東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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第56話 幻憶

 

 

 

ーーこの時より何年、この先何年経とうとも

 

 

      ずっと覚えていてくれ

 

 

         また……思い出してくれ……ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかもわからないある日の事

 

 

「……」

 

バルコニーの椅子に座る男は思い返していた

 

(夢現の日を乗り越えてからの日々は楽しき時の連続であった……)

 

脳裏に浮かぶ出来事

 

(ハドラーとの再会、怪異の王との平行を越えた邂逅……どれも優劣つけれぬ至極の一時……)

 

男は幻想郷の空を見上げる

 

 

(素晴らしき2週間だった、時を忘れる程に……)

 

 

(そして残る2週間……これもまた1つを除けば大きな事は無かったが実に有意義な時だった、勿体無いくらいに……)

 

 

立ち上がった男は流れる雲を見ながら起きた出来事を思い返す

 

(色々とあった……楽しき時だった……お前達もそう思うだろう?)

 

想い溢れる男に背後から声が掛かった

 

 

「バーン!!」

 

 

その声にゆっくりと振り返った男は視界に映る7人を見ながら微笑を向ける

 

 

(友よ……)

 

 

その男はかつて大魔王と呼ばれた魔族の大いなる王

 

 

勇者に敗北した彼は運命に引かれてこの地、幻想郷へ迷いこんだ

 

その後、紆余曲折を経て出会った運命の友と仲間の為に戦い、幻想に消える……

 

 

 

そして100年もの月日が経ち、彼の守った幻想郷にまたも危機が訪れた

 

意思を継いだ者達の奮闘虚しく敗北を喫し死に瀕する

 

だが消え果てる事のなかった彼への想いが奇蹟を起こした

 

再誕せしかつての大魔王は幻想ノ王と新たに名乗り

 

帝王の具現した夢と戦い、幻想郷中の絆を集め、撃退する

 

 

 

だが終わってはいない、終わったのは夢だけ

 

 

 

夢の後に残されたのは心を満たす幸福感と……

 

 

追いたてる様に奏でる一月の幻葬曲……

 

 

 

ここよりは幻想ノ王の見た追想の時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「いい加減あの墓を片付けてはどうだ?」

 

バーンは魔導書を読みながら不意に言った

 

「余はここに居るだろうに……」

 

図書館にはまだバーンの墓があった

 

今はスカーフも置かれていないただの墓、しかし何故か毎日こあが手入れしている

 

「面倒なのよ、あんな重たい物片付けるの」

 

同じく魔導書……ではなく小説を読むパチュリーが素っ気なく答えた

 

「お前には魔法があるだろう」

 

「あるわね」

 

促しを含んだ言葉もパチュリーは無視する

 

「……まぁここの主はお前だ、お前がそう言うのならこれ以上は言わぬが……」

 

バーンも片付ける気の無い図書館の主にそこまで強く言わなかったがすぐに次の問いを紡いだ

 

「お前達……修行はせんのか?」

 

それは7人の生活について

 

「休養にしては長過ぎだろう」

 

夢現の日が過ぎてから2週間、7人が修行しているところは見ないし隠れてやっているとも感じられない

 

怠けている様には感じられないがそれが気になった

 

「そのうちするつもりよ」

 

だがパチュリーから返るのは意思の感じられない生返事

 

「……」

 

そう言われてはバーンは何も言えない、無理強いして修行などしても効果はたかが知れている、本人が強くありたいと願いながらするから一番効果が発揮されるのだから

 

「そうか」

 

故にそれだけ言うとまた魔導書に意識を戻した

 

 

それから一時間もした頃だった

 

 

「文の新聞来てたぞ~」

 

妹紅がチルノと大妖精と魔理沙を引き連れて現れた

 

「またろくでもない事書いてるんでしょ?」

 

パチュリーが聞くと妹紅が読み始めた

 

「だろうな……えーと……」

 

新聞を広げた妹紅が見出しを見て顔をしかめた

 

「またか……次は焼き鳥って言ったんだけどな……」

 

そう呟くと新聞を机に放った

 

「って事はまた書いたの文?」

 

事情を知るパチュリーが新聞を見る

 

「「偽大魔王の影!?」……なるほどね、偽と付けて別の事だって言い逃れするつもりなのね」

 

「どうしようか?」

 

「とりあえず焼けば良いと思います!」

 

妹紅の問いに大妖精が答える

 

