東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

54 / 72
第58話 夢幻

 

育んだ絆が強ければ強い程、失った時の悲しみは深い

 

どんなに想っても、もう帰ってこないから……

 

 

 

 

私達は出会うべきじゃなかったのかもしれない

 

 

 

 

あの日からどれだけの時間が経っただろう……

 

 

こんなに辛いのなら……最初から……

 

 

変わらず照り続ける太陽を見上げて

 

 

今はそんな事ばかり思う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「そろそろ帰るわね!」

 

チルノが立ち上がり、続いて大妖精、妹紅、魔理沙が立ち上がる

 

「そう、また明日ね」

 

「またねー!」

 

パチュリーとフランが手を振る

 

「気を付けて帰るのよ」

 

「うむ、ではな」

 

レミリアとバーンも見送る

 

「泊めてくれないか魔理沙?」

 

「いいぜ!一緒にお風呂入ってガールズトークでもするか!」

 

「今日も楽しかったねチルノちゃん!」

 

「そうね大ちゃん!明日は何するか一緒に考えよっ!」

 

4人が出ていった後、残る4人が居る図書館に暫しの沈黙が訪れる

 

それは苦痛な空間ではない、言葉はなくともそこに友が居るだけで充分だったから

 

だから各々が目を合わさず、異なる事をしていてもその口元は緩い放物線を描いているのだ

 

「ねぇバーン!」

 

小走りで寄っていったフランがバーンを覗きこむ

 

「今日は一緒に寝よっ!」

 

笑顔で言った後レミリアを見る

 

「良いでしょお姉様!」

 

「ダメ」

 

それは紅茶を飲んでいたレミリアに即座に一蹴される

 

「えー!良いでしょ!?お姉様ばっかりズルいよー!」

 

「ばっかりって……私も一度しか寝てないわよ……」

 

「良いでしょお姉様~!」

 

「ダメなものはダメ」

 

「バーン寝取らないから~!」

 

「どこでそんな言葉覚えたのよ……」

 

「魔理沙だよ!」

 

「……そろそろシメとかないとね」

 

「ダメ?」

 

「ダメ!」

 

「ぶぅ~!お姉様の意地悪!」

 

「諦めなさいフラン、今日は私の番だから」

 

「何どさくさに紛れて寝ようとしてるのパチェ?」

 

「ダメ?」

 

「ダメ、それに関しては数百年頼の友情も意味を為さないわ」

 

「一生のお願い……!」

 

「……」

 

「ダメ……?」

 

「…………」

 

「……冗談よレミィ、そんなに怒らないで」

 

「まったく……」

 

妹の我儘と親友の悪戯が終わり肩を落とす

 

「気苦労が絶えんなレミリア、昔のハドラーの様だ」

 

それを口元を緩ませたバーンが見ている

 

「本当よ……私をなんだと思ってるのよまったく……」

 

プンプン怒るレミリアは持っていた紅茶を勢い良く飲み干す

 

「……そろそろ余も眠るとしよう」

 

バーンが聞こえるように呟いた

 

本来バーンは余程のダメージを負わない限り睡眠しなくても問題は無い、だが睡眠を必要とする皆に合わせ睡眠を取っているのだ、かと言っていつも寝ている訳ではなく起きているのと半々ぐらい、起きている時は自室で考え事をしたり本を読んでいる

 

「そうね、私達も寝ましょうか」

 

レミリアとフランも寝る事にした

 

吸血鬼は本来夜行性だが太陽を克服した二人は日中でも平気なので就寝時間を夜に変更して皆に合わせているのだ

 

「パチェは?」

 

「私はもう少し起きとくわ、今読んでる小説が良いところなの」

 

「そっ……じゃあお先……」

 

レミリアとフランが立ち上がる

 

「……フラン」

 

立ち上がったバーンが呼ぶ

 

「今日は余の部屋で寝るがいい」

 

「ホント!?やった!!」

 

許可されたフランがバーンの腕にしがみつく

 

「ちょっとバーン!」

 

