東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第43話 再誕

 

 

    「じゃあ……また会えるよな?」

 

 

 

 

   「お前達が想い続ければあるいはな」

 

 

 

 

バーンと最期に交わした言葉

 

 

バーンを見た時に

 

 

ふとそんな事を思い出した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

「バーン……!」

 

7人の涙は止まらない

 

「バーン……!!」

 

止めどなく流れる涙だったが今は流すべきなのだ

 

 

もしかしたら幻なのかもしれない

 

死に際に見た儚い幻なのかもしれない

 

 

でもそうじゃない!

 

そうじゃないから!

 

涙は止まらない!

 

 

「バーン!!」

 

 

感じているから……

 

魂で繋がった絆が……

 

幻ではないと……

 

 

目の前に居るのは紛れもなく、正真正銘、一切の疑い様の無い、本物のバーンなのだと!

 

 

 

「……」

 

バーンが無言で7人に歩いてくる

 

「何故……泣いている……?」

 

7人にバーンは問いかけた

 

「何故泣くのだお前達……100年越しのようやくの再会だと言うのに……」

 

泣いている理由を

 

「……お前に!」

 

妹紅が堪らず声を上げる

 

「会えたからだろ……!!」

 

わからないのかと

 

「どうやったんだよ……!お前は魂も居なくなってた筈だろ!なんで生き返って……今……ここに居るんだよ……!」

 

嬉しさの中に混乱がある妹紅が問い返す

 

「……灰だ」

 

バーンは答えた

 

「お前達に纏わせた余の灰……それに奇蹟が与えられ、余は再び幻想郷に甦る事が出来た」

 

復活の要因は灰にあると

 

「纏わせた……?お前の……灰……?いつだよ!そんなの知らないぞ!」

 

「そうだろうな、灰はお前達に気付かれぬ様に纏わせた物だからな、知らぬのは当然だ」

 

あの日、バーンが灰となり消えた日

 

幻想郷に舞った灰は最後に7人に少しだけ身に纏わせていた

 

「お前達が死に瀕した時……寿命や病気ではなく外的要因によって命が脅かされた時に守る様にと纏わせた物だったが……まさかそれが余の復活の礎になろうとはな……」

 

バーン自身も友の為に纏わせた灰が自らを甦らせるとは夢にも思っていない事ではあった

 

「そしてその礎に与えられたのが先に言った……奇蹟……」

 

だが納得していた

 

受けた想いを知っていたから

 

(随分と分の悪い賭けだったようだが……勝ったのだな……神奈子……)

 

最も辛かっただろう仲間を想う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し前

 

エスターク神殿・地下牢

 

『八坂……1つ聞かせろ』

 

バーンを甦らせる

 

それを聞いて準備をしているしんりゅうは神奈子に問いかけた

 

『お前程の神が河城にとりと同じく魔族を甦らせるなどと……』

 

「嫌か?」

 

『……許されん事だぞ?ただの魔族ならともかく神の力を超越した魔族をなど……神の座を捨てる気か?』

 

「構いはせん、役に立たん神など居る価値が無い……それよりも私は約束を守らねばならん……どんな形であろうと、それが私の唯一の仲間と交わした、決して破れぬ約束だからだ」

 

『しかしだな……』

 

「いつまで渋ってんだ役立たず!お前はその昔に人間を生き返らせてるんだろ!?ロトだかの父親をさ!魔族は差別するのか!?だから魔族が反発するんだろ!」

 

『事はそんな単純なレベルでは無いのだ……神の力を越えた神以外の者、そんな者が居るだけで天地魔界のバランスが崩れるからだ……我が聞きたいのはそれを理解している八坂が行う理由が何なのかだ』

 

「……私が数ある世界の中で、数多いる魔族の中で……唯一……唯一仲間と認め、心から信用出来る者だからだ」

 

『……お前にそこまで言わせる程か、そのバーンなる大魔王とは……独立不撓の神と呼ばれるお前にそこまで言わせる魔族……』

 

「……嫌なら協力せずとも構いはせん、元々諏訪子と早苗の我等3人と紫だけの策だったのだ、お前がどうしてもと言うなら無理強いはせん」

 

『協力すると言った我に二言は無い、ただ知りたかっただけだ』

 

納得したしんりゅうは力を使う

 

『我の力、願いを叶える力を出した……これをどうするつもりだ?』

 

