バーンが居るレミリアは余計にさ」

 

レミリアの戦いを見つめる魔理沙と妹紅

 

「それもあるでしょう……でも本当は私達の為よ?魔理沙、妹紅」

 

パチュリーが口を挟んだ

 

「え?違うの?」

 

そうだと思ってたチルノが問う

 

「私達が傷ついてるからだよチルノちゃん!」

 

大妖精が答えた

 

「そう、私達は差はあれど傷つき消耗してる、だからレミィは行ったのよ、無傷な自分が先に戦ってあの余裕とあの纏ってる妙な黒いのが何なのかを探る為にね」

 

パチュリーと大妖精にはレミィの有無を言わせない突撃に労りを感じていた

 

事実レミリアは6人の状態とエスタークの余裕を鑑みてそれが最善と判断して先陣を切った

 

誰も無傷とは言えない6人、特に消耗の激しい魔理沙とチルノが不気味な余裕を見せるエスタークから思いもよらぬ一撃を受けて危険に陥るのを避けたかった

 

だから無傷の自分が様子見を兼ねて攻撃を行い余裕と得体の知れない黒い衣の正体を探り後々に繋げようとした

 

「お姉様も素直じゃないからねー、もちろん自分で倒すつもりなのは確かだけど本当は皆を想ってるよ!」

 

姉であるレミリアをよく知るフランもわかっている

 

「それより……どうフラン?」

 

パチュリーが尋ねた

 

「うーん……ダメみたい」

 

残念そうにフランは答えた

 

「あいつの目は出るんだけどなぁ……潰せないの」

 

フランは密かに能力によるエスタークの撃破を行っていた

 

「あの黒いのが原因?」

 

「それもあるみたい、能力を阻害する力を感じるから……あたし対策だね、でもそれが原因じゃないよ」

 

「どういう事?」

 

「あたしの能力って阻害する程度で防げるものじゃないの、あの黒いのがどんなに強い抵抗力を持ってても運命を決める力にそんなのは意味を為さないの」

 

「……なら何故エスタークの命を壊せないの?」

 

「あたしにもよくはわからないけどあいつの命を何かが守ってるみたいな感じがする……守ってるって言うよりは居るから壊せないみたいな」

 

「何か……」

 

パチュリーの表情が曇る、フランが破壊出来ない意味を知っているから

 

「あの時と同じだね……」

 

フランもわかっていた

 

「ムンドゥスの時と……」

 

フランが破壊出来ないもの、それは己の力量を越える力を持つ者

 

つまり原因は不明だがエスタークは何かに守られているから能力による打倒が出来ないのだ

 

(何かを飼ってる?……それは無いわね、その何かを知っていて力を知るなら余裕面で妨害にもならない阻害をしようとする筈が無い……)

 

考え、探るがわからない

 

(フランの力を越える何か……)

 

パチュリーは言い様のない不安を感じる

 

(つまりそれはムンドゥスに匹敵するかもしれない事を意味し……)

 

可能性を考えてしまったから

 

(もしくはそれ以上の……)

 

魔帝以上の脅威を……

 

(……いえ!)

 

頭を振り不安を振り払った

 

(倒せば!可能性ごと消し飛ばせば良い!人質も皆救出した……後はエスタークを倒せば!)

 

残るのはエスタークのみ、それを倒せば終わる、終わらせれる

 

そう確信したからパチュリーは戦いを見ながら観察する

 

(レミィ……充分に見させて貰うわ、でも貴方が倒せれるなら遠慮は要らないわよ?)

 

親友の王女を応援しながら冷静にエスタークを見極める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィン!

 

「……チッ」

 

ドドドドドドッ!

 

「フン……」

 

ヒュン……ギィン!ギギギギンッ!

