ハドラー家
「では始めるとしましょう……む?何をされておられるレミリア殿、支度がまだですな、早くなされよ」
キッチリ身支度を整えているハドラー
「あぁ……うん、そうね……」
レミリアは唖然として見ていた
「……恥ずかしくないの?」
「オレの姿がですか?」
ハドラーは身なりに目を配る
Eおたま
Eピンクのエプロン
Eおなべのふた
Eさんかくきん
「何かおかしい所がありますかな?」
ハドラーは何も気にしていない
「いや……おかしいでしょう、貴方みたいな大柄で屈強そうな魔族がそんな格好……」
元とは言え魔王と呼ばれた男がする格好ではない
レミリアはプライドは無いのかと暗に言っていた
「……レミリア殿」
そんなレミリアにハドラーは言う
「貴方には縁の無い話でしょうが……オレの居た世界、つまり貴方の御主人であるバーン様の居た世界の人間達の間では「台所は女の戦場」と言われておりました」
「女の……戦場?」
真剣な言葉にレミリアは真っ直ぐハドラーを見つめて聞き入る
「そう、男は外で戦い、女は留守を守る……戦い疲れて帰った主人を労る為に女は台所と言う戦場に立ち、果敢に戦うのです」
ハドラーは身に付ける調理服を手に持ち見せる
「つまりこれは台所に立つ者にとって戦士の身に付ける兜や鎧と同じ価値があるのです!」
同時にハドラーはカッと目を見開き
「それを馬鹿にするとは如何なる了見か!!」
覇気と共に怒声を放った
「ッ!?」
余りの迫力に気圧されるレミリア
(……確かに咲夜も料理をする時は身に付けていたわね、なるほど、これは戦場に立つ者が纏う当然の装具……!)
自身の認識が悪かったのだと悟ると
「失言だったわ、狭い価値観でモノを言った事を許して」
素直に謝った
「……オレの方こそ無礼な発言をお許しください、ただの料理と言えばそれまでですが我が料理の師であるアバンから習った料理を教える以上、軽い気持ちで習って欲しくなかったのです」
「そうね、心構えが足らなかっ……!?」
レミリアはハドラーの言った事を思い出しハッとする
「アバンですって!?」
そう、アバン、100年前にバーンを救う為にバーンの居た世界で会った国王の名だったから
「アバンがどうかされましたか?」
「私も会った事があるのよそのアバンに……まさか貴方に料理を教えてたなんて……」
「ほう、レミリア殿も奴に会われた事が……奴は多才ですからな、学者の家系でありながら武芸に優れ、料理までこなせる勇者は奴以外にはおりますまい……数年前にここコーセルテルに来る前に別れたきりですが奴の事だ、元気にしているだろう」
「……?」
レミリアはハドラーの言葉の中に違和感を見つけた
(私が会った時は30前後だった……人間の中には130年以上も生きれる者が居るのね)
「……人間のくせに中々の化物だった様ねあの男」
だが勝手に納得して問い質しはしなかった
(奴が化物?まぁ人間の中で考えればオレを倒しキルバーンをも倒したし化物ではあるか)
ハドラーも勝手に納得し、問わずにこの妙な認識の擦れ違いについては明かされなかった
「あ、そうそうハドラー」
「なんですかな?」
「敬語はしなくていいわ」
「しかし……オレは貴方より歳下ですしバーン様の奥方様に余り無礼な真似は……」
「私がいいと言ってるのよ、貴方とは対等で居たいと思うから頼んでるの、歳もバーンも関係無い」
「……その方がオレも楽で良いが……本当にいいのか?」
「何度も言わせないで、そこまで言うならいっそ力比べでもして優劣つける?」
「フッ……血が滾る提案ではありますが……わかりました、では始めるぞレミリア、早く支度をしろ」
「わかった……けど、私は調理装具を持ってきてない……」
「ならばオレの予備を……」
ハドラーが用意をしようとした時、咲夜が二人の前に現れた
「ご安心ください!こんな時の為に備えて用意しておりました!」
取り出した紅い調理服と装備をレミリアに着せていく
E咲夜のエプロン(呪)
E絶壁のまな板(呪)
E血塗れの三角巾(呪)
「素晴らしい!パーフェクトよ咲夜!これぞ吸血鬼の女王に相応しき魔性の装具!流石ね咲夜、褒めてあげる!」
「ハハッ!ありがたき幸せ!」
顔を下げ平伏す咲夜
(良い者をお持ちですなバーン様、呪われているみたいなのが気にはなるが……む?あの咲夜とか言うメイド下を向いて鼻を押さえてどうした?)
