東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第49話 夢の後で……

 

「良かった……」

 

人々は口々に喜びを口にする

 

「本当に……良かった……!」

 

生きている事に

 

「夢みたいだ……あんな化物を俺達が倒したなんてさ……」

 

妖怪達も同様

 

「実はもう俺達死んでたりしてな……ほら、どっかの世界にあるっていう滅ぼされた村!自分達が死んでいる事を知らない人間達が夜になると化けて出るってやつ!」

 

実感のわいていない者も居る

 

それだけの事態だったのだ、今、生きている事が夢と思う程に……

 

 

「なに言ってんだお前等!勝ったに決まってんだろ!」

 

「夢でも幻でもありません……私達は夢に勝ったのです!」

 

旧都の妖怪達や命蓮寺のメンバーと喜び合う勇儀と白蓮の声が響く

 

「姫様……無事でなによりです」

 

永琳が鈴仙と共に輝夜の無事を喜ぶ

 

「正邪!」

 

「てゐ!」

 

二人はハイタッチで喜びを表現する

 

ワイワイと歓喜の声が上がる

 

 

「お嬢様ーー!!妹様ーー!!」

 

大変な勢いで咲夜が二人の元へ馳せ参じた

 

「ご無事ですか!?」

 

「やめなさい咲夜、みっともない真似は主である私の品を下げるわ」

 

澄ました顔でレミリアは言うが当の本人は赤ん坊の様にバーンの腕に座り首に手を回している

 

「やめてお姉様、みっともない真似しながらカリスマ振るの……かりちゅまになっちゃうよ?」

 

「お黙りフラン、カリスマとは私、私が成す一挙一動全てがカリスマに成り得るのよ……まだ貴方には早かったようね」

 

「……殴って「うー」ってさせちゃおっかなー……」

 

「それはやめて」

 

二人が言い合う中、咲夜はバーンに深々お辞儀した

 

「皆様を助けて頂きありがとうございました」

 

礼を言い

 

「そして……」

 

顔を上げると笑顔を見せる

 

「お帰りなさいませバーン様」

 

「うむ……何故人間であるお前が生きてまだ若いかは知らんが……久しいな咲夜……今戻った」

 

挨拶を交わす咲夜に美鈴が寄ってくる

 

「私も戻りました!」

 

「あらそう」

 

「冷たっ!?冷え過ぎですよ咲夜さん!」

 

美鈴は無視された

 

「あぅ……咲夜さん、あの……これ……」

 

言い辛そうにバーンのナイフを渡そうと見せる

 

「……フフッ」

 

微笑んだ咲夜はナイフを手に取ると美鈴の胸を軽く押して言った

 

「お疲れ様」

 

「咲夜さん……!!」

 

パアッと笑顔になった美鈴と咲夜はバーン達から少し離れて見守る

 

 

「神奈子様!!」

 

早苗は抱きつく

 

「良かった……帰ってきてくれて!……ふえぇん……」

 

「心配を掛けたわね早苗……」

 

頭を撫でながら神奈子は微笑む

 

「……お帰り」

 

二人に入りたそうに諏訪子

 

「ああ……!」

 

諏訪子を抱き寄せ二人に言った

 

「ただいま……!!」

 

家族に……

 

 

喜びを噛み締める人間の里

 

そんな皆に突然声が響いた

 

『此度の破壊神の撃退、見事だった』

 

姿は見えないが存在を感じる

 

「誰?」

 

皆は不思議に聞き合う、敵意が無いから慌ててはいないが少し不安に

 

「こやつはマスタードラゴン、かつてゼニスの城と呼ばれた天空の城の主である竜だ、天竜とも呼ばれている」

 

神奈子が説明するとマスタードラゴンは語り始めた

 

『我が世界の者が迷惑を掛けた、我等の世界の神に代わり礼を言う』

 

突然の出現に面食らう皆の中、バーンが問うた

 

「エスタークはどうなった?」

 

破壊神の器になったエスタークが気になって

 

『破壊神が抜けた地獄の帝王は再び地の底に封印した』

 

「やはり奴もか……」

 

『抜けた空の器とは言え夢に触れた奴は破壊神と同じ存在となった……滅ぼす事は叶わん』

 

「……ではまたいずれ破壊神は再び降臨してしまうな」

 

『いずれは……な、奴からは進化を促す鬼の魔力を取り除き、可能な限り進化を戻し、不完全になった秘法を更に我が力で抑制した、今は眠り続け、ゆっくりと進化を続けている状態、器としての完成は無限に等しい時を要する……それに地の底だ、誰にも知られず眠り続けるだろう』

 

「ならば奴は見続けるのか……破壊と殺戮の夢を……眠り続ける帝王は終わらぬ破壊の夢を……」

 

バーンはエスタークの先を思い虚空を眺める

 

(自我を無くし、自らの存在を忘れ……行き着く果ては己無き夢の具現……)

 

哀れだとは思う

 

しかしエスタークの望んだ事でもある、それに何も言うつもりは無い

 

(余は友と仲間に恵まれた……)

 

ただ思う

 

(お前も余と同じく出会えていたなら……)

 

それから先は考えなかった

 

もう何もかも手遅れ、たらればを言ったところで意味は無い

 

(……さらばエスターク、もう会う事はあるまい)

 

終わったのだ、全てが

 

 

『迷惑を掛けた礼をしよう』

 

マスタードラゴンが告げると辺り一帯に散乱する魔物の死体が消えていく

 

『死んでしまった妖怪達は冥界へと送った、生き返らせてやりたいが……生憎しんりゅうやルビスの様な力は持ち合わせておらん、これで許せ』

 

魔物達が消え綺麗になった里

 

『ところで博麗の巫女よ、龍神はどうした?』

 

二人の巫女へ問う

 

「ずっと留守のままみたいです……魔帝異変の時も居なかったらしいですし」

 

「何か休暇取ってベガスに行ってるって昔誰かが言ってたわね」

 

『……相変わらずか奴は……』

 