 

「思うより出来るじゃないか、えぇ小僧……?私を見て狼狽していた時に比べれば大した躍進だ」

 

「随分と強気ですねレミリア?私に怯えていた時に比べれば大した変わり様だ……何か秘訣でも?」

 

バチッ

 

二人は距離を離す

 

「フンッ……そのセンスの欠片も無い黒いのは飾りか?渾身の力作の様だが心配せずともなびく女は居やしない」

 

「フッ……」

 

探る挑発にエスタークは微笑む

 

「戦ってみてわかりましたがレミリア……やはり貴方は中途半端……」

 

「へぇ……私をして中途半端とはね……理由を言ってみな」

 

「弾幕も肉弾戦もこなせる貴方ですが弾幕は風精に及ばず身体能力は妹に劣る、長所……尖った部分が無い」

 

「無知なるお前に言っておく、知っておけ……万能と言うのだそれを、あらゆる戦局に対応出来る力を私は養ったのだ」

 

「フフ……貴方がそう思うならそうなのでしょう……貴方の中ではね……」

 

「言うじゃないか小僧……しかし悪いが話にならん、借り物の力で戦うお前は私との討論の土俵にも立てていない……その力を捨てて初めてお前は私と話せるんだ……違うか?……王の威を借る小物のエスターク……?」

 

互いに冷笑を浮かべる

 

「ならば言葉は無用……その誇りと共に地獄へ誘いましょう」

 

衣を見せつける様に更に黒くさせるとエスタークは構える

 

(来るわね……)

 

正体を見極めるべく同じく構えるがその表情に不安は無い

 

「結構……お前に決められる程私の運命は安くはない」

 

後を任せれる友が居るからか

 

「死ねエスターク……我が夫の力を墓標に……」

 

迷い無く許せない敵へ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

「ウラアッ!」

 

顔を掴み地に押し付け頭を粉砕

 

「キエエエーッ!」

 

襲い来る大群

 

「喧しい!」

 

怒鳴ると体を霧散させる

 

ズドドドドドドドドッ!!

 

半径数十メートル内に居る魔物を攻撃し1ヶ所に押し込んでいく

 

「幽香ァ!!」

 

魔物の密集地帯を作った萃香は呼ぶ

 

「ハアッ!」

 

傘を構えた幽香がビームを撃ち込み密集地帯を消し去る

 

「次ィッ……!」

 

萃った萃香が声を出した次の瞬間

 

 

ドスッ……

 

 

体を爪が貫いた

 

「……チ……ィ……」

 

刺した魔物を睨み殴ろうと腕を振りかぶる

 

 

ドスッドスッ!

 

 

更に爪と棘が貫いた

 

「ッ……ァ…………」

 

何かを言いたそうに口を動かすが声に出ず

 

 

その場に倒れた

 

 

「萃香ッ!!」

 

幽香は叫び駆け寄ろうと魔物を薙ぎ払う

 

 

ガン……!

 

 

駆け寄る動きは止まった

 

「……コノ……!!」

 

後頭部を棍棒で殴られ血を溢れさせながら振り向く

 

 

ドギャア!

 

 

痛恨の一撃が幽香を打ちのめした

 

「……」

 

倒れたまま動かない幽香

 

 

「ヒヒヒ……」

 

「カカカ……」

 

血溜まりを作り倒れる二人を倒した魔物が筆頭に魔物が囲む

 

 

「くたばれーーッ!!」

 

 

トドメを刺すべく腕を振りかぶり、囲む魔物が襲いかかろうと体を強張らせる

 

 

 

 

 

 

  

 

ガッ……

 

 

 

 

 

魔物の動きは止まった

 

「……まだ……さ……」

 

倒れた萃香が起き上がり、魔物を掴み上げていたから

 

「……やって……くれたわね……」

 

幽香もまた立ち上がり、殴った魔物の首を掴んでいた

 

「ヒィィィ!?」

 

掴まれた魔物は恐怖で竦み上がっていた

 

半ば死にかけている……

 

ダメージに疲労

 

肉体も精神も見るからに限界、いや限界すら越えている

 

なのに動く、動ける、戦おうとする

 

「まだ……くたばれないねぇ……」

 

「そうね……まだまだ……」

 

その身に宿る魂の炎を燃やす

 

「まだ……納得してないのさ……自分が良いと……」

 

「満足して……良くやったと心から思えてない……」

 

萃香は自分が自分らしく生き、仲間から貰い、友が認めた名に恥じぬ様に

 

幽香は約束を果たす為に、見つけた絆を守り通す為に

 

 

 

「だから……」

            

「この程度で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

          まだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              

        死ねない……!!

