東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第46話 暗い夢

 

 

パチュリー・ノーレッジの管理する大図書館

 

 

 

その図書館のある一角に本が山積みにされている場所がある

 

 

分類されていない未読の本ばかりが集められた未知の区画

 

 

 

その中にある本が埋まっていた

 

 

 

内容は異世界の昔話を伝承する古びた一冊の本……

 

 

 

 

 

 

 

かつて夢魔の大魔王が世界を征服すべく暗躍していた時代があった

 

 

自らの脅威となる施設を壊滅させ征服を確実な物にしていたが、人々の夢の中に存在し続ける事を知り夢の世界を具現、制圧に成功

 

 

大魔王による征服は目前まで迫っていた

 

 

そんな脅威が迫る中、現実世界のある王国では夢魔の大魔王に対抗する為、秘密裏にある儀式が成されていた

 

 

大悪魔の召喚

 

 

その力を以て大魔王を倒し、王国を、延いては世界を救おうとしたのだ

 

 

しかし、望む結果は得られなかった

 

 

召喚した大悪魔の怒りを買った王国は瞬く間に滅ぼされてしまったのだ

 

 

次々と殺されていく中、王国の者達は思い違いを理解する

 

 

悪魔と思っていたその存在は神だったのだと

 

 

夢に生きる破壊と殺戮の神だったのだと

 

 

人々の想いが産んだ夢の破壊神……

 

 

 

世界を救う為の行為が自らを滅ぼした最悪の結果は誰にも知られずそのまま幻に消える筈だった

 

 

だがそこに運命の歪みが起きた

 

 

もしもの事象が起こってしまい、本来の道を外れた天人が滅んだ王国へ訪れ破壊神と邂逅してしまったのだ

 

 

再び召喚された破壊神は天人に襲いかかった

 

 

そして死闘の末に破壊神は打ち倒された

 

 

倒された破壊神は天人とその仲間達の強さに感服し望みを叶える事を約束する

 

 

その望みとは王国の悲願と同じく夢魔の大魔王の打倒

 

 

空間を裂き、すぐに対峙した破壊神と大魔王

 

 

大魔王の名に相応しき強大な力を持つ夢魔の大魔王が全力を以て排除せんと力を振るう

 

 

 

 

……異様な事が起きていた

 

 

大魔王の攻撃が破壊神に全く効いていない

 

 

選ばれし天人達と少なくとも互角以上に戦える力を持つ筈なのに何故か効かない、あまつさえ笑われてしまう始末

 

 

大魔王が恐ろしい真の姿を見せても全く寄せ付けない

 

 

何一つとして通用しないまま大魔王は破壊神により消滅させられる事になる

 

 

 

そして世界は救われた

 

 

 

 

 

 

 

 

これはエスタークの世界であった昔の話

 

 

 

幻の大地と呼ばれる物語が道を分かれながらも結果は変わらない「もし」の御伽噺である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………大魔王は知らなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

儀式が不完全な物で、天人に倒された破壊神は本来の力を出せていなかった事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自らが持つ、夢を具現する力が意図せぬ内に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗き夢が本来持つ真の力を具現していた事を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「なッ!?何よ……これ!!?」

 

大結界が内から膨張する異常過ぎる力に張り裂けそうになっていた

 

「う、嘘ッ……!?」

 

耐えようとするが余りの力に止められない

 

(壊れる……!?)

 

覚悟する暇すら無く壊れるのを感じ目を閉じた

 

 

 

        ……ブゥン

 

 

 

    「霊夢!!」 「霊夢様!!」

 

 

 

スキマから出た二人が霊夢に並び結界を持ち直した

 

「助かったわ……紫、靈夢……」

 

寸での助力に深く感謝を述べた

 

「礼なんて言っている暇は無い筈よ!集中しなさい霊夢!」

 

「私達3人でも維持するのが精一杯です!?」

 

すぐさま紫の叱責と靈夢の焦りが飛ぶ

 

結界術に長けた、幻想郷の賢者である紫、歴代最強とそれに次ぐ博麗の巫女

 

「この力は何なの!?何が起きたの!?」

 

その3人が力を合わせてなんとか維持出来る事態が事の重大さを霊夢に強くわからせていた

 

「……ッ!」

 

紫は答えない、唇を噛み結界の維持に集中している

 

「何が幻想郷に起きているの……!紫ッ!!」

 

焦りが声を張り上げさせる

 

「わからない!!」

 

紫が叫ぶ

 

「私が教えて欲しいくらいなのよ!!何故あんな馬鹿げた存在が幻想郷に現れたのか!!どうして……ッ!?」

 