「今から私と諏訪子がエスタークに隠れて溜め込んだ神の力を同じく高め続けていた早苗に送り奇跡を起こす」

 

『それを受けて我が甦らせるのか?しかし悪いがそれでもまだ……』

 

「違う、お前にではない……お前の力は助力に使ってもらう」

 

『助力……?何にだ?』

 

「今……神の涙が幻想郷に来ている」

 

『何!?あの生きた道具がか!?』

 

「そうだ……我等3人の奇跡を送り、神の力を越える奇蹟を起こす、だがそれだけでは足りんやもしれん、そこでお前が奇蹟を助け、可能性を飛躍させる」

 

『なるほど……しかし、それでも確実とは言えんな』

 

「どういう事?そこまでやってまだ足りないなんて……」

 

『河城にとり……これはただ甦らせるだけとは違うのだ』

 

「だから何なんだよ!」

 

『消滅した魂の復元、神の力を越えた肉体と力の再構築……尋常ではない力が必要なのだ、神の力を越えているが故に……異界の神々の力を合わせれば可能かもしれんが魔族の蘇生に手を貸す訳がない……分の悪い賭けだ、それでもやるのか八坂?』

 

「……分の悪い賭けなのはこれを考えた時からわかりきっていた事だ……お前の助けを加えても五分にもならんだろう……だが!」

 

神奈子は信じていた

 

「あいつらの……幾千、幾万の時が経とうとも!決して消え果てぬ想いが……!必ず奇蹟を起こすと!そう信じている!!」

 

7人の想いが確立を越えた奇蹟を起こせると

 

『……準備は出来た様だな』

 

しんりゅうが呟くと神奈子に神の力が集まりスキマが開く

 

『やるとしよう八坂……お前の愛する幻想郷を救う為に……お前の、河城にとりの願いを叶える為に……』

 

「ああ……」

 

 

 

そして始められた無謀な賭け

 

 

3人の奇跡の力を合わせ、しんりゅうの力を加えてスキマから幻想郷の遥か上空に居る神の涙に送る

 

本当に無謀な賭けだった

 

失敗する可能性の方が高かった

 

 

だがそこに神奈子が知らない物があった

 

 

それは灰

 

 

バーンの肉体からなる友の為に残した想いの結晶

 

 

死に際に灰が効力を発揮し守ろうとした時に重なった意図せぬ偶然

 

 

運命が導いた

 

 

友へと至る道を

 

 

 

 

 

 

 

そして奇蹟は起きた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前達の尽きぬ想いが余を呼んだ……これ以上は余も説明出来ん……」

 

説明を終えてまだ理解出来ず混乱している7人に

 

「だが、敢えて言うのなら……余は不死鳥……」

 

バーンは言った

 

 

「不死鳥は灰から甦ると言うが……まさにそれなのだろう」

 

 

特に妹紅を見て……

 

 

「「……」」

 

 

説明にもなっていない事を当然げに語るバーンに唖然としている7人

 

(……なんだよ、なんだよ……それ……)

 

訳がわからないがこの気持ちだけはわかる

 

「……ありがとう」

 

皆を代表して妹紅が言う

 

「また助けてくれて」

 

感謝を

 

「まったくだ……」

 

苦笑しながらバーンは答えた

 

「余が後を任せて消えたと言うのに……不甲斐なき奴等よ」

 

「……ごめん」

 

悲しく顔を下げる皆

 

「よい……」

 

謝る皆を見てバーンはまた微笑んだ

 

「また……再び会えた、それだけで余の不満を帳消すに余りある」

 

「……うん」

 

機嫌良く友との再会を堪能していたバーン

 

 

(あれが大魔王……)

 

そのバーンをじっと見続ける者が居た

 

(因果の元……)

 

そう、エスターク

 

甦ったバーンをずっと観察していた

 

(神の涙か……)

 

この状況を作り出した原因を睨む

 

 

 

(なんという事だ……まさか妹紅達の危機にバーンが甦り……救うとは……)

 

慧音も起きた事実に困惑しながらもより勝る嬉しさに身を震わせていた

 

(奇蹟だ……なぁ!ダイ!)

 

手に持つダイに笑顔で向いた

 

「!?」

 

笑顔は急変し不安に変わる

 

(縮んだ!?こんなに……小さく!?)