              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ギャアアアアッ!!?」」

 

 

 

掴まれた魔物の断末魔が上がると二人は叫んだ

 

 

「幽香ァ!!」

 

「萃香ッ!!」

 

 

戦友の名を

 

 

「「鬼花「百鬼繚乱」!!」」

 

 

傘に溜め込まれ、撃たれたビームを萃香が能力で広く拡散させる

 

百に拡散された強いビームは魔物を貫き死の山を幾つも作り上げた

 

 

「ハアッ……ハアッ……ハ……ハハ……」

 

魔物が一掃された場所で萃香は笑った

 

「ハアッ……ハアッ……フッ……フフッ……」

 

同じく幽香も

 

二人は座り込んで同じ場所を見ていた

 

「……潮時かねぇ」

 

「……かもね」

 

二人の視線の先

 

それは迫ってくる魔物の大群

 

二人で二千以上は倒したのにまだ終わらない

 

死力を尽くして戦ったが終わりに到る事は出来なかったのだ

 

「ねぇ幽香……」

 

「何よ……今更……」

 

萃香は幽香へ向くと頬を緩ませ

 

「楽しかったねぇ」

 

笑った

 

とても満足だと

 

「……そうね」

 

幽香も視線を下げ目を閉じ頬を緩ませる

 

「楽しかったわ」

 

二人が笑うといつの間にか周囲に人間が居た、二人を守るように立ち塞がる

 

 

「今のこいつらと心中すんのなら……そんなに悪い最期じゃあないと思うよ……」

 

「そうね……死ぬには良い日かもね……」

 

 

魔物が……飲み込む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖夢!!」

 

 

「ハイ!ロン・ベルクさん!行きます!!」

 

 

 

 

 

飛来する者が居た

 

二人を守る人間の前に立つと剣を構える

 

 

「断命剣「冥想斬」!!」

  

 

「星皇十字剣!!」

 

 

斬撃が魔物を斬り飛ばした

 

 

「フン……間に合ったか」

 

「大丈夫ですか!」

 

酒瓶に手をつけるロンと二人に駆け寄る妖夢

 

「あんたが来たって事は……」

 

「そうです!博麗神社の敵は全て倒しました!」

 

笑顔で妖夢は答える

 

「神社は各地にはぐれた魔物の掃討を終えた妖怪やハンターと森近霖之助に任せた、残った戦力はここに全て集まっている……靈夢が古明地さとりと交替し他は迎撃に向かった……直にここも終わるだろう」

 

「お二人が頑張ってくれたお陰ですよ!人間と妖怪が協力して……でもそれだけでは間に合わなかった……お二人が……こんなになってまで頑張ってくれたから……間に合いました!」

 

二人の説明が終わると二人はまた顔を見合わせた

 

「ハッハー……死に損なっちまったねぇ」

 

「らしいわね……」

 

二人は立ち上がろうとする

 

「何をする気ですかそんな体で!?休んでてください!」

 

妖夢が慌てて止めようと二人を押さえる

 

「酒も男も知らんガキんちょは黙ってな……私等はまだやれる……そうだろう幽香!」

 

「ええ……せっかく満足してたのに不粋な真似して……先に殺して欲しいの妖夢?」

 

「イタタタタ……もぉ!ロン・ベルクさん!」

 

二人に顔を掴まれ握られる妖夢が助けを求める

 

「止めるな妖夢、それがそいつらの生き方なんだろう……止めてやるな」

 

「話がわかるねぇあんた……今度飲もう!」

 

