東方大魔王伝 -夢現幻想-   作:黒太陽

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ラストファンタジア ~紫天のソナタ~

 

パチュリー・ノーレッジの朝は早い

 

 

「いつまで寝てるのこあ、早く仕事しなさい」

 

「……まだ5時ですよパチュリー様ぁ……」

 

時刻は5時前、季節が季節ならまだ太陽すら出ていない、陽の当たらない図書館には関係は無いがとにかく……

 

「あと1440分~……」

 

「……」

 

「わわっ!?メドローアはダメですって!?起きます!起きますよぉ!」

 

パチュリー・ノーレッジの朝は早い

 

 

 

 

 

 

「ああ、なるほど……この魔法式を応用すれば詠唱時間をおよそ0.2秒短縮出来るわね」

 

今日も朝から魔導書の解読と研究

 

「……ならあの魔法式を組み合わせれば更に短縮出来る?……こあ、解読済みの棚から東洋魔術の魔導書を持ってきて」

 

「はい~………………どうぞ~」

 

「ありがと……えーと確かこのページに……「ウホッ!良い男!やらないか?」…………こら!」

 

「イタッ!?本を投げないでくださいよパチュリー様ぁ!痛いですよぉ……」

 

「間違えてるのよ、これは早苗がこっそり置いていった腐向けの本じゃない」

 

「はう~間違えましたぁ……」

 

「まったく……」

 

もうかれこれ100年以上続けている

 

 

 

 

「精が出るなパチュリー」

 

彼女の友人が現れる

 

「精も何も私にとってこれは呼吸と同じなのよバーン?しなければ死んでしまうの」

 

友であり偉大な師でもある友人へ微笑む

 

「あ、そうそうバーン?これ読める?魔界言語なのは確かなのだけど読みづらくて」

 

「どれ……これは方言で書かれているな、人間と同じで魔界にも地方で言語に差異がある、これに書かれているのは魔界の辺境の物だ」

 

「どう?読めるの?」

 

「無論だ、わかりやすく訳してやろう、まずこれは……」

 

そうして朝は過ぎていく

 

 

 

 

 

 

「おはようございます先生!」

 

「おはようレティ」

 

次に来るのは他の友人だったりするが今日は弟子のレティが早かった

 

「今日はどうしたの?」

 

「もう先生!私がここに来るのは先生に教えを頂く為ですよ!」

 

「はいはい……わかった、見てあげるわ」

 

弟子の育成にも余念が無い

 

そのあと友人達が集まり皆で修行したり遊んだりする

 

それがパチュリー・ノーレッジの1日なのだ

 

「では見せてみなさい」

 

いつもはそうだったが

 

「はい!」

 

この日は違った

 

 

 

 

 

「……うん」

 

妹紅達もやってきて修行をしている中、レティを見ていたパチュリーは不意に頷いた

 

「レティ貴方、私に師事してどれくらいになったかしら?」

 

「えーと……15年ですね」

 

「そんなになるのね」

 

よくわからず首を傾げているレティにパチュリーは微笑みながら言った

 

「もう一人で大丈夫ね」

 

「……え?」

 

固まるレティ

 

「もう私が教えなくても大丈夫と言ったのよ」

 

「は、破門って……事ですか……?」

 

泣きそうな顔で問う

 

「違うわよ、貴方は魔法使いとして一人前になったって事よ」

 

「……!!」

 

師であるパチュリーからそう言われて一瞬嬉しくなったレティだったがすぐに慌て出した

 

「でも、私はチルノはおろか先生や魔理沙……魔女の二天と呼ばれる御二人の足元にも及びません……」

 

自分の実力を知るから受け入れ難いのだ

 

「それは当然よ、だけどレティ……貴方はもう妖力の魔力変換も完璧に出来るし基本の魔法式もマスターして実戦レベルまで高まっているわ」

 

「それでも私は……もっと先生の元で習ってお二人に並びたいです……」

 

魔法を会得したレティだからこそ二人の凄さを感じ、憧れ、越えたいのだ

 

「……魔法使いが常に持っていないとならない心構えを教えてあげる」

 

そんなレティにパチュリーは言う

 