 

ダイは縮んでいた

 

手を丸めれば包み込めてしまう程に

 

「どうしたんだダイ!大丈夫なのか!?」

 

目を閉じてぐったりしているダイに話し掛ける

 

「……ピィ?」

 

ダイは目を開けた

 

「ダイ!大丈夫か!?」

 

慧音が不安いっぱいに問うと

 

「ピィ!」

 

ダイは元気良く跳び跳ねた

 

大丈夫だよ!

 

と言いながら

 

「そうか……なら良いんだ」

 

縮んだのは気掛かりだが元気に大丈夫だと言うダイに今は追求せずに慧音は告げる

 

「さぁ見よう……幻想郷で最も強く、誰よりも友に優しい男の強さを……」

 

幻想郷の希望を見る事を……

 

 

 

 

 

 

 

「御目にかかれて光栄です、大魔王バーン……」

 

背を向けたバーンに話し掛ける

 

「死んだ貴方が甦る……予想もしないよもやの事態……それほど御友人が御心配でしたか?」

 

死ぬ寸前まで痛めつけた7人を見ながら

 

しかし返ってきた反応は予想外のものだった

 

「もっと顔を見せてくれ……余の最愛の友よ」

 

無視

 

まるでエスタークの存在が無いかの如く

 

「ちょ、ちょっとバーン……」

 

余りの無視っぷりにレミリアが困惑気味に言うが

 

「少し背が伸びたなレミリア……美しくなった」

 

「ふえっ!?」

 

バーンは気にしない

 

「聞いていますか大魔王バーン?」

 

「この様な姿になるまで……叶え続けていたのだな、余の願いを……今際の際まで……」

 

 

 

「聞いているのか大魔王バーン!!」

 

 

 

エスタークの怒声が響く

 

「貴方は今そんな死にかけの者達と話す余裕は無いはずです」

 

更に告げた時だった

 

「煩いぞ、そこの……」

 

背を向けたバーンが返した

 

「余は今、友との再会を楽しんでいる、邪魔をするなら死を早める事になる……」

 

その声は冷たかったが確かにあった

 

「それを理解していての言葉か……?」

 

友を殺しかけた者に対する尋常ならざる怒り

 

「答えよ……」

 

ゆっくりと、されど優雅に身を翻しながらその目は向けられた

 

 

「小僧……!!」

 

 

ズオッ!!

 

 

怒気を含んだ圧倒的な威圧感がエスタークに向けられる

 

「あーあ……」

 

魔理沙が苦笑う

 

苦笑するのは自分に向けられていないのに感じる怒りから

 

「一番怒らせちゃいけない奴を挑発しちまったな」

 

「ですね……」

 

大妖精と共にエスタークを見る

 

「既に怒ってたのよバーンは……私た……私に会えたから抑えてたけどね」

 

「嬉しそうだねーお姉様」

 

レミリアとフランも見る

 

「でも……」

 

「そうだなパチュリー……バーンでもあの闇の衣を纏ったエスタークは厳しいかもしれない」

 

自分達が何をしても敵わなかったエスタークの力が不安でバーンを見る

 

「バカ……ね」

 

一番苦しそうなチルノが言った

 

「あんなのバーンの敵じゃないに決まってるでしょ!」

 

負けるはずが無いと

 

そうして7人に見つめられたまま

 

バーンとエスタークのやり取りが始まった

 

 

「流石の貫禄ですね大魔王バーン……」

 

威圧を受けても怯まないエスターク

 

闇の衣を持つが故か自信有りげにバーンに笑みを向ける

 

「自己紹介からいきましょう……私の名はエスターク、地獄の帝王……と呼ばれています」

 

「そうか……ではエスタークよ、余の問いに答えよ」

 

「……問い?」

 

「先程言った筈だ……邪魔をするなら死を早める事になるぞ……とな」

 

自信に満ちた顔は虚勢や脅しの類いではなかった

 

確実にそうなるとの事実を告げていた

 

「……つまり私は遅かれ早かれ死ぬ運命だと言いたいのですか?貴方の再会の茶番が終わる前か後かの違いだと?」

 

「さっきからそう言っているではないか、皆まで言わねば理解出来んのか?エスタークなる小僧よ」

 

「フッ……」

 

エスタークは不適に笑った

 

「出来ますか?貴方に……」

 

魔力を高める

 

「貴方の魔力を持つ私に……」

 

バーンの魔力を見せつける

 

「……」

 

しかしバーンは表情を変えずに見ているだけ

 

