東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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最終話 そして……幻想へ……

 

 

 

 

 

 

 

       誰しもいつか死ぬ……

 

 

 

 

 

 

 

余とて変わりはせん

 

 

それがいつ起きるかだけの違いなのだ、何を以て死とするか、それだけだ……

 

 

 

……お前達を見て今、ふと思い出す事がある

 

 

魔法使いの青年が母から聞いた言葉だ

 

 

 

『人間は誰でもいつか死ぬ、だから……一生懸命に生きるのよ』

 

 

 

人間の一生は短い、まさに閃光のごとき儚い一瞬

 

 

今なら……今だからこそよくわかる……

 

結果が見えていながら足掻いたあの勇者達の心が……

 

 

今の余も同じなのだ、ただ違うのは見えている結果に無様にもがいた哀れな魔族の王だっただけの話……

 

 

 

 

お前達がたまに眩しくて見えない時がある、寿命の違いはあれどその魂には勇者達と同じ想いが宿っているから……

 

 

 

 

 

余の友はまさに太陽、素晴らしい者達だ

 

 

生を懸命に生きるその姿をいつまでも見ていたかった

 

 

 

 

だが……もう時間だ……

 

 

 

 

この夜明けと共に余は幻想郷からも、世界からも消えるだろう

 

だがそれでいい……使命を果たした余は満足している、だから……それでいいのだ……

 

 

 

 

 

 

 

さぁ……最期の時だ、お前達に見送られて余は戻るとしよう

 

 

 

またお前達の太陽に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦ってくれ……か……」

 

思わぬ提案にバーンは真意を知りたいと7人を見つめる

 

「別に深い意味があるわけじゃないよ」

 

妹紅は笑みを絶やさず答えた

 

「なんていうか……ほら、私達って修行ばっかりしてただろ?お前を越える為にさ……」

 

そうだろ?と6人を見ると皆頷いた

 

「最近はサボってましたけどね……」

 

「それは理由があるんだよ!あたし達が修行をサボってたのは……」

 

大妖精とフランが口を開く

 

「わかっておる……お前達は余との時間を1秒でも大事にしていたかったのであろう?」

 

「うん……」

 

わかってくれていた事を知った大妖精とフランは少し申し訳なさそうに目線を下げる

 

「墓を片付けなかったのも余の死を知っていたからか……」

 

「ええ、半分嫌がらせだけどね……話してくれない事への当て付けよ」

 

パチュリーが皮肉たっぷりに言う

 

「なんで言ってくれねぇかな……前も妹紅が言ってたの忘れたのか?それが私達を傷付ける、って……わかんないか?」

 

「充分わかっておる……あまりそれを言うな」

 

魔理沙の嫌味に苦笑する

 

「ねぇバーン……」

 

チルノの信じる瞳が向けられる

 

「本当に……消えるの?」

 

最初の友は知っているのにまだ信じている、皆で歩く未来を

 

「……」

 

その瞳に見られると辛い

 

だがバーンは決して逸らす事なく見つめ

 

「そうだ、余は間も無く消える」

 

自分の口からハッキリと告げた

 

「そっ……か……」

 

ぎゅっとスカートを握り締めるチルノ、何かを堪える様に必死に抑えていた

 

「……最期に戦いを望むなんて変だよな」

 

改めて戦う理由を妹紅が語る

 

「お前は私達の目標だった……そりゃあお前より強い奴も居たさ、だけどなバーン……」

 

友が消えるというのに戦いを望む、普通ならおかしい事をしている

 

「それでも私達の目標はお前なんだ」

 

だが彼女達には戦いをしなければならない理由が有るのだ

 

「他の誰でもない……お前だけを越えたくて今まで頑張って来た、お前じゃなきゃダメなんだ……」

 

自らが決めた目標

 

「それにお前は言ったよな……強く生きろ、って……」

 

そして約束

 

「だから……!!」

 

言葉に力が籠る

 

「戦ってくれ!これが最後なんだ!お前と戦える時はこれが最後なんだ!」

 

「だから!!」

 

「最期に私達を見てくれ!約束の結果を見てくれよ!」

 

望みは願いに変わっていた

 

「頼むよ……どうせ消えるなら……せめてお前の生きた証だけでも見てくれよ……」

 

これが彼女達が戦いを望む理由

 

最後に自分達の成長を直接知って欲しかった

 

強くなる意味を与えてくれた本人に最期にどうしても伝えたかった

 

 

 

それが消え行くバーンへ贈れる唯一の餞だと思ったから……

 

 

 

 

 

(生きた証……か……)

 

今になって改めて思う

 

最初に望んだのはチルノとフランの二人だった

 

強くなるのに手を貸したのはその二人だけだった

 

時を過ごす内にいつの間にか一人、また一人と望む様になり

 

気付けば全員になっていた

 

それも自分を目標にして……

 

(そうだ……確かにそうだ、お前達はまさに余の生きた証……余が幻想郷に生きた証明……ならばこの願いは当然の事……)

 

始まりは強さだった

 

対抗心から始まったそれは時を過ごす内に情景に変わり、羨望が入った

 

更に時を過ごしたそれに友情が芽生え、生き方となり、絆に成った

 

絆の根幹には強さがあったのだ、ならば戦ってくれとのこの願いは当然だったのだ

 

 

「よかろう」

 

 

バーンは答える

 

「最後にお前達がそれを望むならば……叶えてやるのが友の務め」

 

快く承諾し微笑む

 

「ごめん……ありがとうバーン……」

 

「謝るな、強く生きろと言ったのは余だ」

 

「だけどさ……」

 

最期に願う事じゃない、そう思っている妹紅が申し訳なくまた謝ろうとしていた

 

「くどい!余が良いと言ったのだ!いつまで気を落としている!」

 

そんな妹紅をバーンは一喝する

 

「たわけが!見てやると言っているにも関わらずそんな腑抜けた気概で余に挑むつもりかお前は!?」

 

「ッ!?」

 

説教にも似た激に気圧されて顔を下げる妹紅にバーンは言う

 

「来い妹紅……本気でなければ意味が無い、お前の今まで培った力を余に見せてみよ」

 

逆に願う様に頼む

 

「……!」

 

妹紅は顔を上げると

 

「わかった……!!」

 

笑った

 

「良いか皆ァッ!!」

 

意気を高めた号令が飛ぶ

 

「いつでも良いぜ!」

 

「こんなに月が綺麗だから……本気で倒すわよ!」

 

「7対1だけど……卑怯じゃないよね!」

 

「ホントはあたい一人で充分だけど時間無いしね!」

 

「よーし!やるぞー!」

 

「今日こそ勝たせてもらうわ!」

 

既に準備万端、いつでもいける

 

 

(ああ……そうか……そうだったのか……)

 

 

戦うのは変わらぬ友情の現れ、溢れ出る意思は消える事のない絆の証

 

それを感じてバーンはこれなのだと思う

 

(この瞬間の為だったのだ……この瞬間の為に余は再びお前達の前に……!)

 

再誕したのは守る為ともう1つあったのだ

 

自分が再誕した意味、それは贈る為

 

 

そう、最後に成すべき事がわかったのだ

 

 

「フッ……フフッ……」

 

ならば迷う必要は無い

 

 

ズオッ!!