「懲りてない人にはお仕置きです!」

 

頬を膨らませながら言うのは良いが妹紅の脅しとは違ってとりあえず鳥だから焼くと言う発想を当然の様に提案する恐ろしい大妖精

 

「羽、毟っちゃえ!」

 

チルノも酷い事を提案するが流石に頭の悪いチルノでもそれはしない、だから冗談、もっとも大妖精の提案の本気は察してはいないが

 

そこにバーンが興味を示して話に入ってきた

 

「偽大魔王とはどういう事だ?言い逃れと言うからには前に同じような事があり、内容は同じ事だと察するが……」

 

「私も気になるぜ、なんだ?偽大魔王って?」

 

「ああそうか、アレはダイと出会って皆に紹介しに行った後の頃だったから死んでた魔理沙も知らないよな……」

 

話そうとした妹紅は寸前に鼻で笑った、それを見て大した事ではないのだろうと二人は思うが聞く意思を見せる

 

「いやな?その頃に1つの噂が流れたんだよ」

 

「噂……どんな?」

 

「今になったら笑っちゃうんだけど「迷いの竹林に大魔王らしき人影を見た!」ってな」

 

「……お前居たの?」

 

「居る訳がなかろう……」

 

「知ってる……それで?」

 

「今の魔理沙と同じで居る訳無いって知ってる私達は見間違いか何かと思って放っといたんだよ、でも決まって満月の夜に目撃されるようになってさ、そしたら文が……」

 

「ああ……書いたんだろ?テキトーな出鱈目記事を?」

 

「そっ!大魔王復活!とかそんなんだったな」

 

「それでお前が皆を代表して怒りに行った訳か」

 

「そういう事、あんまりふざけた事書いてると焼き鳥にするぞ!ってな」

 

「なるほど、では今回のそれは洒落であろうな、余が居るのに書いたのならそういう事だろう……これぐらい笑って済ませるでしょう?とな」

 

「だろうけどさ……」

 

妹紅は文の「これぐらいで怒るんですかぁ?洒落ですよ洒落!胸と同じく小さいですねぇ」と言っているウザそうな顔を思い浮かべた

 

「よし焼こう」

 

炎が燃え上がる

 

「放っときなさい、洒落のつもりなら文はあの風のマントを着けて逃げるに決まってる、アレを着けた文はフランでも捕まえられないんだから無理よ、それにバーンが居るのに誰も信じやしないわ」

 

記事を読みながら言うパチュリーはふと気になって妹紅に尋ねる

 

「確か噂って3ヶ月前くらいからだったわよね?」

 

「それくらいだったな」

 

「一月に一回の満月の夜に2回、それで3回目はエスタークが干渉してきた最中、それが今回の記事……そして今日は満月……」

 

「今日出るかもって事か?」

 

「満月の夜に出るならそうなるわね、信じないから見に行かないけどそれより妹紅、貴方迷いの竹林に住んでるんでしょ?満月の夜に何か見たり感じないの?」

 

パチュリーの気になる事はまさにそれ、迷いの竹林に住んでる妹紅が偽大魔王を見ていないのが気になっていた

 

「特に何もないけどな……あ、でも芝居がかった変な声は聞こえたりしてたな、すぐに止むし見に行ったら誰も居なくて、それで誰かを見たと言うなら慧音は見たな、戻ったら家に居たり竹藪から出てきたり……」

 

「……ならただの噂じゃないからしら?妹紅が見てないのがおかしいし」

 

「だろ?もし居たとしたら多分今夜文が張り付いて正体暴くだろ……それよりさ!」

 

妹紅が急に楽しそうに切り出した

 

「慧音で思い出したけど今日の夜、寺子屋で演劇をするんだってさ!皆で見に行かないか!」

 

とっても行きたそうにはしゃいでいる

 

「あたい行く!」

 

「私も行きます!」

 

チルノと大妖精は参加

 

「私も行くぜ!」

 

「私はそんなにだけど皆が行くなら良いわよ」

 

魔理沙、パチュリー参加

 

「レミリアとフランは寝てるから後で聞くとして……バーンはどうする?」

 

「興味は無い」

 

バーンは断った

 

「えー!バーン行かないのー!」

 

「行きましょうよー!」

 

チルノと大妖精がねだる

 

「子どもの劇を楽しむ歳でもあるまい、ここで居る方が余程退屈せずに済む」

 

