東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第45話 夢現

 

人間の里

 

「ぶつかってるね……」

 

パレスで行われている王の戦い

 

「はい、何が起きたかは想像もつきませんがエスタークが持つバーンさんの魔力が無くなったと思ったらエスターク自身の魔力が跳ね上がってまた上がった……」

 

それは遥か下の地上の者にも容易にわからせる

 

「でもバーンの方がまだ強い……」

 

萃香、妖夢、幽香はパレスを見上げていた

 

「あんた達はどう思うね?」

 

萃香は問う

 

「……この目で見ていないので感覚の話になりますけど……強さこそバーンさんに劣ります、ですがこの……なんと言うか中身の無い空虚さを感じます……酷く不安にさせる魔力になった印象です」

 

「同意見ね、感情を感じられない……まるで意思だけで動いている死人みたいに……」

 

二人は言い様の無い不安を感じていた

 

強さではない物を本能的に感じ取っていた

 

「やっぱりそうかい……」

 

それは萃香も同様

 

バーンの方が強いと言う安心を上塗る不安があった

 

「……もしエスタークが自我を消す程の事をしたとするならそれは余程の事だろうね」

 

「そうね……自我を消してまで成し遂げたい、叶えたい事があり……そこまでの執念と覚悟があった」

 

「バーンさんすら目的の前の障害……そう思っている位の……」

 

神妙に話す3人

 

だが周囲はバーンの復活に沸く妖怪達と半ば御伽話と化していた救世主の登場に喜ぶ人間達

 

不安を感じていたのは一部のみだった

 

「どうしたんだよそんな怖い顔して?」

 

「そうですよー!勝つのはわかってるんですから喜びましょう!」

 

3人の様子が気になった正邪と文がアリスや青娥と共に話し掛けた

 

「まだ……わからないよ」

 

萃香は告げる

 

「今話してたけど、エスタークは禁術を使ったかもしれない……自我を無くすくらいの……ね」

 

「バーンも鬼眼の力を解放してるだろ?大丈夫なんじゃないのか?実際にバーンの方が強いけど……」

 

バーンが居るという安心感が強い正邪達は3人の不安が解せない

 

「おそらくエスタークが使用したのは私と戦った時に使用した法式と同じ物でしょう」

 

そこに入って来たのは紫

 

紫も不安を感じていた内の一人

 

「私の時は一瞬だった……けれどもし貴方達の予想通り完全に使用すれば自我を無くすと言うのなら……」

 

「だろう?私の経験上そんな奴が一等危ない……自分を殺してまで成そうとする執念……狂気の沙汰だよ」

 

「止めろって!脅かすなよ……不安になるだろ……」

 

幻想郷の賢者と呼ばれる紫が加わった事が大きく影響し不安が広がっていく

 

 

「……!?」

 

輝夜が急に苦しそうに胸に手を当て服を握る

 

「姫様?どうかされましたか?」

 

永琳が尋ねる、鈴仙も不安そうに見ている

 

「……ダメ、早く倒すのよバーン……」

 

相手をする余裕が無いのか二人を無視してパレスを見上げる

 

(何故かわからない……けど早くしないと……)

 

輝夜だけはその不安に確信があった

 

この中で、いや幻想郷で唯一見ていたから

 

誰かの夢を……

 

 

 

「覚悟だけはしときな……」

 

 

 

不安に染まっていく里の皆に見守られながら戦いの終わりを願う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスタークパレス・王室

 

「!?」

 

バーンは目を見開き距離を離した

 

「グ……ゴゴ……ゴゴ……」

 

胴体と足だけになっていたエスタークの体が怪しく蠢きだしたのだ

 

「また進化してる……のか?」

 

妹紅達が見守る中、消し飛んだ顔と腕の付け根がビュクビュクと独特の音を鳴らして激しく蠢いていた

 

(そう……これは進化だ……進化に間違いはない……が……)

 

バーンにはその異常性を感じていた

 

(早過ぎる……!)

 

感じていた異常性

 

それは進化の早さ

 

(いくら進化を促す法式と言えどここまでの速度は有り得ん、奴は未完成だと言っていた……ならば尚更この速度は有り得ぬ筈だ)

 

進化させるにしても次に向かう間隔が短過ぎるのに異常を感じていたのだ

 

(……鬼眼の力か!)