「魔法使いとは探求と試行錯誤の繰返し、既存の魔法式の解読・吸収から新たな魔法式の構築・公式化……それを独自で成し遂げるものなのよ」

 

それを聞いて少し納得がいかない顔をしたレティ

 

「貴方の言いたい事はわかる、私もバーンに教えてもらうからね、でも全てじゃない」

 

「確かに……そうですね、先生はメドローアを僅かな知識から会得しましたし新たなる深淵の魔法であるマダンテを作り上げました」

 

「……別に教わるなとは言ってないの、教わるだけになるのが問題……答えだけを求める事に慣れると向上心が無くなり些細な事で簡単に挫折してしまう、貴方にはそうなって欲しくないのよ」

 

フッとパチュリーは微笑んだ

 

「だから貴方は少し一人で色々とやってみなさい、どうしても行き詰まった時は助けてあげるから」

 

「そういう事なら……わかりました!不肖ながら精一杯やってみます!」

 

元気良く答えたレティはお辞儀をして紅魔館から出ていった

 

 

「師匠らしい事やってるじゃねぇかよパチュリー」

 

聞いていた魔理沙がニヤニヤしながら寄ってきた

 

「上手く出来てた?」

 

「上出来じゃねぇか?らしく見えたからな」

 

「……本当なら私はまだ教えるなんてレベルにいないんだけどね、でも……上手く出来てたのなら……そう……良かった」

 

「自信持てよ!バーンが居るからそんな風に感じるし見えるかもしれないけどよ、実際私達ってスゲーレベルの魔法使いなんだぜ?よそなら伝説クラスのよ!」

 

「そこなのよ魔理沙……バーンが居るからまだまだ未熟だと痛感する、だから教える自分が滑稽に思えるのよ」

 

「難しく考え過ぎなんだよお前はさ!じゃあレティに教えるのって辛いのかよ?」

 

「そんな事ないわ、教えるのは楽しいしあの子が成長したら嬉しいもの」

 

「ならそれで良いじゃねぇか、あいつは私や白蓮、それにアリス、多く居る魔法使いの中からお前を選んで、お前も楽しい、それで良いじゃねぇかよ」

 

「そうね……魔理沙は弟子は取らないの?」

 

「よせよ、小難しい事教えるのは私にゃ向いてない、いまだに魔法式は八卦炉に頼りっぱなしだし」

 

「……そうね、貴方に弟子が居たら筋肉モリモリマッチョマンの脳筋な変態になりそうだものね」

 

「だろ?だから私は弟子を取らないんだぜ!」

 

「まったくこのパワー系魔法使いは……」

 

「うっせー紫もやし!……まぁとにかくレティは大事にしてやれよ?」

 

「言われなくてもわかってるわよ」

 

二天はまた各々の修行に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

「と言うわけだからちょっと場所貸してね靈夢」

 

「良いですよレティさん!好きに使ってください!」

 

笑い合う二人に奥から声が聞こえる

 

「誰がソース買ってこいって言ったのよ!私が言ったのは醤油!醤油とソースの区別も出来ないのバカ神!」

 

『はぁ?神様の僕がそんな事知るわけないだろ?と言うかそんなに言うなら自分で買いに行けばいいだろこの暴力巫女……おわっ!?待った!僕が悪かったから祓い棒を構えるんじゃない!』

 

ドタバタと大きな音が暫く聞こえ、最後にぬわーと叫ばれると静かになった

 

「賑やかね」

 

「ハイ!龍神様が帰ってからはいつもこんな感じですよ!」

 

「嬉しそうね靈夢?」

 

「えへへ~龍神様が来てから霊夢様のいびりが龍神様に向かうようになったので大分気が楽になったんですよ~」

 

「……それで良いの?博麗の神様なのに?」

 

「?……霊夢様の方が偉いんじゃないんですか?」

 

「……神様より鬼巫女が怖いのね」

 

苦笑したレティは持ってきた魔導書を読みながら修行を開始した

 

 

2時間程経った頃

 

 

「あらレティじゃない、来てたのね」

 

「お邪魔してるわ霊夢、と……そちらは?」

 