妙な様子の咲夜
(マズイ!?可愛過ぎて鼻から……溢れる……!?)
レミリアに見えない角度で咲夜は必死に溢れ出ようとする忠誠心を抑えていた
(こ、堪えろ……!?萌え死ぬのは本望!しかしお嬢様の料理を食べるまではまだ……!!)
死ぬまいと意思で耐える
「どうしたの咲夜?」
「……いえ何も、それよりお嬢様、バーン様がこれをと」
なんとか耐えた咲夜は最後の装備を渡す
「包丁じゃない……バーンがこれを?」
「はい、ロン・ベルク様からの贈り物だそうです」
レミリアは手に持つ包丁を掲げる
これこそがロンが妖夢を通じてバーンに贈った物
武器を必要としないバーンにではなく妃となるレミリアに対して武器職人が作った最高峰の包丁
こうなる事を予期していたロンがバーン、引いてはレミリアの為に作っていたのだ
「ほぅ……その包丁、ロン・ベルクが作ったのか」
興味を示したハドラーが包丁を覗き込み
「……」
顔を引き吊らせた
(なんだこれは……料理に使う刃ではない、人切り包丁……いや、これでは大きめのナイフだ……武器職人だから仕方ないのだろうが、ロン・ベルクめ何を切るのかわかっているのか?人肉を切るつもりか!)
およそ料理に使う刃ではないと思いつつもハドラーは咳払いをして言った
「始めるか」
「大きくなったなジゼル嬢」
「お久しぶりですバーン様!」
キッチンから離れた部屋でバーン達は寛いでいた
「修業は順調か?」
「ん~わかりません!」
ハドラーの娘である子竜、ジゼルと言葉を交わす
バーンはジゼルの存在を知っていたがジゼルはバーンを知らない、だが術によってバーン達を知っているので顔見知りの反応
「フッ……そうか」
バーンは微笑みながらジゼルを撫でる
「強き竜となれジゼル嬢……父の武勇に負けぬ強き竜に、強さだけでなく、誇りを持ち合わせた至高の竜へ」
大きな手で撫でられるジゼルはまだ幼いからかポカンとしていた
「ジゼルはハドラー様の役に立ちたい……」
それは本心からの言葉だろう、それが親であるハドラーに愛情を持つ彼女の生きる意義だから
「……ジゼル嬢、ハドラーはそれを望んではおらん」
しっかりと自分を見つめるバーンの瞳にジゼルは魅せられた様に見入る
「奴はそなたに自分を越えて欲しいと願っておる」
「なんで……ですか?」
「奴がそなたを己の片腕程度で終わって欲しいとは思っておらんと言う事だ」
「よく……わかりません」
理解しようと頑張るがわからないジゼルにバーンはフッと微笑みを向ける
「まだまだ幼いそなたには難しかろう……だがいずれわかる時が来る」
「……ジゼルに出来るかな?」
「それこそ心配無き事だ、何故ならそなたはあのハドラーの娘なのだからな」
そう言ってまたジゼルを撫でる
「奴の強き意思と誇り高き血が流れておるのだから……」
「……!!」
ジゼルはとても嬉しかった、難しい事を言っていて理解は出来なかったが大好きなハドラーを褒めてくれた、それだけはわかる
「強くなれジゼル嬢、そなたが望み、強くあろうとするならばそなたは竜の王にもなれよう」
「ハイ!頑張りますバーン様!」
ハドラーとはまた違う強くて大きな人に洗礼を受けてジゼルは頑張ると笑顔を見せた
「フフッ……」
「コーセルテルのお菓子って美味いな、幻想郷とはまた違う独特の味だぜ」
「これハドラーが作ったらしいぞ?味付けはバーンの居た世界風らしい」
「本当に元魔王なんですかねぇ……」
コーセルテルの本を読みながら何故か微笑ましくて笑うパチュリーにお菓子を食べる魔理沙と妹紅と美鈴
「レミリアはちゃんと習えてるかしらねぇ」
加えて紫
「コラバーン!ジゼルを虐めてんじゃないわよ!」
「一緒に遊ぼうジゼルちゃん!」
「何して遊ぶ?弾幕ごっこする?」
チルノと大妖精とフランがジゼルに絡む
「ハチャメチャが押し寄せて来たな~……あ、ジゼル泣いた」
「いきなり来て動揺したんでしょ、精神的動揺に弱いのは親に似てるわね」
「しょうがない!私が行って来ましょう!……ジゼルちゃーん!泣いてる場合じゃありませんよ~……アツッ!?」
「あ、美鈴焼かれた」
「アッハッハ!良いぞージゼルー!もっとやれー!」
楽しげに時間は過ごされていた
「その調子だ、次は人参を切ってみろ」
「わかったわ」
「違う、そうではない……人参は厚く切ると中々火が通らん、薄く切るのがコツだ」
「なるほどね、ではこの玉葱は?」
「玉葱は皮を剥いてから切るのだ」
「ふーん……剥くなんてなんかいやらしいわね……痛ッ!?目が痛い!?目がー!?目がぁぁ!?」
「台所は戦場と言った筈だ、油断するからそうなる」
中々順調に進んでいた、二人共楽しそうに料理をしている
「次はニンニクだ」
ドゴオッ!