「……くっ!?」

 

いつも冷静な紫が酷く狼狽する様にこれ以上の問いは無意味と知り結界の維持に集中する

 

「霊夢様……」

 

傍らの靈夢が呟いた

 

「幻想郷は終わりかもしれません……」

 

維持に力を込める行動とは裏腹に感じていた絶望

 

こんな行為が無駄な足掻きにすら思えてしまう力を感じていたから靈夢は諦めを思わせる言葉を吐いた

 

「ふざけないでこの馬鹿弟子!!」

 

怒りの声が靈夢を刺した

 

「少しはマシになったと思ったら……なんで簡単に諦めるのよ!」

 

「……霊夢様もわかってる筈です、今……あのパレスに出現した存在が……私達では絶対に敵わない事を……」

 

「そんな事わかってるわ!!」

 

霊夢は叫ぶ

 

魔帝と対峙した事のある彼女が現れた存在の脅威がわからない筈がない

 

あの魔帝を遥か凌駕する存在だとわかっていた

 

「信じられないの!?今……あのパレスで対峙している皆を!」

 

それでも諦めない、今もまだパレスに居る者達より遠い場所に居る自分が諦める訳にはいかないから

 

 

「仲間を!!」

 

 

信じている仲間の為に

 

「……」

 

それを聞いても悲しい表情のままの靈夢

 

「……もういいわ、臆病者は邪魔だからどっか行って……私と紫だけで持たせて見せる」

 

顔を逸らすと結界の維持に集中する

 

「……」

 

だが靈夢も維持を止めない

 

「邪魔って言ってるでしょ!!」

 

怒った霊夢が怒鳴る

 

「……ごめんなさい!!」

 

謝った靈夢が気を入れ直す

 

「そうでした……私は一人で戦っている訳じゃありませんでした、皆が諦めてないのに私だけ諦めるなんて……あの頃に戻る所でした……勇気を無くしたあの頃に……」

 

それがどんなに愚かで失礼な事だったかを思い知り、反省し、前へ向いた

 

「……酷い事言ったのは謝るわ」

 

靈夢へ顔を向けず言った

 

「私も昔ね、諦めた事があったの……強過ぎる敵に絶望して戦うのを放棄したの……」

 

更に霊夢は続ける

 

「そんな私を立ち直らせてくれたのは魔理沙を始めとした幻想郷の皆……皆が諦めずに戦ってるのを考えたら自然と体に勇気が湧いて……立ち上がれた」

 

そう言うと靈夢へ苦笑を見せる

 

「昔の私を見てるみたいで腹が立ったのよ……怒鳴って悪かったわね」

 

また謝られた靈夢は微笑みながら前を向いた

 

「少し……安心しました」

 

「……何が?」

 

「勇気を無くしたのが私だけじゃなかったんだ……って、霊夢様も私も同じ人間なんだな……って」

 

「そうね、臆病で弱っちぃ……ただの人間ね」

 

二人は笑い

 

「……やりましょう霊夢様!」

 

「ええ!最後の最期が来たって……私達は諦めない!」

 

「私も諦めないわ……!」

 

3人は絶望の中、信じた仲間を希望に全力を尽くす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄

 

「まさかそんな!?」

 

映姫は驚愕を露にする

 

「これって……映姫様と同じ高次の……」

 

小町もその存在がどの様な者かを知り狼狽えている

 

「そうです……私と同じ、高い位に存在する者、種類は違いますが極めて高い次元の存在……」

 

映姫にはわかるのだ、種類は異なれど同じ高次の存在である事が

 

「そう……これは神……」

 

映姫は考える

 

(真の王が行き着いた先、まさかそれがよりによって……破壊と殺戮のみを存在理由とし、同じ神からも畏怖される超越の存在なんて……)

 

それが降臨した意味を

 

(おそらく誰も……)

 

少し考えた後、映姫は小町に命じた

 

「小町、地獄の魂達に通達しなさい」

 

「何を……ですか?」

 

「神に祈れと」

 

小町が向かった後、映姫は地獄の空を見上げる

 

(八坂……私にはもうこれくらいしか……)

 

役に立つかはわからないがきっと何かの助けになる筈だと

 

幻想郷の未来を諦めない映姫は静かに祈りを飛ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィィ……」

 

ダイは酷く怯えていた

 

出生故にその存在を強く恐れていたからだ

 

「ぅ……ぁ……」

 

慧音の膝が崩れる

 

完全な絶望を前に心が折れてしまったのだ

 

「……」

 