霊夢とお茶請けを持った顔がボコボコの少年が現れた

 

「こいつは龍神よ、体がデカ過ぎるからどうにかしろって言ったらこうなったのよ、最初からしてろっての」

 

「なんで主神の僕が合わせないといけないんだよ……と言うか元故人が偉そうにするなよな」

 

「何か言った?」

 

「言ったよ、なんて綺麗でおしとやかな巫女なんだ、ってね」

 

「よし、お仕置きね」

 

「なんで!褒めたのに!?」

 

「嘘だから」

 

「やめろー!これ以上僕のイケメンフェイスをイジメルなー!?」

 

またドタバタと揉み合う二人

 

「アハハ!どうぞレティさん、休憩しましょう!」

 

お茶を渡されレティは一息つく事にした

 

「そういえば知ってます?」

 

「何を?」

 

「最近、人間や妖怪が襲われる事件が増えてるんです」

 

「そうなの?」

 

「はい、襲われた人達は軽傷で済んでますけどお金や物を盗られたそうです」

 

「物取り……外来人?」

 

「みたいですね、証言から人間の外来人でいくつかの集団みたいです」

 

「そう……気を付けないとね、靈夢も気を付けてね」

 

「はい!でもこの博麗神社に来ない方が良いかもしれませんね~」

 

「……霊夢が居るものね」

 

龍神に逆エビを極めている霊夢を見ながら苦笑するレティ

 

「とにかく気を付けましょうか」

 

修行は再開された

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあまた来るわね靈夢、ありがとう」

 

「いつでも来てくださいね!」

 

修行を終わり、陽が沈みかけた幻想郷を家に帰る為に飛んでいくレティ

 

(やってみてわかったけど難しい……結局ほとんど魔導書とにらめっこしてただけだったし……一人でやるのってこんなに大変な事だったんだ、やっぱり凄い先生は……)

 

一人でやる過酷さを感じ師であるパチュリーの凄さを改めて知る

 

「……あら?」

 

ふと何かが視界に入りレティは足を止める

 

「人間と……人間?」

 

見えたのは木々の間から僅かに映された場面

 

一人の人間が数人に囲まれている光景だった

 

(まさかアレが靈夢の言ってた物取り?)

 

良く見てみると囲まれている人間はどこかで見たことのある者、幻想郷の人間で囲む者達は見たことも無い

 

(いけない……!誰か……!先生を呼ばないと……!)

 

危険にまず助けを呼ぶ事を考えるレティ

 

「……!?」

 

そうじゃないと頭を振る

 

(何を考えてるの!先生の言葉を忘れたの!?先生はこういう時も含めてああ言ったのよ!何であれすぐに助けを求めない、逃げない……強い心を持てって!)

 

パチュリーの言葉を思いだし決意する

 

「私だって……!」

 

意思を持って飛んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん……ここは幻想郷って所で大魔王やら魔女の二天やらの頂点なんてのが居る危ない所、で……女の情報は無し、か」

 

少女を囲う男達の中でリーダー格の男が呟く

 

「おい、頭に伝えとけ」

 

命じて一人が消える

 

「もう良いでしょ!?帰してよ!」

 

少女が言う

 

「あー良いぜ、その前に……おい」

 

リーダー格の男が命じると少女が身に付けていたネックレスを引き千切った

 

「あっ!?返してよぉ!」

 

「大したもんじゃなさそうだけどそれは貰っといてやるよ、じゃあな」

 

引き上げていく男達

 

「お願い返して!それはお母さんがくれた大事な物なの!」

 

しがみついて懇願する少女

 

「うざってぇな……」

 

少女をビンタし突き放す

 

「返してよ……」

 

少女は諦めず食らいつく

 

「うぜぇな……死なない程度にやっちまえ、まぁ死んでもいいんだけどよ」

 

命令に呼応して少女に囲おうとする男達

 

 

「やめなさい!」

 

 

少女の前にレティが降り立った

 

「なんだ……?お前は?妖怪か?」 

 

リーダー格の男が問う

 

「私は……」

 

何者かを問われたレティは一瞬考える

 

(私じゃまだまだ到底追い付けない……でも!魂だけは……!想いだけでも傍に居たいから!)

