東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第三話 光と闇と

神殿・地下牢

 

 

ズル……ズル……

 

 

引き摺る音が聞こえる

 

 

ズル……ズル……

 

 

「着きましたよ」

 

男は牢の一室に着くと話し掛けた

 

「………ぅ…………」

 

自ら引き摺る神奈子に

 

 

「見なさい、あれが貴方が救いたかった八雲紫です」

 

男の視線の先

 

そこには牢の中央で鎖に吊るされる紫の姿があった

 

「苦労したのですよ……」

 

そう言って紫の足元を見る

 

足元には複雑な術式が展開されていた

 

「何を……した……」

 

力無い声で神奈子は問う

 

神奈子は捕まった後もしばらく嬲られ続けていた

 

諏訪子も嬲られはしたが神奈子程の責めは受けていない、今は早苗と共に別々の場所へ幽閉されている

 

自ら歩けなくなる程に嬲られたのは神奈子が一番男にダメージを与えていたから

 

それに加え神奈子の威厳ある雰囲気が男の加虐心に火をつけたからだった

 

最初に嬲った後に諏訪子を嬲り

 

諏訪子に飽きるとやめろと言い続ける神奈子に戻る

 

ひとしきり満足すると諏訪子を早苗と共に幽閉した後に戻ると思い出した様にまた嬲った

 

常人なら既に数回は死ぬ程の責めを受けていた

 

 

「特殊な術式で八雲紫の能力を強制使用させているのです」

 

得意気に語りだす男

 

「大変でした……私の世界とは異なる力でしたので術式を組むのに難儀しましたよ……それだけに惜しかったですね」

 

「……何が……だ」

 

男の表情が狂喜に変わる

 

「後少し……1日、いや、1時間来るのが早かったら貴方達の勝ちだったのです」

 

「……!!」

 

表情と告げられた事に悔しく黙るしか出来なかった

 

嘘かもしれない、本当はもっと早くだったかもしれない、この男なら嘘も有り得る

 

しかし仮にそうだとしても結果は今の通りなのだ、10日前だろうが1秒前だろうが間に合わなかった事に変わり無い

 

だから黙るしかなかった、ここで恨み事を言った所で意味は無い、それどころか更なる責めを受ける可能性もある

 

だが普段の神奈子ならばここで何かしら言っていただろう、男の加虐心を煽る様な言葉を

 

しかし今回は言わなかった

 

 

「強制使用と言っても八雲紫の抵抗がありますのでそう易々とは使えませんがね……」

 

何も言わない神奈子に説明は続く

 

「スキマを強制使用すると抵抗するのですよ……それが負荷となり自分を痛めるだけなのに……彼女の意地なのでしょうね」

 

「……まぁそう言う訳です、何、安心してください、私は彼女を殺すつもりはありません、なので使用は死なない程度にしておきます」

 

「……そう……か……」

 

紫を殺す気は無い、それを聞いた神奈子は少し安心する

 

「ですが……」

 

男が神奈子の髪を掴み目前に手繰り寄せる

 

「貴方達は違いますよ?」

 

「!?」

 

その言葉に戦慄した

 

貴方、ではなく貴方達だったから

 

「貴方達は八雲紫とは違う……何の価値も無い、言うならばただの邪魔者、異世界の神に用は無いのです」

 

男が支配したいのはあくまで男の居る世界、異世界には興味が無い、いずれは異世界にも興味が出るかもしれないが今はこの今居る世界の支配が目下の目的だったら

 

 

「……た……頼む……」

 

出ない声を振り絞り神奈子が話しだす

 

「私……なら……殺してくれ……て……も……良い…………だか……ら二人……には……」

 

それを聞く男は既に笑っていた、次の言葉が予想出来たから

 

「手を……出さない……で……くれ……」

 

自己犠牲

 

自分の命で大事な者を守ろうとした

 

 

「ハハハハハハハ!!」

 

 

言い終わった瞬間に男が笑いだした

 

「面白い者達です、まさか3者共同じ事を言うとは……クク……素晴らしい絆……涙が出そうです」

 

そう言うと神奈子を引き摺り移動を始める

 

「頼……む………」

 

引き摺られる最中も神奈子は頼む、何度も

 

 

「貴方はここです」

 

紫の牢からかなり離れた場所で足は止まる

 

「頼む……」

 