声すら出せずただ破壊の神を見つめる……

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

バーンは酷く狼狽えていた

 

「どうした?強き者よ……」

 

ただ立っているだけの破壊神に

 

(まさか……この様な事態に……なる……とは……)

 

自身をして凄まじいと思わせる神の力と

 

(話が通じる者が持つ殺意ではない……)

 

それのみが存在の理由と言わんばかりの殺意

 

いや

 

殺意が力を持っていると言った方が正しいのだろう

 

それしか無いのだから

 

 

「なんだよ……これ……」

 

「悪い夢でも見てる気分よ……」

 

「……皆、気をしっかり持て」

 

魔理沙とパチュリーが倒れそうになるのを妹紅が受け止める

 

あまりの力と殺意

 

それを一番近い場所で見て感じてしまった二人は体の力が一瞬抜けた

 

「……まだ……諦めるな」

 

そう言う妹紅も震えていた

 

(これが……私の感じた運命の……)

 

大妖精とチルノも震えながら手を握りあっている中、レミリアが破壊神に運命の分岐の原因を見た

 

(アレが居たから能力が効かなかったのか……)

 

フランは納得し

 

「……お姉様、変えられそう?」

 

運命を感じているレミリアに問う

 

「……」

 

レミリアは答えない

 

「……わかった」

 

フランは一人理解し、覚悟を決める

 

 

 

 

 

「感謝していると言っているのだ、何か返すのが礼儀ではないか?」

 

破壊神がバーンに問う

 

「……感謝とは?」

 

怯みが抜けないバーンが問い返す

 

「貴様があの魔族に進化の秘法を使わせたからだ」

 

「……!」

 

「そして貴様の持つ進化を秘めた鬼の目の魔力も相まり、思ったよりも遥かに早く現界する事が出来た」

 

「……エスタークはこの事を知っていたのか?」

 

「知りはせん、あの魔族は儀式を自らが編み出した秘法と思っていた様だが……そうではない、アレは私が与えた」

 

「何だと……」

 

「その昔に私は現界を果たした、しかしその世界の人間にも敗れるほど儀式は不完全な物だった……そして私の矜持に則り魔族の王と対峙した時、王の能力により私の力は一時だけ真を発揮した」

 

「……ッ!?」

 

「容易く王を破壊し、戻ろうとしたその時に私は考えた、次は完全な現界を……と」

 

「そこで進化の秘法、そしてエスタークか……」

 

「新たな魔族の王になる者に夢から干渉し儀式を授けた、だがあの魔族は使わなかった……黄金の腕輪を欠いた未完成と地の底への封印によって……」

 

「そこに八雲紫……」

 

「あの邂逅と秘法の使用が転機となった、封印を抜け、私との繋がりがより強くなった、だが完全な使用には至らなかった、死を感じた際に一瞬使用しかけたが奪った能力により未遂に終わる、その際に人間を使い意識のみの僅かな現界を果たし促すもそれも使用には至らなかった」

 

「そして余の魔力を得て更にそれは難しくなった」

 

「誰もあの魔族を追い詰められず、ついには見放そうとした……その時に貴様が現れた」

 

「……」

 

「感謝している、本当に……あの魔族を容易く追い詰め、儀式を始めさせ、尚且つ進化を促す力をも与えてくれた強き者よ」

 

「ッ!?」

 

「礼として貴様は見逃してやろう」

 

改めて礼を述べた破壊神は苦悶の表情のバーンから視線を外した

 

「では……」

 

外した先は7人

 

 

「始めるとしよう」

 

 

殺意が一点に集まり射ぬく

 

「くっ……うぅ……」

 

7人は睨まれた蛙の様に動けない

 

「抵抗は自由……私に挑み死ぬのも、絶望の内に死ぬのも、どちらでも構わん」

 

破壊神が歩を進めた

 

「……ッ!!?」

 

迫り来る死

 

動かそうとしても体は動かずガタガタと震えるだけ

 

「さぁ死ぬがよい」

 

手をかざしたその時だった

 

 

「そうはさせぬ」

 

 

バーンが立ち塞がった

 

「バ……バーン……」

 

未だ震え止まらぬ妹紅が不安気に背を見守る前でバーンは言った

 

「余の友に手出しはさせん……消えろ破壊の神よ」

 

殺させはしないと

 

「……貴様は見逃すと言った筈だが?」

 

「言ったな」

 

「ならば消えるのは貴様だ、私はそこの命を手始めに全てを破壊する……どこへとなり行くがいい」

 

「悪いがそれは承服しかねる、暴れたいのなら余が相手を仕まつろう」

 