 

だから敢えて言う

 

「魔女の二天!!」

 

憧れ、尊敬する者達の名を!

 

「……魔女の二天?」

 

リーダー格の男がレティを訝しむ目で見る

 

「……お前等、適当に相手してやれ」

 

命じると男達はレティへ襲いかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館・図書館

 

「……!」

 

魔導書を捲っていた賢者の手が止まった

 

「どうしたの?」

 

王女が尋ねるが賢者は答えない

 

「……少し出てくるわ」

 

立ち上がり背を向ける賢者

 

「ちょっとどうしたの……!?」

 

王女は賢者の横顔を見て口をつぐんだ

 

「どうしたのだあやつは?」

 

大魔王の問いに王女は頭を振った

 

「わからない、わからないけど……とてもじゃないけど聞けなかったわ」

 

王女は賢者の横顔に凄まじい怒りにも似たものを見ていたから口をつぐんだのだ

 

「行かなくて良いのか?」

 

「……行けないわよ、手出ししないでって顔に書いてあったもの」

 

「ならば夕食を作って待つより他はなかろう」

 

大魔王と王女は静かに帰りを待つ事に決めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メラ……ゾーマ!!」

 

レティの放った火球が一人を倒す

 

「バギマ!!」

 

呪文がまた一人倒す

 

「やあああ!!」

 

レティは優勢を保っていた

 

「中々やるな……おい」

 

リーダー格が命じると杖を構えた数人の男が詠唱を始める

 

「次ッ……!」

 

呪文を放とうと魔力を手に込める

 

「イオラ!」

 

だがその手から呪文は出なかった

 

「なっ……キャッ!?」

 

驚いた隙を突かれ蹴り飛ばされる

 

(魔力はまだ切れてない、という事は……)

 

「そうだ、マホトーンだ」

 

リーダー格の男が言う、マホトーンによりレティの呪文を封じたのだ

 

「魔法使いのお前が呪文を撃てないってのは致命だな」

 

笑うと男達がレティを殴り、蹴っていく

 

ドドドドドッ!

 

男達を弾幕が襲った

 

「ハァ……ハァ……!」

 

息を切らしながら距離を取るレティ

 

「ほぉ、魔法以外の攻撃手段があったのか、やるな」

 

感心したリーダー格

 

「だが……」

 

また笑って弾幕が当たった男達を見た

 

「そっちの方は威力不足らしいな」

 

男達は傷こそあるがまだ健在、倒すには至っていなかった

 

「くっ……」

 

少女を庇うように後ずさるレティ

 

魔法の修行ばかりしていた彼女の弾幕に力はあまりなかった、だから形勢が不利だと知り引き気味になっていた

 

「……逃げてください」

 

レティは少女に言う

 

「でも……」

 

少女はそれはと逃げない

 

「大丈夫です、絶対に取り返してあげますから……だから巻き込まれないように逃げててください」

 

「……わかりました」

 

少女は不安を感じながらも離れていく

 

「せめてあのガキでも……か」

 

ククッと笑うリーダー格の男

 

「なら望み通りにしてやれ」

 

命じられた男達がレティに襲いかかる

 

「寒符「リンガリングコールド」!!」

 

レティは弾幕で攻撃するが防御しながら突っ込んでくる男達を止められない

 

「あぐっ!?」

 

殴られて怯む

 

「うっ!?」

 

弾幕を撃とうとするが蹴られる

 

「ハッハッハー!」

 

遊ばれるように暫くレティは嬲られ続けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ククク……」

 

リーダー格の男が倒れるレティへ近付いていく

 

「お前が魔女の二天だ?笑わせるなよ」

 

腕を掴み持ち上げたレティへ言う

 

「嘘をつくな、あのガキから聞いた魔女の二天は白黒と紫の服を着てる筈だ、お前はただの無名の雑魚だろうが」

 

最初から知っていたのだレティが魔女の二天ではないと

 

「クハハッ!こんな雑魚が魔女の二天たぁ本物が聞いたら泣いちまうぜ、そうだろ偽者よぉ?」

 

ナイフを取り出しちらつかせる

 

「部下を痛め付けてくれた礼だ、殺してやるよ」

 

愉快気な顔で笑っている

 

「くそぉ……」

 

対称にレティは泣いていた

 

(こんな奴に……先生の名を騙ってまでやったのに、こんな奴等に私は……!)