「吸血鬼にニンニクを料理しろとは……嫌味か貴様!!」
「アガガ……すまん……」
……楽しそうに料理をしていた
そしてその日の晩
「出来たぞ、ジゼル、運ぶのを手伝え」
「はーいハドラー様!」
「私も手伝います!行こッ!ジゼルちゃん!」
「うん!」
大妖精と共にジゼルはハドラーに着いていき食卓に次々と料理が運ばれていく
「おお!スゲェ!これ全部レミリアが作ったのか!?」
豪華な料理の数々に驚く皆
「いや、作ったのはオレだ」
「なんだハドラーかよ」
肩透かしを食らって残念そうな魔理沙
「あんな僅かの授業で出来る筈なかろうが、ならばオレが作るのは当然の事……それとも噂のダークマターとやらを食いたかったか?」
「馬鹿抜かせ……せっかく生き返ったのに早々出戻りさせる気かお前……そうなるくらいなら私は命を懸けて戦うぜ?」
「……レミリア……お前は一体何を作ったのだ……」
「フッ……人は己の知る事しか知らない、だから未知なる事に恐れを抱き、踏み入れない……それがかもすれば有益な事に繋がるかもしれないのに……全く、これだから人間は愚かで困る」
「見えてる地雷差し出しといて何抜かしてんだこのバカ……お前が愚かで困った錬金術士か黒魔術師だったから習いに来たんだろうが」
そんな会話をしながら食事は始まった
「……ッ!!?」
食べた者が驚愕し料理を見つめる
「美味い……!!」
「ああ……咲夜のもプロ級の腕前で美味かったけど……!」
「そうじゃないわ、私達が咲夜の料理に慣れていたのが大きい……新鮮に感じるからより美味しく……」
「パチュリー様、理屈過ぎですよ、素直に美味しいって言いましょう!」
「あたいがあんな魔族の料理なんかに……クッ!?悔しい……でも美味しい……」
「本当に美味しいですハドラーさん!」
「咲夜と交換しよ!ねっ!良いでしょお姉様!!」
「ちょ!?妹様!?」
「幽々子にも食べさせたい美味しさね」
絶賛の嵐
ハドラーの料理は大好評だった
「口に合ってなによりだ、おかわりも充分ある、好きなだけ食うがいい」
絶賛に満足したハドラーはチラリとバーンとレミリアを見た
「これが真の料理と言う物だ、まだ僅かとは言え料理の真髄に触れた今のお前ならばこの価値がわかるだろう?」
「そうね……身を持って知ったからこそ凄さがわかる、普段何の気なしに食べていた咲夜の料理にも見えない努力と研鑽があったって事に……」
そこに至るまでの背景を思いながら二人は食事をしていた
「それがわかっているならよい……ハドラー」
「……何でしょう?」
「どうだ?こやつは?」
「順調と言っておきましょう、流石はバーン様の奥方様、覚えがよろしく気を付けてさえいれば優秀な生徒です……先の料理で作られた暗黒物質はおそらく料理が出来るまでの過程を知らなかった故からくる認識の差異でしょうな、料理が錬金術や黒魔術で出来るかの様な誤った認識が暗黒物質を作成させるに至ったのでしょう」
「……」
「何よその目は……知るわけないじゃない、箱入り娘だったんだから」
「……お前はどちらかと言えば棺入りだろう」
ズボオッ!