「そう目くじらを立てるなレミリア……義妹になるフランと寝るのがそんなにおかしいか?」

 

「いやおかしいでしょ……いやおかしくないの……?……妹だし……あれ……?」

 

「余を信じれんならやめておくが?」

 

「いや……信じてるとかそんな問題じゃなくて……」

 

「どうした?嫌ならハッキリと言ってみろ」

 

「……もう!知らない!!」

 

プンスカしながら先にレミリアは行ってしまった

 

「フッフッフッ……可愛い奴よなフラン?」

 

「そうだねー!」

 

笑いながら見合う二人

 

「クスクス……意地悪し過ぎよバーン、もう可哀想に……」

 

微笑むパチュリー

 

「ではまた明日だ」

 

「ええ、おやすみなさい二人共」

 

「おやすみー!」

 

パチュリーが見送る中、二人は仲良く図書館から出ていった

 

(私も早く寝ましょ……)

 

そう思いながらパチュリーは「エデンの戦士たち」と言う小説の続きを読み始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノと大妖精の家

 

「もぉチルノちゃんまた服脱ぎ捨てたままだよー……」

 

チルノの服を集める大妖精

 

「洗濯するの今日はチルノちゃんの番だよー!」

 

「置いてるだけよ!」

 

着替え途中のチルノが現れる

 

「そんなのじゃお嫁さんにいけなくなるよぉ」

 

「バカね!あたいのお嫁さんは大ちゃんじゃない!」

 

「違うよー!私はバーンさんみたいな人のお嫁さんになりたいんだよ!」

 

「ムリムリ!何でも良いから大ちゃんやっといてね!」

 

「チルノちゃん!!」

 

「わひっ!?なな……何よ大ちゃん……?」

 

「決めた事は守らないと怒るよ?」

 

「わかったわよ……怖いからそんなに怒んないでよ……」

 

怒られてチルノは渋々と洗濯を始める

 

 

 

「終わった~……」

 

「ご苦労様チルノちゃん!はいアイスクリーム!」

 

「さっすが大ちゃん!結婚しよっ!」

 

「えへへ、しないよぉ」

 

楽しそうにアイスを食べる二人

 

「大ちゃん、あたいね、今毎日が楽しい!」

 

「私もだよ!妹紅さんにレミリアさん、フランちゃんにパチュリーさん、魔理沙さんも一緒……」

 

「それでバーン!」

 

「また8人が揃ったんだよ!奇蹟だよチルノちゃん!とっても嬉しいね!」

 

「ダイの事は悲しかったけど帰っただけだもんね、妹紅の言ってた通りダイが願いを叶えてくれたのかもね!」

 

「そうだね、終わらないと良いな~この時間がいつまでもずっと……」

 

「そうね……」

 

そう口で言っても二人はわかっている

 

楽しい時間はいつか終わる時が来るのだと……

 

「……寝よっかチルノちゃん」

 

「……うん、寝よっ大ちゃん」

 

妖精は静かに眠りに就いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙宅

 

「気持ち良かったぜ~!」

 

タオルを頭に被せた魔理沙が風呂からあがって来た、ちなみに裸

 

「そうだな、良いなお風呂はやっぱり」

 

同じく裸の妹紅、些かも恥ずかしがってない

 

それも当然、だって女の子同士だもの

 

 

「竹林にお風呂なんてあるわけないもんな~、お風呂は毎日入れよホームレス~、汚い女の子はモテないぜ~」

 

髪を解かしながら魔理沙が軽口を飛ばす、ウェーブのかかった髪が濡れてストレートになっている、乾いたらまた戻るのだが今だけは普段と違う印象を受ける

 

「うっせ~!心配しなくてもそういうの諦めてるからいいんだよ~!」

 

「顔は整ってて美人なのによ……残念な奴だよなお前ってさ~」

 

「……お前が言うのか?黙ってりゃ人形みたいに可愛いのにその性格が災いした男日照りのお前がそれを言うのか?」

 