 

 

魔力が溢れ出す

 

 

「来るがいい!いつかの様に負けてやるつもりは一切無い!さぁ……余が生きた証を見せてみよ!約束の結果を見せてみよ!この余に!」

 

 

構えたバーンは叫ぶ

 

 

「この幻想ノ王バーンに!!」

 

 

最後に微笑んだ

 

 

「行くぞッ!!」

 

 

妹紅達は同じく一瞬だけ微笑むと顔つきを鋭くさせ

 

 

 

バシュッ!

 

 

 

8人はバルコニーを飛び出した

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……間に合ったかい」

 

柱の陰から出てきたのは萃香

 

「なんで戦うんでしょう……最期なのに……」

 

続いて妖夢

 

「それがあいつらの生き方だからよ、不器用な……ね」

 

そして幽香

 

3人は来ていた、誰に言われたのではなく、仲間の最期だと予感し自然とやって来たのだ

 

「幻想郷で一番不器用な貴方がそれを言いますか……」

 

「無駄よ美鈴、ツンデレは自分が不器用とわかっていないものだから」

 

その背後から並ぶのは美鈴と咲夜

 

「どうしてこうなるんでしょうね……せっかくまた会えたのに……どうして……」

 

「お嬢様の言葉を借りるなら……これは運命だったのよ、こうなる必然……私達にはどうにも出来ない……」

 

悲しく見上げる咲夜と美鈴

 

「何が運命だい……そんなもんありゃしないよ」

 

否定したのは萃香

 

「これはあいつらが自ら決めて進んだ道さ、運命なんてもんで括るんじゃないよ馬鹿馬鹿しい」

 

萃香は運命と言う言葉があまり好きではなかった

 

「あんたは、アレが……大事な者と別れるのが決められた事だったなんて言われて納得出来んのかい?」

 

「それは……無理ね」

 

「だろう……」

 

「自分が選んで歩いて来たんだ……それが歩かされてたなんて……そんなもん私は認めない……」

 

萃香も見上げる

 

「これが運命だなんて……そんなの悲し過ぎるだろうよ……」

 

そう呟いて戦いを眺める……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うらああああああっ!!」

 

夜天に流星が降りしきる

 

7つの星が放つ弾幕は流星群の如く1つの太陽に向けられる

 

 

逃げ場すら見当たらない異常な弾の幕

 

「……」

 

バーンは防いでいた

 

弾を弾き後続の弾に当てる反射とそのまま消滅させる打ち消しを腕の一振りで一挙に行いながら様子を見ていた

 

「ちっ……やっぱり弾幕じゃ無理だわな!」

 

「当たってるのもあるんですけど通常弾幕じゃダメージにはなりませんね」

 

背中を合わせた魔理沙と大妖精

 

やはりと言えばやはりだがいくら強くなった7人の弾幕と言えどバーンには効かなかった、まずは様子見と幻想郷の象徴とも言える弾幕を放ったが当然の結果に改めて意気を高める

 

「まずは私が行くぜ!!」

 

弾幕を追い越す速さでバーンに向けて駆ける魔理沙に合わせて6人は弾幕を撃つのを止める

 

「お前からか魔理沙」

 

「おう!私からだバーン!」

 

向かってきた魔理沙にバーンは魔法の弾幕を放つ

 

「……初めて会った時もこうして戦ったのだったな」

 

「ああ……あの時はオッサン呼ばわりして悪かったな!」

 

「あの時の強盗が強くなったものだ」

 

「抜かせコノヤロー!」

 

撃ち合いながら言葉を交わすその様はとても楽しそうに見えた

 

「魔理沙……」

 

攻防の最中、バーンは魔理沙を見つめる

 

「余はわかっているぞ、余が消えるのを知っていたからお前は無理にふざけて場を和ませようとしていたのだろう?」

 

「はぁ?破天荒が信条のこの大魔導士・魔理沙様がんな事するわけねぇだろ!私が楽しいからやってたんだぜ!お前の為じゃねぇ!!」

 

「フッ……お前も中々素直になれん女だ、それでこそお前なのだろうがな」

 

「……調子乗ってんじゃねぇよバーン!」

 

図星を突かれたのを隠す様に魔理沙は八卦炉をかざす

 

「くらいやがれー!!」

 

魔力を込めた八卦炉が火を吹く

 

 

「恋符「マスタースパーク」!!」

 

 

特大のビームがバーンへ放たれた

 

「……」

 

迫るビームを前に手をかざす

 

 

「魔符「闘魔滅砕砲」!!」

 

 

撃たれた暗黒闘気がビームを迎え撃つ

 

「……懐かしいな」

 

「ああ……これもあの時と一緒だ」

 

初めて戦った時と同じ撃ち合いに顔が緩む

 

「だけど……今回勝つのは私だぜぇぇ……!」

 

力を込め押していく

 

「……」

 

感じる以前とは比べ物にならない力

 

(余の魔導書を糧に努力したのだな……お前の努力が如実に表れておる、人間という短い生を閃光のように懸命に生きたのが……)

 

愛弟子の一人の成長を肌で感じたバーンは嬉しく微笑むと

 

「強くなったな……魔理沙」

 

暗黒闘気の力を上げてビームを押しきった

 

「~~~~ッ!?コノヤロー……!!」

 

飲まれた暗黒闘気から抜け出した魔理沙、服はボロボロだが目から光は消えていない、まだまだやれる

 

 

「次はあたし!」

 

 

それが合図とばかりにフランが向かう

 

 

ゴウンッ!

 

 

打ち付けた拳と防御した腕がぶつかり衝撃波を起こす

 

「うむ、随分鍛えた様だなフラン」

 

「うん!」

 

そのまま徒手による攻防が始まった

 

「ハアッ!」

 

「ウギッ!?……まだぁ!!」

 

手刀を防御したフランの顔が歪むが恐れず向かう

 

「楽しいかフラン?」

 

「うん!すごく楽しい!」

 

激しい戦闘をしている筈なのに二人はとても楽しそうだった

 

「うりゃー!」

 

フランの一撃が胴へ入る

 

「そうだ、力だけではいかん、いくら強くとも当てれなくては意味が無い……経験を積んだなフラン」

 

「うんっ!頑張ったんだよあたし!」

 

まるで兄と妹

 

お転婆な妹は褒めて欲しくて頑張り、兄はそれを嬉しく思い褒める

 

二人は出来なかった時間をこの瞬間に永遠に楽しもうとする……

 

「……フラン」

 

何かを諭す様にバーンは呼ぶ

 

「……まだ……!!」

 

フランもわかっている、でもまだやめたくない

 

「終わりだ」

 

「ヤダよ……!まだ……あたしは……バーンと……!」

 

「あまり我儘を言うものではない……」

 

力を込めた手刀が時間の終わりを告げる様にフランを吹き飛ばした

 

「次は誰が来るのだ?」

 

「私です!」

 

残る5人を見ると大妖精が前に出た

 

「大妖精……」

 

複雑な表情で見るバーンに大妖精は弾幕を放つ

 

「……」

 

強力な弾幕を相殺しながらもバーンの表情は優れない、とても悲しそうに大妖精を見つめていた

 

「どうしたんですかバーンさん!」

 

防ぐだけで攻撃する気を見せない事に大妖精は怒る

 

「何故……」

 

バーンは大妖精に対するその辛い想いを吐き出す

 

「どうして力を持った……」

 

それはバーンが大妖精だけに思っていた事

 

「お前が力を持つ必要など無かった筈だ……何故お前はそこまで力を着けた……」

 

ただ一人、大妖精だけが力が無かった

 

弱い彼女が頂点と呼ばれるまでに力を着けた事が悲しかったのだ

 

