東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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エピローグ -夢現幻想-

 

 

 

 

 

地獄の帝王が幻想郷で起こした異変

 

 

後に帝王異変と呼ばれるこの異変、異世界の魔族の王が八雲紫を捕らえて起こした野望の為の下地

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか……」

 

神々たる神殿の奥

 

神座に座した神が来訪者を見下している

 

「ようやく……ようやくここまで来れた……」

 

来訪者が神を見上げる

 

彼女もまた神であった

 

とある世界に住まう神の一人

 

だが彼女は何故か全身ボロボロで疲れ果てた様子、足取りすら重い

 

「お前が他の神々を訪ねていた事は知っていた、しかし……まさかここまで来れるとは……流石は独立不撓の神と言ったところだ……」

 

神には疑問があった

 

「何故そこまでする?かつては我すら越える力を持っていたお前が……プライドを捨て、身を削ってまで神々に協力を頼む……理解出来ん」

 

「……その問いは幾度されただろうか……」

 

女性の神は確かな意思で答えた

 

「罪を償う為だ……」

 

この行為は贖罪の為

 

「私には罪がある……許された罪……だがな……」

 

「ならばそれは無意味な行為ではないか」

 

「違う……例え許されようとも私がそれを許せない、だから私は今、ここに居る」

 

理解されなくとも構わない、想いの罪なのだから

 

(それに完全に許された罪ではない、あの7人に許されて初めて許されたと言える……避けた私に今更諦めて帰れる場所など無い……)

 

決意に変えた想いが彼女をここまで突き動かす

 

「長い道のりだったが……お前で最後だ……」

 

目的を前に最後の障害を見据える

 

「……」

 

神は睨む

 

「我が試練を成し遂げたなら協力してやろう」

 

神が立ち上がり力を見せる

 

「我を打ち倒して見せよ」

 

条件を掲示し構えた

 

「……わかった」

 

神奈子はボロボロの体に力を込める

 

「それが贖罪へ繋がるなら……是非も無い!」

 

御柱を構え飛び上がる

 

 

「ゆくぞ……!創造神……グランゼニス……!!」

 

 

「来い!八坂神奈子!!」

 

 

神話の神々は戦う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは夢へと繋がる因果の道でもあった

 

 

帝王の果てぬ執念に埋め込まれた暗い因子が発現し、帝王の全てを依り代に夢は具現した

 

具現した夢の破壊神に誰もが敵わなかった、再誕した王ですらも……

 

 

しかし、繋がれた絆が奇蹟を起こした

 

 

幻想郷全ての絆を合わせたスペルにより破壊神の撃退に成功したのだ

 

 

去り際に王が言った発言からこの異変は暗夢異変と名付けられ、帝王異変と合わせて夢現異変として後に幻想郷に起きた最大最悪の異変として伝えられるだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か久遠の彼方のとある世界

 

 

 

彼等は平和な時を過ごしていた

 

 

 

「次はどこに行くんだ!」

 

未開の地を進むパーティー、その中に居る魔法使いの青年が楽しそうに皆に問う

 

「その事なんだけど……」

 

武道家の女性が手紙を見せながら困った様に答えた

 

「誰からの手紙だ?」

 

「カール王国に残ったヒュンケルとクロコダイン達からよ」

 

「なんて書いてあんだ?ついにマリンさんと結婚でもしたのか?」

 

「そんな訳ないでしょ!バカ!」

 

「イッテェ!?殴る事ねぇだろマァム!冗談に決まってんだろうが!」

 

「うるさい!!」

 

「今のはポップさんが悪いと思います」

 

「んだよメルルもかよ……」

 

ばつの悪そうにたんこぶを擦る青年

 

「そんでぇ?何が書いてあんだよ?」

 

「最近カール王国や周辺諸国で魔物が団結する動きがあるらしいのよ」

 

「団結……?まさか誰かが纏めあげようとしてる……?」

 

「ええ、ヒュンケルも先生もそう思って獣王遊撃隊の皆と探ってみたらしいの……そしたら断片的だけど首謀者らしき者の情報が浮かんできたみたい」

 

「名前とか?」

 

「そっ……何者かはまだわからないみたいでラプ様やらソーン様とか呼ばれてるってだけしか得られてないみたい」

 

「二人居るのか……?……もしかして繋げてラプソーンって名前だったり?」

 

「そんな安易な……何にせよまた危機が迫ってるかもしれない!戻りましょう!」

 

「だな……おーい!」

 

青年は少し離れて空を見上げていたまだ幼さが残る青年未満、少年以上の勇者に呼び掛ける

 

「どうしたんだポップー!」

 

勇者が振り向く

 

「なんか向こうが危ないかもしれないってよー!姫さんも心配だから戻ろうぜー!」

 

「ええっ!?どういう事だよポップ!」

 

「いいから早く来いってダイ!」

 

わかったと勇者は傍で浮かぶ友達に向く

 

「行くよ!ゴメちゃん!」

 

「ピィ!!」

 

再会した友と走っていく

 

 

また大冒険の始まりなのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

 

不意に太陽から流れていく何かを感じて友は止まった

 

「……」

 

遥か過去になるここに寄り道の様に流れていく自分しかわからない同じ力の塊

 

「……ピィィ!」

 

それに願いを乗せた

 

強い想いを込めてそっと乗せた

 

 

叶いますように……と……

 

 

「どうしたのゴメちゃん?」

 

勇者が不思議に聞いてきたが友は

 

「……ピィ!」

 

何でもないよと微笑み走っていく

 

(君は元気かい……?)

 

一人想いながら……

 

 

(妹紅……)

 

 

もう一人の親友を想いながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

 

 

僅かな時を再誕した幻想ノ王は友の成長を見届けた後、再び戻っていった

 

 

 

今もなお私達を照らす……

 

 

 

あの太陽に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

稗田阿求は書いていた手を止め一息ついた

 

(夢現異変とバーンに関してはこんなところですね……)

 

お茶を啜りながら書いた文章を読んで条件に合っているか確認していく

 

(詳細を書いて良いのは夢現異変のみ、バーンに関しては最少に留める……ようやく執筆の許可を得たんだから慎重に見とかないと……)

 

阿求は幻想郷の新しい歴史を書いていた

 

長らく書く許可を得られなかったが条件付きでだがついに許可され誠意執筆中

 

(これならあの7人も大丈夫かな)

 

条件の内にあるバーンに関する記述への限定

 

それは7人の為

 

悲しい別れをした7人の傷口を悪戯に拡げない様にと紫から出された条件だった

 

(よし……大丈夫ですね)

 

問題は無いと筆を動かす

 

「破壊神を撃退した絆のスペル、名の無いスペルだったが一度名前を決めようとの動きがあった」

 

ブツブツ話しながら筆は進む

 

「「廻る幻想」「幻想の絆想」など様々な案が出たがスペルの中心に居た彼の頂点の一人である魔女の二天、大魔導士・霧雨魔理沙が「ミナスパーク」で決まりと言い張り大いに困らせた」

 

その時を思い出し苦笑する

 

「……結論から言うと名前は決めない事で決定した、他の頂点の一人である藤原妹紅の一言でそうなったのだ」

 

「「あのスペルはあの時、バーンが居たからこそ出来た奇蹟のスペル……もう二度と出来ないのに名前なんて必要無い」……それが決め手で名前は付けない事で終わったのだ……破壊神を撃退したあの幻想郷の光は名の無い絆のスペルとして後世へと伝えられるだろう」

 

そこで筆は止まり、阿求は天井を見上げた

 

(そう……バーンが居たからこそだった、バーンが居たからこそ今の幻想郷がある)

 

今生きている事を噛み締めながら物思いは耽ていく

 

(バーンがまた消えてからの幻想郷……変わりなく平和に過ごしている……)

 

また机に顔を戻すと頬杖をついて複雑に表情を曇らせた

 

 

「私達の誇る……あの頂点達以外は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の里

 

「終わったよ慧音」

 

寺子屋へ現れた少女

 

「すまなかった妹紅、まぁあがってくれ、お茶でも出そう」 

 

中へ通された少女は縁側に座る

 

「急に頼んで悪かったな妹紅、怪我とかしてないか?」

 

「私がする訳ないだろ?まぁあの暴れてた新参の妖怪は中々強かったからね、慧音じゃキツかったかな」

 

「お前がそこまで言うのなら本当に強かったんだな」

 

お茶を差し出し一緒に座る

 

「どうだ?最近は?」

 

「相変わらずだよ、いつも通りさ……」

 

少女の返事はいつもの感じ

 

「……」

 

だが知る者にはいつも通りではない

 

「さ、最近はあいつらに会ってるのか?」

 

「いや……会ってないよ、最後に会ったのはいつだったっけ……」

 

(ッ!?)