 

とても悔しくて

 

 

「じゃあな偽者」

 

「ごめんなさい……先生……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

透き通る声と共に彼女は降り立った

 

 

「先……生……」

 

レティが呟いた瞬間、パチュリーの放った弾がナイフを弾きリーダー格の男を引き離す

 

「……」

 

魔法結界を張り二人だけの不可侵の場所を作りだす

 

「敵は多いわねレティ……」

 

座り込み、項垂れるレティにゆっくりと近付いていく

 

「いえ、大した事はないか……」

 

腰を下げ肩に手が置かれる、柔らかい月光が二人を静かに照らす

 

パチュリーは知っている

 

レティがどれだけ二天である自分達を、師である自分を見て、追いかけていたかを……

 

そんなレティだから

 

レティだからこそこの言葉を贈るのだ

 

 

 

「今夜は貴方と私で「魔女の二天」だからね」

 

 

 

例え力は劣ろうとも魂は対等なのだと

 

「先生……!!」

 

レティは思わずしがみつき泣く

 

そう言ってくれるのが嬉しいのだ

 

弱い自分を対等と言ってくれるのが

 

「立ちなさいレティ」

 

満身創痍のレティにパチュリーは言う

 

「貴方が頂を目指すのなら……同じ天へと至りたいのなら!」

 

手は出さない、己の意思で決める事だから

 

「私と並びたいのなら!」

 

前に立ち、その背を見せる

 

(私はこんなにボロボロなんですよ……?なのにそれでも貴方は立てって、戦えって言う……)

 

酷い仕打ちだと他人は思うかもしれない

 

「はい……!」

 

だがそんな事は断じてない

 

(先生……貴方は厳しい人です、自分にも、他人にも……)

 

厳しい背中からは語られているのだから

 

「必ず追い付いてみせます……先生に……!」

 

厳しさの中に確かにある優しさを!

 

「なら……」

 

フッとパチュリーは微笑むとレティに触れマホトーンを解除する

 

「雑魚は任せなさい、貴方はボスを倒しなさい」

 

「はい!」

 

結界が解除されパチュリーは取り巻きの男達を、レティはリーダー格の男を見据える

 

「これ以上増えるとやっかいだな……お前等さっさと殺せ」

 

男達が二人に襲いかかる

 

「行きなさい」

 

「ハイ!」

 

パチュリーが土の魔法を使い大地を隆起させリーダー格へと繋がる道を作り出し、呼応しレティは駆けた

 

「どうせ応援呼んでるだろうからこの魔法使いさくっとぶっ殺して兄貴助けてトンズラといこうや」

 

「賛成~」

 

パチュリーを囲む男達はニヤニヤと笑っていた

 

「面白い事言うじゃない、笑いのセンスあるわね」

 

だがパチュリーも動じない

 

「お前状況わかってるか?あの雑魚よりマシみたいだがお前みたいな魔法使いはなぁ?こうしてやりゃイチコロよ」

 

先程レティにマホトーンを掛けた者達がパチュリーにマホトーンを放つ

 

バシュ……

 

マホトーンは打ち消された

 

「魔法使いにとって魔法とは己の生命線、その生命線を維持する対策を怠るのは二流、私はあの子とは違うのよ」

 

パチュリーは放たれたマホトーンを分解し霧散させたのだ

 

「私にマホトーンを当てたいのなら私の反応速度を凌駕する速さを詠唱と魔法球に与えるのね……遅過ぎて眠くなりそうだったわ」

 

「ぐっ……やっちまえ!」

 

ならばと数で掛かる男達

 

「さっきの問いに答えてあげましょう」

 

ズンッ!