 

バーンもようやくそこで理解した

 

エスタークが進化の秘法の触媒に使った鬼眼の魔力が及ぼす効果を

 

(進化を促す力を同じく進化の力を持つ鬼眼の魔力が助長しているのか)

 

同じ進化の力を持つ鬼眼の魔力がこの結果を作っていると知った

 

(進化暴走……安定性はともかく速度の意味で完成を越えてしまったのか……)

 

そう理解した時と同時だった

 

「グギィ!?グ……グゴアッ!!」

 

腹の顔が大きな呻きを上げると腕の付け根がより一層蠢いた後、新たな腕を造り上げていく

 

ズズズ……

 

魔力が更に高まると首の肉が蠢き目を閉じた先程とは異なる顔を形成した

 

ブン……

 

落ちていた魔界の剣が魔力に包まれるとエスタークに向かう

 

……ヴンッ!

 

向かう途中にエスタークの魔力を強く受けた剣は巨大な黄金の大剣に変化し両の腕に1本ずつ吸い付く様に収まった

 

「ギ……ィ……ィ…………」

 

最後に腹の顔が呻くと顔は腹の肉に沈む様に消えていき体色を白から青へまた変化させた

 

 

「なぁ……ヤバくないかこれ……?」

 

魔理沙はその異様なエスタークに危機感を感じていた

 

「「……」」

 

他の6人も同様、バーンに感じていた安心感はもう無かった

 

「どうなんだパチュリー……?」

 

7人の中で一番わかるだろうパチュリーに意見を求める

 

「……わからない」

 

そう答えるしかない

 

「どうかなんて私にはわからない……わかるのは今のアレも進化の途中なんじゃないのかって推測だけ……」

 

パチュリーは酷い不安を覚え表情をより一層険しく歪めていた

 

(アレが進化だとすれば……もし生命の進化の果てなんてものがあるのなら……そんなの想像も……)

 

進化の果てに言い様の無い不安を感じバーンを見る

 

(気をつけて……)

 

自分より強く知識の有る友にわかっているだろう忠告を聞こえない様に言うしか出来なかった

 

 

 

 

「……グゴゴゴゴ……!!」

 

新たな進化を終えたエスタークの唸り声が響き目が開かれた

 

「何……奴だ……我が眠りを……夢を妨げる者は……」

 

目下に居るバーンを睨む

 

「貴様は……覚えているぞ……我が夢の前に立ち塞がる強き障害……幻想ノ王……バー……ン……」

 

「夢……?眠っていたのか貴様は?言葉を交わせる様になったはよいが余を前に眠っていたとは不埒な……」

 

知性を取り戻したのかそれとも退化したのち進化して戻っただけなのか

 

「まぁよい……それより地獄の帝王よ」

 

そんな事は構いなくバーンはエスタークへ話し掛ける

 

「進化を続ける貴様は何処に……何に向かう?」

 

その果ては何のかと

 

「夢の……具現だ……」

 

「夢の具現……?夢の具現とは何だ?」

 

「……」

 

「貴様にもわからんのか……ならばそれはよい」

 

答えを諦めたバーンは魔力を漲らせる

 

「……もはや進化を続ける貴様の強さは余にも予測ができん!鬼眼王級に留まるかもしれんし、それ以上に化けるかもしれん!!」

 

その目は一切の油断は無かった

 

「この幻想ノ王バーン……!魔帝亡き今、天地魔幻に恐るる物無しと自負してはおるが予測不可能なものだけは警戒しておく必要がある……!!」

 

強大な魔力を惜しみ無くぶつけ帝王に告げる

 

「即時粉砕!!それが余の結論……友を救う為の結論だっ!!」

 

可視化した魔力が巨大なオーラの様に溢れだし体に力を込める

 

「我より強き魔の者よ、貴様では我が夢は終わらせれん……我が夢は人を根絶やし神々の支配……」

 

エスタークも持つ大剣を強く握り構えた

 

「幻想へ戻るがよい……!!」

 

振り落とされる大剣

 

ガァン!

 

衝撃が迸る

 

「更に強くなったか……」

 

手刀で受け止めていたバーン

 

「やはり危険……出し惜しみは愚策……!」

 

大剣を押し返しながら魔力は高まり続ける

 

「カァ……アアッ!!」

 

ドウッ!