「闇の衣を持つ私に!」

 

纏う闇の衣をより目立つ様に見せつける

 

「貴方の犬の持つただのフードとは訳が違いますよ?」

 

更に挑発を加える

 

「……」

 

だがバーンには意味を成さなかった

 

闇の衣を見下す様に凝視している

 

「フン……闇の衣か……」

 

見終わったバーンが目を閉じ鼻を鳴らした

 

「その紛い物がか?」

 

その言葉にエスタークの驚きと7人の困惑が向けられる

 

「パチュリー」

 

エスタークを見たままバーンは呼んだ

 

「お前が付いていながらなんというざまだ」

 

「……理由を教えて」

 

叱責の理由を理解出来ないパチュリーに促されバーンは説明を開始した

 

「闇の衣とは優れた力を持った魔族が多大なる錬魔の末に得られる後天の魔具、装備者の耐性を極限まで高め、単純な腕力と防御力も上昇させる選ばれし者しか発現出来ぬ太古より伝わる魔族の装具……」

 

「ではアレは……」

 

「してやられたな、アレは闇の衣などではない……正体はマホステだ」

 

「マホステ……魔力無効化の呪文……」

 

「そうだ、奴はマホステに混ぜた暗黒闘気でそれらしく見せていたに過ぎん……ただの小細工よ」

 

正体を知ったパチュリーは難しい顔で押し黙った

 

「じゃ、じゃあ……あいつの力が上がってたり防御力が高くなっていたのは!?それに魔力も一瞬高くなるのはどういう事なんだぜ!?」

 

すぐさま魔理沙の質問が飛んでくる

 

「それも小細工だ、奴は補助呪文を使用していただけよ……バイキルトとスカラの重ね掛けをな」

 

「バカ言え!そんな暇無かった!詠唱してすらいない!いつやったんだよ!妹紅が戦ってた時もしてないだろ!?」

 

「そうだよ……エスタークは補助呪文なんてしてなかった」

 

二人の疑問にはパチュリーが答えた

 

「それはバーンの魔力を持っていたからよ」

 

闇の衣の正体を知ったパチュリーはすぐに全てを理解していた

 

「魔法は通常、詠唱をしなければならない、そうしないと威力や効果が低下するから……だけど、高過ぎる魔力を持つ者はそれを無視出来る」

 

「……あ!」

 

そこで魔理沙が気付いた

 

「気付いた様ね、そう、膨大な魔力を持つ者は詠唱の溜め無しで呪文を使用出来るのよ、バーンの魔力を持つなら出来る」

 

「って事はそのマホステって魔法を闇の衣に見せかけて注意を向けさせてる内に補助呪文を使ったのか」

 

「そういう事でしょうね」

 

「じゃあ魔力はどういう理屈なんだ?そんな呪文があるのか?」

 

「それは……わからないわね」

 

「それは余が答えてやろう、奴はマジカルブースターと呼ばれる魔石を使ったのだ、呪文の威力を高める効果を持っている」

 

「……あの服の装飾品か!」

 

「そうだ、マホステでわかりにくくしてあるが注意深く見れば魔石が魔力を高める一瞬が見えたはずだ」

 

納得した二人

 

それに続いて大妖精が問う

 

「魔力が効かないのはわかったんですけど、じゃあチルノちゃんの冷気や妹紅さんの炎が効かなかったのはどうしてなんですか?冷気と炎は魔力じゃないのに……」

 

「それは先程にも言った暗黒闘気が原因だ、マホステに混ぜてある暗黒闘気……魔炎気、高熱を発する特殊な闘気、高熱で冷気と炎に対抗する……余の記憶を持つが故の小賢しき知恵よ」

 

全ての説明が済みパチュリーを覗く6人が感心した表情を作っていた

 

「……」

 

エスタークは何も返さない

 

闇の衣を暴かれた事実を僅かでも隠そうとしているのか何も返さない

 

「……パチュリー」

 

エスタークから視線を離さずに呼ぶ

 

「お前が気付かねばならなかった、それが知識を持つお前の責務……幻想郷を守る為の義務だ、如何に相手が上手く隠蔽しようともそれを見破る為にお前は努めねばならなかった……お前がメドローアを当てる事に固執せずに相手を良く吟味していればここまでの危機にはならなかった」

 

「……ごめんなさい」

 

叱責に悔しく顔を落とす

 