 

普通に話す友に心が痛い

 

「大妖精は……元気だよ」

 

「……そうか」

 

「相変わらず説教しまくってるよ……誰の影響だろうなぁ」

 

「弱かった時は言いたい事が言えなかったからな……その反動かもな」

 

「修行の方はチルノとちゃんとやってると聞いた……」

 

「親分は元気?」

 

「元気だよ、今を持ってなお最強に君臨する氷帝だ、レティを除いた氷を扱う妖怪からは神の様に崇拝されているらしい」

 

「流石だな親分は……」

 

「もっともチルノは子分はお前だけと言って気にしてないがな」

 

「そっか……」

 

「フランも魔理沙と一緒によく遊びに来るぞ!あの二人も元気だよ」

 

「それは良かった」

 

「フランは紅魔館から出なくなったレミリアの為に色々話を仕入れて聞かせているらしい、パチュリーはそんなレミリアを気遣って滅多に外へ出なくなった、魔理沙は……毎日フラフラして遊びに来るだけだが」

 

「そうなのか」

 

感情の籠らない返事に慧音の心は痛い

 

(魔理沙は……チルノと大妖精と共に……また昔に戻れるきっかけを探しているんだ妹紅……あの日以来、だんだんと離れていった7人がまた昔の様に笑い合える事を信じて……!!)

 

あの悲しい別れ

 

二度目の別れは幻想郷の心に深い傷跡を残した

 

仲間達は悲しくもあったがすぐに立ち直り普段の生活へ戻っていったが7人の友だけは違った

 

あの日から次第に元気が無くなっていったのだ……

 

妹紅とレミリアの二人が特に酷く、妹紅は生気すら無くなっていき、レミリアは紅魔館から一切出なくなり自室でそのほとんどを過ごしている

 

より深い絆を持っていた7人だから失った痛みが酷く、時間が経ってより酷くなっていた

 

「なぁ妹紅……」

 

そんな友に慧音は問う

 

「まだ……修行しているのか?」

 

約束を守っているのかと

 

「……してるよ」

 

生気薄い瞳で妹紅は答える

 

「私は皆を任された皇帝不死鳥だからね……」

 

太陽を見上げながら独り言の様に少女は呟く

 

「誰が相手でも負けないようにしとかないとなぁ」

 

乾いた笑顔で妹紅は笑った

 

「ッ!?……妹紅!!」

 

それが慧音には堪らなく苦しい

 

「その作り笑いをやめてくれ!!」

 

妹紅を気遣ってずっと我慢して来たがもう限界だった、溢れた想いが吐き出され妹紅へぶつけられる

 

「お前は!そんな奴じゃなかっただろう!バーンを越えるのを夢見て!険しいがそれでも楽しそうに笑う奴だっただろう!?」

 

友の変わり様が見るに堪えない

 

「強くなるのはお前とバーンで確かに約束された事だ!だがお前は……今のお前はそれが義務になっている……!」

 

慧音には妹紅のそれがさせられている様に見えるのだ

 

「……」

 

妹紅の表情は変わらず慧音を見ているだけ

 

「今のお前は人形みたいだ……初めて私達が出会った時の……あの人形みたいな時と同じ……」

 

涙を流して妹紅の肩に寄り掛かる

 

「……ごめん慧音」

 

慧音の頭に手を回して抱き締める妹紅、しかし心は何も動じていなかった

 

「笑えないんだ……あの日から私は笑えなくなっちゃってさ……」

 

虚ろな顔でまた太陽を見上げた

 

(なぁバーン……)

 

(こんな事になるのなら……私達は出会うべきじゃなかったのかもしれない……)

 

 

 

 

        あの日から5年

 

 

 

     私は泣かなくなった、でも……

 

 

 

 

        笑っていない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻葬曲は続いていた

 

 

 

音色が魂を痛め、心を蝕む呪曲となって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「あ……」

 

仕事中に気付いた咲夜

 

(いけない……忘れてた)

 

中断してそそくさと控え室に向かう

 

「これでよし」

 

控え室で咲夜は札を取り替えた

 

(見つかったら妹様に怒られちゃいますからね……)

 

立て掛けられた出勤表を見て思う

 

 

これはフランが作った出勤表

 

 

紅魔館で働く主な二人の為に自作した物

 

「……」

 

咲夜と書かれた横に隣接する名前を見て表情が曇る

 

もう一人はウォルターの場所だった

 

作って以来、ずっと休みの札が付けられている

 

「妹様……」

 

まだ待ち続けているのだ、自分の家族を……

 

「……」

 

仕事へ戻る途中、咲夜は顔を落とした

 

(……紅魔館は変わってしまった、誰にも会わなくなったお嬢様の紅魔館に人が来る事は無くなった……あんなに賑やかだったあの紅魔館は……もう無い)

 

辛い現状に足が止まる

 

「咲夜……」

 

声が掛けられた

 

「パチュリー様……」

 

掛けたのはパチュリー、普段通りなのにとても疲れている様に見える

 

「どう?レミィの様子は?」

 

「相変わらずです……先程、妹様が帰って来て向かわれましたが変わりはないかと……」

 

「そう……」

 

悲しく視線を落とすパチュリー

 

「大丈夫ですか?パチュリー様?」

 

咲夜にはパチュリーも相当無理してる様に見えていた

 

「……大丈夫よ」

 

図書館へ戻っていくその背はもう前の様な頼もしさは無かった

 

「こんにちは咲夜さん、先生は図書館ですか?」

 

その後に来たのはレティ、弟子である彼女は弱っている師を支えるためほぼ毎日来ていた

 

「ええ、今戻って行ったわ……パチュリー様をお願いねレティ」

 

「わかりました!」

 

追いかける様に走って行ったレティを見送り、咲夜もまた重い足取りで仕事へ戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷のとある丘

 

「……」

 

そこには景色を眺めながら酒を飲む萃香が居た

 

「はぁ……」

 

溜め息を吐いて黄昏る

 

(あんたがまた居なくなって何にも面白くなくなっちまったよ……)

 

大魔王を注いで一口飲むその表情はとても寂しげ

 

(思う以上に辛い事だったのさ……二度だよ?あんたにはそれしか出来なかったのはわかるさ……だけどねバーン……人も妖怪もそこまで強くなんてないのさ……)

 

いつもの様な豪快な飲み方ではなく一口ずつ飲むのはやはり焼けた傷が痛いのだろう

 

(だから今の幻想郷はこんなさ……あんたの生きた証はあんたの二度目の死ってな呪い傷でどいつもこいつも虫の息さ……もちろんあんたにそんな気は無いし望んでないのもわかってるよ……けどあんたの選択が今を招いたのさ)

