東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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番外編 その後の幻想郷~門番ラプソディ~

 

ある日の紅魔館

 

「……」

 

正門に向かった彼が顔をしかめた

 

「Zzz……」

 

門番をしている……いや寝ている女性を見て……

 

「……」

 

まるでゴミを見る様な目で見下している

 

「……起きろ」

 

声を掛けると女性は目を開いた

 

「んあっ」

 

女性は寝ぼけ眼を擦りながら顔を上げる

 

「あふっ……あっ、お疲れ様です……ミスト」

 

屈託のない笑顔で女性は笑った

 

「休憩が終わった、敵はいつ来るかわからんのだ、気を抜くな美鈴殿」

 

ミストも美鈴と並ぶ様に門の片方に立ち、無言で前を向いた

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

無言の時が続く

 

「……ねぇミスト」

 

「……」

 

「聞いてる?」

 

「……なんだ?」

 

「寝てても良いですか?」

 

「ならん」

 

「……」

 

「……」

 

「……休憩行ってきて良いですか?」

 

「……」

 

「聞いてます?」

 

「ならん、もう既にお前は規定回数を済ませている」

 

「……」

 

「……」

 

「……暇じゃありません?」

 

「……」

 

「もしかして寝てます?」

 

「……美鈴殿と一緒にされては困る」

 

「あはは……」

 

「……暇と感じるのは周囲に気を配っていないからだ、いつ敵が来るかわからんこの場所で呑気にしている証拠だろう」

 

「……すいません」

 

「……」

 

「……」

 

また無言のまま時は流れる

 

 

 

「ふぅ……」

 

溜め息を吐いた美鈴

 

(やっぱりこの人苦手だ……)

 

彼女はミストが苦手だった

 

(堅苦し過ぎるんですよねぇ……)

 

紅魔館でバーンと一緒に住む事になったミストは本人の願いでバーンの警護を申し出た、しかしバーンに必要無いと言われて食い下がった所にレミリアから門番を提案されバーンもそれを勧めて引き受けた

 

つまり美鈴の同僚になったのだ

 

(お嬢様を初めとする頂点の7人が常駐して、更にはバーンさんも居るこの紅魔館に敵なんて来る筈なんてないのにな~)

 

ミストの愚直なまでの仕事に対する姿勢がユル~い美鈴には会わなかったのだ

 

(攻撃はされませんけどこれじゃ咲夜さんに見張られてるのと変わらないし……寝てたら怒るし弟子を鍛えてても怒るし……なんか見下されてる感もあるし……)

 

全て美鈴が悪い訳なのだが今までが急に変わったのだから仕方ないとも言える

 

(私の方が先輩なのになぁ……)

 

どうにか出来ないかと頭を悩ませた

 

 

 

 

 

 

(チッ……)

 

ミストも内心舌打ちしていた

 

(何故こんな愚図が門番をしているのだ)

 

内心悪態づくのは美鈴に対して

 

(目を離せば寝るか遊ぶかの愚か者、与えられた仕事をまともにどころか真面目にもこなせん愚図……)

 

ミストは美鈴が嫌いだった

 

(これではうごくせきぞうの方が余程マシだ、レミリア様は何故こんな者を門番に置いたのか……何故バーン様も何も言われぬのか……理解出来ぬ)

 

およそ門番に適した者ではない美鈴に対して不満があったのだ

 

(いっそクビにしてしまえばいいのだ……門番など私一人で充分事足りる)

 

美鈴に対する信用は地に堕ちかけていた

 

 

「……!」

 

そんな時だった

 

「……少し外します」

 

突然、美鈴が外周を歩いて行った

 

「……チッ」

 

勝手な行動にミストのイラつきは増す

 

 

 

 

少しした後、美鈴が戻ってきた

 

 

「お待たせしました、すいません急に……」

 

申し訳なさそうに謝る美鈴が横に並ぶ

 

「……何をしていた美鈴殿」

 

ミストの問いが来た瞬間、美鈴は察した

 

(ああ……怒ってますねこれ……)

 

マズイと思いながら少し考えた後

 

「わ、私より強い奴に会いに行ってました……」

 

恐る恐る笑みを見せてみた

 

「ふざけているのか!!」

 

怒声響く

 

「お前は門番をなんだと思っている!!」

 

ついにミストの怒りが天元突破!美鈴を怒鳴りまくる

 

(ヒィィ……!?)