「バーンの言う通り……私が気付かなければならなかった、なのに私はメドローアと言う楽な道へ知らずに逃げてた……この結果は当然だった……」

 

「……苦言を呈したのは敢えてだ、小細工とは言えかなり用意周到に練られたお前達用の罠だ、メドローアを効くと思わせる立ち振舞いで思考の狭化を狙い一撃の元に倒す……研究されていたのなら致し方無い結果と言えよう」

 

「……でも、それでもやはり私は気付かなければ……」

 

「……高い授業料になったな……危うく命で払う所だった……次に活かせばよい……わかったな?」

 

「わかったわ……!」

 

バーンの優しい厳しさにパチュリーはしっかり答え

 

「……ありがとう」

 

感謝した

 

 

二人の会話が終わり、バーンはずっと黙ったままのエスタークに告げる

 

「どうするエスターク?正体を暴かれた今……殺されるまで待つか自ら死にに来るか決めさせてやろう」

 

死刑宣告を

 

「小細工小細工と……それがどうしました?」

 

エスタークがまた不適に笑う

 

「それの何がいけないのです?勝つ為に最善を尽くすのがそんなに悪い事ですか?」

 

「悪いとは言っておらん、これは戦争……権謀術数飛び交う無法地帯、小細工……大いに結構、悪いのは見破れず敗れたこやつらだ……貴様は悪くはない」

 

バーンも笑うと告げた

 

「ただ、己の力では何も出来ん哀れな小僧を余は不憫に思うだけよ」

 

その生き方が哀れに見えて……

 

「哀れみは要りません、私は私の意思でこの道を選んだのです、それよりも……」

 

一蹴すると更に不適に笑う

 

「闇の衣の正体を知った所で対抗出来なければ無意味、貴方は勝てない理由を読み上げていただけ……大魔王にも対抗策は出せないこの闇の衣の前にどうするおつもりですか?」

 

正体を知っているのと勝てるのとはまた別問題

 

説明の中に対抗策が一切無かった事にエスタークは浅はかさを感じていたのだ

 

「愚か者が……」

 

少しばかりのイラつきをバーンは見せた

 

「心得ておらんようだな」

 

手をかざす

 

「余がわざわざ貴様に聞こえる様に話す、つまりは……」

 

かざした手から凍てついた波動が放たれる

 

「!?」

 

波動が触れるとエスタークの闇の衣に干渉し

 

「こういう事だ」

 

一瞬の元に消し去った

 

「使えるのですね……高位の魔族しか使えない、魔法を打ち消すいてつく波動、王たる証……」

 

「名を捨てたとは言え力まで捨てたつもりはない、これが天地魔界に並ぶ者無しと呼ばれた余の力の片鱗よ」

 

自信を潰せて満足そうなバーンに対しエスタークは一瞬睨むが平静に戻る

 

「構いません、始めましょう」

 

それでも自信があったのだろう

 

闇の衣無しでもバーンに勝てると

 

「魔石と魔炎気だけで余に勝てるとでも?」

 

「勝てないとでも?」

 

挑発し合う二人

 

そのまま戦いに入ると誰もが思った

 

「余が直々に捻りたい所ではある……が……貴様の相手は決まっておる」

 

エスタークに背を向け7人を見る

 

「お前達だ」

 

そう告げるとベホマラーを掛ける

 

「私達が……やるのか?」

 

癒されながら問う

 

「これで万全とはいかぬとも充分に動ける筈だ、闇の衣を削いだ奴相手には丁度よいハンデと言えよう」

 

そう言うと7人の後ろに回る

 

「どうした?せっかくの雪辱を果たす機だというのに……やらんのか?」

 

「え……あ……はぁ?」

 

まだ状況が整理出来ていない7人が混乱しているとバーンは言った

 

「ここまで御膳立てして……逃げるのか?」

 

「!?」

 

挑発に皆の体がピクリと動く

 

「では構わぬ、そこで見ているがいい、お前達が敵わなかった相手を余が容易く捻る所を……」

 

再び前に出ようと動こうとする

 

「待てよ!」

 

手を伸ばした魔理沙が止めた

 

「誰が逃げるって!?」

 

「あたい達が逃げるわけないでしょ!」

 

「そうですよ!意地悪ですバーンさん!」

 

チルノと大妖精も加わる

 

「笑えないわねバーン……」

 

「そうね……」

 

「あたし一人で倒せるよーだ!」

 