尚も懇願する神奈子を男はまた掴み上げた

 

「……良いでしょう、あの二人は生かしておきます、貴方も殺しはしません」

 

「本当……か…………?」

 

希望の言葉を確認する、嘘か本当か考えれない程に神奈子は追い詰められていた

 

本当か、とはもう確認では無く願いだった

 

「条件があります」

 

「何を……すれ……ば……良いの……?」

 

「するのではありません……されるのですよ」

 

男の狂喜がより一層深くなる

 

「私の奴隷になりなさい」

 

「奴……隷…………?」

 

「そう……奴隷……この様な!」

 

 

ドスッ

 

 

「うっ!?……ぁ……」

 

腹を蹴られ、転がる

 

「私の遊び相手ですよ……ただの……ね……」

 

条件は隷属、それもただの奴隷ではなく男の加虐心を満足させる為だけの最悪の奴隷

 

「さぁどうですか?勿論飲むでしょう?」

 

「……」

 

もう答えは知っているし決まっている

 

「……わかっ……た…………」

 

「よろしい、では約束通りあの二人には手出しはしません、安心を……これは約束、私は約束は守るのですよ、わりとね……フフフ……」

 

約束した男は神奈子を掴むと牢の壁へ放り投げた

 

「ハハハ……」

 

床に倒れて動かない神奈子に満足した男は歩き始める

 

(もしかすれば利用価値があるかもしれませんね……神なら異世界の交渉に使えるかもしれません……一応生かしておきますか)

 

上階へ登る男は神奈子等の価値を考えていた

 

(ですが神ならまだしもあの娘は人間……要りませんね)

 

価値があると考えるのは神であって早苗は違った

 

(……まぁ良いでしょう、下手に殺して生気を失われるのは避けたいですしね、神にそんな精神性があるとは思えませんがね……それに……)

 

口角が上がる

 

(約束してしまいましたからね……フフフ……)

 

有って無いような約束に苦悩する神奈子を想像し、男は愉快に地下から消えた

 

 

「く……う……ぅ……」

 

 

呻き声だけが牢に響く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷いの竹林

 

「よし!」

 

身支度を整えた妹紅が立ち上がった

 

「行くかダイ!」

 

「ピィ!」

 

二人は出発した

 

幻想郷巡りの旅へ

 

「どこに行きたいダイ?そんな広い所じゃないけどさ」

 

「ピィ?」

 

「ああ悪い、ダイは幻想郷の事ほとんど知らないんだったな」

 

「ピィ」

 

「えーと……どうする?色々あるけど?前に行った紅魔館に妖怪の山だろ?人里に地霊殿、白玉楼……太陽の畑に博麗神社にそれと霧の湖かな主な所は?香霖堂なんて道具屋もあるな……あ、あと永遠亭か、すぐそこだけど」

 

「ピィピィ」

 

「どれにする?」

 

「ピィ!?」

 

「アハハ!そりゃ迷うよな」

 

「ピィ……」

 

「じゃあ私が決めて良いか?」

 

「ピィ!」

 

「なら……やっぱり最初はあの二人だな!ダイも紹介したいしな!」

 

「ピィ?」

 

「ん?場所か?」

 

「ピィ」

 

頭にダイを乗せると妹紅は飛び上がった

 

 

「霧の湖だよ!」

 

 

まず最初に向かうのは大事な友の場所

 

二人の妖精が居る場所へ二人は向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧の湖

 

「ねぇチルノちゃん……やっぱり皆に話した方が良いよ~」

 

「イヤよ!大ちゃんだって賛成したくせに何よ今更!」

 

何やら言い合っている様子

 

「あれは皆が知らないなんて知らなかったから……」

 

「じゃあ大ちゃんはあのまま無くなるのが良かったの!?」

 

「それはイヤだけど……でもやっぱり話した方が良いよ~」

 

「なら大ちゃんが話したら良いじゃん!あたいは話さない!」

 

「む~……」

 

そんな会話をする二人

 

緑の妖精が抗議を続けようと口を開いたその時

 

 

「喧嘩か親分?」

 

 

そこへやって来た妹紅が話し掛けた

 

「!!」

 

「!?」

 

青の妖精が反応し、緑の妖精はビクッと体を跳ねさせた

 

「久し振りだな二人共!」

 