魔理沙とは違いタオルで頭を豪快にガシガシしている妹紅、繊細さの欠片も無いその姿はまさにおっさん、やはり7人の中で一番長くそういった生活をしていたからかそういった部分が雑と言うか無くなっているのだろう、でもいつも綺麗な髪なのは自然にキューティクルだから

 

 

「さって!さぁやって来ましたガールズトークのお時間です!こっから先はR指定だぜ!」

 

寝間着に着替えてベッドに寝転がった魔理沙のテンションが妙に高い

 

「来週も絶対見てくれよな!」

 

「終わらせんな!」

 

そんな話はしたくない妹紅を無理矢理引き摺り込む

 

「……なんだよガールズトークって?私にそんな浮いた話はないぞ?」

 

「はぁ?お前、私が死んでた間に何も無かったのか?告白されたりとか無かったのかよ?」

 

「無かったよ」

 

「食事に誘われるとかも?」

 

「無い、私は不老不死だからそら敬遠するだろうよ」

 

「お前からも行かなかったのか?」

 

「当たり前だろ」

 

「えー……ツマンねー……」

 

「悪かったな……」

 

「……じゃあさ、気になってる奴は?それくらいなら居るだろ?」

 

「気になってる……ねぇ」

 

妹紅は考えるが誰も浮かばない

 

(……不死鳥)

 

浮かぶのは自らの象徴と

 

(……バーン)

 

その奥に見据える者

 

(ハッ……無いな、私がバーンを?無い無い、越える目標なだけだ……それにバーンにはレミリアが居る)

 

それは無いと苦笑しながら首を振った

 

「……なんだバーンか」

 

魔理沙のつまらなそうな言葉に驚き顔が上がる

 

「あーツマンネェ!確かに良い男なのは認めるけどよ!そんな誰でも選ぶ答えは求めてないんだぜー!」

 

仰向けに寝転がった魔理沙を妹紅はじっと見つめている

 

(……敵わないなお前達には)

 

フッと目を閉じて笑った

 

これが友情か愛情かわからないが魔理沙がそう感じたのなら鈍い自分はともかく他の皆も感じてるのだろう

 

友情の極みとも言える絆がただ嬉しかった

 

 

「誰かバーン並みの良い男居ないもんかねー」

 

「あいつ並はまず居ないだろうなー」

 

「だな……レミリアが羨ましいぜ」

 

「まったくだ……」

 

そして二人は同時に思う

 

(あと……)

 

(少し……か……)

 

残った時間を……

 

 

「……寝ようぜ」

 

「……そうだな」

 

明かりを消した二人は暗闇の中で一言ずつ言い合った

 

「おやすみ妹紅……良い夢見ろよ」

 

「ああ……おやすみ魔理沙」

 

そして暫くして二人は夢の中へ落ちていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、私達は夢を見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は何して遊ぶ!?」

 

図書館に居るチルノが皆に問う

 

「親分が決めていいよ」

 

「鬼ごっこはやめてね?私がずっと鬼になるから」

 

「じゃあ今日はかくれんぼにするー?」

 

「この広い紅魔館でか!いいぜ!面白そうだ!」

 

「視認されなければ良いんでしょう?目潰ししかないわね」

 

「攻撃は無しにしましょうねレミリアさん……」

 

楽しそうに会話がなされている

 

「ピィ~!ピィ~~!」

 

「もちろんダイもやるわよ!」

 

そこには帰った友達も居る

 

「……バーンは!?」

 

そして大好きな人

 

「好きにしろ……」

 

チルノに微笑むバーン

 

 

たくさんの笑顔に満ちる夢

 

 

それはチルノの想い描く最も望む日常

 

 

いつまでも友達と一緒に居る願いの夢

 

 

「よーし!やるわよ!」

 

 

氷精は永久の日常を夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ!いただきます!」

 

魔理沙が手をついて礼をする

 

「あー!またチルノちゃんそんな食べ方して!はしたないよ!」

 

「食べ方なんて気にしてたら美味しく食べれないわよ大ちゃん!」

 

「良い事言ったチルノ!そうだぜ大妖精!食えたら良いんだよ料理なんてな!」

 