呆れたマスタードラゴンは一拍置き

 

『では行くとするかしんりゅう』

 

『……わかった』

 

帰る前にしんりゅうはにとりと神奈子へ向かう

 

『大丈夫かにとり……?』

 

ロビンの頭部を抱えるにとりに問う

 

「心配してくれてんの?らしくない事言うなよな、大丈夫だよ……しんりゅう!」

 

『……ようやく名を言ってくれたか、役立たずではなくなったのだな』

 

「そりゃ役に立ったからね!ありがとしんりゅう!」

 

『……今にして思えばお前との時間は楽しかったと言える……体に気をつけよ河城にとり』

 

「またいつでも来なよ!またね!」

 

にとりは笑顔で見送る

 

『八坂』

 

「無理を言って悪かったわね」

 

『何……気にするな八坂、我も良き経験が出来た……良いものだな、誰かを想うとは……』

 

「だろう?捨てたものではないのよ……それが有ったから今笑って居られる」

 

『違いない……ではまた会おう八坂、次は酒でもどうだ?次こそ酔い潰してやろう』

 

「酔い潰した私を襲うつもり?」

 

『馬鹿を抜かすな、年増に興味は無い』

 

「お前こそ抜かすな……確かお前秘蔵のエッチな本はロリコン物だったな……早苗に手を出したら殺すぞ?」

 

『いい加減にしろ……ではまただ』

 

「ああ……」

 

 

 

『幻想郷に幸あらん事を願う……』

 

 

二体の竜は幻想郷から去っていった

 

 

「ふぅ……掃除の手間は省けた!なら次は恒例の宴会ね」

 

「「ッシャャャャャャア!」」

 

妖怪達が歓声を上げる

 

「すぐ出来ますよ!」

 

人間達が言った

 

「萃香さんに言われてたから準備してたんです!」

 

「そうなの?なら咲夜、手伝ってあげなさい」

 

用意を始めようと皆が動き始めた瞬間だった

 

 

「ダイ!?大丈夫か!しっかりしろ!!」

 

 

慧音が叫んだ

 

「どうした慧音!」

 

慌てて駆けつけた妹紅はダイを見て青ざめる

 

「ダイ!?」

 

ダイはとても苦しそうに鳴いていた、声もかなり弱々しい

 

「……神の力を使い過ぎたのよ」

 

集まった皆を掻き分けた神奈子が言った

 

「よせと言ったのに……そこまでして助けたかったのね……妹紅や友を……でもそれがなければ勝てなかった……」

 

「ダイはどうなるんだ!?」

 

「……消えてしまう……」

 

「そんな……」

 

慧音から手渡されたダイに妹紅は叫ぶ

 

「消えるなダイ!消えちゃダメだ!!」

 

「ピィ……」

 

だがダイの衰弱は止まらない

 

「ダイちゃん!」

 

「やだ!消えちゃダメ!」

 

他の友も呼び掛けるがダイは良くならない

 

「ダイ……か」

 

その時、静かに見守っていたバーンが口を開いた

 

「何故お前がその名で呼ばれているかは知らんが……その名はお前のものではない、お前の友の名だ」

 

レミリアと共にゆっくりと歩いてくる

 

「思い出せ神の涙、消えてしまう前に……お前が友に呼ばれていた真の名を……」

 

ダイの前に立ったバーンは告げる、想いの籠る名を

 

「お前はゴメ……と呼ばれていた筈だ」

 

「……ピィ!?」

 

想いの籠った名を聞かされたダイは驚き、光を放つ

 

「……」

 

真の名を知り壊れた記憶が甦ってくる

 

「……ダイ?」

 

妹紅が呼ぶとダイは口を開いた

 

「妹紅……」

 

ダイは話す事が出来るようになっていた

 

「ボクにも奇蹟が起きてたんだね……」

 

今、全てを理解した

 

神の涙である自分は一度消えた事も

 

復活するには願いを叶え続けた分だけの月日が要る事も

 

(君には会えなかったね……)

 

「友達になってよ」との願いを叶え続けたいと想う絆が奇蹟を生み、記憶や想いが壊れながらもまたこの姿で出現した事も

 

(それだけが……残念だ……)

 

それ以外は満足なダイは辛そうな友を見た

 

「……嘘だよなダイ?お前が消えるなんて……?」

 

「……」

 

ダイは目を伏せ悲しい表情を作る

 

「ごめんね妹紅……ボクはダイじゃない、ゴメなんだ……それで……」

 

妹紅を見るとゴメは言う

 

「……ボクは消える」

 

嘘ではないと

 

「……嘘だって言ってくれよ……」

 

「ごめんね……」

 

謝るとゴメは空を見上げる

 

「力を使い過ぎたんだ……君達をどうしても助けたくて……」

 

「なんでそんなになるまで……」

 

そんな妹紅にゴメは苦笑する

 

「友達の為に決まってるじゃないか」

 

わからないかい?と

 

「だからって……」

 

「……君はやっぱり優しいね、自分なんかより他を大事にする……」

 

同じ事をしていただけなのに自分を案じる妹紅にゴメは嬉しくて涙を浮かべる

 

「……バーン」

 

そのままゴメはバーンへ向いた

 

「君とまた会うなんて夢にも思わなかったよ」

 

「……余もだ」

 

「……変わったね、大魔王だった時が嘘みたいだ」

 

「……だろうな」

 

「でも君は……」

 

「……」

 

バーンに睨まれたゴメは自分が言うべき事ではないと悟る

 

「そろそろ時間だ……」

 

ゴメの体から光の粒子が溢れてくる

 

「皆……ありがとう、楽しかったよ」

 

お礼を言った後、ゴメは妹紅を見る

 

「ありがとう妹紅……君がボクを見つけてくれて、友達になってくれて……ボクは幸せだった」

 

二人は過ごした日々を思い出し、泣く

 

「君に出会えて良かった……だから泣かないで」

 

親友を慰める

 

「ダイ!」

 