それを聞いた破壊神はバーンを見て眉間に皺を寄せ、とてもつまらなそうな顔をした

 

「壊れる者に興味は無いのだが……」

 

「!?」

 

バーンの顔が歪む

 

「まぁいい、私の器になった魔族の意思を汲んでやるとしよう……」

 

破壊神が力を放つ

 

その力が残っていたエスタークの大剣に与えられると大剣が浮かび形を変化させながら破壊神に向かう

 

「さぁ……」

 

波が走った様な独特の形状をした上下対称の一本の双剣を手に納めて破壊神は構えた

 

「来るがいい!強き魔族の者よ!」

 

殺意をバーンに向けて

 

 

「バーン……」

 

消え入りそうな声でレミリアが叫ぶ

 

「……案ずるな」

 

横目で7人を見てバーンは約束した

 

「余が守ってやる……必ず……」

 

「……バーン!!」

 

呼び止める声を振り切り

 

「オオッ!!」

 

バーンは攻撃を仕掛けた

 

 

「カラミティエンド!!」

 

 

一切の手心無い右の手刀が繰り出された

 

 

ズバアッ!

 

 

底が見えない深さの亀裂を走らせる程の威力

 

「……!!」  

 

バーンはわかっていながらも目を見開いた

 

「フッ……」

 

手刀は僅かに動かしただけの剣に受け止められていた

 

「ヌゥ……!!」

 

左手が首に伸ばされる

 

ガッ

 

それは破壊神の片手に防がれ、手刀と剣、手と手が交差し剣二つ手二つで押し合う

 

「ヌアアアアッ……!!」

 

全力を込めて押す

 

拮抗した力が逃げ場を失い二人の足場を深く陥没させる力のぶつかり

 

「フフ……」

 

突然、押し合う破壊神が笑みを見せ

 

「ハハハ……!」

 

笑った

 

「グヌッ!?」

 

バーンが痛みに顔を引き吊らせる

 

ギギ……ギ……

 

「グ……ウッ……!?」

 

左腕の手首が下がる

 

拮抗などしていなかったのだ

 

ただ破壊神が合わせていただけ

 

 

バキィ!

 

 

「ッグ!?」

 

手首が折られた

 

「……オオオッ!!」

 

手が離されたバーンは魔力をぶつける

 

「中々心地好い……」

 

だが破壊神は笑っていた

 

凄まじい魔力を受けても微動だにしていない

 

「私の魔力も見せてやろう」

 

そう言うと呪文を唱え、かざした手から雷が迸る

 

「フェニックスウイング!!」

 

呪文を返そうと掌底を繰り出したが

 

「ヌ……ゥゥ……ッ!?」

 

呪文は返せなかった 

 

桁外れの力は掌底の限界を容易く越え、炸裂する

 

 

ズギャア!!

 

 

一瞬、およそ雷とは思えない音を響かせ

 

破壊の雷はバーンを雷光の中へ消した

 

 

「……!」

 

パチュリーが汗滴る顔で破壊神を睨む

 

「今のは……」

 

同じく冷や汗が止まらない魔理沙がパチュリーに確認を求めた

 

「……今のはギガデイン、勇者のみが使用出来る聖なる雷の呪文……」

 

「……なんであの野郎が使えるんだ?邪悪な者は使えない呪文だろ!?」

 

魔理沙の疑問はもっともだった

 

聖なる雷を放つその呪文は悪には使えない聖なる呪文なのだ

 

それを軽く使用するのが疑問だった

 

「……あの破壊神が聖なる呪文を使う、それはつまり邪悪な存在ではない、って事よ」

 

パチュリーは見解を述べる

 

「何もかもぶっ壊そうとしてるあの野郎が悪じゃないって言うのか!?」

 

信じられないと突っ掛かる魔理沙にパチュリーは

 

「それが普通の……いつも通りの事だったら?」

 

そう言って、更に見解を述べた

 

「私達が何でもいい、お腹が減ったから食事を取る、眠いから寝る……いえ、もはや息を吸うレベルね……それらは私達にとって当たり前の普通、いつも通りでしょ?」

 

「それがどうしたんだよ……」

 

「わからない?あの破壊神にとって破壊はそれと同じレベルなのよ、そこに善悪が存在しないから使える、神と言うのもあるんでしょうけど……とどのつまりアレは私達の常識の範囲外の化物って事になる」

 

「そんなの有りかよ……」

 

常識外の化物

 

それを聞いた魔理沙はそれ以上反論出来ず雷が収まった粉塵跡を見るしか出来なかった

 