「アガッ……!?」
「何か言ったハドラー?」
「……言っていない……」
コーセルテルでの最初の夕食が終わった
ハドラー家・庭
「ここに居られましたかバーン様」
「ハドラーか」
置かれてある机と椅子に座っているバーン
(ム……これはオレが作った紙芝居……)
机に置いてあったのは見覚えのある物だったがハドラーはあえて触れずにバーンへ向いた
「バーン様、お願いがあります」
「我等の仲でそう改まる必要は無いだろうに……まぁよい、なんだ?」
聞いてやると言われたハドラーはその目に烈気を点し願い出た
「オレと勝負して欲しい」
願いはバーンとの一対一の勝負
「……余に挑みたいのかお前は」
それを聞いたバーンは嬉しい様な戸惑う様な何とも言えない顔でハドラーを見る
「そうです、魔界最強の実力者と呼ばれた貴方が生きて目の前に居る……これが血が騒がずに居られるか!」
「武人の血か……」
「オレとて一度は最強を目指した男……平和な今でこそ戦士とは異なる道で生きているが戦士としての誇りを捨てた覚えは毛頭無い!」
「確かにここコーセルテルでは戦いらしい戦いは起きんだろうな……だから余か」
「そうだ……戦士の誇りは戦場の中でしか光らん!戦場を離れた誇りは消えていくが運命……だから長く戦場を離れたオレに……戦士としての生きる糧をくれ!!」
ハドラーは焦りがあった
ここコーセルテルの生活については自ら望んだ事でもあるからそこは良い
しかしレベルが上がるのは戦いとは無縁の事ばかり
だがそれも納得はしている、だが考えてしまうのだ
自分が戻る時にはダイやヒムは更に強くなり自分など足手纏いになっているのではないか?
それにもしコーセルテルに強大な敵が現れた時に戦いから離れている自分が家族や友人を守れるか?
そんな考えがハドラーに有り、バーンに願い出る動機になったのだ
「よかろう、お前の掻き毟る様な乾き……余が満たしてやろう」
バーンは受けた、ハドラーの挑戦を
「ありがたい……感謝しますバーン様」
「そう改まるな、お前にはレミリアを任せた礼もある、気にするな」
「ハッ……」
「レミリアの修業は明日には終えれそうか?」
「そうですな……アバン流料理術の極意とまでは行かずとも料理の基礎は終えれるでしょう」
「よし……ならば余等は明後日に帰る事にする、お前の願いは明日の夜に叶えるとしよう」
「わかりました」
「うむ……ではハドラー、席を外せ」
「……何故でしょう?」
「人を呼んでいる……大事な用だ、無粋な真似はしないでくれると助かる」
その瞬間ハドラーはハッとした
(なるほど……紙芝居はその為に……)
置かれていた紙芝居の意味を察する
「これは失礼を……他の者達にも伝えておきましょう」
笑顔を見せて家に戻って行った
ハドラーが戻ってすぐに彼女は現れた
「来たわよ、見せたい物があるって言ってたけど何?」
来たのはレミリア
「お前にこれを見て欲しくてな」
紙芝居を手渡す
「紙芝居?これを見せる為に私を呼んだの?」
「そうだ……」
それ以上バーンは何も言わず目を閉じる
「……」
レミリアもバーンの様子から冗談ではなく意味が有っての事だと察し、バーンの隣に座って紙芝居を見始めた
「……!!」
(これ……幻想郷に来る前のバーンの……)
すぐに理解したレミリアは真剣に紙芝居を読み進める
「……」
話がバーンと勇者の最終決戦に来た時だった
「……読んで」
紙芝居をバーンに手渡した
「……自分で読め」
だがバーンは受け取らない
「これは貴方の強さだけじゃなく敗北も伝えてしまう物……」
「……」
レミリアの言葉を黙って聞き入る
「ロン・ベルクから聞いてはいたけど……勇者との決戦では敗北よりも二度と戻れない魔獣となる事を選んだ貴方がそれでも伝えたい相手が居る……だから見ていなかった私に見て欲しくて今見せたんでしょ?」
「……」
バーンは目を閉じ聞き入るのみ
「せっかく生きてここに居るんだからここから先は貴方が読んで聞かせて?」
「……」
「お願い……」