「強く生きろとのあの言葉……お前にだけは意味が違ったのだ、例え弱くとも強く生きてくれと余はお前に願ったと言うのに……」

 

どんなに弱くてもいい、それに負けずに生きてくれればそれで良かった

 

バーンは大妖精にだけはそれを願っていたのだ

 

「戦いを好まぬお前にこの道に来て欲しくなかった……お前には戦いなどして欲しくなかった……」

 

その道を選んだ友がただ悲しかった

 

「……バーンさん」

 

攻撃を止める大妖精

 

「私が勘違いしたって……思ってますか?」

 

その目はしっかりとバーンを見ている

 

「違います、あの言葉の意味はちゃんとわかってました、でも……そうじゃないんです、私は……私の意思でこの道を選んだんです」

 

強くなったのには譲れない理由があった

 

「私は誰よりも弱かった……いつも守られてばかりで役に立たない足手纏いなお荷物でした!!」

 

感情が籠る

 

「そんな自分が嫌だったんです!弱いままの自分が!皆さんと一緒になりたかったんです!友達ですから!」

 

助けられない無力な自分が嫌だった、負い目を感じていた

 

皆はそれで良いと言ってくれた、でも自分は嫌だった

 

「それでわかったんです、いくら正義って掲げたってそれを成す力がなかったらそれは無力な正義なんだって……」

 

 

だから決めた

 

 

守られて負担を掛けたくないと、友達が危ない時に助けられる様にと、皆に並びたいと

 

「バーンさんは私に道を示してくれました、でも選ぶのは私の意思なんです……ごめんなさい」

 

バーンの望む形にはなれなかった事を謝り、その上で大妖精は言った

 

「だからそんな顔しないでください……戦ってください!今の私を見てください!」

 

揺るぎない瞳で

 

「……後悔はしておらんのか?」

 

「まったくしてません!!」

 

偽りの欠片すら無い返事にバーンの表情は変わった

 

(お前がある意味、一番強くなっていたのだな大妖精……)

 

選んだ道に後悔は無い

 

そう決めたなら何も言うべき事は無い

 

それが見つけた生き方なのだから

 

「ならば遠慮はせんぞ?」

 

友が選んだ道ならば尊重してやるのがまた友の務め

 

バーンは大妖精を武の意味でも対等と認めた

 

「嬉しいです……バーンさんの高さを知って、今やっと私は皆さんと同じ場所に立てた……」

 

昔を変えたかった妖精は今、真に友と同じ場所に立ち、同じ景色を見る

 

 

「……ゆくぞ」

 

「……ハイッ!」

 

 

二人の力がぶつかり合う

 

「あうっ!?」

 

弾幕を押し退けた衝撃波が大妖精を吹き飛ばした

 

「……強いなぁバーンさんは……えへへ……」

 

負けたと言うのに大妖精は嬉しそうに笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笑ってるよあいつら……変態かよ」

 

バルコニーでは新たな者が来ていた

 

「にとり……」

 

「邪魔するよ、他にも居るけどね」

 

にとりが指を差すと正邪や青娥、博麗の二人の巫女にスキマから紫、さとりや白蓮など今までバーンに関わった仲間全員がやって来ていた

 

「おや?神奈子は居ないのかい早苗?」

 

「ええ……神奈子様は私と諏訪子様が向かう前には既に居ませんでした」

 

「……あいつもどっかで見てんだろうねぇ」

 

そう思いながら皆は戦いを眺める

 

「あーあ……あんなボロボロになって……最期に喧嘩させる為に私は頑張ったんじゃないってのに……」

 

そんな事をさせるつもりは無かったと悪態つくにとり

 

「ハハッ、良いじゃないか……それがあいつらなのさ、私らにどうこう言えるもんじゃない、それにさ……あれは喧嘩だとしても特別な喧嘩さ」

 

笑いながら返した萃香は羨ましそうに8人を見つめる

 

 

 

 

     兄弟喧嘩……みたいなもんさ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

大妖精を遮り前に出たのは炎を鳥に形成した妹紅

 

「不死鳥が……お前を呼んでるぜ!」

 

炎鳥を激しく燃え上がらせて構える

 

「言いたい事はそれだけか?ならば……!」

 

手に炎の魔力を点らせバーンは応える

 

「行くぜぇぇぇ!」

 

凄まじい炎がバーンを襲う

 

「これが……お前の炎か、これが皇帝不死鳥の辿り着いた炎の熱さか」

 

受け止めたバーンは炎から感じる

 

(優しき炎よ……強さの中に確かな意思がある、生き様の現れなのだろうな……)

 

受け止めたまま火球が放たれ炎を突っ切って行く

 

「……!」

 

容易く打ち消した妹紅は炎翼を羽ばたかせバーンへ向かう

 

「アレじゃ私は倒せないぞ!撃たないのか!?」

 

「使わせてみろ」

 

そのまま肉弾戦に移行する

 

 

「……なぁ」

 

激しい戦闘の最中、妹紅は突然話し掛けた

 

「なんで私を許してくれたんだ?」

 

炎翼を振り上げる

 

「……」

 

避けたバーンは答えない

 

「教えてくれよ……約束を守れなかった私をなんで許してくれたんだ?」

 

妹紅は聞きたい事があった

 

皆を任された約束、出来る限り頑張ったが守れなかった

 

怒られても仕方無いのに許された、それが妹紅には良くわからなかったのだ

 

「許す……?何の事かわからんな」

 

「茶化さないでくれ!私は真剣に聞いてるんだ!」

 

怒る妹紅、そんな妹紅にバーンは簡単に言った

 

「お前は守れていたではないか」

 

その答えに一瞬止まった妹紅に隙有りと裏拳を放つ

 

「ッグ!?……どういう事だ!?」

 

訳がわからないと反撃しながら問う

 

「何か勘違いをしている様だが、お前は約束を破ってなどいない」

 

「だからなんでだ!?」

 

炎を巻き上げながら距離を取る二人

 

「お前は諦めなかったではないか」

 

その答えは妹紅を怯ませるには充分過ぎた

 

「お前は最後まで余との約束を果たさんとエスタークに立ち塞がった、友を守る為に最後まで……」

 

そう、妹紅は約束を最初から破ってなどいなかったのだ

 

「異な事を思うな、お前は約束を果たせていたのだから」

 

敗れはしたが約束は守れていたのだから

 

「なんだよ……私が勝手に破ったって思ってただけかよ……」

 

「そういう事だ、長女役などしようするからそうなる、不慣れな事はするものではなかったな、もっとも……だからこそお前に任せた訳だが」

 

「うっせーよ……悪かったな糞親父!」

 

「こんな困った娘を持った覚えは無い」

 

笑い合った後、バーンが炎の魔力を集中し激しく炎上させる

 

「さぁ来い「皇帝不死鳥」今こそ、その名を真にして見せよ!」

 

象徴を放とうと構えるバーン

 

「……」

 

妹紅は一瞬構えて意思を見せたが炎を納めて力を抜いた

 

「やりたいのは山々だけど……今は皆でだからな……交代するよ」

 

「そうか……」

 

言いたい事を理解しているバーンもすぐに納めた

 

 

「次は誰が行くんだ?」

 

「私よ」

 

入れ替わる形でパチュリーが前に出た

 

「……フッ!」

 

抑えていた魔力が一気に溢れ出す

 

「研鑽を怠っていない様で何よりだ愛弟子よ」

 

「褒めるのはまだ早いわよ?」

 