「まぁそう言わずにさ、一緒に行かないか?」

 

「わからんぜ~?もしかしたらめちゃくちゃ面白いかもしれないぜ~?」

 

妹紅の誘いに魔理沙も乗る

 

「行こうよバーン!ねぇ!」

 

「お願いします!何でもしますから行きましょう!」

 

「……」

 

二人の妖精に引っ張られるバーンは観念した様に言った

 

「よかろう……」

 

「やったわね大ちゃん!あたい達サイキョー!」

 

「そうだねチルノちゃん!」

 

キャッキャと喜ぶ二人を見てバーンもそんなに嬉しいのなら良いかと頬を緩ませる

 

「よし!ちなみに演目は知らない、見てからのお楽しみだよ、なんか私達には知らせないようにしてたらしいのが気になるけど」

 

「知らせないように?」

 

「ああ、なんか誰に聞いても演劇自体無いみたいな言い方されるんだよ、さっき偶々人里で聞いて初めて知ったんだ」

 

「それが本当なら気になるわね……」

 

「まぁ行ったらわかるだろ」

 

「そうね、それにしても夜にするなんて変よね、寺子屋の演劇なんだから普通は昼間でしょ?」

 

「それも含めて楽しみにしてようぜ」

 

「夜まで何する?」

 

「麻雀でもするか?」

 

「チルノが出来ないじゃない、バ……役も点数計算も出来ないのに……チェスは?リーグ戦でもする?」

 

「それこそお前とバーンとレミリアしか出来ないだろうが!一人でやってろ!」

 

「……じゃあトランプ?ババ抜きでもする?」

 

「ババ抜きって……お前ら全員ババァじゃねぇか!私とバーンしか出来ないだろうが!」

 

「……消していい?」

 

「許可する、つーか消せ!さりげなく自分をババァ扱いしてないのが腹立つ……中身は100近くのババァのくせに」

 

そんな事を言い合いながら結局は雑談になる

 

この所ずっとこんな調子なのだ

 

 

「……」

 

バーンは魔導書を下ろしそれを眺める

 

(そうか……)

 

それがふとわからせた

 

(お前達が修行をしないのは……)

 

ほぼ絶える間もなく友が居る理由を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

「これとこれと……あっ!これも要りますね」

 

ゴソゴソと準備をしてる者が居る

 

「何やってんの?」

 

そこへやって来たにとりが覗きこむ

 

「あ、にとり!……張り込みの準備です!」

 

文は大きなリュックを見せつける

 

「張り込み?誰の?」

 

「偽大魔王ですよ!今日は満月!確実に証拠を押さえる為に今から竹林籠りです!」

 

「ああ、偽大魔王ね……あっそう……ふーん……」

 

「……もしかして何か知ってます?」

 

「いんや何も……ねっ!ロビン!」

 

「シラナイ!シラナイ!」

 

「……?」

 

何か明らかにおかしい態度だったが文は気にせずリュックを背負って浮かび上がる

 

「では行ってきます!」

 

「はーい、いってらっしゃーい」

 

手を振ると文はすぐに見えなくなった

 

 

「……」

 

文が飛んでいった空を見つめていたにとりの口元が緩む

 

「知ってるよ~」

 

ロビンに乗りながら呟かれる

 

「偽大魔王の正体をね~偶然だったけどね~」

 

気分良く森の中を進む

 

(口止めされてるから誰かは言わないけど……残念文!偽大魔王はそっちには現れないよ、今日は違う場所なんだよ)

 

研究室へ戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜 人間の里・寺子屋

 

「入れた入れた!」

 

妹紅を先頭に用意された椅子へ座り開始の時を待つ8人

 

「お菓子あるわよ!」

 

「気が利くな親分、だけど飲食禁止だ」

 

「なんで!?」

 

「そりゃ寺子屋だからな」

 

「意味わかんない!あたいは食べるわよ!」

 

「あたしも食べるー!」

 

「やめなさいチルノ、フラン」

 

「ダメだよ!」

 

「食え食え!」

 

「やめなさい魔理沙、そうルールが決まっているのなら従うのが貴婦人の振る舞いよ……好き勝手するのは傍若無人、不自由の中でも気高く優雅に……それがカリスマのコツでもあるわ」

 

「いや、私婦人じゃねぇし……そのカリスマ貴婦人のレミリアに聞きたいんだけど、うー!って言うのもカリスマなのか?」

 

「皆……やっぱり消しましょう」

 