 

解放された魔力の圧がエスタークを弾き飛ばす

 

「それが貴様の全力か……」

 

佇む一人の王を見据える帝王

 

「そうだ!これが鬼眼の……余の力の全て!!」

 

その力は出しているだけでパレスをどころか幻想郷全体を激しく鳴動させる高過ぎる魔力

 

 

 

「……また強くなったんじゃないかバーンの奴?」

 

「だな……」

 

魔理沙の問いに妹紅が答えた

 

バーンの全力

 

魔帝と同等だった時より更に強くなっていた

 

「普通に考えたらムンドゥスと戦った経験で強くなってたって思うよな」

 

皆も同じ意見

 

「でも……私は違うと思う」

 

妹紅だけは違った

 

「蘇る度に強くなるのが伝説の火の鳥……不死鳥のバーンは強くなって蘇った……」

 

100年間追いかけ続けた強く大きな背を見て想う

 

「私達を守る為に……」

 

同じく不死鳥を象徴に持つ妹紅だけがそう考えていた

 

「なんてな!……わかってるよそんなロマンチックな事言う柄じゃないって……」

 

恥ずかしくなったのか誤魔化そうとする妹紅

 

「良いじゃない妹紅、とても素敵な理由ね……」

 

パチュリーが微笑んだ

 

「ヤバイぜ……妹紅が乙女してやがる……誰か永琳呼んでこい!妹紅が病気だ!」

 

「えっ!?妹紅病気なの!?」

 

「治るの!?ねぇ治るの!?」

 

魔理沙の場の不安を取り払おうとする言葉を真に受けるフランとチルノ

 

「そんな訳ないだ……」

 

「恋の病ですよね妹紅さん?」

 

否定しようとした妹紅に楽しそうな大妖精が割り込んだ

 

「バカ!大妖精!滅多な事言うな……」

 

怒りながらゆっくりと

 

「よ……?」

 

一番面倒そうな彼の者へ恐る恐る振り向いた

 

「……」

 

レミリアが妹紅を睨んでいた、上目遣いで悔しそうに

 

なんと言うかライバルに出し抜かれた恋する乙女の様に

 

「……本気にしてないよなレミリア?」

 

「妹紅……」

 

本気で焦っている妹紅にレミリアは告げた

 

「バーンは渡さないわよ!!」

 

「ちょ!?おまっ!?」

 

宣言に慌てふためく妹紅は適当な事を口走った

 

「誰がいるかあんな奴!」

 

「あんな奴ですって……?」

 

「あっ……いやいや違う違う!レミリアに返すよ!」

 

「返すってどういう意味よ……まさかもう盗った気でいたのね!この竹林ホームレス!」

 

「違うって!バカ!」

 

「バカはチルノでしょうが!」

 

「は?あたいに喧嘩売ってんの?」

 

チルノが加わり場がおかしくなりそうになった時、妹紅が叫んだ

 

「あー!もういい!」

 

とりあえず黙らせると妹紅は言った

 

「とにかく!バーンは負けない!それが言いたかったんだ!バーンを盗るとかそんな話じゃあない!」

 

「わかってるわよ」

 

力説する妹紅へ皆は普通に返した

 

「不安を消そうとしてくれたんでしょ?わかってる、お姉さんだものね」

 

妹紅が何故そんな事を言ったのか

 

そう思いたいのも確かにあるのだろう、だが本当の意味はバーンの為

 

不甲斐ない自分達に代わって戦ってくれている友がせめて安心して戦える様にと

 

せめて守る後ろから不安を感じさせず戦いに集中して欲しかったから

 

「そうだよ……負ける訳ない……」

 

妹紅は信じている

 

「絶対勝つさ……!!」

 

友の勝利を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌアアッ!!」

 

「グオオッ!!」

 

王の衝突は続く

 

「ムンッ!」

 

魔力を乗せた掌圧を繰り出す

 

「グゴッ!?」

 

胸がへこむ程の圧力に大きく後退する

 

「イオナ……ズン!」

 

巨大な魔法球を放った

 

「フェニックスウィング!」

 

魔法球を弾き返す時には片方の手に魔力が集まっていた

 

「余のイオナズンも受けるがいい!」

 

自身のイオナズンも撃ち、弾き返したものを加えて2つの魔法球が直撃する

 

「ガ……ウッ……」

 

爆煙から前屈みに現れるエスタークにバーンは既に飛び出していた

 

「オオッ!」

 

鬼眼王の肉体で顎を殴り宙に浮かせる

 

「グ……オオッ!」

 