 

これには美鈴も怯まざるを得ない

 

「美鈴……!何故貴様が主の城を守ると言う重要な位置にある門番を任されるのだ……!」

 

(つ、ついに呼び捨て……)

 

焦っている美鈴にミストは告げた

 

「貴様は庭師でもしていろ、門番は愚図に任せてはおけん」

 

辞めろと……

 

「いや……それは……出来ません……ね……」

 

言い返す美鈴、いかに美鈴と言えども辞めろと言われて辞める訳が無い

 

「レミリア様への忠誠心か?笑わせるな!そんな態度で忠誠心など軽々しく抜かすな!!」

 

(言ってない……まぁ間違ってないですけど……)

 

あえて黙っている美鈴にミストは語気を強くしていく

 

「門番なら私一人で事足りる……何故なら私は幾千年も前から……!!」

 

前に出した両手を強く握り締め、理由を叫んだ

 

 

「一人でバーン様を守り抜いて来たのだからな!!」

 

 

絶対の忠誠から来る自信の表れ

 

「レミリア様も!フランドール様も!私が守り抜いて見せる!」

 

そして、もう隠す事なく完全に見下した目で美鈴を見た

 

「わかったか……?」

 

睨まれた美鈴はとても困っていた

 

(いやいやいや……)

 

凄まじい衝動に駆られていた

 

(守れてなかったですよね!?)

 

そう、ツッコミたかったのだ

 

(守れなかったからバーンさんが敗れてここに来たんですよね!?何をいけしゃあしゃあと……まさか私知らないと思われてる?脳内お花畑のバカと思われてる?知ってますよーだ!やだ……この人、吠えてる……恥ずかしっ!?)

 

でも言わない

 

だって言ったら自殺しそうだもん、ぬわーとか言って

 

「わかりました」

 

代わりに美鈴は言う

 

「ですが門番は辞めません、しっかりと務まるよう努力するので今日のところは許してください」

 

門番を辞める気は無いから頑張ると

 

(大人!私の対応大人過ぎる!出来る中華!今なら求婚待った無し!)

 

「……無駄な努力はその胸だけで充分だ」

 

「ぬぐっ……い、言いますね……」

 

そうして今日のお勤めが終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

紅魔館・図書館

 

「今すぐにでもあの愚図を解雇すべきですレミリア様」

 

ミストは直談判していた

 

「……ホントに言ってきたわね」

 

レミリアは若干驚いた顔を見せる

 

「だから言ったではないか……ミストと美鈴は合わん、と……」

 

予想が当たってご満悦のバーンは魔導書のページを捲る

 

「笑っている場合ではありませんバーン様!このままあの愚図に門番を任せていてはいずれ御二人の城が敵に攻め入られるのは必定!あの愚図を解任し私にお任せください!」

 

美鈴より如何に自分が優れているかを力説するミスト、どうも本気で辞めさせたいらしい

 

「なに怒ってんだいミスト、お酒やるから落ち着きなよ」

 

遊びに来ていた萃香が瓢を差し出す

 

「いらん……それよりも美鈴の事だ!あの女は……」

 

ぶつぶつ美鈴の不満を言っているミストにレミリアはさらりと告げた

 

「辞めさせないわ、美鈴は死ぬまで門番をしてもらう」

 

それに黙ったミストが理由を聞くようにレミリアを見る

 

「まっ、貴方は合わないみたいだし勤務態度にも問題は有るのはわかってる……でも、それを差し引いたとしてもここの門番に美鈴以上の適任者は居ないのよミスト」

 

「……どういう事かお聞かせください」

 

「理由は色々有るけど……一番の理由は強さね」

 

「強さ……」

 

「そっ、貴方も手合わせした事あるならわかるでしょう?美鈴はああ見えてバーンが来た時から100年の期間、侵入を許した事が無いのよ、エスタークがした様な搦め手や人海みたいな戦術を除いてね、つまり紅魔の門は今だ正面から破られた事が無い」

 