ワイワイと雑談をしながら待っていると明かりが消えた

 

「始まるようだな」

 

バーンは頬杖を着いて決して楽しくはないだろう子どもの劇を観賞を始めた

 

 

 

 

 

「……大した奴だ…… 心底……!!」

 

垂れ幕が上がった場所に居たのは仮装したやたらガタイの良い人間のお婆ちゃん、おそらく劇の協力者、子どもは少し離れた場所で自作した紙の剣やらを装備してお婆ちゃんを緊張した表情で見ていた

 

「……ふ………ふふふ……」

 

倒されているように見えるお婆ちゃんが低く笑う

 

(話の脈絡が無い、説明も無し……つまりこれは続編か、1つの物語を分けて披露しているのだな、なるほどそれでか……よく練習されておる、完成度を上げる為に時間を掛けたのがあの人の子の表情と仕草に顕著に表れておる)

 

子どもの劇にしては中々……

 

そう評価したバーンは次のお婆ちゃんの台詞で眉を顰める事になる

 

 

「あやうく「様子見」で死ぬところだったわ……!」

 

 

(これは……)

 

バーンには聞き覚え……いや、言い覚えがあった

 

「十二分に評価しているつもりでも……さらにその上をお前はいきおった」

 

(まさか……)

 

「このまま殺されてはたまらんよ……くっくっ……!……一応……」

 

(この老婆の役はまさか……)

 

 

「この肉体が本体なのでな……!!!」

 

 

(余か!?)

 

 

お婆ちゃんの演じる役が自身だと知った

 

 

「……余は……!限りなく永遠に近い生命を得るために自らの肉体を二つに分けた……!」

 

「叡智と魔力のみを残したこの肉体をベースに……!若さと強さをもう一つの肉体に分離させた……!」

 

 

お婆ちゃんの迫真の演技

 

「そして皆既日食が来る度に凍れる時間の秘法をかけ全盛期の肉体を封印し続けてきたのだ……!!」

 

(……なるほど、全てが繋がった……満月の夜、偽大魔王、余等8人への幻想郷全体からの箝口令……)

 

察した時には始まる前までの退屈は無かった

 

 

「今それが一つに戻る……!!」

 

 

出番が最後だからか演技にも熱が入る!

 

 

「何千年ぶりだか……とうに忘れてしまったがな……!!!」

 

 

強烈な閃光(リグル協力と思われる)が放たれお婆ちゃんを隠す

 

 

「……なぁバーン、これってさ……」

 

準備の間に生じる時間の隙に気付いた妹紅が問う、他の6人も気付いている

 

「そうだ、これは余が幻想郷に来る直前の話……最終決戦の劇だ」

 

「やっぱりか……紙芝居から知ったのかな?」

 

「だろうな、箝口令を敷いていたのはお前達への配慮だろう」

 

「……私達が怒るかもしれないから?」

 

「そういう事だ、余の敗北の歴史を演じてはお前達も怒るだろうとわかっていたからこその箝口令だ」

 

「そう思うならやらなきゃいいだろ……」

 

「そう、やらなければよい、だが現にやっておる、その理由は妹紅……上白沢慧音にある」

 

「慧音に?」

 

「脅されてやらされておる、だからせめてお前達には知られないように苦心しての配慮だ」

 

「誰に脅されてんだよ……」

 

「脅してまでやる事がただの劇、考えれば予想は着くと思うが……ただ言えるのはこの劇に上白沢慧音は非常に合っており、立場もちょうど良かった…という事だ、脅した者達に悪意は無い」

 

「……」

 

「まぁ見ておれ、その意味はすぐにわかる」

 

バーンの怒っていない微笑に釈然としないままの妹紅が前を見ると閃光が治まり劇の続きが始まった

 

 

ゴゴゴゴゴ……

 

 

勇者と姫役の子どもの前に立つ背の高い女性

 

「け、慧音!?」

 

それは慧音、普段と違う満月の時の姿、白沢の姿

 

「……」

 

勇者と姫を一瞥した後、床に散乱する光魔の杖を模したと思われる道具を見る

 

ガシャ

 

「……もう必要ない」

 

踏み壊した光魔の杖の上で慧音は言った

 

 

「あ……合ってる……!」

 

思わず妹紅は漏らす

 

「ふっ……意味はわかっただろう?」

 

「ああ……あの角に長い髪……見比べるとお前によく似てる!」

 