浮いたエスタークが大剣を振り落とす

 

「……!」

 

手刀で受け懐へ飛び込むと腹を拳で滅多打ちにする

 

「グオ……オアッ……!?」

 

苦痛の声を出すもバーンは止める気は無い

 

「……ハアァッ!」

 

手に力を込めるとそれを上段から振り抜いた

 

「カラミティエンド!」

 

最強の手刀が胴を斜めに裂きエスタークを切り落とす

 

「……」

 

魔力を集中させると五大魔法の弾幕を発生させ落ちたエスタークに全てをぶつける

 

「ムンッ!」

 

巨大な魔弾を作り爆煙広がる中に撃ち込み更に激しい爆煙を上げさせる

 

「……」

 

降り立ったバーンは爆煙を見つめる

 

「……グ……」

 

「!!」

 

声が聞こえた瞬間バーンは放った

 

「カラミティウォール!」

 

エネルギーの壁が爆煙に向かう

 

「オオオオオオッ!!」

 

爆煙から勢いよく飛び出したエスタークが壁に肩を怒らせ突進をかました

 

ガガガガガガガ!!

 

衝撃音が鳴る

 

「……」

 

音が鳴り続ける

 

それは少なくとも無効ではないを意味する

 

「グギ……アアッ……!!」

 

エネルギーの奔流が遮る異物を磨り潰さんと傷をつける

 

それを耐えるエスタークだが進化した体でも無傷とはいかず傷が増えていく

 

「グオオオッ!!」

 

渾身でカラミティウォールを破りバーンへ向かう

 

「バァァン!!」

 

2本の大剣振り落とす帝王の一撃

 

 

ズドオッ!

 

 

「く、崩れる……!?」

 

強力な一撃に床が割れ王室の階下に全員落ちていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなった……?」

 

瓦礫で埋め尽くされた階下で無事だった7人と同じく無事だった慧音とダイが離れた場所で様子を見守る

 

ズオッ!

 

バーンとエスタークが落下したであろう箇所の瓦礫が吹き飛び空間を広げた

 

「グオオオッ!?」

 

呻き声が響くと二人は姿を見せた

 

「惜しいな……」

 

エスタークは頭をバーンの手により床に押し付けられていた

 

「その進化が貴様が本来持つ力だとすれば獣にならずともそうなれていたかもしれん……その様な禁術に頼らずとも錬魔を続けていればいずれは王に相応しき力を身につけ憎む人間と神々に復讐を成せたであろうに……」

 

その目は哀れんでいた

 

「貴様が八雲紫と会わなければ……貴様は生き急ぐ事は無く、余と対峙する事は無かった……」

 

数奇な運命が導いた、紫が居なければ交わる事が無かった奇妙な王の縁を……

 

バーンとしても心苦しいものがあったのだ

 

小僧、小者と蔑んでいても本来なら殺し会うどころか出会う事すら無かった

 

魔の偉大なる先駆者として期待ある前途を持つエスタークの芽を摘むのに僅かながら抵抗があったのだ

 

「貴様がいかんのだ……貴様が幻想郷に戦争など仕掛けるから……余の友を殺そうとなどするから……」

 

しかしいくら哀れんでも友とは比べるべくもない

 

友が何より大事なバーンにとってこれは避けられない事なのだ

 

「終わりだエスターク……」

 

命を絶つ事は……

 

ズンッ!

 

暴れるエスタークを魔力が押し潰す様に床に縛り付けた

 

「……」

 

手刀を構える

 

一撃にて刈り取るつもりだ

 

「グオ……オオ……」

 

それは諦めの呻きか

 

エスタークは動かない

 

「さらばだ……」

 

命へ突き入れる刹那

 

 

「オオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

エスタークが咆哮すると束縛の上から僅かに体を動かした

 

「!?」

 

バーンが驚く

 

(まだ先へ向かう気か!?)

 

呻きは諦めではなかった

 

前兆だったのだ

 

新たな進化へ向けての……

 

バンッ!