 

萃香は今の幻想郷が嫌いだった

 

(想いと絆が殺そうとしてるんだよ……?惨過ぎるだろうよこんなの……)

 

こんな理不尽な今が

 

(私等じゃ何もしてやれない……)

 

でも何も出来ない無力な自分が……

 

「バーン……」

 

今まで幾度問おうが何も答えてくれない太陽を見上げるがやはり何も答えてはくれない

 

「何してんだいあんたは……この傷を癒せるのはあんたしかいないってのに……無責任な事してんじゃないよ……バカ……」

 

今を憂う霧の鬼は願いながらそっと頭を垂れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・レミリアの私室

 

「……!!」

 

寝ていたレミリアは飛び起きた

 

「……ッッ!?」

 

苦しい顔でベッドを握り締める

 

(また……夢にバーンが……)

 

どうしようもなく苦しい

 

(なんで……なんで出てくるのよ……)

 

苦しいのはわかっているから

 

今見たのは実体すら無い幻で、バーンは居ないのだと

 

愛するが故にそれが苦しい

 

(ねぇ……綺麗なまま夢に出てこないでよ……まるで冷たい陽炎……)

 

手を伸ばしても届かない

 

それが余計に苦しいのだ、願う程に……

 

(無理ね……容易く忘れるくらいなら……愛したりしない……)

 

レミリアは誰とも会わなくなり、自室に引き籠り1日の大半を寝て過ごしていた

 

寝ている時は辛い現実を見なくて済むから……

 

 

 

コンコンッ……

 

 

 

ノックの音がする

 

 

 

 

「……起きてるお姉様?」

 

フランはドアをノックして返事を待つ

 

「どうしたの……フラン……?」

 

聞こえてきた返事、酷く弱々しい

 

「ッ!?」

 

全く生気を感じられない声にフランの顔も歪むが持ち直してドア越しに話し掛ける

 

「またいっぱいお話持ってきたよ!」

 

抑えて元気に話し出す

 

「命蓮寺ね!最近また妖怪が沢山入ったんだよ!それで皆で運動会したりしてすっごく楽しそうなの!」

 

「そう……」

 

「文なんて新聞のネタが無いからって自作自演しちゃってバレて焼鳥にされそうだったんだよ!」

 

「そう……」

 

「正邪は最近、輝夜と一緒に修行しててドンドン強くなってるの!追い抜かれちゃうかも!」

 

「そう……」

 

「青娥は妹紅にあの手この手でアプローチし続けてるよ!成功してないけどね!」

 

「そう……」

 

「妖夢は相変わらずかな~剣の修行ばっかりしてて中々遊んでくれないの、ロン・ベルクって目標に一途に頑張ってる!」

 

「そう……」

 

「にとりは相変わらず改造ばっかりしてるけどなんか最近「そろそろかな……」なんて意味深な事言ってるの、何の事だろうね!」

 

「そう……」

 

「皆……頑張ってるんだよ」

 

フランのトーンが落ちた

 

「だから……だからお姉様も……一緒に頑張ろ?」

 

頼み、いや願い

 

「バーンが居なくなって悲しいのはわかるよ……でも……いつまでもそんなんじゃダメだよ……このままじゃお姉様壊れちゃうよ……」

 

フランは塞ぎこんだレミリアに立ち直って欲しいのだ

 

「……フラン……」

 

ドア越しに返ってきた返事に希望を感じて嬉しそうに顔を上げるフラン

 

「ゴメンね……」

 

返ってきたのは謝罪だった、すなわちそれは無理との返事

 

「……ッ!?お姉様!!」

 

それにフランの感情がぶつけられる

 

「お姉様はそんなに弱くない!お姉様の!スカーレットの誇りはどうしたの!!ねぇお姉様!!」

 

伸ばされた手がドアに触れ、体が崩れていく

 

「また顔を見せてよ……また皆で遊ぼうよ……ねぇ……お姉様……お姉様ってば……」

 

流れる涙の滴が床に落ちる

 

「ゴメンねフラン……ゴメンね……」

 

それでも変わる事はなかった

 

「お姉様ぁぁぁ……」

 

啜り泣く声だけが紅魔館に響く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭

 

「……!」

 

薬の研究をしていた永琳は遠くから聞こえる声に気付き向かった

 

「……また修行してるの?」

 

掛け声を発しながら一心不乱に型をする鈴仙に問う

 

「当然……ふっ!……ですよ!」

 

汗だくの鈴仙は答える

 

「美鈴師匠を越えないといけませんから!」

 

ビッと拳を突き出し残心を取り次の流派・東方不敗の型を始める

 

「破門になったでしょ?」

 

「違います!アレは師匠が私を一人前に認めてくれたからです!「もう教える事は無い、後は練度のみ!」つまり後は一人でやれとの東方不敗流の隠語だったのです!」

 

鈴仙はそうであると信じて疑わない

 

実際は面倒だったから本当に破門なのに……と言うか最終奥義を伝授どころか存在すら鈴仙は知らない

 

「ポジティブねぇ……」

 

そんな鈴仙に呆れて永琳は研究室へ戻った

 

「……!?」

 

そしてすぐさま永琳は気付いた

 

(荒らされてる……)

 

研究室に異常がある事を

 

(1ヵ所だけ……他は荒らされてない……世界樹の葉を保管している場所だけピンポイントに……)

 

一応注意しながらその場所に近付く

 

(保管場所にはかなり強力な封印式をしていたのにこの短時間で……ただ者ではないわね、何が目的……?)

 

その場所を見た時、永琳の表情は緩んだ

 

「なるほど……」

 

無くなっていた全ての世界樹の葉の代わりにメッセージがあった

 

(そういう事ならしょうがないわね……)

 

メッセージを読んだ永琳は納得して微笑んだ

 

「本当の持ち主に文句は言えないものねぇ……」

 

葉の起源を知っていたからこそ納得し窓から空を見上げる

 

「行く所は……あそこかしら……」

 

そうだろうと思い、また微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「ほらほら!何やってんの!また霊力の収束が乱れてる!何度言えばわかるのよこのバカ弟子!」

 

「うひぃぃ……!?」

 

修行がなされていた

 

霊夢が靈夢をバシバシ鍛えているのだ

 

「あ、あの!霊夢様!」

 

「何?早くしなさいよ」 

 

ぜぇぜぇ息を吐く靈夢は願い出た

 

「少し休憩が欲しいかなぁ、なんて……」

 

「却下」

 

願いは即座に一蹴された

 

「あんたこの前まで修行サボってたんだから取り返すのは当たり前でしょ?」

 

「いやでも……基礎ばっかりだし……」

 

「は?あんた何が言いたいの?基礎からなのは当然でしょ?」

 

「私、髪飾り取ったらですけど結構強いと思ってます、なので力を伸ばす修行がしたいなぁなんて……」

 

「……霊力の収束も満足に出来てない半人前が生意気抜かすな!」

 

「ひっ!?」

 

「基礎の意味をわかって積み上げてからそういう事は言いなさい!100の力を50までしか上手く使えない様なひよっこが調子に乗るなんてあと千年は早いのよ!!」

 

「ううっ……」

 

「いい?基礎は最も大事なのよ、基礎を疎かにして成長は有り得ない!だから今までやってこなかった分をさせてるのよ!わかった!?」

 

「はうっ……」

 

「儷奈は才能なんて無かったけどずっと頑張ったからあそこまで行けたのよ!有るあんたが弱音を吐くな!」

 

「はいぃ……」

 

「わかったならさっさと続き!!」

 