レミリア、パチュリー、フラン

 

「まぁ……見ててくれよ」

 

そして妹紅

 

7人の意思は揃い、エスタークへ再び挑む

 

(それでこそ余の友よ)

 

満足に微笑むと

 

「では見させて貰うとしよう、お前達の成長をな」

 

友の戦いを見守る

 

 

 

「無駄な事を……闇の衣無くとも勝てはしないと言うのに……」

 

「御託はいい!行くぜ!!」

 

構えた7人

 

「あたしから行く!」

 

まずはフランが飛び出した

 

 

 

    ~U.N.オーエンは彼女なのか?~

 

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃー!!」

 

徒手による怒濤の連続攻撃

 

「くっ……!?」

 

剣で防ぐが防戦一方

 

「禁忌「レーヴァテイン」!!」

 

魔剣を振り抜き剣の防御ごと吹き飛ばす

 

「次!お願い!!」

 

「次は私が行くぜ!」

 

切られた箒をくっつけた魔理沙が飛び出す

 

 

 

     ~恋色マスタースパーク~

 

 

 

「ブレイジングスター!!」

 

箒に跨がり体当たりを食らわせる

 

「こんな……程度で……!」

 

受け止めて押し返そうと力を込める

 

「おお~っとこれだけじゃないぜ?大魔導士の怒りを思い知りやがれ!」

 

告げた時には既にそれを構えていた

 

「恋符「マスタースパーク」!!」

 

八卦炉が火を吹きエスタークを飲み込んだ

 

「次誰だ~?」

 

「私が行きます!」

 

魔理沙の横を大妖精が通り過ぎる

 

 

 

      ~ルーネイトエルフ~

 

 

 

「オノレ……!?」

 

ビームから抜け出したエスタークの視界には大量の風の刃

 

「風符「妖精少女」!!」

 

宣言と共に刃が向かう

 

「バギクロス!」

 

増幅された真空の呪文で迎え撃つ

 

(バーンさんが見てる!弱かった頃の私じゃなくて……今の私を!)

 

「負けるかー!!」

 

「うぐっ!?」

 

押しきった刃がエスタークを刻む

 

 

「次はあたいの番!」

 

大妖精とハイタッチしてチルノが向かい立つ

 

 

 

       ~おてんば恋娘~

 

 

 

「……冷気は効きません」

 

「あっそう……氷符「エターナルフォースブリザード」!!」

 

 

キンッ

 

 

エスタークの腕が凍りつく

 

「!!?」

 

「魔炎気だか何だか知んないけど片腹大激痛!絞ったら凍らせるなんて楽勝なのよ!サイキョーのあたいを舐めんな!」

 

指をビシッと差して告げる

 

「……ッ!?」

 

炎の魔力で氷を溶かすと腕を振り抜く

 

「消えろーッ!!」

 

炎鳥が向かう

 

「こんなのがあたいに……」

 

凍らせようとするチルノの前に

 

「私を忘れられては困るわ」

 

パチュリーが割り込んだ

 

 

 

    ~ラクトガール 少女密室~

 

 

 

「……!!」

 

炎鳥を前にしたパチュリーは両の指先に魔力を込める

 

ビッ……

 

炎鳥の口内に指を突き入れる

 

ブバッ!

 

魔力を分解し引き裂く様に消し去った

 

「こんな時に……なんか私ツボ掴んじゃったみたいね……実は天才だったのかもね私」

 

指に残る感覚を感じながら感心するパチュリー

 

「貴方は昔から天才よ……パチェ!」

 

にこやかにレミリアが通り過ぎる

 

 

 

    ~亡き王女の為のセプテット~

 

 

 

「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」

 

槍を掲げて突き入れる

 

ドウッ!

 

「レミリア……!?」

 

辛うじて受け止めたエスタークにレミリアは時の声を上げる

 

「月を見る度思い出せ!王女、レミリア・スカーレットの名を!」

 

槍が押し込んでいく

 

「我等頂点の名を!」

 

ズッ

 

槍の尖端が胴に刺さる

 

「月があの世にあるならね……」

 

一気に押し込み貫通し吹き飛ばすとレミリアは最後の一人に目をやった

 

 

「うぐっ……くっ……ぐっ……!?」

 

呻くエスタークに彼女は対峙した

 

「私達の勝ちだエスターク」

 

皇帝不死鳥の名を持つ蓬莱人が

 

「妹紅ォォォォォォ!!」

 

起き上がりながら叫ばれる怒声

 

「私達は今……太陽と一緒に戦っている!」

 

妹紅は飛び込んだ

 

 

 

     ~月まで届け、不死の煙~

 

 

 

「ウオオオオッ!!」

 

不死鳥を纏った妹紅が速度を上げる

 

 

「不死「火の鳥-鳳翼天翔-」!!」

 

 

ドン!