 

魔力拘束を解かれた勢いで後退したバーンの前で進化は新たな姿を見せた

 

「グ……ゴ……」

 

バーンが与えた傷こそ無くなっていたが特に体に目立った変化は無かった

 

「色が変わった……」

 

変わったのは色だけ

 

体色が青から茶色へ、黄金だった大剣は白に変わっていた

 

 

 

「た、大した変化してないじゃない!ら……楽勝よ……!」

 

「……チルノ、気持ちはわかるけど今は黙って備えてろ」

 

「……うん、わかった」

 

ただ色が変わっただけじゃない

 

本気かはわからないがあのバーンの拘束を破ったのだ、明らかに強くなっている

 

それを知ったからチルノの気遣いに気を回す余裕すら無かった

 

 

 

 

「チィ……」

 

さしものバーンにも焦りを見せていた

 

(早く仕留めねば……余ですら守りきれなくなるやもしれん……)

 

進化を続ける獣に強い危機感を持ったのだ

 

(それに余の本能……魂が感じている、これ以上は取り返しのつかん事態になると……)

 

再び魔力を高め立ち上がったまま動かないエスタークを睨む

 

「グゴゴゴゴ……」

 

また目を閉じていたエスタークが目を開きバーンを見る

 

「誰だ?我が眠りを妨げる者は?我が名はエスターク……今はそれしか思い出せぬ……はたして自分が善なのか悪なのかそれすらもわからぬのだ……」

 

だがエスタークはバーンを初めて見る如く不思議に見ていた

 

(もう余すら覚えておらぬか……)

 

哀れな獣に目を閉じる

 

「自我を無くし、知性を取り戻しても目的を忘れ……己が何者であるかも忘却の彼方……か……」

 

呟くと目を開きエスタークを見つめる

 

「その私に何用だ?私を滅ぼす為にやって来たのか?」

 

「そうだ……地獄の帝王エスターク、余は貴様を滅ぼしに来たのだ」

 

「そうか……ならば仕方が無いな、私は滅ぼされるわけにはいかぬ!さあ……来るがよいッ!」

 

体に力を込めバーンを威圧する

 

「我が夢……破壊と殺戮の夢は終わらぬ!」

 

大剣を横薙ぎにバーンを襲った

 

「ヌゥ……!」

 

受けたバーンの顔が歪み、手刀と大剣が押し合い震えている

 

その威力は余波で床が抉り取れてしまう程

 

 

 

「まさか……バーンと互角なのか!?」

 

その様子に魔理沙が叫ぶ

 

「違うよ!まだ互角じゃない!」

 

フランが叫ぶ

 

 

 

「ヌアアッ!」

 

大剣を押し飛ばすともう片方を振りかぶっていたエスタークに飛び込み腹を殴る

 

「グオッ!」

 

殴られて後退したエスタークが口から輝く息を吐いた

 

「マヒャド!」

 

氷結呪文で迎え撃つ

 

「ウ……オオッ!」

 

拮抗していた冷気に力を込めると押しきりエスタークの体の表面を凍らせる

 

「魔符「闘魔滅砕砲」!!」

 

暗黒闘気を最大にしてビームを放つ

 

「メラ……ゾーマ!!」

 

火炎呪文がビームを迎え撃つ

 

「ググゥ!?」

 

殺しきれなかったビームがエスタークの体に浴びせられる

 

 

 

「まだ……まだバーンの方が強い!」

 

フランが強く叫びチルノと大妖精と共に安心した表情を見せる

 

「確かにまだバーンの方が強いわね……でも……」

 

レミリアは不安に見ていた

 

「そうね……かなり近付いてる」

 

パチュリーも不安だった

 

「バーンに……」

 

妹紅もその危険性を感じていた

 

「確かにそうみたいだけどさ……流石にもう無いんじゃないか?」

 

魔理沙が問う、無いとは無論進化の事

 

「そんな保証がどこにあるの魔理沙?」

 

すぐにパチュリーが問い返した

 

「わからないでしょ?次があるかどうかなんて……少なくともそんな可能性は無いものとしていた方が良い、次があると考えているからバーンは今仕留めようとしているのよ……」

 

ぎゅっと手を握りバーンを見つめる

 

「次は越えられるかもしれないから……」

 

そう思うも自分では助けにならない現実に見守る事しか出来ない自分が情けない

 

「バーン……!」

 

レミリアも祈るしか出来ない

 

「頑張れ……!お前なら勝てる!絶対に勝てるから……!」

 

妹紅は小さく呟く、聞こえなくてもいい、ただ信じてる

 

「負けるな……バーン……!!」

 

勝利を……

 

 

 

 

 

 

 

ドッ!