「ちょ……ロン・ベルクさんまで!?」

 

妖夢を引き剥がすと先頭に立つ

 

「もぉ~……わかりました!わかりましたよ!もう止めません!代わりに私が一緒に行って守りますからね!それが譲歩です!飲めないなら行かせません!」

 

「……好きにしな」

 

「では……行きましょうか」

 

4人は魔物へ向かって行った

 

終わりの見えた戦いを終わらす為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

「どうしましたレミリア?それが限界ですか?」

 

「くっ……」

 

応酬を続けるレミリアの顔色が悪い

 

ギギギッ……

 

剣を腕で押すがびくともしない

 

「……なんだ?」

 

妹紅が気付く

 

「どうしたの?」

 

「いや……さっきよりエスタークの力が強くなってる感じがするんだ」

 

「……本当に?」

 

「多分だけど……」

 

妹紅の答えにパチュリーは考える

 

さっきとは妹紅が戦っていた時の事、それより強くなっていると戦っていた本人が言うのなら信憑性は高い

 

(補助呪文を使った素振りは無かった……バイキルトもマホカンタも……ならやはりあの黒いのが?アレは何……)

 

冷静な観察眼が解き明かしていこうとするが止まってしまいわからない

 

パチュリーが思考を続けている時に怒声は響いた

 

「舐めるなぁ!」

 

後方へ飛んだレミリアは手を上にかかげる

 

 

「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」

 

 

魔力を結集させ紅き槍を形成した

 

「出た……!レミリアが誇る必殺の魔槍……!!」

 

「お姉様……アレをやる気だ……!!」

 

魔理沙とフラン

 

友の誇る技の威力を知るが故に冷や汗をかいている

 

(魔力による攻撃……これでわかるわね)

 

パチュリーは静かに見守る

 

 

「ならば私はこれで……」

 

槍を手にしたレミリアを見てエスタークは剣を納め手をかざす

 

かざした手から魔力が溢れ炎を作り出した

 

「メラゾーマか……来い!レミリア・スカーレットに二度の敗北は無いと証明してやろう!」

 

槍を右手に構え左手を狙いを付ける様にエスタークに伸ばしかざす

 

「カイザーフェニックス」

 

炎鳥が放たれレミリアへ羽ばたく

 

「そんな幼炎でフェニックスなんて……笑わせるな!!」

 

構えのまま同時に飛び出したレミリアは衝突する刹那

 

その技を繰り出した

 

 

「魔槍「ブラッディースクライド」!!」

 

 

構えたグングニルを回転させながらメラゾーマへ打ち込む

 

 

ズバアッ!

 

 

メラゾーマを難なく突き破る

 

王女の槍は偽りの不死鳥に打ち勝った

 

「やった!」

 

打ち勝った事にチルノが声を上げる

 

「相変わらず凄い貫通力ですよね……」

 

「だな……一点集中させた槍の威力は私の炎も貫くからな……でも一点に集中し過ぎて体が守れない、それを吸血鬼の自慢の体で耐えるんだからホント吸血鬼って奴は……」

 

大妖精と妹紅が呆れた感嘆を言い合う前でレミリアはそのままエスタークへ向かう

 

「……」

 

バッ!

 

エスタークは側方へ飛びレミリアをかわした

 

(!……避けた……?)

 

パチュリーはその行動の意味を考える

 

「逃すかッ!」

 

エスタークの居た場所に服や皮膚を若干焼きながら着地したレミリアはすぐさま槍を回転させエスタークに投擲した

 

「フフフ……」

 

だがその時既にエスタークは指を振っていた

 

「カイザーフェニックス!!」

 

再びぶつかる槍とメラゾーマ

 

既に破っているため問題は無いと誰もが思っていた

 

「!?」

 

投げた本人のレミリアがまず気付き、その後にすぐ他の者も気付く

 

「嘘だろ……止められた……?」

 

槍がメラゾーマに止められている事に

 

「どうなってんの?さっきはいけたのになんで次はダメなの?」

 

チルノが皆に向く

 

「魔力が一瞬だけ高くなりやがった……何をしたあの野郎……パチュリーわかるか?」

 

「わからないわ……でも魔理沙の想像通り手加減してた訳じゃないわね……魔力を高めたと言うよりは増幅した印象を私は持ったわ」

 

表情険しく答える魔理沙とパチュリー、力を隠していた訳ではない不可解な現象を理解出来ないでいる

 

 

バシュッ!