「あたしもそう思う!」

 

「だから貴方は男が寄り付かないのよ魔理沙?」

 

「放っときなさいパチェ、言っても無駄よ」

 

「だな~、まぁ私もあまり言えないけどやっぱり食べる時は楽しい方が良いと思うよ、なっ?ダイ?」

 

「ピィ!!」

 

喧しいなれど楽しい食卓

 

「もぉ……バーンさんも言ってくださいよ~」

 

「諦めろ大妖精、こやつらに品性を求めてはいかん、それにこんな食事もお前達となら楽しいものよ」

 

「甘過ぎですよ……もう恥ずかしい……」

 

「オラッ大妖精!食え食え!なんなら口移ししてやろうか?」

 

「わわわっ!?魔理沙さん待って!待ってください!ぐむっ!?」

 

どこにでもありそうな場面

 

 

「アハハハハハハ!!」

 

 

特に何もしていない、有りそうで無かったいつもの光景、何でもないような事が幸せなんだと認識するありふれた夢

 

(やっぱり……楽しいな、生きてる……皆と!それだけでこんなにも……!)

 

一度死んでしまったからこそ魔理沙はそれを強く感じていた

 

このかけがえのない友達と過ごせる時間がどんなに尊くて素晴らしい事なんだと

 

生き返ってしまったからこそ繋ぎ止めていたい、そんな想いが夢に表れたのだろう

 

(大好きだよ……皆……!!)

 

大魔導士は終わらない時を夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞ悪者め!」

 

大妖精は玉座に座る魔物の王に指を指す

 

「こいつを倒したら終わりか」

 

「長かったわね……こんなに長い冒険になるとは思わなかったわ……」

 

「大ちゃん!フラン!ジェットストリームアタックよ!」

 

「了解!」

 

「っし!やるぜ皆!」

 

「咲夜はダイを連れて馬車で待機!美鈴は永久待機!出てこなくていいわ!大妖精、チルノ、フラン、魔理沙、妹紅は攻撃!パチュリーは魔法でサポート!可能ならメドローアで消し飛ばして!私は状況に応じて動くわ!」

 

これは冒険の夢

 

ずっと昔から皆でしたいと思っていた想いの表れ

 

「いっくぞー!」

 

「待て大妖精、力が入り過ぎておる、意気込みは買うが余との約束を忘れたか?」

 

飛び出さんとする大妖精をバーンが抑える

 

「……そうでした!また無茶するところでした!」

 

「今はあの時とは違う、今は友と仲間がおる……それにお前はあの時より遥かに強くなった……そう気張る必要は無い」

 

「ハイ!」

 

「どうにもならん時は余が助け船を出してやろう」

 

「もう大丈夫です!勝って来ます!」

 

「よし……ならば終わらせてこい、お前の大冒険を……!」

 

「ハイッ!行ってきます!!」

 

いつか夢見た夢

 

皆でする大冒険

 

もう実現しない夢を描くいつかきっとの夢物語

 

 

「えーい!!」

 

 

風精は望みを夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日から新しい人が紅魔館で働くよ!」

 

フランは手招く

 

「フランドールお嬢様の執事を務めさせていただくウォルター・C・ドルネーズと申します、先は御迷惑をお掛けしました、申し訳ありません、過去の事は水に流してくれると嬉しいのですが……」

 

「いいよね!」

 

ニッコリとフランは笑う

 

「おう!よろしくなウォルター!」

 

「フラン専属だなんて……物好きね貴方も……」

 

「ヤバイんじゃないか?」

 

「過労死しない事を祈るわ……」

 

「ピッピピィ!」

 

「フランの執事ならあたいの子分!アイス買ってこい!」

 

「こ、こらっチルノちゃん!ご、ごご……ごめんなさいウォルターさん……」

 

「ハハハ……構いませんよ、愉快な皆様で安心しております、何かあれば何なりと申し付けください」

 

新しい仲間を皆で迎える

 

「……」

 

ウォルターの前に立ち、睨む者が居る

 