妹紅が名を呼ぶ

 

「……まだボクをダイと呼んでくれるのかい?」

 

その名は呼ぶ者によって意味が異なる

 

「当たり前だろ……私達にとってお前はダイだ……!」

 

ゴメやバーンにとってはダイとは勇者の名

 

しかし幻想郷にとってはその名はゴメを指す

 

幻想郷ではダイなのだ、妹紅が名付けた……幻想郷皆の……

 

「妹紅……」

 

嬉しさの涙を流しながらダイは言った

 

「最後に君の願いを叶えてみるよ」

 

何の事を言っているかわかっていない妹紅にダイは話す

 

「前にボクに言ったじゃないか、人間になりたい……って……」

 

「あ……」

 

そう言われて妹紅は夢の事件の前にダイと話した事を思い出す

 

「あの時はダメだったけど今なら出来る気がするんだ、だから消える前に叶えてあげたい」

 

ダイはあの時の事を鮮明に覚えている

 

妹紅が悩み、苦しんでいた蓬莱を取り除こうとしたが出来なかった事を

 

そしてそれを絶対に叶えると約束した事を

 

「どうする?君が望むならボクは最後の力で人間に戻してあげられる」

 

「……」

 

妹紅は考える、考える時間など無いとはわかっていても考える、大事な事だから

 

「……君には幸せになってもらいたいんだ、人間として……幸せな人生を送って欲しいんだ」

 

「……」

 

ダイの想いを受けて妹紅は答えを出した

 

「やめとく」

 

人間には戻らないと

 

「どうして?あんなに苦しんでいたのに……」

 

拒否されたのが不思議なダイに妹紅は言った

 

「悩んでいないって言ったら嘘だけどさ、元々は私が自分で招いた事だし……それに……私には皆が居る」

 

笑顔で

 

「だから……大丈夫だ」

 

「君がそう言うなら……わかった」

 

ダイも頷き笑顔を見せる

 

「それでさ……それとは別に叶えて欲しい事があるんだ」

 

「……なんだい?」

 

妹紅は考えた願いを口に出す

 

「ダイが友達に会えるように」

 

戦争の前夜に決めていた全部が終わったらダイの友達を探しに行こうと勝手に決めていた約束

 

もう一緒に探せないのならとそれを願った

 

「……嬉しいけどボクはもう……」

 

消えてしまうダイには叶えられない願い

 

無理と言う為にダイは口を開きかけた

 

 

「よくぞ言った妹紅、それでこそお前だ」

 

 

バーンが二人に歩み寄る

 

「自ら背負った宿命から逃げず、友を想う心意気……見事だ」

 

妹紅を見ながらバーンは告げる

 

「そんなお前だからこそ助けたくなる」

 

気付くと横にはレミリアと神奈子も居た

 

「ダイよ……」

 

神奈子が神の力を分け与える

 

「これで消える事はない……消えてしまえば次は復活に100年近く掛かる……次もその姿とは限らん……もう力を使うなよ?」

 

次にバーンが凄まじい魔力を集中させる

 

「100年経った今、お前が会いたい者はおそらく死んでいるだろう、純粋な人間ではないとは言え基本は人間だ……寿命もそう変わるまい」

 

そう言うと咲夜を呼んだ

 

「何でしょうか?」

 

「お前の時間を操る能力を使い時空の歪みを作る、100年前へな」

 

「そんな事出来ません!?」

 

「余の魔力で助力すれば可能だ、凍れる時の秘法の応用で余が道を作る……紫」

 

「スキマで歪みの先が貴方の世界へ繋がるようにすれば良いのね?」

 

「そうだ……」

 

開始されると時空の歪みはすぐに出来た

 

「レミリア」

 

「任せて」

 

レミリアがダイに触れると紅い力が入っていく

 

「運命を操ってあげたわ、導いてくれるように……おまじない程度だけどね」

 

準備が終わる

 

「後はこれに入るだけだ……」

 

バーンは妹紅に擦れ違い

 

「見送ってやれ……」

 

それだけ言うとウィンクするレミリアと人混みへ消えていった

 

「……ダイ」

 

名を呼んだ妹紅はとびきりの笑顔で言う

 

「またな!」

 

これに入ればもう会う事は無い

 

奇蹟が起きてもそれは叶わない、限りなく遠い場所だから

 

それでもまたと言うのは絆で繋がっているから

 

どんなに遠く離れてても絆は消えない

 

 

だから……また……

 

 

「妹紅……」

 

ダイは目を閉じて泣く

 

感じたのだ

 

本当は行って欲しくない、ずっと一緒に居たい

 

でも自分の生きる目的を尊重してやりたいから笑顔なんだと

 

この期に及んで迷わせたくないから……

 

「絶対会いなさいよ!」

 

「気をつけてねダイちゃん!」

 

「楽しかったわ……またね」

 

他の友達もそう言ってくれる

 

「ほら……早く行け」

 

促されてダイは頷くと妹紅の胸に飛び込んだ

 

「またねみんな……」

 

泣きじゃくりながらダイは妹紅を見つめる

 

「またね……ボクのもう一人の親友……!!」

 

弾かれた様にダイは歪みへ飛び込んで行った

 

「……元気でな」

 

歪みが消えた跡の空を見上げながら

 

妹紅は旅立った友へ想いを一緒に飛ばした

 

 

そっと風に乗せて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里・夜

 

「此度の異変解決を祝って!」

 

「「カンパーイ!!」」

 

宴会は始まった

 

人間の里全体を使った立食パーティーとも言える大宴会

 

「飲め飲めーい!」

 

人妖入り乱れた宴会

 

そこに種の差は無かった

 

今は皆で祝う時だから……

 

 

「あんたが伝説に聞くバーンか!俺のじいさんから何度も聞かされたが嘘と思ってたよ!」

 

バーンは人間に囲まれ次々に質問される

 

「伝説を直に見た気分はどうだ?」

 

そつなく返しながら酒を楽しむ

 