 

「グヌッ!?」

 

エスタークの蹴りがバーンを後退させる

 

「グオオッ!!」

 

蹴った足をそのまま踏み込み大剣を振り落とす

 

「フェニックスウィング!」

 

掌底で弾くと弾幕を発生させ撃つ

 

「グゥウ!?」

 

片方の大剣を振るい弾幕を切り裂くが裂ききれない弾幕が次々被弾する

 

「……イオナズン!」

 

魔法球が弾幕に当たると大爆発を起こしバーンごと爆煙で覆い隠した

 

「チィ……」

 

魔力を集中させ煙を晴らそうとした直後

 

ドオッ!

 

「グウッ……!?」

 

煙から飛び出た大剣が横腹を打っていた

 

「……オオッ!」

 

大剣を掴み背負う様に床に叩きつけ煙を晴らす

 

「ッ……!」

 

倒れるエスタークを見ながら打たれた腹を触る

 

強靭な肉体故に斬撃はほぼ打撃になってしまってはいたがダメージはあったのだ、切れた服から見える打撲箇所には痣と浅いが切り傷が出来ていた

 

「強いな……名のある魔族と見受けるが……そなたは魔王か?」

 

身体中傷だらけながら立ち上がったエスターク

 

「……そんな所だ」

 

説明に意味は無いと知るバーンは適当に答えるとついに意を決した

 

「エスタークよ……貴様が死ぬ時が来た」

 

告げると傍目からはわからないが体に力を凝縮していく

 

 

「この技を以て夢の終わりとしてくれよう」

 

 

スゥゥ……

 

 

流麗に動いた両腕が定められた一点で止まるとその構えは完成された

 

 

天地魔闘の構え

 

 

バーンの誇る最大にして最高の技

 

これを以てエスタークにトドメを刺すつもりなのだ

 

「貴様に破れるか?余の誇りを……?この誇りを破れずして夢の成就は有り得ぬと思え!」

 

強い威圧感をぶつけエスタークが乗る様に言葉を出す

 

受けの秘技であるその性質上、相手に攻撃して貰わねばならない天地魔闘の構え

 

ただ出しただけでは警戒されてしまい最悪攻撃されない事も有り得る

 

魔獣と化したエスタークにそれはあまり心配要らない事だったが使わずとも圧倒出来ていた実力差と攻撃されないかもしれない考えが使用を見送らせた

 

だがバーンは使用した、攻撃を誘発する様に挑発まで加えて

 

それは焦っていたから

 

まだ自分の方が強いが普通にやれば倒すのに時間が掛かる、しかし次の進化があるとすれば進化暴走を起こしているエスタークにそこまでの時間が無いと考えたから無理にでも使用した

 

次は越えられるかもしれない、そうなると守れなくなる

 

だから今、確実にトドメを刺すべく最高の技を食らわせたかったのだ

 

 

「……」

 

構えたバーンを見つめるエスターク

 

「面白い……!!」

 

呟くと魔力を全力に体に力を込めた

 

「それが夢へと繋がるのなら……是非も無し!」

 

エスタークは挑む気だ

 

立ち塞がる最大の障害を破る為に

 

「ゆくぞォッ!!」

 

3つの瞳が発光すると力が大剣に集まっていく

 

「グゴオォォォォ!!」

 

振りかぶった大剣をバーン目掛け投げた

 

「……」

 

迫り来る2本の大剣を見つめるその顔

 

恐れも怯えも無く

 

ただ自信に溢れていた

 

 

 

      「鬼眼「天地魔闘」!!」

 

 

 

 

目前に迫った大剣を前にバーンは動いた

 

 

「フェニックスウィング!!」

 

 

力を上げた掌底が帝王の2つ有る痛恨の一撃を一挙に弾き返す

 

 

「カラミティエンド!!」

 

 

同時に飛び出し弾いた大剣と重なると手刀を振り落とし肩を防御しようとした左腕ごと切り飛ばし腹を切り裂く

 

 

「カイザーフェニックス!!」

 

 

最後に巨大な炎鳥が撃たれ、エスタークに触れると大爆発を起こした

 

 

 

「よし!!」

 

見守る7人が歓喜の声を上げる

 

「倒した筈だ!」

 

「えぇ!」

 

爆発の収まりを見つめているとその顔は驚愕に変わった

 

「まだ……生きてる!?」

 

爆煙の中からエスタークが姿を現したのだ、自らの大剣が体を貫き、左腕は無くなり脇腹が半分別れて空間を作り炎爆により全身が抉れ顔の一部が吹き飛んでいた

 