そんな師弟の居る神社の階段を昇って来る者が居た

 

「こんにちはー!」

 

手を挙げて二人に向かう少女

 

「あら早苗じゃない、どうした……」

 

「早苗さーん!!」

 

霊夢を遮り靈夢が飛び出した

 

「助けてください!このままだと私、先代に殺されちゃいます!当代なのに!当代なのに!!」

 

「あらあら靈夢ちゃん、怖ーい鬼巫女に虐められちゃって可哀想に……新しい本を手に入れたから一緒に読みましょうね!」

 

怪しい本を取り出しながら早苗は微笑んだ

 

「ちょっと早苗、こいつに変な事教えないで」

 

「変なだなんて失敬な!男性同士の熱い性のぶつかり!これぞ人の世が生み出した文化の極み!まさしく女の子の読むべき物!腐の頂!」

 

「ですよね早苗さん!霊夢様も読んでみてくださいよ!」

 

「あ?」

 

「ひっ!?」

 

「まぁまぁ霊夢さん!靈夢ちゃんは私が立派な貴腐人に育てますから安心してください!」

 

「あぁ!?」

 

「と言うのはもちろん冗談です、えぇ冗談ですとも!やだなー霊夢さん本気にしちゃって!さっ靈夢ちゃん!修行頑張って!」

 

「さ、早苗さーん……!?」

 

トボトボ戻る靈夢

 

「はぁ……わかったわよ、早苗が来たし少し休憩にしてあげるわ」

 

「……!やったー!!」

 

嬉しく跳ねる靈夢と共に3人は縁側に座る

 

「神奈子はまだ戻らないの?」

 

「はい……「ベガスに遊びに行ってくる」って書き置きが置いてあったあの日から神奈子様はまだ……」

 

「そう……」

 

「もう5年も経つんですよね……紫様も探してるみたいですが……」

 

「見つかったのかしら……」

 

その時、3人の前にスキマが開いた

 

「見つかってないわ」

 

スキマから出てきた紫が3人の前に立つ

 

「そう……どこに行ったのかしらね……」

 

「少なくとも生きている事は確かです、守矢神社から神奈子様への信仰が消えていないのが何よりの証拠ですから」

 

「この5年で心当たりは全て探した……残る可能性は私の能力でも入る事の出来ない神々の世界ぐらい……」

 

「神奈子様……どうか御無事で……」

 

祈りを飛ばす早苗

 

家族の安否を気遣う純粋な祈り

 

(魔理沙……それにあいつら……幻想郷は見た目と裏腹に酷く傷付いてる……)

 

(目の前で大事な人の死を二度も目の当たりにしたあの人達の痛み……想像を絶するに違いない……多分それは出会った事を後悔するぐらいに……)

 

(もし神奈子……貴方がその為に動いているのだとしたら……私にはもう祈るしか……願うしかない……)

 

4人は願う

 

いや……幻想郷全てが願う

 

 

曲の変わりを……

 

 

心を病むこの曲の変わりを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァァ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、博麗神社が光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何!?」

 

異様な現象に戸惑う4人、神社に何か起こっているのは確かだが紫はおろか当代の靈夢、さらには靈夢より神社を良く知る筈の霊夢ですら何が起きたのかわからない

 

「神聖な気を感じる……何なの?新しい神様でも降りて来た?」

 

感じるのは神の持つ気である神気、神に馴染み深い4人であったが得体の知れない神の降臨に身構える

 

 

『ただいまーっと!なんだ、あんまり変わってないねここは』

 

 

降臨したのはドラゴン、いや、東洋のドラゴンの姿だったから龍なのだろう

 

「……もしかして龍神様ですか?霊夢様?」

 

「そうなんじゃない?私も見たこと無いからハッキリと言えないけど神社の聖気がこいつが降りた瞬間強くなった……存在するだけでそんな事になるのは神社が祀る神だけにしか出来ないから多分……」

 

そんな巫女の会話に気付いて龍が4人を見た

 

『おっ!博麗の巫女が居る!どっちが当代?』

 

「私です……つかぬ事を御聞きしますが貴方様はもしや龍神様でしょうか?」

 

『そうだよ!僕がこの博麗神社の神である龍神さ、長い間出掛けてて悪かったね、ベガスが面白くてさ!』

 

「そ、そうですか……」

 

大変ファンキーな神様の様子に戸惑う4人

 

「それで?ずっと放置してた神社になんで今更?」

 

少し不機嫌な霊夢が問う

 

『なんだこの巫女……ちょっと不敬が過ぎるんじゃない?まぁいいや、それより八坂神奈子はどこ?』

 

「神奈子様は出掛けていまして今、幻想郷におられません……」

 

早苗がしゅんとして答えると龍神から驚くべき事が告げられた

 

『なんだよ……僕を無理矢理呼んでおいてまだ来てないのかよ』

 

「どういう事ですか!?」

 

神奈子が龍神を呼んだ、それが早苗に声を荒げさせる

 

『誰にも知らせてなかったのか……じゃあ話してあげるよ、僕が戻って来たのは八坂神奈子に頼まれたからさ、正確には八坂神奈子に依頼されたしんりゅうとマスタードラゴンにね』

 

『あいつら酷いんだよ?ベガスで遊んでたら急にやって来て自分の世界が危険だったのに何してんだってボコボコにされて協力を強制させられるし……まぁ聞いたら破壊神が来たってのはビックリだったけどね』

 

幻想郷の危機だったのにお気楽に言う龍神に唖然とする3人とキレる寸前の巫女

 

「そ、それで神奈子様は何を頼まれたのでしょう?」

 

『あーそれはねー……』

 

早苗の問いに答えようとした時だった

 

「ちょっと待った、あんた今まで本当にベガスとやらで遊んでたの?」

 

遮ったのは霊夢、尋常ならざる怒気を孕んでいた

 

『そうだけど?』

 

「魔帝異変の時も……?」

 

『そうだよ……って言うか魔帝異変って言われても知らないよ』

 

「……私達が命懸けで戦ってる時も遊んでた訳ね?」

 

『だからそうだって言ってるだろー?何この娘?頭悪いの?バカなの?』

 

 

ブチッ……

 

 

その瞬間、霊夢の何かが切れた

 

 

「存在消されてーのかコラァ!!」

 

 

鬼巫女の霊力を解放して龍神に怒鳴る

 

『何?僕とやる気?巫女程度が調子に乗っちゃあいけないねぇ、神である僕に敵う筈が……』

 

ズドオッ!

 

『オブッ!?』

 

龍神は地に叩きつけられた

 

「覚悟はいいわね?」

 

『え……?えっ!?何この力!?暫く見ない内に巫女程度が神を越えた!?嘘だろ!?』

 

焦る龍神に鬼はゆっくりと死を告げる様に近付いていく、ちなみに誰も止めない、いや止められない

 

『ま、まぁ待ちなよ!君の強さに免じて非礼は許そうじゃないか!だからその神殺しも辞さない気を静めるんだ!じゃなきゃヤバイ!主に僕がヤバイ!』

 

必死にズレた謝罪をする龍神に霊夢は冷徹に告げる

 

「神は死んだ……」

 

『生きてるよ!!いやいや待って!?嘘だろやめて!?』

 

「役に立たん神など必要無い……」

 

『ウボォアアァァァァァァァ!?』

 

久方振りに帰ってきた龍神は鬼巫女に退治された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……?」

 

その予感を始めに感じたのは友

 

(呼んでる……聞いた事ある声……神奈子……か……?)