「あれが上白沢慧音が脅された理由だ、白沢になった奴は若さを戻した余に似ておる」

 

「……あ!って事は偽大魔王って……」

 

「そう……偽大魔王の正体は上白沢慧音だ、おそらく奴は劇の練習の為にあまり人が来ない迷いの竹林を選んだのだ、お前に会いに行くついでに……それが偶々目撃されて噂が立ったのだ」

 

これが偽大魔王の真実であり、満月の夜に劇が行われる理由

 

劇の練習の為に練習していた慧音が満月の夜に目撃されたのが原因だったのだ

 

いつも練習していたが元々人通りがほぼ無い迷いの竹林の中であったし居るのは妹紅くらい、普段から会っている妹紅なら遭遇しても会いに来たと言えば友である妹紅に疑う理由は無い

 

「なるほどな……」

 

疑問が一挙に解決した瞬間だった、ちなみににとりは満月の夜に散歩してたら偶々練習中の慧音に出くわしていた

 

「……やり過ぎてしまうかもしれん」

 

声色も変えている慧音の演技

 

「……凄いわね」

 

そのあまりの演技にパチュリーが呟く

 

「バーンの動きを完璧に再現してる……細かい仕草まで完璧に……動きを予測して練習しないと不可能よ……頑張ったのね、見た目も手伝ってバーンと間違えそうなくらいよ」

 

「ですね……慧音さん格好良い……!」

 

誰も怒ってはいなかった

 

それだけ慧音の本気が見えたから、魂の籠った演技がバーンを大事に想うからこそのものだとわかったのだ

 

「大魔王ケーネ……と言ったところか」

 

こうして生涯を振り返るのも一興だな……

 

そう思いながらバーンは最初の生涯を思い返しながら劇を楽しむ

 

 

 

劇も進み、魔法使いが天地魔闘の構えを破り、勇者が一撃を食らわせる所まで来ていた

 

 

 

(ようやく出番が来たものの……私のちゃんとバーンを演じれているだろうか?)

 

演じる最中の慧音は不安がいっぱいだった

 

(出来る限りはやったが……生徒に約束を破った責任を取れと言われて渋々承諾はしたがやはり自分ではわからないな)

 

「うおおおおーーーーっ!!?」

 

反射されたイオナズンっぽい物とモコウフェニックスの直撃を受けた慧音は妖力をそれっぽく見せながら苦しむ

 

(後は勇者の攻撃を受けたら終わりで次に続く……次がラスト、最後まで妹紅達とバーンにバレなければ良いが……)

 

「この大魔王バーンを舐めるでないわーーーー!!」

 

妖力を吹き飛ばした様に見せて慧音は構える

 

上手くいく筈だった

 

「……」

 

いつも通りならば

 

「……!?」

 

しかし不測の自体とは不測故にいつ起こるかわからない

 

「!!?」

 

吹き飛ばした瞬間、慧音の視界には入ってしまっていた

 

(バーン!?)

 

観客の中でも一際目立つバーンが

 

(何故バーンが……妹紅達も居る!?バレていたのか!!?)

 

内心慌てる慧音の前には剣を構えて飛び込んでくる子どもが既に居た

 

(うっ……くっ……!?)

 

致命的なミスだった

 

台本通りなら勇者の一撃を受けて腕が飛んでその後少しだけ進めて終わりの筈だったのだ

 

ゴンッ……

 

混乱した慧音の腕が反射的に拳骨を食らわしていた

 

「あ……」

 

時、既に遅し

 

勇者役の子どもは倒れて気絶していた

 

 

ざわ……ざわ……

 

 

場内がざわめく

 

「これアクシデントだよな?」

 

「そうね、紙芝居の流れではここでバーンの腕が両断されるから……さっき動揺したように見えたから慧音のミスね」

 

「どうすんだ?気絶してるぜ?」

 

「中止ですかね?」

 

各々話し合う中

 

「中止かぁ……残念だな、バー……」

 

妹紅が振り向く

 

「……ン……?」

 

そこにバーンは居なかった

 

「あれ?どこ行ったんだ?」

 

首を傾げた瞬間

 

 

「フッフッフ……」

 

 

場内に薄気味悪い声が響く

 

「なんと情けない勇者か……余の名を語る偽物にも勝てんとは……」

 

ステージの奥からゆっくりと現れる謎の人物

 

「そうは思わんか……?」

 