緑の妖精が振り向くとそこには手を振る妹紅と頭に乗るダイ、青の妖精は背を向けたまま

 

「……ふーん」

 

青の妖精が振り向いた

 

「腕を上げた様ね妹紅」

 

見下す笑みで見上げる

 

「試してみるかチルノ親分?」

 

いつでも良いぞ?と言う妹紅の表情

 

「南斗鳳凰拳……見せて貰うわ!」

 

「誰が六聖拳最強だ!」

 

「?……じゃあマッスル・リベンジャーするの?」

 

「するか!」

 

「何でも良いわ!勝負よ妹紅!」

 

指差すチルノ

 

「望む所だ!……っとその前に……」

 

勝負を受けた妹紅は緑の妖精に振り向く

 

「大妖精!そいつを見といてくれ!」

 

ダイを手渡す

 

「そいつはダイって名前だ!虐めないでくれよ?」

 

「あ、はいわかりました」

 

言われるままにダイを受け取って下がる大妖精

 

「行くぞ!」

 

二人の勝負は始まった

 

「ダイって言うの?じゃあダイちゃんだね!私は大妖精、私も皆から大ちゃんって呼ばれてるよ!一緒だね!」

 

「ピィ!」

 

「フフ……じゃあ一緒に見よっか!」

 

「ピィ!!」

 

すぐに仲良くなった二人は勝負の観戦を始める

 

 

 

「まずは小手調べ!」

 

チルノの回りの空気が一瞬で冷え、氷弾幕が形成される

 

「イケー!」

 

指差すと氷弾は妹紅目掛けて直進する

 

「おいおい……」

 

大量の氷弾を前に妹紅は呆れる

 

ボウッ

 

腕を振ったと同時に出た炎が氷弾を全て溶かす

 

「これじゃ小手調べにもならないぞ?」

 

余裕の表情でチルノへ聞く

 

「流石あたいが子分に選んだだけあるわね」

 

「と言うかさ?親分、私の実力知ってるよな?流石に今のは馬鹿にし過ぎだろ……」

 

「えっ?バカにしてんだけど?」

 

「……は?」

 

「だって妹紅はあたいより弱いじゃん」

 

「……今まではそうだな」

 

「までって……これからもあるわけないじゃん、あんたがあたいに勝ってたのって70年くらい前じゃん」

 

「今日からそれは変わるよ……」

 

力を込める

 

高めた力が揺らめく炎の様なオーラとなって妹紅から溢れる

 

「出たな~妖怪「皇帝不死鳥」!!」

 

普通ならたじろぐ程の力なのだがチルノは軽く微笑む

 

「あたいが退治してやる!」

 

更に空気が冷える

 

「危ないから私が守ってあげるね!」

 

広がる冷気を防ぐ風のバリアを出して二人は見守る

 

 

「行くぞ!」

 

弾幕と共に炎を放つ

 

「ガード!」

 

巨大な氷壁を作り防ぐ、その氷壁は炎にも溶かされない

 

「らぁ!!」

 

防がれるのがわかっていた様に妹紅は既に動いていた

 

氷壁に力を込めた拳を打ち込む

 

 

ズギャア!

 

 

巨大な氷を砕く音が響く

 

「!!」

 

チルノは身構えた、この程度で妹紅の動きが止まるわけないと知ってるから

 

「うらぁ!」

 

砕けた氷の中から妹紅が飛び出してくる

 

「よっと!」

 

避けたチルノはそのまま氷弾を撃つ

 

「ちっ」

 

氷弾を裏拳で弾くと弾幕を放つ

 

「ほいっ!」

 

その弾幕は全て凍らされる

 

「流石だな親分!」

 

「あったり前じゃん!」

 

互いに微笑み合う

 

これは勝負だが二人に敵意は全く無い

 

寧ろ楽しんでいた、友と今も変わらず競いあえる事を

 

「少しは強くなった様ね!でも……」

 

チルノが笑う

 

「最強は越えられない!」

 

宣言すると手を妹紅の頭上にかざす

 

「うっ……!?」

 

頭上を見上げた妹紅はたじろいだ

 

「流石最強……」

 

頭上には湖の半分もあろう巨大な氷塊が出現していた

 

「それー!」

 

チルノの合図で氷塊は落とされた

 

「くっ……」

 

妹紅は氷塊ごと湖に落とされる

 

「ピィー!?」

 