 

 

衝突はエスタークを炎で焼きながら打ち飛ばした

 

 

 

 

「どうだバーン!」

 

嬉しそうな魔理沙を筆頭に7人がバーンへ向く

 

「……少し嫌な物を見せられたが……まぁよい」

 

一瞬目を閉じ開くとバーンは言った

 

「強くなったなお前達」

 

微笑みを向けて

 

「まだまだ……だけどな!」

 

そう返すも皆誇らしい顔で笑っていた

 

 

 

「大魔王ーーーー!!」

 

 

8人にエスタークの怒声が響く

 

「ハァ……ハァ……」

 

息を荒げながら立ち上がっていたエスタークは傷を再生させながらバーンを睨む

 

「貴方との決闘を希望します……!」

 

その目はバーンだけを見据える

 

「まさか断るとは言いませんね……?小僧の申し出を……?大魔王……バーン?」

 

挑発的な笑みで誘う

 

「しつこい奴だな……バーンの出る幕じゃないぜ!私が倒してやるよ!」

 

魔理沙が八卦炉をかざし狙いをつける

 

「……7人で嬲って楽しかったですか?」

 

「あぁ?」

 

エスタークの問いに訝しげに睨む

 

「多数で袋叩きにして楽しかったのかと聞いているのですよ……」

 

怪しさを含んだ語り

 

「勝てなかった相手を良い様にあしらう……己の強さに酔ってさぞ良い気分でしょう」

 

囀ずる口は止まらない

 

この語りは苦肉の策

 

頂点を一度に相手するのは厳しいと感じたエスタークは力量的にも精神的にも支えとなっているのがバーンと見てまず先に一対一で始末しようと考えた

 

バーンさえ倒せば動揺を誘える上にパチュリーの存在が不確定要素だが闇の衣を使用出来る

 

だが正攻法では誰かの邪魔が入り不可能に近いと考え迷いを与える言葉をぶつけた

 

これでバーンが他を抑えて動くようにと

 

 

「……何言ってんだお前?」

 

しかし策は実らなかった

 

「ふざけてんのか!お前が仕掛けた戦争だろうが!多数で袋叩きが楽しいかだとぉ……!お前が幻想郷に差し向けた魔物は何だ!アレは違うのか!」

 

魔力を八卦炉に込める

 

(くっ……ダメか……!?)

 

失敗を感じ身構えた時だった

 

「よかろう」

 

バーンの声が響き

 

「せっかくの指名だ、余が相手をしてやろう」

 

魔理沙を抑え前に立った

 

「おいバーン!」

 

抗議しようと魔理沙が突っかかる

 

「……余が相手をする理由が3つある」

 

魔理沙を止め理由を語り出す

 

「1つ、余の忠実な配下であるミストを犬呼ばわりした侮辱……これだけでも充分ではある……」

 

「2つ、お前達を殺しかけた事……如何に余が寛容であろうとこればかりは許す事は出来ん」

 

「そして……」

 

2つを語った後、エスタークに向け歩いていく

 

「妹紅」

 

最後の理由

 

「お前の誇りを取り戻さねばならん」

 

その背は見えた

 

「証明してやろう……」

 

かつて見た

 

強く大きな背に……

 

 

 

「感謝しますよ大魔王バーン……」

 

「思ってもおらん事を囀ずるな、小者の虚勢ほど聞いていてつまらん物は無い、それよりも必死になれ……もう後が無いのだぞ?小僧?」

 

バーンの言葉を受けてエスタークの顔から笑みは消え、真剣そのものに変わる

 

 

「……一撃で送り返してあげましょう」

 

「出来るならな」

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

 

魔力が高まり臨界に達したその時

 

 

二人の戦いは始まった

 

 

      「「これが……」」

 

 

 

 私の               です……

        メラゾーマ

 余の               だ……

 

 

 

「その想像を絶する威力と……」

 

 

         「優雅なる姿から……」

 

 

 

 今より魔界では

           こう呼ばれる……

太古より幻想郷では

 

 

 

 

かざし合った手からそれは放たれた

 

 

 

    ダーク

           フェニックス!!