まずは挨拶程度にとパチュリーは両の指をバーンに突き出す

 

「炎符「十指爆炎弾」!!」

 

巨大な10の火球が撃たれる

 

「ほお……威力、速度、共に素晴らしいものがある、だがそれだけではいかん事も当然わかっていような?」

 

前面に魔方陣を展開すると火球が止まり1つに収束される

 

「マホプラウス……おさらいだ、まさかあの時と同じだなどは言うまいな?」

 

100年前と同じ様に火球を返した

 

「ええ……見せてあげる」

 

呟いたパチュリーは迫る火球に魔力を集中させた指を突き入れ、分解し霧散させた

 

「他にも対処法はあるけど今回は覚えたこれにしてみたわ、慣れると便利ねこれ」

 

エスタークとの戦いの時に修得した技で答えを示した

 

「見事だが……嫌味かパチュリー?」

 

「何の事?」

 

意図せず古傷を抉っていたパチュリーだが知らないものは知らない

 

「私の成果はこれだけじゃない……!」

 

両手に異なる属性の魔力を集中させる

 

「右手にイオナズン……左手にベギラゴン……!」

 

掌を合わせその深淵の魔法を放つ

 

 

「「閃吼爆裂」イオラゴン!!」

 

 

放射された爆破を伴う閃熱がバーンを襲う

 

「想像以上の威力……見事だ」

 

手をかざし、その極大の呪文を放つ

 

 

「イオナズン」

 

 

放たれた爆破球が触れると夜を眩く照らす程の大爆発を引き起こした

 

「文献に名前のみ伝わる合体魔法……余にすら出来ぬ深淵の1つを独学で成し遂げたか」

 

晴れた爆煙の中から無傷のバーンが褒める

 

「そうだけど……合体元の呪文で簡単に相殺されたら褒められてる気にならないわね、相変わらずふざけた魔力よ本当……」

 

同じく出たパチュリーだが呆れた様に苦笑している

 

「他にもあるけど……まぁこんなところかしらね」

 

戦意を消して交代の意思を見せた

 

「諦めるのか?」

 

「まさか……舐めないで欲しいわね、ちゃんと貴方用のとっておきがあるわ……次がつかえてるから後にするだけ」

 

「期待している」

 

パチュリーには伝えるべき事は伝えている故、バーンは承諾する

 

 

「バーン……」

 

次の相手は既に後ろに居た

 

「……次はお前かレミリア」

 

背を向けたまま友以上になった者を感じる

 

「……」

 

スッと近付いたレミリアはバーンの背に抱きつく

 

「私は……特に無いわ」

 

レミリアに今更バーンと話す事など無ければ見て貰う必要も無かった

 

越えるだとかそんなレベルを遥か越えているのだから……

 

「そうか、だがお前は……」

 

バーンはレミリアに何か言いたそうだった、だが今は言うべきではないと口を閉じる

 

「なに……?」

 

「……いや、何でもない」

 

「そう……」

 

レミリアは離れると最後の一人と交差する

 

 

「来たか……最強」

 

小さな氷精に視線を向ける

 

「実はと言うとな、この戦いを受けた時……お前と戦うのが一番の楽しみだった」

 

無言で佇む友へ語る

 

「まさかお前が一番強くなろうとは思いもせなんだわ……頑張ったのだなチルノ」

 

まだ見てないのに褒めるのはバーンにとってチルノは特別な存在だったから

 

「うん……」

 

弱い返事を返すチルノ、この後を想像して気が沈んでいた

 

「どうしたチルノ……いつもの様に威勢良く勝つと言って見せろ、そう、最初に出会ったあの時の様に……」

 

「わかってる……わかってるよ……」

 

辛くて泣きそうなチルノ、そんなチルノへバーンは叫んだ

 

「いつまでグズグズしておる愚か者!今はそんな時ではないはずだぞ!時間が無いのがわからんのか!!」

 

「ッ!?」

 

叱責に悔しそうに唇を噛む

 

「早くしろチルノ!今しかないのだ!お前の最強たる力を余に見せてみよ!」

 

涙目で睨むチルノにバーンは告げる

 

「頼むチルノ……最初の友よ……」

 

最初にバーンを友達と呼んだのはチルノだった

 

だから意識した時にチルノはバーンにとって最初の友と言う特別な存在だった、そしてそれは今も変わらない事柄だったのだ

 

そんなチルノにだから頼む、泣かずにいつもの様にしてくれと……

 

「……わかった……わよ!」

 

拳を握りながら返した瞬間

 

 

キンッ……

 

 

空気が凍りついた

 

「覚悟しなさいバーン!最強のあたいがあんたをブッ飛ばす!!」

 

最強足らしめる氷の力が辺り一帯の温度を氷点下まで下げる

 

出来る限り抑えてこれなのだ、その気になれば幻想郷に終わらない冬を与えれるその力を全開に最強の頂点は王へ指を差す

 

 

「凍符「エターナルフォースブリザード」!!」

 

 

極めた冷気が凍える気となりバーンに向かう

 

「……マヒャド!」

 

同じく氷結の呪文で迎え撃つ

 

「うぎぎぃ……!?」

 

「ぬうぅ……!!?」

 

押し合った最強と王の気が辺りを氷の世界に変える

 

「ヌウッ!?」

 

押しきった凍気がバーンの腕を凍結させた

 

「よもやここまで鍛え上げていたとは……」

 

驚きを見せながら凍った腕を見る

 

(強くなったなチルノ……本当に強くなった……)

 

炎で溶かしながら呟く

 

ダメージこそ少ないが鍛え上げた冷気はバーンの冷気を貫き、届くまでになっていたのだ

 

「どうだ!これがあたいの力よ!!」

 

チルノは叫ぶ

 

これが約束を守り通した結果だと言うように

 

「認めよう、攻防を兼備したお前の力、並ぶ者無しの至高の冷気……余の敗けだ」

 

同時に魔力の質が変わった

 

「ピンピンして言うな!あたいの力はまだまだこんなもんじゃない!」

 

力を上げて攻撃するチルノ

 

「冷気……ではな」

 

冷気に向けて呪文を放つ

 

バシュゥッ!

 

衝突した瞬間、水蒸気が起こりチルノの冷気を相殺した

 

「むむむ……!」

 

「勝てんのは冷気だけだ、熱を使えばこの通り」

 

この水蒸気は熱による結果

 

チルノの冷気に対してバーンはベギラゴンで迎え撃ち相殺したのだ

 

「……ズルい!」

 

「フッ……これが一芸特化のお前と余の違いだ、冷気で勝れずとも余は幾多の手段がある、冷気で勝てぬなら熱で対抗するまでの事よ」

 

「ズル!バーンの卑怯者!」

 

「そう言うな、むしろ誇るがいい……あまり得意とは言えぬ余の冷気の呪文に勝てた事に……な」

 

「ぐぬぬ……クッソー!」

 

またも攻撃をしようとするチルノだったがバーンは待てと手をかざす

 

「これで一先ずは全員見た……」

 

そのままチルノを下がらせ7人を見る

 

「そうだな……一人じゃまだまだ勝てなかった、悔しいけど……」

 

実力こそ上がったが残念な事に個人ではまだバーンは遠い、これは認めざる得ない事実

 

「なら力を合わせるしかないな!」

 

一人で勝てないなら皆で

 

7人は協力して挑む事を決めた

 

「いいか……?」

 