 

 

 

 

「ガ……フッ!?」

 

粉塵の中からバーンの苦痛の声が聞こえ粉塵は晴れた

 

「グッ……グゥ……!?」

 

膝を着き、倒れそうなのを片手で堪えている姿だった

 

「如何だった?私の神雷は?」

 

破壊神が問う

 

「……!!」

 

バーンは答えず折れた手首と体を再生させ立ち上がる

 

「ハッハッハ!懲りん奴だな強き者よ!」

 

笑う破壊神に

 

「……ヌアアアアッ!!」

 

バーンは再び立ち向かう

 

「大魔王を滅した時ならば良い勝負になっただろうが……」

 

拳を避け剣を振るう

 

「笑える事に……」

 

ドオッ!

 

手刀で防御した上から吹き飛ばす

 

「ぬぐっ……ッハアッ!?」

 

起き上がろうとした腹を殴り血を吐かせ

 

「真の力の前では相手にならぬ」

 

告げる

 

どうやっても勝てはしないと

 

「遊びでもこれ故に……」

 

手加減してなおこの結果なのだと

 

 

ドンッ!

 

 

腕を更に押すとバーンが床を貫通し見えなくなった

 

「次はお前達だ」

 

ゆるりと立ち上がった破壊神の焦点の無い瞳が7人に向けられる

 

「「ッ!?」」

 

怯む姿すら楽しみながら死を与える破壊神はゆっくりと歩み寄る

 

「……皆」

 

逃げたい、震える体を魂で押さえつけ

 

妹紅は呼び掛けた

 

「わかってる……言われなくても!」

 

聞くまでもなかった

 

「やれるもんなら……」

 

何故なら既に7人の意思は

 

 

「やってみろ!!」

 

 

覚悟を決めていたから

 

「お前を幻想郷に行かせない!」

 

戦う意思を見せた7人が構える

 

「抵抗か……それもまた良し」

 

剣を横に構える

 

「暗い夢を見ながら死ぬがいい」

 

剣を突き入れる刹那

 

 

ガッ……

 

 

剣を掴む腕が掴まれた

 

「バーン……!」

 

掴んだ者の名を妹紅が呼んだ

 

「させんと……言った筈だ」

 

口から血を流すバーンが破壊神を睨む

 

「……邪魔だ」

 

破壊神が睨み返すがバーンは力を緩めない

 

「させんと言った!!」

 

腕を引き寄せ剣先を自分に向けた

 

「諦めるなら見逃してやろうと思っていたのだが……よかろう」

 

破壊神とバーンの周囲を力場が覆い飛翔していく

 

「お遊びはここまでだ」

 

ある程度の高さで止まると破壊神はその力を解放し

 

「終わらせてやる」

 

バーンへ向けた

 

破壊の力が荒れ狂う

 

「……!!?」

 

力場内が満たされ脱出が不可能と感じたその時

 

「消えるがいい」

 

それは開始された

 

「!?」

 

力がイオナズンの様に爆発する

 

「ッ!?」

 

続いてマヒャド

 

「……!?」

 

ギガデインの雷

 

「ガアッ!?」

 

ビッグバンを思わせる火炎超爆発

 

「ッ……グゥゥゥ……!?」

 

息をつかせぬ解き放たれた魔力の暴走

 

「ア……ゴ……ァ……」

 

トドメは器となったエスタークの意思を現す様な地獄の雷

 

 

ドオオッ!!

 

 

力場が弾け飛び籠った力が拡散した

 

 

 

「バーン!!」

 

目を疑う様な力の証明に皆が叫んだ

 

 

ドッ……

 

 

どちらかが落ちてきた

 

墜落する様に落ちてきたのは当然

 

「バーン!?」

 

うつ伏せに倒れたバーンは動かない

 

「バーン!!」

 

呼び掛けても 

 

「……」

 

動かない

 

 

 

「天上天下……我より、優れる者は無し」

 

 

 

バーンは倒されたのだ

 

 

「待たせたな、次はお前達だ」

 

 

そのバーンを倒した破壊神は、絶望に染まる7人の顔を堪能しするかのように緩く、緩やかにと7人の前に降り立ち……更なる絶望を告げる

 

「…………退け!」

 

振り払う様に妹紅が先頭に立つ

 

「退かすには私を倒さねばならんな」

 

破壊神が立ち塞がる

 

 

「退けぇ!!」

 

 

怯えは無かった

 

友の危機に恐怖は無くなり

 

(バーン……!!)