強さに関する事が話されミストが一瞬黙った瞬間、酒を飲んで聞いていた萃香が口を開いた

 

「およ?もしかして嫉妬かいミストォ?アッハー!そりゃそうか!自分のが優秀なのにそれでもあの中華が良いなんて言われちゃ拗ねもするわねぇ!」

 

その瞬間、殺気が籠った血走る眼光で睨み付けられた萃香はこれは藪蛇だったかとささっと目を逸らした

 

 

「……確かに美鈴に実力は有るのは認めます、しかし……」

 

「わかってる、それぐらいなら貴方にだって出来る、いえ、もっと上手く出来るかもしれないわね、でも……任せるとしたらやはり美鈴になるのよ」

 

「……」

 

解せないミストが無言の圧力を掛けてレミリアを困らせている

 

「生真面目なミストとだらしない美鈴、そこに熱差による軋轢が生じるのは当然の事だろう」

 

また魔導書を捲りながらバーンは言う

 

「まず言っておくがミスト、これは決して美鈴を庇う訳ではない事を念頭させておく、お前が優秀な者である事は余は勿論この場の誰もが理解している事実だからだ」

 

貶す訳ではないと先に言いミストを静める

 

「もう少し美鈴を理解してみろ」

 

その上で提案した

 

「お前はその生真面目故に先入観で美鈴を決めつけ理解をやめている……美鈴に問題が有るのは間違いないがお前にも足らない所はあるのだ」

 

「……」

 

「お前のその生真面目さは長所であり信用に足る、だがそれだけに余裕が無い」

 

「余裕……」

 

「ミスト、ここは魔王軍ではないのだ……この幻想郷に敵などおらん、そう気張る必要は無い」

 

「しかし……」

 

そう主から言われても忠誠心故に僅かな危機の可能性も軽視出来ないのだ

 

「ホントあんたは堅物だねぇ、美鈴の緩さを入れるくらいが丁度良いんじゃないかい?」

 

「ふざけるな萃香、そんな事は有り得ん……」

 

考えを変えるつもりは無いらしい

 

「お前の性格は理解しているつもりだ、無理に性格を変えろとは言わん、美鈴に関しても同じ事が言えよう……だがそれに関しては1つ提案がある」 

 

「……なんでしょう?」

 

「今の美鈴を見てきてみろ」

 

「今の……?」

 

「そうだ、今の美鈴を見てきてから答えを出せ、それでも意見が変わらぬ様なら余も再考しレミリアに取り計らってやろう」

 

「……」

 

そう言われたミストは黙った後

 

「わかりました」

 

了承し踵を返して行った

 

「いやはや……面倒な奴だねあいつって」

 

「余に絶対の忠誠を誓ったからこその進言だ、そんなミストだからこそ余は信頼し、体を預けたのだ」

 

「わかってるさ、だから自分の名を持たせたんだろう?」

 

「そういう事だ……霧の萃香よ」

 

バーンの見せた笑みには言葉が有った、ミストの名をやったお前も同じく信頼していると

 

「よしな気色悪い……酒が不味くなる」

 

「その顔の紅潮ははたして酒故なのかそれとも……」

 

「おし!外に出なバーン!久々にやろうか!」

 

「照れ隠しにしては過剰な反応だな萃香?」

 

「っしゃ!ここでやろう!今すぐやろう!オラ来なバーン!あんたの最強伝説は今日で終わりにしてやるよ!」

 

「ワー、オニガオコッター!コワイヨー!」

 

「煩いよ妹紅!あんたからやってやろうか!?」

 

「最強と聞いて……あたい参上!」

 

「気を付けるんだぜ萃香、チルノは頂点の中でも最弱……こいつを倒してもまだまだ上が居る事を努々忘れない事だぜ!特にこの大魔導士・魔理沙様をな!!」

 

「照れ隠しする萃香さん可愛いです!」

 

「隠れたツンデレよね萃香って、まぁ彼の大妖怪には敵わないか……ツンデレって言うよりツンドラって感じだしねあのベジータ系女子は……」

 

「ベジータ系女子……!笑わせないでよパチェ……アレがベジータならこいつはピッコロかしら……フフフ……!ピッコロ系女子!ピッタリじゃない!緑色にしたら?緑はベジータの方なのに……アハハ!」