「……何か?咲夜さん?」

 

「先輩を付けなさいデコ助野郎……!妹様やお嬢様に手を出したら殺してやるからね?」

 

「承知しました十六夜咲夜先輩、早く仕事に慣れる様に頑張りましょう」

 

「精々頑張るのね、来なさい……まずは紅茶の淹れ方から叩き込んであげるわ」

 

「申し訳ありませんが私はフランドールお嬢様専属の執事ですのでそういった事は結構です、私がお嬢様に合わせていきますので」

 

「生意気な後輩ね……修正が必要かしら?」

 

「フランドールお嬢様からは許可を得ていますが?」

 

「咲夜ぁ?あんまりウォルターをいじめるならあたしも咲夜いじめちゃおっかな~?」

 

「いっ!?妹様!?それはおやめください……」

 

「対抗意識を燃やさないの咲夜、フランの好きにさせてあげなさい……1つだけ言っておくわウォルター、あくまでこの紅魔館の主は私、そしてこの場の者は私とフランの大切な友人、それだけ理解していれば良いわ」

 

「かしこまりましたレミリア様」

 

お辞儀をしたウォルターはバーンに向く

 

「よろしくお願いします、バーン様」

 

「うむ、フランはお転婆故、心を強く持つがよい……さもなくば壊される事になる」

 

「もぉ!何言ってるのバーン!ウォルターは皆と一緒だから壊さないってば!」

 

叶わない約束の夢

 

一時を無限に変えたあるかもしれなかった最良の夢

 

 

「ここが紅魔館だよ!!」

 

 

吸血鬼の妹は待ち続けた約束を夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね……」

 

パチュリーは現れた者を意思を秘めた目で見据える

 

「……」

 

現れたのはバーン

 

「呼んだ意味……わかるでしょう?」

 

「わからいでか……余に挑む気であろう?」

 

そう、パチュリーはバーンに挑むつもりで呼んだのだ、たった一人で

 

「受けてくれるわよね?」

 

「よい目だ……決意と覚悟を秘めた澄んだ目、昔は気に入らん目だったが……中々どうして、今は喜びすら感じる、弟子の成長とはこうも嬉しいものなのだな」

 

「違う、私は貴方に成長を見て欲しくて挑むのじゃないの……」

 

極限まで研ぎ澄まされた魔力が溢れだす

 

「今こそ私は!師である貴方を越える!」

 

そう、これは力試しではない

 

「約束を果たす為に!!」

 

約束

 

強く生きると決めたパチュリーはただ漫然と研鑽していた訳ではない

 

バーンと言う遥か高みに居る師を越える為に日々を過ごして来たのだ

 

「……よかろう」

 

バーンも魔力を解放し二人の空間を異常な魔力の嵐が充満する

 

「師とは育てる弟子の越えるべき壁で在り続け、越えた弟子により死を与えられる……まだまだ余は死ぬ気は無い、力の差を思い知らせてやろう」

 

「高みに居る者は中々下を見ない、いつの間にか足下まで迫って来ていても気付かない、越えられた時には手遅れなのにね……」

 

「それが幻と言う事もある、本当は更に高みかもしれぬぞ?」

 

「遥か下だった、って事もあると思うけど?」

 

「フッ……言うではないか」

 

「フフッ……そうね」

 

溢れた魔力が体に集中され二人は構える

 

 

「かかって来るがいいパチュリー!高みをしかと目に焼き付けよ!」

 

「水滴石を穿つ……バーンの時代は終わりよ!」

 

 

いつかの約束が果たされる夢

 

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

 

師を越える戦い

 

賢者はいつかの約束を夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

控え室でレミリアは緊張していた

 

(柄にもなく……この私が……)

 

いつもと違う純白のドレスを纏いながらも今更不安だった

 

「変じゃないわよね?化粧落ちてない?」

 

長いドレスが似合う様に成長したレミリアは心配で周囲の皆に問う

 

「大丈夫ですよお嬢様、とても綺麗ですよ」

 