大妖精に抱えられるダイが叫んだ、妹紅が心配で

 

「大丈夫だよダイちゃん!」

 

大妖精が微笑んで見せた

 

「妹紅さんなら心配いらないよ!」

 

「ピィ?」

 

本当?と言いたげなダイにまた微笑む大妖精

 

氷塊が湖に落ちて数秒経った瞬間

 

「ラァァァァァ!!」

 

氷塊が轟音をあげて爆発する

 

「ピィ!!」

 

妹紅の健在にダイが叫んだ

 

氷塊の中から炎を燃え上がらせて出てくる妹紅に

 

「まっ当然よね」

 

チルノもわかっていた、これで倒せる程弱い訳が無いと、これで倒せるなら皇帝不死鳥と呼ばれる訳が無いと

 

「勝負はこれからだ!」

 

妹紅が動き出そうと構える

 

 

「そこまでです!」

 

 

大妖精が割って入った

 

「邪魔しないでよ大ちゃん!」

 

「そうだよ大妖精」

 

抗議を受ける大妖精は湖を指差した

 

「この辺りを滅茶苦茶にする気ですか?」

 

ゴゴゴゴゴゴ

 

一見笑顔に見える大妖精は怒っていた

 

二人が暴れたせいで湖が大変な事になっていたからだ

 

砕けた氷塊が浮かび水嵩が増し、陸地に流れている

 

これ以上やり合えば更なる惨状になるのは目に見えて明らかだったからだ

 

「わ、悪かったよ大妖精……」

 

威圧感に思わず謝る妹紅

 

「だって妹紅が生意気だから……」

 

自分は悪くない、あくまで妹紅のせいだと言うチルノ

 

「チルノちゃん!」

 

「あうっ!?」

 

大妖精の怒声に怯むチルノ

 

「チルノちゃんは強いんだからもっと考えて戦わないとダメなんだよ!?もし他の人が怪我したらどうするの!?」

 

「わ、悪かったわよ……そんなに怒らないでよ大ちゃん……」

 

「わかったなら早く氷を片付けて!妹紅さんも!」

 

「「は、はい!」」

 

直ぐ様片付けを始める二人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

片付けが終わった後に4人は湖の側で談笑していた

 

「あたいはチルノ!あんたもダイって言うの?よろしくねダイちゃん!」

 

「ピィ!」

 

互いに自己紹介をすると二人はすぐに仲良くなった

 

「チルノちゃんはね、とっても強い妖精なんだよ!幻想郷で一番強いんだよ!」

 

「大ちゃんだって強いよ!あたいの次の次くらいに!」

 

最強の氷精・チルノ

 

幻想郷で並ぶ者は居ないとされる最強の妖精

 

先の氷塊などほんの一端、その力は幻想郷に終わらない冬をもたらす事も可能とさえ言われる

 

ただ未だに頭はあまりよろしくない

 

あと発育も

 

イヤリングはいつも肌身離さず身に付けている

 

 

大いなる妖の精・大妖精

 

6人の中の唯一の良心

 

悪ノリしやすいメンバーのストッパー役、知識豊かなお母さん的存在、しかし彼女にとってのお母さん役はパチュリー

 

普段は優しく大人しいが怒らせるとチルノすら恐れる存在になる

 

発育はチルノが嫉妬する程

 

同じくネックレスは大切にしている

 

 

 

「やっぱり強いな親分は……」

 

「当然!なんたってあたいは最強だからね!まだまだ子分には負けないわよ!」

 

「いつか絶対負かしてやるからな!」

 

「やってみなさい!……だから……」

 

不意にチルノの表情が曇る

 

「……死ぬのは許さないからね」

 

その言葉に妹紅の口が止まる

 

(……そうか、魔理紗の事と……いまだにバーンの事が……)

 

誰よりも友達想いだったチルノは別れを恐れていた

 

始まりはバーン、一番好きだった者との別れはチルノに別れの恐怖を植え付けていた

 

だがバーンとの約束で恐怖を抑えていたが魔理紗との別れでまた恐怖が蘇ったのだ

 

(まだ……そこまで大人にはなれないか……)

 

バーンはともかく魔理紗に関しては仕方の無い事、それも納得出来ない程にチルノは別れが怖かった

 

「チルノ!」

 

妹紅が呼び掛ける

 