今や誰でも知っている

 

 

「なぁ……?大魔王ケーネよ……」

 

 

この劇の元になった人物

 

「バ……バーン……!?」

 

それは見紛う事なきバーンその人だった

 

「あいつ乱入しやがった!?」

 

7人が一番驚いている

 

「助け船を出したんだよ!劇を続ける為に!」

 

「いやいや!助け船にしたって無茶振り過ぎだろ!アドリブで続けろってのかよ!?」

 

「見ろよ!慧音の奴、突然のパルプンテで固まってるぞ!」

 

「ミスがとてつもなく恐ろしい者を呼んだ訳ね……慧音、恐ろしい奴……」

 

「あたいもやるー!」

 

「ダメだよチルノちゃん!抑えて!」

 

そんな7人とまだざわつき治まらない観客の前でバーンは続ける

 

「このまま伝説として静観していても良かった……だが偽物ごときにいつまでも調子に乗られるのは面白くはない……故に余、自らが手をくだしに来たという訳だ」

 

説明的に話されるアドリブ、だが本人との事実とその圧倒的な存在感から出される台詞は否応なしに観客をすぐさま魅了した

 

「……??」

 

慧音はピクリとも動かない、まだ混乱していて何も話す事もしない

 

「よし……こうなったら破れかぶれだ!行くぞ皆!合わせろよ!」

 

妹紅が立ち上がりそそくさと舞台裏へ向かう

 

「よくわからんが行くぜ!」

 

6人も着いていった

 

 

 

「クク……余りの出来事に混乱している様だな大魔王ケーネよ」

 

反応が無い事にバーンはアドリブの内容を早めた

 

「ではそのまま死ぬがいい」

 

手をかざし、魔力を見える様に手に集中させる

 

「貴様の無意味な健闘を称え……特別にコレを餞にしてやろう」

 

魔力が炎に変わり手を激しく炎上させる

 

「目に焼きつけて逝くがいい……これが……真の大魔王である余のメラゾーマだ……」

 

カイザーフェニックスを放たんと構える

 

 

「お待ちくださいバーン様……」

 

 

撃たれそうな不死鳥は舞台裏から聞こえる声に止められた

 

「……六魔王か」

 

バーンも予期していない更なるアドリブ、にも関わらずすぐに対応して見せる

 

「この程度の雑魚にわざわざバーン様が出る幕じゃないぜ!」

 

「ぶっ殺しだよー!」

 

ノリの良い魔理沙とフランが察してそれらしい感じを出す、感じ的には魔理沙が調子の良い中堅役でフランが戦闘狂属性だろうか

 

「あまり勝手しないでください……大魔王様自らが好きに動いたら困りますぅ」

 

「お陰でレミリア様も御心配で着いてこられました……もう少し自制して貰わねば軍にも影響が出てしまいます」

 

「べ、別に心配で来たわけじゃないんだからね!暇だったから来ただけよ!」

 

大妖精とパチュリー、二人は知的で血気逸るメンバーを押さえる参謀的な位置、バーンの六魔王発言でレミリアは勝手に妃扱いになった

 

「フッフッフ……すまぬなお前達よ、余とした事が少々大人気が無かった」

 

魔力を押さえたバーンが7人に振り向く

 

「と言う訳だ……偉大なるバーン様の名を騙る身の程知らずの愚か者、貴様の処刑は我等「紅魔六魔王」が執行する!」

 

リーダー格の妹紅が慧音に告げ、慧音にしか見えない様にウィンクして見せた

 

(……!!)

 

それでようやく慧音も落ち着きを取り戻した

 

(もう……どうにでもなれ!)

 

賢い頭脳が状況を瞬時に理解する

 

「フフフ……」

 

小さく笑い

 

「ハーッハッハッハッ!!」

 

高笑いをして

 

「私も随分と舐められたものだ……」

 

アドリブを開始した

 

「確かに私は大魔王バーンの名を騙っていた、御伽に語られる伝説の魔族の名を……まさか実在していたとはな……だが!」

 

先程までの呆けが嘘の様に口と体が動く

 

「数千年に渡り蓄えた私の力は既に伝説を越えている!大魔王バーン!貴様を葬り私が伝説と成ろう!」

 

自棄になったのも手伝って謎のアドリブは続いていく

 

「まずはお前等が相手か?よかろう、まとめてかかってくるがいい……雑魚の分際でつけあがるたわけ共に格の違いを見せてやろう」

 