咲夜がニコリと微笑む

 

「とっても綺麗ですよレミリアさん!」

 

「ええ、綺麗よレミィ、ねぇダイ?」

 

「ピィ!」

 

「ほら!大丈夫だからいつもみたいにしゃんとしなさい!」

 

「良いなーお姉様……」

 

「ですねぇ妹様……はぁ、私も早く見つけなきゃ……」

 

「頑張ってブーケ取ろうな美鈴……」

 

大妖精、パチュリー、ダイ、チルノ、フラン、美鈴、妹紅が見守っている

 

「うー……落ち着かないわ」

 

そう、今日はレミリアの結婚式なのだ

 

ウェディングドレスが着れるまで待った記念すべき日

 

「バーンの方は準備出来たかな?」

 

もちろん相手はバーン

 

「出来てるぜー!」

 

入ってきたのは魔理沙

 

レミリアの体がドレスを着れるまでの期間は数百年以上、人間である魔理沙が生きていられる筈がない

 

つまりはそういう事なのだろう

 

「会場もいっぱいだぜ!こりゃトチれねぇなレミリア~?」

 

「こら、あまりプレッシャー掛けないの魔理沙」

 

「ハハッ!悪い悪い、さぁもうそろそろ始まるぜ!」

 

 

 

 

 

始まりの鐘が鳴る

 

 

 

 

 

(この先……どんな苦難辛苦が待ち受けてたって、必ず乗り越えられる)

 

それは確信

 

希望や勘違いではない、絶対と言い切れる強い想い

 

「行こうぜレミリア!」

 

(こんなに素晴らしい友が私を支え……)

 

幸せに満ちている

 

(貴方が居るから……)

 

最愛の人を見つけ

 

 

「バーン……!!」

 

 

笑顔を見せた

 

王女は叶わぬ刹那を夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見知らぬ荒野が広がっている

 

「……」

 

少女が一人歩いていた、周りには誰も居ない

 

「……」

 

幻想郷ではないどこか遠くの場所

 

少女・妹紅は一人で歩いていた

 

「……ピィ!」

 

「起きたのか、おはようダイ」

 

いや、二人で……

 

 

 

「今日はあっちに行ってみようか」

 

標も何も無い荒野を進む

 

 

……ここは何処かの世界

 

気の遠くなるような時間の果て

 

友も仲間もとうの昔に居なくなり、幻想郷すら消えた時の果て

 

そこを進む不死の少女とたった一人だけ残った友

 

 

「ピィ……?」

 

ダイが問う

 

「ん?寂しくないかって?心配するなってダイ!そりゃ皆が居ないのは寂しい、けど仕方ない事なんだから塞ぎこんでたらあいつらに怒られちまう」

 

妹紅はダイを抱き上げ

 

「お前が居るから大丈夫だ!」

 

微笑む

 

「ピィ!」

 

「へへっ!」

 

最後の友達は笑い合う

 

 

「……それにさ」

 

自分を照らす太陽を見上げる

 

「バーンも一緒だから……」

 

辛くなった時、苦しい時、迷った時

 

そんな時は太陽を見る

 

何も答えてはくれないがそれだけで心の曇りは晴れる

 

 

二人ではないのだ

 

もう一人、大事な友が一緒に居てくれるから……

 

 

「行くかダイ!」

 

「ピィ!」

 

三人は終わらない旅路を進む

 

 

こうなったかもしれない可能性の未来

 

何もかもに置き去りにされた少女の有り得た未来の1つの形

 

 

「今日は何が起こるかな……」

 

 

不死の少女はもしもを夢見る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

目が覚めた妹紅は見た夢を思いだし窓から夜空を見上げる

 

(ダイ……元気にしてるかな)

 

屈託の無い笑顔を見せる友を想う

 

(会えてるよな?お前が会いたかった友達に?)

 

それは妹紅には確認出来ない事、時を越えたダイの行く末を知る術は無いのだから

 

(……会えてるさ!)

