バーンが溢れさせた大魔力
エスタークの持つ魔力を遥か越えたその魔力は幻想郷にその存在を知らしめた
搏麗神社・大結界の間
「きゃっ!?」
結界を見ていた霊夢が突如押し飛ばされそうに身を反らす
「……な……めんなぁ!!」
身に力を込めて押し返す
「ハァァ……」
立て直すと深い息を吐いた
(びっくりさせないでよ……私じゃなきゃあんないきなりの魔力の膨張に対応出来なかったのよ?)
それは話し言葉
誰かに語りかける心の声
(いきなり生き返るなり張り切り過ぎよ……まっそれを見越して紫は私を行かせたんでしょうけど……)
相手は霊夢も良く知る相手
歴代最強となれた切っ掛けをくれた者
(好きなだけ暴れると良いわ……大丈夫、こっちは気にしないで……あんたの好きな様に……友達を助けてあげなさい)
強化しなければ大結界を容易く破壊出来てしまう程強く、そして懐かしい力を感じ微笑む
(バーン……)
最高の仲間に向けて……
エスターク神殿・地下牢
「カフッ……ハァッ……ハアッ!?」
「大丈夫?しっかりしなよ」
『無理をし過ぎだ八坂……』
酷く弱っている神奈子を心配するにとりとしんりゅう
『神の力を使い果たす寸前までする必要は無かっただろうに……成功率に大した違いは無い、僅かなものだ……死ぬ気か』
呆れた様に言うしんりゅう
「黙ってろよお前は!わからないのか!!」
そのしんりゅうを怒鳴るのはにとり
「神奈子の気持ちが!僅かでも可能性を上げようって……!幻想郷を救いたいって……!」
剣幕な表情でしんりゅうを圧倒する
「あいつらに会わせてやりたいって気持ちが!!」
にとりにはわかるのだ、神奈子がほんの僅かの為に力を尽きる寸前まで使った気持ちが
「そんな簡単な事もわからないからお前は腹が立つんだ!機械みたいな事しか言わない、位が高い神だから自分しか見えない、そんなだから他人の気持ちもわからない!同じ神の事でさえ!」
隠していたってわかるのだ
神としてではなく、八坂神奈子として約束を果たそうとしたのだと
それが約束を守る事だと信じたから交わした相手を呼んだ
信仰でしか強くなれない自分より余程強く、幻想郷を想い、バーンを想っていた7人の為にと
「いい……にとり……」
ようやく落ち着いた神奈子が怒るにとりを諌める
「いいのだにとり……」
「だけど……」
言い足りないにとりが顔を向けると神奈子は顔を振った
「神とは本来そういう者だ、高い力と精神性を持つが故に感情に左右されない、物事を合理的に判断するためにとりの様に想いの感情からの行動が理解出来ん」
「……何言ってんだよ」
神を語る神奈子ににとりは聞かずにはいられない
「あんたも……神じゃないか!」
そう語るお前は何なのかと
「……」
黙った神奈子は悲しく目を伏せ
「もう神ではない」
告げた
「神ではなくなったのだ私は……」
「どういうことだよ……」
理由を求めるにとりに神奈子は語り出す
「感情に左右される様になった私は罪を犯した、等しく与えられる神の力をあの7人の為だけに使ってしまった……それが罪、分け隔て無く与えられる加護を己の私欲に使った神にあるまじき行為……」
「でもそれは幻想郷を守る為に……」
「結果が良ければ何をしても良いという話ではない……過程に問題があった、幻想郷を救う為とは言え7人に奇蹟を与え、魔族……それも大魔王と呼ばれた者を甦らせた……許される範疇などとうに越えてしまっている」
そう語ると神奈子はにとりへ微笑んだ
「これが既に神ですら怪しかった私の最後に出来る事……全てが終われば私は神々によって裁かれ、最悪存在を消されるだろう」
「……笑えないよ、なんで……あんたは笑えるんだよ……なんで……」
死ぬかもしれないのに笑う、それがわからない
「にとり……笑顔とは嬉が溢れて顔に滲み出るものだ、嬉しいから……笑うのだぞ?」