「あの……」

 

そこに靈夢が現れる

 

「私のお母……いえ、師匠を知っていますか?」

 

質問されたバーンは靈夢を観察する様に見つめると答えた

 

「そうか……お前があの時の娘の弟子か」

 

「!!」

 

「覚えておる、握手をせがんできた娘であろう?博麗の巫女になっていたとはな……お前の母か」

 

「ハイ!」

 

「靈夢よ……」

 

バーンは手を伸ばし靈夢の手を握る

 

「強くなれ……お前の母の様に」

 

「……ハイッ!!」

 

笑顔で去っていく靈夢を見ながらバーンは横に来た者へ視線を向けず話した

 

「どうだあやつは?偉大なる先代?」

 

「さぁ?今日会ったばっかりだし……まぁ儷奈との約束だから一人前にはしてやるけど先に神社の掃除ね」

 

酒を飲みながら霊夢は返す

 

「シゴキ甲斐ありそうだわ~」

 

言いながら霊夢は消えていった

 

 

 

「……少しお時間よろしいですか?」

 

「……閻魔か」

 

紫を伴い現れたのは映姫

 

「幻想郷を救って頂き誠に感謝します」

 

会釈程度に礼を述べる

 

「……そなたこそ此度の勝利を陰から支えた立役者であろう、余は主役ではない、買い被り過ぎだ」

 

「そんな事はありません、貴方が居たからこそ勝てたのです」

 

「違うな、余はこの勝利への貢献が他より少しばかり大きかった程度のものだ、そもそもそなたが魔理沙と霊夢を生き返らせなければ余は存在しておらぬし絆のスペルの完成も無かった……そこに至るまでに皆が役を持っていた……ただ余が目立つだけの事よ、優劣をつけてくれるな」

 

「しかし……」

 

「白黒つけたがるのは性分か閻魔よ……だが時には曖昧な事が良い事もあると知ればそなたは好かれるだろう」

 

「……わかりました」

 

「それで本題はそこの反省の色を見せる幻想郷の賢者の事だろうか?」

 

「はい、此度の異変の原因は八雲紫の愚かな行為がもたらした惨事……この者の処罰を任せたく参ったのです」

 

「……余に決めさせてよろしいのか?」

 

「私は死者の処遇を決めるのが役割ですので生者は管轄外、そこで今の幻想郷でまともな判断が出来るでしょう貴方にお願いしたいのです」

 

バーンは紫を見つめる、紫はしおらしくなっており、どんな処罰も受けるつもりと感じさせていた

 

「ふむ……」

 

暫し思案したバーンは処罰を決める

 

「無期の幻想郷への奉仕……それがお前への罰だ」

 

「……!?」

 

驚いた顔の紫、目を閉じ微笑む映姫

 

「お前は余との約定を守る為に努力していただけだ、それが此度、偶然異変に繋がってしまっただけの事……余が責める理由を強いて言えば調子に乗り過ぎた、と言ったくらいで特には無い」

 

「……閻魔様?」

 

呆気に取られた紫がこれで良いのかと映姫を見る

 

「決まりましたね、では頼みましたよ八雲紫」

 

微笑みながら映姫は去っていった

 

「閻魔はこうなると知っていて余に処遇を任せたのだ」

 

納得のいかない紫にバーンは言った

 

「しかし私は取り返しのつかない事を……」

 

罪の意識が消えない紫は顔を伏せる

 

「……多くの妖怪が犠牲になった、お前のせいで……だがそれはお前に地獄の辛苦を与えても意味無き事、故にお前はそれを業として背負い幻想郷の為に奉仕せよ」

 

優しさと厳しさを受けた紫は震えていた

 

「……わかり……ました」

 

震えながら涙を流し、贖罪の為に生きると誓う

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーンさん!」

 

妖夢が勢い良く現れた

 

「見てくれましたか!私の剣!!」

 

「見事な一刀だった……お前が辿り着いた天地魔闘を破る乾坤一擲の秘剣……」

 

頭を撫で

 

「強くなったな妖夢」

 

微笑んだ

 

「ッ~~ハイッ!」

 

それが堪らなく嬉しくて妖夢は笑顔で次に控える約束に向かって行った

 

 

 

「会いたかったわ大魔王バーン……」

 

「初めましてー!」

 

青娥と直った芳香が現れる

 

「私は霍青娥……こっちは……」

 

「宮古芳香だー!」

 

挨拶にバーンは少し不機嫌

 

「余は大魔王ではないと何度言わせればわかる……」

 

いつまでもその称号で呼ばれるのが不機嫌の理由

 

「王と呼びたいのならせめて幻想ノ王と呼ぶがいい邪な仙人、霍青娥……」

 

「あらごめんなさい、私が知ってるのは100年前の貴方だったから……」

 

「よい、それより手助け感謝する、助かったぞ……妹紅も喜んでいた」

 

「妹紅が!?」

 

それを聞いた青娥は妹紅を探しに走りだした

 

(花盗人は風流のうち……)

 

悟る瞳で青娥の後ろ姿を眺め

 

(百合……か……)

 

妹紅の身を少しだけ案じた

 

 

「……バーン」

 

残った芳香がずっと見ていた

 

「バーン消えちゃうのか?」

 

問われたバーンは薄く笑いながらグラスを手に取る

 

「消えはせん……」

 

そう言いながらワインに口をつける

 

「そっか!」

 

芳香は笑うと青娥を追って走っていった

 

 

 

 

「久し振りね……」

 

「幽香……久しいな」

 

次に来た幽香がバーンの前に立つといきなり殴り掛かった

 

「挨拶にしては少々大袈裟だろう……」

 

軽く受け止めたバーンは微笑む

 

「フン……約束を破った貴方には丁度良い挨拶よ」

 

拳を引いた幽香は無言で隣に座る

 

「花は元気よ」

 

「そうか」

 

「必ず殺してやるからね」

 

「出来るとよいな」

 

「チッ……もういいわ」

 