 

呼ばれている

 

「聞いた?魔理沙?」

 

「紅魔館へ呼んでます!」

 

「二人もか……よし!」

 

二人は頷くとすぐに向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある異世界

 

「ガハハハハ!そいつは傑作ですな!」

 

「ククッ……だろう?」

 

酒盛りをしている二人の魔族

 

「そういえばかなり前ですが話をしていましたな、確か……半人半霊の剣士の話を」

 

「したな……それがどうかしたか?」

 

「いや、少し気になってましてな、ダイ達以外に貴方が唯一剣を打った者……貴殿がその剣士に何を感じたのか知りたいのだ、構わぬならお聞きしてもよろしいか?」

 

「……いいだろう」

 

武器職人の魔族は嬉しそうに酒を飲む

 

「あいつは剣と共に生きていた」

 

心に居るあの幼い容姿の剣士を思い浮かべる

 

「……昔……人と武器は1つだった……人は武器に恥じぬよう努力した……強き者がいるからこそ武器も日々進歩した……あいつは……あの剣士は剣に恥じぬように努力していた、ずっと……剣と共に……」

 

「俺と試合をした時には既にあいつは剣を超えていた、強くなり過ぎて剣が追いつかなくなったのさ……」

 

「そんなあいつらが堪らなく不憫に思えたんだ、剣を気遣うあまり成長を遅らせていた剣士とそんな剣士に申し訳ないと泣いている剣に……」

 

あの日を思いだし微笑む

 

「だからだろうな……放っておけなかったのさ、強くなろうとする剣士と強くなりたくてもなれない剣に俺は手を差し伸べた、この世界以外に使わんと決めた心剣一体の技法を使うまでに俺は心を打たれていた」

 

「ほぉ……貴殿がそこまで言うとは……さぞ素晴らしい剣士だったのでしょうなぁ」

 

「ああ……最高の剣士だ」

 

二人が酒を飲み干した瞬間

 

 

 

……ブゥン

 

 

 

「ロン・ベルクさん!!」

 

突如スキマが開き少女が飛び出した

 

「妖夢……」

 

「おお!敵かと思えばロン・ベルク殿の知り合いとは!しかもこんな可愛らしい少女を……中々隅に置けませんなぁ!!ガハハ!!」

 

「こいつが今話した剣士だクロコダイン」

 

「なんと!?」

 

驚愕するピンクのワニを尻目に二人は近付く

 

「約束を果たしに来たのか?」

 

「違います!」

 

「……俺に興味は無くなったか……」

 

「違いますよ!」

 

「……ならなんだ?」

 

何の用だとロンは問う

 

「私は自分の思い描く剣士になれたと思ってます……天地魔闘だって今なら進化した私の秘剣「奥秘「西行春風斬・神断」で破れると確信してます!」

 

「ほう……」

 

「ただ……ハズカシクテ……」

 

「何?」

 

「とにかく!今はそれじゃないんです!ロン・ベルクさんに会いに来たのは一緒に幻想郷に来て欲しいんです!」

 

妖夢は腕を引っ張る

 

「なんなんだ妖夢……わかったから話せ」

 

「後で話します!だから今はすぐ来てください!!」

 

強引にロンは妖夢に引っ張られて幻想郷へ向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にとりの研究室前

 

「……そろそろ来ると思ってたよ」

 

ロビンと共に佇むにとりの前には青年と3体の魔物

 

「にとり!」

 

青年はトロフィーを見せつける

 

「星降りの大会で優勝したのか……やるじゃん」

 

「ああ!約束の証はこれでいいか!」

 

子どもだった少年は強くなって再戦するという約束を胸に努力し、ここまで来た

 

「いいも何も見りゃわかる……頑張ったんだね……カメハ!!」

 

にとりも嬉しく微笑む

 

「じゃあ……!!」

 

「ああ、勝負してやるよ」

 

ついにこの時が来たとカメハの体に力が籠る

 

「今すぐ勝負したいのはわかるがまぁ待ちなよカメハ」

 

だがにとりは止めた

 

「先に野暮用があるんだ、大事なね……そっちを終わらせてからでいい?」

 

「……わかった」

 

二人は向かう

 

「なぁにとり!もし勝負でオレが勝ったらさ!恋人になってくれよ!!」

 

「マセガキ……まぁいい、なってやるよ……勝てたら……ね?」

 

「ニトリハアゲナイ!!」

 

紅い場所へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑

 

「ん……?」

 

幽香は何かが起きる予兆を感じ花畑から空を見上げる

 

(何この感じ……紅魔館で……何かが起きる……?)

 

確信にも似た予感が心を包む

 

行こうとした幽香だったが落ちてくるある物が目に入り止まった

 

(これ……永琳が持ってた世界樹の葉じゃない)

 

何故これがここに?

 

疑問を感じた幽香が近付いていく

 

 

『花の化身である風見幽香……』

 

 

天から声が聞こえる

 

「……誰?」

 

幽香は問う

 

『私は精霊ルビス、此度は女神セレシアの願いによりここ幻想郷へ来ました』

 

声の主が姿を現す、長いウェーブの入った髪を靡かせた女神を思わせる風貌の女性

 

「……何の用かしら?」

 

だからどうしたと幽香は睨む、彼女にとっては相手が精霊だろうが神だろうが関係無い、花畑に何かしそうだから敵意を顕に威嚇する

 

『これより私の命の欠片であるこの世界樹の葉を使い、幻想郷に世界樹を生やします』

 

そう宣言するやルビスは力を使い世界樹の葉に光が灯る

 

光が灯った葉は形を変化させ、花を傷付けない様に一気に樹木まで成長し蕾を実らせた

 

『咲きなさい世界樹の花よ……』

 

呼応する様に世界樹の蕾は力強く花を咲かせる

 

『さぁ散りなさい世界樹の花よ……死者の御霊を呼び戻す為に……』

 

フウッと吹き掛ける仕草をした瞬間、世界樹の花は散り、風に乗って幻想郷へ広がっていった

 

「……!?」

 

一連を呆気に取られて見ていた幽香が気付くとさっきまでそこに生えていた巨大な世界樹が無くなっていた

 

(……芽)

 

葉のあった場所を見るとそこには花とは違う新芽が生えていた

 

『それは世界樹の新芽、先程の花は私が女神セレシアから譲り受けた力を使い一瞬だけ成長させただけに過ぎません』

 

そんな幽香にルビスは言う

 

『貴方にはこの世界樹を見て欲しい』

 

それを聞いた幽香はまたルビスを睨んだ

 

「さっきの花は何?」

 

説明も何も無いのだから当然だろう

 

『命を与える世界樹……その花を幻想郷に与え、死者を甦らせました』

 

「死者を……?」

 

『そうです、先の異変に関してのみですが間に合いました、花の力なら5年程度なら肉体ごと呼び戻す事が可能でしょう』

 

「……そう」

 

『それで風見幽香、世界樹を任せてもよいでしょうか?花の化身である貴方にしか頼めないのです』

 

「……」

 

幽香は少し考えると

 

「しょうがないわね……」

 

承諾し世界樹を撫でた  

 

『よかった……そして風見幽香……』

 

「次は何?」

 

『行ってみるといいでしょう』

 

「……どこに?」

 

『貴方の感じるままに……』

 

「どういう事よ……」

 

幽香が問い質そうとしたらルビスは空を見上げて昇っていく

 

『ここが幻想郷……八坂の愛した、神々が恋した幻想の郷……貴方が愛したこの幻想郷に幸あれ……』

 

そのままルビスは幻想郷から消えてしまった

 

 

「……何だったのよあの精霊」

 

振り向き視線を真っ直ぐに見据える

 

「感じるまま……ね」

 

見据えた先に有る紅い館を想像し幽香はゆっくりと向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のだー♪のだー♪」