 

「……上等だよお前等ァ……全員相手してやらぁ!!」

 

いきり立つ萃香に出遅れたフランがおくればせながら叫んだ

 

 

「えっと、えっと……ツルペター!!」

 

 

「このクソガキャアァァァッ!!」

 

 

萃香がフランに飛びかかった

 

「キャー!なんであたしだけ!?ツルペタって言っただけじゃん!?わわわっ!?逃げろー!キャーキャー!!」

 

「待ちなクソガキャア!私の胸は角より誇り有る部分なんだよ!それを貶したとあっちゃ……もう戦争しかないだろうがァ!!」

 

楽しそうに逃げるフランを追って萃香も走って行った

 

「ふっ……愉快な事よ」

 

変わらぬ日常に嬉しさを感じながらバーンは魔導書を下ろし頬杖を着く

 

(ミストよ……余が変わったようにお前もまた変わらねばならんのだ、もう余に拘る必要は無いのだから……何か新しき生き方を見つけよ、この幻想郷での暮らしがより楽しくなる様な切欠を美鈴から得られる事を願う)

 

さぁどうなるか……

 

己が決めた有り方を無理に矯正させるつもりは無い、変わらずとも忠ある者には変わらないから

 

ただ、自身の身を置くこの素晴らしい場所を知って欲しかった

 

信頼しているからこそ教えたくなる、知って欲しくなる

 

そんな友達に教える様な気分でバーンは僅かに頬を弛ませた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館近くの森の中

 

「……」

 

森を進むミストだったが顔には疑心が表れていた

 

(わからぬ……あの愚図の何を見れば良いのだ……)

 

まだ見ていない故に疑問を感じている

 

(……バーン様は本当に変わられた、萃香から聞いてはいたがいざ直接見れば驚くものだ、もうすぐ一月になるが今だ戸惑う事も多い)

 

まだ短いからか100年越しの再会は今だミストを慣れさせなかった

 

慣れないと言うよりは良いか悪いかの判断に困っているが正しいのかもしれない、大魔王時代のバーンが強く心にある為に変化を見て感じた戸惑いに答えが出せていないのだ

 

(……この先が小悪魔から聞いた今の美鈴の居所か)

 

木々を抜け、その場所を目指すミストは微かに聞こえた声と音に反応し足を止める

 

「……」

 

気配を殺し慎重に近付いていく、近付くにつれ声と音はより鮮明に聞こえてきた

 

(荒い息声……そしてこれは……風切り音……か?)

 

ついにその場所に辿り着いたミストは大木の陰からその場所を覗いた

 

 

 

「ハッ!」

 

突き出した拳が伸ばしきった場所でピタリと止まる

 

「……!」

 

直ぐ様流麗な舞の様な体捌きで開けた場所を駆け巡る

 

「ハアッ!」

 

一転し今度は目にも止まらぬ高速連打、それもただの連打ではなく落ちてきた数枚の葉を粉微塵にする速さの集中連打

 

「ハッ!!」

 

最後に震脚を生じた蹴り上げを放ち、垂直に蹴り上げられた脚は豪風を起こして伸ばされた後、宙でピタリと止まった

 

 

「ッ……!?」

 

ミストは衝撃を受けていた

 

(こんな時分に修行を……)

 

美鈴のしていた事に

 

(あの汗の量……少なくとも2、3時間は続けている、まさか夕食の後からひたすらここで……?)

 

何故驚くのか?それは美鈴の仕事が関係していた

 

(朝から夕まで門番をして更に修行など……)

 

朝昼夕まで門番をして夜は修行をする、如何に妖怪と言えどキツイに違いない

 

(……それで仕事中に寝るのか)

 

色々と考えていると残心を終えて足を下ろした美鈴が深い息を吐いた

 

「御気遣いありがとうございますミスト、もう大丈夫ですよ」

 

「!!?」

 

見ていたのがバレていた事にミストは更に驚愕した

 

「……いつから気付いていた?」

 

姿を現しながら問う

 

「貴方が紅魔館から出た時からですよ」

 

「なん……だと……」

 

また驚く、気付いたのではなく知っていたと言うのだから

 