承諾を求めるのはやはり卑怯だと思うからだ、一人で勝てないから皆でやる、敵との戦いならいざ知らずだが今に置いては卑怯以外の何でもないのだ

 

「構わぬ」

 

バーンは承諾した

 

「互いの弱さを補うお前達は7人で1つの剣とも言える……むしろそうこなくてはただの余の蹂躙劇だ」

 

その絆でここまで来れたのなら不思議な事ではない

 

7人が揃わねば今に辿り着けていないのだから

 

「それに時間も余り無い」

 

夜空の白みが先程より明るく広がって来ていた

 

「……!!」

 

決心した妹紅は体に力を込め首無しの不死鳥を顕現させる

 

「準備は良いなッ!!」

 

「当然だぜ!」

 

「いつでも良いわ!」

 

「オッケーです!」

 

「さぁやるわよ!」

 

「よーし!やるぞー!」

 

「勝つわよ……!」

 

同じく本気を出した6人が並びバーンに対峙する

 

「最後だ……悔いの無い様に全力で来るがいい」

 

惜しむ様に目を閉じた後、鋭い目で7人を見据えた

 

 

「……行くぞ」

 

「……来い」

 

 

最後の攻防が始まる

 

 

「お姉様、アレやろ!」

 

「ええ、いいわ!」

 

フランとレミリアが高く飛び上がる

 

「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」

 

「禁忌「レーヴァテイン」!!」

 

回転させた槍と剣を構えた二人が同時に急降下しその技を放った

 

 

「「紅魔「スカーレットクロス」!!」」

 

 

姉妹だから出来る寸分違わぬタイミングからなる同時攻撃、炸裂した破壊力はおそらく通常の5倍以上!

 

 

「カラミティエンド!!」

 

 

対するは最強の手刀、避ける気など更々無く敢然と迎え撃つ

 

「ヌゥ……オオオッ!!」

 

「「ハアアアアッ!!」」

 

全てを出し尽くした全力に全力を持って応える

 

 

ズッ……!

 

 

手刀を穿った双撃が腹部へ向かう、だが片方の腕に掴まれ突き刺さるに留まる

 

姉妹の全てを懸けた合技は最強の手刀を打ち破ったのだ

 

「このまま貫かせてもらうわよ!!」

 

最後の一押しを決める

 

「……余を……」

 

瞬時に再生させた手刀を振り上げ勢いを殺す

 

「侮るなッ!!」

 

 

ドウッ!

 

 

「「アアッ!?」」

 

停滞した力に手刀が切り込まれ炸裂音と共に二人の力は掻き消され、吹き飛んだ

 

「ヌゥ!?」

 

バーンも腕を弾かれ体勢を大きく崩す、二人の全てを弾けさせた衝撃なのだ、頂点を越えるバーンでも何事も無しに返せる筈がなかった

 

「風精「大風妖玉精」!!」

 

「!?」

 

腕を戻す間も無いまま巨大な風玉がバーンに迫る

 

 

「フェニックスウィング!!」

 

 

弾かれてない方の腕で掌底を放つ

 

「グヌッ!?」

 

だが僅かに遅れた事により胸元で受け止める形になってしまう

 

「ううううぅ!!」

 

押しきるため大妖精が力を込める

 

「余を……舐めるでないわ……!」

 

不利な体勢からなのに徐々に押し返していく

 

 

バキィッ! 

 

 

過ぎ去った不死鳥の炎翼がバーンを打った

 

 

ズドオッ!

 

 

炸裂した風玉が不死鳥の残り火を巻き込み炎爆を起こす

 

「ハァ……ハ……ァ……やり……ました……!」

 

力を使い果たした大妖精が項垂れる

 

「でかしたレミリア!フラン!大妖精!後は任せとけ!」

 

叫んだのは魔理沙、八卦炉を中心に巨大な魔方陣を展開していた

 

「くらいやがれぇぇぇ!!」

 

魔理沙は放つ、いつかバーンにくらわせる筈だった最強最高の力の魔法を!

 

 

「魔砲「ファイナルマスタースパーク」!!」

 

 

閃光のように生きた大魔導士の力の全てが炎爆に見えないバーンへ向かう

 

極大のビームが炎爆を晴らし、バーンの姿を視認させる

 

「!!?」

 

見えた瞬間、魔理沙の目が見開かれる

 

(そう来るだろうとは思ってたけどよ!!)

 

大妖精の攻撃に傷付いた姿に驚いたからではない、驚いたのはバーンがしていた構えにあった

 

「天地魔闘の構え……!!」

 

バーンが既にしていた最高の技である天地魔闘の構えに驚いたのだ、予想はしていても記憶に鮮烈に残る技に驚きは隠せない

 

 

「上等だコノヤロー!やああああってやるぜ!!」

 

 

それに更にやる気を上げ、吼える

 

 

「カラミティウォール!!」

 

 

溜め込まれた力で底を上げたエネルギー障壁がビームを防ぐ

 

 

ドウッ!

 

 

障壁は破られた

 

「なんだとッ!?……フェニックスウィング!!」

 

容易く破られた事に驚くバーンだがすぐさま底を上げた掌底で対応するがまたしても弾き返せず押し止めるに留まった

 

「舐めんなよ……!私の生涯を懸けた技があんな壁に止められてたまるか!!」

 

魔理沙は限界を突破していた、その力はまるでチルノすら凌駕した最期の閃光の時の様に

 

「チッ……だけど今はこれが精一杯だぜ……」

 

だがそれでも天地魔闘を破るには至らない

 

「ヌゥアアアアッ!!」

 

咆哮し返さんと力を込める

 

バーンも負けられない意地がある、力では友より上である意地と誇りがあるのだ

 

 

「氷神「凍れる秘法」!!」

 

 

そうそれは……

 

 

「嘘だろ……私とチルノの最高の技を防ぎやがった……」

 

 

最強の攻撃と瞬間的になら最強を上回る攻撃を同時に防げる程に……

 

「これが目指した者を越えようとする想いの力か……素晴らしい力だ、だが……」

 

ビームと迫る極冷を留めながらバーンは微笑む

 

 

「余を越えるにはまだ早かったな」

 

 

ビームを跳ね返そうと腕が動く

 

「クソッタレめ……!まだ私の力じゃ天地魔闘を破るのは無理か……」

 

力及ばない事を認める

 

「……けどなぁ!!」

 

でも今はそれでいい、破れないのは残念だったがそれでいい、今は一人で戦っていない、まだ控えている

 

「パチュリー!!」

 

後を任せれる最高の賢者が!

 

 

「選びし七曜の星、天の魔を受け、極まる星と成れ……」

 

ずっと詠唱を続けていたパチュリーの周囲には7つの魔法の球体が浮かんでいた

 

それぞれ、自身の得意とする月、火、水、木、金、土、日の属性を極大まで高めたもの

 

「我が意思に集え七星よ、パチュリー・ノーレッジの名において、今……深淵の極星へとならん……!!」 

 

7つの球体が七芒の魔法陣に形どる

 

これぞパチュリーの奥の手

 

メドローアとは別のバーンを越える為に造り上げた最大の魔法

 

深淵の1つであるとある呪文を元に自分専用にした新たな深淵の魔法

 

詠唱に時間が掛かるが一度成功してしまえば7人の誰より威力を出せる究極の呪文

 

「行くわよ……」

 

その名を……

 

 

「極大七曜星「マダンテ」!!」

 

 

撃たれた深淵の魔法はなんとビームに触れても何の影響もされずバーンへ繋がる道の様に流れていく

 

「!!?」

 

魔球がバーンへ触れた

 

 

ズオオオオオオオオッ!!