「忘れたのか?私は蓬莱人だぞ?死なないよ私は!」

 

不安を払う様に力強く答えた

 

「本当でしょうね?」

 

「少なくともお前より長生きするのは間違い無いな」

 

「言うわね子分のくせに!」

 

安心させる為に生きると言う

 

蓬莱人の妹紅は老いる事も死ぬ事も無い、分類で言えば死はあるが魂を基点に蘇る事が出来る

 

その事を知らないチルノでは無いが今一度確認したかった

 

もう別れは嫌だから

 

それが必然だとしてもこれ以上友との別れをしたくなかったから

 

「……約束よ!」

 

「わかってるよ!」

 

二人は約束する

 

いつまでも一緒に、そして友で有り続けると

 

 

「ところでさ」

 

約束の後、思い出した妹紅が聞いた

 

「さっき何の事話してたんだ?」

 

聞いたのは最初に二人が話していた事

 

「あ……あれは妹紅さん!……その……」

 

急な質問にオロオロする大妖精

 

「別に……何でもないわよ!」

 

少し怒り気味にチルノは言った

 

「何怒ってんだよ……」

 

「怒ってない!」

 

「……わかったよ、もう聞かないから怒るなよ、な?」

 

「だから怒ってない!」

 

それを機に話題は一旦終わり、久しぶりに再会した3人はダイも加えて仲良く遊ぶ事になった

 

 

幻想郷は平和だった

 

 

目に見えない場所を除いて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神殿・地下牢

 

「……」

 

そこに倒れるのは神奈子

 

牢に入れられてから数時間経つも鎖のせいで回復が進まず動けない

 

『神奈子……』

 

呼ぶ声が聞こえた

 

『諏訪子……会話出来るくらいの力は出せるみたいなのね……無事?』

 

呼んだのは諏訪子、神の力を抑え込んだ気になっている男にバレない様に僅かに使える神気を使い神奈子に呼び掛けていた

 

『私は大丈夫……それより神奈子の方が……』

 

『私なら心配要らない……早苗は?』

 

『早苗も今は無事、今は……ね』

 

『そう……脱出は出来そう?』

 

『出来ない事もないけど……出来た所で満身創痍の私達じゃまた捕まるか殺されるかが落ち……スキマも使われたら余計に……』

 

『……』

 

脱出の困難さを知った神奈子は暫し考えた

 

『諏訪子……賭けになるけど乗ってくれる?』

 

『賭け?何をするの?』

 

『バレたら間違いなく殺されるしそれ以前に足らないかもしれない……いえ、足らない可能性の方が高いわね』

 

『……もし賭けに勝ったら?』

 

『奴が負けるのは間違い無い』

 

『……本当ね?』

 

『ええ……本当よ、勝ったら間違い無く私達の勝ちよ』

 

『……』

 

数秒おいた後、諏訪子は決めた

 

『乗ってあげる、何をすれば良いの?』

 

『力を溜めるのよ、バレない様に……』

 

『どれくらい溜めるの?』

 

『有れば有るだけ良い……出来る?』

 

『……出来なくはないわね、あいつが私達を殺さない限り』

 

『じゃあすぐに始めて、早苗にも伝えて』

 

『わかった』

 

『この状態だからかなりの時間が掛かるけど……頼むわ』

 

『任せて……でも本当に大丈夫なの神奈子?』

 

『……大丈夫よ』

 

『……信じてるからね』

 

『……わかってる』

 

そこで会話は終わる

 

「うっ……くっ……!?」

 

僅かに動いた神奈子は体の奥底にバレない様に力を溜め始める

 

(もし……賭けに勝っても私は批難されるかも知れないわね……こんな事になって……すがろうとする私を許さないかも知れない……)

 

罪悪感を感じながら密かな賭けは始まった

 

(その時は責を甘んじて受け入れる……紫を、皆を守る為に……だから……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けて……バーン……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弱々しく呟かれたそれは希望

 

 

何よりも、誰よりも強かった仲間を想い

 

 

神奈子の賭けは開始された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく投稿出来ました、仕事が忙し過ぎるんだよ~
疲れてるとあまり良いのが書けませんね、良いのを書こうとすると遅れるし……難しい……週1くらいで更新したいのですが中々……

今回も温度差のある話です、平和の裏で蠢く者……なんか酷い事ばかり書いてるなぁ

次回も頑張ります。
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