 

 

槍とメラゾーマが同時に消える

 

霧散して消えた槍とは違いメラゾーマは炎を撒き散らし一瞬だけレミリアの視界を覆った

 

ボッ

 

その炎を突き抜けてエスタークが剣を構え飛び出した

 

「ッグ!?」 

 

肩を突き刺され苦悶の表情で剣を掴むレミリアに

 

ボウッ

 

魔法球が撃たれ大爆発を起こした

 

「ウッ……クッ……!?」

 

吹き飛び倒れたレミリアは上体を苦しそうに起こし睨み付ける

 

「お姉様!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

フランと大妖精が駆け寄る

 

「よくもお姉様を!!」

 

凄まじい速さで飛び出たフランが背後に回り手刀を突き入れる

 

ギンッ

 

「次は貴方ですかフランドール……」

 

剣で受け止めたエスタークが妖しく笑う

 

「防いだ!?」

 

妹紅が驚く

 

「……また強くなってるのね?貴方の見立てではエスタークにフランの直接攻撃を防げる防御力は無い筈だと……」

 

「そうだ……クソッ!どうなってる……」

 

パチュリーの指摘に焦りを見せる

 

(スカラを掛けた……?いえ、やはりそんな間は無かった、何をしているの……いや……既にしていた?)

 

明かすどころか深まる謎が余計にパチュリーを混乱させる

 

「……」

 

エスタークとフランの攻防を彼方に見ながらパチュリーは考えていた

 

(高い攻撃力に防御力……レミィが傷付いた今、消耗した皆では厳しいものがある……)

 

そんなパチュリーに皆の熱い視線が集まる

 

(プレッシャーね……わかってるわよ……)

 

内心苦笑しながら勝てるそれの使用を強く意識する

 

(後一度……フランが指示では無い自然な魔力の一撃を見れれば……)

 

決意の最後の一押しを求め戦いを眺める……

 

 

 

「うりゃー!」

 

殴り掛かる

 

「フッ!」

 

切り払い指を突き立てる

 

ドドドドド!

 

指から呪文が連射される

 

「……!!」

 

高速で動くフランは呪文を置き去りに飛び回り弾幕を放つ

 

バチッ

 

しかしそれは障壁に防がれた

 

(障壁で防御……いえ、まだわからない)

 

確信出来ると感じるまで冷静に耐える

 

ガァッ!

 

剣と手刀が勢い良く弾き衝撃波を発生させ距離が離れる

 

「これならどうだー!!」

 

腕を前で交差させると魔力が手に集まる

 

手をスライドし開く

 

手が重なりあう瞬間、右手が掴み

 

引き抜いた

 

 

「禁忌「レーヴァテイン」!!」

 

 

それは紅と黒が混じる剣

 

姉の紅槍と双璧を成す紅黒の剣

 

「うりゃああああ!!」

 

剣を強く握り、構えたフランが文をも越えるスピードで飛び込む

 

 

「魔剣「シュピーレンブレイク」!!」

 

 

渾身の力と共に降り下ろした

 

ズオオオオッ!

 

凄まじい衝撃が瓦礫と粉塵を巻き起こす

 

「うげぇ……相変わらず狂った威力してやがるぜ……」

 

「それっぽい名前付けてるけどホントはただ魔力の剣を力任せに振ってるだけなのよね、妖夢の秘剣と違って技術も何も無い……我が妹ながら少し脳筋過ぎるわ……」

 

嫌な顔をする魔理沙と呆れるレミリア

 

「!?あれは……」

 

晴れていく粉塵の中の二人を見てパチュリーが目を見開いた

 

「……流石にキツイですね……少しだけ」

 

「こ……のぉ……!!」

 

2刀の剣で魔剣を止めていた

 

(剣で受けた!)