レミリアの頼みに根負けしたのか
「……よかろう」
観念して紙芝居を手に取った
「刮目して見よ……」
コーセルテルの月が放つ月光は柔らかく
二人の時を優しく照らした……
翌日・夕食の時
「ど……どう?」
作った料理を食べる皆にレミリアは聞いた
「……うん、食べれる」
皆は頷いた
「よし!」
レミリアはガッツポーズをして喜んだ
「何喜んでんだ……食える物を作れる最低限になっただけだぜ?この程度じゃハドラーや咲夜の足元にも及んでないってのに」
「まぁそうだけど……でも考えてみて?食殺が可能なマイナスレベルだったのが普通に食べれるレベルまでなったのよ?凄い躍進よこれは」
「そうだけどさ……まっいいか、レミリアも喜んでるし」
言うのも無粋だと素直に食事を始める
「どうよ!私がその気になれば料理くらい簡単に出来るのよ!褒めなさい私を!」
レミリアが皆に言う
だが調子に乗ったレミリアをウザく感じた魔理沙はすぐ言った
「褒めるならハドラーだろ」
ポツリと言って食事を続ける
「そうね、ハドラーが教えるのが上手だったからここまでレベルアップ出来たんだろうし」
「お前に褒める所なんて強いても無いよ」
「カリスマ(笑)ねぇ」
パチュリー、妹紅、紫も呟く、美鈴は言ったら命がヤバイので無言
「なっ……!?」
言いたい放題言われて怒り出しそうなレミリアだったがハドラーに止められる
「こいつらの言う通りだ、お前は料理を作る最低限を習得したに過ぎん、その半人前以下のお前が料理が簡単などとよくほざけたものだな……料理に対しての侮辱か?なら許さんぞ」
「……悪かったわ、嬉しくて調子に乗ってた……侮辱するつもりは無かったのは信じて」
「ならばいい、僅か2日の料理修業だったが形にはなった、一応は卒業としてやろう、料理のレシピ等は咲夜に伝えてある、これからはオレの教えた基礎を元に腕を磨けレミリア」
「わかったわ!」
それから後は何事も無く夕食は済んだ
コーセルテルから離れた平地
「お待たせしましたバーン様、ジゼルを寝かし付けるのに苦労しましてな」
「構わん、既に用意は出来ておる、人払いの術式に固有結界……力を解放しても月の精霊にも誰にも気付かれん、これで気にせず暴れられよう」
対峙した二人の元王
「ありがたい……ハアアッ!!」
ドンッ!
全身から闘気と魔力を爆発させる様に解放させるハドラー
「見せて貰おうか……今日まで培ったお前の力を……」
ハドラーとは対称的に静かに魔力を解放するバーン
睨み合う二人だがその目に憎しみは無い、ただハドラーは戦士の誇りに輝きを戻す為に、バーンは輝きを与える為に戦うのだから
「いざ……!!」
ヘルズクローを構え
「ウオオオオオッ!!」
バーンへ飛び込み爪を殴る様に突き入れた
ドオッ……!
衝撃が突き抜ける
「ふむ……確かにレベルアップはしているな」
「ぬ……うぅ……!?」
ヘルズクローはバーンの胸で止まっていた、刺さらなかったから衝撃だけが突き抜けたのだ、かなりの衝撃だった筈だがそれもバーンには効いていない
「クッ……!?」
距離を離すハドラーだが早くも冷や汗を滴らしていた
(食事の際に話は聞いたが……アレが若さを取り戻し、魔獣と化した鬼眼王の力か、オレが最後に戦った老人の時とは比べ物にならん強さだ……)
体感した恐るべき力に戦慄を感じたのだ、それだけならまだ良い
(これでまだ全力を出していないのだからな……まったく底知れぬ方だ)
まだ力の全てを出していない事にバーンの偉大さを改めて思い知る
「どうした?終わりかハドラー?」
そんなハドラーにバーンはからかう様に問う
「まさか……勝てぬまでもせめて一矢報いて見せましょう!」
闘気を更に高めて構える
「……一矢……か」
バーンはハドラーの気概を感じながら見据えて考えていた
(少々……灸を据えねばならんか)
わからぬ様に魔力を飛ばすとその瞳を冷たくしていき、突撃してくるハドラーを迎え打つ
「ガァハッ!?」
魔族の青い鮮血が舞う
「グッ……オオオッ!!」
ボギャアッ!