 

 

凄まじい魔力爆発がバーンを飲み込んだ

 

その威力はまるで規模の小さい黒のコア

 

全魔力を注ぎ、7つの属性を練り合わせてこそこの威力に到達したのだ

 

「……くぅ」

 

パチュリーを異常な疲労感が襲う

 

全魔力を使う以上、後は残されていない、本当に最後の奥の手なのだ、つまりパチュリーはこれ以上何も出来ない事を意味していた

 

「……どうだ?」

 

爆発が収まる

 

「グッ……クッ……!?」

 

映ったのは膝を着いたバーンの姿

 

(なんという技だ……!!?)

 

多大なダメージを負っていた、ある部分を除き全体を激しく損傷しビームを受けていた腕が消し飛んでいる

 

(破られたか……)

 

天地魔闘は協力した7人の力で破られた

 

(見事なり……だが勝敗はまだ……)

 

立ち上がり傷を再生させようとした瞬間

 

 

「バーン!!」

 

 

妹紅がバーンを殴り飛ばした

 

「ウオオオオオッ!!」

 

吹き飛ぶバーンを炎を全力に追い掛ける

 

「……ッ!?」

 

飛んでいくバーンに不死鳥の翼を強く羽ばたかす

 

 

「いけ……妹紅!」

 

 

力使い果たした魔理沙が叫ぶ

 

 

「今しかないわ……!」

 

「やっちゃえー!」

 

 

肩を貸し合いながら戻ってきたレミリアとフランも叫ぶ

 

 

「妹紅さん!」

 

「貴方に託す……!」

 

 

支える大妖精とパチュリーが叫ぶ

 

「いきなさいよ妹紅……」

 

最後を託した友にチルノは叫ぶ

 

 

「いけぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

意思を受けた妹紅の不死鳥が更に炎を燃え上がらせる

 

 

 

 

    「不死「火の鳥-鳳翼天翔-」!!」

 

 

 

 

巨大な不死鳥が夜天を翔る

 

 

「「「バーンを倒せぇぇぇぇ!!」」」

 

 

見守る仲間達も叫ぶ

 

そう、ただ一人、バーンだけが元から幻想郷に居た者ではない

 

だからこそ皆はバーンを倒す事に強く同調する

 

倒したいのだ、幻想郷の者でバーンを……

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

意思を内包した気迫が幻想郷の空に響く

 

 

(交わした約束じゃなかった……けど!果たさせてもらう!)

 

近付いていく途中、妹紅は心で語る

 

(今こそお前を越えるぞ……!バーン……!!)

 

衝突する刹那

 

 

 

 

 

 

      不尽の火から生まれるは……

 

 

 

 

 

 

妹紅は確かに聞いた

 

 

 

 

      何度でも甦る不死の鳥

 

 

 

 

    甦るたびに強くなる伝説の火の鳥……

 

 

 

 

 

凝縮された刹那の時の中、確かに聞こえた

 

 

「……!!」

 

 

それは突然なれど優雅に現れた

 

永遠を生きる不死の鳥、妹紅の越える目標

 

 

 

        皇帝不死鳥(カイザーフェニックス)

 

 

 

ドウッ!!

 

 

不死鳥とフェニックスの炎が合わさり大炎が篝火の様に燃え上がる

 

「ッウ……ウラアアアアアアッ!!」

 

不死鳥の進みは止められてしまうが意思を具現した炎は消える事なくそれどころか更に燃え上がりフェニックスを押していく

 

「目に焼き付けろ……これがお前の目指した……余の不死鳥だ……!」

 

既に静止していたバーンの言葉が聞こえると2体目のフェニックスが合わさり更に巨大なフェニックスに成った

 

「ウゥ……!?グゥゥゥゥゥゥ!?」

 

押されていく

 

「お前達はよくやった……もう休め」

 

全力のバーンに7人は勝てないのか?

 

「……ふざけんな……!」

 

押し寄せる敗北の中、妹紅は諦めていなかった

 

「負けられないんだ私達は……!勝つんだ……!勝つんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

雄々しく叫ぶは魂の咆哮

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!いけ妹紅!」

 

見ていた慧音が声を上げる

 

「今しかないんだ!そのフェニックスに勝つには今しかないんだ!」

 

妹紅がバーンの不死鳥に馳せる想いを知るゆえ叫ぶ

 

「越えるんだ妹紅!バーンの不死鳥を越えて……その名を本物にしろ!」

 

友の勝利を祈る

 

「勝て!妹紅!!」

 

 

 

 

 

「!!?」

 

その時バーンは感じる

 

(余の不死鳥が……止められた……)

 

尋常ならざる意思を

 

 

「ウ……アアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

妹紅が雄叫びをあげたと同時

 

(おお……首の無い不死鳥が……)

 

炎が集まり顔を形成した

 

 

ズバアッ!

 

 

フェニックスが貫かれ拳を振り上げた妹紅が一直線にバーンへ向かう

 

 

「アアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

最後の一撃が放たれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

力が抜けて言葉が出せない

 

「負け……だな……」

 

なんとか言葉を絞り出す

 

「何を言うか……」

 

返されたのは否定の言葉

 

「お前の勝ちだ……妹紅よ……」

 

そこには力尽きてバーンに抱き締められた妹紅の姿があり

 

「……」

 

満足そうに笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か妹紅!?」

 

バルコニーに降りてきた8人に慧音は妹紅が心配で寄っていく

 

「なんとか……ね」

 

誰しも傷付き疲れていた

 

しかし誰もが満足な顔をしていた

 

「終わったようだね」

 

萃香がバーンへ話し掛ける

 

「来ていたのか」

 

「そりゃあね……それより良い勝負だった!幻想郷の歴史に残る名勝負だったよ!」

 

「そうか……それは何よりだ」

 

バーンはわかっている、楽しそうに話し掛けるこの顔が無理をしているのだと

 

「だが萃香……」

 

だからそんな無理して作る笑顔が見たくないから言う

 

 

「終わるのは今からだ」

 

 

最期を……

 

 

 

 

 

「勝てはしなかったけどよ、どうだった?私達強くなったろ?」

 

「7人がかりとは言え余をあそこまで追い詰めた、100年前は無傷だったのだ……それを考えれば快挙と言えよう」

 

「でも7人でだからなぁ……まだまだ背中は遠かったぜ」

 

笑い合う7人

 

そんな笑顔を見ながらバーンは告げた

 

「お前達に褒美をやろう」

 

魔力の球体を7つ飛ばす

 

バーンが7人に贈った道具に吸い込まれると淡い光を放ち暴魔のメダルと同じ刻印を刻んだ

 

「……これは?」

 

「それは印だ」

 

道具を指して言う

 

「お前達が余を卒業した認可、と言う事だ」

 

「卒業……?」

 

意味がわからないとバーンを見つめる

 

「お前達は充分に余との約束を果たした、いつまでも縛る訳にはいかん……この際だ、あの約束は破棄しよう」

 

「は……?何言ってんだお前?」

 

魔理沙が信じられない目で睨む

 

「もう余を追うなと言う事だ」

 

「ふざけてんのかバーン!!」

 

怒声が響く

 

「何言ってるかわかって言ってんのか!?」

 

卒業の意味

 

それは繋がりを切るとの意味だった、それに怒るのは当然の事

 

「わかっておらんのはお前達の方だ!!」

 