 

妹紅はそう思う

 

確認する術が無いのなら信じるしかないのだから

 

会えなかったなんて悲しい事は考えなかった、あれだけ悲しい別れをしたのに会えなかったなんてそんなの悲し過ぎるから

 

だから会えていると信じる

 

(幸せにな……)

 

己より他を重んじる優しき想いが夜空に飛ぶ

 

得る筈だった幸せを分け与える様に飛ばした不死の少女は目を閉じ眠りにつく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

紅魔館・図書館

 

「おーいパチュリー!生麦、生米、生卵って早口で言ってくれ!」

 

「何よ急に……やらないわよ」

 

「他の皆は出来たぜ?」

 

「だからどうしたのよ」

 

「あれ?もしかして出来ないのか?情けない賢者だなぁおい」

 

「ええ!?パチュリーさん出来ないんですか!?」

 

「あたいでも楽勝だったのに!?雑魚!雑魚ね!」

 

「パチュリー逃げた!」

 

「うわっノリ悪っ!」

 

「……いいわ、そこまで言うのなら言ってやりましょう、高速詠唱が常備スキルの賢者の実力を見せてあげる」

 

パチュリーは自信有り気に言葉を紡いだ

 

「生麦!」「生米!」「生ママモー!」

 

空気が死んだ

 

「……生ママモなんていやらしい」

 

「いや、そのいやらしさは私にはわからないよパチュリー……」

 

「アハハ!だせぇ!あんだけ自信満々に抜かしといてミスってやがる!アハハハハ!」

 

「ププッ……パチュリーさん可愛い」

 

「あざとい……そうまでして人気を取りたいのかパチュリー……」

 

「むっ……むきゅー……」

 

いつもの風景

 

「フッ……」

 

魔導書を読みながら会話を聞いているバーンは微笑んでいた

 

 

 

ヴンッ……

 

 

 

「!!?」

 

突然バーンの周囲が真っ暗な空間に変わった

 

(これは特殊な異空間……精神のみを引きずり込まれた!?)

 

空間にはバーンだけが引きずり込まれたらしく友は居ない

 

(一瞬の内に余を引きずり込むなど並の者では不可能……いや、魔王クラスであろうが無理だ)

 

だがそれを成した事実がバーンの警戒感を高めて探らせる

 

(……4つの存在を感じる、何者かは知らぬがこやつらの共謀で間違いなかろう)

 

バーンが探り終えた瞬間、声が響いた

 

「儂の幻夢空間へようこそ……歓迎するぞ大魔王バーン」

 

4つの存在の一人が姿を現す、異様な魔族の老人、胡座をかいて宙に浮き2つの謎の球体が周囲を飛んでいる

 

「貴様が余を引きずり込んだ輩か……」

 

警戒を解かずにバーンは老人を睨みつける、いつでも戦闘する準備は出来ていた

 

「フォッフォッフォッ……それは違うな、お主は強い……儂だけでは出来んかったよ、4人の王の力を合わせてようやくじゃった」

 

「……」

 

敵意は感じられない、この空間にも罠らしい物も無い、出ようと思えば出られる、それがバーンの警戒心を少しだけ緩ませた

 

「……貴様、何者だ」

 

それでも自分をたった4人で引きずり込める事が異様であるから正体を問う

 

「昔は夢魔の大魔王とも呼ばれていたのう」

 

もったいぶる様に老人はバーンに向かって笑い、答えた

 

 

 

「儂の名はデスタムーア……かつて現夢に君臨した幻魔王よ」

 

 

 

 

 

突然の王との邂逅

 

何故このタイミングなのか?

 

 

出会いに意味が有るのならこの時でしかならなかったのだ

 

 

残り僅かの時を過ごす今でしか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、残る最後の日にしか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後のイベント開始です。

これも前から考えてたネタですね、歴代魔王とバーン様の作品を越えた邂逅……こんなのワクワクします。

残り3人が誰かは予想してみてください、内二人は作中で繋がりを書いてます、残る一人は書いてませんがバーン様のライバル?の種族繋がりです。

最終話まであと1話!

次回も頑張ります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。