    カイザー

 

 

 

暗き獄炎鳥と皇帝不死鳥

 

2体の炎鳥が王室を翔る

 

「私の勝ちだ!死ね大魔王!!」

 

エスタークが勝利を叫んだ

 

バーンの魔力に自分の力も加えた最高の技に更に魔石による強化を加え魔炎気も込めた

 

負ける筈が無いと確信し、救援も間に合わないと確信したからこそ声高に告げた

 

「……」

 

炎鳥が衝突する刹那

 

「たわけが……」

 

バーンは目を閉じる

 

 

バシュウ!

 

 

簡単に打ち消された音が鳴った

 

どちらかが消されたのだ

 

それはどちらか?

 

 

「何ィィィィ!?」

 

それはエスタークの獄鳥

 

獄鳥は不死鳥に触れた瞬間に抵抗無く打ち破られたのだ

 

「ウオオオオッ!!?」

 

不死鳥に包まれたエスタークが炎の中でのたうち回る

 

(そうだ、そうだよ……これが……!)

 

それを見た妹紅は悔しい筈なのに嬉しい

 

(私の目指した……バーンの不死鳥だ!!)

 

エスタークによって汚された誇り

 

それをバーン自身が証明してくれた

 

目指した目標を改めて見て悔しくもありながら堪らなくそれが嬉しくて

 

そして誇らしかった

 

 

「……」

 

ある程度眺めると指を鳴らし炎を消す

 

「ハァ……ハアッ……何故……」

 

苦しむエスタークは訳がわからず問う

 

「何故勝てる!?貴方の魔力を持つ私に!何故!?」

 

結果が納得いかないエスタークにバーンは静かに告げる

 

「自惚れが過ぎたなエスターク……もはや相手の力量すら測れんか」

 

「……!」

 

「貴様が余の魔力を持っているから勝てる?こやつら相手にそのざまでか?」

 

「……どういう事です……」

 

「わからんのなら教えてやろう……その魔力は上部」

 

「上部……?」

 

「そう、貴様の持つそれは余の魔力のほんの上部に過ぎん……黒のコアに込めた分だけのな」

 

「つまり……貴方の全てではないと言いたいのですか?」

 

「常闇ノ皇にすら劣る貴様に教えてやろう……」

 

ズオオッ!

 

バーンは鋭く睨み付けるとエスタークを遥か越えた大魔力を溢れさせ告げた

 

 

「鬼眼の力を舐めるなよ」

 

 

甘く見るなと

 

かつて魔帝すら怯ませた大魔王の力を

 

「……ッ!?」

 

「僅かな栄光の時だったなエスターク……」

 

狼狽えるエスタークにバーンは言った

 

「所詮貴様は流れ星、如何に輝こうとも墜ちる運命にあったのだ」

 

一時の栄光、敗北なのだと

 

「大……魔王……!」

 

決して敵わぬ相手だと知らしめられるエスターク

 

甦ったバーンの圧倒的な力の前に今のエスタークでは敗北は確定かと思われた

 

(まだ……まだ私は……負けていない!!)

 

それでも諦めはなかった

 

まだ通用しうる物があるから敗北を受け入れない

 

 

「大魔王ォォォォォォ!!」

 

 

勝利への執念が、復讐をなす為の執念が帝王の歩みを止めさせない

 

 

 

 

終わらない……

 

 

 

 

 

運命は終わらない

 

 

 

 

 

ここから始まるのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました、ようやく書く事が出来ました。
話数がおかしいと思った方は前作最終話を見ればわかります。

久々過ぎてバーン様の台詞を考えるのに苦戦してました……
説明が多くてくどいのは御容赦を!バーン様の叡知を表す為の仕方ない事なんだと……原作でも解説多かったし大丈夫か。

7人に纏わせた灰、結局前作では意味は不明のままでした、それには理由がありまして本当は白者異変の時に死に瀕した時に効果が発揮される予定でした、妹紅の「太陽と一緒に……」の発言はその名残です。
外伝を書こうと思っていたら続編が決定したので灰は復活の礎に変更した訳です、と言うか灰の事覚えていた人居るのか?ww

バーン様の格好良さを表現出来ているかはわかりませんが主役も交代したし次回も頑張ります!
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