「何が……嬉しいんだよ……!」
「ああそうか……こんな暗い地の底では私やしんりゅうはともかくにとりには無理だったな」
意味がわからないにとりに神奈子は言う
「喜べにとり、お前の願いが叶った」
「えっ……それって……」
「そうだ、バーンが甦った……私も約束を果たせたのだ」
それを聞いてにとりは喜びながら神奈子を牢から連れ出す
「あんたの覚悟に水を差すつもりは無いよ……」
ロビンの手に乗る神奈子に語りかける
「だから終わる前に見に行こう!あんたが果たした約束の形を見に……バーンに会いに!」
『案ずるな八坂、我も長く河城にとりと居て想いを多少なりとも理解する事が出来る様になった……神々には我が便宜を図ってやろう』
しんりゅうも加わり幻想郷を目指す
「……」
優しさに触れた神奈子は笑顔だった
(……例え神々が私の罪を許そうとも……もう一つ、私は消えない罪が残る……)
裏腹に内には深い後悔と懺悔
(私に償えるだろうか……)
それはそう遠くない未来に起こる事
主導者の神奈子だけが知る誰にも言えない罪
そんな希望と絶望を混在させて神は幻想郷に向かって行った
人間の里
そう……
当然ここも……
「ハッ……ハハッ!黄泉返って来やがった!ツレ助ける為に!なんて奴だい……妬けちゃうねぇ!」
「……霊夢さんと魔理沙さんが生き返ったからおかしくはない様にも思いますけど……やはりにわかには信じられません、けど……!」
「約束が……違うじゃない……」
萃香、妖夢、幽香の3人が現在里の真上にあるパレスから魔力を感じ復活を知り喜ぶ
「今の魔力は……!!」
それに呼応して各地で戦いを終えた皆と文、青娥が集まってくる
「間違いないねぇ!王の帰還ってやつさね!」
「やっぱり!!」
沸き上がる一同の中、一人だけ混乱していた者が居た
「……妖夢」
「どうしましたロン・ベルクさん?」
混乱していたのはロン
同じく魔力を感じたから混乱していた
「お前達はこの同じ魔力の高い方の持ち主を知っているのか?俺の良く知る魔族より強い魔力だが……」
ロンだけは想像出来ていないのだ
幻想郷の彼を知らないから
心に生きた大いなる者の足跡を聞いていただけだったから
「?……何言ってるんですか?」
妖夢は真剣に悩んでいるロンにあっけらかんに言い放った
「バーンさんですよ?忘れてしまったんですか?」
「バーンサン?何者だ?」
別人と信じこんでいる
「だからバーンよぉ!貴方の知ってる大魔王バーン!何があったのかしらねぇ……」
ふよふよしながら幽々子が答えた
「大魔王バーンだとぉ!!!」
驚愕の声が響き渡る
「バカな!?あのバーンが甦っただと!?」
信じられないロン
それも無理も無い、存亡を賭けて戦った敵が甦ったのだ
いくら幻想郷のバーンを知っているとは言え見ていないから実感が無かった彼にはこの事実は衝撃的過ぎた
「アハハハハハ!!」
萃香の笑い声が響く
「あんた良い反応するじゃないか!笑わせて貰ったよ!アッハッハ……イテテッ!?笑わせるんじゃないよ!死んじまうだろ!」
「久し振りに見ましたけど……やっぱり凄いリアクションですねロン・ベルクさん!フフッ!」
それに続いて皆も笑った
「……チッ、何なんだこいつらは……」
甦った事を受け入れている皆に納得いかないロン
「それはバーンの能力が関係しているわ」
遅れて来た者が声を掛けた
「八雲紫……無事だったか」
振り向くとにとりから受け取った扇子を持った紫と美鈴、正邪、ルーミアに抱き抱えられた諏訪子と早苗
無事に再会出来た事を喜ぶ皆の中、ロンと紫がパレスを見上げる
「バーンの能力だと?鬼眼の事を言っているのか?」
「違う……そんな類いではなく幻想郷的な……」
「……そんな能力は奴には無い筈だ、それとも幻想郷に来てから得たのか?」
「うーん……まぁそうなるかしら、ここに来てからは間違いないものね」