舌打ちした幽香は立ち上がり歩き始める

 

「アリガトウ……」

 

小さく感謝を述べて

 

  

 

「ようバーン!」

 

酒を片手に萃香が座り杯を渡し注ぐ

 

「……ミストに会ったよ」

 

「そうか……」

 

「最期まであんたの事を想ってた……それで、霧の名を認めてくれたよ」

 

「ミストも認めたか……流石は余が認めた鬼だ」

 

微笑んだ萃香は杯を差し出す

 

「ミストに……」

 

「ああ……ミストに……」

 

酒を飲んだ

 

 

 

「俺とも飲まないか?」

 

萃香が去った後に来たのはロン

 

「……よかろう」

 

少し戸惑ったが受ける

 

「……」

 

「……」

 

二人は酒を飲みながら何も話さない

 

「……聞かないのか?」

 

不意にロンが問う

 

「俺達の事を……」

 

達とは当然バーンの居た世界の事、あの後どうなったかを知りたいのではないのかと

 

「聞いてどうする……」

 

バーンに興味は無かった

 

「今の余はこの幻想郷が全てだ、あの世界に何の未練も無い……それとも何か?攻め込んで欲しいか?」

 

「意地の悪い冗談はよせ……」

 

「フッ……悪かった」

 

酒を飲むロンはなんとも言えない感覚を感じていた

 

「……今のあんたになら……何か作ってやっても良い」

 

そんな事を言ってしまう程の奇妙な感覚を

 

「ならばナイフでも頼むとしよう」

 

「チッ……相変わらず白けさせる客だ……」

 

瓶に入った酒を飲み干すとロンは立ち上がる

 

「じゃあな……」

 

微笑すると立ち去って行った

 

 

 

 

 

「あー……アリス、ごめん……人形壊されちゃった」

 

にとりはアリスへ謝る

 

「……それは別に……良いん……だけど……」

 

アリスはにとりの回りを跳ね回る機械を見て目を白黒させていた

 

「確かロビンも壊された筈じゃ……」

 

にとりの回りを跳ね回っていたのはロビンだった、大きさは小さな子どもくらいになって

 

「壊されたけど死んでないよ!核が生きてたから幾つか作ってたボディに入れ換えただけさ」

 

「ニトリ!ニトリ!」

 

「あっ……そう……」

 

当然の様に語るにとりと陽気に跳ね回るロビンにアリスは何も言えなかった

 

「可愛いー!」

 

ダッシュで早苗が現れた

 

「見る目あるね早苗!」

 

「それはそうですよ!ロボットなんてロマンじゃないですか!私大好きなんです!」

 

早苗の様子に気を良くしたにとりは得意気に語りだした

 

「このボディはお祭りなんかの時に入れ換える物だよ、普段のtype非想天則だと大き過ぎて迷惑だからね」

 

「と言う事は他にも種類が!?」

 

「もちろん!弾幕攻撃主体のボディ・ガン○ム!格闘特化のボディ・ガ○ガ○ガー!パイルダー・オンするマジ○ガーtypeもあるよ!」

 

「そのラインナップだと……まさか3人乗りも……!?」

 

「あるよ!ボディ・ゲ○ター!3人の心を1つに出来ればロビンバリエーションの中じゃ一番強いかもしれないボディだ!」

 

「おおおおっ!!」

 

「ただ……ボディ・ゲ○ターは気を付けなきゃならない事がある」

 

「何ですか?」

 

「あんまり使い過ぎると虚無る」

 

「なにそれこわい」

 

 

「ついてけないわ……」

 

談義を続ける二人に呆れてアリスは宴会へ戻っていった

 

 

 

 

 

「師匠!!」

 

ご馳走を口一杯に頬張る美鈴に声が掛かった

 

「……鈴仙」

 

目付きを鋭くした美鈴は食べ物を飲み込み構えた

 

「答えよ土門!」

 

「ハイ!師匠!」

 

鈴仙も構える

 

「流派東方不敗は!」

 

「王者の風よ!」

 

演舞の様な構えをしながら二人はお互いに距離を詰める

 

「全新……」「系列!」

 

無数の拳を突き合いながら叫ばれる

 

「「天破侠乱!!」」

 

最後に拳を突き合わせると一番の声で叫んだ

 

 

「「見よ!東方は赤く燃えているぅ!!」」

 

 

雷の様なエフェクトが見えた気がした

 

「師匠……」

 

鈴仙の拳が解かれ美鈴の拳に両手を添えられる

 

「御無事で……!!」

 

涙を流しながら鈴仙は崩れた

 

((なんだこれ……))

 

見ていた誰もが思っていた

 

(なんだこれ……)

 

美鈴も同じだった

 

(鈴仙が考案した流派東方不敗の挨拶ですけど……珍妙過ぎる……)

 

微妙な表情でとりあえず再会を喜んで見せた

 

そう、美鈴の弟子は3名、内2名は人間の子どもでフランは違う

 

鈴仙こそが最後の一人であり一番弟子だったのだ

 

(ある日、急に強くなりたいって弟子入りしてきたから字をあげて鍛えてますけど……このノリは正直ついていけません)

 

「鈴仙……貴方も無事でなにより」

 

困惑しながら適当に受け答えする

 

(……チッ)

 

それを見てイラついている女性が一人

 

「師匠!この不肖の弟子、鈴仙・土門華院・イナバ!一生着いていく所存です!」

 

その一言が引き金だった

 

「いい加減にしなさい鈴仙……」

 

怒のオーラを携えた永琳が二人に割って入った

 

鈴仙を睨むと美鈴に顔を向ける

 

「私の弟子をたぶらかすのやめてもらえないかしら?」

 

「……?……??」

 

美鈴には意味がわからない、鈴仙から願いでた事なのにたぶらかすと言われる意味がわからない

 

「師匠!」

 

鈴仙が怒鳴り二人の師匠は鈴仙を見る

 

「言ったじゃないですか!永遠亭では師匠の弟子ですがプライベートは美鈴師匠の弟子だって!」

 