 

ふよふよ幻想郷の空を漂うルーミア

 

「!?」

 

突然停止し表情が闇に染まる

 

「何か用?」

 

口調が変わり威圧的な態度で一人喋った

 

『フフフ……皇よ、ついでにお前の力も借りたくて連絡を取った次第だ』

 

ルーミアにしか聞こえない声が封印を話が出来る程度まで解いた

 

「……私の力を?あんたら魔王共が何をするつもり?」

 

『それはな……』

 

闇の主が内容を話した

 

『どうだ?嫌なら構わぬが?』

 

「……まぁいいわ」

 

皇は承諾した

 

「要は私の餌を増やすって事でしょ?断る理由が無いわね」

 

『フフフ……そういう事だ皇よ、では頼む』

 

「はいはい、やるわよ、私と同じ力を持つ闇の大魔王……ゾーマ……」

 

皇と王達の力が合わさり2つへ分かれ、消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが起きていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

萃香を花びらの群が通り過ぎる

 

「季節外れの花嵐……綺麗だねぇ……」

 

眺める萃香だが気が憂鬱だからか特に何も思わない

 

「……」

 

花びらが全て通り過ぎた後も虚空を眺め続ける

 

「ここに居たのか萃香……」

 

横に並ぶ者が居る

 

「……!?」

 

見た萃香の顔が驚愕に変わる

 

「あんた……どうして……」

 

そこには居る筈の無い者が居たから

 

「……神の作った魂の牢獄で私は生きていた、バーン様を守ると言う意思が私を消させなかった……」

 

影の様な盟友は語り続ける

 

「その私を甦らせたのは4人の王と皇、私ともう一人を甦らせ……幻想郷に送ったのだ」

 

「4人の王?なんだいそりゃ?」

 

「私にもそれはわからぬ……ただ王の一人である闇の大魔王はこう言っていた「約束の礼と詫びだ……」と、私の知らぬ時に何かがあったのだろう」

 

「……そうかい」

 

なんでもいいさと納得する萃香

 

「では向かうとするか」

 

その萃香に盟友は言う

 

「どこへだい?」

 

「お前も感じているのだろう?さぁ行くぞ萃香、紅き館へ……私が遅れてはならん」

 

盟友は手を差し出す

 

「わかったわかった……」

 

掴んで起き上がった萃香は盟友へ言った

 

「行こうか!ミスト!!」

 

霧と共に飛び出して行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、曲が流れ出した

 

「……亡き王女の為のセプテット……」

 

贈られた曲が部屋を包む

 

「なんで……」

 

魔力を送った訳でもないのに奏でる宝石に触れる

 

「……!!」

 

触れた瞬間、レミリアは運命を感じた

 

 

 

 

……ガチャ

 

 

 

 

「お姉様!!」

 

ドアを開けたレミリアをフランが迎えた

 

「フラン……行くわよ」

 

「うん、あそこだね……って待ってお姉様ー!」

 

「待ってたわレミィ、フラン……行きましょう」

 

運命に導かれて3人はその場所を目指す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掃除をしていた咲夜がその部屋を横切る

 

 

カタン……

 

 

音が聞こえて立ち止まった

 

「……貴方……」

 

部屋を見た咲夜が見たのはフランの作った出勤表に手を触れる少年だった

 

「今日まで休んでしまい申し訳ありません十六夜咲夜先輩……」

 

振り返った少年の背にある出勤表、咲夜ともう一人の場所、そこには出勤と札が置かれていた

 

「何故貴方が……」

 

「王の力により私は甦りました」

 

「王って……?」

 

「それは私にもわかりません、しかし、私を甦らせた王は約束をしていました、「もし奇蹟を起こせたのなら、その時に改めて礼と詫びをしよう」と……」

 

「そう……」

 

「参りましょう咲夜先輩、フランドールお嬢様もそこへ向かう筈です」

 

「咲夜でいいわ、行きましょう……ウォルター」

 

もう一人の執事と共に向かう 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……呼ばれてる」

 

妹紅は立ち上がる

 

「私も呼ばれた……」

 

慧音も立ち上がろうとした瞬間

 

「悪い慧音……先に行く」

 

全速力で妹紅は向かって行った

 

「妹紅!!……私も行かなければ!」

 

慧音も慌てて追って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呼んでいる

 

彼の王に触れた者達だけがその声を聞いている

 

 

声は言う

 

あの場所へ行けと

 

 

神は言う

 

紅魔館へ行けと

 

 

神奈子は言う

 

あの最期を看取った場所へ行けと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムゲンの音が鳴った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・バルコニー

 

「妹紅!」

 

最後の一人がやってくる

 

「ハァ……ハァ……皆……!」

 

7人の友が集まった

 

「……来てみたけど……」

 

辺りを見渡しても何も無い

 

「気のせい……だったのか?」

 

今は何も感じない

 

「そんな事ない……!何か……起きる筈だ!!」

 

魔理沙は言うが何も起きる気配が無い

 

「……」

 

時間だけが過ぎる

 

(……何だったんだ……?まさか私達を会わせる為……?)

 

あの呼び声はなんだったのだろうか……

 

結局何も無かった事に気を落として妹紅は顔を下げる

 

「帰るよ……」

 

皆に背を向けた

 

 

その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 --       妹紅……       --

 

 

 

 

 

 

 

光が妹紅を包んだ

 

 

「これは……この声は……」

 

その声を妹紅はよく知っていた

 

「ダイ……なのか!?」

 

帰った友達の声だったから

 

『そうだよ妹紅!久し振りだね!』

 

声しか聞こえないが確かにダイだった

 

 

『約束……叶えに来たよ!!』

 

 

光が更に強くなる

 

ビシッ……

 

妹紅の中で何かがヒビ割れた

 

「約束って……何をする気なんだ……?」

 

まだヒビが入った事もわからない妹紅が問う間も何かは更に壊れていく

 

 

『君の中の蓬莱を倒して人間に戻すんだよ!』

 

 

そうダイは言う

 

「私を……人間に戻す……?」

 

妹紅は思い出す、ダイが帰るあの時に叶えてくれようとした事だった事を

 

『そうだよ!君はあの時、ボクの目的を優先してくれた……でもね妹紅、君を人間に戻すのはボクの願いでもあったんだ』

 

もう感じる程に壊れているのがわかる

 

「でも力を使ったらお前は消えるんじゃ……」

 

『大丈夫だよ!ここに向かって行った神様の力をちょっとだけ借りただけだから!ボクは消えない、だから安心して!』

 

「なんで……どうしてそこまで……」

 

壊れた蓬莱が体から抜けていく

 

『言ったじゃないか……』

 

ダイは言う

 

いつまでも忘れなかった、絶対に叶えると約束した

 

 

『君には幸せになって貰いたい……って!』

 

 

その想いを……

 

「……!!」

 

その気持ちが嬉しくて涙が溢れそうになる

 

同時に小さな、小さな呻き声が体から聞こえてくる

 

蓬莱という化物が最期の悲鳴を上げている様に……

 

「……友達には……会えたか?」

 

『会えたよ!ありがとう妹紅!皆!』

 

「よかった……」

 

ダイの笑顔が見える様だ

 

「あ……」

 

そして蓬莱の最後が砕け散り、妹紅から消えていった

 

 

「……」

 

胸に手を置いて感じる

 

別段変わりはない

 

でもちゃんと人間になっていた

 

そう……妹紅は人間に戻れたのだ

 

 

『これで約束は果たせたね……』

 

 

ダイの声が霞んでいく

 

「もう行っちゃうのか……?」

 

『うん……ゴメンね』

 

「いいさ……会えない筈のお前と話が出来たから……」

 