バーンも怒声を返す

 

「死んだ者の背をいつまでも追い掛けるなど無意味と知れ!」

 

「それじゃあ私達が馬鹿だったって言いたいのか!?」

 

「そうであろうが!居もせん幻にいつまでもいつまでも……今回は奇蹟が起きたに過ぎん!奇蹟が起きなければお前達は永劫余の幻想を追い続けた筈だ!違うか!?」

 

終わらないがなり合い

 

バーンは消えてしまう自分に縛られて欲しくなくて、それで良かった魔理沙は許せなくて言い合う

 

「そうだよ……!奇蹟だよ!!」

 

妹紅が叫ぶ

 

「奇蹟が起きたからまた会えた!でもなバーン!その奇蹟を起こしたのはお前との絆があったからなんだ!」

 

溢れる想いに二人は黙る

 

「例え幻でも……お前は今ここに居るじゃないか、だから……!そんな事言うなよ……どんな形だって報われたんだ……」

 

 

 

「私達の想いを……無意味なんて言わないでくれ……」

 

 

 

静寂が皆を包む

 

「……絆とは、想いとは決して切れず、そして尽き果てる事なき不滅のものだったな」

 

諦めたバーンが呟いた

 

「ただ余はお前達に好きに生きて欲しかっただけだ、余と言う確かめられぬ幻想に縛られる生き方をやめて自由に生きて欲しかった……だからこそ余は卒業の証を渡したのだ」

 

「わかってますよ」

 

その想いは大妖精にはわかっていた

 

「不器用なのは相変わらずね……そんな一方的だから喧嘩になるのよ」

 

皆も当然わかっている、感情で動く魔理沙と妹紅だから言葉に出したのだ

 

「この卒業の証さ……貰うよ」

 

代表して妹紅が言った

 

「勘違いすんなよ?これはお前との変わらない絆の証として貰うんだ、約束は忘れない……ただ意味が変わっただけだ、これからはお前に縛られずに好きな様に、自分達の意思でお前を目指す」

 

「ならいい……」

 

嬉しく微笑むとバーンは空を見上げる

 

「もうすぐ陽が昇るな……」

 

空はかなり白みを帯びていた

 

「お前達に言う事はもう特にはない……」

 

妹紅を見つめる

 

「永遠を生きるお前のその優しき生き方……辛くはないか?」

 

「辛くないよ、自分で決めたんだ……後悔なんてしてない」

 

「そうか……」

 

バーンは頷くと贈った

 

「頑張るのだぞ……皇帝不死鳥」

 

真に成ったと認めた名を……

 

「……うぅ……ぐっ……」

 

俯いた妹紅の声に嗚咽が混じる

 

成し遂げていたのだ、妹紅は

 

 

カイザーフェニックスを破り名を真にするという目標を

 

 

「う"ん……頑張る……頑張るよ……」

 

それを本人から認められ感極まり涙が流れるほど嬉しかった

 

 

「良い所だ幻想郷は……」

 

目を閉じてゆっくりと感慨深く話される

 

「忘れられた者達の郷、幻想の住む楽園……花は舞い、動物は歌い、人妖が共存する幻の世界」

 

ここで有った事を思い出す

 

「ここには居た……信頼出来る仲間が居て、そして……」

 

目を開けその者達を見つめる

 

「友が居た」

 

 

 

……ポゥッ

 

 

 

バーンの体から光の粒子が舞い上がる

 

 

「素晴らしかったぞお前達は……余の生き方すら変えてしまう程に……」

 

 

「一月ばかりの僅かな再誕だったが……本当に充実した日々だった……余の一度目の生涯に匹敵する輝きがあった……」

 

 

舞い上がる粒子の数が増えていく

 

「……頼みがある、よいか?」

 

バーンは戦いの最中でも決して傷つけなかった箇所に手を触れ願いを言った

 

 

「このスカーフを一緒に持っていっても構わんか?」

 

 

7人が贈ったスカーフ、それと一緒に消えたいと……

 

「頼む……これがなければ心細くて消えるに消え切れぬ……頼む……」

 

「バカヤロウ……」

 

溢れそうな涙を抑えながら魔理沙は言う

 

「それはお前のだろうが……私達が作った……お前の為の……!」

 

当たり前の事を聞くなと……

 

「すまぬ……」

 

許可されて嬉しそうに頬を緩ませる

 

「そろそろ時間だ」

 

粒子が更に溢れ夜明け間近の空へ消えていくとバーンの体を薄くさせていく

 

もう消えるのに僅かしか無かった

 

 

 

 

その時だった

 

 

 

 

「……」

 

不意にレミリアがバーンの横へ並ぶ

 

「レミ……リア……?」

 

何をする気だと皆は思うが決意した瞳を見せられて誰も動けなかった

 

「私も行くわ」

 

バーンへ微笑む

 

レミリアの決意とは愛するバーンと共に消える事だったのだ

 

「何言ってんだレミリア!!」

 

止めようとする皆をレミリアは手をかざして制止する

 

「もう……決めた事なのよ」

 

その隠されていた決意は誰も気付く事は出来なかった

 

 

いや……兆候はあった

 

 

バーンが消える事を知っていてなおレミリアはずっと一緒だと何度も言っていた

 

本当の事を話してとの願いだと皆は思っていたが違ったのだ

 

自分がバーンに付いていく

 

願いではなく、ただ決意が滲み出ていただけ……

 

 

「よいのかレミリア?」

 

「愚問ね、これは私が決めた事……後悔なんてしてない」

 

 

もう誰にも止めれない

 

 

「お姉様!?」

 

「ゴメンねフラン……私はダメな姉だったわね」

 

「そんな事ない!お姉様はダメなんかじゃない!あたしにとっては自慢のお姉様だよ!」

 

「ありがと……それでねフラン、我儘……聞いてくれる?」

 

「そんなの聞きたくない!ヤダ……!ヤダよお姉様!?」

 

「紅魔館の主は貴方に譲るわ、だけど貴方は好きに生きなさい……スカーレットの運命に縛られずに……貴方の思うままに……」

 

「ヤダ!!行かないでお姉様!あたしじゃ無理なの!紅魔館は……スカーレットはお姉様じゃなきゃ!!」

 

「ゴメンね……」

 

「お姉様ぁぁぁぁ……!?」

 

泣くフランに申し訳なく目を逸らすとバーンを見上げる

 

「行きましょう」

 

バーンに手が伸ばされる

 

「……レミリア」

 

握ろうとバーンも手を伸ばす

 

 

「許せ……」

 

 

その手は握り合う事はなく交差し

 

 

 

トンッ……

 

 

 

レミリアを押した

 

「……!」

 

友の前に倒れたレミリアは何が起きたか理解しバーンへ顔を向ける

 

「どうしてよォッ!!」

 

拒否された事が悲しくて叫ぶ

 

「バーン!!」

 

何故一緒に行ってはいけないのかと

 

「お前まで消える必要は無い」

 

バーンはこうなる事を知っていた

 

あの日、王達と会ったあの日にレミリアは抱きつきバーンの心に触れて想いを知った

 

その時、同時にバーンも知っていたのだ、レミリアの秘めた想いに……

 

だから考えた末にこうする事に決めていた

 

「バカァァァァァァァ!!」

 

涙を流しながら叫ぶのは本当に、本当に心の底から一緒に居たいと思っていたから、それが叶わないから想いが悲しみに変わって溢れ出す

 

「……ッ!?」

 

レミリアがバーンの元へ向かおうと立ち上がる

 