「どんな能力だ?復活に関係する類いなのか?冥竜王ヴェルザーの様な……」
「違う違う……そんな上等なものではなくて……もっと……素敵な能力……」
問われた紫はクスリと笑うと答えた
「友を守る程度の能力……」
パレスに居るバーンを想いながら
「……能力と言えるのか?そんな曖昧なもんが?」
「もちろん言えるわ、曖昧とは広義とも言える……現にバーンは甦った、友を守る為に甦ったと考えればまったくおかしくないでしょう?」
「……なるほどな」
「あら……納得するのね、意外ね……馬鹿にされると思ってたのに」
「俺も知ってるのさ……自分の好きな人間を守る為に、友達や仲間を守る為に戦い、奇蹟を起こした一人の小さな勇者をな……だからわかるのさ、大事な者の為なら死すら越えられる事があるんだろう……と」
ロンが思い浮かべたのは遠い記憶に居る一人の勇者
人間の為に戦った小さな竜の騎士
それと同じなのだろう
今のバーンは地上破壊や支配などなんの興味も無くなり、その情念は新しき地で見つけた友の為に向けられたのだろうと
だからこそ友の危機に参じたのだろうと
「フッ……」
微笑むとロンは酒瓶に手を付ける
(助ける為に甦っちまうとはな、本当に変わっちまったんだなあんたは……ただ友の為に……か)
実感するバーンの変化を酒のあてに酒を飲む
(終わったなエスターク……相手は魔人となった勇者でも絆の奇蹟がなければ勝てなかった魔の頂点、名ばかりのお前とは格が違う事を嫌と言うほど教えてくれるだろうさ)
勝利を確信し行く末を見届けるべくパレスを眺めた……
エスタークパレス・王室
「小細工では到底辿り着けん境地がある、これが余と貴様に広がる絶対なる差……格の差だ、王の名に着られる貴様との器量の差だ」
叫んだエスタークに何の動揺も見せずバーンは告げる
まだ諦めていない様子だと悟っているがそれ以上動こうとしない
それはあらゆる可能性を知る範囲で考えていたから
「……なぁバーン?」
打ち震えるエスタークを他所に妹紅が聞いた
「なんでお前色々知ってるんだ?私の不死鳥の事とか……」
「そうですよ!パチュリーさんがメドローアを狙った事もそうですし常闇ノ皇……ルーミアちゃんの事もなんでさっき来たバーンさんが知ってるんですか?」
大妖精も加わった疑問
「それは灰が纏っていたのがお前達だったからだろう」
バーンは答える
「各々の灰が教えてくれたのだ、今に至るまでの事をな」
「へぇ~便利だな、説明が省けて助かるぜ」
魔理沙が悪戯っぽく笑うと不機嫌そうなレミリアが口を開いた
「なら知ってるはずでしょ?私があいつに妃になれって言われた事!」
「無論知っておる」
「じゃあ何よさっきのは!」
レミリアは怒っていた
我慢ならない理由があったから
「何で理由の中に私のが無いのよ!?」
怒っていたのは自分が無かった事
妃になれと言われた自分を何とも思っていないのかと感じていたから怒った
「お前に対してそこは何も心配しておらんからだ」
「何よそれ……」
悲しくなりかけたレミリアにバーンは告げる
「余しか見えていないお前が他になびく筈なかろう?故に怒るに値せん、それが当然だからだ」
告げられてきょとんとしているレミリアにバーンは続けた
「どうした?なびきかけたとでも?」
「……なんですって?」
レミリアはピクリと肩を跳ねさせた
「言葉には気をつけなさい……私があんな小僧になびくなんてチルノが天才になる事と同義……つまり有り得ない事なのよ」
すました顔で語るレミリアだが後ろにはチルノがぶっ飛ばすといきり立っているのを押さえる大妖精が居た
「わた……私が!……なびくのは……」
急に頬を紅潮させながら俯くレミリアは恥ずかしいのか中々言えない
「バーン……ダケヨ……」
ボソボソと傍に寄らなければ聞こえないくらいの小さい声で呟く