 

友の為に破壊の神に挑む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

 

そこは空気が死んでいた

 

 

「……」

 

誰も言葉を発しない

 

「ぁ……ぅ…………ぁ……」

 

「うぅ……グスッ……」

 

出るのは人間の絶望した呻き声と諦めた咽び泣く声だけ

 

「……無理もないわね」

 

幽香が人間達を見て呟いた

 

「あんな殺意を感じたらこうもなる」

 

人間達はパレスから幻想郷全体に広がる殺意に触れてこうなった

 

生きとし生ける者全てを殺戮せんとする意思

 

そしてそれを容易く成せる力を

 

「もう終わりだ……」

 

感覚に疎い人間達にすら魂まで刻まれる絶対的な力

 

感じた瞬間、死を受け入れるのに一切の躊躇が無い程にそれは死を悟らせた

 

「ハァー……ハァー……!?」

 

「さ、早苗……しっかりしな」

 

怯えている早苗を諏訪子が慰める

 

神に近い早苗だからかその恐ろしさをより感じていた

 

(いっそ……狂った方が幸せかもしれないね……)

 

諏訪子は当然わかっている、アレに抵抗する事の無意味さを……

 

だからそう思う

 

誰も勝てないから

 

 

「あ……あぁ……」

 

輝夜はその場に崩れ落ちた

 

「あれは……私が見た夢……私に夢を見せていた者……」

 

もう体に力が入らない

 

永琳や鈴仙の呼び掛けも聞こえずただ絶望に打ちひしがれている

 

「終わりよ……人も妖怪も幻想郷も……世界も……」

 

輝夜だけは存在を知る者を除き唯一知っていた

 

それがどれだけの力を持ち

 

どんな光景を見たいのかを……

 

「……」

 

輝夜はこの世の終焉を悟り、静かに泣いた

 

 

 

「こ、これは……どうなっている!?」

 

そこに新たな者達が来た

 

「無事だったんだね……いや、そうでもないか……」

 

「皆……何があった!?」

 

来たのは神奈子とにとり

 

「何故破壊神が幻想郷に居る!!」

 

信じられないと神奈子が問う

 

「破壊神……?アレを知っているんですか?」

 

美鈴が問い返す

 

「……私も同じ神だからな……」

 

パレスを見上げ神奈子は語り出す

 

「破壊神とは文字通り破壊の神、通常の神と違うのは破壊と殺戮の為だけに生まれた存在だという事……神の高い能力を生まれながらに全て破壊と殺戮にだけ使っている神すら恐れる存在……」

 

「……それだけでこんな事に?」

 

「……お前達の気持ちはわかる、私と言う神を見ていたらそうも思うだろう」

 

今や頂点にすら劣る神奈子を見てきた皆にその疑問は当然

 

「……少し昔の話をしよう」

 

神奈子は話し出した

 

「私がまだ幻想郷に来る前、それどころか幻想郷が出来るよりさらに以前……私が諏訪子を倒した頃の話だ」

 

遠い記憶にある苦い過去を

 

「私が信仰によって力を得るのは知っているだろう?あの頃は全ての人が神を信じていた時代……」

 

「当時私は今とは比べ物にならん力を持っていた、その力を以て諏訪子に宗教戦争を仕掛け勝利した私は諏訪子の分の信仰も得て更に力を増した……今のバーンに近い力をな」

 

「……今にして思えば調子に乗ってしまっていたのだろう、私は今の自分を試したくなった」

 

「そしてその力を使い、破壊神を呼んだ……名はシドーと言っていたな」

 

そこで神奈子は口を閉じる

 

「……どうなったんですか?」

 

早苗が不安気に問う

 

「……死にかけた」

 

その一言で皆は声を失う

 

「全く敵わなかった、攻撃は何一つ通用せず……フッ、笑われていたよ……笑いながら瀕死まで遊ばれていた」

 

少しの沈黙の後、にとりが聞いた

 

「なんで生きてるの?」

 

対峙した本人が何故ここに居るのかを

 

「……儀式を反転させて追い返したのだ……死に物狂いでな」

 

「ならあの破壊神も……」

 

パレスを見上げて神奈子は答えた

 

「それは不可能だろう、見たところ儀式の式が違う、夢を現界させる式……別の破壊神を呼んだのだろう……己の全てを依り代に……倒すより他に手は無い」

 

「……」

 

これを倒す?