「ウガアアアアッ!?」
折れた左腕を押さえるハドラーの前には手をかざしたバーン
ドウッ!
暗黒闘気の塊がハドラーを打ち飛ばす
「グハッ!?ハァッ……ハァッ!?」
立ち上がったハドラーは左腕を回復させると両手に熱の魔力を集中させエネルギーのアーチを作る
「ベギラゴン!!」
強力な熱の呪文がバーンに向かう
「余が授けた呪文をここまで高めたか……」
熱はバーンの放った呪文に遮られた
「ウウッ……か、カイザーフェニックス……!?」
眼前に優雅に立つ不死鳥にたじろぐハドラー
(つ……強過ぎる……)
ハドラーはバーンに一撃も与えられていなかった
何をしてもバーンに潰され逆に打ちのめされていた
「……つまらんな」
不死鳥を消したバーンが言い放つ
「……何だと?」
「つまらんと言ったのだハドラー、お前はつまらん」
「どういう事だ!」
怒りを滲ませハドラーは問う
「お前が勝とうとしないからだ」
ハドラーはギクリとしたがバーンを睨む
「余とお前に広がる力の差……これはお前だけでは埋めようのない絶対なる差だ、それはお前もわかってはいよう?」
「……それがどうした?」
「そこだハドラー……お前は力の差を理解していたから勝とうとしない、負けて当然と思っている……だから一矢報いるだなどと腑抜けた事を抜かすのだ」
「……!!」
「失望したぞハドラー……お前は弱くなった」
「ち、違う……オレは……!」
「お前の戦士の誇りとはその程度だったか」
「違うッ……!!」
酷く狼狽えるハドラー
その時だった
「ハドラー様……?」
一人の子竜が結界に入ってきた
「ジゼル!?」
入ってきたのはジゼル、とても心配そうにハドラーを見ていた
「ハッハッハ……お前の動揺を感じて娘が見に来るとはな、情けない所を見られたなぁハドラー」
笑うバーンを尻目にハドラーはジゼルに近付く
「何故来た……いや、来れた!」
この場所は人払いの術式をしている、人払いとあるが竜も例外ではない、なのに来れた事が不思議でハドラーは問う
「誰かに起こされて……それよりハドラー様……」
ジゼルは辛そうにハドラーに問うた
「大丈夫ですか?」
「!?」
それがハドラーを強く打ちのめす
(そんなにか……今のオレはジゼルに心配される程に弱く、情けなく見えるのか……)
娘に心配させてしまった事が不甲斐なく顔を下げる
(情けない……確かにバーン様の言う通りオレは勝てないからと日和った……こんな気構えで戦士の誇りとは確かに笑われるか……)
同時に体の底から沸き上がるものがあった
(許せん……!!)
怒り
それもバーンにではなく自分自身に対する怒り
弱くなった自分が許せれなかったのだ
「ハドラー……様?」
「……もう心配要らんジゼル、オレは大丈夫だ!」
立ち上がるとバーンに叫ぶ
「許されよバーン様!オレは戦士の誇りを無くしていた!それで戦士だなど笑われて当然の事!オレから願い出た事だが礼を欠いた事をお詫びする!」
「フッ……ようやく気付いたか」
「ええ……気付かされた、貴方と……ジゼルに!」
闘気を高める
「今一度願う!よろしいか!」
「来いハドラー、お前の全てをぶつけてみろ」
「感謝する……!」
ハドラーがヘルズクローを構えた時、ジゼルが動いた
「ハドラー様!」
ジゼルがハドラーと共鳴しハドラーの力を一気に高める
「それが噂に聞く火竜術か、それがお前……いや、お前達の全てと言うわけか」
「……そうだ、だが……ジゼル!!」
ハドラーが一喝すると驚いたジゼルが竜術を解いた
「これはオレの戦いだ!手出しは無用!」
あくまで一対一で戦うと言うハドラーにバーンはフッと微笑んだ
「親よなハドラー……子の前では強く大きくあろうとする、越えるべき頂を示し、成長を促す為に父の背を目に焼き付かせるか」
「フッ……それもありますがやはり勝負を望んだ以上オレ一人でなければ失礼に当たる、それ以上にオレの誇りがそれを許さない!」
「余は構わぬが?」
「ご冗談を……」
ハドラーは微笑むと
「オレを舐めるなぁ!バァァァァン!!」
武人が出した咆哮は凄まじい覇気を全身から放ちバーンに向けられる
「ウオオオオオオオオ!!」
全てを右腕のヘルズクローに込める
「超魔爆炎覇……!」
気迫を込め、仕掛けてくる技を前にバーンも体に力を入れる
「よかろう……お前の誇りに輝きを与える為には余も奥義を持って応えるしかなかろう」
スゥゥー……
流麗に動かされた両の腕が定められた場所で止まり
その構えは完成された
(こ……これがそうか!?ダイ達を苦しめ……あのポップが命を懸けてようやく破れたと言われるバーン様の最強の技……!)