『ずっと友達だよ……』

 

「ああ……どんなに離れてたって、私達は……ずっと友達だ!!」

 

『幸せにね……妹紅!』

 

「お前も幸せにな……ダイ!」

 

その言葉を最後に妹紅を包む光が消えた

 

そしてダイの声も聞こえなくなり、静寂だけが残った

 

 

 

「よかったな妹紅、人間に戻れてさ」

 

魔理沙達が妹紅に寄っていく

 

「……」

 

あまり実感は無い

 

それはそうだろう

 

魂に溶け、体を化物にしていた言わば物言わぬ同居人が消えたようなものだ、喪失感も何も無い

 

「……」

 

でも間違いなく蓬莱は消えた

 

時が経てば老い、死ねば甦らない

 

不老不死ではなくなったのだ

 

 

 

   「嬉しいよ……皆と……一緒になれた……」

 

 

 

消えたのだ

 

少女を長年悩ませていた蓬莱の化物は確かに

 

 

「……でも」

 

だが妹紅は心苦しかった

 

「私はダイに嘘ついた」

 

「嘘……?」

 

友が問うと妹紅は俯く

 

「幸せには……なれそうもないんだ……ダイには悪いけど……」

 

妹紅の目が死んでいく

 

ダイとの言葉だけの再会だったが気は戻った、だがそれでも戻しただけで堕ちた気を回復させるには至らなかったのだ

 

「……そっか」

 

何もしてやれない魔理沙もそう言うしか出来ない

 

「呼ばれたのはこの為か……」

 

また皆に背を向けると妹紅は告げる

 

「帰るか……」

 

歩き始める妹紅を6人は見つめる

 

「そう……だな……」

 

後に続いて歩き始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--       まだだよ!!      --

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイの声が聞こえ7人は立ち止まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--    まだ……終わってない!!   --

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲が変わり始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

『これ以上やられたらマジで死ぬ……』

 

「そうなれば神を殺した私が次の神様になるわけね……良いわね、楽園の素敵な巫女から神……よーし!殺る気出てきた!」

 

『やめてー!そこの君、当代なんだろ!?助けてよ!!』

 

「申し訳ありません龍神様、如何に龍神様と言えど自殺命令はちょっと……」

 

『薄情者!じゃあそこの二人!僕を助けるんだ!』

 

「すいません、死んでください」

 

「どうか安らかな死を願っておりますわ龍神様」

 

『せめて「やめたげてよー」とか言って!?』

 

「では処刑する……」

 

『ギャアアアァァアアァア!?』

 

断末魔が響く

 

 

「それぐらいにしておいてやれ霊夢」

 

 

歩いてくる者の声が霊夢を止めた

 

「か……神奈子様!!」

 

気付いた早苗が飛び出し抱き付いた

 

「心配したんですよ!!連絡もしてくれなくて……何をしてたんですか!」

 

帰ってきたボロボロの神奈子へ泣きながら怒る早苗

 

「心配掛けて悪かったわね早苗……」

 

頭を撫でながら神奈子は微笑む

 

「罪をね……償っていたのよ……」

 

呟く様に理由を教える

 

「罪……?」

 

何の事かわからないと早苗、霊夢達も問う

 

当然だ、これは神奈子だけの罪なのだから

 

「あの7人の泣いた顔と声が……頭から離れなかった……」

 

5年前のあの日

 

神奈子は離れた場所で全てを見ていた

 

バーンが消える時も、消えた後も

 

「あの時、私は思ったのよ……このまま何も感じず幻想郷で過ごす訳にはいかない……と……」

 

大切な者を失った悲しみを目の当たりにして神奈子は改めて思い知ったのだ

 

自分のした事の惨さと愚かさを……

 

「それで幻想郷から居なくなったのですね」

 

「そうよ」

 

「それで……どちらへ?」

 

「……神々に会いに行っていた」

 

「……何の為に……ですか?」

 

「力を貸してくれと頼みに……」

 

神奈子はこの5年を思い返す

 

「事情を話して協力してくれたのはしんりゅうとマスタードラゴンの主神や女神セレシアなど古い知神だけだった……他の神は協力を拒否したり条件として試練を課された……説得や試練を全てこなすのに5年……神の私からすれば些細な時間だがお前達には長い時間だったろう……」

 

それを聞いてまた早苗は涙を流し神奈子の胸元に顔を埋めた

 

「長かったですよ……こんなにボロボロになって……もう……」

 

「これでも一刻も早くと頑張ったのよ……許して早苗」

 

強く抱き締め再会を噛み締める

 

「それで結局あんたは何をしようとしてたのよ?」

 

まだ答えを聞いていない霊夢が気になり問う

 

「私が神の力を集めていた理由、それは……」

 

その時

 

神奈子を遮る様に博麗神社を大量の花びらが舞った

 

『お!ルビスの奴やってくれたみたいだね』

 

龍神が声を上げ、知らない霊夢と靈夢、早苗と紫が不思議そうに花びらを見上げる

 

「ルビスの奴がだと……?なんだこれは?私は知らないぞ……」

 

神奈子は精霊であるルビスには頼んでいなかった、だからこれは神奈子も知らない事

 

『セレシアが言ってたんだ……「世界の危機である破壊神を撃退してくれたと言うのに私達は感謝すら言っていない、だから御礼をしたい」ってね、そこでセレシアは破壊神が降臨した時の戦いで亡くなった人間や妖怪を甦らせる為に君に内緒でルビスに頼んでたんだ』

 

それを聞いて神奈子は嬉しく花びらを見上げ微笑む

 

(後は……許されるかどうかか……)

 

幻想的な世界樹の花嵐の中、想う

 

(わかっている……許す許さない以前にあの7人に私は恨まれてすらいない、だが私のあの行為がお前達を深く傷つけたのは違いないのだ……)

 

自身だけが感じていた罪とは言えない罪

 

(なればこそ私は許せなかった、神であるのに愚かな自分が……)

 

そっと神奈子は目を閉じる

 

(だからこれは自己満足だ……お前達7人に贈れる最後の幻想……お前達が、いつか叶うと信じた……久遠の彼方の約定の……)

 

紅魔館へ向かう花びらへ想いを乗せて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、7人の背後から強烈な光が出た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眺める7人の前で光は勢いを更に強くさせていく

 

 

「……」

 

 

その光が妹紅の魂に強く呼び掛ける

 

 

(不死鳥が……呼んでる……)

 

 

奇蹟が更に光を強める

 

 

輝く光に応える様に太陽が強く幻想郷を照らすと、飛んできた花びらと共に消えた筈の粒子が光に集まっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い旅路だった

 

歩んだ道の途中で何度も傷付き、迷い、失った

 

 

辛い時もあった

 

 

でも、それ以上に楽しかった、そう言える絆があったから……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

光の中には誰かが居た

 

収まる光と同時に姿を少しずつ広げていく

 

 

「……」

 

 

首元が、映る

 

その首にはスカーフが巻かれていた

 

皆で贈った、あの赤いスカーフが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全てを敢えて差し出した者が最後には真の全てを得る、ましてや自分の最も大切なものを捧げたなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、大切な者だったのだ

 

 

最も大切な者である彼の王を捧げて今を作った

 

 

そしてそれは王も同じ

 

 

最も大切な友との生を王は捧げた

 

 

 

だからなのだろう……この時が生まれたのは

 

 

幻葬曲が変わろうとしているのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

7人は動かない

 

嘘みたいな光景を信じれないから

 

 

だってそうだ、有り得ない

 

 

夢を見ている様な目で、目を閉じている一人の男を見ていた

 

 

 

 

「……!」

 

男が目を開ける

 