プンスカ怒る鈴仙に永琳の怒りは溜まる一方

 

「あのー……」

 

美鈴が聞いた

 

「もしかして嫉妬ですか?」

 

その一言で永琳の怒りは頂点に達した

 

「表に出なさい……体術で捻り潰してあげる」

 

勝負を挑まれた美鈴は動じずにこやかに告げる

 

「ここは表ですよ?」

 

それが嫉妬に狂った元幻想郷最強の動く機になった

 

「ハアアアッ!」

 

月の軍隊仕込みの体術で攻撃を仕掛ける

 

「フフン……♪」

 

「おおおっ!!」

 

美鈴の捌きに歓声があがる

 

永琳の無数の攻撃を食事しながら片手で全て捌いていたのだ

 

「流石師匠!!」

 

褒め称える鈴仙の言葉が永琳を更にイラつかせる

 

「……!!」

 

それを使おうと身構える

 

「貴方が弾幕を使うなら……私も容赦しませんよ?」

 

察知した美鈴が黄金のオーラを放つ

 

「月の光が届かないとでも?」

 

「試してみますか?天に届くかどうか……」

 

二人が動く

 

 

ドサッ……

 

 

地に伏したのは

 

「……ッ!?」

 

永琳

 

見上げるは

 

「月の光は天までは届かない……」

 

美鈴

 

勝ったのは美鈴、無構の神技にて瞬く間に永琳を叩き伏せていた

 

「……負けたわ」

 

ヨロヨロと立ち上がった永琳は微笑みながら美鈴に言った

 

「鈴仙をよろしくね……」

 

「え……嫌です」

 

美鈴の返事に場が凍りついた

 

「し、師匠!?」

 

鈴仙を除いて

 

「なんか面倒なので鈴仙、貴方免許皆伝!破門!後は自力で鍛えてください」

 

言うだけ言うと厄介払いが出来たと御満悦に食事に戻った

 

「師匠!?ししょおおおおっ!!?」

 

「さっ行くわよ鈴仙」

 

永琳に引き摺られ、一番弟子……破門!

 

 

 

 

 

 

 

「ロン・ベルクさん!」

 

離れた場所でロンを見つけた妖夢は足早に駆け寄った

 

「妖夢……」

 

ロンが顔を向けると妖夢は頬を染めもじもじしていた

 

「あ、あの……話って……何ですか?」

 

乙女の顔でロンを見る

 

「……見せろ」

 

ロンが近寄ってくる

 

「え!?」

 

たじろぐ妖夢

 

(見せろって……まさか服を脱げって事!?いきなり飛ばし過ぎですよロン・ベルクさん!?心の準備が……まずは手を繋ぐところから……って言うか人居ますって!!?)

 

顔を真っ赤にしながらオロオロしているが逃げはしなかった

 

「早く見せろ」

 

ロンがしゃがみ服に手を掛けようと手を伸ばす

 

「だ……だめぇ……」

 

目を閉じて手を押し出した

 

 

 

スルッ……

 

 

 

「これならすぐ直るな」

 

「直るのは心の準備がまだ……ふえっ?直る?」

 

 

目を開けた妖夢が見たのは折れた白楼剣を持つロンだった、衣服に変化は当然無い

 

「み、見せろって……剣の事ですか?」

 

「武器職人の俺が見る物と言えば武器しかあるまい」

 

「そ……そうですよね……アハハ……」

 

「……お前裸を見せろと勘違いしただろう?」

 

「みょん!?そんな事ないですよ!!」

 

「……幽々子の婿発言を真に受けたな……言った筈だぞ?乳臭い貧相な体に興味は無いと」

 

「ちち……違います!誰がロン・ベルクさんなんか……」

 

妖夢が抗議しようとした時だった

 

 

「「アハハハハハハハハハ!!」」

 

 

我慢しきれなくなった笑い声が響き幽々子と萃香、そして幽香が現れた

 

「面白い出し物だったよ!アッハッハ!」

 

「苦しい……!アハハ……!助けてぇ!」

 

「フラれちゃったわねぇ……ウフフ……!」

 

 

「幽々子様……萃香さん……幽香さん……」

 

唖然とする妖夢は3人に囲まれる

 

「だ、だめぇ……!って……ウヒャヒャヒャヒャ!!」

 

「アハハハハハ!!」

 

 

「乳臭い……貧相……フフッ!」

 

「アハハハハハ!!」

 

 

「幽々子様、笑い過ぎです……」

 

「だって……アハハハハハ!!」

 

「……」

 

あまりに笑われ過ぎた妖夢は無言で楼観剣を抜いた

 

「花は桜木、人は武士……」

 

八相に構え

 

「妖怪変化は散滅すべしぃぃぃぃぃ!!」

 

3人に切りかかった

 

「ありゃマジの目だ!ハッハッハ!それ逃げろ逃げろー!!」

 

蜘蛛の子散らした様に3人は逃げていった

 

「……妖夢」

 

追いかけようとする妖夢をロンが止める

 

「……なんですかぁ……?」

 

不貞腐れたようにブスッとしている妖夢

 

「……ふぅ」

 

溜め息を吐いたロンは妖夢を抱き寄せる

 

「お前が自分を納得のいける剣士になれたと確信した時……会いに来い」

 

「えっ……それ……って……?」

 

きょとんとしながら妖夢は言葉の意味を考える

 

「その時は女として見てやると言っているんだ」

 

「え……ええっ!?」

 

真っ赤な顔、まるで茹で蛸

 

「俺をそういう風に見ていないなら酔っぱらいの戯れ言と思え」

 

「あ……いえっ!その……そんな事は無い……です、はい……」

 

半妖の乙女は固まって暫く動けなかった

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって別の場所

 

「「「……」」」

 

咲夜、輝夜、にとりの3人が目で殺し合っていた

 

「……こんな良い日に」

 

「ギャンブラー3人……」

 

「……勝負でしょう!」

 

トランプを片手に勝負が開始された

 

「懲りていない様ですね」

 

3人のトラウマを抉る声が聞こえる

 

「……来なすったね……さとり!」

 

「また懲らしめてあげましょう」

 

刺客再び!