「また語り合うとしようレミリア……全てが終わった後……月に一番近い場所で……」
「そうね……」
二人の空間を作ってしまい頬を掻いたり苦笑や怒ったり目を輝かせたりしている6人
「勘違いをするなッ!!終わっていない!!」
そんなムードを壊したのはエスターク
勝った気でいるバーン達に苛立ちは最高潮に達していた
「私にはまだ切り札がある!」
顔を向けた8人にエスタークは笑みを浮かべ腕を伸ばす
「貴方達は気付きませんでしたがこの大魔宮は今、人間の里の真上に居る!」
手を真下へ向けるとバーンを見た
「ピラァを落とす!」
そう宣言するとバーンは無表情でバーン以外の7人は何の事かわからないが危険な事なのだと察し動揺を見せた
「大魔王!貴方ならわかるはずだ!」
「……」
叫ぶが依然表情の変わらないバーン
「ピラァってなんだよ?」
魔理沙が不安げに問う
「ピラァ……名をピラァ・オブ・バーン、大魔宮に備えた破壊兵器、巨大な杭を落とす兵器だ……落下箇所は甚大な被害をこうむる、里程度なら結界ごと容易く荒野に成り果てるだろう」
「はぁ!?」
兵器の詳細に青冷める7人
「やめろエスターク!!」
今里には守るべき人間達が居る
戦っている仲間達が居る
それを里ごと消滅させようとするのだから焦るのは当然だった
「ピラァ・オブ・エスタークです……ここは貴方のパレスではありません……」
聞き入れない
いや、聞くに値しない
話す価値の無い7人など眼中に無かった
エスタークはバーンとだけ話していたのだ
「落とされたくなければ御友人を皆殺しにしなさい」
そして突きつけたのは要求
人間と仲間達を人質にバーンに友を殺させようとしていた
「……」
バーンは表情を変えない
「バ……バーン……?」
今エスタークを倒してもピラァが落ちないとは言い切れない、ピラァ自体を止められるかもわからない
わからないから迂闊に動けない
そしてバーンが襲ってくるかもしれない
そんな事が頭をよぎったチルノが不安げに問い掛ける
「……チルノ」
キッ
「!?」
バーンの睨みにチルノの不安げな表情が怒られる子供のそれに変わった
「お前らしくもない……考えれる様になったのはよい事だが容易に焦燥を見せるな、敵の言葉をいちいち真に受けていては良いように隙を突かれるだけだ」
「うぅ……でも……」
しおれたチルノがスカートを握る
「チルノ……」
頭に手を乗せると微笑みを見せる
「ピンチの時こそふてぶてしく笑え……心の内を読ませるな、それが強者たる者の振舞いと言うものだ」
「そんな事言われても……」
「友を心配しての事だとはわかる、だがそれが状況を悪くする事に繋がると学べ、逆もまた然りだが相手に不気味だと思わせる事が勝機に繋がる事もあると知っておけ」
「……うんっ!」
教えが終わると同時に怒声がバーンを打った
「いい加減にしろ!!状況はわかっている筈だ!早く殺せ!!」
怒声の主は勿論エスターク
何をしても余裕を崩さず、あまつさえ自分を非常に軽く見ているバーンの態度に口調が荒れる程に怒っている
「よい機会だ、教えてやろう……余裕を見せる時は二通りある、今教えたハッタリの際と……」
視線をエスタークに移すと構えもせず笑みだけを見せた
「相手の目論見を潰せる算段がある場合だ」
ふてぶてしい笑みを
「……潰せる?」
それをエスタークが面白そうにバーンに笑いかける
「どうやってです?」
「わかりそうなものだが……まぁよい」
優位に居ると思っているエスタークに呆れたバーンは事も無げに言い放った
「やればわかる」
撃ってみろと
「……」
バーンから何の揺らぎも感じれないエスタークは考える
(ハッタリ?もしくは本当に何かある……?いや!大魔王は友人が何より優先、人間共を見殺しにして手が無くなった私を始末するつもりか!?)