 

確信を得たその瞬間には飛び出していた

 

「ベタン」

 

エスタークが呪文を触れている剣から直に流す

 

「うっ!?ぎああっ!?」

 

ミシッ……ベキィ!

 

余りの重力の圧に床に縛り付けられたまま骨が軋み左腕が折れる

 

「ゆっくり焼け死になさい」

 

口から炎を吐きフランを炎の海に沈める

 

重力と炎で苦しみながら死ぬのを見物しようかと笑みを浮かべた直後

 

ズオッ!

 

「!!?」

 

炎が割れる

 

驚いたエスタークだが炎が割れたからではない、フランの側に立つもう一人の者に驚いたのだ

 

「終わりよ……」

 

フランを呪文から解放したパチュリーは既に構えていた

 

 

「メドローア!!」

 

 

極大消滅呪文を

 

「くっ!?マホカ……」

 

反射の呪文を唱えようとするエスタークにパチュリーは告げる

 

「もう遅い!」

 

パチュリーはメドローアの直撃を狙っていた

 

強さが意味をなさないそれさえ当てれば勝てるからだ

 

だが気を付けなければならない事がある、それは反射

 

反射されて逆に消されるのは避けなければならないパチュリーはずっとエスタークを観察し吟味していた

 

既に張っているか、張ってなくても発動までどれだけ掛かるのか

 

それを見極めていた

 

既にマホカンタを張っていたのなら魔力による攻撃を避ける理由が無い、わざわざ他の呪文や剣で受ける必要が無い

 

レミリアの攻撃を避けて呪文で受けた時点でほぼ確信していたが念を入れてフランまで様子を見た

 

「消えなさい!!」

 

様子を見る過程で呪文の発動速度も完全に把握し、問題が無くなったからこそパチュリーは確信し、機を見つけてすぐに動いたのだ

 

「……」

 

メドローアが当たる刹那

 

パチュリーからはメドローアで見えない角度で

 

「……フッ……」

 

エスタークは頬を吊り上げていた

 

カッ!

 

メドローアがエスタークを飲み込む

 

(命中した!よし……勝っ……)

 

勝利を確信した時

 

それは現れた

 

「勝ったと思いましたか?」

 

メドローアの中から……

 

 

ザンッ……!

 

 

剣が斜めに切り裂いた

 

「パチュリー!!」

 

魔理沙が叫ぶ

 

メドローアから出て来たエスタークにパチュリーは切られたのだ

 

「フランドールが居なければ死んでいましたね」

 

フランに抱き抱えられるパチュリーに言う

 

斬撃の瞬間、側のフランがパチュリーを引っ張り致命傷を辛うじて避けていたのだ

 

「カフッ……何故……メドローアが効かないの……」

 

血を流し苦しむパチュリーの問いにエスタークは答えた

 

「種は明かしませんが私の纏うこの衣……メドローアが効かないのはこの闇の衣にあります」

 

「闇の……衣……」

 

「この闇の衣こそが貴方達頂点の為の切り札……もし複数を相手どるかもしれない事を想定した戦闘用のね」

 

纏う黒い衣

 

名を闇の衣

 

エスタークが頂点達と戦闘を余儀無くされた時の為の切り札

 

「それが……妹紅と戦った時より……強い訳……ね……」

 

「答え合わせは地獄でどうぞ」

 

剣がフランごと切ろうと刃を走らせる

 

「させるかぁ!」

 

「えいっ!」 

 

氷と風の弾幕がエスタークを襲い障壁を使わせる

 

「二人は……!」

 

「やらせない!」

 

妹紅とレミリアが障壁を蹴り飛ばす

 

「大丈夫かフラン、パチュリー?」

 