「レミリア!!」

 

「お姉様!ダメッ!!」

 

チルノとフランが組み付き止める

 

「行っちゃダメです!!」

 

大妖精が立ち塞がり押す

 

「離して!!離してよォォォッ!!」

 

その力は凄まじく、力の強いフランを含めた3人掛かりでも止められず少しずつ近付いていく

 

「レミリア……」

 

他の皆は止めずに見守るだけだった

 

それだけ強いレミリアの想いに止めるのが正しいのかわからなかった

 

「お前は生きろ……」

 

「嫌よッ!!」

 

想いを遂げる為の力は増し、更に近付いていく

 

「こうする事が……こうして自分の愛する者を守って生命を懸ける事が……僅かな時を再誕した……余の使命だったのだ……」

 

「私を置いていかないで!愛する人が2回も死ぬなんて見たくないの!貴方が居なくなったら……もう耐えられない!!」

 

もう少しで辿り着く

 

「勝手な事言ってんじゃないわよ!!」

 

チルノが叫ぶ

 

「あたいだってバーンが消えるなんて嫌に決まってんでしょ!皆も同じ!なのにあんたはあたい達に相談もせずに一人で勝手して……!!このバカ!!」

 

「……うるさい!バカはあんたでしょうが!私とバーンの事なんだから放っておいてよ!!」

 

「あたい達友達でしょ!友達が勝手に死のうとするなんて止めるに決まってんでしょ!!」

 

友達が相談も無く死のうとしている

 

誰よりも友達思いのチルノがそれを許す筈がない

 

レミリアの想いをわかった上でそれでも止める

 

それがチルノの生き方だから……

 

「あたしにはお姉様が居ないとダメなの!お願いだから行かないで!!」

 

「ッ……!?フラン……!!?」

 

フランも泣きながらしがみついていた

 

血の繋がる姉妹だからより繋がりは強い、今まで支えてくれた姉にかなり依存していたフランにとってレミリアは友やバーン以上に大事な人なのだ

 

「残された人の事を考えてください!」

 

大妖精もさせまいと叫ぶ

 

「バーンさんが死んだ時!残されたレミリアさんはとても辛くてずっと悲しんでたじゃないですか!」

 

「……」

 

「それを私達にもするんですかレミリアさんは!!」

 

「ッ!!?」

 

あんな思いはもうしたくない、させたくない

 

そう思う大妖精は心を鬼にして最良の選択をしたのだ

 

消える事が決まっているバーンの意思を汲んで……

 

「私達を想うなら止まってください……!!」

 

「ッッ……!?」

 

3人の想いに勢いが緩む

 

「やめろレミリア……余を想うならば……生きてくれ」

 

「バーン……」

 

歩みは止まった

 

「どうして……止めるのよ……どうして……うー……」

 

代わりに出るのは胸が張り裂けそうな悲しみと

 

 

「バーーーーン!!!」

 

 

響く慟哭……

 

 

 

 

 

 

これで全ては済んだ

 

 

 

 

 

もう何も起きる事はなく

 

 

 

 

 

その時を迎えるだけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

存在が限りなく薄くなっていく

 

 

消えてしまう

 

 

もう陽が昇る

 

 

「また……会えるよな!またいつか……絶対会えるよな!!」

 

 

「別れではない、余はいつでもお前達と一緒だ」

 

 

「そっか……そうだったな、お前は太陽に戻るだけなんだもんな」

 

 

「これから先、歩んだ道のどこかで傷付き迷う事もあろう……辛くなれば太陽を見ろ……余はいつでもお前達を見ている、永久に……」

 

 

「じゃあ……さよならは……言わないぜ?」

 

 

「無論だ、レミリアと……皆を任せたぞ」

 

 

「わかった……!!」

 

 

誰もが泣いていた

 

誰もが悲しみに顔を濡らす

 

 

「そんな顔で送ってくれるな……お前達の泣く顔で送られるのは余も辛い……だから泣くな、泣かないでくれ……」

 

最期くらい……望んだ笑顔で……

 

そんな想いを受け取って

 

「……わかったよ……!!」

 

皆は涙に濡れたままで顔を上げ

 

 

「またな……バーン……!!」

 

 

笑った

 

 

「……この時より何年、この先何年経とうとも……」

 

 

陽の光が後光の様にバーンを照らす

 

 

 

「ずっと覚えていてくれ……また……思い出してくれ……」

 

 

 

忘れないでくれ……

 

最後にそう願った

 

 

「忘れないから!貴方の事!どんなに時間が経っても……!!」

 

 

最後にレミリアが誓った直後

 

 

フッ……

 

 

バーンの体は消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      最後の粒子が舞い上がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  -- 余は……なれただろうか……

 

 

 あの勇者達の様に懸命に生きれただろうか……

 

 

   閃光の様に眩しく燃えて生きるお前達の……

 

 

 

 

 

         太陽に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや……成れていたか……

 

 

 

 

 

         あの……

 

 

 

 

 

              顔を見れば…… --

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の全ては幻想郷から消えた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

陽が照らすバルコニー

 

誰も喋りはしなかった

 

 

居なくなった悲しみを出さない様に堪えていた

 

 

「……なぁ……」

 

妹紅が歩き出す

 

「さっきまで……居たよな?」

 

バーンの居た場所で止まり呟かれる

 

「……ここに!あいつは居たよなァ!!」

 

振り返った顔は今にも潰れそう

 

「なんで消えるんだよ!せっかくまた会えたのに……なんであいつだけ消えるんだよ!!」

 

皆、同じ事を思っている、堪えていたのはそれがバーンの願いだから

 

だが妹紅だけは堪えられなかった

 

「バーン!!」

 

抑えきれない感情が破裂する

 

「お前……不死鳥なんだろ!?そうだよな!?」

 

地に拳を叩きつけ叫ばれる

 

 

「だったらまた甦れよ!!また私達の前に現れろよ!!」

 

 

悲痛の叫びが木霊する

 

「妹紅……」

 

そんな姿に仲間は何も出来ず涙を流すのみ

 

「妹紅……!!」

 

6人の友が寄り添い抱き締める

 

「泣かないで妹紅……泣かないで……」

 

「そうよ……バーンが……見てるのよ……また怒られちゃうじゃない……」

 

慰める6人も妹紅と同じ様に泣いていた

 

 

 

「「「うあぁ……あああああああああッ!!」」」

 

 

 

焼けた傷口が痛い……

 

 

 

「ああっ……ああああああああああっ!!」

 

 

 

これで、もう最後の涙を流すから……

 

 

「バ-----ン……!!」

 

 

今だけ……泣かせてください……

 

 

 

 

 

 

    さよなら……誰よりも愛した人……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王の物語は終わり、幻想郷の見た夢幻の時は終わった

 

 

 

 

このまま幕を閉じるのも良いのだろう……物語は終わったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ……終わりがあれば始まりが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(バーン……やはり私は……)

 

幻想郷のどこかで一人、想いを決意に変えた者が居た

 

(……行くか)

 

一人の神は人知れず幻想郷から姿を消した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや……まだ終わってないのだとしたら……?

 

 

 

もしそうだとすれば物語は……まだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この……夢幻の物語は……まだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お待たせしました、最終話です。

かなり詰め込んでしまいましたがどうでしたか?
妥協したくなくて頑張ったのですが前後に分けるべきだったかなと少し後悔した文量になりました……

楽しんでいただければ幸いです。

では次回……も…………
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