その構えを直に見たハドラーは戦慄に近い恐れを抱く
(天地魔闘の構え!!)
見るだけで恐ろしさが痛い程わかる、培って来た戦士の本能が挑むなと警鐘を鳴らす程に
(それがどうした!だからなんだ!今までが勝てないのなら……今……勝つのだ!!)
更に高まる闘気
「ゆくぞぉ!!」
飛び込むは元魔王
「来い……ハドラー!!」
迎え打つは元大魔王
「超魔爆炎覇!!」
「天地魔闘!!」
両雄の誇りがぶつかりあう……
「流石の強さですなバーン様……」
仰向けに倒れるハドラーは呟く
「当然の結果だハドラー、まともにやれば竜魔人のダイですら敵わんのだ……それに今はあの時よりも強い」
見下ろすバーンが答える
「勝負にもなりませんでしたな」
「確かにな……だが……余は安心しておる」
「安心……?」
「料理や子育てにかまけて武人として脆くなっているのではないか……とな、お前の持つその尽きることを知らぬ覇気と強さのみを信じる心に揺らぎを感じていた」
「だからオレを怒らす様な事を……」
「結果は満足だ、覇気があるところが見れて余も安心しておる」
「……」
「輝きは戻ったか?」
「ええ……戻りました……感謝します、バーン様……」
ハドラーはゆっくりと体を起き上がらせる
「ハドラー様!大丈夫ですか!?ハドラー様ぁ……!」
ジゼルが抱き付き涙を流している
『なんて無茶を……ジゼルに謝ってください!』
内なる聖母竜も怒っている
「ジゼル……お前の目にはオレはどう見えた?」
「か、かっこうよかったです!」
「そうか……」
頭を撫でるハドラーは清々しい顔で笑っていた
「ジゼル嬢にも焼き付いた事だろう……父の強く大きな姿がな」
(そうか、ジゼルを呼んだのはバーン様だったのか……これを見越して……まったく、敵わぬわこの御方には……)
そのまま夜の決闘は終わりを迎えると思われた
「これが男の世界って奴なのね……まったく野蛮ねぇ……」
否、終わらない
「レミリア……」
最後の来訪者はレミリア、手に包みを持って現れていた
「何故ここにお前が?」
「ちょっと用事をしてたらその子が出ていったのを見かけたから着いてきたのよ、私くらいになれば人払いなんて効かないから隠れて見てたのよ」
そう言ったレミリアは包みを開きバーン達に差し出した
「私が作ったの、食べて」
「これは林檎の菓子か」
包みの中は切り分けられたアップルパイだった
「レシピを見ながら作ってみたのよ、バーンと食べるつもりだったけど二人も食べて良いわよ」
3人はアップルパイを一切れずつ取り口に入れた
「!……やるなレミリア」
「美味しー!」
ハドラーとジゼルが褒める
「どうバーン?」
肝心のバーンに感想を聞く
「……美味い」
バーンも素直にそう言った
「よかった……」
満足したレミリアはまだ涙の跡が残るジゼルの傍に向かう
「貴方達の矜持を否定するつもりはないけど子どもを巻き込むのは感心しないわね、貴方もそう思うでしょ?」
「ちょっと怖かった……」
「そら見なさい、目標を掲示するのも良いけど方法を考えなさい」
「ムゥ……」
「それに……」
説教が始まりバツの悪いハドラーを見かねたのかジゼルがレミリアに言った
「レミリア!」
「なに?」
「レミリアうー!ってして!」
「!?誰からその事を聞いたの!?」
「咲夜ー!」
「お仕置き不可避ね……」
「してー!」
「やらないわよ……」
「してよー!うー!ってしてー!」
「やらないって……」
「してー!してー!」
ジゼルの終わらないおねだりに観念したレミリアは
「……わかったわよ」
しゃがんで頭を両手で押さえるカリスマポーズを取り
「うー!」
おねだりに応えた