目論見を読んだ
(愚かな……まだ私にはアレがある、私が本気なのを見せて優位を確実にしてやりましょう)
邪悪な笑みを浮かべエスタークは行動に移った
「では撃ちましょう……」
魔力をパレスに放ち兵器へ伝わせる
「私自身で殺したかったですが……まぁいいでしょう、これで人間は死にました」
そう告げ終えた後にピラァは撃たれる
「……!?」
筈だった
パレスは沈黙し何故かピラァは撃たれない
(何故……)
焦りながら原因を考える
「落ちぬなぁ小僧……」
考えるエスタークにバーンが呟く
「……何をした大魔王……」
その言葉に原因がバーンにあると見て問い掛けた
「フッ……やはり小者」
わかっていないエスタークにバーンは話す
「この大魔宮は余の記憶を元に造られたのだろう?つまり構造に相違は無い」
「それが……!?」
そこでようやく気付いた、ピラァが撃てない原因を
「気付いた様だな、そうだ……既に余の魔力で掌握済みだったのだ、貴様の弱く脆い魔力の上からな」
バーンがピラァを撃つと言われても余裕な理由
魔力を伝達させる事により撃たれるピラァ
それを先程エスタークに魔力を見せた際に同時に行っていた
「そんな事が出来る筈が……!?」
「逆に聞くが余にその程度の事が出来ないとでも?」
動揺するエスタークに更にバーンは告げる
「その程度の手が通用する相手と思ったか?」
これが余裕の理由だと
「くっ……」
「終わりだな、いつまでも醜態を晒さず覚悟を決めよ」
終わりを告げたバーンがエスタークに歩み寄る
「まだ終わっていない!」
叫んだエスタークが懐に手を入れると掌大の物体を取り出した
「これが何かわかるでしょう!」
物体を見せつけバーンの歩みを止めさせる
「……黒のコアか」
「そう!貴方の遺した黒のコア!既に魔力は充填済み!幻想郷を吹き飛ばしますよ!」
エスタークがまだ持っていた手は黒のコア
これを使い幻想郷を吹き飛ばすと脅しをかけた
「さぁ皆殺しにしなさい!」
これが本当の切り札だと見せつけバーンを操ろうと息を巻く
「……」
だが……
「つくづく小者よな……底の浅さが滲み出ておる」
バーンは再び歩きだした
「止まれ!」
「止まらねば爆発させるか?構わん、好きにするがいい」
「大……魔王……!!」
「やらんのか?」
「……後悔しろ!!」
エスタークは黒のコアを地上へ投げ入れた
「……!!」
フランが阻止しようと飛び出そうとする、自分なら間に合うからキャッチして地上から離そうとした
「よいフラン」
だがバーンが止めた
「その必要は無い」
そして間に合う距離は過ぎた
「灰塵と化せ!幻想郷!」
コアへ魔力を飛ばす
「今が爆発の時だあアァーー!!」
その瞬間……!!幻想郷が……
……ドッ!
「なんか落ちてきた……なんだコレ?」
輝かなかった
「……爆発はっ……」
「爆発はどうしたアァァッ!!!」
エスタークの声だけが響く
「爆発する筈なかろう、あの黒のコアは余が神奈子の為に造った物……神奈子の神気にのみ反応する様に造っているのだ、魔力は込めれても爆発させる事は余にすら出来ん」
「馬鹿な……そんな馬鹿な……」
バーンの答えにたじろぎながらエスタークは後退する
「手は尽きた様だな、ではあの世へ向かう支度をする番だ」
更に近付いていく
「大魔王……!」
睨むエスターク
「大魔王ォォォォォォ!!」
叫ぶと同時に鎖を放った
ドウッ!
「グハアアッ!?」
掌圧が鎖ごとエスタークを吹き飛ばす
「往生際の悪い……今更そんな子供騙しが通用する相手かもわからんのか、王を名乗るならせめて散り際くらいは潔く堂々としておれ」
「ま、魔物を……」
「貴様が集めた魔物は全て倒されている」
「!?……万を越える数が!?」
「4万だ、数も把握しておらんのか」
「……!!」
エスタークは何かを使った
「八雲紫は既に救出済みだ、スキマを使って逃げる事は出来ん」
しかし、何も起こらなかった
「!!?」
「もはや正常な判断すら出来んか……終わっているのだ貴様は、余が再誕した時点で」
「だ……大魔王……!!」
「大魔王大魔王と煩い奴よ……余は大魔王では無いと言っておるのだがな……」
手に力を込め
「だがまぁ……敢えて王を名乗るのなら……」
(後を考えればこれ以上の名はあるまい)
バーンは言った
「幻想ノ王」
王の名を
「……!?」
それを聞いたエスタークの動きは止まり、下を向き微動だにしなくなった
「同じ魔族の情けだ、一瞬で送ってやろう」
手刀を構えたバーンが近付く
「……」
後はこの手刀を振り落とし命を絶つだけ
それだけだと思われた
「私の……負けです……ね……」
エスタークが呟き剣を床に落とした
「夢破れた私に残されたのはもはや死のみ……」
無念さを感じる呟き、それは人間を皆殺しにして神々に復讐し支配する事が出来なくなった無念から
「……?」
バーンは足を止める
エスタークの雰囲気から何かを感じたから
「と思っていますか?」
ヴンッ!