 

男達は大地に張り付けられた

 

「お前達こそ状況がわかってるの?」

 

全く身動きが取れず呻く男達へパチュリーは言う

 

「あの子を傷つけたお前達が私の前で生きて立ってられるつもり?」

 

冷酷な怒りが体と魔力から滲み出る

 

「御教授してあげましょう」

 

両手を前に出し魔力を集中させていく

 

「お前達に掛けたのはベタンと呼ばれる重圧呪文、これはその名の通り重力を操る呪文……」

 

更に魔力を集中させていく

 

「重力が強くなっていくとある天体が出現するの、お前達も聞いたことくらいあるんじゃない?……ブラックホールよ」

 

集中させた重力の魔力はパチュリーの前に拳程の小さな黒点を作り出す

 

「重力の最も強い場所、そこを事象の地平面と呼ぶの……その事象の地平に近づけば相対時間が遅くなる……」

 

「つまりお前達にとっては一瞬でしょうが、こちらでは永遠になるという事……」

「御理解出来たかしら?」

 

光さえ飲み込む重力の極致を手に微笑む

 

「事象の地平に消え去りなさい」

 

黒点と共に浮かび上がったパチュリーは男達へ向かい告げた

 

 

「重符「ブラックホールクラスター」……発射!!」

 

 

視界から消えろと……

 

 

発射されたブラックホールが一瞬だけ膨張すると男達を周囲の木や大地を巻き込んで飲み込み、消え去った

 

「ふぅ……」

 

降り立ったパチュリーは一息つくと大地で作った決闘場を見る

 

「後はレティだけね……」

 

信じた弟子の決着を見に行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バギ……クロース!!」

 

風の刃が放たれる

 

「ちっ……グッ!?」

 

防ぎきれずダメージを負うリーダー格の男、ダメージの拍子に奪ったネックレスが地面に落ちたが今はどうでもいい

 

(思ったよりやりやがる……魔法のレベルが高い、ちっ!こんな雑魚に使うのは癪だが仕方ねぇ!)

 

離れたリーダー格は呪文を唱えた

 

「メラ……ゾー……!?」

 

撃とうとしたレティの手が止まった

 

「ちっ、気付きやがったか……あと少しで黒焦げだったのによ」

 

リーダー格の前には光の壁が出来ていた

 

「マホカンタ……」

 

そう、リーダー格の男はマホカンタを唱えていたのだ

 

「さぁ形勢逆転だ……お仲間が来るまでに殺してやるよ」

 

ナイフを構え飛び出そうとする

 

「……!!」

 

だがレティが魔力を集中させる動きを見せ、止まった

 

「撃つ気か?意味の無いハッタリはやめろ」

 

警戒し忠告するがレティはやめない

 

「うぅー……!!」

 

両手に異なる属性の力を持ち、合わせ、融合させる

 

「うああっ!!」

 

融合した魔光を引き絞る様にして構えた

 

「……やけになったか」

 

構わず突進するリーダー格の男、魔法なら跳ね返せると強気で攻めたのだ

 

「……くらえー!」

 

初めて撃つ技故にギリギリまで引き付けたレティは至近距離でそれを放った

 

「メドローア!!」

 

消滅の光矢が敵に向かう

 

「馬鹿が……死ねぇ!」

 

それがリーダー格の男の最後の言葉だった

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

顔を上げて喘ぐレティはペタンとその場にへたり込んだ

 

「……やった」

 

敵の居ないその場所で

 

「レティ……貴方さっきの……」

 

見ていたパチュリーが驚きながら傍へやって来た

 

「はい……出来ました……メドローアです……」

 

嬉しそうに笑うレティだがパチュリーの顔は渋かった

 

「アレはメドローアはメドローアだけど……違う、アレには妖力が混ざってた」

 

そう、メドローアならマホカンタで跳ね返されレティは消滅していた

 

割って入って反射されたメドローアを相殺しようとしたパチュリーだったが思わぬ結果に立ち竦んでしまったのだ

 

 

(プラスの魔力とマイナスの妖力を融合させたメドローア……それが通常とは異なるメドローアを作り出した、だからマホカンタに反射されずマホカンタごと消し飛ばした……)

 

「ど、どうでしたか……?」

 

難しい顔で思案するパチュリーに不安気に問うレティ

 

「……撃った根拠を聞かせなさい」

 

「根拠……ですか?」

 