身体中悲惨な状態で動かないが一応形はあった

 

「心配要らん……奴はもう死んでおる」

 

爆煙の中から現れたバーンが答えた

 

エスタークは一切動かなかった

 

ダメージが限界を越え死んでしまったのだ

 

つまりアレは形有る死体

 

ただの屍だった

 

「余の勝利だ」

 

歩いて来ながら友に微笑みを向ける

 

際どい所だったが無事守りきれた

 

安心と喜びが顔には表れていた

 

 

「……?」

 

バーンは足を止めた

 

「どうした?お前達……?」

 

未だ表情の変わらない友の表情に

 

「……アレ……本当に死んでるの?」

 

レミリアが問う

 

「何を言っておる?奴は確かに死……」

 

確認する為に振り向いたバーンの言葉は途切れた

 

「…………」

 

一見すると死んでいる様に見える

 

(こ……これは……)

 

だが注視したバーンにはわかった

 

(眠っている……)

 

エスタークは立ち尽くしたまま眠っているのだと

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

「感謝する……強き者よ」

 

 

 

 

 

 

 

目を閉じたままのエスタークが言葉を発した

 

 

(!?……いかん!!)

 

 

それを聞いた瞬間バーンがカイザーフェニックスを放ちエスタークを火柱の中に閉じ込める

 

(今のは……エスタークとは違う!別の存在!!)

 

バーンだけが逸早く気付いた

 

エスタークに眠っていた強大な存在に

 

(まさか……進化を繰り返していたのはこの存在が現界する為の礎だったと言うのか!?感じた神の力はエスタークではなくこの存在の生まれる鼓動だったのか……!?)

 

エスタークを焼き消さんと必死に力を込める

 

(進化の秘法とは器を作る為の儀式……!?)

 

ついに全てを悟った

 

(夢の具現とは……夢に生きる神を……この化物を呼ぶ為の……)

 

 

バアッ!

 

 

エスタークを包む炎が消し去られた

 

「くっ……」

 

(間に合わなかったか……)

 

悔しい焦燥の表情を見せるバーンの前でそれは始まった

 

エスタークの体が裂け光が走る

 

「なんだ!?何が起きるんだ!?」

 

妹紅が叫び

 

「ピィィィィィ!!」

 

ダイがやめてと叫ぶと

 

エスタークの体が崩壊し

 

強烈な光を放った

 

 

 

 

 

 

光が収まったその場所

 

 

 

 

 

 

「……ッ!?」

 

バーンが狼狽える前で

 

 

その存在は姿を現した

 

 

「私は破壊と殺戮の神……夢の破壊神……」

 

 

バーンと変わらぬ背丈だった

 

人間に近い体に面積の少ない甲冑を着けている

 

「……ッッ!?」

 

先程までのエスタークに比べると見た目には威圧感が無くなった様にも見える

 

だがそんな事は断じて無い

 

その身から感じる常軌を逸した神の力がその場の誰もを黙らせていた

 

 

 

 

進化の秘法とは進化を促す法ではなかったのだ

 

 

夢に生きる、夢の存在である破壊神を降臨させる為の儀式

 

 

進化とは即ち神化

 

 

破壊神化の法

 

 

エスタークは夢を成したのだ

 

 

支配すら越えた、尽きぬ執念の果てに……

 

 

人間や神々はおろか、夢魔の大魔王すら歯牙にもかけない

 

 

万物を破壊する……

 

 

 

暗き夢を……

 

 

 

 

「私は誰の命令も受けぬ、全てを無に返すのみ」

 

 

 

 

今……

 

 

 

夢現の時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

 

 

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

 

 

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信じられなかったよ……

 

 

夢であるように、って何度も願ったさ……

 

 

……だってそうだろ?

 

 

あの誰よりも強かった……何よりも凄かったあのバーンが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒されるなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを敢えて差し出した者が、最後には真の全てを得る 

 

 

ましてや自分の最も大切なものを捧げたなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷は今……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終わらない悪夢を見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




真のラスボス降臨

超展開……かもしれません、一応存在は示唆していたのでぽっと出感はあまり無い筈……

この進化の秘法と破壊神の関係、これは有名な考察を元に自己解釈したものです、なので勿論公式ではありませんので誤解なさらぬようお願いします。

幻想郷の運命はいかに……

次回も頑張ります!
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