 

そんな不可能しか感じない答えに再びの沈黙が訪れる

 

「……私が呼んだ破壊神はその後、異界に召喚され血の勇者に倒されたらしい」

 

神奈子が虚空を睨む

 

「その勇者は破壊神を破壊した男などと呼ばれたらしいが……私からすれば笑わせる……」

 

鼻で笑い

 

「不完全な儀式で言葉すら喋れない半端な破壊神を倒しただけに過ぎん……真の破壊神相手に勇者ごときが敵うものか……」

 

そして顔を伏せた

 

 

「……話はそれで終わりかい?」

 

この場に似つかわしくない軽い口調で問われ神奈子は顔を上げた

 

「なら行くかね」

 

それは萃香、まるで出掛けるみたいな軽快なノリで笑っていた

 

「……死にに行く気か?」

 

「そんな顔に見えるのかい?ハッハー……殴られたいのかい神奈子?」

 

萃香はパレスを見上げる

 

「感じてみな、逃げてないだろあいつら?意思も消えてない、逃げたって誰も責めやしないのに……戦うつもりなんだろうさ、諦めずに……幻想郷を守る為にね」

 

顔を上げたまま神奈子に向き

 

「仲間が諦めずに戦ってんだ……ここで行かなきゃ霧の名が廃る」

 

微笑み

 

「死んじまうのさ、私の魂が……それにミストとの約束でもある、だから行くよ」

 

傷癒えぬ体に力を入れ

 

「それが……私の生き方だから」

 

一人意気を昂らせた

 

「奇遇ね……ちょうど私も行こうと思ってたところ……付き合ってあげるわ」

 

「風見幽香……お前もか……」

 

萃香に並んだ幽香を神奈子は見る

 

「何か勘違いしてる様だから言っとくけど……私はバーンとチルノの吠え面を見に行くだけよ、助けに行くつもりなんてチルノが天才になる位ありえないわ」

 

えらく不機嫌そうだった、身体中からツンツンした物を感じる程に

 

「相変わらず素直じゃないねぇ、こんな時までツンデレかい……ホントは絆の花のお礼だろ?格好良く助けてやればバーンを奪えるかもしれんのに……まったく残念な美女だよあんた」

 

「黙れ腐れ酒乱……その角をへし折られてただの幼女になりたいの?」

 

微笑む萃香を睨む幽香

 

「ハッ……」

 

「フッ……」

 

二人は笑った

 

まるで遠い昔から親友だった様に……

 

「私ら二人だけかね……まぁ二人だけでも充分か、さて……」

 

周囲を見回した後、二人は前を向く

 

「フゥー……よし!準備万端です!行きましょう!!」

 

妖夢が準備を終えていた

 

「……あんた居たのかい」

 

「貴方は残りなさい、貧相な胸囲の餓鬼はハッキリ言ってこの戦いには着いて来れないわ」

 

「二人とも酷い!?」

 

妖夢が抗議する

 

胸は関係無いでしょう!とか、ツルペタは萃香さんもじゃないですか!とか

 

そして萃香に無い胸ぐらを掴まれて苦しんでいた

 

「お前達……」

 

3人の普段通りの行動に暗い雰囲気が少しだけだが和らいだ

 

それが呼び水だったのだろう

 

「私も行きます!」

 

美鈴が並んだ

 

「私も行くよ!ねっロビン!」

 

「ギッ!」

 

更ににとりとロビン

 

計5人

 

「ごめん……私も行きたい……」

 

「ですが私達では力不足……」

 

「行っても足手纏いになるのが関の山ですね……」

 

「そうねぇ……悔しいけど」

 

正邪、白蓮、文、青娥が申し訳なさそうに顔を伏せた

 

「何言ってんだい……」

 

萃香は全員へ言った

 

「勇儀だってアリスだって当然行きたいさ、さとりもそうだし、そこのメイドなんか代わりに死んでも良い位の気概を見せてる……皆、心は1つ、同じだよ」

 

そして4人に向きまた全員に言った

 

「その心だけで充分さ……私らに任せな!お前らはただ信じてな!それだけで私らはどんな奴にも負けない!!」

 

それだけ言うと5人はパレスへ飛び立とうとする

 

「待て……」

 

「何だい神奈子……止めても止めないよ?」

 

止めたのは神奈子

 

「止めはせん、私も行くつもりだったしな、お前達の助力は心強い……それでだ」

 

5人らから目を逸らした神奈子は人間を含めた全員を見て頼んだ

 

「もしお前達が信じるのなら……もし僅かでもまだ幻想郷に明日が来ると信じているなら……今だけで良い!私に信仰の力をくれ!私に神としての責務を果たさせてくれ……!!」

 

頼みは今だけの信仰

 

信仰によって力を上下させる神奈子は戦う力が欲しかった

 