「そう、マホカンタを張っていたのに撃った根拠よ、反射されるとは考えなかったの?」

 

厳しい顔で問うパチュリー、万一には自分が相殺するつもりだったが一歩間違えれば一緒に消し飛んでいたかもしれないのだ、その危険性を知っている筈のレティへ何故か聞いた

 

「あのメドローアを作った時……感じたんです、大丈夫だって……」

 

「……それだけで撃ったの?」

 

「はい……すいません……」

 

レティは謝る、理詰めの魔法使いが感覚で撃ったなんて事は知識の賢者であるパチュリーには信じられない事だとわかっているからだ

 

「……まったく」

 

パチュリーは呆れる様に笑った

 

「とんだ本能型の魔法使いね貴方は……魔理沙とおんなじ」

 

怒りはしなかった

 

傍に居るからだ、本能と感覚で自分と同じ位置まで居る友が居たから怒りもしないし否定もしなかった

 

「紅魔館に来なさい、手当てしてあげるから」

 

「……はい!あ、その前に取り返したこれあの子に返しても良いですか?」

 

「わかったわ、では行きましょう」

 

師弟は微笑み合い、夜の喧騒は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチュリー・ノーレッジの朝は早い

 

 

「……おはよう、まだやってたの?」

 

「あ!おはようございます先生!頑張ってるんですけどあの時のメドローアが出来ないんです……」

 

「そればかりは私じゃアドバイス出来ないから自力でやるしかないわね」

 

「はい……頑張ります……」

 

 

今日も同じ事の繰り返し

 

 

「そういえば先生?」

 

「どうしたの?」

 

「なんで私が危ないってわかったんですか?」

 

「……貴方の魔力をいつも把握してたからよ」

 

「どういう事ですか?」

 

「貴方の魔力が酷く乱れて敵意を持った、だから襲われてるんじゃないかと思って見に行ったのよ」

 

「えぇ……プライベートも何も無いじゃないですか……でも良いです!」

 

「……?」

 

「優しい先生が助けてくれましたから!」

 

「……何言ってるのよ、バカな子ね」

 

「あっ……行っちゃった」

 

 

それは死ぬまで続くだろう

 

 

「あら?何これ……ケーキじゃない、レティが用意してくれてたのね、気が利くじゃない」

 

 

でもそれが好きな生き方

 

 

「……あ!?先生!それ……」

 

「頂いてるわ、ありがとレティ」

 

「それ私が用意したんじゃないです……」

 

「そうなの?では誰が?」

 

「……大妖精です」

 

「むきゅ!!?」

 

 

ずっと続けていくだろう

 

 

「どうしよう……今度こそ殺されちゃう……」

 

「賢者の知識でどうにかしてください」

 

「レティが食べた事にして?お願い」

 

「クズ過ぎです先生……もちろん嫌です」

 

 

 

「おはようございまーす!」

 

 

 

「むきゅ!?なんで今日はこんなに早いの!?」

 

「あれ?ここに皆で食べようって置いてたケーキが無い……パチュリーさん知りま……あっ!?」

 

「……レティ、魔法使いが大ピンチの時に発動出来る大魔法を教えてあげる」

 

「……なんでしょう?」

 

「それは……逃げるのよ!!」

 

「えぇ!?私は関係ないから逃げませんよ!」

 

「嘘つかないの!美味しそうに食べてたじゃない!」

 

「あー!先生!?もぉー!!」

 

 

「パチュリーさん!!レティさん!!」

 

 

 

皆と共に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




急ピッチで送りましたパチュリー編!いかがでしたか?
知識人としての凄さ、二天としての強さ、案外世話好きなパチェを書きました。
そして何気にレティ初勝利&必殺技習得?

パチュリーが助けに来る場面はある漫画の名シーンから取りました、その漫画の一番好きなシーンです!わかる人が居れば嬉しいです。
更にパチェさんの新技、ネタの意味合いが強いですが読んでくれてる人で知ってる人いるかな?

パチュリーの台詞成分も特に無いですね、いかに賢そうに見せるかに苦労するぐらいです。

次は大ちゃんかな……次回も頑張ります!
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