魔力に見立てた妖力を高めて威圧する

 

「皆下がってなさい!あたい一人で充分よ!」

 

先頭に立ったチルノが慧音に指を差す

 

「まずはお前から死に急ぐか……」

 

「チルノ舐めんなよ!こいつは六魔王の中でも最弱……六魔王唯一の恥さらしたぁこいつの事だ!」

 

「そういう事よ!……マリサアトデコロス」

 

一番手はチルノ

 

「来い、新たなる大魔王の力、目に焼きつけて……死ぬがいい」

 

このまま勇者と姫を置き去りにした台本に無いアドリブバトルが始まるかと思われた

 

 

 

ーーーカイザーフェニックス……

 

 

 

目を奪われる美しき優雅な炎鳥が飛び立ち

 

「なんだとおおおっ!?」

 

慧音に直撃した

 

「バーン様!?何を!?」

 

流れに添わないアドリブに妹紅がバーンに問う、元からだが予測不可能

 

「大人気無いついでだ、許せお前達」

 

「……しょうがないですね」

 

大魔王ケーネは大魔王バーンによって倒された

 

「……勇者を起こせ」

 

六魔王が気絶した勇者を起こす

 

「……露払いは勝手ながら済まさせて貰った、これよりは余が大魔王ケーネに代わり相手を仕まつろう」

 

「えっ……うえっ……!?」

 

勇者は状況が飲み込めない、何せ起きたら慧音は倒されてて何故かバーンと頂点達が居て何故か相手をすると言っているのだから

 

「竜の騎士よ、その胸に刻み込むがいい……余が真のバーンだ、誇り高き魔族の真の王にして……この世界の覇者……!!」

 

身を翻すと続ける

 

「手負いをいたぶるはあまりに無粋、お前の傷が治り、力をつけた時が雌雄を決する時だ、いつでも来るがいい……余の城、「紅魔館」へ……!」

 

そして舞台裏へ消えていった

 

同時に幕が下り始める

 

 

 

戦っていた大魔王バーンはケーネが騙る偽物だった、勇者との死闘に突如現れケーネを倒したのは真の大魔王、バーン……

 

ケーネを越える強大な敵の出現に勇者は果たして勝つ事が出来るのか……

 

次回に続く

 

 

 

パチュリーのナレーションが入って劇は終わった、いや、終わらされた

 

 

ワアアアアアァ……!

 

 

同時に歓声が上がった

 

バーンの歴史の劇だったのが予想を越えての展開!まさかの本人に加え頂点達の出演!

 

凄いものが見れたと感激していた

 

次が有るという期待感を胸に満月の夜の劇は終わりを迎えたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽屋裏・もとい更衣室

 

「お前達なんて事をしてくれたんだ!」

 

カーテンから顔だけを出している慧音が怒鳴る

 

「劇に乱入して滅茶苦茶にした上に続くだなどと……!」

 

慧音は激怒していた

 

いくら自分のミスと言えどあれくらい中断してやり直せば良かったのだ、言わばバーン達の行為は大きな世話どころか大迷惑、怒るのは当然

 

「そんなに怒るなよ、好評だったろ?」

 

「そういう問題じゃない!勝手に続くなど言ってしまったから次からはオリジナルなんだぞ!それに流れ的にまだまだ続く感じだ……何故続くなんて言ったんだ!私達の冒険は終わらない!で終わりで良かったろうあんなアドリブ劇の最期など!」

 

「ハハハ……まぁ……ハハ……ドンマイ!」

 

「頭突くぞ妹紅!」

 

慧音は尚も文句ばかり言っている

 

「そこまで言うのなら使用料を頂けるか?上白沢慧音よ」

 

バーンの言葉が慧音を止めた

 

「使用料だと?」

 

「そうだ、余の歴史を断り無く使用したのだから当然であろう」

 

「いやしかし……お前は消えていたのだから許可の取りようが……」

 

「そんな言い分が通ると思うか?余が居なかったのであればレミリアに求めるのが筋であろう?だがお前はしなかった、覚悟は出来ていよう……?」

 

「……すまなかった、払おう……幾らだ?」

 

「お前は妹紅の友だ……そうだな100万円にしといてやる」

 

「払えるか!!」

 

100万とは現在の価値にして1億である

 

「ならば続けろ、嫌なら払うのだな」

 

「ぬぅ……!?」

 