 

「ねぇ、提案だけど……こいつを先に潰さない?」

 

「乗った……魔帝異変の時の雪辱を晴らさないとね……」

 

「覚悟しな……身ぐるみ全部剥いでやんよ!」

 

結託した3人の敵意を受けてもさとりは動じない

 

「私が勝ったらそうですね……守矢神社の再建でもしてもらいましょうか」

 

「そういう事は……勝ってから抜かせ!」

 

ギャンブラーの熱い夜が始まった

 

 

 

 

更に別の場所

 

守矢の3人が酒盛りをしながら決意表明を行っていた

 

「我等3人!無事再会出来た!これからは守矢の更なる発展の為に力を合わせてゆこう!」

 

「うおー!守矢の春が来たああああ!!」

 

「博麗神社なんて潰しちゃいましょう!要りませんよアレ!あんな貧乏神社より守矢神社の方が良いに決まってます!」

 

意気込む3人だったが既に暗雲は立ち込めていた

 

「あのぉ……意気込んでいるところ悪いんですが……」

 

「その……なんと言えばいいか……」

 

「ん?文と白蓮ではないか!どうした?見るに堪えないような顔をして……」

 

とても言いづらそうにしている二人に理由を聞いた瞬間だった

 

「守矢神社ァ?ねぇよんなもん」

 

勇儀が暗雲から雷を落とした

 

「ハハハ!面白い冗談だ!笑えたぞ!」

 

信じない3人

 

「冗談じゃねぇよ」

 

「……ホントに?」

 

「鬼は嘘を吐かない……あんたが知らん訳なかろうよ?」

 

みるみる青ざめていく3人

 

「……本当……なの?」

 

文と白蓮に問う

 

「はい……残念ながらエスタークによって木端微塵に……跡形もありません……」

 

「これ……写真です」

 

渡された写真を3人は覗きこむ

 

「……」

 

更地になっている守矢神社跡を……

 

「……ちょっと飲み過ぎたな諏訪子、早苗?」

 

「そうだね、疲れてるのもあるからね」

 

「寝ましょう!起きたら帰りましょう!私達の家へ!」

 

3人は気絶する様に眠った

 

「……起きた後がこいつらにとっての悪夢の始まりだねぇ……いや、続きか」

 

眠る3人に知ったこっちゃないと勇儀は歩いていき、文と白蓮も頭だけ下げて消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!それあたいが大事に取ってたお肉ー!」

 

「んあ?……悪い悪い!でも名前書いてなかったし諦めるんだぜ!」

 

「食べ物に書けるかぁ!」

 

 

「焼けましたよ~はい!フランちゃん!ルーミアちゃん!」

 

「ありがとー!」

 

「ありがとなのだー!」

 

 

「先生もどうぞ」

 

「ありがとレティ……ちょっと待って……ほらチルノ、口に付いてる」

 

 

「レミリア見てないか?バーン?慧音?」

 

「見ておらんな」

 

「さっき見かけたが何故か恥ずかしそうにうろうろしていたぞ?」

 

「なにやってんだあいつ?」

 

「あーん!無視しないで妹紅ー!」

 

 

楽しい時間は過ぎていく

 

 

「ハハハハハ……」

 

 

生をより強く実感したから楽しい

 

 

「ハハハ……」

 

 

これは夢の後

 

 

 

幻想達の……夢の後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

宴の最中、バーンは静かに立ち上がると

 

「……」

 

誰にも悟られずその場を去っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスターク神殿

 

「……」

 

王座に座し、眠り佇むエスターク

 

「……」

 

体色は青に戻り大剣も戻っている

 

「……」

 

帝王は眠り続ける

 

「……」

 

暗い地の底で……

 

「……フッ……」

 

幻想郷で起きた異変は混乱を避けたマスタードラゴンにより

自らの力で封印したと破壊神の事は伏せられ、その世界には伝えられた

 

「……」

 

エスタークはゆっくりと器の完成へ向け眠り続ける

 

眠る神殿が後の世に出来る鉱山の町と繋がっているなど知るよしもなく

 

「……早く」

 

皮肉にも人間が見つけてくれるとも知らずに見続ける

 

「現界したいものだな……」

 

終わらない暗い夢を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

(もぉ……どこに行ったのよ……)

 

彼女は探していた

 

(バーン……)

 

愛する者を

 

 

 

「美鈴!100万今すぐ払え!」

 

「今すぐなんて無理ですって!?」

 

美鈴は借金取りに絡まれていた

 

「じゃあ紅魔館売るしかないねぇ……!」

 

「観念しな!」

 

手伝うと約束したてゐと悪ノリの正邪を加えて

 

「それだけは!?それだけはご勘弁を!」

 

「知るかバカ!こっちは勝負に負けて金が要るんだ!おいお前ら!紅魔館売ってこい!」

 

「「あいあいさー!」」

 

二人が手を挙げた瞬間

 

「やってみろ下等種族」

 

レミリアが背後に立っていた

 

「げぇー!?レミリア!!?」

 

にとりが驚き後ずさる、既に仲間の二人は逃げていた

 

「このレミリア・スカーレットの城を私を倒して売れるのなら……」

 

凄むレミリアを見たにとりは

 

「くっそー!覚えてろー!」

 

逃げていった

 

「ありがとうございますお嬢様……」

 

「貴方、一生タダ働きね」

 

冷たく告げるといそいそと去っていった

 

 

 

「どこに居るのよ……」

 

里を歩き回るレミリア、咲夜を見つけ声を掛ける

 

「ねぇ?バーン見なかっ……」

 

「すいませんお嬢様!私、今から守矢神社の再建に行かなければならなくなりました!失礼します!」

 

傍に居た輝夜と共に消えていってしまった

 