「武術を磨いていったら気配を段々と広く察知出来る様になったんです、そこに私の能力を応用して気の感じで誰かもわかるし敵意が有るかもわかるんです!私を出し抜くには紅魔館の中から気配を消して来るか時を止めない限り無理ですね~」

 

「……範囲はどれくらいある?」

 

「今は紅魔館の半径500メートルぐらいですかね、昔はここから紅魔館は範囲外だったんですけどエスタークの夜襲に対応が遅れたのを反省して鍛えて延ばしました!あ、ちなみに白玉楼の妖夢さんも同じくらいですよ!」

 

(……もしやあの不可解なサボりの正体はまさか……)

 

ミストは無言で美鈴を見つめる

 

「……?どうしました?」

 

何も言わないミストに美鈴が問い掛ける

 

「……」

 

美鈴の姿に何かを感じたミストは無言のまま美鈴の持ってきていたタオルの場所に向かい、手に取り美鈴に投げた

 

「あ、ありがとうございます……」

 

意外な行動に今度は美鈴が戸惑っていた、まだ過ごした時は少ないがこんな些細な事すらミストからは無かったからだ、単なる気紛れかもしれないが優しさを感じたから余計に美鈴は戸惑ったのだ

 

「……ここから話すのは私の独り言だ、茶々を入れないでくれると助かる」

 

そう言ったミストの真剣さを瞳から感じ美鈴は無言で頷いた

 

「今思えば萃香の言うように私はお前に嫉妬していたのだろうな……それほどまでに信用されるお前に……」

 

「愚かな事だ……バーン様に強く信用されるお前に地位の危機を覚えた……もう魔王軍などとうの昔に瓦解したと言うのに……バーン様と私で始まった魔王軍だったからだろうか……感傷から抜け出せなかったらしい」

 

「フッ……こんな事を聞かれたら見損なわれるだろうな」

 

苦笑するミストだったが美鈴は表情を変えず真剣に聞き入っていた

 

「見損なわれて当然だ……本質を見ずに表面だけで愚図と評し辞めろとまで言ったのだ、門番に必要な力も、それを裏付ける努力も何もかもが劣っていたのにも関わらず……」

 

美鈴を見つめて言った

 

気付けば独り言ではなくなっていた

 

しっかりとそこに美鈴を捉えて話していた

 

 

「お前が羨ましい……」

 

 

美鈴はドキリとして体を僅かに跳ねさせた

 

(なんて気持ちの強さ……羨ましい、それだけの言葉なのに……)

 

その言葉に並々ならぬ想いを感じたからだ

 

(ただ……私の何に対して……)

 

理由を知りたい美鈴は促す様にミストを見つめる

 

「強くあろうと鍛え、それを成し、尚も先へ行こうとするその精神と体にだ」

 

答えたミストが拳を握り見つめる

 

「私にはそれが出来ない……他人の体に寄生しなければ満足に戦えない私にはバーン様やレミリア様達が……お前が羨ましいのだ」

 

暗黒闘気のガス生命体であるミストは強さが固定されていた、弱くはならないが強くもなれない

 

寄生という手段で強さは得れても自分の力ではないし鍛える事も出来ない

 

だからそれが出来る美鈴がとても羨ましかったのだ

 

「……私と戦った時や萃香さんとの戦いでは密度を高めて戦えていたじゃないですか」

 

「そうだ、だがアレは進化していたから萃香と戦えたのだ、素の実力はお前に一蹴されたあの時が限界だった、進化の力も消えた今、私は寄生しない限りこの幻想郷では下の方だろう」

 

「そうですか……」

 

うーん、と唸る美鈴

 

「時間を取らせて悪かった、お前のクビを進言していたが取り下げておく……ではな」

 

ミストが背を向けた瞬間

 

「ミスト!」

 

美鈴が呼び掛けた

 

「一緒に鍛えませんか?」

 

「……何?」

 

ミストが振り向く

 

「聞いていたのか?ガスの私の体は鍛える事が出来ないと……」

 

「聞いてましたよ!でも密度を高めて硬化は今も出来ますよね?指を硬くして伸ばしたりしてましたし」

 

「それは今でも出来るが……」

 

「よし!」

 