苦渋の選択、これから続けるのであれば新たなストーリーを考えて練習もしなければならない、凄まじい労力、しかしだからと言って100万なんて今すぐ払えない

 

「……続けろ上白沢慧音」

 

諭す様にバーンは言った

 

「歴史をなぞるのでなく新たな道を作っていけ、既存の歴史とは既に変化無き終わっている事だ、それをなぞるのは誰でも出来る、新しい事に挑戦し、歴史に残す、苦難だがそれが今を生きる者達が持つべき気構えだ」

 

「……むぅ」

 

そう言われては慧音も突っぱねる訳にもいかず考えざるを得ない

 

「わかった……続けていこう」

 

続けていく事が決定した

 

「それは良いとして当然手伝ってくれるんだろう?あそこまででしゃばっておいてそれはないだろうな?」

 

「そこまでは知らんな、余もそこまで暇ではない」

 

「なっ!?バーン貴様!」

 

「私達もパス」

 

「なんだと!?ふざけるな!手伝って貰うぞ!」

 

「100万円払うなら構わんぞ」

 

「卑怯な!?」

 

「それよりお前いつまでカーテンに隠れてんだよ、服着てるだろ?出てこいよ」

 

「よせ!?やめろ妹紅!今はマズイ!」

 

「何慌ててんだ……よ!」

 

慧音は引っ張りだされた

 

「うわぁ……」

 

「あらあら……」

 

「似合ってる……」

 

「露出狂だったのか慧音……」

 

「くっ……デカイ……」

 

「まだ夏じゃないよー?」

 

慧音の姿に一同釘付け

 

「見るな!頼む見ないでくれ!」

 

恥ずかしそうにうずくまる、慧音は水着を着ていた

 

「あ、それ前に子どもに着せられるって言ってた水着じゃん、やっぱり似合うな」

 

妹紅には見覚えがあった、まだダイが居た時に慧音が子ども達にバーンの写真を見たいとお願いされて出来なければ着せると言っていたあぶな~い水着

 

「なんで着てんだ?子ども達もバーン本人に会えたから大丈夫なんじゃないのか?」

 

「これはバーンのせいだ!」

 

「バーンの?」

 

「バーンがカイザーフェニックスなんて撃つから服がほとんど焼けてしまったんだ!着替えなんて寺子屋に置いてないから仕方なくこれを着て皆が帰ったらこっそり帰ろうとしてたんだ!」

 

バーンのせいだと顔を真っ赤にして叫ばれる

 

「クク……これはすまぬな」

 

「コラ!なに鼻の下伸ばしてるのよバーン!」

 

面白そうに笑うバーンにレミリアが怒る

 

「うぅ……せっかく写真を見せれなかった責任を大魔王役で許して貰ったのに……」

 

「あ……脅されてたのって子どもにか」

 

「大魔王役をやるなら水着は勘弁してやると言われてそれを飲んだんだ……」

 

「お前も厳しいんだか甘いんだかよくわからない奴だよなぁ……」

 

 

そこには何でもない日常を楽しむ姿があった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷いの竹林

 

「……まだですかね」

 

文は朝まで張り込んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧音を家に送った後、8人は紅魔館へと戻る最中

 

 

「面白かったな!」

 

「そうですね!良い思い出が出来ました!」

 

楽しげに雑談しながら飛んでいく

 

「バーンはどうだったー?」

 

「それなりに楽しめた……次も見に行きたいものだ」

 

「行こ!絶対行こうねバーン!」

 

「そうだな……」

 

フランにせがまれるバーンは複雑に前を見る

 

「ダイは帰っちゃったけど……ずっとこんな日が続くと良いわね」

 

「そうだな、ダイは代わりにバーンを連れてきてくれた……」

 

チルノに問われて妹紅は夜空に願う

 

「ずっと続けば良いな……」

 

いつまでも……

 

「……」

 

聞こえていたバーンは何も言わず目を閉じるのみ

 

(…………)

 

何も言えずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特に何もない日常回です、でも確実に終わりに向かってます。

そういえば6月1日で一周年でした、前作から数えると一年半ですね、ふと思い出して続いてるなぁと自分でも驚いてます、気付けば前作合わせて10万UA!嬉しい限りです、読んでくれてありがとうございます!

後、3~4話くらいで最終回を予定しています、適当な作者なのでどうなるかわかりませんがそれぐらいです。

次回も頑張ります!
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