「ハッハッハ!意外に子煩悩でありますな奥方様は!」
「余も驚いている、お前が子どもをあやすとはな」
「……死にたいのかハドラー……?」
笑う二人と恥ずかしくて怒るレミリア
「して、御二人の子はいつですかな?」
「な……ななっ!?」
ハドラーの問いに顔を真っ赤にするレミリア
「まだまだ先の話だ、如何に歳が600と言えどこの体型ではな……後1000年は先だろう」
「待ち遠しいですな」
ハドラーのなんの気ない言葉
「……そうだな」
今はそう答えるしか出来なかった
「その時はオレが子育てのなんたるかを教授して……」
「ハドラァァァ!!」
「ゴフッ!?」
そして夜は終わりを迎えた……
「世話になったハドラー、礼を言う」
「礼を言うのはオレの方です……向こうでも壮健を祈っております」
スキマを背にしたバーン達とハドラーが別れを告げる
「レミリア、オレが教えた事を忘れず精進しろ」
「わかってる、次は貴方が驚いて鼻水垂らすくらいの料理を作ってあげるわ」
「抜かしよるわこやつ……」
「……ありがとうハドラー」
「フッ……元気でな」
二人は握手し微笑み合う
「またねジゼルちゃん!」
「次はあたいの子分にしてあげるわ!」
「じゃあね!」
「うん!大ちゃん!チルノ!フラン!みんなー!」
ジゼルが手を振る
「おーい誰かこの鼻血垂らした屍どうにかしてくれよー」
「レミィの料理を食べた後から鼻血が止まらないらしいのよ」
「なんだそりゃ……」
「我が生涯に……一片の悔い無し……」
鼻血を垂らした咲夜を介抱しながらスキマに入る妹紅達
「ではなハドラー……さらばだ」
バーン達も入るとスキマは閉じられ、コーセルテルからバーン達は消えた
「さらばです……バーン様……」
ハドラーの言葉を最後に
僅か2日の料理修業は終わりを告げた
途中・スキマ内
「……」
バーンは無言で物思いに耽っていた
(ハドラーが余と連絡が取れなくなって数年と言っていた、そしてレミリアが言っていたアバンに対する年月の差異……)
感じていた違和感
(……あの世界はやはり平行世界なのだろう、聞けばあのハドラーは余の敗北の後からそう月日が経っていない、こちらでは100年も前の事なのにだ)
時間と事象の違い
バーンにとっては100年だがハドラーにとっては数年、それに起こっていた事柄に違いもある、これらから導きだされた答えはあのハドラーは平行世界のハドラーだと言う事だった
(限りなく余の世界に近い存在ではあるが……余の世界のハドラーは死んだままか……)
事実に目を閉じる
(それでもアレもハドラーには変わらん、有意義な時を過ごせた事を感謝するとしよう……)
幻想郷に繋がるスキマが開かれる
(スキマを平行世界に繋げた……何者かの意思に……)
バーン達は幻想郷へ帰って行くのだった……
紅魔館・図書館
「出来たわよ」
レミリアが机にアップルパイを置く
「またアップルパイかよ……美味いし紅茶に合うから良いけどさ……」
「お菓子はこれしか作れないもの」
「料理の方は?」
「咲夜が暗記してるんだけどずっと寝込んでるからまだね、鼻血が止まらないらしいわ」
「クビにしろそんなおかしなメイド……」
紅魔館の日常は続く……
後編になります。
許可を得ているとは言え勝手やり過ぎたかもしれません……私的には満足ですが……
ちなみに……ロンの魔包丁(攻撃力+75)ぐらいですww
何はともあれコラボを出来た事に感謝です!ウジョー様ありがとうございました!
次回はコラボ編第二弾!挿絵も書いてくださった根無草様の作品「東方怪異譚ーLegend of vampireー」とのコラボです。
次回も頑張ります!