充分だと美鈴が手をついた

 

「武術をしましょう!」

 

提案した顔は笑みを浮かべていた

 

「……武術を習ったところで無意味だ、強くなれはしない」

 

「なれますよ!」

 

それでも美鈴はなれると言う

 

「結構大勢の方が勘違いしていますけど本来、武術とは弱き者が強き者に勝つ為に練られた戦い方なんです」

 

「それは逆に言えば強き者が武術を習えば弱き者は勝てないのではないか?」

 

「確かにその通り、ですが力で敵わないなら技で勝つのも1つの真理なのは間違いありません」

 

美鈴のテンションが上がっていく

 

「密度を操作して四肢を作れば後は武術の技を覚え、練り上げれば必ず強くなれます!」

 

「……」

 

「どうします?やるなら私が教えますが?他にも方法が有るかもしれませんから無理にとは言いませんが……」

 

人差し指をツンツン合わせながら上目使いで美鈴はミストを窺った

 

「……本当に強くなれるのだろうな?」

 

ミストは問い返す、いや、この問いの時点で答えは決まっていたのだろう

 

「ハイ!なれますよ!私が必ず強くしてみせます!!」

 

力強く答えた美鈴にミストは嬉しさを感じるが決して顔には出さず無表情を貫く

 

 

「……よろしく頼む」

 

「ハイッ!では基本からいきますよ~!」

 

 

その日はその場に居るのがいつもより長かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

紅魔館・門前

 

「……」

 

「……」

 

二人は門番をしていた

 

(うぅ……眠い……)

 

美鈴の瞼が重い

 

(昨日はお楽しみ……じゃなくて張り切っちゃって夜中までしてしましたからね……疲れが取れない……)

 

今にも眠ってしまいそう

 

「……ミストは眠くないんですか?」

 

「……基本的に高位の魔族は睡眠をしなくても生きていられる、睡眠が必要な時は大怪我をした時か睡眠の呪文を掛けられた時くらいだ、あれしきで眠いなどまだまだだな」

 

「そうなんですか、いいなぁ……」

 

「……」

 

また無言に戻ったミストを横目で見る

 

(いつものミストに戻った……あーあ、昨日は打ち解けたと思ったのになぁ……あー、でも言い方はマシになったかな?)

 

良かったと微笑む美鈴

 

「あ、そうですミスト!貴方の流派の名前を考えました!」

 

「……流派の名前?」

 

「そうです!私が流派東方不敗なので一緒にしようと思ったんですけどなにせミストは今までの自分の戦い方に武術を入れる形になるので流派東方不敗とは別物になるんですよ、だからミスト流武術と言う事で名前を考えた訳です!」

 

「……なんと言う名だ?」

 

「すっごく格好良いですよ!ミストは暗黒闘気を使って戦うでしょ?なのでズバリ名付けて「暗黒真空拳」!!カーッコイー!!」

 

「暗黒……真空拳……」

 

「決め台詞も考えました!「思い知るがいい……己の未熟さを!」カーッコイー!!ヤダ!私センス有り過ぎる!」

 

「……」

 

「どうですか!?名乗りたくなったでしょう!?」

 

「……」

 

「なんで黙るんですかー!ホントは嬉しいくせにー!」

 

「……」

 

「聞いてますかミスト……!?」

 

その時、美鈴は感付いた

 

「……ちょ~っと休憩行ってきますね」

 

「……わかった」

 

ササッと足早に駆けていく美鈴の背中をミストは見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・裏手

 

「迷子かな~?」

 

小さな子妖怪と美鈴は話していた

 

「ここは危ないから来ちゃダメですよ~」

 

親しげに会話しながら徐々に紅魔館から遠ざけていく

 

 

「……」

 

それを隠れて見ていた者が一人

 

「……やはり……か……」

 

ミストである

 

こっそり美鈴を見にきたのだ

 

「わかったかしら?アレが美鈴が門番に必要な理由の1つよ」

 

「レミリア様!?いつの間に……」

 

驚いたミストに満足気にレミリアは鼻を鳴らした

 

「美鈴がたまに正門を離れる時の理由がこれよ」

 

指を差しながら説明を始める

 