エスタークの周囲に突如法式が広がった
「これを使う事になるとは……先に言っておきますが使うつもりは無かった、まだ未完成だったので……こんな事になるなら黄金の腕輪を先に見つけていれば良かった……」
その言葉は本当に無念に溢れていた
「まぁいいです、神の涙を代用にしようと思っていましたが無理なら仕方ありません……」
(あの法式はなんだ?奴の気配、口振りを見るに禁術だろうが……)
バーンにもそれが何かわからない、得体の知れない未知数の事に警戒し足を止めて様子を窺う
(あの式……進化の力を秘めている……?)
灰によって知り得た情報の中にこの法式の事は無かった
知っているのは体感した紫だけ
だから今バーンは法式の効果を探る為に動かない
「代わりに未知数ですがこれを代用にしましょう……」
エスタークの体から魔力が溢れだし法式に組み込まれる
(余の鬼眼の魔力を触媒に……)
鬼眼の魔力を使う意味を考えるバーンに
「大魔王……いや、幻想ノ王バーン……」
エスタークが語り掛けた
「後悔するといい!私を追い詰め……この進化の秘法を使わせた事を!」
「八雲紫の時とは違う!完全に使用すればもう戻れはしない!」
「私の自我は消えるでしょうが構わない!進化した私が貴方を!幻想郷を!全ての世界を地獄に変える!!」
もう進むしかなかった
残されたのはそれしかなかったから
しなければ死しか無いのなら戸惑いは無かった
無念だったのは自らの目で夢を見る事が出来なくなった事
だがもう構わない
例え自我が無くなろうとも
「私の夢は終わらない!無限に続く地獄の悪夢を見ろ!バーン!!」
夢を実現出来るなら……
カッ!!
法式を取り込んだエスタークが光を放った後、広く大きい黒い煙が包みエネルギーが稲妻の様に荒れ狂う
「な、なんだぁ!?」
見ていた7人が異様な事態に身構える
「……ピィ!?」
ダイが慧音に警告した、危ないと
「大丈夫だ……バーンが居る!」
確かに危険なのだろうがバーンと言う安心があるから慧音はそこまで不安ではなかった
「ピィ……」
しかしダイは不安だった
神の力を持っているからか感じてしまったのだ
慧音が思うよりもっと危険な事なんじゃないのかと……
黒煙が晴れ始めたその時、中から声が聞こえた
「バァァ……ン……」
黒煙が晴れるとエスタークは姿を見せた
「バァァン……!!」
その体は人型の姿ではなかった
鬼眼王に匹敵するであろう巨大な緑色の体、角が生え爪は鋭利に伸び棘も生えている
顔は目が増え三眼、牙もある
更に腹にも顔を持ち怪しく蠢いている
まさに異形の化物がそこには居た
だが未完成故か安定していないのか体を僅かに動かし呻いていた
「なるほど……種類は違えど余の鬼眼解放と同質の法式だったか、これが真の奥の手……魔獣となってまで夢を果たす気概とは見直したぞ小僧」
変わり果てたエスタークを見て感心するバーン
「感心してる場合か!私達も手伝う!あいつを倒すぞ!」
7人がバーンへ並ぶ
「よい、お前達は下がっていろ」
しかしバーンは共闘を良しとしなかった
「奴は成った、真の王……地獄の帝王に、ここよりは王の戦い、手出しは無用」
「ですけど……」
大妖精が食い下がる、強くなったエスタークの力に加え未知数な事にバーン一人では不安なのだ
「余だけでは心配か……しばらく見ん内に余の世話を出来る様になっていたか大妖精、よほど強くなったと見える」
「あう……そんなつもりじゃないですよぉ……バーンさんの意地悪……」
俯いて指をツンツン合わせる大妖精
「ほら落ち込まないの、バーンもこんな時に意地悪するものじゃないわ」
パチュリーが大妖精を慰める
「ここはバーンに任せましょう、バーンの力を考えたら全快ならともかく今の私達では邪魔だからね」
消耗している今は加勢が逆に邪魔になりかねないと感じ信頼出来るバーンに任せる
「でもパチュリーさん……」
「心配しないの、大丈夫だから、ほら皆も早く」
促されて下がった7人を確認するとバーンはエスタークへ向いた
「!?……バァァァァァァン!!」
同時にエスタークがバーンを視認し魔力をぶつけ咆哮する
「では始めるとするか地獄の帝王……」
ゴオッ!