(……後でお仕置きね)

 

また捜索に戻る

 

 

 

(居ない……)

 

里を隈無く探したが見当たらない

 

(なんでどこにも居ないのよ……)

 

寂しくて涙が浮かんできた

 

「バーン……」

 

うずくまって声を出そうとした時だった

 

「お前さっきから何やってんだ?」

 

声が掛けられ振り向く

 

「妹紅……みんな……」

 

そこには6人の友が居た

 

「こんなところで油売ってないで早く行けって」

 

「行けって……どこによ」

 

「わかんないか?お前が今になって照れて逃げてた奴の場所がさ?」

 

「……どこよ?」

 

「あそこに決まってんじゃん!ねー大ちゃん!」

 

「レミリアさんも良く知ってる場所ですよ!」

 

「……私も?」

 

「まだわからないのお姉様?鈍過ぎ!」

 

「あの場所よレミィ……貴方達二人の思い出の場所」

 

「……!!」

 

レミリアは気付いた

 

「早く行ってやれよ……あいつも待ってる」

 

妹紅に促され

 

「みんな……ありがとう!」

 

レミリアはすぐに向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・バルコニー

 

「……」

 

椅子に座り月をずっと眺めていた

 

暫くすると

 

「はぁ……はぁ……」

 

待ち人来る

 

「バーン……!」

 

「待っていた……レミリア」

 

逢瀬の場所はここだった

 

バーンがいつも夜に訪れ、レミリアと共に語り合った

 

月が一番見える場所

 

「……」

 

レミリアはバーンを見つめて動かない

 

「どうした?」

 

問うとレミリアは呟いた

 

「まだ……現実味が無いの……貴方が居るっていう感じがまだハッキリしてない……」

 

掠れる様な声を絞り出す

 

「夢なんじゃないのかって……!起きたらまた貴方は居ないんじゃないかって……!それが私は……怖くて……!?」

 

涙が頬を伝う

 

「レミリア……」

 

椅子から立ち上がったバーンは真っ直ぐにレミリアを見つめて言った

 

 

「余は此処に……此処にいる……最愛のお前の前に……」

 

 

夢ではない……と

 

「……うー……うううぅー……」

 

止めどなく流れる涙は愛の証

 

「バーン!!」

 

時を隔てた逢瀬は月明かりに照らされ一層輝いて見えた

 

太陽が無ければ月は輝かない様に二人は繋がっている

 

どれだけの月日が経とうとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「世話かけさせるなよな」

 

紅魔館の上空から6人が微笑んで見ていた

 

「あんまり見るのも二人に悪い……戻るか」

 

仲良く里へ戻る途中

 

「……悪い、ちょっと先に行っててくれ」

 

妹紅が離れ、飛んでいった

 

 

 

 

「ふぅ……疲れた……」

 

適当な丘に降りた妹紅は木に持たれ夜空を見上げる

 

(ダイは会えたかな……)

 

友を想う

 

「……」

 

膝を抱え顔を埋める

 

「ダイ……」

 

誰にも聞かれない呟き

 

「本当に困ったお姉さんね……一人で抱え込んで……」

 

聞かれていた

 

「みんな……」

 

6人の友達に

 

「何も言うな、聞くな……私達はなんにも聞いてないし聞こえない」

 

魔理沙は笑顔で言う

 

「だけどあたいの胸なら使ってもいいわ!」

 

チルノが妹紅の肩に手を置いた

 

「……うん、ありがとう……」

 

ゆっくりとチルノの胸に顔を埋める

 

「……寂しいよ……」

 

感情が吐き出される

 

「ダイが居なくなって……寂しいよ……!」

 

涙と共に

 

「うぅ……うううっ……!寂しいよぉ……!」

 

強く見せていただけで本当は限界だった

 

それだけダイを大事に想っていたから……

 

「ぐすっ……うぇぇん……」

 

悲しみを共有したチルノと大妖精とフランが二人に抱き付く

 

「……!」

 

魔理沙も抱き付き強く抱き締める

 

「今は好きなだけ泣きなさい……」

 

最後に一筋の涙を流すパチュリーが優しく抱擁し

 

別れを一緒に悲しんだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィ……!ピィ……!」

 

急いで飛んでいく

 

「ピィ……!ピィッ……!」

 

導かれるままに

 

「ピィ!」

 

何故か喋れなくなっていたが気にはしない

 

今、大事な時だから

 

「ピィ!!」

 

目的の場所へ辿り着いた

 

「ピィッ……!?ピィッ……!?」

 

海の見える崖

 

そこに刺さる一本の剣の前へ

 

「ピ……ピ?」

 

辺りを見回すが誰も居ない

 

「……ピィ……」

 

とても残念に顔を伏せる

 

 

ピカッ……

 

 

その時、剣に付いた宝玉が強く光を放った

 

「ピィ……?」

 

光を不思議に見ていた次の瞬間だった

 

 

 

 

       やっと見つけた……

 

 

 

 

「ピィ!?」

 

その声に魂が反応し体が震える

 

 

 

      お願い……聞いてくれる?

 

 

 

震えながらゆっくりと振り向く

 

 

 

 

 

 

     また……僕の友達になってよ!

 

 

 

 

 

 

       ピィィィィィィ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出会いがあれば別れもある

 

別れは新たな出会いを呼び、また廻る

 

 

今日は永久の別れといつかの約束が果たされた

 

 

 

         

 

 

 

         奇蹟の日……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




帝王夢現編エピローグになります。

思いの外に書こうと思っていた事が多過ぎてまたも長くなってしまいました……シリアスが終わったのでかなりおふざけになってます。
ダイと再会を果たさせたかったのがゴメちゃん幻想入りの最大の理由です。

今話でエピローグはエピローグですがもう少し続きます。

そして次話からですが次かその次にコラボを予定しております、2名の作家の方から許可を頂きましたので短編として書こうと思っています。

もう少しお付き合い頂けたら幸いです。

では次回も頑張ります!
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