「紅魔館に近付く迷った人間や妖怪を無事に帰してるのよ美鈴はね」

 

「レミリア様の指示ですか?」

 

「いいえ違う、あの子の独断よ」

 

「何故そんな真似を……」

 

「そこはほら……私とフランって吸血鬼じゃない?人間なら血を吸っちゃうし妖怪なら侵入者だから叩きのめす、だからよ」

 

「弱い者を守っているのか……」

 

「そういう事、あの子は人間と妖怪を分け隔てなく接するからね、どっちも危険な目に会ってほしくないのよ」

 

「……」

 

「ここに来るのは迷子か命知らずな馬鹿だけだからね、迷子は優しく帰して馬鹿は門前払い、お陰でここ100年くらい生き血は吸ってないわねぇ」

 

「……」

 

「まぁ貴方が来る前はこんなこそこそしてなかったんだけどね……理由わかる?」

 

「……それは私が門番になったからでしょう」

 

「そっ、貴方相手が子どもでも容赦しないでしょ?誰だろうと痛い目を見せて叩き帰す!それを察したからあの子は貴方に隠れてこそこそしてるのよ」

 

「……」

 

「わかってるみたいならいいわ、ああ見えてちゃんと応対もするから私も許してるのよミスト」

 

 

「……承知しました」

 

ミストは門へ戻っていった

 

 

「どうだミストは?」

 

柱の陰からバーンが現れる

 

「昨日より良い目をしてたわ、もう大丈夫でしょう」

 

「それは何よりだ」

 

二人は微笑み合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・門前

 

「すいませんミスト!遅くなりました!」

 

息を切らして戻った美鈴

 

「……」

 

無言で前を向くミスト

 

「ごめんなさい、怒らないでくださいよ……」

 

昨日約束した事が守れなかったから謝る

 

「……怒ってなどいない」

 

「ホッ……良かった……」

 

また二人で並ぶ

 

「……さっきの話だが」

 

「はい?」

 

「流派名の話だ……「暗黒真空拳」貰う事にした」

 

「ホントですか!?やったー!!」

 

本当に嬉しそうに喜んでいる美鈴

 

「代わりと言ってはなんだが……」

 

「なんでしょう?」

 

「これからも指導を頼む……美鈴殿」

 

「!!……美鈴で良いですよミスト!」

 

今日も紅魔館は平和だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良いものなのかもしれませんな、仲間とは、友とは……今ならバーン様のお気持ちがわかります……」

 

「何か言いましたか?」

 

「いや……何でもない」

 

「寝て良いですか?」

 

「……少しだけだぞ」

 

「やった!ミスト大好きです!」

 

「……私が番をしておいてやる、馬鹿を言わず早く寝ろ」

 

「はーい!」

 

せっせと布団の用意をする美鈴

 

「……!」

 

不意に手は止まった

 

「どうした?」

 

「……残念ながら寝るのは一働きした後みたいです」

 

「……誰か来るのか?」

 

「ええ……知らない気です、ですが敵意に満ちています」

 

「……あの男か」

 

二人の前に大柄の男が現れた

 

「!……あー……ミスト?」

 

一見して察した美鈴

 

「なんだ美鈴?」

 

「これ私の客です……」

 

言った瞬間、男が口を開いた

 

「紅美鈴ってのお前だな?」

 

男も既に察していた

 

「どういう事だ美鈴?」

 

「私への挑戦者ですよ……まだ習ったばかりのミストにはわからないでしょうが武を嗜む者には見れば武道家かどうかわかるんですよ」

 

「そういう事だ、生憎と魔族とやらには今は興味無い……引っ込んでいろ」

 

男の挑発的な物言いに前に出ようとしたミストを美鈴が押さえる

 

「紅美鈴は私です、お相手しましょう」

 

拳を突き出し構えた

 

「ククク……良い味をしてそうだ……食うぜ!」

 

男がまるで鬼の様なオーラを醸し出す

 

 

「参る!!」

 

 

「さぁ……地上最強は目の前だぜ!!」

 

 

紅魔館の門番は続く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書きたくなったから書いちゃいました!番外編です。

まずは生き返ったミストと美鈴にスポットを当てました。

あと何人かは書こうかなと思ってます。

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