膨張した魔力がパレスを揺らす
「エスタークよ……!!」
それが二人の王の動く機になった
「グゴオオオッ!!」
「ヌゥン!!」
エスタークが魔力の波動を放ちバーンが魔力を乗せた掌圧を繰り出す
ドンッ!
「グゴオッ!?」
勝ったのはバーン、波動を突き破りエスタークに一撃を食らわせる
「エスタークよ……その気概は買うがな……」
そう呟くバーンにエスタークは両の口から灼熱の炎を吐く
「だがそれでも……」
炎に飲まれたバーンはゆっくりと進む
「余には及ばん」
ズドォッ!
強烈な殴打がエスタークの巨体を浮かせる
人の形をしているが鬼眼王の肉体からなる打撃
その体からは考えられない威力を誇っていた
「ね?だから心配無いって言ったでしょう?」
パチュリーが大妖精に微笑む
彼女は知っていたのだ、進化し強くなったと言えどバーンにはまだ遠く及ばないと
「そうですね!やっぱりバーンさんは凄いなぁ……」
大妖精含め皆が改めてその強さに感心し頬を緩ませる
「よし!そのまま倒せバーン!」
妹紅が言った瞬間だった
「グガッ!?」
エスタークの動きが止まり体を痙攣させる
「……これは」
バーンの目の前でそれは始まった
体色が変わっていき緑から白へ変化する
(進化しているのか……)
その魔に精通する知識が意味を悟らせる
「グギィッ!!」
新たな進化を終えたエスタークが爪を振るう
「……」
それを受け止めたバーン
(強さが増した……だがそれでもまだ……)
爪を引きエスタークを引き寄せる
「余には及ばぬ!」
手刀を構えその技を繰り出した
「カラミティエンド!!」
「ギアアッ!?」
最強の手刀が右腕を付け根から切り飛ばす
切り飛ばされた腕はもう必要ないとばかりに発火し消え去る
「グギアアッ!!」
左腕を振るいバーンを叩きつける
「……」
しかしバーンには効いていなかった、床を陥没させているが腕1本で難なく受け止めている
「……」
一瞬だけバーンは止まった
「……ハアァァッ!」
左腕に腕を突き入れ力を込め押し込む
バキャア!
耐えれる限界を越えた左腕が肩ごと引き千切られた
「フン……」
腕を捨てたバーンは顔へ飛び込む
「ガギッ!?ググッ……!?」
両腕が無くなり怯むエスタークにバーンは手をかざす
「闘魔滅砕砲」
ズオッ!
強力な暗黒闘気が頭を消し飛ばした
「グ……ゴ……ゴ……」
残った腹の顔が苦しみの声で哭いていた
全ての策を潰され、自我を捨て未来すら捨て禁断の秘法を使ったエスターク
だがそれすらも上回るバーンの守る強さ
勝利は確実と誰もが思っていた
「……」
だが戦うバーンだけは先程から感じるある事について考えていた
(解せん……)
それはエスタークから感じる有り得ない事だった
(何故……何故奴から僅かだが……)
それを感じるも倒す事に変わりないバーンは攻撃を続ける
(神の力を感じるのだ……)
バーンは知らない
いや、誰にもわからないのだ
未完成の秘法に使われた鬼眼の力が何を意味するのかなど……
(奴に何が起きている……)
一抹の不安を孕みながら王の戦いは続く
ようやくか……
もうそれは止まらない
幻想郷が見るべき夢……運命なのだから
もう……止まらない……
ついに使用しました進化の秘法!
プロローグ以来だったしバーンの魔力に隠れて忘れていたかもしれません。
そして更新頻度が落ちていますがなんて言いますか書き方わかんなくなってきちゃいました……構想は出来てるけど形に出来ない、これで良いのか?なんて思ってなかなか進まない……
四苦八苦してますがなんとか書けてますので失踪はありません、御安心ください。
次回も頑張ります!