無くても行くつもりだったがほんの僅かでも救う可能性を上げる為に無理を承知で頼んだのだ

 

「……!」

 

その想いを受けた人間の一人が祈りを捧げる

 

「お願いします……」

 

また一人、また一人と祈りは増えていく

 

「しんりゅう」

 

『なんだ?悪いが力にはなれんぞ?』

 

「わかっている、お前に連絡を取って欲しい者が居る」

 

『……誰にだ?』

 

「天空にそびえる城……そこの主である天竜、マスタードラゴンにだ」

 

『奴にか……して、何を伝えるのだ?』

 

神奈子はしんりゅうに内容を話した

 

『……承知した、すぐに行こう』

 

承諾したしんりゅうの気配が消える

 

「諏訪子、早苗……」

 

「わかってる……残った私達の力を託す」

 

「帰って来ますよね?神奈子様……?」

 

二人の力を受け取った神奈子の傷が癒え、人間の信仰の力が次々入ってくる

 

「……早苗、私の可愛い早苗……」

 

「はい……」

 

「守矢神社は任せたわね」

 

「ッ!?神奈子様ッ……!!」

 

早苗は涙を溢れさせる

 

「諏訪子……」

 

「わかってる……早苗の事は任せて」

 

「苦労を掛けるわね……」

 

「今に始まった事じゃないでしょ……」

 

「そうだったな……頼む」

 

悟っている諏訪子は無理矢理笑顔を作り家族に別れを告げた

 

 

 

信仰を集めている間、居ても立っても居られないパレスへ行かない仲間達が5人へ寄っていった

 

「美鈴」

 

「何ですか咲夜さん?」

 

「これを持って行って」

 

懐から取り出したバーンのナイフを手渡した

 

「私もお嬢様と妹様、パチュリー様、皆を助けたい……けど貴方より弱い私では無理だから……貴方に託す」

 

「咲夜さん……」

 

「貴方が武器なんて使わないのは知ってる……だからお守りとして持ってて」

 

「わかりました!必ず皆さんを連れて帰って来ます!」

 

ナイフを受け取り懐へしまい込んだ

 

「頼みますにとり……」

 

「ん!まぁ期待しないで待ってなよ」

 

文の頼み軽口で返したにとりはふと思いだしてリュックを下ろした

 

「そうそう!エスタークから遺産を取り返してたんだ!……今は遺産じゃないか、まぁ何でもいいや……ほら!」

 

文へ風のマントを手渡す

 

「ありがとうございます」

 

渡されたマントをきゅっと抱き締めた

 

「アリス!ほら!」

 

魔王の指輪を手渡す

 

「ありがとうにとり……代わりにこれを持っていってくれないかしら?」

 

にとりへ1体の人形を手渡す

 

「私の作った12の人形の最後の1体……それには私の残る全ての魔力を込めてる、きっと役に立つ筈よ」

 

「そっか……ありがとう!ロビンに持たせておくよ」

 

「……魔理沙をお願い」

 

「わかった!」

 

アリスの意思を託されたにとりは頷き微笑む

 

「……死ぬなよ」

 

ロンが妖夢の横に並んだ

 

「……死にませんよ!」

 

妖夢はしっかりと答えた

 

「妖夢……」

 

「はい?」

 

死ぬ気が無いのを確認し安心したロンがパレスを眺めながら言った

 

「お前が無事帰って来たら……話がある」

 

「えっ……えっ!?」

 

慌てる妖夢

 

(まさか……幽々子様が言っていた、む……婿に……!?)

 

考えていた事はこの事だった

 

「だから必ず帰って来い」

 

「はいっ!!」

 

帰ると約束した

 

 

皆に次々と激励を送られ、全てが済んだ後に神奈子の準備が終わった

 

 

「行くぞ……!」

 

神奈子が先頭に立ち

 

6人はパレスへと向かって行く

 

幻想郷の明日を得る為に

 

 

 

 

 

 

 

命を賭して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




年度末なんで忙しい……書く間が無い……

遅くなりました。
破壊神の力が発揮されました、バーンの食らったアレは幻魔王の食らったアレです。

破壊神と幻魔王のあの悲惨なイベント、あの一方的な理由を私的に考えた結果が今話です、シドーに関しても脳筋に倒された理由が同じなのは夢の破壊神と同格扱いだからです。

バーンすら倒した破壊の神、動く仲間達

幻想郷は破壊の運命に立ち向かう

次回は少ないかもしれません、と言うか平均一万文字って多いんでしょうかね?わかりません。

次回も頑張ります!
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