魔理沙が二人へ寄り添い応急の魔法で痛みを和らげ血を止める

 

「パチュリーは休んでろ……死にはしないけど無理出来る傷じゃない」

 

「ごめん……任せるわ」

 

「ああ……!」

 

パチュリーを寝かせるとフランと共に立ち上がる

 

「やるぞ魔理沙!皆も!」

 

並んだ6人は頷きエスタークを見据える

 

「勝てはしない……私には誰も……例え幻想郷の頂点だとしても……」

 

妖しき闇の衣を纏うエスタークと幻想郷の頂点

 

幻想郷と地獄の帝王との戦いは決着の時を迎えようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エスターク神殿・地下牢

 

「……」

 

神奈子は迷っていた

 

(密談の事実が露呈した今……策は……いや願いは知られてはいないけど……諏訪子と早苗が殺された可能性が……)

 

悩みに悩んでいる

 

(奴を助長させたのは私……ならば責任を取るのもまた私……)

 

密閉された空間での時間は僅かだったが神奈子に最悪を予想させるには充分過ぎた

 

(溜め込んだ力を使い……私が奴を殺す……!)

 

同じ策の為に力を溜める様に頼んだ諏訪子と早苗と連絡が取れない、既に殺されたと考えてしまった今、自分が成さねばならない

 

(……行くか)

 

力を使おうとしたと同時

 

「助けに来たよ守矢の神様」

 

にとりが牢を開き入ってきた

 

「にとり……!?何故お前がここに……!?」

 

神奈子が驚き問う前でにとりは顔を歪めていた

 

(うっ……なんて異臭だ……)

 

牢には異臭が充満していた

 

血と嘔吐物が混じりあった臭い

 

嬲られ続けた神奈子の牢には血が隈無く飛散し肉片らしきものも見えた

 

「……あまり見るな」

 

顔を逸らす

 

神奈子自身の状態も酷い有り様だった

 

全身に打撲の跡

 

目を痛められたのか片目は閉じ、血が流れた跡もある

 

爪は何度も剥がされたのか手足に生えている指と生えていない指があり爪と思われる物体が足元に幾つも落ちている

 

骨も何度も折られ、体が歪に曲がっている

 

傷んでいない場所などどこにも無かった

 

「……遅くなって悪かったよ」

 

その凄惨な状態に謝罪が自然と出る

 

想像を絶する地獄を味わった神奈子を見てそれしか言葉に出せなかった

 

「お前は悪くない……悪いのは私……それよりにとり、今何が起きているの?エスタークは?幻想郷は無事なの?」

 

神奈子の当然の疑問ににとりが答えようとした直後

 

 

『手酷くやられたな八坂よ……』

 

 

声を二人は聞いた

 

「!!その声……何故お前がここに居る……」

 

神奈子は一層驚愕し問う

 

 

「神の竜……しんりゅうよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

複雑に絡み合った運命の糸

 

 

その全てが今、解かれ、1つに重なった

 

 

それが何を意味するのかはわからない

 

 

しかしもう止まらない

 

 

偶然の果ての必然は誰にも変えられない

 

 

 

 

今ここに……最後の炎が燃え上がる

 

 

 

 

それからは逃げれない

 

 

それが妹紅の、6人の、幻想郷の……

 

 

運命なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長くなっちゃいます、どうしても……

今話どうでしたか?
まともな戦闘が無かったレミリアを出来るだけ格好良く戦わせたかったのと萃香、幽香に文字数を取られました……でも満足!

ちなみにフランの必殺技のシュピーレン、ドイツ語で遊びの意味があります、そこにギガブレイクを合わせてシュピーレンブレイク、「遊び壊す」と言った実にフランらしい技名になりました。
ハーケンディストールにしようかと思ったけど剣だからやっぱりやめたけどならレミリアと逆にすれば良いのかと思ってでもレミリアは血にしたかったからやっぱりやめたのは内緒です。
 
それと次回予告です。

最終話?です!

次回も頑張ります!
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