「……何故……余はまたお前達の前に……」

 

信じられない事に驚く男だったがすぐに悟った

 

「そうだ……そうだった……いかんいかん、余とした事が失念していた」

 

顔を下げ苦笑した後、7人へ向き

 

 

「奇蹟は……起こるのだったな……何度でも……」

 

 

その笑顔を見せた

 

 

「どうしたお前達……何を呆けておる?」

 

今だ微動だにしない7人に男は問う

 

「うっ嘘だ……!」

 

魔理沙が頭を振って叫ぶ

 

「そんな訳あるか!きっと夢か幻だ!また消えるに決まってる!ぬか喜びさせる気に違いねぇ!」

 

必死に否定するのはまだ信じられないからだろう

 

「消えはせん」

 

男は言った、何が起きたかも全て知った上でハッキリと言い放った

 

「これからは……ずっと一緒だ……」

 

もう離れる事は無いと

 

 

 

「バーン!!」

 

 

 

誰よりも早く飛び出した者が居た

 

「すまなかったレミリア」

 

抱きついて来た妃をそっと抱き締める

 

「貴方無しじゃ生きられないから……!!もう……どこにも行かないで!!」

 

「ああ……もうどこにも行かん」

 

顔を埋めて泣くレミリアに続いてフラン、チルノ、大妖精が飛び込んでくる

 

「「バーン!!」」

 

「フラン、チルノ……」

 

「バーンさん……!!」

 

「大妖精……」

 

この日、8人は再会したのだ、夢でも幻でもない、本当の再会を……

 

「ふざけやがって……いきなり生き返るなよな……なぁ?」

 

「そうね……こんなの……反則よ……」

 

魔理沙とパチュリーも嬉しさの涙を流して見守っている

 

「……」

 

妹紅は空を見上げていた

 

『よかったね……妹紅!』

 

「うん……ありがとうダイ」

 

『ボクがしたんじゃないよ、ボクがしたのは蓬莱を倒した事だけさ』

 

「うん……」

 

『ほら……笑ってよ、君にそんな顔は似合わないよ』

 

「うん……!」

 

『幸せにね……妹紅!!』

 

それを最後にダイの声は消えた

 

「大丈夫か?妹紅?」

 

魔理沙が話しかける

 

「うん……」

 

涙に濡れたまま、満面の笑みで

 

「もう……大丈夫だ!」

 

久し振りに

 

本当に久し振りに

 

妹紅は心から笑った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーンを甦らせた!?」

 

霊夢が驚き神奈子を見る、他の二人も同様

 

「そう……神々の力を集め、バーンを甦らせた……今度は期限など無い……今度こそ完全に、完全にバーンは甦った……」

 

これこそ神奈子が行った贖罪

 

神々の力を集め、バーンを完全な形で甦らせる

 

それを成す為に神奈子は5年もの間一切休む事無く成し遂げたのだ

 

 

全てはあの7人の為に……

 

 

「よくそんな事を神々が許したものね……大魔王を甦らせるなんて許可するとは思えないのに……」

 

紫が問う

 

「確かに……普通は許可される筈が無い、世界の脅威に成りうる大魔王を甦らせるなど……」

 

そう、バーンを抹殺しようとした神々が許す筈がない

 

「それを許した理由は……」

 

そう言って龍神を見た

 

『ちゃんと言われた通りやったよ八坂、ボコられてる間にね……』

 

龍神は疲れた様に神奈子を睨む

 

『ここ幻想郷の特性を使って大魔王に制約をつけたのさ』

 

「どういう事でしょう?」

 

靈夢が問う

 

『幻想郷ってどんな者達が来る所?』

 

「幻想郷に来るのは外の世界で消えた者、忘れ去られた者、そして、存在を否定された者が来る場所です……でもそれがどういう……」

 

『大魔王は元居た世界で存在を否定された者、つまり幻想郷に来るべくして来た者なんだ、そしてそれは幻想郷の住民になる資格がある事を意味する、だから可能だった』

 

「ぐだぐだうるさいわよ!結論を言いなさい!」

 

霊夢が怒って怒鳴る

 

『わ、わかったよ……つまり大魔王は……』

 

「バーンと幻想郷を同化させたのよ」

 

代わりに神奈子が答えた

 

「同化させる事で幻想郷に存在を縫いつけた、つまりバーンはもう幻想郷から出る事は出来ない存在になったという事、出れば死ぬ」

 

「そんな……どうにか出来なかったのですか?」

 

「無理に完璧を通せば幻想郷と神々の戦争に成りかねん、これが神々を納得させる落とし所だったのよ、神々と幻想郷、双方を立てる最善の案だ」

 

少し顔を傾け目を閉じる

 

「完璧ではなかったが完全だった……それぐらいなら、あいつも、あいつらも許してくれるだろう……」

 

そうであってくれと思う

 

「よし!じゃあ見に行くわよ!」

 

霊夢の号令に靈夢は頷き紫がスキマを開く

 

『じゃあ僕はベガスへ……』

 

こそこそと龍神が逃げようとしている

 

ガシッ!

 

「知らなかったのね……?」

 

しかし、逃げられなかった

 

 

「鬼巫女からは逃げられない……!!」

 

 

『ぬわーーーーーーーーーーー!!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、ムゲンの曲が幻想を奏でる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう離れる事は無い……」

 

王は言う、全てと言える最愛の友へ

 

「ああ……!!」

 

友は応える、最愛の王へ

 

「例えこの先、どれ程の時間が経とうとも一緒だ……幻想郷が消える……その時まで……」

 

王は言う、己を囲む最高の仲間達へ

 

「死んでも一緒さ……なぁ皆!」

 

仲間は言う、最高の王へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔郷から始まり妖々夢……

 

 

永夜抄が明けて萃夢想……

 

 

花映塚通り風神録……

 

 

緋想天を翔て地霊殿……

 

 

星蓮船に揺られて神霊廟……

 

 

心綺楼ゆらめき輝針城……

 

 

魔帝倒して紺珠伝……

 

 

 

白者を帰し、夢現覚まして……

 

 

 

 

今、ムゲンに至る……

 

 

 

 

終わらない無限……

 

 

 

 

 

これぞ無限幻想

 

 

 

 

 

それは終わる事のない無限の道

 

 

 

 

想いと絆が作った永久の道

 

 

 

 

 

 「では行くとするか、余とお前達の道を……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       幻想は終わらない

 

 

 

 

 

 

 

      いつまでも続くのだ……

 

 

 

 

 

 

 

         終わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「そうだな……まずは再会の祝宴といくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       幻想は……終わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エピローグになります。

最後に大逆転になりました!
実はこの終わりは続編が決定した時に決めてたんです、本当は前作で完結させるつもりだったのですが感想でバーン様の存命を望む声が多かったので、もし続編が決まればこれ以上無いくらいのハッピーエンドにしてやるよ!って事でこうなりました、でもそう簡単にはいかさんぞ!と下げるだけ下げた訳です、イヤらしいな自分……ちなみに56話冒頭のバーンはエピローグ後の場面です、どっちとも取れる場面ですが一応フラグは立ててましたww

妹紅の人間化……書いてて最後までどうしようか迷いました、本当に悩みました、不老不死が無くなると妹紅のアイデンティティーが無くなるんじゃないかって思って中々踏み切れませんでしたが……どうですかね?

自己満足の塊の作品でしたが多くの方に感想を頂けて嬉しかったです。
続編を希望される感想がありましたがこれで終わりです、本当に終わりです。
気が向いたらその後のバーン様達の話を読みきりで書くかもしれません、期待しないで待っててください。

前作含め長い間読んでくれてありがとうございました!

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